説明

ガラス組成物および基板上にそれを具備する部材

【課題】高屈折率で低温軟化性を有し、かつ平均熱膨張係数の小さなガラス組成物、および基板上にそれを具備する部材を提供する。
【解決手段】本発明のガラス組成物は、屈折率(n)が1.88以上2.20以下、ガラス転移温度(T)が450℃以上515℃以下、および50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が60×10−7/K以上90×10−7/K以下であって、Biの含有量は酸化物基準のモル%表示で5〜30%であり、ZnOの含有量は酸化物基準のモル%表記で4〜40%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率で低温軟化性を有し、かつ平均熱膨張係数の小さなガラス組成物、および基板上にそれを具備する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(1)高屈折率(d線の屈折率が1.88以上2.20以下)、(2)低ガラス転移温度(515℃以下)、かつ(3)平均熱膨張係数が小さい(平均熱膨張係数が65〜90×10−7/K)、ガラス組成物および基板上にそれを具備する部材(以下、ガラス組成物等と称する)は存在していなかった。
【0003】
上記3つの条件のうち、多くて2つの条件を同時に備えたガラス組成物等が提案されている(特許文献1〜5)。
【0004】
なお、近年、酸化鉛を含むガラスの溶解では、環境汚染が重大な問題となっている。従って、ガラスには酸化鉛を含まないことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−300751号公報
【特許文献2】特開2003−160355号公報
【特許文献3】特開2006−111499号公報
【特許文献4】特開2002−201039号公報
【特許文献5】特開2007−51060号公報
【特許文献6】特開2007−119343号公報
【特許文献7】国際公開番号WO2009/017035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの特許文献1〜5も、上述した3つの条件を同時に備えることを開示および示唆していない。これら3つの条件を同時に備えることが、ガラスフリット・ガラスペースト焼成によってソーダライム基板上に高屈折率膜を形成するために必要である。特許文献1〜3のガラスは、精密プレス成形レンズ用途として開発されたものである。そのため、特許文献1〜3のガラスは、フリットとして焼成することを目的としていないため、平均熱膨張係数が大きいという問題がある。
【0007】
また、特許文献4のガラスは、ビスマスを多量に含有する。そのため、特許文献4のガラスは、着色が大きく、平均熱膨張係数も大きいという問題がある。
【0008】
また、特許文献5のガラスは、精密プレス成形レンズが用途として開発されたものである。そのため、特許文献5のガラスは、フリットとして焼成することを目的としていないため、ガラス転移温度が高いという問題がある。
【0009】
また、特許文献6のガラスは、原料が高価であるGeOを必須成分として多量に含有しており、原料費が高くなりすぎるという問題がある。
【0010】
また、特許文献7は、段落0164において一つの特性値を記載しているが、表3で開示されたたった一つのガラスの組成にはZnOが含有されていない。そのため、特許文献7が、どの程度の特性の範囲を開示しているのか明確ではない。
【0011】
本発明は、高屈折率で低温軟化性を有し、かつ平均熱膨張係数の小さなガラス組成物、および基板上にそれを具備する部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガラス組成は、屈折率(n)が1.88以上2.20以下、ガラス転移温度(T)が450℃以上515℃以下、および50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が60×10−7/K以上90×10−7/K以下であって、Biの含有量は酸化物基準のモル%表示で5〜30%であり、ZnOの含有量は酸化物基準のモル%表記で4〜40%であることを特徴とする。
【0013】
本発明のガラスフリットは、屈折率(n)が1.88以上2.20以下、ガラス転移温度(T)が450℃以上515℃以下、および50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が60×10−7/K以上90×10−7/K以下であって、Biの含有量は酸化物基準のモル%表示で5〜30%であり、ZnOの含有量は酸化物基準のモル%表記で4〜40%であることを特徴とする。
