説明

キナゾリン誘導体および治療方法

本発明は、新規のキナゾリン誘導体、およびそれらの医薬的に許容される塩に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および細胞表面チロシン受容体キナーゼを阻害することで有利に治療される疾患および疾病を治療する方法におけるかかる組成物の用途についても提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年3月4日出願の米国特許仮出願第61/157,549、および2008年3月28日出願の米国特許仮出願第61/040,647号の利益を主張するものであり、これらの出願の全教示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、新規のキナゾリン誘導体、およびそれらの医薬的に許容される塩に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および細胞表面チロシン受容体キナーゼを阻害することで有利に治療される疾患および疾病を治療する方法におけるかかる組成物の用途についても提供する。4位にアニリノ置換基を有し、7位にアルコキシ置換基を有し、かつ、6位にアルコキシ置換基を有するキナゾリン誘導体が、特に、米国特許第5,770,599号、米国特許第5,747,498号、欧州特許第1,110,953号、欧州特許第817,775号、および米国特許第6,476,040号に開示されている。これらの誘導体の1つであるエルロチニブは、[6,7−ビス−(2−メトキシ−エトキシ)−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニル−フェニル)−アミン、およびN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミンとして化学的に知られている。
【背景技術】
【0003】
エルロチニブは、チロシンキナーゼ、特に、EGF型受容体チロシンキナーゼの阻害剤である。エルロチニブは、少なくとも1つ前の化学療法レジメンが失敗した後の局所進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)の治療用として米国および欧州で認可されている。エルロチニブは、転移性の膵臓癌の治療にゲムシタビンと併用することについても米国で承認されている。非小細胞肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、脳癌、膀胱癌、肉腫、前立腺癌、黒色腫、子宮頸癌、固形腫瘍、星状細胞腫、乳癌、膵臓癌、多形性膠芽腫、腎臓癌、消化器/胃腸癌、肝臓癌、婦人科癌、中枢神経腫瘍、胸腺腫、および胃癌を含む様々な他の癌に対して、単体もしくは他の薬剤と併用したエルロチニブの使用について臨床試験で現在調査中である。エルロチニブは、良性の皮膚過形成(乾癬)または良性の前立腺過形成(BPH)の治療に有用であるとも考えられている。
【0004】
エルロチニブを投与された患者に起こる最も頻繁に報告された有害事象としては、限定的ではないが、発疹、下痢、食欲不振、疲労、消化不良、吐き気、感染、口内炎、掻痒、乾燥肌、結膜炎、発熱、落ち込み、咳、頭痛、および肝機能試験異常が挙げられる。(http://www.fda.gov/cder/foi/label/2007/021743s007lbl.pdfでアクセスされるタルセバのFDAラベルを参照されたい)。
【0005】
エルロチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤の効果は、薬剤を受ける患者が喫煙者であるか、あるいは、いままでに喫煙者であったか否かにある程度関係する場合がある。これは一部には、非喫煙者と比較して、喫煙者および元喫煙者によるチロシンキナーゼ阻害剤のより急速な代謝による可能性がある。Lynch TJら、N Engl J Med 2004,350:2129−2139;Pao Wら、Proc Natl Acad Sci USA 2004,101:13306−13311;Marchetti Aら、J Clin Oncol 2005,23:857−865;Shigematsu Hら、J Natl Cancer Inst 2005,97:339−346;およびPham Dら、J Clin Oncol 2006,24:1700−1704。
【0006】
エルロチニブの有益な活性にも関わらず、上述の疾患および疾病を治療するための新規化合物への継続的な必要性がある。
(定義)
【0007】
「改善する」および「治療する」という用語は、区別なく使用され、両方の用語は、疾患(例えば、本明細書で使用する疾患または疾病)の発生または進行を減少する、抑制する、弱毒化する、軽減する、阻む、または安定化すること、疾患の重症度を低くすること、あるいは、疾患に関連する症状を改善することを意味する。
【0008】
「疾患」とは、細胞、組織、または器官の正常機能を損なうまたは妨げるあらゆる症状または疾病のことを意味する。
【0009】
合成に用いられる化学物質の由来に応じて、天然同位体存在度におけるいくつかのばらつきが合成化合物で起こることが分かるであろう。従って、エルロチニブ製剤は、少量の重水素化された同位体置換体を本質的に含む。天然に豊富で安定な水素同位体の濃度は、このばらつきに関わらず、少濃度であり、本発明の化合物の安定同位体置換の程度に対して微々たるものである。例えば、Wada,Eら、Seikagaku,1994,66:15;Ganes,LZら、Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol,1998,119:725を参照されたい。
【0010】
本発明の化合物において、特定の同位体として特に指定されない任意の原子は、特に明記しない限り、その原子の任意の安定同位体を表わすことを意味する。特に明記しない限り、位置が「H」または「水素」と具体的に指定される場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有すると理解される。また、特に明記しない限り、位置が「D」または「重水素」と具体的に指定される場合、その位置は、重水素の天然存在度である0.015%の少なくとも3340倍(即ち、少なくとも50.1%重水素取り込み)豊富に重水素を有すると理解される。
【0011】
本明細書で使用する「同位体濃縮係数」という用語は、特定同位体の同位体存在度と天然存在度の間の比率を意味する。
【0012】
他の実施形態において、本発明の化合物は、指定された各重水素原子に対して、少なくとも3500(指定された各重水素原子で52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%重水素取り込み)、少なくとも5000(75%重水素取り込み)、少なくとも5500(82.5%重水素取り込み)、少なくとも6000(90%重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%重水素取り込み)、少なくとも6600(99%重水素取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%重水素取り込み)の同位体濃縮係数を有する。
