説明

ガードケーブル

【課題】道路の延長方向へ一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本のケーブルを架設して車両飛び出し防止を図るガードケーブルを提供する。
【解決手段】鋼管支柱3が側面を道路の延長方向に相対する配置で一定間隔をあけて立設されると共に、3本以上のケーブル2を上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルは、支柱の中空部又は外周面に、隣接する上下のケーブルの間に位置するケーブル間隔保持材7が抜き差し可能に嵌められてケーブルの上下間隔を保持されており、上位に位置するケーブル間隔保持材7bの下端部は、下位に位置するケーブル間隔保持材7aの上端部に接する構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の延長方向へ一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本のケーブルを架設して車両飛び出し防止を図るガードケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の延長方向へ一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本にケーブルを架設して成るガードケーブルが、主に中央分離帯や路肩に設置されている。その目的は、進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道などに逸脱するのを防ぐと共に、車両乗員へのダメージ及び車両の損傷を最小限にとどめて、車両の進行方向を正常な方向に復元させることである。
こうしたガードケーブルとして、本出願人は、先の出願で地中と抜き挿し可能に立設した支柱が車両衝突時に進行方向へ積極的に倒れると共に、同支柱のスリット内に収められたケーブルが容易に支柱から外れることで、倒れる支柱と共にケーブルの高さが低下することを防いで車両がケーブルを乗り越えることを防止し、衝突時の運動エネルギーが支柱とケーブルとで効果的に吸収でき、支柱が折れ曲がって反対車線側へ飛び出し二次的被害が生じることを防止できる構成のガードケーブルを発明した。しかし、前記支柱を積極的に倒す構造のガードケーブルにおいて、複数本配置される各ケーブルの上下の間隔を保持する良好なケーブル間隔保持材を用いたガードケーブルは見聞きしないし、開示もない。
【0003】
ところで、現在一般的に実用に供されているガードケーブルに使用されるケーブル間隔保持材として、例えば下記の特許文献1には、図11A、図11Bに示すように、筒型の略四角柱で、地面に深く植設された支柱11と支柱11とに密接に固定されたケーブル14の略中央部に一定間隔で設置され、その一方の外周面に反射板12を貼付し、他方の外周面にケーブルを固定させるための固定用溝13がケーブル14の本数に応じて設けられており、差込棒15を用いて前記ケーブル14へ固定するケーブル間隔保持材10が開示されている。
また、特許文献2には支柱本体の上下方向にケーブル間隔保持材が固定され、同間隔保持材のケーブル押さえ部でケーブルを挟持して成るガードケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270467号公報
【特許文献2】実開平1−111710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1の間隔保持材10は、支柱11を地中深く植設して、同支柱が衝突エネルギーにしっかり耐える構造のガードケーブルに使用されるものである。また、特許文献2のケーブル間隔保持材は支柱本体に取り付られてケーブルをしっかり挟持する構成のガードケーブルに使用されるものである。したがって、車両の衝突時に支柱を積極的に道路の延長方向に倒す構造で、且つケーブル間隔保持材が支柱から効果的に外れてケーブルが支柱から外れることを阻害せず、乗員の安全を発揮する良好なガードケーブルではなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、支柱が車両の衝突時に道路の延長方向に積極的に倒れる構成のガードケーブルにおいて、ケーブル間隔保持材は支柱の転倒に伴って支柱から効果的に外れてケーブルが支柱から外れることを阻害せず、衝突した支柱の前後に位置する支柱でケーブルの高さ位置及び上下間隔とを健全な状態に保持でき、車両の飛び出しを確実に防止して乗員の安全を可及的に確保できるガードケーブルを提供することにある。
【0007】
本発明に次の目的は、衝突時に支柱のスリットが開いて二次的被害の要因となることを効果的に防止できるガードケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るガードケーブルは、
