説明

ガラス繊維プリプレグ及びその製造方法

【課題】 ガラス繊維の含有量が高く、寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性に優れたプリント配線板用積層板に供されるガラス繊維プリプレグ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ガラス繊維を補強材とするプリプレグ1であって、そのうちのガラス繊維含有量が60wt%以上、75wt%以下であり、ガラス繊維束3が一方向に延在する層と、ガラス繊維束3が一方向とほぼ直交する他の一方向に延在する層との、少なくとも2層からなり、各層のガラス繊維の単位重量は40g/m以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用積層板等に使用される、ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線基板には、強度、耐熱性、電気絶縁性等の性能面で優れた、ガラス繊維で補強した積層板が使用されている。通常、これらの積層板に供されるガラス繊維プリプレグは、多数のガラス繊維フィラメントから形成されるガラス繊維束を経糸、緯糸として織られたガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化させて製造されている。このようなガラス繊維プリプレグにおいて、例えば、特許文献1に記載された発明では、10mm以上の範囲で経糸と緯糸が交差せず、非交差部で経糸層と緯糸層が積層状態にある織組織のガラス繊維織物により、寸法安定性や表面平滑性の向上を図っている。また、他方、ガラス繊維プリプレグの薄型化を図るために、例えば、特許文献2に記載された発明では、ガラス繊維フィラメントを一方向に並置(引き揃え)して、ガラス繊維フィラメント1本分の厚さの単層構造体を、熱硬化性樹脂で固めたプリプレグも検討されている。
【特許文献1】特開平11−241251号公報
【特許文献2】特開2003−291263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常の平織組織のガラス繊維織物ではガラス繊維と熱硬化性樹脂組成物との合計重量に占めるガラス繊維の含有量は55%程度が限界であり、特許文献1においても、織物であるためにガラス繊維束が波状でかつ経糸と緯糸との交差部分が存在すること等に起因して、積層板の寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性の向上に限度がある。
また、表面平滑性の向上に限度があることから、ドリルによる穿孔の際のドリル加工性や実装時の表面実装性に問題を生じることがある。
なお、ここでいう寸法安定性とは、表面に銅箔を貼着した積層板であれば、銅箔をエッチングしその後170℃で30分間キュアした後の面方向の寸法変化率が少ない場合に寸法安定性に優れていることを意味する。熱膨張係数の抑制とは、温度変化による積層板の面方向の寸法変化が少ない場合に熱膨張係数の抑制に優れていることを意味する。表面平滑性とは、積層板の表面の粗度(例えば最大高さによる面粗度Rmax)が小さい場合に表面平滑性に優れていることを意味する。
また、特許文献2に記載の発明では、プリプレグの薄型化を達成するものではあるが、必ずしも、積層板の寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性等の観点からその向上を達成するものとはされていない。
【0004】
本発明は、これらの従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ガラス繊維の含有量が高く、積層板とされた際に、寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性に優れたものとすることのできるガラス繊維プリプレグ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明のガラス繊維プリプレグは、ガラス繊維を補強材とするプリプレグであって、そのうちのガラス繊維含有量が60wt%以上、75wt%以下であり、ガラス繊維束が一方向に並行に延在する層と、ガラス繊維束が一方向とほぼ直交する他の一方向に延在する層との、少なくとも2層からなり、各層のガラス繊維の単位重量(単位面積当たりの重量)は40g/m以下であることを特徴とする。本発明によれば、プリプレグは、ガラス繊維束が交絡しない層を積層する構造であることから、ガラス繊維の含有量を60wt%以上、75wt%以下の高いものとすることができ、そのために、積層板とされた際に、強度、寸法安定性を高め、熱膨張係数を小さなものとすることができる。また、ガラス繊維束は直線的に配置されることから、表面平滑性とともに寸法安定性についてもさらに向上させることができる。また、各層のガラス繊維の単位重量を40g/m以下とするので、各層の厚さを50μm程度以下の薄いものにすることができる。
