説明

ガンの療法

本発明は、ロミデプシンを利用して、Bcl-2+ガン及びBcl-XL-ガンなどのガン並びに他の新生物を治療するための療法を提供する。本発明は、とりわけ、リンパ腫、例えば、Bcl-2発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴付けられるリンパ腫を、ロミデプシンにより治療する方法を提供する。いくつかの実施態様において、リンパ腫は皮膚T細胞リンパ腫である。いくつかの実施態様において、リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫である。ロミデプシンは、0.5mg/m2からおよそ28mg/m2(例えば、1mg/m2から15mg/m2、4mg/m2から15mg/m2、8mg/m2から14mg/m2、又は4mg/m2からおよそ10mg/m2)の範囲の用量で投与できる。ロミデプシンは、細胞毒性剤、ステロイド剤、プロテアソーム阻害剤、又はキナーゼ阻害剤などの第2の薬剤とともに投与できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
ロミデプシンは、藤沢薬品工業によりクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)から単離された天然物である。引用により本明細書に組み込まれる特公平7(1995)-64872号;1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号を参照されたい。それは、4つのアミノ酸残基(D-バリン、D-システイン、デヒドロブチリン、及びL-バリン)及び新規な酸(3-ヒドロキシ-7-メルカプト-4-ヘプテン酸)からなる二環式ペプチドである。ロミデプシンは、アミド結合とエステル結合の両方を含むデプシペプチドである。C. violaceumからの発酵に加え、ロミデプシンは、合成手段又は半合成手段によっても調製できる。Kahnらにより報告されたロミデプシンの全合成は14工程を含み、全収率18%でロミデプシンを生み出す。J. Am. Chem. Soc. 118:7237-7238, 1996。ロミデプシンの構造は以下に示されている。
【化1】

ロミデプシンは、抗菌活性、免疫抑制活性、及び抗腫瘍活性があることが示されている。それは、抗ガン療法の開発の見込みある新しい標的であるデアセチラーゼ(例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、チューブリンデアセチラーゼ(TDAC))を選択的に阻害することにより作用すると考えられる。Nakajimaらの文献Experimental Cell Res. 241:126-133, 1998。一作用機構は、1種以上のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害を含むと考えられている。
【0002】
ヒストンデアセチラーゼは、その活性部位中に亜鉛を有する金属脱アセチル化酵素である。Finninらの文献Nature, 401:188-193, 1999。この酵素は、ヒストンのアセチル化を促進し、それによりクロマチンの緩和を引き起こし、例外もあるが一般的には、転写活性化を引き起こすことにより遺伝子発現を調節すると考えられている。これらの酵素はHDACとして知られているが、種々の他の細胞プロセスにも関係している。例えば、HDAC阻害剤は、とりわけ、細胞死受容体の発現上昇、Bid切断、ROS産生、Hsp90調節不全、及びセラミド産生を含む多様な機構により腫瘍細胞中のアポトーシスを引き起こすことが見いだされている。数種のHDAC阻害剤が臨床段階に入り、血液悪性腫瘍と非血液悪性腫瘍の両方に活性を示している。ロミデプシンは特定の血液悪性腫瘍、特にT細胞リンパ腫に高い活性を示している(Piekarzらの論文「臨床試験におけるデプシペプチド及び他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の総説(A review of depsipiptide and other hystone deacetylase inhibitors in clinical trials)」Curr. Pharm. Des. 10:2289-98, 2004;引用により本明細書に組み込まれる)。
【0003】
ロミデプシンに加え、種々の誘導体が調製され試験されている。以下の特許及び特許出願はロミデプシンの種々の誘導体を記載している:米国特許第6,548,479号;国際公開第05/0209134号;国際公開第05/058298号;及び国際公開第06/129105号;それぞれ引用により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0004】
HDAC阻害剤であるロミデプシンが、抗アポトーシス因子、Bcl-2を発現するガン細胞のアポトーシスを誘起するのに効果的であることが発見された。本発明は、Bcl-2発現並びにBcl-XL及びP糖タンパク質などの他の因子の発現を評価する新規な方法、ロミデプシンによりガンを治療する新規な方法、並びに治療の対象を特定する新規な方法を提供する。したがって、特定の因子の発現に基づいて、ロミデプシンによりガン(例えば、リンパ腫)を治療する方法が本明細書に開示される。本発明は、ロミデプシンの投与により、特定の因子を発現する細胞を治療する方法(例えば、インビトロ法)も提供する。これらの方法は、リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫)など、Bcl-2を過剰発現するガンのアポトーシスを誘起するのにロミデプシンが効果的であり、ロミデプシンがインビボで投与される場合そのようなガンの治療に治療上の利益を与えるという認識から生じている。ロミデプシン治療は、Bcl-XLもP糖タンパク質も過剰発現しないBcl-2+ガンの治療に特に有益になりうる。
【0005】
一態様において、本発明は、Bcl-2を発現するリンパ腫(例えば、Bcl-2を過剰発現するリンパ腫)を有すると特定された対象(例えば、ヒト)を提供すること、及び該対象に治療上有効な量のロミデプシンを投与することにより、対象のリンパ腫を治療する方法を提供する。いくつかの実施態様において、リンパ腫の細胞におけるBcl-2の発現は、リンパ腫と同じ細胞種の正常な非ガン性細胞におけるBcl-2の発現より少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、又は500%高い。特定の実施態様において、該方法は、対象をBcl-2を発現するリンパ腫を有すると特定する工程を含む。例えば、該方法は、リンパ腫の細胞におけるBcl-2発現の測定を含むことがある。いくつかの実施態様において、Bcl-2発現(例えば、Bcl-2ポリペプチド発現及び/又はBcl-2 mRNA発現)は、リンパ腫から得た試料においてインビトロで測定される。Bcl-2発現は、例えば、PCR(例えば、RT-PCR、定量的RT-PCR)、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)、マイクロアレイ分析、ノーザンブロット、免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、FACS、免疫組織化学)、及び他の方法により測定可能である。いくつかの実施態様において、リンパ腫の細胞は、Bcl-2過剰発現を起こすBcl-2遺伝子の染色体転座を有する。いくつかの実施態様において、リンパ腫の細胞はBcl-2遺伝子の染色体転座を有さない(例えば、細胞におけるBcl-2過剰発現は、Bcl-2転座以外の機構による)。いくつかの実施態様において、該対象は、Bcl-2を発現していないリンパ腫を有する対象に投与される投与量より高い投与量のロミデプシンを投与される。
【0006】
いくつかの実施態様において、リンパ腫はBcl-XLを過剰発現していない。いくつかの実施態様において、リンパ腫はBcl-XLを発現していない。特定の実施態様において、リンパ腫はBcl-2を過剰発現しているが、Bcl-XLを過剰発現していない。いくつかの実施態様において、リンパ腫の細胞において、Bcl-2の発現はBcl-XLの発現以上である(例えば、Bcl-2の発現は、Bcl-XLの発現より少なくとも25%、50%、100%、150%、又は200%高い)。該方法は、リンパ腫の細胞におけるBcl-XL発現の測定を含むことがある(例えば、Bcl-XLポリペプチド及び/又はmRNA発現が、リンパ腫から得た試料においてインビトロで測定される)。Bcl-XL発現は、例えば、PCR(例えば、RT-PCR、定量的RT-PCR)、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)、マイクロアレイ分析、ノーザンブロット、免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、FACS、免疫組織化学)、及び他の方法により測定可能である。
【0007】
いくつかの実施態様において、リンパ腫はP糖タンパク質を過剰発現しない。該方法は、リンパ腫の細胞におけるP糖タンパク質発現の測定を含むことがある。
【0008】
いくつかの実施態様において、リンパ腫はT細胞リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)又は末梢性T細胞リンパ腫(PTCL))である。いくつかの実施態様において、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。他の実施態様において、リンパ腫はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施態様において、リンパ腫は、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、又はバーキットリンパ腫である。
【0009】
いくつかの実施態様において、リンパ腫は難治性リンパ腫(例えば、化学療法に不応のリンパ腫)である。いくつかの実施態様において、リンパ腫は再発性リンパ腫である。いくつかの実施態様において、リンパ腫はステロイド抵抗性のリンパ腫である。
【0010】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、およそ0.5mg/m2からおよそ28mg/m2(例えば、およそ4mg/m2からおよそ10mg/m2)の範囲の用量で投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは静脈内に投与される。ロミデプシンは、隔月に、毎月、3週ごとに、隔週に、毎週、週に2回、毎日、又は変動可能な間隔で投与できる。
【0011】
いくつかの実施態様において、該方法は、Bcl-XL発現又は活性の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオシドアナログ、有糸分裂阻害剤、細胞毒性剤、又はステロイド剤などの第2の抗新生物剤の投与をさらに含む。該第2の抗新生物剤は、ロミデプシンの投与と共に、前に、又は後に投与できる。
【0012】
他の態様において、本発明は、インビトロでBcl-2発現リンパ腫細胞を治療する方法を特徴とする。該方法は、Bcl-2を発現していると特定されたリンパ腫の細胞(例えば、Bcl-2を過剰発現している細胞)の提供及び該細胞へのロミデプシンの投与を含む。いくつかの実施態様において、ロミデプシンは、細胞を殺傷するに十分な濃度及び期間、細胞に投与される。いくつかの実施態様において、該方法は、ロミデプシンの投与前の、細胞におけるBcl-2発現(例えば、Bcl-2ポリペプチド発現及び/又はBcl-2 mRNA発現)の測定を含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、細胞はBcl-XLを過剰発現していない。いくつかの実施態様において、細胞はBcl-XLを発現していない。いくつかの実施態様において、細胞におけるBcl-2の発現はBcl-XLの発現以上である(例えば、Bcl-2の発現はBcl-XLの発現より少なくとも25%、50%、100%、150%、又は200%高い)。該方法は細胞におけるBcl-XL発現(例えば、Bcl-XLポリペプチド発現及び/又はBcl-XL mRNA発現)の測定を含むことがある。
【0014】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンは少なくとも24時間(例えば、少なくとも72時間)投与される。いくつかの実施態様において、ロミデプシンは少なくとも1nmol/L(例えば、少なくとも3nmol/L)の濃度で投与される。
【0015】
他の態様において、本発明は、リンパ腫を有する対象からの試料の提供及びリンパ腫の細胞におけるBcl-2発現の測定により、ロミデプシンによる治療の候補を特定する方法であって、リンパ腫の細胞におけるBcl-2の発現(例えば、Bcl-2の過剰発現)が、該対象がロミデプシンによる治療の候補であることを示す方法を特徴とする。
【0016】
他の態様において、本発明は、リンパ腫を有する対象からの試料の提供及びリンパ腫の細胞におけるBcl-2及びBcl-XLの発現の測定により、ロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者を特定する方法であって、リンパ腫の細胞におけるBcl-XLの発現以上であるBcl-2の発現が、該対象がロミデプシンによる治療の候補であることを示す方法を特徴とする。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、リンパ腫を有する対象からの試料の提供及びリンパ腫の細胞におけるBcl-XL発現の測定により、ロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者を特定する方法であって、リンパ腫の細胞におけるBcl-XLの過剰発現の欠如が、該対象がロミデプシンによる治療の候補であることを示す方法を特徴とする。
【0018】
他の態様において、本発明は、Bcl-XLの発現がないリンパ腫を有すると特定された対象の提供及び該対象への治療上有効な量のロミデプシンの投与による、対象のリンパ腫を治療する方法を特徴とする。上述の方法は、抗アポトーシス因子、Bcl-2を発現(例えば、過剰発現)しているガン細胞のアポトーシスの誘起にロミデプシンが効果的であるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づく。ロミデプシンがBcl-2の抗アポトーシス効果を克服するという発見は、この薬剤が他の抗アポトーシス因子又はアポトーシス促進因子の発現の調節が不全である細胞のアポトーシスを誘起するのに使用できることを示す。従って、特定の態様において、本発明は、抗アポトーシス因子の過剰発現及び/又はアポトーシス促進因子の過少発現により特徴づけられるリンパ腫を治療する方法であって、該抗アポトーシス因子及びアポトーシス促進因子がBclファミリー又はBcl経路のメンバーである方法を特徴とする。Bclファミリーのメンバーである抗アポトーシス因子には、例えば、Bcl-W、Mcl-1、Bfl-1/A1、BOO/DIVA、及びNRH/NR-13がある。Bclファミリーのメンバーであるアポトーシス促進因子には、例えば、Bax、Bak、及びBok/Mtdなどのマルチドメインアポトーシス促進因子並びにBid、Bad、Bik、Blk、Bmf、Bnip3、Hrk、Nix、Noxa、Puma、及びSpikeなどのBH3ドメインのみの因子がある。これらのアポトーシス促進因子及び抗アポトーシス因子は、例えば、Walenskyの文献Cell Death Different. 13:1339-1350, 2006;Aouacheriaらの文献Oncogene 20(41):5846-55, 2001;及びZamzamiらの文献Oncogene 16: 2265-2282, 1998に記載されている。これらの因子の発現は、本明細書に記載される任意の方法により測定できる。
【0019】
該方法は、例えば、Bcl-W、Mcl-1、Bfl-1/A1、BOO/DIVA、及びNRH/NR-13から選択される1種以上のBclファミリー抗アポトーシス因子を発現するリンパ腫(例えば、1種以上の抗アポトーシス因子を過剰発現するリンパ腫)を有すると特定された対象の提供及び該対象への治療上有効な量のロミデプシン投与を含むことがある。該抗アポトーシス因子はBcl-XL以外の因子である。いくつかの実施態様において、該方法は、対象を、抗アポトーシス因子を発現するリンパ腫を有すると特定する工程を含む。該方法は、リンパ腫の細胞における抗アポトーシス因子の発現の測定を含むことがある。いくつかの実施態様において、該リンパ腫は、Bcl-2並びにBcl-W、Mcl-1、Bfl-1/A1、BOO/DIVA、及びNRH/NR-13から選択される1種以上の抗アポトーシス因子を発現している。
【0020】
該方法は、Bax、Bak、及びBok/Mtd、Bid、Bad、Bik、Blk、Bmf、Bnip3、Hrk、Nix、Noxa、Puma、及びSpikeから選択される1種以上のBclファミリーアポトーシス促進因子を過少発現する(例えば、検出可能な発現がない)リンパ腫を有すると特定された対象の提供並びに該対象への治療上有効な量のロミデプシンの投与を含むことがある。いくつかの実施態様において、該方法は、対象を、アポトーシス促進因子を過少発現するリンパ腫を有すると特定する工程を含む。該方法は、リンパ腫の細胞におけるアポトーシス促進因子の発現の測定を含むことがある。いくつかの実施態様において、該リンパ腫はBcl-2を発現し、Bax、Bak、及びBok/Mtd、Bid、Bad、Bik、Blk、Bmf、Bnip3、Hrk、Nix、Noxa、Puma、及びSpikeから選択される1種以上のアポトーシス促進因子を過少発現している。
【0021】
(定義)
本明細書に使用される他の用語の定義は以下のとおりである。
【0022】
本明細書及び添付の請求項では、単数形「1つの(a, an)」及び「該、前記(the)」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数形も含む。したがって、例えば「細胞(a cell)」への言及は複数のそのような細胞を含む。
【0023】
「動物」:本明細書では、「動物」という用語は動物界の任意の構成員を意味する。いくつかの実施態様において、「動物」は、任意の成長段階にあるヒトを意味する。いくつかの実施態様において、「動物」は、任意の成長段階にあるヒトでない動物を意味する。いくつかの実施態様において、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び/又は虫があるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、ヒトでない動物は哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。いくつかの実施態様において、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子組換え動物、及び/又はクローンのことがある。
【0024】
「Bcl-2」:本明細書では、B細胞リンパ腫-2としても知られる「Bcl-2」という用語は、Bcl-2ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。Bcl-2ポリペプチドは、アポトーシスを阻害するマルチドメイン内在性ミトコンドリア外膜タンパク質である。ヒトのBcl-2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、受託番号NM_000633.2及びNM_000657.2でGenBankに見いだされる。例示的なヒトのBcl-2ポリペプチド配列は、受託番号NP_000624.2、NP_000648.2、及びABX60202.1に見いだされる。ヒトのBcl-2遺伝子配列を含むゲノム配列は受託番号NC_000018.8に見いだされる。本明細書では、「Bcl-2」は、ヒト及びヒト以外の形態のBcl-2を含む。ヒト以外のBcl-2遺伝子及びポリペプチドの配列は公知である。例えば、ネズミ及びラットのBcl-2ポリペプチド配列は、それぞれ受託番号NP_033871.2及びNP_058689.1で見いだされる。上記のGenBankデータベース配列エントリは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0025】
GenBank受託番号NP_000624.2で見いだされる、ヒトBcl-2ポリペプチドのアミノ酸配列は以下のとおりである。
【化2】