鋼管支柱が側面を道路の延長方向に相対する配置で一定間隔をあけて立設されると共に、3本以上のケーブルを上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルであって、
前記支柱は、道路の延長方向に相対峙する側面に、上端から下方へ切り欠いたスリットが設けられ、
前記3本以上のケーブルは、上下に間隔を開けて前記スリットを貫通させ支柱間に架設されており、
前記支柱の中空部又は外周面には、隣接する上下のケーブルの間に位置するケーブル間隔保持材が抜き差し可能に嵌められることで、ケーブルの上下間隔を保持されており、
上に位置するケーブル間隔保持材の下端部は、下に位置するケーブル間隔保持材の上端部に接することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
ケーブル間隔保持材は、上方若しくは下方に凹部が設けられており、前記凹部にケーブルを配設することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したガードケーブルにおいて、
隣接する上下の間隔保持材同士は、一方の間隔保持材に設けられた雄部と他方の間隔保持材に設けられた雌部とが相対峙する配置で連接されて積み重ねられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
支柱の中空部内へ抜き挿し可能なケーブル間隔保持材は、支柱の外周を囲むスリット開き防止用のリング部材と、スリットへ挿入する繋ぎ部分を介して連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
支柱の中空部内へ抜き挿し可能なケーブル間隔保持材と、支柱の外周を囲むスリット開き防止用のリング部材とは一体形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
支柱は、平面視が長方形であり、その長辺側が道路の延長方向に相対峙する配置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜6に記載したガードケーブルは、以下の効果を奏する。
本発明は、角形鋼管支柱が、その側面(平面視の長辺側)を道路の延長方向に相対する配置で一定間隔をあけて立設され、3本以上のケーブルを上下に間隔をあけて支柱間に架設されて成るガードケーブルである。つまり、車両が支柱へ衝突した際に積極的に道路の延長方向へ倒れる構成とされている。
このガードケーブルを構成する上記支柱の中空部内及び/又は外周面の上下方向に、ケーブル間隔保持材(以下、単に間隔保持材とも云う。)が3本のケーブル間に抜き挿し可能に載置される。
【0015】
したがって、前記支柱は車両が前記支柱の前後面に衝突し、同支柱が道路の延長方向へ積極的に倒れることに伴い、スリット内のケーブル及び間隔保持材が容易に抜けるので、車両が支柱へ衝突して転倒しても、各ケーブルは同支柱の前後に位置する他の支柱によりその高さ及び上下の間隔が依然として健全状態に確実に保持され、各ケーブルが下方又は上方へ引っ張られて上下左右方向への撓みが生じることを効果的に防止できる。従って、同ケーブルは車両の反対車線側への飛び出しと衝突エネルギーの吸収を効果的に発揮できる。
【0016】
また、支柱のスリットに沿って挿し込まれる隣接する上下の間隔保持材同士は、一方の間隔保持材に設けられた雄部と他方の間隔保持材に設けられた雌部とが相対峙する配置で連接されて積み重ねる構成としたので、上記雄部と雌部により支柱の狭くて面倒な中空部又は外周位置への間隔保持材同士の連接作業を正確に且つ容易に行える利点がある。のみならず、間隔保持材同士の積み重ね状態は上下方向に連接されているので、同間隔保持材が車両衝突による支柱転倒に伴ってケーブルと共に支柱上部から抜ける際に、ガタが生じることなく一体物としてスムーズに抜け出て、ケーブルの高さ位置や上下の間隔保持を確実にならしめることに寄与する。
【0017】
支柱の中空部内へ抜き挿し可能な間隔保持材には、支柱の外周を囲うスリット開き防止用のリング部材がスリットを挿入する繋ぎ部分を介して連結されている。したがって、上記リング部材は支柱のスリットが衝突時に水平方向に開いてV字になり、車両や周辺機器を破損させてしまうことを防止することができる。また、間隔保持材とリング部材とを一体形成しておくとスリット内への設置作業の施工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が実施される道路の中央分離帯に設けられたガードケーブルを示した全体斜視図である。
【図2】上記ガードケーブルの平面図である。
【図3】支柱の拡大側面図である。
【図4】支柱のスリット内へケーブルとケーブル間隔保持材を設置する手順の概要を示した分解斜視図である。
【図5】支柱の中空部内へ挿入されたケーブル間隔保持材及びケーブルの状態を示す一部拡大斜視図である。
【図6】A、Bは、ケーブル間隔保持材とリング部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【図7】ケーブル間隔保持材の下端部に設けたケーブル掴み部を示す底面図である。