【0006】
また、ガラス繊維束が一方向に並行に延在する層のガラス繊維の単位重量と、ガラス繊維束が他の一方向に延在する層のガラス繊維の単位重量とがほぼ等しいようにする場合は、縦横の寸法変化、熱膨張係数をほぼ等しいものとすることができる。
【0007】
また、断面において、層の厚さ方向にほぼ線対称となるように、ガラス繊維束が配置されている場合は、反り捻れを抑制することができる。ここで、反り捻れの抑制とは、積層板を平面台に載置した際の端面の浮きが小さい場合に反り捻れの抑制に優れていることを意味する。
【0008】
また、各層における上記ガラス繊維束の厚さ/幅が、0.1以下である場合は、ガラス繊維束が層の厚さ方向に大きくつぶれた形状となることから、ガラス繊維がより均一に分布し、表面平滑性がさらに高まる。
【0009】
また、本発明のガラス繊維プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材を形成し、2個の基材を、ガラス繊維束の延在方向がほぼ直交し、かつ外側の面にのみキャリア材が配置されるように積層し、加熱加圧することを特徴とする。本発明によれば、ガラス繊維束が交絡しない層を積層する構造で、ガラス繊維の含有量が高く、積層板とされた際に、強度、寸法安定性、表面平滑性を高め、熱膨張係数を小さなものとし、縦横の寸法変化をほぼ等しいものとすることのできるガラス繊維プリプレグを容易に製造することができる。
【0010】
また、本発明のガラス繊維プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材、及びガラス繊維の単位重量がそのほぼ2倍である1個の基材を形成し、ガラス繊維の単位重量がほぼ2倍である1個の基材を中央として、その両面に、キャリア材を介在せずに、2個の基材のそれぞれ1個をガラス繊維束の延在方向が中央の基材とほぼ直交し、かつ外側の面にキャリア材が配置されるように積層し、加熱加圧することを特徴とする。本発明によれば、ガラス繊維束が交絡しない層を積層する構造で、ガラス繊維の含有量が高く、かつ中央の基材がガラス繊維の単位重量がその両面の基材よりもほぼ2倍であるとともに断面において層の厚さ方向にほぼ線対称となるようにガラス繊維束が配置されるガラス繊維プリプレグを容易に製造することができる。
【0011】
また、本発明のガラス繊維プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材を形成し、2個の基材を、ガラス繊維束の延在方向がほぼ直交し、かつ外側の面にのみキャリア材が配置されるように積層し、加熱加圧することにより作製した2個のプリプレグを、キャリア材を介在せずに、対面するガラス繊維束の延在方向がほぼ並行となり、かつ外側の面にキャリア材が配置されるように積層し、加熱加圧することを特徴とする。本発明によれば、ガラス繊維束が交絡しない層を積層する構造で、ガラス繊維の含有量が高く、断面において層の厚さ方向にほぼ線対称となるガラス繊維プリプレグを、一旦作製した2個のプリプレグを用いて容易に製造することができる。
【0012】
また、本発明のガラス繊維プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい複数の基材を形成し、複数の基材の一部は、ガラス繊維束の延在方向に沿った長い形状で、幅は基材に較べて短い10〜100mmの範囲の帯状基材片とし、1個の基材の両面に、キャリア材を介在せずに、帯状基材片を基材のガラス繊維束延在方向に互い違いになり、かつ基材のガラス繊維束と帯状基材片のガラス繊維束の延在方向がほぼ直交するように積層し、外側の面にキャリア材が配置された状態で、加熱加圧することを特徴とする。本発明によれば、ガラス繊維束が交絡しない層を積層する構造で、ガラス繊維の含有量が高く、面内における一方向には波状であるものの、全体的には反りの少ないガラス繊維プリプレグを容易に製造することができる。
【0013】