【0026】
受託番号NM_000633.2でGenBankに見いだされる、ヒトBcl-2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は以下のとおりである。
【化3】



【0027】
「Bcl-XL」:本明細書では、Bcl-2-様1及びBcl-2関連タンパク質(長いアイソフォーム)としても知られる、「Bcl-XL」という用語は、Bcl-XLポリペプチド又は該ポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。Bcl-XLポリペプチドは、アポトーシスを阻害するマルチドメイン内在性ミトコンドリア外膜タンパク質である。ヒトのBcl-XLポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、受託番号NM_138578.1でGenBankに見いだされる。例示的なヒトのBcl-XLポリペプチド配列は受託番号NP_612815.1で見いだされる。ヒトのBcl-XL遺伝子配列を含むゲノム配列は受託番号NC 000020.9で見いだされる。本明細書では、「Bcl-XL」は、ヒト及びヒト以外の形態のBcl-XLを含む。ヒト以外のBcl-XL遺伝子及びポリペプチドの配列は公知である。例えば、ネズミ及びラットのBcl-XLポリペプチド配列は、それぞれ受託番号NP_033873.3及びNP_001028842.1に見いだされる。上記のGenBankデータベース配列エントリは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0028】
GenBank受託番号NP_612815.1で見いだされる、ヒトのBcl-XLポリペプチドのアミノ酸配列は以下のとおりである。
【化4】

【0029】
受託番号NM_138578.1でGenBankに見いだされる、ヒトのBcl-XLポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は以下のとおりである。
【化5】

【0030】
「デプシペプチド」:本明細書での「デプシペプチド」という用語は、エステル結合及びアミド結合の両方を含むポリペプチドを意味する。天然のデプシペプチドは通常環式である。数種のデプシペプチドは、強力な抗生物質活性を有することが示されている。デプシペプチドの例には、アクチノマイシン、エンニアチン、バリノマイシン、及びロミデプシンがある。
【0031】
「有効な量」:一般的に、活性薬剤又は複数の薬剤の組み合わせの「有効な量」は、所望の生物学的反応を惹起するに十分な量を意味する。当業者に理解されるとおり、薬剤の有効な量は、望まれる生物学的エンドポイント、送達される薬剤の薬物動態学、治療される疾病、投与の様式、及び患者などの因子により変動しうる。例えば、薬剤(例えば、ロミデプシン)の有効な量は、腫瘍量を低減させ、寛解を起こし、又は患者を治癒する量である。
【0032】
「発現」:本明細書では、「発現する」及び「発現」という用語は遺伝子発現を意味し、核酸(例えば、mRNA)の発現及びポリペプチドの発現を含む。したがって、「Bcl-2発現」は、Bcl-2 mRNAの発現及び/又はBcl-2ポリペプチドの発現の評価により測定できる。
【0033】
「過剰発現」:本明細書では、遺伝子を「過剰発現する」ガン細胞は、該遺伝子の発現が、非ガン性の細胞、例えば同じ組織種の非ガン性細胞に比べて著しく高いことを示す。ある集団のガン細胞は、非ガン性の細胞(例えば、同じ組織種の非ガン性細胞)に比べて、該遺伝子の発現が著しく高い場合、及び/又は該遺伝子を発現する細胞のパーセンテージが著しく高い(少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、又は500%高い)場合に遺伝子を「過剰発現している」。過剰発現は、ガン細胞における発現を基準と比較して測定できる。いくつかの実施態様において、基準は、非ガン性細胞(例えば、同じ組織種の非ガン性細胞)における該遺伝子の発現である。いくつかの実施態様において、基準は、ガン細胞における異なる遺伝子の発現である。いくつかの実施態様において、基準は、細胞系(例えば、発現を欠く、又は遺伝子を過剰発現すると知られている細胞系)における遺伝子の発現である。過剰発現は、遺伝子増幅によっても、遺伝子の転写又は翻訳の増加によっても起こりうる。過剰発現は、細胞内の、細胞により分泌される、又は細胞表面に発現される(該当する場合)ポリペプチドを評価するアッセイ(例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、又はFACS、例えば、細胞内FACS染色)又はmRNAなどの核酸を評価するアッセイ(例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、又はQTPCRなどPCR系の方法)により測定できる。
【0034】
「P糖タンパク質」:本明細書では、「P糖タンパク質」(P-gp、Gp 170、ATP結合カセット、サブファミリーB、メンバー1、及びABCB1としても知られる)は、ATP結合カセットトランスポーターであり、大きい膜貫通型タンパク質である。ヒトのP糖タンパク質はMDR1遺伝子によりコードされている。P糖タンパク質の発現は、MDR1核酸の発現の評価によっても、P糖タンパク質ポリペプチドの発現の評価によっても測定できる。GenBank受託番号NP_000918.2で見いだされる、ヒトP糖タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列は以下のとおりである。
【化6】

【0035】
GenBank受託番号NM 000927.3に見いだされる、ヒトのP糖タンパク質ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は以下のとおりである。
【化7】


【0036】
「ペプチド」又は「タンパク質」又は「ポリペプチド」:本発明によると、「ペプチド」又は「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合した少なくとも3つのアミノ酸の鎖を含む。「タンパク質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」という用語は交換可能に使用できる。ペプチドが天然のアミノ酸のみを含むことが好ましいが、当分野に公知である非天然のアミノ酸(例えば、天然には存在しないが、ポリペプチド鎖に組み込むことのできる化合物)及び/又はアミノ酸アナログもその代わりに使用できる。また、ペプチド中の1種以上のアミノ酸を、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合のためのリンカーなどの化学成分の付加、官能化、又は他の修飾などにより修飾できる。特定の実施態様において、ペプチドを修飾すると、より安定なペプチド(例えば、インビボでの半減期の増大)になる。このような修飾には、ペプチドの環化、D-アミノ酸の組み込みなどがある。修飾はいずれも、ペプチドの望まれる生物活性に実質的に干渉してはいけない。特定の実施態様において、ペプチドはデプシペプチドを意味する。
【0037】
「ロミデプシン」:「ロミデプシン」という用語は、以下の化学構造の天然物を意味する。
【化8】