【0014】
本発明の部材は、屈折率(n)が1.88以上2.20以下、ガラス転移温度(T)が450℃以上515℃以下、および50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が60×10−7/K以上90×10−7/K以下であって、Biの含有量は酸化物基準のモル%表示で5〜30%であり、ZnOの含有量は酸化物基準のモル%表記で4〜40%であるガラス組成物若しくはガラスフリットにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高屈折率で低温軟化性を有し、かつ平均熱膨張係数の小さなガラス組成物、および基板上にそれを具備する部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガラスまたはセラミックス基板上にガラスフリット焼成層を形成した部材を示す図である。
【図2】ガラスフリット焼成層中に散乱物質を含有している部材を示す図である。
【図3】ガラスフリット焼成層上に透光性電極層を成膜した部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のガラス組成物の屈折率(n)は1.88以上2.20以下の範囲である。この範囲であると有機LED散乱層として用いる場合に発光光を取り出せる効果が大きい。
【0018】
本発明のガラス組成物の屈折率(n)は1.90以上2.10以下が好ましい。
【0019】
本発明のガラス組成物のガラス転移温度(T)は450℃以上515℃以下である。この範囲であると、高歪点ガラス基板(歪点570℃以上)上で本発明のガラスフリットを焼成し軟化させても、基板が温度による変形をしない。ガラス転移温度(T)は450℃以上515℃以下が好ましく、450℃以上510℃以下がさらに好ましい。ここで、ガラス転移温度(T)とは、ガラスの粘性係数η=1014dPa・Sに相当する温度で定義される。
【0020】
本発明のガラス組成物の平均熱膨張係数は、50℃から300℃までの範囲で、60×10−7/K以上90×10−7/K以下である。これを満たすと、高歪点ガラス基板(歪点570℃以上)またはソーダライムガラス基板上で本発明のガラスフリットを焼成し軟化させた後でも、割れたり基板が大きく反ったりすることがない。50℃から300℃までの平均熱膨張係数は、65×10−7/K以上が好ましく、70×10−7/K以上が特に好ましい。50℃から300℃までの平均熱膨張係数は、85×10−7/K以下が好ましく、75×10−7/K以下が特に好ましい。平均熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)によって測定された数値である。
【0021】
本発明のガラス組成物は、P、Bi、NbおよびZnOを必須成分として含み、B、LiO、NaO、KO、TiO、WO、TeO、GeO、Sb、アルカリ土類金属酸化物を任意成分として含むことができる。
【0022】
各成分含有量の範囲は、酸化物基準のモル%表示で、Pの含有量が15〜30%、Biの含有量が5〜30%、Nbの含有量が5〜27%、ZnOの含有量が4〜40%、Bの含有量が0〜17%、LiOの含有量が0〜14%、NaOの含有量が0〜7%、KOの含有量が0〜7%、TiOの含有量が0〜13%、WOの含有量が0〜20%、TeOの含有量が0〜7%、GeOの含有量が0〜7%、ZrOの含有量が0〜7%、Sbの含有量が0〜2%、アルカリ土類金属酸化物の含有量が0〜10%であり、アルカリ金属酸化物の含有量の合計が14%以下である。
【0023】
本発明のガラス組成物の成分において、Pは、ガラスの骨格となる網目構造を形成する必須成分であり、ガラスの安定性を付与する。Pが15モル%未満では、失透しやすくなり、30モル%を超えると、本発明に必要な高屈折率が得ることが難しくなる。Pの含有量は、15モル%以上であり、19モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましい。また、Pの含有量は、30モル%以下であり、28モル%以下が好ましく、26モル%以下がより好ましい。
【0024】
Biは、高屈折率を付与し、ガラスの安定性を高める必須成分であり、5%未満では、その効果が不十分となる。また同時に、Biは、平均熱膨張係数を高くしてしまうとともに、着色を大きくしてしまうため、その含有量は30モル%以下である。Biの含有量は、5モル%以上であり、10モル%以上が好ましく、13モル%以上がより好ましい。また、Biの含有量は、30モル%以下であり、28モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