また、ガラス繊維プリプレグの製造において、ガラス繊維の単位重量が、熱硬化性樹脂の単位重量に対して、1.5倍以上、3.0倍以下である場合は、ガラス繊維含有量が60wt%以上、75wt%以下となるガラス繊維含有量の高いガラス繊維プリプレグを製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガラス繊維の含有量が高く、積層板とされた際に、寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性に優れたガラス繊維プリプレグ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜8に基づいて、本発明によるガラス繊維プリプレグ及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、ガラス繊維束について、理解を容易にするために図面での記載に合わせて、たて方向、よこ方向の用語を用いているが、特にたてとよこを区別するものではなく、ほぼ直交する2つの方向のうちで、どちらがたてであってもよこであってもよいものである。
【0016】
図4は、本実施形態の一例であるプリプレグ1の断面構成を示すものであり、製造された時点では、両面にポリエチレンフィルムや銅箔からなるキャリア材5が貼着されている。なお、キャリア材5が銅箔の場合は、プリプレグ1に貼着したまま、これを回路形成用の銅箔とすることができる。図4に示すプリプレグ1は、多数のたて方向ガラス繊維束32が紙面で左右方向に並置された1つの層と、このたて方向ガラス繊維束32とほぼ直交する方向に延在する、よこ方向ガラス繊維束31が紙面に垂直方向に並置されたもう一つの層から形成されている。これらのガラス繊維束31,32は、多数の連続ガラス繊維フィラメントを束ねたもので、製造時に層の厚さ方向に加圧されることから、つぶされた断面形状となっている。
【0017】
なお、図4を含めて図3以降の図面では、理解を容易にするために、ガラス繊維束31,32がわずかだけつぶれた形状としており、また、ガラス繊維束31,32と熱硬化性樹脂組成物4との境界も明確に表現している。しかし、実際は、加熱加圧によって、各ガラス繊維束31,32は、厚さ/幅が0.1以下の薄いものとなり、隣接するガラス繊維束31,32の境界が明確でない全体としてほぼ平らな層を形成することができる。また、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物4が各ガラス繊維束31,32の周囲に存在するとともに、各ガラス繊維束31,32に含浸しており、ガラス繊維束31,32と熱硬化性樹脂組成物4が一体となってプリプレグ1を形成している。
【0018】
ここで、各層は、ガラス繊維束31,32が交絡しない構造であることから、ガラス繊維と熱硬化性樹脂組成物の総重量に占めるガラス繊維含有量を60wt%以上とすることができ、強度、寸法安定性を高め、熱膨張係数を小さなものとすることができている。ただし、ガラス繊維含有量を極端に高くすると、熱硬化性樹脂組成物4の割合が低下し過ぎて、ガラス繊維束31,32に充分に含浸せず、いわゆるカスレ現象を生じる。そのため、ガラス繊維の含有量の上限を75wt%としている。また、ガラス繊維束31,32は直線的に配置されることから、表面平滑性とともに寸法安定性についてもさらに向上させることができる。また、各層のガラス繊維の単位重量は、40g/m以下とすることで、各層の厚さを50μm程度以下にすることができている。さらに、ガラス繊維束31の層とガラス繊維束32の層とは、ガラス繊維束の方向がほぼ直交すること以外は、各ガラス繊維束の太さ、長さ、ガラス繊維含有量等はほぼ同様であって、ガラス繊維重量がほぼ等しくされており、これによって、プリプレグ1の縦横の寸法変化をほぼ等しいものとすることができる。
【0019】
次に、図4に示すプリプレグ1の製造について説明する。図1は、シート材S上にガラス繊維束3を一方向に並置する、すなわち引き揃えるための装置の概念図である。ほぼ正方形のポリエチレンフィルム又は銅箔からなるキャリア材5の一面に熱硬化性樹脂を塗布したシート材Sを、回転ドラム6に塗布した熱硬化性樹脂層が上になるようにして取り付ける。ここで、キャリア材5の厚さは25〜100μmが好ましい。
【0020】