【0038】
ロミデプシンはデアセチラーゼ阻害剤であり、FK228、FR901228、NSC630176、又はデプシペプチドという名前でも当分野に知られている。ロミデプシンの同定及び調製は、1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号に記載されており、これを引用により本明細書に組み込む。分子式はC24H36N4O6S2であり、分子量は540.71g/molである。ロミデプシンは化学名が(1S,4S,10S,16E,21R)-7-[(2Z)-エチリデン]-4,21-ジイソプロピル-2-オキサ-12,13-ジチア-5,8,20,23-テトラアザビシクロ[8.7.6]トリコス-16-エン-3,6,9,19,22-ペンタノンである。ロミデプシンにはCAS番号128517-07-7が割り当てられている。結晶形では、ロミデプシンは、典型的には白色から淡黄白色の結晶又は結晶性粉体である。「ロミデプシン」という用語はこの化合物及びその医薬としての任意の形態を包含する。特定の実施態様において、「ロミデプシン」という用語は、その塩、プロドラッグ、エステル、保護された形態、還元された形態、酸化された形態、異性体、立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)、互変異性体、及び誘導体も含む。
【0039】
「試料」:試料とは、対象から得られた試料を意味する。試料は、任意の生体組織又は体液由来でよい。いくつかの実施態様において、試料は、ヒト、例えば患者、例えばガン患者から由来する。試料には、組織、組織の切片、細胞、体液、又はその抽出物があり、任意の手段により(例えば、血液、血清、生検材料、リンパ節生検、骨髄生検、針生検、吸引などから)単離することができる。
【0040】
「治療する」:「治療する」又は「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を意味し、その目的はガン又はガンの症状の予防、減速(低減)、又は緩和である。いくつかの実施態様において、治療上有効な量の薬剤(例えば、ロミデプシン)を服用した後、対象が、下記の1つ以上の観察可能及び/又は測定可能な低減又は欠如を示す場合に、対象のガンの「治療」は成功している:ガン細胞数の低減(例えば、アポトーシスによる)又はガン細胞の欠如:腫瘍サイズの低減;周囲の器官又は組織へのガン細胞の浸潤の阻害;腫瘍転移の阻害;腫瘍成長のある程度の阻害;及び/又は特定のガンに関連する1つ以上の症状のある程度の軽減;並びに罹患率及び死亡率の低減。
【0041】
「過少発現」:本明細書では、ある遺伝子を「過少発現」しているガン細胞は、該遺伝子の発現が、非ガン性細胞、例えば同じ組織種の非ガン性細胞に比べて著しく低いことを示す。ある集団のガン細胞は、非ガン性の細胞(例えば、同じ組織種の非ガン性細胞)に比べて、該遺伝子の発現が著しく低い場合、及び/又は該遺伝子を発現する細胞のパーセンテージが著しく低い(例えば、2分の1、3分の1、4分の1、又は5分の1)場合に遺伝子を「過少発現している」。過少発現は、ガン細胞における発現を基準と比較して測定できる。いくつかの実施態様において、基準は、非ガン性細胞(例えば、同じ組織種の非ガン性細胞)における該遺伝子の発現である。いくつかの実施態様において、基準は、ガン細胞における異なる遺伝子の発現である。いくつかの実施態様において、基準は、細胞系(例えば、発現を欠く、又は遺伝子を過剰発現すると知られている細胞系)における遺伝子の発現である。過少発現は、細胞内の、細胞により分泌される、又は細胞表面に発現される(該当する場合)ポリペプチドを評価するアッセイ(例えば、免疫組織化学又はFACS)又はmRNAなどの核酸を評価するアッセイ(例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、又はPCR系の方法)により測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】Bcl-2を過剰発現しているE-mycリンパ腫は、短期間のアッセイでインビトロでロミデプシンに抵抗性がある。4242E-myc、4242E-myc/Bcl-2、229E-myc、229E-myc/Bcl-2、226E-myc、及び226E-myc/Bcl-2リンパ腫を、示されている濃度のロミデプシン又はオキサムフラチンとともに24時間インキュベートした。細胞生存率を、ヨウ化プロピジウム染色(図1A)及びMOMPの低下(図1B)により評価した。バーは、少なくとも3回の独立な実験の標準誤差である。
【0043】
【図2】ロミデプシンは、時間経過とともにE-myc/Bcl-2リンパ腫を殺傷できる。4242E-myc、4242E-myc/Bcl-2、229E-myc、229E-myc/Bcl-2、226E-myc、226E-myc/Bcl-2、102E-myc、及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫を、24時間の治療後にE-mycリンパ腫の約70%を殺傷するのに要する濃度のHDACi(3nmol/Lのロミデプシン又は0.1mol/Lのオキサムフラチン)とともに72時間までインキュベートした。細胞生存率を、ヨウ化プロピジウム染色(図2A)及びMOMPの低下(図2B)により評価した。バーは、少なくとも3回の独立な実験の標準誤差である。図2C、4242E-myc細胞を3.0nmol/Lのロミデプシン、0.1mol/Lのオキサムフラチン、又はビヒクル(レーン7〜9)で2時間(レーン1、4、及び7)、8時間(レーン2、5、及び8)、及び24時間(レーン3、6、及び9)治療した。全細胞溶解物を、アセチル化ヒストンH3及びH4に特異的な抗体を利用するウェスタンブロット分析に使用した。ブロットを抗チューブリンポリクローナル抗体で再検出し、タンパク質負荷を評価した。図2D、4242E-myc/Bcl-2及び226E-myc/Bcl-2細胞を、3.0nmol/Lのロミデプシンで2時間(レーン1及び4)、8時間(レーン2及び5)、及び24時間、又はビヒクルで24時間(レーン7及び8)治療した。全細胞溶解物を、アセチル化ヒストンH3及びH4に特異的な抗体を利用するウェスタンブロット分析に使用した。ブロットを抗βアクチンポリクローナル抗体で再検出し、タンパク質負荷を評価した。
【0044】
【図3】ロミデプシンは、インビボでE-myc/Bcl-2リンパ腫を殺傷できる。4242E-myc(図3A)、229E-myc(図3B)、226E-myc(図3C)、102E-myc(図3D)、4242E-myc/Bcl-2(図3E)、229E-myc/Bcl-2(図3F)、226E-myc/Bcl-2(図3G)、及び102E-myc/Bcl-2(図3H)リンパ腫を有するC57BL/6マウスに、ロミデプシン(5.6mg/kg、静脈内)又はビヒクルを注射した。ロミデプシン治療後の示された時点(時間)又はビヒクル処理(v)の24時間後にリンパ腫細胞を採取した。細胞外膜の易透化用のフルオロゴールド染色(灰色のカラム)又はDNA断片化(白色のカラム)のいずれかによりアポトーシスを測定した。
【0045】
【図4】インビボでのロミデプシンの治療効果。4242E-myc(図4A)、229E-myc(図4B)、226E-myc(図4C)、102E-myc(図4D)、4242E-myc/Bcl-2(図4E)、229E-myc/Bcl-2(図4F)、226E-myc/Bcl-2(図4G)、及び102E-myc/Bcl-2(図4H)リンパ腫を有するC57BL/6マウス(各群10匹のマウス)をロミデプシン又はビヒクルで治療した。WBC数が13×103/L以上に達してから療法を開始した。療法は、5.6mg/kgのロミデプシン(静脈注射、全4投与量を4日ごと)又はビヒクルのいずれかからなっていた。ビヒクル処理マウス(破線)及びロミデプシン治療マウス(実線)のカプランマイヤー生存曲線を示す。異なるリンパ腫の生存期間中央値及びP値は以下のとおりであった:4242E-myc、生存期間中央値ビヒクル19日、生存期間中央値ロミデプシン28日、P<0.0003;4242E-myc/Bcl-2、生存期間中央値ビヒクル12日、生存期間中央値ロミデプシン22.5日、P<0.0001;229E-myc、生存期間中央値ビヒクル20日、生存期間中央値ロミデプシン30日、P<0.0001;229E-myc/Bcl-2、生存期間中央値ビヒクル18日、生存期間中央値ロミデプシン30日、P<0.0001;226E-myc、生存期間中央値ビヒクル15日、生存期間中央値ロミデプシン19.5日、P<0.0001;226E-myc/Bcl-2、生存期間中央値ビヒクル16日、生存期間中央値ロミデプシン16日、P=0.86;102E-myc、生存期間中央値ビヒクル14日、生存期間中央値ロミデプシン22日、P<0.0001;102E-myc/Bcl-2、生存期間中央値ビヒクル11日、生存期間中央値ロミデプシン14.5日、P<0.07。
【0046】
【図5】E-myc及びE-myc/Bcl-2リンパ腫における外因性Bcl-2及び内因性生存促進性Bcl-2ファミリータンパク質の発現。図5A、外因性Bcl-2の発現を、4242E-myc、4242E-myc/Bcl-2、229E-myc、229E-myc/Bcl-2、226E-myc、226E-myc/Bcl-2、102E-myc、及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫から得た全細胞溶解物を使用して、ウェスタンブロットにより検出した。ブロットを抗チューブリンポリクローナル抗体で再検出し、タンパク質負荷を評価した。図5B、内因性Bcl-XL、MCl-1、Bcl-w、及びA1の発現を、4242E-myc/Bcl-2、229E-myc/Bcl-2、226E-myc/Bcl-2、及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫から得た全細胞溶解物を使用してウェスタンブロットにより検出した。ブロットを抗チューブリンポリクローナル抗体で再検出し、タンパク質負荷を評価した。
【0047】
【図6】Bcl-XLを過剰発現しているE-mycリンパ腫は、インビトロでロミデプシン及びオキサムフラチンに抵抗性がある。4242E-myc及び4242E-myc/Bcl-XLを、示された濃度のロミデプシン(図6A)もしくはオキサムフラチン(図6B)とともに24時間、又は3nmol/Lのロミデプシン(図6C)もしくは0.1mol/Lのオキサムフラチン(図6D)とともに72時間までインキュベートした。細胞生存率をヨウ化プロピジウム染色及びMOMPの低下により評価した。バーは、少なくとも3回の独立な実験の標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(発明の特定の実施態様の詳細な説明)
本発明は、抗アポトーシス因子の発現に基づき、リンパ腫などのガンを治療する新規方法を提供する。より詳細には、本発明は、Bcl-2を発現し、かつ/又はBcl-XLを過剰発現していないと特定されたガンをロミデプシンにより治療する方法を提供する。Bcl-2+ガンの治療のためのロミデプシンの使用及びBcl-XLを過剰発現していないガンの治療のためのロミデプシンの使用は、ロミデプシンがインビトロ及びインビボでBcl-2過剰発現細胞のアポトーシスを誘起するのに効果的であるという発見から生まれる(本明細書の実施例1〜4参照)。ロミデプシンによるBcl-2+腫瘍の治療は、インビボで治療上の利益を与えることが示された(本明細書の実施例2参照)。Bcl-2+腫瘍のロミデプシン治療は、腫瘍がBcl-XLを過剰発現していない場合及び腫瘍がP糖タンパク質を過剰発現していない場合に特に効果的である。Bcl-2がロミデプシンのアポトーシス活性及び治療活性を抑制しないという発見は、ロミデプシンが、Bcl-2を発現又は過剰発現しているガンを治療するための比類なく効果的な薬剤であることを明らかにする。
【0049】
(遺伝子発現、及びロミデプシンによる治療のための対象の選択)
Bcl-2は、アポトーシスの阻害により細胞の生存を延ばす。Bcl-2発現の調節不全は、特定のガンの発生、残存、及び薬剤抵抗性の一因であると考えられている。本明細書の治療方法は、Bcl-2がロミデプシンのアポトーシス効果及び治療効果を抑制しないという驚くべき発見に部分的に基づいている。ロミデプシンは、Bcl-2を過剰発現するガンを含む、Bcl-2の発現に陽性であるガンの治療に効果的である。ロミデプシン療法が、Bcl-XLもP糖タンパク質も過剰発現していない腫瘍の治療に効果的であることも発見された。
【0050】
本明細書に記載された方法によると、ロミデプシンによる治療は、Bcl-2を発現(例えば、過剰発現)しているガン(例えば、リンパ腫)を有する対象に適応される。該対象は、利用可能な任意の手段によりBcl-2+ガンを有すると特定することができる。いくつかの実施態様において、対象がロミデプシンによる治療に選択されるが、該対象はBcl-2+ガンを有すると既に特定されている。いくつかの実施態様において、治療の方法は、ガンの細胞におけるBcl-2発現の分析を含む(例えば、ロミデプシンによる治療の前、ロミデプシンによる治療のクールの間、及び/又はロミデプシンによる治療の後)。いくつかの実施態様において、ガンの細胞は、Bcl-2遺伝子の転座を生じる染色体再編成を有する(例えば、Bcl-2遺伝子を免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写調節下に置くヒトt(14;18)染色体転座)。
【0051】
いくつかの実施態様において、Bcl-2発現は、Bcl-2 mRNA発現の分析(例えば、PCR、例えば、逆転写-PCR(RT-PCR)、ノーザンブロット分析、マイクロアレイ分析、又はインサイチュハイブリダイゼーションの利用)により測定される。いくつかの実施態様において、Bcl-2発現は、Bcl-2ポリペプチド発現の分析(例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロット、又はFACS分析などの抗体系技術の利用)により測定される。Bcl-2発現は、例えば、Bcl-2発現又は過剰発現を生じる染色体転座の存在の検出により間接的に測定できる(例えば、Bcl-2遺伝子再編成を検出するためのPCR系方法を記載しているGribbenらの文献(Blood 78(12):3275-3280, 1991)を参照されたい)。
【0052】
いくつかの実施態様において、Bcl-2発現は、基準に照らして測定及び比較される(例えば、比較によりガンがBcl-2を発現又は過剰発現しているかどうか示される基準試料、又は基準値)。いくつかの実施態様において、ガンの細胞におけるBcl-2発現は、非ガン性組織、例えば、腫瘍と同じ組織種の非ガン性組織の細胞におけるBcl-2発現に比較して測定される。いくつかの実施態様において、リンパ腫におけるBcl-2発現は、非ガン性リンパ球におけるBcl-2発現に比較して測定される。いくつかの実施態様において、ガンから得た試料におけるBcl-2+細胞のパーセンテージが測定される。免疫蛍光、免疫組織化学、及び他の方法により患者の試料、一次細胞、及び細胞系におけるBcl-2発現を分析及び定量する方法は、例えば、Camposらの文献Blood 81(11):3091-3096, 1993;Pezzellaらの文献Am. J. Pathol. 137(2):225-32, 1990;Swerdlowらの文献Leukemia 7:1456-1458, 1993;及びPorwit-Macdonaldらの文献Leukemia 9(7):1191-8, 1995に記載されている。
【0053】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンにより対象を治療する方法は、該対象がBcl-XLを過剰発現していない(例えば、ガンがBcl-XLを低レベルで発現しているか、又はガンがBcl-XLの発現を欠く)ガンを有する方法を含む。利用可能な任意の手段により、対象は、そのガンがBcl-XLの過剰発現を欠いていると特定されうる。いくつかの実施態様において、対象はロミデプシンによる治療に選択され、該対象はBcl-XLを過剰発現していないガンを有すると既に特定されている。いくつかの実施態様において、治療の方法には、ガンの細胞におけるBcl-XL発現の分析を含む(例えば、ロミデプシンによる治療の前、ロミデプシンによる治療のクールの間、及び/又はロミデプシンによる治療の後)。いくつかの実施態様において、ガンは、Bcl-2を過剰発現しているガンである。
【0054】
Bcl-XL発現は、Bcl-2に関して先に述べられたものなどの手段により、例えば、Bcl-XL mRNA発現(例えば、PCR、ノーザンブロット分析、又はインサイチュハイブリダイゼーション)又はBcl-XLポリペプチド発現(例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロット、又はFACS分析の利用)の分析により測定できる。いくつかの実施態様において、Bcl-XL発現が測定され、基準と比較される。いくつかの実施態様において、ガンの細胞におけるBcl-XL発現は、非ガン性組織、例えば、腫瘍と同じ組織種の非ガン性組織の細胞におけるBcl-XL発現に比較して測定される。いくつかの実施態様において、リンパ腫におけるBcl-XL発現は、非ガン性リンパ球におけるBcl-XL発現に比較して測定される。いくつかの実施態様において、ガンから得た試料におけるBcl-XL+又はBcl-XL-細胞のパーセンテージが測定される。患者の試料、一次細胞、及び細胞系におけるBcl-XL発現を分析及び定量する方法は、例えば、Zhaoらの文献Blood 103:695-697, 2004;及びFindleyらの文献Blood 89(8):2986-2993, 1997に記載されている。いくつかの実施態様において、Bcl-2発現とBcl-XL発現との相対レベルが測定されて、例えば、ガンがBcl-XLよりもBcl-2を発現している対象が特定される。
【0055】
ロミデプシンによる治療は、ガンが他の遺伝子の発現又は発現の欠如により特徴づけられる対象の選択及び/又は特定を含むことがある。いくつかの実施態様において、ロミデプシン治療は、多剤輸送体であるP糖タンパク質(P-gp)を過剰発現していないBcl-2+ガンに適応される。P-gpはMDR1遺伝子によりコードされている(Uedaらの文献Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3004, 1987)。ガンの細胞におけるP-gp発現は利用可能な任意の手段により測定できる(例えば、MRK16モノクローナル抗体の利用、又はMDR1 mRNA発現の検出による)。
【0056】
上述のとおり、遺伝子発現(例えば、Bcl-2 発現)は、利用可能な任意の手段により測定できる。いくつかの実施態様において、PCR系の方法がmRNA発現の分析に利用される。いくつかの実施態様において、該方法はRT-PCRである。RT-PCRを実施するために、mRNAが試料から単離される(例えば、ヒトリンパ腫試料から全RNAが単離される)。mRNAは、単離したての試料からでも、凍結試料からでも、保管されたパラフィン包埋固定組織試料からでも抽出できる。mRNA抽出の方法は当分野に公知である。例えば、Ausubelらの文献「分子生物学における最新のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley and Sons, 1997を参照されたい。パラフィン包埋組織からのRNA抽出の方法は、例えば、Rupp及びLockerの文献Lab Invest. 56:A67, 1987及びDe Andresらの文献BioTechniques 18:42044, 1995に開示されている。Qiagenなどの業者から得られるRNA単離用の精製キットを使用できる。例えば、試料由来の全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラム、MasterPure(商標)Complete DNA and RNA Purification Kit (EPICENTRE(商標)、ウィスコンシン州マディソン)、Paraffin Block RNA Isolation Kit (Ambion社製)、又はRNA Stat-60 (Tel-Test)、又は他の手段を利用して単離できる。次に、RNAがcDNAに逆転写され、cDNAがPCRにより増幅される。PCRプライマー及びプローブ設計のガイドラインには、例えば、Dieffenbachらの文献PCR Primer, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 133-155, 1995中の「PCRプライマー設計のための一般的な考え(General Concepts for PCR Primer Design)」;Innis及びGelfandの文献PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, CRC Press, London, 5-11, 1994中の「PCRの最適化(Optimization of PCRs)」;及びPlasterer, T. N.の文献「プライマー選択:プライマー及びプローブ設計(Primerselect: Primer and probe design)」 Methods Mol. Biol. 70:520-527, 1997がある。PCRプライマー設計において考慮される因子には、プライマー長、融点(Tm)、及びG/C含量、具体的には相補的プライマー配列及び3'末端配列がある。PCRプライマーは、一般的に、長さが17〜30塩基でありTmが50〜80℃である。
【0057】
いくつかの実施態様において、PCR分析は定量的である。定量的PCRの一実施態様において、第3のオリゴヌクレオチド又はプローブが、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列の検出に使用される。該プローブは、PCRに使用される耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)により伸長不可能であり、典型的には、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素により標識されている。レポーター色素からのレーザー誘起発光は、2つの色素がプローブ上にあるまま互いに近傍にある場合には、クエンチング色素により消光する。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的にプローブを切断する。生じたプローブ断片は溶解状態で解離し、開放されたレポーター色素からのシグナルは、第2の蛍光団の消光効果を免れる。新しい分子が合成される度に1分子のレポーター色素が遊離し、消光されないレポーター色素の検出が定量的分析の基準となる。RT-PCRは、ABI PRISM 7700(商標)Sequence Detection System (Perkin-Elmer-Applied Biosystems社製、アメリカ合衆国カリフォルニア州フォスターシティー)又はLightcycler(登録商標)(Roche Molecular Biochemicals社製、ドイツ国マンハイム)などの市販の装置を利用して実施できる。ABI PRISM 7700(商標)Sequence Detection System(商標)などリアルタイム定量的PCR装置を利用して試料を分析できる。誤差及び試料間の変動の効果を最低限にするために、RT-PCRは通常内部標準を使用して実施される。好適な内部標準は、異なる組織間に一定のレベルで発現され、実験の変数により影響されない。遺伝子発現のパターンを正規化するためによく使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβアクチンのmRNAである。
【0058】
RT-PCR技術の一変形はリアルタイム定量的PCRであり、二重標識蛍光発生プローブ(すなわちTaqMan(商標)プローブ)によりPCR産物の蓄積を測定するものである。リアルタイムPCRは、各標的配列の内部競争物が正規化に使用される定量的競合的PCR及び試料内に含まれる正規化遺伝子又はRT-PCR用のハウスキーピング遺伝子を使用する定量的比較PCRの両方に適合する。さらなる詳細については、Heldらの文献Genome Res. 6:986-994, 1996を参照されたい。遺伝子発現の定量的尺度を得る方法は、例えば、国際公開第02/086498号に記載されている。
【0059】
遺伝子発現分析の他の手法は、競合的PCR設計及びオリゴヌクレオチドの自動化された高スループットマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)MS検出及び定量化を利用する(Ding及びCantorの文献Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3059-3064, 2003参照)。
【0060】
遺伝子発現分析のための追加のPCR系技術には、例えば、ディファレンシァル・ディスプレイ(Liang及びPardeeの文献Science 257:967-971, 1992);増幅断片長多型(iAFLP)(Kawamotoらの文献Genome Res. 12:1305-1312, 1999);BeadArray(商標)技術(Illumina社製、カリフォルニア州サンディエゴ;Oliphantらの文献「疾患のマーカーの発見(Discovery of Markers for Disease)」(Biotechniquesの増補)、2002年6月;Fergusonらの文献Anal. Chem. 72:5618, 2000);遺伝子発現の迅速なアッセイにおける、市販のLuminex 100 LabMAPシステム及び多色コード化微小球を使用する遺伝子発現検出用のビーズアレイ(BADGE)(Luminex社製、テキサス州オースチン)(Yangらの文献Genome Res. 11:1888-1898, 2001);及び高カバー率発現プロファイリング(HiCEP)分析(Fukumuraらの文献Nucl Acids. Res. 31(16) e94, 2003)がある。
【0061】
遺伝子発現は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションなどのインサイチュハイブリダイゼーションによっても分析できる。例えば、Vogelらの文献J. Clin. Oncol. 20(3):719-26, 2002及びBartlettらの文献J. Pathol, 199(4):411-7, 2003を参照されたい。
【0062】
いくつかの実施態様において、遺伝子発現はマイクロアレイを利用して分析される。典型的には、対象とするポリヌクレオチドが、マイクロチップ基材上に蒔かれ又は整列されている。次いで、整列している配列が、対象とする細胞又は組織(例えば、リンパ腫)から得た核酸(例えば、DNA又はRNA)とハイブリダイゼーションする。mRNAの源は、典型的には全RNAである(例えば、ヒトリンパ腫試料及び正常な対照試料から単離された全RNA)。プローブは、アレイ基材(例えば、ガラス、プラスチック、又はゲル表面などの多孔質若しくは非多孔質の固体支持体)に固定化されている。プローブには、DNA、RNA、DNAとRNAのコポリマー配列、DNA及び/又はRNAのアナログ、又はこれらの組み合わせがありうる。
【0063】
マイクロアレイは、アドレス可能アレイ、より好ましくは位置アドレス可能アレイ(positionally addressable array)でよく、すなわちアレイの各プローブが、各プローブの正体(すなわち配列)がアレイ内のその位置から決定できるように、固体支持体上の既知の所定の位置に配置されている。
【0064】
マイクロアレイ上の各プローブは、長さが10〜50,000ヌクレオチド、例えば300〜1,000ヌクレオチドでよい。マイクロアレイのプローブは、1,000ヌクレオチド未満の長さのヌクレオチド配列、例えば、長さが10〜1,000、又は10〜500、又は10〜200ヌクレオチドの配列からなっていてよい。アレイは、陽性対照プローブ、例えば、被験試料中の配列と相補的でありハイブリダイゼーションすると知られているプローブ、及び陰性対照プローブ、例えば、被験試料中の配列と相補的でなくハイブリダイゼーションしないと知られているプローブを含みうる。
【0065】
表面に核酸を結合させる方法は公知である。例えば、Schenaらの文献Science 270:467-470, 1995;DeRisiらの文献Nat. Genet. 14:457-460, 1996;Shalonらの文献Genome Res. 6:639-645, 1996;及びSchenaらの文献Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 10539-11286, 1995;米国特許第5,578,832号;同第5,556,752号;同第5,510,270号;Maskos及びSouthernの文献Nuc. Acids. Res. 20:1679-1684, 1992を参照されたい。原則として、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜へのドットブロットなど、どのような種類のアレイも使用できる(Sambrookらの文献「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい)。
【0066】
分析すべきポリヌクレオチド分子は臨床的に関連する任意の源から得てよく、天然の核酸分子並びに合成核酸分子を含む、発現されたRNA又はそれから誘導された核酸(例えば、cDNA又はRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだcDNAから誘導された増幅されたRNA)である。例えば、被験ポリヌクレオチド分子には、全細胞RNA、ポリ(A)+メッセンジャーRNA(mRNA)、又はそのフラクション、細胞質mRNA、又はcDNAから転写されたRNA(すなわちcRNA;例えば、米国特許第5,545,522号、同第5,891,636号、又は同第5,716,785号参照)がある。核酸のハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、被験ポリヌクレオチド分子(例えば、リンパ腫試料由来のポリヌクレオチド)が、その相補的核酸が位置するアレイの相補的ポリヌクレオチド配列に、好ましくは特定のアレイ部位に特異的に結合又は特異的にハイブリダイゼーションするように選択される。核酸の特異的な(すなわちストリンジェントな)ハイブリダイゼーション条件の全般的なパラメーターは上記のSambrookらの文献及びAusubelらの文献「分子生物学における最新のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻、Current Protocols Publishing, New York, 1994に記載されている。典型的には、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド塩基)のストリンジェントな条件は、pHが7.0から8.3で塩濃度が少なくとも約0.01から1.0Mであり、温度が少なくとも約30℃のものである。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によっても達成できる。蛍光標識プローブが使用される場合、マイクロアレイの各部位での蛍光発光は、走査型共焦点レーザー顕微鏡又は他の方法により検出できる(Shalonらの文献Genome Res. 6:639-645, 1996;Schenaらの文献Genome Res. 6:639-645, 1996;及びFergusonらの文献Nat. Biotech. 14:1681-1684, 1996参照)。シグナルは典型的には、コンピューターにより記録され、分析される。マイクロアレイデータの評価及び試料の分類の方法は米国特許第7,171,311号に記載されている。
【0067】
いくつかの実施態様において、遺伝子発現はポリペプチド(例えば、Bcl-2ポリペプチド)を検出する方法を利用して測定される。対象とする遺伝子産物(例えば、Bcl-2、Bcl-XL、P-gp)に特異的な抗体を使用して発現を検出できる。抗体は、抗体自体の直接標識、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン又はホースラディッシュペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素などのハプテン標識により検出できる。別法としては、標識されていない一次抗体が、該一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清、又はモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体とともに使用される。例示的なイムノアッセイには、例えば、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット分析、免疫沈降法、免疫組織化学アッセイ(例えば、Vogelらの文献J. Clin. Oncol, 20(3):719-26, 2002及びBartlettらの文献Pathol, 199(4):411-7, 2003参照)がある。免疫アッセイのプロトコル及びキットは、当分野に周知であり市販されている。
【0068】
種々の態様において、ガンから得た試料(例えば、リンパ腫から得た試料)における特定の遺伝子の発現が検出されて、臨床上の情報(例えば、試料が誘導された元のガンをBcl-2過剰発現ガンと分類)を与える。そのため、遺伝子発現アッセイは、試料の変動及び質の差を補正する手段を含む。例えば、mRNAを検出するアッセイは、典型的には、特定の正規化遺伝子、そのような公知のハウスキーピング遺伝子、例えばGAPDH及びβ-アクチンのmRNA発現を測定し、それを組み込む。別法としては、正規化は、アッセイされた遺伝子又はその大きなサブセットの平均又は中央値シグナル(Ct)に基づくこともある(網羅的正規化手法)。いくつかの実施態様において、正規化された被験試料(例えば、患者の試料から得た)における遺伝子発現産物の量が、ガンの試料及び/又は正常な試料基準セット中に見いだされる量と比較される。特定の被験試料において測定された発現のレベルが決定されて、基準セットに観察される範囲内のあるパーセンタイルに当てはめることができる。
【0069】
(ロミデプシン)
HDAC阻害剤ロミデプシンは、特定の因子を発現しているか、又は発現を欠いていると確認されたガンを治療するために、本発明に従い使用される。例えば、本明細書に記載されるとおり、ロミデプシンは、Bcl-2+リンパ腫、Bcl-XL-リンパ腫、Bcl-2+Bcl-XL-リンパ腫、又はP糖タンパク質を過剰発現していないBcl-2+リンパ腫の治療に使用される。ロミデプシンは以下の式の環式デプシペプチドである。
【化9】