【図8】蓋部の下端部に設けたケーブル掴み部を示す底面図である。
【図9】Aは、ケーブル間隔保持材の異なる実施例を示す参考図である。Bはケーブル間隔保持材の異なる実施例を示す参考図である。
【図10】Aは実施例3のケーブル間隔保持材の一例を示す側面図である。Bは、Aのケーブル間隔保持材を支柱の中空部内へ挿入した状態を示す側面図である。
【図11】A、Bは従来のガードケーブルに使用されるケーブル間隔保持材を示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、鋼管支柱3が側面を道路の延長方向に相対する配置で一定間隔をあけて立設されると共に、3本以上のケーブル2…を上下に間隔を開けて支柱3間に架設するガードケーブル1である。
前記支柱3は、道路の延長方向に相対峙する側面に、上端から下方へ切り欠いたスリット6が設けられ、前記複数のケーブル2は、上下に間隔を開けて前記スリット6を貫通させ支柱3間に架設されている。
つまり、支柱3に車両が衝突すると、同支柱3が道路の延長方向に積極的に転倒し、その転倒に伴って支柱のスリット6の上下方向に貫通した各ケーブル2も容易に外れる構成のガードケーブル1に好適に使用される間隔保持材7である。
前記支柱3の中空部又は外周面には、隣接する上下のケーブル2の間に位置するケーブル間隔保持材7が抜き差し可能に嵌められることで、ケーブル2の上下間隔を保持されている。上位に位置するケーブル間隔保持材7bの下端部は、下位に位置するケーブル間隔保持材7aの上端部に接する構成とされている。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のガードケーブルは、下記に説明する構成とされる。即ち、図1〜図3には、道路の中央分離帯の箇所に約2mの間隔を置いて支柱3を立設し、上下方向に間隔をあけて3本のケーブル2を同ケーブル2の両端に設置した端部支柱4により20kNで引張して準備し、同支柱3、3間に架設して構築したガードケーブル1を示した。
前記支柱3は、縦横比が異なる平面視が長方形の角形鋼管支柱である。したがって、同支柱3は、平面視の長辺側が短辺側に対して弱軸側31となり、前記短辺側が長辺側に対して強軸側32を有する構成となる。前記弱軸側31と強軸側32の寸法は、例えば100×50mmであり、前記弱軸側31は衝突荷重に対して積極的に変形する性質を発揮する。
【0021】
上記構成の角管支柱3を、前記弱軸側31が車両の進行方向R、Lに相対峙する配置で、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込んで立設されている。
一般的に走行中の車両は大型車では15°以内、小型車では20°以内の角度でガードケーブル1へ衝突することが多く確認されており、上記のように支柱3の弱軸側31を道路の横断方向へ向けていれば、車両は必然的に支柱3の弱軸側31へ衝突する。すると、支柱3は確実に道路の延長方向R(対向車が衝突した場合はL)へ倒れて、車線上に飛び出る虞を緩和できる。
【0022】
前記鞘管5は、特に図3に示すように、支柱3の下端部をその中空部内へ挿入可能な縦横比を有し、高さは例えば約500mmであり、地中レベルと鞘管5の上面とが略一致するように埋設されている。
【0023】
前記鞘管5の埋設方法としては、先ず鞘管5に収まる略同形の棒状部材(図示省略)を同鞘管5内に収め、その状態で地中へ400mm圧入する。そして、鞘管5を地中へ残したまま棒状部材を抜き取り、同鞘管5のみを地中へ更に100mm打設すると、鞘管5は地中へ500mm埋設され、且つその内部には高さ方向に100mmの土が入った状態となる。そのため、鞘管5内へ支柱3が挿入されると、前記鞘管5内の高さ100mmの土が支柱3の下端部を支持して、同支柱3の位置決めが行える。因みに、鞘管5へ支柱3を挿入する深さ位置は約400mmとなる。
上記のように支柱3は、鞘管5とボルトやフックその他の機械的取付具を使用せずに容易に抜き挿し可能に位置決めされている。
勿論、鞘管5の埋設方法は、上記の限りではなく、事前に地上から400mm掘削して設けた坑内に、同鞘管5を地上から500mmの位置まで打設することで、その内部に高さ方向100mmの土が入った状態として実施しても良い。
【0024】
更に、前記支柱3の上端部の弱軸側31、31の上端部には、前記3本のケーブル2…を抜き挿し可能に上縁を開口して下方へ切り欠いたスリット6が形成され、同スリット6、6内に上下方向に間隔をあけたケーブル2を道路の延長方向へ貫通する様態で、前後に位置する支柱間に架設される。
スリット6の形状は、図示のように上下方向に二つの屈曲点を有する形状に形成されるが、この限りではなく図示することは省略したが、二つの変曲点を有する湾曲形状、一つの屈曲点を有する屈曲形状、一つの変曲点を有する湾曲形状、並びに上部を屈曲点、下部を湾曲点を有する形状としても同様に実施できる。