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の単独、または混合樹脂が用いられる。これら熱硬化性樹脂は、溶剤タイプでも、無溶剤タイプでも使用できる。エポキシ樹脂としては、従来公知のものが適宜使用できる。例えばビスフェノールAタイプのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFタイプのジグリシジルエーテル、及びこれらの臭素化エポキシ樹脂、ノボラックタイプのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ樹脂の場合には、通常、硬化剤が併用される。硬化剤としてはアミン系、酸無水物系、エポキシ系などの硬化剤を挙げることができる。アミン系の硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジシアンジアミド、4,4´−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン等が挙げられる。また、酸無水物系の硬化剤としては、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナディクメチルアンハイドライド、ドデシルコハク酸無水物等が挙げられる。さらに、エポキシ系の硬化剤としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の場合は、プリント配線板用の基材樹脂として使用されているイミド骨格を有するポリイミド樹脂が使用できる。代表的なものとして、ケルイミド601(RHONE−POULENC社製)が挙げられる。また、フェノール樹脂の場合は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、炭化水素変性フェノール樹脂、シリコーン樹脂変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂変性フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、これらの熱硬化性樹脂には、紫外線遮蔽剤や難燃化剤などの充填剤を含んでいてもよい。キャリア材5の表面に塗布する熱硬化性樹脂の量は、1〜100g/mが好ましい。また、ガラス繊維束3に含浸させる熱硬化性樹脂としては、実質的に揮発成分を含まないものとする必要があることから、必要に応じて、揮発成分を揮発させて取り除く。
【0021】
図1のとおり、回転ドラム6を回転させつつ軸方向に移動させることで、熱硬化性樹脂を塗布したキャリア材5からなるシート材Sに、ボビン7から繰り出されるガラス繊維束3をほぼ1層の状態で巻き付ける。ここで、ガラス繊維束3は、2〜70texの範囲が好ましい。また、シート材S表面におけるガラス繊維束3は、隙間なく互いに接するようにしてもよいが、後の加熱加圧工程によって、ガラス繊維束3は厚さ方向に圧着されて幅方向に広がることから、それを見込んで間隔をあけるようにしてもよい。シート材Sのほぼ全面にガラス繊維束3を巻き終えると、シート材Sの端部が接着されている部分Saにおいて、シート材Sとともにガラス繊維束3を切断する。そうすることで、図2に示すように、キャリア材5上に熱硬化性樹脂4を介して並置されたガラス繊維束3の層を得ることができる。
【0022】
次に、図2のガラス繊維束3の層の上面にも、下面側と同様に、揮発成分を含まない熱硬化性樹脂をキャリア材5に塗布したシート材Sを、熱硬化性樹脂がガラス繊維束3側になるようにして貼り付ける。次に、これを熱ローラー間に通すことで、加熱加圧して両面から圧着する。ここで、加熱温度は120〜200℃、加圧力は0.1〜3MPaが好ましい。また、装置は、熱ローラーでなくバッチ式のプレス装置であっても、連続式ローラ・ベルトであってもよい。
【0023】
図3に、このようにして形成されたガラス繊維束3と熱硬化性樹脂組成物4からなる基材2を示す。各基材2においては、ガラス繊維の重量が、熱硬化性樹脂の重量に対して、1.5倍以上、3.0倍以下とする。これによって、ガラス繊維含有量が60wt%以上、75wt%以下となるガラス繊維含有量の高い基材2とされている。これらの基材2を2個用意し、各基材2の一方の面からキャリア材5を剥がす。そして、キャリア材5を剥がした面同士が隣接し、かつガラス繊維束3がほぼ直交するように2つの基材2を積層する。このように積層したものを熱ローラー、バッチ式プレス装置、連続式ローラ・ベルト等の装置によって加熱加圧する。加熱加圧の条件は、上記の基材2の作製時とほぼ同様である。このようにして、図4に示すように、それぞれが1層のガラス繊維束31,32からなる2つの基材2が一体となったプリプレグ1が形成される。
【0024】
次に、他の例として、図6に示すように、中央に同方向に延在するほぼ2層状のよこ方向ガラス繊維束31が配置され、その両面にほぼ直交する1層のたて方向ガラス繊維束32が配置されるプリプレグ1について説明する。この例では、各ガラス繊維束31,32の太さはほぼ同じであることから、中央に位置するよこ方向ガラス繊維束の2層状の基材のガラス繊維の単位重量は、両面に位置するそれぞれのたて方向ガラス繊維束の基材のほぼ2倍とされている。図6のプリプレグ1においても、図4のプリプレグ1について述べたと同様の特徴を備えるが、さらに、中心線Cを中心として層の厚さ方向において、ほぼ線対称であることから、反り捻れを抑制したものとすることができる。