ロミデプシンは任意の形態で提供できる。医薬として許容し得る形態が特に好ましい。ロミデプシンの例示的な形態には、所望の活性(例えば、デアセチラーゼ阻害活性、アグリソーム阻害活性、細胞毒性)を持つ塩、エステル、プロドラッグ、異性体、立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)、互変異性体、保護された形態、還元された形態、酸化された形態、誘導体、及びこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、併用療法に使用されるロミデプシンは医薬品グレード物質であり、米国薬局方、日本薬局方、又は欧州薬局方の基準を満たす。特定の実施態様において、ロミデプシンの純度は、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、又は少なくとも99.95%である。特定の実施態様において、ロミデプシンは、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、又は少なくとも99.95%モノマー性である。特定の実施態様において、ロミデプシン物質(例えば、酸化された物質、還元された物質、二量化又はオリゴマー化した物質、副産物など)に不純物は全く検出されない。ロミデプシンは、典型的には、1.0%未満、0.5%未満、0.2%未満、又は0.1%未満の他の全不明物を含む。ロミデプシンの純度は、外観、HPLC、比旋光度、NMR分光法、IR分光法、UV/可視分光法、粉末x線回折(XRPD)分析、元素分析、LC質量分析法、及び質量分析法により評価できる。
【0070】
本発明の療法はロミデプシンの誘導体を含むことがある。特定の実施態様において、ロミデプシンの誘導体は、式(I)のもの及びその医薬として許容し得る形態である:
【化10】

(式中、mは、1、2、3、又は4であり;
nは、0、1、2、又は3であり;
p及びqは、独立に1又は2であり;
Xは、O、NH、又はNR8であり;
R1、R2、及びR3は、独立に、水素;非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族;非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式のヘテロ脂肪族;非置換もしくは置換されたアリール;又は非置換もしくは置換されたヘテロアリールであり;かつ
R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立に、水素;又は置換もしくは非置換の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族である)。特定の実施態様において、mは1である。特定の実施態様において、nは1である。特定の実施態様において、pは1である。特定の実施態様において、qは1である。特定の実施態様において、XはOである。特定の実施態様において、R1、R2、及びR3は、非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の非環式脂肪族である。特定の実施態様において、R4、R5、R6、及びR7は全て水素である。
【0071】
特定の実施態様において、ロミデプシンの誘導体は、式(II)のもの及びその医薬として許容し得る形態である:
【化11】

(式中、mは、1、2、3、又は4であり;
nは、0、1、2、又は3であり;
pは、2又は3であり;
Xは、O、NH、又はNR8であり;
Yは、OR8又はSR8であり;
R2及びR3は、独立に、水素;非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族;非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式のヘテロ脂肪族;非置換もしくは置換されたアリール;又は非置換もしくは置換されたヘテロアリールであり;かつ
R4、R5、R、R7、及びR8は、独立に、水素;又は置換もしくは非置換の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族から選択される)。特定の実施態様において、mは1である。特定の実施態様において、nは1である。特定の実施態様において、qは2である。特定の実施態様において、XはOである。他の実施態様において、XはNHである。特定の実施態様において、R2及びR3は、非置換もしくは置換された、分岐もしくは非分岐の非環式脂肪族である。特定の実施態様において、R4、R5、R6、及びR7は全て水素である。
【0072】
特定の実施態様において、ロミデプシンの誘導体は式(III)のもの及びその医薬として許容し得る形態である:
【化12】