【0013】
「同位体置換体」という用語は、その分子またはイオンの同位体組成においてのみ本発明の特定化合物とは異なる種のことを言う。
【0014】
「化合物」という用語は、本発明の化合物のことを言う場合、分子の構成原子間において同位体変化があり得る以外は同一の化学構造を有する分子の集合体のことを言う。従って、示された重水素原子を含む特定の化学構造によって表わされる化合物は、その構造における1つ以上の指定された重水素位置に水素原子を有するより少量の同位体置換体を含むことが当業者には明らかであろう。本発明の化合物におけるかかる同位体置換体の相対量は、化合物を作るのに用いる重水素化試薬の同位体純度や、化合物の調製に用いる種々の合成工程における重水素を取り込む効率を含む多くの要因による。しかしながら、上述のように、かかる同位体置換体のin totoの相対量は、化合物の49.9%未満である。他の実施形態において、かかる同位体置換体のin totoの相対量は、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満である。
【0015】
本発明の化合物は、塩の形態で存在し得る。化合物の塩は、酸と、アミノ官能基などの化合物の塩基性基との間で形成されるか、あるいは、塩基と、カルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。別の好適な実施形態によれば、化合物は、医薬的に許容される酸付加塩である。
【0016】
本明細書で使用する「医薬的に許容される」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなくヒトや他の哺乳類の組織に接触させて用いるのに適切であり、なおかつ、妥当な便益/リスク比に相応した成分のことを言う。「医薬的に許容される塩」とは、受容体への投与時に、本発明の化合物または該化合物のプロドラッグを直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性塩のことを意味する。「医薬的に許容される対イオン」とは、受容体への投与時に塩から放出された際に、毒性のない塩のイオン部分のことである。
【0017】
医薬的に許容される塩を形成するのに一般的に用いられる酸としては、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸のみならず、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸などの有機酸、ならびに関連の無機酸および有機酸が挙げられる。従って、かかる医薬的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ぎ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−l,4−ジオエート、ヘキシン−l,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩、および他の塩が挙げられる。好適な医薬的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されたもの、特に、マレイン酸などの有機酸で形成されたものが挙げられる。
【0018】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を含み得る。このように、本発明の化合物は、個々の立体異性体(鏡像異性体またはジアステレオマー)としても存在し、立体異性体の混合物としても存在することができる。従って、本発明の化合物は、立体異性体の混合物だけでなく、他の立体異性体を実質的に含まない個々それぞれの立体異性体も含む。本明細書で使用する「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、他の立体異性体を25%未満、好ましくは他の立体異性体を10%未満、より好ましくは他の立体異性体を5%未満、最も好ましくは他の立体異性体を2%未満、または他の立体異性体を「X」%未満(ここで、Xは0以上100以下の数)含むことを意味する。ジアステレオマーを得るまたは合成する方法は、当該技術分野では周知であり、最終化合物または出発材料あるいは中間体に実用可能なものとして適用することができる。他の実施形態としては、化合物が単離化合物であるものである。本明細書で使用する「少なくともX%鏡像異性的に濃縮された」という用語は、化合物の少なくともX%が単一の鏡像異性体の形態であることを意味し、ここで、Xは0以上100以下の数である。
【0019】
本明細書で使用する「安定化合物」という用語は、製造するのに十分な安定性を有し、本明細書で詳述した目的に有用な十分な期間にわたって化合物の完全性を維持する化合物のことを言う(例えば、治療薬に反応する疾患または疾病を治療するための治療薬、治療化合物の製造に使用する中間体、単離可能または保存可能な中間体化合物への製剤)。
【0020】
「代謝的に不安定な保護基」とは、1つ以上の有機体の自然発生する酵素によってin vivoで切断される化学部分である。
【0021】
「D」とは、重水素のことを言う。「立体異性体」とは、鏡像異性体およびジアステレオマーのことを言う。「Tert」および「t−」は、それぞれ、三級のことを言う。「US」は、アメリカ合衆国のことを言う。「FDA」は、食品医薬品局のことを言う。「NDA」は、新薬申請のことを言う。「rt」は室温のことを言う。
【0022】
本明細書で使用する「喫煙者」という用語は、パックイヤーが15年よりも長い喫煙歴を有し、かつ、過去25年にわたって喫煙しているヒトのことを意味する。本明細書で使用する「非喫煙者」という用語は、パックイヤー15年以下の喫煙歴を有するか、あるいは、過去25年にわたって喫煙していないヒトのことを意味する。「パックイヤー」は、1日の喫煙本数に喫煙年数を掛け、その積を20で割ることで算出される(http://www.cancer.gov/Templates/db_alpha.aspx?CdrID=306510を参照されたい)。
【0023】
本明細書を通じて、「各Y」への言及としては、該当する場合には独立して、全ての「Y」基(例えば、Y1a、Y1b、Y1c、Y2a、Y2b、およびY2c)を含む。同様に、「各Z」への言及としては、該当する場合には独立して、全ての「Z」基(例えば、Z1a、Z1b、Z2a、およびZ2b)を含み、「各X」への言及としては、該当する場合には独立して、全ての「X」基(例えば、X1a、X1b、X2a、およびX2b)を含む。
(治療化合物)
【0024】
一実施形態において、本発明は、式Qの化合物:
【化1】