【0025】
上記スリット6は、一方の弱軸側31方向から見ると左右対称になる形状(両弱軸側31、31に正対する方向に見ると同一形状)として、両スリット6、6内の貫通する上下の空き幅に変化を持たせている。したがって、車両が支柱3の弱軸側31へ衝突して同支柱3が倒れることに伴い、各ケーブル2…は、スリット6、6の側面形状と上下方向の幅の変化とにより、水平方向の摩擦抵抗を受けながら、確実に一本ずつ順に抜け、ケーブル2と支柱3とで衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0026】
上記構成のガードケーブル1には更に、スリット6の上下方向に複数貫通させるケーブルの上下の間隔を保持するケーブル間隔保持材7が支柱3の中空部内に設置されている。以下、間隔保持材7について図3〜図7に基づいて具体的に説明する。
本実施例ではケーブル2を上下方向に3本使用するため、使用する間隔保持材7は上下のケーブルの間となるため2個であるが、ケーブルの数に応じて個数は変化する。
図示した前記間隔保持材7は、軽量な樹脂製の略四角柱とされ、角形鋼管支柱3の中空部内へ抜き挿し可能な大きさとされている。
この間隔保持材7は、その上端部と下端部の短辺側の側面の略中央位置に、上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態で連接する雄部70と雌部71とが相対峙する配置にそれぞれ2個ずつ設けられている(図3参照)。前記雄部70と雌部71は、図示の通り軸心が一致する位置に配置されているので所謂ロケット鉛筆の如くに上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態に容易に連接できる。勿論この限りではなく、例えば最上段に配置される間隔保持材においては、上端部に雌部を設ける必要が無く、下端部に雄部70を設けるのみの構成で実施することができる。
【0027】
つまり、幅が狭い支柱3の中空部内へ間隔保持材7、7同士を連接する際に、上位の間隔保持材7(b)の雄部70の軸芯を下位の間隔保持材7(a)の雌部71に合わせるのみで積み重ね作業を正確に行える(図4参照)。また、間隔保持材同士の積み重ね状態は上下方向に連接された状態でスリット6内に設置されているので、車両衝突による支柱転倒に伴ってケーブル2と間隔保持材7…が支柱上部(スリット内)から抜け出る際に、ガタが生じることなく一体物としてスムーズに抜け出ることができる。
また、間隔保持材7の下方にはケーブル2を貫通させる凹部73が設けられており、上下の間隔保持材7、7を連接した際に、ケーブル2が貫通できる程度の隙間を有する形状に開口している。勿論、間隔保持材7の上方に凹部73を設けて同様に実施することもできる。
【0028】
上記支柱3の中空部内へ抜き挿し可能な間隔保持材7には、支柱3の外周を囲んでスリット6の左右方向への開きを防止する目的のリング部材8がスリット6へ挿入する繋ぎ部分を介して連結されている。
具体的には、図6A、Bに示すように、間隔保持材7の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック受け部72と、リング部材8の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック部80とを互いに掛け合わせることで一体的に組み合わされる。これらの連結手段が上記のようにスリットへ挿入する繋ぎ部分に設けられるので、支柱3の中空部内へ挿入する際に、前記連結箇所がスリット6内を移動してスムーズな挿入作業をならしめる。
【0029】
このリング部材8を組み合わせた間隔保持材7は、図示例では第二ケーブル2bの上部へ位置する第二の間隔保持材7bとし、リング部材8を組み合わせないものを第一の間隔保持材7aとして、2種類の間隔保持材7を併用しているが、この限りではなく、リング部材8を組み合わせた間隔保持材7bを全てに使用して実施することもできる。
前記リング部材8は、上記間隔保持材7と異なる材質例えば鋼製を使用することが好ましい。因みに、第三ケーブル2cの上部には 雨水の進入防止として樹脂製でやはり下方にケーブルを貫通させる凹部90を設けた蓋材9が被せられる。この蓋材9は支柱3の外形より大きく直ぐに取り外すことができる形状とされている。
【0030】
次に、間隔保持材7の下端部に設けられるケーブル掴み部74について説明する。先ず、前記掴み部74を設ける目的は、車両の衝突時に支柱3が転倒することに伴い、上記ケーブル2と、間隔保持材7が支柱3から抜け出たとき、間隔保持材7は、どこにも支持されておらず単にケーブルの上に載置されているのみであるため道路上へ飛散して二次的被害を及ぼすことを防止することにある。つまり、支柱3から抜け出たときに、間隔保持材7が上記掴み部74によって各ケーブル2を掴んだ様態として飛散を防止するのである。