(式中、Aは生理的条件下で開裂してチオール基を生じる部分であり、例えば、脂肪族又は芳香族アシル部分(チオエステル結合を形成する);脂肪族又は芳香族チオキシ(ジスルフィド結合を形成する)などである)。そのような脂肪族又は芳香族基は、置換もしくは非置換の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族基;置換もしくは非置換の芳香族基;置換もしくは非置換のヘテロ芳香族;又は置換もしくは非置換の複素環基を含みうる。Aは、例えば、-COR1、-SC(=O)-O-R1、又は-SR2でありうる。R1は、独立に、水素;置換もしくは非置換のアミノ;置換もしくは非置換の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族;置換もしくは非置換の芳香族基;置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基;又は置換もしくは非置換の複素環基である。特定の実施態様において、R1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ベンジル、又はブロモベンジルである。R2は、置換もしくは非置換の、分岐もしくは非分岐の、環式もしくは非環式の脂肪族基;置換もしくは非置換の芳香族基;置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基;又は置換もしくは非置換の複素環基である。特定の実施態様において、R2は、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、イソブチル、脂肪酸、置換もしくは非置換のベンジル、置換もしくは非置換のアリール、システイン、ホモシステイン、又はグルタチオンである。
【0073】
特定の実施態様において、ロミデプシンの誘導体は、式(IV)又は(IV')のものである:
【化13】