(Q)、
またはその塩を提供し、
式中:
各X、各Y、および各Zは、水素および重水素から独立に選択され;
は、水素、ハロ、−OH、−OCD、および−OCHから選択され;
は、−C≡CH、および−C≡CDから選択され;
は、水素およびフルオロから選択され;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、RおよびRの各々が水素である場合、Xの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、RおよびRの各々が水素であり、Rが−C≡CHであり、かつ、各Xおよび各Zが重水素である場合、Yの少なくとも1つは重水素である。
【0025】
式Qの化合物の一実施形態において、各Yは同一であり、各Zは同一であり、各Xは同一である。この実施形態の一態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。さらに別の態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、各Xは水素である。
【0026】
別の実施形態は、式Qの化合物を提供し、式中、各Yは同一であり、各Yは同一であり、各Zは同一であり、各Zは同一であり、各Xは同一であり、かつ、各Xは同一である。
【0027】
別の実施形態は、式Qの化合物を提供し、式中、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。
【0028】
さらに別の実施形態において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。
【0029】
さらに別の実施形態において、Rはハロである。この実施形態の一態様において、Rは水素である。この実施形態の別の態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態のさらに別の態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、各Xは水素である。
【0030】
さらに別の実施形態において、各Yは重水素であり、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、各Zは重水素であり、各Xは水素であり、各Xは水素であり、Rは−C≡CHであり、Rは水素であり、かつ、RはBrまたはFである。
【0031】
式Qの別の実施形態は、式Aの化合物:
【化2】