具体的には、図5、図7に示すように、ケーブル掴み部74は間隔保持材7の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びる、L字形状の二本の腕部74a、74aから成る。前記外形部とは、図示例では短辺側の内側両側面である。この腕部74aと74aの先端は開口可能な空き部Wを有する。この空き部Wからケーブルを嵌め入れることが可能となるが、その空き部Wはケーブル2の直径よりかなり小径にしている。
【0031】
また、腕部74a、74aの両先端部は、対峙させたとき逆V字形状となるように片側に傾斜した形状に形成(図3参照)されて下方の開き幅を広くしてケーブル2を押し込んで嵌め入れやすくしている。しかし、一度腕部74a間を貫通して挿入されたケーブル2は、腕部74aの上方の空き幅はケーブル2の直径よりかなり小径な上記空き部Wであり抜け出ることが難しい構成である(図7参照)。したがって、支柱3の転倒に伴い間隔保持材7が支柱3から抜け出る際に、同間隔保持材7はケーブル2に繋がったまま抜けてぶら下がるので、どこかに飛散することがないのである。
【0032】
上記腕部74a、74aの配置としては、図7に示すように、間隔保持材7を平面的に見て略対角線上となる配置にすることが好適に実施される。腕部74aを対角に設けることで、ケーブル2を挿入する際に、腕部74とケーブル2とに角度が生じ、前記空き部Wが開きやすくなりケーブル2の嵌め入れが容易になる利点がある。
上記の構成は、図8に示した蓋部9の下端部についても、ケーブル掴み部91を同様の構成で設けて、蓋部9の飛散を防止することも好適に実施できる。
【0033】
ここで、図4〜図6から支柱3の前記スリット6、6内に貫通するケーブル2の間に間隔保持材7を保持させる手順を説明する。
先ず、スリット6、6内へ第一ケーブル2aが上方から挿入される。そのあと、支柱3の中空部内へリング部材8を組み合わせていない間隔保持材7aが挿入され、その下端部に設けたケーブル掴み部74の空き部Wからケーブル2aを嵌め入れて同ケーブル2aの上面に載置する。複数本のケーブル2はこの間隔保持材7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設される。
【0034】
次に、第二のケーブル2bをスリット6、6内へ挿入し、第二の間隔保持材7bを支柱3の中空部内へ挿入する。この際、用意する第二の間隔保持材7bとは、上述したリング部材8を組み合わせたものであることが好ましい。挿入方法としては、間隔保持材7bは支柱3の中空部内へ、前記リング部材8は、支柱3の外周位置にくるように配置すると、両者を連結する繋ぎ部分(フック受け部72、フック部80)が、支柱3のスリット6内に収まる位置となるのでスムーズに挿入することができる。
上記のように挿入した第二の間隔保持材7bは、その下端部の短辺側の二側面に設けた上記雄部70の軸芯を、第一の間隔保持材7のやはり上端部の短辺側の二側面に設けた上記雌部71へ合わせて挿入すると、上下の間隔保持材7a、7bを連接できると共に、間隔保持材7bのケーブル掴み部74の空き部Wからケーブル2bを嵌め入れて同ケーブル2bの上面に載置させることができる。
続いて、第三のケーブル2cを挿入して、スリット6、6内へ3本のケーブル2を貫通させ、雨水の進入防止として、支柱3の上端部に樹脂製の蓋材9が被せられる。この際にもやはり、蓋材9の下端部に設けたケーブル掴み部91の空き部Wからケーブル2cを嵌め入れる。
【0035】
したがって、支柱3の弱軸側31へ車両が衝突して、支柱3が車両の進行方向へ倒れるに伴い、ケーブル2cがその衝突荷重により先ず蓋材9を外し、その後、各ケーブル2c〜2aがスリット6内の屈曲形状又は湾曲形状、及び空き幅の変化により摩擦抵抗を受けながら一本ずつ順番に同スリット6から抜けてゆくので、同支柱3は効果的に衝突荷重を吸収しながら倒れて、各ケーブル2が上下左右方向へ撓むことを防止できる。斯くすると、上下のケーブル2…の間隔は、衝突箇所の支柱の前後に位置する支柱の各間隔保持材によって確実に保持されて車両の飛び出しを可及的に防止できる。
また、間隔保持材7a、7b及び蓋材9は、支柱3の転倒に伴ってスリット6からケーブル2と共に抜け出た際に、各掴み部74、91によって各ケーブル2a〜2cにぶら下がり飛散することを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0036】
本発明のガードケーブル1を構成する間隔保持材7の形状は上述した限りではない。図9A、図9Bに示す形状においても実施可能である。
図9Aに示した間隔保持材7’は、本体形状が略四角柱とする点は実施例1と同様であるが、ケーブル掴み部74を構成する腕部74a’、74a’が対角線上に配置されるのではなく、四角柱の長辺側側面に平行する直線上に設けて実施することができる。この場合、ケーブルを嵌め入れる際、前記腕部74aは上方へは折れ上がることを許容し、下方へ折れ下がること抑制する構成として、ケーブルを嵌め入れやすく抜け難くする。