(式中、R1、R2、R3、及びR4は、同一又は異なっており、アミノ酸側鎖部分を表し、R6のそれぞれは、同一又は異なっており、水素又はC1-C4アルキルを表し、Pr1及びPr2は、同一又は異なっており、水素又はチオール保護基を表す)。特定の実施態様において、アミノ酸側鎖部分は、天然アミノ酸から誘導されたものである。他の実施態様において、アミノ酸側鎖部分は、非天然のアミノ酸から誘導されたものである。特定の実施態様において、各アミノ酸側鎖は、-H、-C1-C6アルキル、-C2-C6アルケニル、-L-O-C(O)-R'、-L-C(O)-O-R"、-L-A、-L-NR"R"、-L-Het-C(O)-Het-R"、及び-L-Het-R"から選択される部分であり、式中LはC1-C6アルキレン基であり、Aはフェニル又は五員もしくは六員のヘテロアリール基であり、各R'は同一又は異なっており、C1-C4アルキルを表し、各R"は、同一又は異なっており、H又はC1-C6アルキルを表し、各-Het-は同一又は異なっており、-O-、-N(R''')-、及び-S-から選択されるヘテロ原子スペーサーであり、各R'''は同一又は異なっており、H又はC1-C4アルキルを表す。特定の実施態様において、R6は-Hである。特定の実施態様において、Pr1及びPr2は同一又は異なっており、水素、並びにC1-C6アルコキシにより任意に置換されているベンジル基、C1-C6アシルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ピコリル、ピコリル-N-オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t-ブチル、アダマンチル、C1-C6アシルオキシメチル、C1-C6アルコキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、tert-ブトキシカルボニル(BOC)、アセチル及びその誘導体、ベンゾイル及びその誘導体、カルバモイル、フェニルカルバモイル、及びC1-C6アルキルカルバモイルから選択される保護基から選択される。特定の実施態様において、Pr1及びPr2は水素である。式(IV)及び(IV')の種々のロミデプシン誘導体は、引用により本明細書に組み込まれる、2006年12月7日に公開された国際公開第2006/129105号に開示されている。
【0074】
ロミデプシンを調製する方法は当分野に公知である。例えば、ロミデプシンを調製する例示的な方法は、2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,698号;2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,704号;及び2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,712号に記載されており、その全ての教示を引用により本明細書に組み込む。ロミデプシンは天然物であるので、典型的には、ロミデプシンを産生する微生物の発酵物からの単離により調製される。特定の実施態様において、ロミデプシン又はその誘導体は、例えば、クロモバクテリウム・ビオラセウムの発酵物から精製される。例えば、それぞれ引用により本明細書に組み込まれるUedaらの文献J. Antibiot.(Tokyo) 47:301-310, 1994;Nakajimaらの文献Exp. Cell Res. 241:126-133, 1998;国際公開第02/20817号;米国特許第4,977,138号を参照されたい。他の実施態様において、ロミデプシン又はその誘導体は、合成又は半合成の手段により調製される。J. Am. Chem. Soc. 118:7237-7238, 1996は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0075】
ロミデプシンの治療上有効な量は、患者、治療されるガン、ガンのステージ、ガンの病状、ガンの遺伝子型、ガンの表現型、投与経路などにより変わるであろう。特定の実施態様において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から32mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から28mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、1mg/m2から25mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から15mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、1mg/m2から15mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、1mg/m2から8mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から5mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、2mg/m2から10mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、4mg/m2から15mg/m2の範囲で投薬される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、8mg/m2から10mg/m2の範囲で投薬される。他の実施態様において、用量は、10mg/m2から20mg/m2の範囲である。特定の実施態様において、用量は、5mg/m2から10mg/m2の範囲である。他の実施態様において、用量は、10mg/m2から15mg/m2の範囲である。なお他の実施態様において、用量はおよそ8mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ9mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ10mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ11mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ12mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ13mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ14mg/m2である。なお他の実施態様において、用量はおよそ15mg/m2である。特定の実施態様において、増加する投与量のロミデプシンが、サイクルの間に投与される。例えば、特定の実施態様において、およそ8mg/m2の投与量、それに次いでおよそ10mg/m2の投与量、それに次いでおよそ12mg/m2の投与量が、サイクルの間に投与されることがある。当業者に認識されるとおり、投与されるロミデプシンの形態によって、投薬は変動しうる。本明細書に示された用量は、有効成分ロミデプシンに関する投与量当量である。当業者に認識されるとおり、等しい数のロミデプシン分子の送達のため、より多量の塩、水和物、共結晶、プロドラッグ、エステル、溶質などが投与される必要がある。特定の実施態様において、ロミデプシンは静脈内に投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、1〜6時間の時間枠にわたり静脈内に投与される。特定の特別な実施態様において、ロミデプシンは3〜4時間にわたり静脈内に投与される。特定の特別な実施態様において、ロミデプシンは5〜6時間にわたり静脈内に投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンはある日投与され、それに次ぐ数日はロミデプシンが投与されない。
【0076】
いくつかの実施態様において、患者の腫瘍のBcl-2発現に基づき、患者は、より高い投与量及び/又はより長い治療のクールを受け取る。例えば、いくつかの実施態様において、Bcl-2を過剰発現しているリンパ腫を有する患者は、Bcl-2を過剰発現していないリンパ腫を有する患者に投与されるであろう量より高い投与量のロミデプシンを投与される(例えば、Bcl-2を過剰発現しているリンパ腫を有する患者は、同じ体重の患者に通常与えられる投与量の高い範囲での投与量を投与される)。
【0077】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、例えば、1つ以上の個々の投与量が約50分未満、40分、30分、20分、又はそれらより短時間の期間にわたり投与されるように、加速された投薬レジメンで投与される。加速された投薬レジメンのいくつかの実施態様において、ロミデプシンの1つ以上の投与量が静脈内に投与される。加速された投薬レジメンのいくつかの実施態様において、ロミデプシンの1つ以上の投与量が、静脈内投与以外の経路(例えば、経口、皮下、鼻腔内、局所など)により投与される。
【0078】
特定の実施態様において、ロミデプシン及び第2の抗新生物剤はともに投与される。他の実施態様において、ロミデプシン及び第2の抗新生物剤は別に投与される。例えば、ロミデプシンと第2の薬剤との投与は1日以上離されていてよい。
【0079】
特定の実施態様において、ロミデプシンは週に2回投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは週に1回投与される。他の実施態様において、ロミデプシンは1週おきに投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、28日サイクルの第1日、第8日、及び第15日に投与される。特定の特別な実施態様において、8mg/m2の投与量のロミデプシンが第1日に投与され、10mg/m2の投与量のロミデプシンが第8日に投与され、12mg/m2の投与量のロミデプシンが第15日に投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、28日サイクルの第1日及び第15日に投与される。28日サイクルが繰り返されることがある。特定の実施態様において、28日サイクルが3〜10回繰り返される。特定の実施態様において、治療は5サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は6サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は7サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は8サイクルを含む。特定の実施態様において、10を超えるサイクルが投与される。特定の実施態様において、患者が反応している限りサイクルが続けられる。疾病の進行があるか、治癒もしくは寛解が達成されたか、又は副作用が耐えられなくなると、療法をやめることがある。
本発明に従い利用するための適切な投薬スケジュールの例をほんの2,3挙げると、ロミデプシンは、毎日(例えば、2週間)、週に2回(例えば、4週間)、週に3回(例えば、4週間)、又は他の種々の間欠的なスケジュール(例えば、21日又は28日サイクルの第1日、第3日、及び第5日;第4日及び第10日;第1日及び第15日;第5日及び第12日;又は第5日、第12日、及び第19日)のいずれで投与してもよい。
【0080】
特定の実施態様において、ロミデプシンは28日サイクルの第1日、第8日、及び第15日に投与される。特定の特別な実施態様において、8mg/m2の投与量のロミデプシンが第1日に投与され、10mg/m2の投与量のロミデプシンが第8日に投与され、12mg/m2の投与量のロミデプシンが第15日に投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンが、28日サイクルの第1日及び第15日に投与され、第8日は省略される。28日の投薬サイクルが繰り返されることがある。特定の実施態様において、28日サイクルは、2〜10、2〜7、2〜5、又は3〜10回繰り返される。特定の実施態様において、治療は5サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は6サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は7サイクルを含む。特定の実施態様において、治療は8サイクルを含む。特定の実施態様において、10サイクルが投与される。特定の実施態様において、10を超えるサイクルが投与される。
【0081】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンは経口投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、10mg/m2から300mg/m2の範囲で経口服用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、25mg/m2から100mg/m2の範囲で経口服用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、100mg/m2から200mg/m2の範囲で経口服用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、200mg/m2から300mg/m2の範囲で経口服用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、300mg/m2超で経口服用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは、50mg/m2から150mg/m2で経口服用される。他の実施態様において、経口用量は25mg/m2から75mg/m2の範囲である。当業者に認識されるとおり、投与されるロミデプシンの形態によって投薬は変わることがある。本明細書に示される用量は、有効成分ロミデプシンに関する投与量当量である。特定の実施態様において、ロミデプシンは毎日経口投与される。他の実施態様において、ロミデプシンは1日おきに経口投与される。なお他の実施態様において、ロミデプシンは、3日ごと、4日ごと、5日ごと、又は6日ごとに経口投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは毎週経口投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンは隔週に経口投与される。特定の実施態様において、ロミデプシン及び第2の抗新生物剤はともに投与される。他の実施態様において、ロミデプシン及び第2の薬剤は別に投与される。例えば、ロミデプシン及び第2の薬剤の投与は、1日以上離れていることがある。特定の実施態様において、ロミデプシン及び第2の薬剤の両方が経口投与される。特定の実施態様において、ロミデプシンのみが経口投与される。ロミデプシン単独の投与又はロミデプシンと第2の薬剤との組み合わせの投与は、疾病の進行があるか、治癒もしくは寛解が達成されたか、又は副作用が耐えられなくなると、やめることがある。
【0082】
(他の抗新生物剤)
本発明に好適な抗新生物剤には、新生物の成長を阻害又は予防し、悪性細胞の成熟及び増殖をチェックする任意の薬剤を含む。成長阻害は、腫瘍細胞(複数可)における停止又は細胞死の誘導により起こりうる。典型的には、抗新生物剤は細胞毒性剤一般を含む。例示的な抗新生物剤には、サイトカイン、リガンド、抗体、放射性核種、プロテアソーム阻害剤、キナーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ヌクレオシドアナログ、アルキル化剤、代謝拮抗剤、及び他の種類の化学療法剤があるが、これらに限定されない。詳細には、そのような薬剤には、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン(IFN)TNF;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンなどの光増感剤;ヨウ素-131(131I)、イットリウム-90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、テクネチウム-99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、及びレニウム-188(188Re)などの放射性核種;化学療法剤、例えば、ネオカルジノスタチン、細菌毒素、植物毒、及び他の毒素、例えばジフテリア毒素、緑膿菌外毒素A、ブドウ球菌腸毒素A、アブリンA毒素、リシンA(脱グリコシル化されたリシンA及び野生型のリシンA)、TGF-α毒素、タイワンコブラ(naja naja atra)由来の細胞毒、及びゲロニン(植物毒);植物、細菌及び真菌由来のリボソーム不活性化タンパク質、例えばレストリクトシン(アスペルギルス・レストリクツス(Aspergillus restrictus)により産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)、及びRNase;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);リポソーム含有抗腫瘍剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミドコード毒素、メトトレキサートなど);及び抗体又はF(ab)などの抗体断片がある。
【0083】
特定の実施態様において、ロミデプシンはアルキル化剤と組み合わせて投与される。例示的なアルキル化剤には、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン)、及びトリアゼン(例えば、ダカルバジン(ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド))がある。
【0084】
特定の実施態様において、ロミデプシンは代謝拮抗剤と組み合わせて投与される。例示的な代謝拮抗剤には、葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)、ピリミジンアナログ(例えば、フロオロウラシル、シタラビン)、及びプリンアナログ(例えば、フルダラビン、イダルビシン、シトシンアラビノシド、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)がある。ロミデプシンと組み合わせて投与できる抗新生物剤の他の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ベンデシン(vendesine))、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシン)、ジブロモマンニトール、デオキシスペルグアリン、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、インターフェロンαなどの生体応答調節剤、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、及びメチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン、アミノグルテチミド)がある。
【0085】
特定の実施態様において、ロミデプシンはステロイド剤と組み合わせて投与される。本発明に好適な例示的なステロイド剤には、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸及び酢酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酪酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、シピオン酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、リン酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)ナトリウム、コハク酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)ナトリウム、吉草酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリソン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フロ酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、及びトリアムシノロンヘキサアセトニド、又はこれらの合成アナログ、又はこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、本発明に好適なステロイド剤はデキサメタゾンである。特定の実施態様において、本発明に好適なステロイド剤はプレドニゾロンである。
【0086】
特定の実施態様において、ステロイド剤は0.25mgから100mgの範囲の用量で投与される。特定の実施態様において、ステロイド剤は5mgから60mgの範囲の用量で投与される。特定の実施態様において、ステロイド剤は10mgから50mgの範囲の用量で投与される。特別な実施態様において、ステロイド剤はおよそ40mgの用量で投与される。特別な実施態様において、ステロイド剤はおよそ30mgの用量で投与される。他の特別な実施態様において、ステロイド剤はおよそ20mgの用量で投与される。特別な実施態様において、ステロイド剤はおよそ10mgの用量で投与される。特別な実施態様において、ステロイド剤はおよそ5mgの用量で投与される。特定の実施態様において、ステロイド剤はロミデプシンと同時に投与される。特定の実施態様において、ステロイド剤は、ロミデプシンの投与の前又は後に投与される。例えば、ステロイド剤は、ロミデプシン投与の5から7日前に投与されることがある。特定の実施態様において、ステロイド剤はデキサメタゾンであり、デキサメタゾンの用量は20mgである。
【0087】
特定の実施態様において、ロミデプシンはプロテアソーム阻害剤と組み合わせて投与される。例示的なプロテアソーム阻害剤には、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI-0052)、ラクタシスチン、エポキソマイシン(Ac(Me)-Ile-Ile-Thr-Leu-EX)、MG-132(Z-Leu-Leu-Leu-al)、PR-171、PS-519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP-1612、CVT-63417、PS-341(ピラジルカルボニル-Phe-Leu-ボロネート)、PSI(Z-Ile-Glu(OtBu)-Ala-Leu-al)、MG-262(Z-Leu-Leu-Leu-bor)、PS-273(MNLB)、オムラリド(clasto-ラクタシスチン-β-ラクトン)、NLVS(Nip-Leu-Leu-Leu-ビニルスルホン)、YLVS(Tyr-Leu-Leu-Leu-vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル-Phe-Leu-ボロネート)、ALLN(Ac-Leu-Leu-Nle-al)、3,4-ジクロロイソクマリン、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド、TMC-95A、グリオトキシン、EGCG((-)-エピガロカテキン-3-ガレート)、及びYU101(Ac-hFLFL-ex)がある。特定の実施態様において、ロミデプシンはボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))と組み合わされる。
【0088】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、キナーゼ阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。チロシンキナーゼ阻害剤は、細胞におけるチロシンキナーゼの活性及び/又は量を低減する薬剤である。そのような薬剤は、本明細書に記載するようにガンの治療(例えば、Bcl-2+リンパ腫)において、ロミデプシンと組み合わせて有用でありうる。市販のチロシンキナーゼ阻害剤には、例えば、アキシチニブ、セジラニブ(RECENTIN)、ダサチニブ(SPRYLCEL)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA)、イマチニブ(GLEEVEC)、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、スニチニブ、及びバンデタニブがある。特定の実施態様において、ロミデプシンはアキシチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはセジラニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはダサチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはエルロチニブと組み合わせて使用される。エルロチニブは、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼを特異的に標的とするが、これは種々の形態のガンに高度に発現され時には突然変異している。特定の実施態様において、ロミデプシンはゲフィチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはイマチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはラパチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはレスタウルチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはニロチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはセマクサニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはスニチニブと組み合わせて使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンはバンデタニブと組み合わせて使用される。ロミデプシンと組み合わせて使用できる他のキナーゼ阻害剤には、フラボピリドール、LY294002、PKC412、及びPD184352がある。
【0089】
特定の実施態様において、ロミデプシンは17-アリル-アミノ-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)とともに投与される。
【0090】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、Bcl-XLの発現又は活性を阻害する薬剤とともに投与される。そのような薬剤の例にはアンチセンス剤(例えば、米国特許第5,776,905号及び米国公開特許第20030191300号を参照)、及び小分子(例えば、国際公開第02097053号、米国公開特許第20030199489号、及び米国公開特許第20080057098号を参照)がある。
【0091】
特定の実施態様において、ロミデプシンは抗有糸分裂剤(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、又はエポチロンBなどのエポチロン)と組み合わせて投与される。
【0092】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、1種以上の細胞毒性剤と組み合わせて投与される。そのような例示的な細胞毒性剤には、例えば、ゲムシタビン、デシタビン、及びフラボピリドールがある。
【0093】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、1種以上の抗葉酸剤と組み合わせて投与される。例えば、そのようないくつかの実施態様において、ロミデプシンは、フォリン酸(ロイコボリン)、メトトレキサート、プララトレキサート、プレメクストレド(premextred)、トリアジナート、及びこれらの組み合わせの1種以上と組み合わせて投与される。
【0094】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、1種以上のメチルトランスフェラーゼ阻害剤又は脱メチル化剤(例えば、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-アザシチジンなどのシチジンアナログ及びゼブラリン(1-[-D-リボフラノシル]-1,2-ジヒドロピリミジン-2-1)と組み合わせて投与される。
【0095】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、1種以上の治療用抗体と組み合わせて投与される。例えば、そのようないくつかの実施態様において、ロミデプシンは、ベバシズマブ、セツキシマブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、又はこれらの1つにより結合された抗原に結合する抗体の1種以上と組み合わされて投与される。
【0096】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、CHOP化学療法、すなわちシクロホスファミド、アドリアマイシン(すなわちドキソルビシン)、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンによる療法(例えば、Coiffierらの文献New Eng. J. Med. 346(4):235-42, 2002参照)、又はこの組み合わせのサブセットとともに投与される。
【0097】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンは、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどの抗炎症剤、鎮痛剤、制吐剤、又は解熱剤と組み合わせて投与される。
【0098】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、悪心、嘔吐、及び下痢などの消化管障害を治療する薬剤と組み合わせて投与される。そのような薬剤には、鎮吐剤、止瀉薬、補液、電解質補液を含みうる。
【0099】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンは、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム、特にカリウム及びマグネシウム(下記参照)などの電解質補液又は補充と組み合わせて投与される。
【0100】
特定の実施態様において、ロミデプシンは抗不整脈剤と組み合わせて投与される。
【0101】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、血小板増加剤(platelet booster)、例えば血小板の産生を増加させる薬剤と組み合わせて投与される。
【0102】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、エリスロポエチンなどの血球の産生を増加させる薬剤と組み合わせて投与される。
【0103】
いくつかの実施態様において、ロミデプシンは、高血糖症を予防する薬剤と組み合わせて投与される。
【0104】
特定の実施態様において、ロミデプシンは、他のHDAC又はDAC阻害剤、例えば、短鎖脂肪酸であるHDAC阻害剤(例えば、ブチラート、バルプロ酸、AN-9)、又はヒドロキサマート(hydroxyamate)(例えば、トリコスタチンA、ボリノスタット(スベロイルアニリドヒドロキサム酸(hydroxyamic acid))、PXD1、オキサムフラチン、LAQ824、LBH589、m-カルボキシ(caroboxy)ケイ皮酸ビス-ヒドロキシアミド、スクリプタイド、ピロキシアミド(pyroxyamide)、スベリンビスヒロキシアム酸(suberic bishyroxyamic acid)、アゼラインビクスヒドロキシアム酸(azelaic bixhydroxyamic acid)、SK-7041、SK-7068、CG-1521、ツバシン(Tubacin))、又はベンズアミド(例えば、MS-275、CI-994)、又は環式テトラペプチド(例えば、トラポキシンA、アピシジン、CHAP)、又は求電子ケトン(例えば、トリフルオロメトキシケトン)、又はデプシジン(Depucidin)、又はMGCD-0103とともに投与されない。
【0105】
(用途)
ロミデプシンはインビトロでもインビボでも使用できる。ロミデプシンは、ガン、例えば、リンパ腫、例えば、Bcl-2+リンパ腫のインビボの治療に特に有用である。しかし、ロミデプシンは、研究又は臨床目的でインビトロでも使用されることがある(例えば、ロミデプシンによる治療への患者の疾病の感受性の測定、作用機序の研究、細胞経路又はプロセスの解明)。
【0106】
血液悪性腫瘍は、血液、骨髄、及び/又はリンパ節を冒す種類のガンである。特定の実施態様において、該悪性腫瘍はBcl-2+血液悪性腫瘍である。特定の実施態様において、該血液悪性腫瘍はBcl-XLを過剰発現しない。特定の実施態様において、該血液悪性腫瘍はP糖タンパク質を過剰発現しない。特定の実施態様において、該ガンはリンパ腫である。いくつかの実施態様において、該ガンは皮膚T細胞リンパ腫である。他の実施態様において、該ガンは末梢性T細胞リンパ腫である。特定の実施態様において、該ガンはホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、又はバーキットリンパ腫である。
【0107】
Bcl-2発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられ、治療されうる他の種類の血液悪性腫瘍には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、及び多発性骨髄腫があるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、ロミデプシンは多発性骨髄腫の治療に使用される。特定の特別な実施態様において、該ガンは、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫である。他の実施態様において、ロミデプシンは慢性(chromic)リンパ性白血病(CLL)である。特定の実施態様において、ロミデプシンは急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用される。いくつかの実施態様において、治療の方法は、例えば本明細書に記載されるとおり遺伝子発現を評価することにより、血液悪性腫瘍を、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけるものであると特定する工程を含む。
【0108】
血液悪性腫瘍以外の他のガンも治療可能である。特定の実施態様において、ガンは、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられる固形腫瘍である。治療されうる例示的なガンには、結腸ガン、肺ガン、骨ガン、膵臓ガン、胃ガン、食道ガン、皮膚ガン、脳ガン、肝臓ガン、卵巣ガン、子宮頸ガン、子宮ガン、精巣ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、神経内分泌ガンなどがある。特定の実施態様において、ロミデプシンは膵臓ガンの治療に使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンは前立腺ガンの治療に使用される。特定の具体的な実施態様において、該前立腺ガンはホルモン不応性前立腺ガンである。いくつかの実施態様において、治療の方法は、例えば本明細書に記載されるとおり遺伝子発現を評価することにより、固形腫瘍を、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられるものであると特定する工程を含む。
【0109】
ロミデプシンを、難治性又は再発性の悪性腫瘍、例えば、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられる難治性又は再発性の悪性腫瘍の治療に使用できる。特定の実施態様において、該ガンは難治性及び/又は再発性血液悪性腫瘍である。例えば、該ガンは特定の化学療法剤に抵抗性がある。特定の実施態様において、該ガンはボルテゾミブ抵抗性悪性腫瘍である。他の実施態様において、該ガンはステロイド療法に抵抗性がある。特定の実施態様において、該ガンはステロイド治療に抵抗性のある血液悪性腫瘍である。特定の実施態様において、該ガンはステロイド抵抗性リンパ腫である。特定の特別な実施態様において、該ガンはデキサメタゾン抵抗性リンパ腫である。特定の特別な実施態様において、該ガンはプレドニゾロン抵抗性リンパ腫である。いくつかの実施態様において、治療の方法は、例えば本明細書に記載されるとおり遺伝子発現を評価することにより、難治性又は再発性の悪性腫瘍を、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられるものであると特定する工程を含む。
【0110】
ロミデプシンを使用して、インビトロで細胞(例えば、Bcl-2+細胞)を治療及び/又は殺傷することもできる。インビトロでの治療の方法は、例えば本明細書に記載されるとおり遺伝子発現を評価することにより、細胞を、Bcl-2の発現、Bcl-XLの過剰発現の欠如、P糖タンパク質の過剰発現の欠如の1つ以上により特徴づけられる細胞であると治療の前に特定する工程を含みうる。いくつかの実施態様において、これらの因子の1つ以上の発現は、治療の間又は後にも評価される。特定の実施態様において、細胞殺傷のために、細胞毒性濃度のロミデプシンが細胞と接触する。他の実施態様において、致死量未満の濃度のロミデプシンが細胞の治療に使用される。特定の実施態様において、ロミデプシンの濃度は0.01nMから100nMの範囲である。特定の実施態様において、ロミデプシンの濃度は0.1nMから50nMの範囲である。特定の実施態様において、ロミデプシンの濃度は1nMから10nMの範囲である。
【0111】
特定の実施態様において、該細胞は脊椎動物細胞である。特定の実施態様において、該細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施態様において、該細胞はヒトの細胞である。該細胞は、任意の成長段階にあるヒトの男性又は女性から誘導してよい。特定の実施態様において、該細胞は霊長類の細胞である。他の実施態様において、該細胞は齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ)から誘導される。特定の実施態様において、該細胞は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタなどの飼養化された動物から誘導される。該細胞は、トランスジェニックマウスなど、遺伝子組換えされた動物又は植物から誘導してもよい。
【0112】
使用される細胞は、野生型でも突然変異細胞でもよい。該細胞は、遺伝子組換え(例えば、Bcl-2を過剰発現するように組換え)されていてよい。特定の実施態様において、該細胞は正常な細胞である。特定の実施態様において、該細胞は血液細胞である。特定の実施態様において、該細胞は白血球である。特定の実施態様において、該白血球はリンパ球(例えば、T細胞又はB細胞)である。特定の実施態様において、該白血球は骨髄細胞(例えば、マクロファージ又は単球)である。特定の特別な実施態様において、該細胞は白血球の前駆細胞(例えば、幹細胞、始原細胞、芽細胞)である。特定の実施態様において、該細胞は新生細胞である。特定の実施態様において、該細胞はガン細胞である。特定の実施態様において、該細胞は、血液悪性腫瘍、例えば、皮膚T細胞リンパ腫などのリンパ腫に由来する。他の実施態様において、該細胞は固形腫瘍に由来する。例えば、該細胞は、患者の腫瘍(例えば、生検又は外科切除から)に由来してよい。特定の実施態様において、該細胞は、対象の血液試料又は骨髄生検に由来する。特定の実施態様において、該細胞はリンパ節生検に由来する。そのような細胞毒性の試験は、患者がロミデプシン療法に反応するかどうかを決定するのに有用なことがある。そのような試験は、悪性腫瘍の治療に必要な用量を決定するのにも有用なことがある。併用療法に対する患者のガンの感受性のこのような試験は、患者への効果が全くない不必要な薬剤投与を防ぐであろう。この試験は、患者のガンがロミデプシンに対して特に感受性が高い場合、より低い投与量の利用を可能にもする。
【0113】
他の実施態様において、該細胞はガン細胞系から誘導される。特定の実施態様において、該細胞は血液悪性腫瘍、例えば、本明細書で議論されたものなどのBcl-2+リンパ腫由来である。ヒト白血病細胞系には、U937、HL-60、THP-1、Raji、CCRF-CEM、及びJurkatがある。例示的なCLL細胞系には、JVM-3及びMEC-2がある。例示的な骨髄腫細胞系には、MM1.S、MM1.R(デキサメタゾン抵抗性)、RPMI8226、NCI-H929、及びU266がある。例示的なリンパ腫細胞系には、Karpas、SUDH-6、SUDH-16、L428、KMH2、及びGrantaマントルリンパ腫細胞系がある。特定の実施態様において、該細胞は、AML細胞又は多発性骨髄腫(CD138+)細胞である。特定の実施態様において、該細胞は、造血幹細胞又は造血前駆細胞である。例えば、特定の実施態様において、該細胞は、CD34+骨髄細胞などの造血前駆細胞である。特定の実施態様において、該細胞系は、特定の化学療法剤に抵抗性がある。他の実施態様において、該細胞系はステロイド抵抗性(例えば、デキサメタゾン抵抗性、プレドニゾロン抵抗性)である。
【0114】
本発明のこれらの態様及び他の態様は以下の実施例を考察すればさらに認識されるだろうが、実施例は本発明の特定の特別な実施態様を説明するものであり、請求項により定義される範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0115】
(実施例1−ロミデプシンはインビトロでBcl-2の抗アポトーシス効果を克服することができる)
【0116】
Bcl-2を過剰発現している3種の異なる原発性E-mycリンパ腫及び対照のベクター導入E-myc細胞を、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)オキサムフラチン及びロミデプシンに対する感受性に関して試験した。両薬剤は、細胞外膜損傷(outer cell membrane damage)(図1A〜F)及びミトコンドリア膜電位の低下(図1B)により評価されるとおり、24時間用量反応アッセイにおいて、E-mycリンパ腫を効果的に殺傷できたが、E-myc/Bcl-2リンパ腫は殺傷できなかった。
【0117】
Bcl-2のHDACi阻害効果が持続性かどうかを判別するために、24時間でEmycリンパ腫を殺傷するに十分な投与量のオキサムフラチン(0.1mol/L)及びロミデプシン(3.0nmol/L)を利用して時間経過実験を実施した。Bcl-2の過剰発現は、オキサムフラチンへの細胞の72時間の連続曝露の後でさえ、このHDACiへの抵抗性を与えた(図2A)。対照的に、ロミデプシンは、4種のE-myc/Bcl-2リンパ腫のうち2種(4242E-myc/Bcl-2及び229E-myc/Bcl-2)を時間経過とともに殺傷できたが、独立に誘導された他の2種のE-myc/Bcl-2リンパ腫(102E-myc/Bcl-2及び226E-myc/Bcl-2)は、ロミデプシンに対して比較的感受性の低いままであった。
【0118】
生存促進性Bcl-2タンパク質の主な機能は、Bak及びBaxタンパク質の活性を阻害し、それによりミトコンドリア膜を損傷から保護することである(Coryらの文献Nat. Rev. Cancer 2:647-656, 2002)。4242E-myc/Bcl-2及び229E-myc/Bcl-2リンパ腫においてロミデプシンにより媒介されるアポトーシスの誘起がミトコンドリア膜の変動によるものか、又は他の機構によるものかを判断するため、HDACi誘起性ミトコンドリア外膜易透化(MOMP)を、テトラメチルローダミンエチルエステルによる染色(Molecular Probes)により定量化した。図2Aに示されたデータと一致して、オキサムフラチン及びロミデプシンは、24時間の治療の後に、4種のE-myc/MSCVリンパ腫の全てに、時間経過とともに上昇する強いMOMPを誘起した(図2B)。しかし、オキサムフラチンは、Bcl-2を過剰発現しているE-mycリンパ腫のいずれにも、MOMPの実質的な変化を媒介しなかった。対照的かつ図2Aに示されたデータと一致して、ロミデプシンは、4242E-myc/Bcl-2及び229E-myc/Bcl-2にMOMPを誘起したが、この効果は、226E-myc/Bcl-2及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫では著しく低下したか、又は完全に失われた。
【0119】
次に、オキサムフラチン及びロミデプシンにより3日にわたり治療されたE-myc/Bcl-2リンパ腫の細胞周期プロファイルを評価した。3日にわたり226E-myc/Bcl-2(表1)又は102E-myc/Bcl-2リンパ腫をオキサムフラチン又はロミデプシンにより治療すると、S期にある細胞のパーセンテージが低下し、G1期の細胞が増加した(表1)。2n DNA含量(サブG1)の低下をDNA断片化、したがってアポトーシスの表示として使用すると、オキサムフラチン及びロミデプシンのどちらも、補充された薬剤への連続的な3日間の曝露の後でさえ、実質的な細胞死を誘起しなかった。4242E-myc/Bcl-2(表1)及び229E-myc/Bcl-2リンパ腫をオキサムフラチンにより治療した場合に、類似の結果が見られた。対照的に、4242E-myc/Bcl-2(表1)及び229E-myc/Bcl-2(データ示さず)リンパ腫をロミデプシンにより治療すると、アポトーシスを表すDNA断片化を示す細胞のパーセンテージが上昇した。まとめると、これらのデータは、Bcl-2の過剰発現が、ヒドロキサメート系HDACiであるオキサムフラチンのアポトーシス活性を強く阻害することを示している。対照的に、オキサムフラチンが誘起するアポトーシスに完全に抵抗性のある2種のE-myc/Bcl-2リンパ腫は、24時間を超える薬剤への曝露後にロミデプシンが媒介するアポトーシスに感受性があった。
【0120】
ロミデプシン及びオキサムフラチンが、E-mycリンパ腫を殺傷できる各化合物の投与量で同等なヒストン高アセチル化を誘起することを確実にするために、ウェスタンブロット分析を実施してヒストンH3及びH4のアセチル化状態を評価した。図2Cに示されているとおり、3.0nmol/Lのロミデプシン及び0.1mmol/Lのオキサムフラチンによる4242E-mycリンパ腫の治療は、24時間の時間経過でヒストンH3及びH4の同等なアセチル化を誘起した。さらに、3.0nmol/Lのロミデプシンを4242E-myc/Bcl-2及び226E-myc/Bcl-2リンパ腫に加えると、時間依存的にヒストンアセチル化の同等な増加を起こした。これらのデータは、4242E-myc/Bcl-2及び226E-myc/Bcl-2のロミデプシンに対する異なる感受性が、ロミデプシンが誘起するアポトーシスに比較的抵抗性があるか、又は感受性のあるリンパ腫における化合物のHDAC阻害活性の変動に関係しないことを示す。
【表1】