(A)、
またはその塩を提供し、
式中:
各X、各Y、各Z、およびWは、水素および重水素から独立に選択され;
は、水素、OH、F、OCD、またはOCHであり;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは重水素であり;
但し、Rが水素である場合、Xの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、Rが水素であり、Wが水素であり、かつ、各Xおよび各Zが重水素である場合、Yの少なくとも1つは重水素である。
【0032】
式Aのある実施形態において:
a)Rは水素ではなく、かつ、X、Y、Z、またはWの少なくとも1つは重水素であり;
b)各Yは同一であり;
c)各Yは同一であり;
d)各Zは同一であり;
e)各Zは同一であり;
f)各Xは同一であり;または、
g)各Xは同一である。
【0033】
式Aのさらに他の実施形態において:
h)各Yは重水素であり;
i)各Yは重水素であり;
j)各Zは重水素であり;
k)各Zは重水素であり;
l)各Xは重水素であり;または、
m)各Xは重水素である。
【0034】
より特定の実施形態において、式Aの化合物は、上記のa)〜m)の2つ以上の特徴を有する。
【0035】
式Aのさらに別の特定な実施形態において、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、Wは水素である。
【0036】
式Aのさらに別の実施形態において、各Yは同一であり、各Xは同一であり、かつ、各Zは同一である。この実施形態の一態様において、各Yは重水素であり、各Xは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、Rは水素またはOHである。この実施形態のさらに別の態様において、各Yは重水素であり、各Xは水素であり、各Zは重水素であり、かつ、RはOHである。
【0037】
式Aの一実施形態は、式Iの化合物:
【化3】

(I)、
またはその塩を提供し、
式中、YおよびZは上で定義した通りであり;
但し、各Zが重水素である場合、Yの少なくとも1つは重水素である。
【0038】
式Qの具体的な化合物の例としては、下記の表1に記載の化合物が挙げられる。
【表1】

【0039】
式Aの具体的な化合物の例としては、下記の表2に記載の化合物が挙げられる。
【表2】

【0040】
式Aの具体的な化合物の他の例としては、下記の表3に記載の化合物が挙げられる。
【表3】

【0041】
別の実施形態において、上述の実施形態のいずれかにおいて重水素として指定されない任意の原子は、その天然同位体存在度で存在する。
【0042】
ある実施形態において、化合物は、化合物120、125、または130である。
【0043】
他の実施形態において、化合物は、
【化4】

化合物120、および
【化5】

化合物138の一つから選択される。
【0044】
別の実施形態において、化合物は化合物113である。
【化6】

化合物113
【0045】
別の実施形態において、本発明は、式Rの化合物:
【化7】

(R)、
またはその塩を提供し、
式中:
各X、各Y、および各Zは、水素および重水素から独立に選択され;
は、水素、ハロ、−OH、−OCD、および−OCHから選択され;
は、水素、ハロ、および−CFから選択され;
は、水素およびフルオロから選択され;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは重水素である。
【0046】
式Rの化合物の一実施形態において、各Yは同一であり、各Zは同一であり、かつ、各Xは同一である。この実施形態の一態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。この実施形態のさらに別の態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、各Xは水素である。
【0047】
別の実施形態は、式Rの化合物を提供し、式中、各Yは同一であり、各Yは同一であり、各Zは同一であり、各Zは同一であり、各Xは同一であり、かつ、各Xは同一である。
【0048】
別の実施形態は、式Rの化合物を提供し、式中、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。
【0049】
この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。
【0050】
さらに別の実施形態において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Xは重水素である。
【0051】
式Rの別の実施形態において、Rは、水素およびハロから選択される。この実施形態の一態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素である。この実施形態の別の態様において、各Yは重水素であり、各Zは重水素であり、かつ、各Xは水素である。
【0052】
式Rの具体的な化合物の例としては、下記の表4に記載の化合物が挙げられる。
【表4】

【0053】
ある実施形態において、式Rの化合物は:
【化8】

化合物105、
【化9】

化合物106、
【化10】

化合物108、
【化11】

化合物115、および
【化12】

化合物119のいずれか一つから選択される。
【0054】
別の実施形態において、上述の式Q、A、R、またはIの実施形態のいずれかにおいて重水素として指定されない任意の原子は、その天然同位体存在度で存在する。
【0055】
合成化学の分野における当業者により行うことができる。関連手順および中間体は、例えば、米国特許第5,747,498号、欧州特許第1,110,953号、欧州特許第817,775号、米国特許第6,900,221号、米国特許第6,476,040号、およびPCT出願刊行物国際公開第2007/060691号パンフレットに開示されている。かかる方法は、重水素化され、必要に応じて、対応する他の同位体を含有する試薬、および/または、本明細書に記載の化合物を合成するための中間体を利用して、あるいは、同位体原子を化学構造に導入するため当該技術分野で周知の標準的な合成プロトコルを使用することで行うことができる。
【0056】
式Q、A、I、および/またはRの化合物を生成するための便利な方法についてスキーム1〜5で説明する。
【0057】
スキーム1.式Aの化合物の合成経路。
【化13】