【0025】
Nbは、高屈折率を付与するとともに平均熱膨張係数を下げる必須成分であり、5モル%未満では、その効果が不十分となる。また同時に、Nbは、ガラス転移温度を高くしてしまうため、その含有量は27モル%以下である。Nbが27モル%を超えるとガラス転移温度が高くなり過ぎるとともに失透しやすくなる。Nbの含有量は、5モル%以上であり、7モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、Nbの含有量は、27モル%以下であり、20モル%以下が好ましく、18モル%以下がより好ましい。
【0026】
ZnOは、平均熱膨張係数の過度の上昇を抑えながらガラス転移温度を大きく下げるとともに高屈折率を付与する効果を有する必須成分である。また、ガラスの粘性を下げ、成形性を向上する効果がある。4モル%未満ではその効果が不十分となる。一方、ZnOが40モル%を超えると、ガラスの失透傾向が強まる。ZnOの含有量は、4モル%以上であり、16モル%以上(7質量%以上)が好ましく、21モル%以上(9質量%以上)がより好ましく、23モル%以上(10質量%以上)が特に好ましい。ただし、ZnOを23モル%を超えて含有させる場合は、失透を避けるため、TiOを実質的に含有させないことが好ましい。また、ZnOの含有量は、40モル%以下(19質量%以下)であり、35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0027】
は、必須成分ではないが、ガラスの溶解性を向上させる効果を有し、17モル%を超えると失透や分相が生じやすくなるとともに、本発明に必要な高屈折率を得ることが難しくなる。
【0028】
LiOは、ガラスの耐失透性を付与するとともにガラス転移温度を下げる効果を有するが、同時に平均熱膨張係数を大きくしてしまう。LiOを過剰に含有することにより、平均熱膨張係数が大きくなり過ぎる。LiOの含有量は、0モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、LiOの含有量は、14モル%以下が好ましく、7モル%以下がより好ましい。
【0029】
NaOは、ガラスの耐失透性を付与する効果を有するが、その含有により、平均熱膨張係数がきわめて大きくなる。NaOは、0〜7モル%(質量%表記では0〜2.5%)の範囲で含むことができるが、実質的に含まないことがより好ましい。
【0030】
Oは、ガラスの耐失透性を付与する効果を有するが、その含有により、平均熱膨張係数がきわめて大きくなる。KOは、0〜7モル%の範囲で含むことができるが、実質的に含まないことがより好ましい。
【0031】
TiOは、高屈折率を付与する効果を有するが、その含有により、ガラス転移温度が上昇するとともに失透しやすくなる。TiOは、0〜13モル%の範囲で含むことができるが、0〜9モル%とすることが好ましい。
【0032】
WOは、平均熱膨張係数とガラス転移温度を大きく変化させずに高屈折率を付与する効果を有するが、20モル%を超えると着色が大きくなるとともに、失透しやすくなる。
【0033】
TeOは、平均熱膨張係数の過度の上昇を抑えながらガラス転移温度を下げる効果を有するが、高価であるとともに白金坩堝を侵食するおそれがあるため7モル%以下である。
【0034】
GeOは高屈折率を付与する効果を有する任意成分であるが、高価であるためその含有量は7モル%以下である。なお、モル%表記とは必ずしも一対一に対応しないが、質量%で表すと、4.5質量%以下である。
【0035】
ZrOはガラスの安定性を向上させる任意成分であるが、7モル%を超えて含有すると、ガラスが失透しやすくなる。
【0036】
Sbは清澄剤として有効であるばかりでなく、着色を抑制する効果も有し、0〜2モル%の範囲で加えることができる。
【0037】
アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaOのうち1種以上)はガラスの安定性を向上させるが、10モル%を超えて含有すると、屈折率を低下させるとともに平均熱膨張係数およびガラス転移温度を大きくしてしまう。
【0038】
アルカリ金属酸化物は、ガラスの耐失透性を付与するとともにガラス転移温度を下げる効果を有するが、同時に平均熱膨張係数を大きくしてしまうため、合量は14モル%以下とすることが好ましく、2〜7モル%とすることがより好ましい。
【0039】
また、NaOおよびKOは、LiOに比して特に熱膨張係数を大きくしてしまうため、NaOとKOを実質的に含まず、LiOのみを用いることが好ましい。
【0040】