【0025】
図6のプリプレグ1の製造方法は、次のとおりである。図1〜図3によって説明したと同様にして基板2を作製する際に、ガラス繊維束3をシート材S上にほぼ2層に巻き付けることで、図5に示すようなガラス繊維束3がほぼ2層状の基材2を作製する。また、図3の1層からなる基材2を2枚用意する。そして、図3の基材2の一方の面のキャリア材5を剥がす。次に図5の2層状の基材2の両面のキャリア材5を順次剥がして、1層からなる基材2のキャリア材5を剥がした面同士が隣接し、かつガラス繊維束3がほぼ直交するように、2層状の基材2の両面に1層からなる基材2を積層する。このようにキャリア材5が両面側に配置されて積層したものを熱ローラー、バッチ式プレス装置、連続式ローラ・ベルト等の装置によって加熱加圧することは前記の図4のプリプレグの場合と同じである。このようにして得られた図6に示すプリプレグ1は、前記のとおりであり、中央部にほぼ2層状のガラス繊維束31が形成されているが、製造方法の説明から分かるとおり、この部分は、1つの基材として製作されており、上下の基材の層に対してほぼ2倍のガラス繊維束を有する1層のものからなっているといえる。したがって、これは中央部がほぼ2倍のガラス繊維単位重量の3層構造といえるものである。
【0026】
また、同様に、中央部がほぼ2倍のガラス繊維単位重量の3層構造のプリプレグ1の他の例を図7に示す。このプリプレグ1においては、中央部に位置する層のよこ方向ガラス繊維束31の太さが、両面の層のたて方向ガラス繊維束32の太さのほぼ2倍とされている。このプリプレグ1も、図6に示したものと同じく、中心線Cを中心として層の厚さ方向において、ほぼ線対称であることから、反り捻れを抑制したものとすることができる。
【0027】
図7のプリプレグ1の製造方法は、次のとおりである。図1〜図3によって説明したと同様にして基板2を作製する際に、中央部に位置する層の基材2については、両側に位置する層の2個の基材2の場合に対して、相対的にほぼ2倍の太さのガラス繊維束3をシート材S上に巻き付けて基材2を作製すればよい。その後、中央部に位置すべき基材2の両面のキャリア材5を順次剥がして、両側に位置すべき相対的に小さな太さのガラス繊維束の基材2のキャリア材5を剥がし、ガラス繊維束3がほぼ直交するように積層する。このようにキャリア材5が両面側に配置されて積層したものを熱ローラー、バッチ式プレス装置、連続式ローラ・ベルト等の装置によって加熱加圧することは前記の場合と同じである。
【0028】
なお、図6,7で説明した製造において、中央部の基材2の一方の面のみキャリア材5を剥がして、その面に両側に位置すべき1個の基材2を積層して、一旦加熱加圧を行った後に、中央部の基材2の他方の面のキャリア材5を剥がし、その面に他の1個の基材2を積層して、再度加熱加圧してプリプレグ1を製造してもよい。
【0029】
さらに、他の例として、断面構造は図6と同様であるが、製造方法の異なるプリプレグ1について説明する。図4で説明した2層からなるプリプレグ1を2枚用意する。次にそれぞれ一方の面のキャリア材5を剥がして、剥がした面同士が隣接し、かつ隣接するガラス繊維束3が同じ延在方向となるように、2つの2層からなるプリプレグを積層する。そして、このようにキャリア材5が両面側に配置されて積層したものを、さらに熱ローラー、バッチ式プレス装置、連続式ローラ・ベルト等の装置によって加熱加圧して図6に示すようなプリプレグを製造する。この場合、一旦製造されたプリプレグをさらに積層して加熱加圧して、1つのプリプレグ1とすることから、2段階式の製造方法であるといえ、表面平滑性、寸法安定性、熱膨張係数の抑制がさらに優れたものとなっている。
【0030】
さらに、他の例として、図8に示すプリプレグ1について説明する。中央部に配置されるたて方向ガラス繊維束32の層は、プリプレグ1の全面に渡っているが、その両面側に配置されるよこ方向ガラス繊維束31の層は、帯状の細長い形状の帯状基材片となっていて、一方の側がAの箇所に配置されると、他方の側はそれと互い違いにBの箇所に配置されている。このようなプリプレグ1は、紙面の左右方向には波打ったものとなるが、全体的には反りが防止されてものとなっている。この帯状基材片の幅A,Bは、10〜100mmが好ましい。10mm未満では、作業性が低下するとともに、極端に狭くなると表面平滑性も低下する。また、100mmを越えると、反り捻れを十分に抑制できない。そして、A,Bの寸法によっては、AとBの箇所にまたがらずに、1つの箇所から、回路用の基板材料を採取することも可能である。