スキーム1は、式Aの化合物を調製するための一般的な合成経路を示す。クロロキナゾリン13(Ramanadhan,JPら.,国際公開第2007060691A2号に記載のように調製した)は、適切に重水素化され、かつ、任意に置換されたエチニルアニリン24と組み合わせて、ジアセチルキナゾリンアミン25を生成することができる。水酸化アンモニウムおよびメタノールでジアセチルキナゾリンアミン25を脱アセチル化することで、対応するキナゾリンアミン26を得、次いで、これを適切に重水素化された2−メトキシエチルメタンスルホネート27と組み合わせて、式Aの化合物を生成することができる。
【0058】
スキーム2a.中間体24aおよび24bの合成経路。
【化14】

スキーム2b.中間体24cの合成経路。
【化15】

スキーム2aおよび2bは、適切に重水素化され、かつ、適切に置換されたエチニルアニリン中間体24の合成を示す。スキーム2aに示すように、市販の3−ブロモ−4−フルオロニトロベンゼン30を、Lau,KSYら.,J Org Chem,1981,46:2280−2286に記載の手順に従って、無水ジエチルアミン中の薗頭カップリング条件下(酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィン)にてエチニルトリメチルシランで処理し、2−フルオロ−5−ニトロ−1−[(トリメチルシリル)エチニル]ベンゼン31を得ることができる。次に、トリメチルシリル−アセチレン31をメタノールまたはd3−メタノール中の炭酸カリウムで処理することで、2−メトキシ−5−ニトロフェニルアセチレン32または2−(メトキシ−d)−5−ニトロフェニルアセチレン33をそれぞれ得る。この方法によって、メトキシ炭素で少なくとも99%の重水素取り込みを有する化合物33を調製することができる。最後に、上述した文献による手順を用いて、ニトロ基を塩酸の存在下で鉄くずで還元し、3−エチニル−4−メトキシアニリン24a(ここで、RはOCHであり、WはHである)および3−エチニル−4−(メトキシ−d)アニリン24b(ここで、RはOCDであり、WはHである)をそれぞれ得る。
【0059】
スキーム2bに概説した合成によれば、市販の2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニルアセチレン(34)のメタノール溶液を、Lau,KSYら.,J Org Chem,1981,46:2280−2286に記載の手順に従って、塩酸の存在下で鉄くずと混合し、所望の3−エチニル−4−ヒドロキシアニリン24c(ここで、RはOHであり、WはHである)を得ることができる。
【0060】
4−フルオロ−3−(エチニル)アニリン(24d)は、J Org Chem,1981,2280−2296に詳述された手順に従って調製することができる。
【0061】
スキーム3a.中間体27−d7の合成経路。
【化16】

スキーム3b.中間体27の合成経路。
【化17】

スキーム3aおよび3bは、適切に重水素化された種々の2−メトキシエチルメタンスルホネート27の合成を示す。スキーム3aによれば、市販の2−(メトキシ−d)−1,1,2,2−d−エタノール35を、日本特許公報第JP2002−293773A号に記載の手順に従って、トリエチルアミンの存在下で塩化メタンスルホニル36と組み合わせて、所望の過重水素化メシレート27−d7を得ることができる。重水素化された出発物質である2−(メトキシ−d)−1,1,2,2−d−エタノール35は、99原子%Dで入手可能であるため、示された位置(各X、各Y、および各Z)で≧98%の重水素取り込みを有する化合物27−d7を調製することができる。スキーム3bによれば、適切に重水素化された2−ベンジルオキシエタノール37を、トリエチルアミンおよび適切に重水素化されたナトリウムメトキシド39の存在下で塩化メタンスルホニル36と組み合わせて、対応する適切に重水素化された2−メトキシエトキシメチルベンゼン38を生成することができる。適切に重水素化された2−ベンジルオキシエタノール37の例としては、市販の2−ベンジルオキシエタノール37および2−ベンジルオキシ−(1,1−d−エタノール)37−d2が挙げられ、これらは、J Label Comp Radiopharm,1989,27(2):199−216に記載の手順に従ってLiAlD(98原子%D)を用いて合成することができる。適切に重水素化されたナトリウムメトキシド39は、適切に重水素化されたメタノールを水素化ナトリウムで還元することで予め生成していてもよい。ジエーテル38をPd/Cで還元し、トリエチルアミン中の塩化メタンスルホニル36とカップリングさせて、適切に重水素化された2−メトキシエチルメタンスルホネート試薬27を生成することができる。
【0062】
スキーム4.式Qおよび式Rの化合物の合成経路。
【化18】