本発明のガラス組成物は、発明の効果を失わない範囲で、SiO、Al、La、Y、Gd、Ta、CsO、遷移金属酸化物等も含有することができる。その含有量は合計で5%未満に留めることが好ましく、3モル%未満にすることがより好ましく、実質的に含有しない(含有量が実質的に零である)ことが一層好ましい。
【0041】
なお、本発明のガラスは、酸化鉛を実質的に含有しない(含有量が実質的に零である)ため、環境汚染を引き起こす可能性が低い。
【0042】
ここで実質的に含有しないとは、積極的に含有しないということであり、他の成分由来による不純物として混入される場合を含むものとする。
【0043】
本発明のガラス組成物は、酸化物、リン酸塩、メタリン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等の原料を使用し、それらを所定の組成になるよう秤取し、混合した後、白金等の坩堝を用いて950〜1500℃の温度で溶解し、鋳型に鋳込むか双ロールの隙間に注いで急冷することによって得ることができる。また、徐冷して歪みを取り除くこともある。
【0044】
本発明のガラスフリットは、前記の方法で作製したガラス組成物を、乳鉢、ボールミル、遊星ミル、ジェットミル等により粉砕し、必要に応じて分級することによって得られる。ガラスフリットの質量基準平均粒径は、典型的には、0.5〜10μmである。界面活性剤やシランカップリング剤によってガラスフリットの表面を改質しても良い。ここで質量基準平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定法で測定された粒径である。
【0045】
本発明の部材は、図1に示すように、ガラスまたはセラミック基板上に所定の組成のガラス層を形成した部材である。ガラス層の厚みは典型的には5〜50μmである。ここで用いる基板は、50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が75×10−7/K以上90×10−7/K以下であることが好ましく、例えばソーダライムガラスや旭硝子株式会社製PD200が挙げられ、その表面にシリカ膜等がコートされていても構わない。この部材は典型的には、前記ガラスフリットを、必要に応じて溶剤やバインダーなどと混練後、前記基板上に塗布し、前記ガラスフリットのガラス転移温度より60℃程度以上高い温度で焼成してガラスフリットを軟化させ、室温まで冷却することによって得られる。溶剤としては、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、フタル酸エステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等が、バインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂等が、それぞれ例示される。なお、本発明の目的を損なわない範囲で溶剤またはバインダー以外の成分を含有してもよい。なお、バインダーを用いる場合は、ガラスフリットを軟化させる前に、ガラス転移温度よりも低い温度で焼成してバインダーを気化させる工程を含むことが好ましい。
【0046】
本発明の部材は、図2に示すように、そのガラスフリット焼成層中に散乱物質を含有することができる。散乱物質は、気泡である場合と、前記ガラスフリットとは異なる組成をもつ材料粒子である場合と、前記ガラスフリットからの析出結晶である場合とがあり、これら単体でもよいし、混合状態でもよい。散乱層をガラスで構成することにより、優れた散乱特性を有しつつも表面の平滑性を維持することができ、発光デバイスなどの光出射面側に用いることで極めて高効率の光取り出しを実現することができる。
【0047】
本発明の部材は、図3に示すように、ガラスフリット焼成層の上に透光性電極層をスパッタリング等の成膜方法によって形成することも可能である。有機LED散乱層用途として用いる場合、透光性電極層の屈折率は、前記ガラスフリットの屈折率以下であることが好ましく、この要件を満たすことにより、有機層からの発光光を効率良く取り出すことができる。透光性電極層は、典型的にはITO(Indium Tin Oxide)であり、SnO、ZnO、IZO(Indium Zinc Oxide)等を用いることもできる。
【実施例】
【0048】
(ガラス組成物)
例1〜35は、本発明のガラス組成物の実施例である。