図9Bに示した間隔保持材7’’は、図9Aに示したような、直線上となるケーブル掴み部74’’を有し、本体形状が楕円形状の筒型に成形している。この形状は支柱3の中空部内への挿入をよりスムーズに行える、のみならず汎用性が高い利点がある。
【実施例3】
【0037】
本発明のガードケーブル1を構成する間隔保持材7の更なる実施例を図10A、図10Bに示した。
実施例1では、図6に示したように、間隔保持材7にはリング部材8が着脱可能に組み合わせる構成としていたが、図10A、図10Bに示すように、予めリング部材8を一体形成した間隔保持材7Tとして実施することもできる。また、ケーブル掴み部74Tは、腕部74aT、74aTがL字形状ではなく半円弧形状として形成することも好適に実施される。
【0038】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。本実施例では、間隔保持材7を支柱の中空部内へ挿入する構成を示したが、支柱の外周面の上下方向で、上下のケーブルの間に抜き挿し可能に載置して実施することができる。その際、間隔保持材7の形状は、上記したリング部材8と略同様に支柱の外形より大きい径の長方形の筒型とされ、その上端部及び下端部には上下の間隔保持材7、7を積み重ね状態として抜き挿し可能に連接する雄部と雌部及び凹部が実施例1と略同様に設けられる。ケーブル掴み部についても同様にケーブルを挿入しやすく抜けがたい構成で設けて実施できることを付言する。また、本実施形態に示したガードケーブルのケーブルの本数は3本であるが、この限りではなく、また、間隔保持材の個数もケーブルの本数に合わせて適宜変更して実施される。

【符号の説明】
【0039】
1 ガードケーブル
2 ケーブル(2a〜2c)
3 支柱
31 弱軸側
32 強軸側
4 端部支柱
5 鞘管
6 スリット
7 間隔保持材(7’、7’’、7T)第一の間隔保持材7a、第二の間隔保持材7b
70 雄部
71 雌部
72 フック受け部
73 凹部
74 掴み部(74’、74’’、74T)
74a 腕部(74a’、74a’’、74aT)
8 リング部材
80 フック部
9 蓋材
90 凹部
91 掴み部
91a 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管支柱が側面を道路の延長方向に相対する配置で一定間隔をあけて立設されると共に、3本以上のケーブルを上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルであって、
前記支柱は、道路の延長方向に相対峙する側面に、上端から下方へ切り欠いたスリットが設けられ、
前記3本以上のケーブルは、上下に間隔を開けて前記スリットを貫通させ支柱間に架設されており、
前記支柱の中空部又は外周面には、隣接する上下のケーブルの間に位置するケーブル間隔保持材が抜き差し可能に嵌められることで、ケーブルの上下間隔を保持されており、
上に位置するケーブル間隔保持材の下端部は、下に位置するケーブル間隔保持材の上端部に接することを特徴とする、ガードケーブル。
【請求項2】
ケーブル間隔保持材は、上方若しくは下方に凹部が設けられており、前記凹部にケーブルを配設することを特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項3】
隣接する上下の間隔保持材同士は、一方の間隔保持材に設けられた雄部と他方の間隔保持材に設けられた雌部とが相対峙する配置で連接されて積み重ねられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したガードケーブル。
【請求項4】
支柱の中空部内へ抜き挿し可能なケーブル間隔保持材は、支柱の外周を囲むスリット開き防止用のリング部材と、スリットへ挿入する繋ぎ部分を介して連結されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したガードケーブル。
【請求項5】
支柱の中空部内へ抜き挿し可能なケーブル間隔保持材と、支柱の外周を囲むスリット開き防止用のリング部材とは一体形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したガードケーブル。
【請求項6】
支柱は、平面視が長方形であり、その長辺側が道路の延長方向に相対峙する配置であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したガードケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−12808(P2012−12808A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149172(P2010−149172)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】