【0121】
(実施例2−インビボでのE-myc及びE-myc/Bcl-2リンパ腫に対するロミデプシンのアポトーシス活性及び治療活性)
【0122】
インビトロのデータは、ロミデプシンがE-mycリンパ腫を迅速に殺傷でき、時間経過とともに229Emyc/Bcl-2及び4242E-myc/Bcl-2リンパ腫を殺傷できるが、226E-myc/Bcl-2も102E-myc/Bcl-2リンパ腫を殺傷できなかったことを示す。類似の結果がインビボでも観察されるかを判断するため、リンパ腫を有するマウスのインビボでのロミデプシンによる治療、経時的な腫瘍の採取、及び蛍光活性化細胞選別に基づくアッセイを利用するアポトーシスの評価を含むアポトーシスアッセイを実施した。
【0123】
C57BL/6マウスのリンパ節で成長した4種のE-mycリンパ腫は全てロミデプシンに感受性があり、バックグラウンドを超えたアポトーシス細胞の増加がロミデプシン添加の8から12時間後に検出された(図3A〜D)。アポトーシスのパーセンテージは、細胞外膜損傷及びDNA断片化の表示を利用すると、24時間の時間経過にわたり上昇した(図3A〜D)。インビトロで見られた結果と一致して、4種のE-myc/Bcl-2リンパ腫は全て、HDACiへの曝露24時間後ロミデプシンが誘起するアポトーシスに対して抵抗性であった(図3E〜H)。226E-myc/Bcl-2及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫は、それぞれ36時間及び48時間の時点でさえも、インビボでロミデプシンが誘起するアポトーシスに感受性のないままであった(図3G及びH)。しかし、インビトロデータと一致して、4242E-myc/Bcl-2(図3E)及び229E-myc/Bcl-2(図3F)リンパ腫は、ロミデプシンへの曝露後のより遅い時点でアポトーシスを経験したが、インビトロアッセイの場合と同様に、ほとんどの時点でこれらのBcl-2過剰発現リンパ腫で達成されたアポトーシスのレベルは、親E-mycリンパ腫に観察されるより著しく低かった。
【0124】
次に、E-myc及びE-myc/Bcl-2リンパ腫に対するロミデプシンの治療効果を評価して、インビボでのロミデプシンによるアポトーシスの誘起が治療上の利益につながるかを決定した。療法の実験のために、E-mycリンパ腫をC57BL/6マウスに移植し、末梢血中のWBC数が病理閾値(pathologic threshold)(>13×103/L)に達したときにロミデプシン又はビヒクルによる治療を開始した。E-mycリンパ腫を有しロミデプシンにより治療されたマウスの生存は、ビヒクル処理マウスに比べ著しく延びた(図4A〜D)。興味深いことに、ロミデプシンは、229E-myc/Bcl-2及び4242E-myc/Bcl-2リンパ腫を有するマウスの生存も著しく延ばしたが、102E-myc/Bcl-2又は226E-myc/Bcl-2リンパ腫を有するマウスには、治療上の利益をほとんど又は全く与えなかった(図4E〜H)。
【0125】
(実施例3−226E-myc/Bcl-2及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫におけるBcl-XLの発現増加は、ロミデプシンが誘起するアポトーシスに対する抵抗性に関連する)
【0126】
226E-myc/Bcl-2及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫が、229E-myc/Bcl-2及び4242E-myc/Bcl-2リンパ腫に比べてロミデプシンが誘起するアポトーシスに対する抵抗性を持ったままである理由を確定するために、細胞における生存促進性Bcl-2タンパク質の発現を検査した。細胞は全ておよそ同等な量の外因性Bcl-2を過剰発現していた(図5A)。次に、これらのリンパ腫における生存促進性Bcl-2ファミリーメンバーの内因性発現を評価した(図5B)。Bcl-w, Mcl-1及びA1の発現は、E-myc/Bcl-2リンパ腫の全てでおよそ同等であった。対照的に、Bcl-XLのレベルは、229E-myc/Bcl-2及び4242E-myc/Bcl-2リンパ腫に比べると、226E-myc/Bcl-2及び102E-myc/Bcl-2リンパ腫において著しく高かった。
【0127】
Bcl-XLの発現増加がロミデプシンに対する抵抗性を与えうるかどうかを決定するために、4242E-myc/Bcl-XLリンパ腫を産生し、HDACiに対する感受性を試験した。4242E-myc及び4242E-myc/Bcl-XLリンパ腫を24時間にわたり、ロミデプシン又はオキサムフラチンの濃度を増加させて治療すると、4242E-mycリンパ腫では細胞膜の完全性及びミトコンドリア機能が用量依存的に失われたが、4242E-myc/Bcl-XLリンパ腫は影響をうけなかった(図6A及びB)。さらに、細胞周期分析は、オキサムフラチン及びロミデプシンの増加する投与量に応答してE-mycリンパ腫ではDNA断片化が起こるが、E-myc/Bcl-XLリンパ腫が細胞周期のG1期で停止したことを明らかにした。類似の結果は、102E-myc/Bcl-XL及び229E-myc/Bcl-XLリンパ腫を使用したときにも見られた。4242E-myc/Bcl-XLリンパ腫をロミデプシン又はオキサムフラチンで72時間の時間経過で治療すると、細胞外膜の易透化がほとんど又は全く起こらず、ミトコンドリア膜電位の著しい低下もなかった(図6C及びD)。対照的に、親E-mycリンパ腫は、最初の24時間以内にロミデプシン及びオキサムフラチンにより効果的に殺傷される(図6C及びD)。類似の結果は、102E-myc/Bcl-XL及び229E-myc/Bcl-XLリンパ腫を使用したときにも観察された。
【0128】
(実施例4−材料及び方法)
【0129】
(E-mycリンパ腫、細胞培養、及び試薬)
【0130】
E-myc、E-myc/Bcl-2、及びE-myc/Bcl-XLリンパ腫を先に記載されたとおりに発生させ(Lindemannらの文献Proc. Nat. Acad. Sci. USA 104:8071-8078, 2007)、10%FCS、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1mmol/LのL-アスパラギン、及び50mol/Lの2-メルカプトエタノールを補った高グルコースDMEM培地で6ウェルプレート(Greiner Bio-One)中で培養した。ストック溶液(10mmol/L)の調製のため、HDACiをDMSOに溶かした。
【0131】
(ウェスタンブロット分析)
【0132】
E-mycリンパ腫細胞を、先に記載されたとおり(Lindemannらの文献Proc. Nat. Acad. Sci. USA 104:8071-8078, 2007)、プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン、ペプスタチン、及びフェニルメチルスルホニルフルオライド;Sigma-Aldrich社製)を補った溶解バッファ[0.15mol/LのNaCl、10mmol/LのTris-HCl(pH 7.4)、5mol/LのEDTA、1%のTriton X-100]中で溶解した。10%又は15%のSDSポリアクリルアミドゲル上でタンパク質(30〜50g)を分離し、Immobilon-Pナイロン膜(Millipore)上に電気ブロッティングした。膜を、以下の抗体:抗マウスBcl-2(BD PharMingen社製)、抗マウスBcl-XL(BD PharMingen社製)、抗マウスBcl-w(Chemicon Australia社製)、抗マウスMcl-1(Rockland社製)、抗マウスA1(Sapphire Biosciences社製)、抗Flagタグ(Sigma-Aldrich社製)、抗アセチル化ヒストンH3及び抗アセチル化ヒストンH4(Upstate Biosystems社製)、抗β-アクチン(Sigma-Aldrich社製)、抗チューブリン(Sigma-Aldrich社製)とともに一晩4℃でインキュベートし、続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体(DAKO社製)とともにインキュベートした。免疫反応性のバンドを、増強した化学発光で可視化した(Amersham)。
【0133】
(インビトロ細胞死分析)
【0134】
E-mycリンパ腫細胞(5×105/mL)を、24ウェルプレート(Greiner Bio-One社製)の1mL中の細胞培養培地で、示された化合物の存在下で20時間インキュベートした。トリパンブルー色素排除アッセイ、ヨウ化プロパジウム取込み、アネキシンV染色、細胞周期分析、又はテトラメチルローダミンエチルエステル染色により測定した細胞の生存率を、先に記載されたとおり測定した(Lindemannらの文献Proc. Nat. Acad. Sci. USA 104:8071-8078, 2007)。
【0135】
(マウス)
【0136】
C57BL/6マウス(6〜8週齢)をインビボアポトーシスアッセイ及び療法の試験に使用した。PCR系遺伝子型判定及びウェスタンブロット分析を利用して、リンパ腫の遺伝子型(データ示さず)を確認した。
【0137】
(インビボアポトーシス及び療法のアッセイ)
【0138】
インビボアポトーシスアッセイのために、C57BL/6マウスに、E-mycリンパ腫(1匹あたり5×105細胞)を注射し、10日から15日後にリンパ節が十分触診可能になると、ロミデプシン(5.6mg/kg)を静脈内投与した。示された時点の後、マウスを屠殺し、蛍光活性化細胞選別系アッセイのために上腕リンパ節から細胞を採取し、アポトーシスシグナル伝達を測定した(Lindemannらの文献Proc. Nat. Acad. Sci. USA 104:8071-8078, 2007)。ロミデプシンの治療効力を評価するために、C57BL/6マウスに、示された遺伝子型のE-mycリンパ腫を静注した(1匹あたり5×105細胞)。次いで、末梢WBC数を、13×103/Lを超えるまでモニターし(Sysmex Hematology Analyzer K-1000)、ロミデプシンを5.6mg/kgで、4日ごとに合計4回静脈内投与した。予め、このレジメンが、リンパ腫を有するマウスの最大耐用量であることを確定していた。対照コホートのマウスには対応する量のビヒクルを与えた。コホートはそれぞれ8から11匹のマウス、遺伝子型あたり2から3の独立に誘導されたリンパ腫からなった。末梢WBC数及び体重を毎週測定した。極度の消耗の兆候がある場合、又は上腕(brachioaxial)リンパ節の増大により示されるとおりリンパ腫が再発した場合は、マウスを安楽死させ、剖検を行った。治療効力の分析のために、腫瘍誘起死亡「事象」を記録した。カプラン・マイヤー分析を行い、ログランク(マンテル・コックス)検定を利用して比較した(MedCalcソフトウェア、バージョン8.0.2.0)。
【0139】
(等価物及び範囲)
前記は、本発明の特定の非限定的な好ましい実施態様の説明であった。当業者は、本明細書に記載された本発明の具体的な実施態様に対する多くの等価物を、慣例の実験のみを利用して認識するだろうし、又は確かめることができるだろう。当業者は、この明細書に対する種々の変更及び改良が、以下の請求項に定義される本発明の精神又は範囲から逸脱せずになすことができることを認識するだろう。
【0140】
請求項中で、「1つの(a, an)」及び「前記、該(the)」などの冠詞は、反対であると示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ又は2つ以上を表すことがある。1群の1つ以上の要素の間に「又は(or)」を含む請求項又は記載は、反対であると示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、群の要素の1つ、2つ以上、又は全てが、ある生成物又は方法に存在し、利用され、又は他の面で関連する場合に満たされているとみなされる。本発明は、群の正確に1つの要素がある生成物又は方法に存在し、利用され、又は他の面で関連する実施態様を含む。本発明は、群の2つ以上又は全ての要素がある生成物又は方法に存在し、利用され、又は他の面で関連する実施態様も含む。さらに、本発明が、1つ以上の請求項又は明細書の関連部分由来の1つ以上の制限、要素、節、説明の用語などが他の請求項に導入されている全ての変形、組み合わせ、及び並べ替えを包含することが理解できよう。例えば、他の請求項に従属する請求項は、同じ基本請求項に従属する他の請求項の中に見いだされる1つ以上の制限を含むように修正することができる。さらに、請求項が組成物を列挙している場合、特記されない限り、又は矛盾若しくは不一致が起こると当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される目的のいずれかのために組成物を利用する方法が含まれ、本明細書に開示される製造方法又は当分野に公知の他の方法のいずれかにより組成物を製造する方法が含まれることが理解できよう。さらに、本発明は、本明細書に開示された組成物を調製する方法のいずれかにより製造された組成物を包含する。
【0141】
要素が例えばマーカッシュ群の形式でリストとして表される場合、要素の各下位群も開示され、任意の要素(複数可)が群から除去可能であることが理解できよう。「含む(comprising)」という用語は開放的であるものとし、追加の要素又は工程を含むことが可能なことにも留意されたい。一般に、本発明又は本発明の態様が、ある要素、特徴、工程などを含むと言及される場合、本発明の特定の実施態様又は本発明の態様は、そのような要素、特徴、工程などからなるか、又は基本的にそれらからなることも理解されたい。簡潔にするため、そのような実施態様は本明細書にそのとおりの言葉で具体的に述べられなかった。そのため、1つ以上の要素、特徴、工程などを含む本発明の各実施態様では、本発明は、これらの要素、特徴、工程などからなるか、又は基本的にそれらからなる実施態様も提供する。
【0142】
範囲が与えられている場合、端点は含まれる。さらに、特記されない限り、又は文脈及び/又は当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる実施態様中の明示されたその範囲内の任意の具体的な値を、文脈から明らかにそうでないと示されない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができることが理解できよう。特記されない限り、又は文脈及び/又は当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、その範囲内の任意の下位範囲を想定することができるが、下位範囲の端点はその範囲の下限の単位の10分の1と同じ正確さで表されることも理解できよう。
【0143】
さらに、本発明の特定の実施態様が、任意の1つ以上の請求項から明らかに除外されうることが理解できよう。本発明の組成物及び/又は方法の任意の実施態様、要素、特徴、用途、又は態様は、任意の1つ以上の請求項から除外することができる。例えば、本発明の特定の実施態様において、生物活性薬剤は増殖抑制薬ではない。簡潔にするために、1つ以上の要素、特徴、目的、又は態様が除外されている実施態様の全てが本明細書に明確に述べられてはいない。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C−D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bcl-2を発現しているリンパ腫を有すると特定された対象を提供する工程、及び該対象へ治療上有効な量のロミデプシンを投与する工程を含む、対象のリンパ腫を治療する方法。
【請求項2】
前記リンパ腫の細胞がBcl-2を過剰発現している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リンパ腫の細胞におけるBcl-2発現を測定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
Bcl-2発現を、前記リンパ腫由来の試料においてインビトロで測定する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
Bcl-2ポリペプチド発現を測定する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
Bcl-2 mRNA発現を測定する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記リンパ腫がBcl-XLを過剰発現していない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記リンパ腫の細胞におけるBcl-2の発現がBcl-XLの発現以上である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記リンパ腫がBcl-XLを発現していない、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記リンパ腫の細胞におけるBcl-XL発現を測定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
Bcl-XL発現を、前記リンパ腫由来の試料においてインビトロで測定する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
Bcl-XLポリペプチド発現を測定する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
Bcl-XL mRNA発現を測定する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記リンパ腫がP糖タンパク質を過剰発現していない、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記リンパ腫の細胞におけるP糖タンパク質発現を測定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記リンパ腫がT細胞リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記リンパ腫が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記リンパ腫が末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記リンパ腫が非ホジキンリンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記リンパ腫がホジキンリンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記リンパ腫が濾胞性リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記リンパ腫がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記リンパ腫がマントル細胞リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記リンパ腫がバーキットリンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
ロミデプシンが以下の式のものである、請求項1記載の方法。
【化1】