表1〜8に各実施例のモル%表示によるガラスの組成と、屈折率(n)、ガラス転移温度(T)、50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)とを示す。また、モル%表示による組成に基づいて換算した質量%表示による組成も併記する。いずれのガラス組成物とも各成分の原料として各々、酸化物、リン酸塩、メタリン酸塩、炭酸塩を使用し、ガラス化した後に表1に示す組成となるように前記原料を秤量し、十分混合した後、白金坩堝を用いて電気炉で950〜1350℃の温度範囲で溶融した後、カーボン製の鋳型に鋳込み、鋳込んだガラスを転移温度まで冷却してから直ちにアニール炉に入れ、室温まで徐冷して各ガラス組成物を得た。
【0049】
得られたガラス組成物について、屈折率(n)、ガラス転移温度(T)、50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)を以下のようにして測定した。
(1)屈折率(n
ガラスを研磨した後、カルニュー社製精密屈折計KPR−2000によって、Vブロック法で測定した。
(2)ガラス転移温度(T
ガラスを直径5mm長さ200mmの丸棒状に加工した後、ブルッカー・エイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA)TD5000SAによって、昇温速度を5℃/minにして測定した。
(3)50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300
ガラスを直径5mm長さ200mmの丸棒状に加工した後、ブルッカー・エイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA)TD5000SAによって、昇温速度を5℃/minにして測定した。50℃におけるガラス棒の長さをL50とし、300℃におけるガラス棒の長さをL300としたとき、50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)は、α50−300={(L300/L50)−1}/(300−50)によって求められる。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
(基板との密着性および反りの確認)
例36〜39は、本発明のガラス組成物を基板上に形成して基板との密着性と反りの程度を確認した実施例である。
【0059】
例1、2、4、5に示した各組成のフレーク状ガラスを、例1〜35と同様の方法で秤量、混合、溶融した後、その融液を双ロールの隙間に注いで急冷することによって作製した。各フレークをアルミナ製のボールミルで1時間乾式粉砕して、各ガラスフリットを得た。各ガラスフリットの質量基準平均粒径は、いずれも、3μm程度であった。得られた各ガラスフリット75gを、有機ビヒクル(α−テルピネオールにエチルセルロースを10質量%溶解したもの)25gと混練してガラスペーストを作製した。このガラスペーストを、シリカ膜を表面コートされた大きさ10cm角、厚さ0.55mmのソーダライムガラス基板上に、焼成後の膜厚が30μmとなるよう均一に9cm角のサイズで中央に印刷し、これを150℃で30分間乾燥した。その後一旦室温に戻し、450℃まで30分で昇温し、450℃で30分間保持し、その後、550℃まで12分で昇温し、550℃で30分間保持し、その後、室温まで3時間で降温し、ソーダライムガラス基板上にガラスフリット焼成層を形成した。そして、各々について、焼成層および基板の割れが発生しているかを観察し、また、焼成層の四隅における基板の反りの平均値を測定し、反りが許容できる程度であるかどうかを判断した。なお、反りの平均値が1.00mmを超える場合に許容できないと判断した。結果を表9に記載した。使用したソーダライムガラスの50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)は83×10−7/Kである。
【0060】
【表9】

【0061】
上記から明らかなように、本発明のガラスは、そのフリットを基板上で焼成しても、基板との密着性が良く、反りや割れ等の問題も生じない。
【0062】
(比較例のガラス組成物)
表10および表11に各比較例のモル%表示及び質量%表示によるガラスの組成と、屈折率(n)、ガラス転移温度(T)、50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)を示す。各ガラスについて、ガラス転移温度が515℃以下かつ平均熱膨張係数が60×10−7/K以上85×10−7/K以下、でない場合に「不可」と評価した。各々の物性値は例1〜35と同様の方法で作製されたガラスについて、例1〜35と同様の方法で測定したが、例48の屈折率(n)は、着色が大きいため、測定不可能であった。なお、例40、41はそれぞれ前述した特許文献3(日本国特開2006−111499号公報)の実施例5、12に相当し、例42は前述した特許文献1(日本国特開2003−300751号公報)の実施例3に相当し、例43、44はそれぞれ前述した特許文献2(日本国特開2003−160355号公報)の実施例1、2に相当し、例45、46、47はそれぞれ前述した特許文献5(日本国特開2007−51060号公報)の実施例1、10、13に相当し、例48は前述した特許文献4(日本国特開2002−201039号公報)の実施例3に相当する。