【0031】
図8のプリプレグ1の製造方法を説明する。図3に示す基材2を、ガラス繊維束3の方向に沿って帯状に切断して、複数のよこ方向ガラス繊維束31の帯状基材片を得る。そして、図3のとおりの切断していない全面状の他の基材2の両面のキャリア材5を剥がして、同じくキャリア材5を剥がした前記帯状基材片を、ガラス繊維束の延在方向がほぼ直交するように、両面に互い違いに積層する。この積層したものの両面に新たな全面のキャリア材5を配設し、熱ローラー、バッチ式プレス装置、連続式ローラ・ベルト等の装置によって加熱加圧して、プリプレグ1を製造する。
【0032】
前記の各製造方法において、1層からなる基材2は、必要であれば、ガラス繊維フィラメントの厚さに相当する程度までも、薄い基材2として作製することが可能である。したがって、このような基材2を積層した本実施形態の各プリプレグ1は、そのような限界的な薄さの層数倍した程度の薄さにまで製造することができ、かつ、上記のとおりの積層構造によって、積層板とした際に、寸法安定性、熱膨張係数の抑制、表面平滑性、反り捻れの抑制に優れたガラス繊維プリプレグとすることができる。
【0033】
また、本実施形態の各プリプレグ1を製造する場合に、熱硬化性樹脂を塗布したシート材S上に、ガラス繊維束3を引き揃えて基材2を作製したが、多数のガラス繊維束3を細い糸で絡み織りすることで、ほぼ直線状のガラス繊維束3の層を形成し、その後、その両面に熱硬化性樹脂を塗布したキャリア材5を配設してもよい。
【実施例1】
【0034】
本発明の以下の実施例及び従来技術である比較例のプリプレグについて、積層板とした際の、表面平滑性、寸法安定性、熱膨張係数、反り捻れについて測定した結果は、表1のとおりであり、各実施例では、比較例に対して良好な結果を示している。
【表1】


(1)実施例1
図4に示すプリプレグ1を前記のとおりの方法により製造した。その際の条件は次のとおりである。
キャリア材5:厚さ38μmのポリエチレンフィルム。
熱硬化性樹脂:品種エポキシ樹脂(G−10)、(エピコート1001(油化シェルエポキシ(株)製)80部、エピコート154(油化シェルエポキシ(株)製)20部、ジシアンジアミド4部、ベンジルジメチルアミン0.2部、ジメチルホルムアミド30部)。
1つの基材を形成するガラス繊維束3:5μm径のガラス繊維フィラメントを集束数200本としたガラス繊維束をピッチ0.5mmで引き揃えた。
ガラス繊維含有量:70wt%
加熱加圧条件:熱ローラーを使用。圧力1MPa、温度170℃、送り速度1m/分
(2)実施例2
図7に示すプリプレグ1を3層構造の製造法として記載したとおりの方法により製造した。なお、この際、中央部のガラス繊維束の層は実施例1と同じであり、両側の層の基材は、集束数を100本としたこと以外は、実施例1の前記条件と同じである。
(3)実施例3
図6に示すプリプレグ1を2段階式の製造方法として記載したとおりの方法により製造した。条件は実施例1の前記条件と同じである。
(4)実施例4
図8に示すプリプレグ1を前記のとおりの方法により製造した。条件は実施例1の前記条件と同じである。
(5)比較例
単位重量が各実施例とほぼ同じとなる平織のガラス繊維クロスであるWEA05E(日東紡製)(ガラス繊維フィラメント径:5μm、集束数:200本、打ち込み本数:経60本/25mm、緯46本/25mm、厚さ:50μm、単位重量48g/m)により、ガラス含有量55wt%のプリプレグを製造した。キャリア材、熱硬化性樹脂、加熱加圧条件は、各実施例と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態のプリプレグを製造するための引き揃え装置の概念図である。
【図2】本発明の実施形態のプリプレグを製造する際のガラス繊維束が引き揃えられた斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のプリプレグを製造する際の基材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態のプリプレグの一例の断面図である。
【図5】本発明の実施形態のプリプレグを製造する際の他の基材の断面図である。
【図6】本発明の実施形態のプリプレグの他の例の断面図である。
【図7】本発明の実施形態のプリプレグのさらに他の例の断面図である。