【請求項27】
前記リンパ腫が難治性リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記リンパ腫が再発性リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記リンパ腫がステロイド抵抗性リンパ腫である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
ロミデプシンの治療上有効な量が、およそ0.5mg/m2からおよそ28mg/m2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
ロミデプシンの治療上有効な量が、およそ1mg/m2からおよそ15mg/m2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
ロミデプシンの治療上有効な量が、およそ4mg/m2からおよそ15mg/m2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
ロミデプシンの治療上有効な量が、およそ8mg/m2からおよそ14mg/m2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
ロミデプシンの治療上有効な量が、およそ4mg/m2からおよそ10mg/m2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
ロミデプシンの治療上有効な量がおよそ8mg/m2である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
ロミデプシンの治療上有効な量がおよそ10mg/m2である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
ロミデプシンの治療上有効な量がおよそ12mg/m2である、請求項1記載の方法。
【請求項38】
ロミデプシンの治療上有効な量がおよそ14mg/m2である、請求項1記載の方法。
【請求項39】
ロミデプシンを静脈内に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項40】
ロミデプシンを、隔月に、毎月、3週ごとに、隔週に、毎週、週に2回、毎日、又は変動可能な間隔で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項41】
ロミデプシンを毎週投与する、請求項1記載の方法。
【請求項42】
第2の抗新生物剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項43】
Bcl-XLの発現又は活性の阻害剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項44】
細胞毒性剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
ステロイド剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項46】
前記ステロイド剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸及び酢酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酪酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、シピオン酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、リン酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)ナトリウム、コハク酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)ナトリウム、吉草酸コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリソン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フロ酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、及びトリアムシノロンヘキサアセトニド、又はこれらの合成アナログ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記ステロイド剤がプレドニゾロンである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項46記載の方法。
【請求項49】
プロテアソーム阻害剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項50】
前記プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI-0052)、ラクタシスチン、エポキソマイシン(Ac(Me)-Ile-Ile-Thr-Leu-EX)、MG-132(Z-Leu-Leu-Leu-al)、PR-171、PS-519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP-1612、CVT-63417、PS-341(ピラジルカルボニル-Phe-Leu-ボロネート)、PSI(Z-Ile-Glu(OtBu)-Ala-Leu-al)、MG-262(Z-Leu-Leu-Leu-bor)、PS-273(MNLB)、オムラリド(clasto-ラクタシスチン-β-ラクトン)、NLVS(Nip-Leu-Leu-Leu-ビニルスルホン)、YLVS(Tyr-Leu-Leu-Leu-vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル-Phe-Leu-ボロネート)、ALLN(Ac-Leu-Leu-Nle-al)、3,4-ジクロロイソクマリン、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド、TMC-95A、グリオトキシン、EGCG((-)-エピガロカテキン-3-ガレート)、及びYU101(Ac-hFLFL-ex)からなる群から選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
キナーゼ阻害剤の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項52】
前記第2の抗新生物剤がロミデプシンとともに投与される、請求項42記載の方法。
【請求項53】
前記第2の抗新生物剤がロミデプシン投与の前又は後に投与される、請求項42記載の方法。
【請求項54】
Bcl-2を発現していると特定されたリンパ腫細胞を提供する工程、及び該細胞にロミデプシンを投与する工程を含む、Bcl-2発現リンパ腫細胞を治療する方法。
【請求項55】
前記細胞を殺傷するに十分な濃度及び期間、ロミデプシンを該細胞に投与する、請求項55記載の方法。
【請求項56】
前記細胞がBcl-2を過剰発現している、請求項54記載の方法。
【請求項57】
投与の工程の前に、前記細胞におけるBcl-2発現を測定する工程を含む、請求項54記載の方法。
【請求項58】
Bcl-2ポリペプチド発現を測定する、請求項54記載の方法。
【請求項59】
Bcl-2 mRNA発現を測定する、請求項54記載の方法。
【請求項60】
前記細胞がBcl-XLを過剰発現していない、請求項54記載の方法。
【請求項61】
前記細胞におけるBcl-2の発現がBcl-XLの発現以上である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記細胞におけるBcl-2の発現が、Bcl-XLの発現の少なくとも2倍である、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記細胞におけるBcl-XL発現の測定を含む、請求項54記載の方法。
【請求項64】
Bcl-XLポリペプチド発現を測定する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
Bcl-XL mRNA発現を測定する、請求項63記載の方法。
【請求項66】
ロミデプシンを少なくとも24時間投与する、請求項54記載の方法。
【請求項67】
ロミデプシンを少なくとも72時間投与する、請求項54記載の方法。
【請求項68】
ロミデプシン(romdepsin)を少なくとも1nmol/Lの濃度で投与する、請求項54記載の方法。
【請求項69】
ロミデプシンを少なくとも3nmol/Lの濃度で投与する、請求項54記載の方法。
【請求項70】
リンパ腫を有する対象由来の試料の提供及び
該リンパ腫の細胞におけるBcl-2発現の測定
を含む、ロミデプシンによる治療の候補を特定する方法であって、該リンパ腫の細胞におけるBcl-2の発現は該対象がロミデプシンによる治療の候補であることを示す、前記方法。
【請求項71】
リンパ腫を有する対象由来の試料の提供及び
該リンパ腫の細胞におけるBcl-2及びBcl-XLの発現の測定
を含む、ロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者を特定する方法であって、該リンパ腫の細胞におけるBcl-XLの発現以上であるBcl-2の発現は該対象がロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者であることを示す、前記方法。
【請求項72】
リンパ腫を有する対象由来の試料の提供及び
該リンパ腫の細胞におけるBcl-XL発現の測定
を含む、ロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者を特定する方法であって、該リンパ腫の細胞におけるBcl-XLの過剰発現の欠如は該対象がロミデプシンによる治療の候補リンパ腫患者であることを示す、前記方法。
【請求項73】
Bcl-XLの発現がないリンパ腫を有すると特定された対象の提供及び
該対象への治療上有効な量のロミデプシンの投与
を含む、対象のリンパ腫を治療する方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−506428(P2012−506428A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533150(P2011−533150)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081107
【国際公開番号】WO2010/047714
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511102295)
【出願人】(511025293)
【Fターム(参考)】