【0063】
【表10】

【0064】
【表11】

【0065】
(基板との密着性および反りの確認)
例50と51は、例40と例49に示した各組成のガラスフリットを、実施例36〜39と同様の方法で作製し、同様のソーダライムガラス基板上に同様の方法で焼成した後、各々について、焼成層および基板の割れが発生しているかを観察し、また、焼成層の四隅における基板の反りの平均値を測定し、反りが許容できる程度であるかどうかを判断した。なお、反りの平均値が1.00mmを超える場合に許容できないと判断した。結果を表12に記載する。使用したソーダライムガラスの50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)は83×10−7/Kである。
【0066】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により、高屈折率で低温軟化性を有し、かつ平均熱膨張係数の小さなガラス組成物を光学部材に適用し、特に有機LED用途の高効率な散乱性光取出し部材の製造を可能とする。特に、本発明によれば、有機LED光取出しを向上させられる散乱層に好適なガラスフリットを提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 ガラスまたはセラミック基板
101 ガラス層またはガラスフリットの焼成層
102 散乱物質
103 透光性電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率(n)が1.88以上2.20以下、ガラス転移温度(T)が450℃以上515℃以下、および50℃から300℃までの平均熱膨張係数(α50−300)が60×10−7/K以上90×10−7/K以下であって、Biの含有量は酸化物基準のモル%表示で5〜30%であり、ZnOの含有量は酸化物基準のモル%表記で4〜40%であることを特徴とするガラス組成物。
【請求項2】
酸化物基準のモル%表示で、
15〜30%、
Nb 5〜27%、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
酸化物基準のモル%表示で、
0〜17%、
LiO 0〜14%、
NaO 0〜7%、
O 0〜7%、
TiO 0〜13%、
WO 0〜20%、
TeO 0〜7%、
GeO 0〜7%、
ZrO 0〜7%、
Sb 0〜2%、
アルカリ土類金属酸化物0〜10%の各成分を含み、
アルカリ金属酸化物の合量が14%以下であることを特徴する請求項1または2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
NaOおよびKOを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガラス組成物。
【請求項5】
アルカリ金属酸化物の合量が2〜7モル%である請求項1から4のいずれか一つに記載のガラス組成物。
【請求項6】
ZnOの含有量が21モル%以上である請求項1から5のいずれか一つに記載のガラス組成物。
【請求項7】
ZnOの含有量が23モル%を超えかつ10質量%を超え、TiOを実質的に含有しない請求項1から6のいずれか一つに記載のガラス組成物。
【請求項8】
酸化鉛を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のガラス組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の組成のガラスフリット。
【請求項10】
ガラスまたはセラミック基板上に請求項1から9のいずれかに記載の組成のガラス層を具備する部材。
【請求項11】
ガラスまたはセラミック基板上で請求項9に記載のガラスフリットを焼成して得られるガラス層を具備する部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25634(P2012−25634A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167091(P2010−167091)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】