スキーム4は、式Qまたは式Rの化合物を調製するための別の一般的な合成スキームを示し、続いて、同様構造の化合物を合成するためのHennequin,LFら.,J.Med.Chem.,1999,24:5369−5389に記載の合成経路を示す。Hennequinら.,に記載のように調製した出発物質であるジヒドロキシ化合物47を炭酸セシウム中の適切に重水素化された2−メトキシエチルメタンスルホネート27で処理し、保護された6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4(3H)−オン48を生成することができる。中間体48をMeOH中のアンモニアで脱保護して、キナゾリン49を生成し、次に、DMF中の塩化オキサリルで処理することによって、対応するクロロキナゾリン50に変換することができる。クロロキナゾリン50をアニリン51とカップリングさせ、式Qまたは式Rの化合物またはその合成用の中間体を生成することができる。有用な中間体51の例としては、以下のアニリンが挙げられる:
【化19】

【0063】
アニリン51a〜51eは市販されている。アニリン51fおよび51hは、以下のスキーム5aおよび5bに概説したように合成してもよい。アニリン51iは、J Org Chem,1981,2280−2296に記載のように合成してもよい。
【0064】
スキーム5a.中間体51fの調製。
【化20】

スキーム5aは、J Org Chem,1981,2280−2296に記載の手順に基づいたTMS保護されたアニリン51fの合成を示す。J Org Chem,2005,70:2445−2454に記載のように調製した出発物質の2−ヨード−4−ニトロフェノール52は、エチニルトリメチルシラン、ヨウ化銅、トリエチルアミン、およびPd(PPhClの存在下で、4−ニトロ−2−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール53に変換することができる。保護されたニトロフェノール53を塩化第一錫との反応によって還元させ、TMS保護されたアニリン51fを生成することができる。
【0065】
スキーム5b.中間体51hの調製。
【化21】