【図8】本発明の実施形態のプリプレグのさらに他の例の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1‥プリプレグ、2‥基材、3‥ガラス繊維束、31‥よこ方向ガラス繊維束、32‥たて方向ガラス繊維束、4‥熱硬化性樹脂組成物、5‥キャリア材、6‥回転ドラム、7‥ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を補強材とするプリプレグであって、
そのうちのガラス繊維含有量が60wt%以上、75wt%以下であり、
ガラス繊維束が一方向に並行に延在する層と、ガラス繊維束が前記一方向とほぼ直交する他の一方向に延在する層との、少なくとも2層からなり、
前記各層のガラス繊維の単位重量は40g/m以下であることを特徴とするガラス繊維プリプレグ。
【請求項2】
ガラス繊維束が前記一方向に並行に延在する層のガラス繊維の単位重量と、ガラス繊維束が前記他の一方向に延在する層のガラス繊維の単位重量とがほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維プリプレグ。
【請求項3】
断面において、前記層の厚さ方向にほぼ線対称となるように、前記ガラス繊維束が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のガラス繊維プリプレグ。
【請求項4】
前記各層における前記ガラス繊維束の厚さ/幅が、0.1以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス繊維プリプレグ。
【請求項5】
熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材を形成し、
前記2個の基材を、前記ガラス繊維束の延在方向がほぼ直交し、かつ外側の面にのみキャリア材が配置されるように積層し、
加熱加圧することを特徴とするガラス繊維プリプレグの製造方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材、及びガラス繊維の単位重量がそのほぼ2倍である1個の基材を形成し、
前記ガラス繊維の単位重量がほぼ2倍である1個の基材を中央として、その両面に、キャリア材を介在せずに、前記2個の基材のそれぞれ1個をガラス繊維束の延在方向が前記中央の基材とほぼ直交し、かつ外側の面にキャリア材が配置されるように積層し、
加熱加圧することを特徴とするガラス繊維プリプレグの製造方法。
【請求項7】
熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい2個の基材を形成し、
前記2個の基材を、前記ガラス繊維束の延在方向がほぼ直交し、かつ外側の面にのみキャリア材が配置されるように積層し、
加熱加圧することにより作製した2個のプリプレグを、
キャリア材を介在せずに、対面する前記ガラス繊維束の延在方向がほぼ並行となり、かつ外側の面にキャリア材が配置されるように積層し、
加熱加圧することを特徴とするガラス繊維プリプレグの製造方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂を表面に塗布したキャリア材の当該表面上に、ガラス繊維束を一方向に並行に延在するように配置して、ガラス繊維の単位重量がほぼ等しい複数の基材を形成し、
前記複数の基材の一部は、前記ガラス繊維束の延在方向に沿った長い形状で、幅は前記基材に較べて短い10〜100mmの範囲の帯状基材片とし、
1個の前記基材の両面に、キャリア材を介在せずに、前記帯状基材片を前記基材のガラス繊維束延在方向に互い違いになり、かつ前記基材のガラス繊維束と前記帯状基材片のガラス繊維束の延在方向がほぼ直交するように積層し、
外側の面にキャリア材が配置された状態で、加熱加圧することを特徴とするガラス繊維プリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記ガラス繊維の単位重量が、前記熱硬化性樹脂の単位重量に対して、1.5倍以上、3.0倍以下であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のガラス繊維プリプレグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−262209(P2007−262209A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87955(P2006−87955)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】