中間体51hは、同様化合物を調製するために、J Org Chem,1989,54:4453−4457に記載の条件を用いて上述のスキーム5bに概説されるように調製することができる。市販の3,4−ジブロモアニリン54を、上述したもの(スキーム5a)と同様の条件下でエチニルトリメチルシランとカップリングさせ、TMS保護されたアニリン51hを生成することができる。
【0066】
前述の具体的な手法および化合物は、限定的なものではない。本明細書のスキームにおける化学構造は、同一の変数名(即ち、R、W、X、Y、Z等)によって同定されるか否かについて、本明細書の式の化合物における対応位置の化学基定義(部分、原子等)により整合的に定義される変数のことを示す。別の化合物の合成に用いるある化合物構造における化学基の適合性は、当業者の知識の範囲内である。
【0067】
本明細書の式の化合物およびこれら合成前駆体の別の合成方法は、本明細書のスキームに明示的に示していない経路内のものを含み、当業者である化学者の通常の技術の範囲内である。適用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野で周知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);and L.PaQuette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、およびその後の版に記載されているものが挙げられる。
【0068】
本発明により想定された置換基および変数の組合せは、安定化合物の形成をもたらすもののみである。
(組成物)
【0069】
本発明はまた、有効量の、本明細書の式(例えば、式Q、R、A、またはI)の化合物、または前記化合物の医薬的に許容される塩と;医薬的に許容される担体とを含む組成物を提供する。一実施形態において、組成物はピロゲンフリー組成物である。別の実施形態において、本発明の組成物は、医薬用途(「医薬組成物」)用に調合され、ここで、担体は医薬的に許容される担体である。担体(単数または複数)は、製剤の他の成分と相溶性があるという意味において「許容される」ものでなければならず、医薬的に許容される担体の場合、薬剤に使用される量でその受容体に無害なものでなければならない。
【0070】
本発明の医薬組成物に用いることができる医薬的に許容される担体、アジュバント、および賦形剤としては、限定的ではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびラノリンが挙げられる。
【0071】
必要に応じて、医薬組成物における本発明の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティは、当該技術分野で周知の方法により高めることができる。1つの方法としては、製剤に脂質賦形剤を用いることが挙げられる。「Oral Lipid−Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water−Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」、David J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007;および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples」、Kishor M.Wasan,ed.Wiley−Interscience,2006を参照されたい。
【0072】
バイオアベイラビリティを高める別の公知の方法としては、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロクサマー、または、エチレンオキシドと酸化プロピレンのブロック共重合体と任意に調合された本発明の化合物を非晶形で用いることである。米国特許第7,014,866号;米国特許第20060094744号明細書、および米国特許第20060079502号明細書を参照されたい。
【0073】
本発明の医薬組成物としては、経口、直腸、鼻腔、局所(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)投与に適するものが挙げられる。ある実施形態において、本明細書の式の化合物は、(例えば、経皮貼り剤またはイオン導入技術を用いて)経皮投与される。他の製剤は、単位投与剤形(例えば、錠剤および徐放カプセル剤)や、リポソームで簡便に提供することができ、薬剤技術分野で周知のあらゆる方法で調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA(17th ed.1985)を参照されたい。
【0074】
かかる調製方法としては、1つ以上の副成分を構成する担体などの、投与される成分分子と会合させる工程が挙げられる。一般に、組成物は、有効成分を液体担体、リポソームまたは微細な固体担体、もしくは両方と均一および密接に会合させることで調製され、必要に応じて、生成物を成形する。
【0075】
ある好適な実施形態において、化合物は経口投与される。経口投与に適当な本発明の組成物は、各々が所定量の有効成分を含むカプセル剤、サッシェ剤、または錠剤などの個別単位として;散剤または顆粒剤として;水性液体または非水液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油乳濁液または油中水乳濁液として、またはリポソーム中に包まれたもの、さらにはボーラス剤等として提供することができる。軟質ゼラチンカプセル剤は、かかる懸濁液を含めるのに有用な場合があり、これは、化合物の吸収率を有利に増加させ得る。
【0076】
経口用途用の錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も一般に添加される。カプセル形態の経口投与に有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液を経口投与する場合、有効成分は乳化剤および懸濁剤と組合せられる。所望の場合、特定の甘味料および/または香料および/または着色剤を添加してもよい。
【0077】
経口投与に適当な組成物としては、芳香化基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に成分を含むトローチ剤;不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に有効成分を含む香錠が挙げられる。
【0078】
非経口投与に適当な組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および、製剤を目的の受容体の血液と等張させる溶質を含んでいてもよい水性および非水性の無菌注射液;懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回投与用または複数投与用入れ物、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提供してもよく、無菌液体担体、例えば、注射用水を使用直前に添加することのみを必要とするフリーズドライ(冷凍乾燥)状態で保存してもよい。即時注射液および懸濁液は、無菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製できる。
【0079】
かかる注射液は、滅菌注射用水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁液は、当該技術分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイーン80など)および懸濁剤を用いて調合することができる。滅菌注射用製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用できる許容可能な賦形剤や溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的では、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特に、そのポリオキシエチル化形態ではオリーブ油またはヒマシ油などの天然の医薬的に許容される油であるので、注射用製剤において有用である。これらの油状溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有してもよい。
【0080】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与用に坐剤形態で投与してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で溶解して有効成分を放出する適当な非刺激性賦形剤とを混合することにより調製することができる。かかる物質としては、限定的ではないが、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0081】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは鼻吸入により投与してもよい。かかる組成物は、医薬製剤分野で公知の技術により調製され、なおかつ、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該技術分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、塩水中の溶液として調製することができる。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されているRabinowitz JD and Zaffaroni AC、米国特許第6,803,031号を参照されたい。
【0082】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が局所塗布により容易に近づける領域または器官に関与する場合に特に有用である。皮膚への局所塗布では、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解させた有効成分を含有する適当な軟膏で調合しなければならない。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、限定的ではないが、鉱油、液化石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。あるいは、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する適当なローションまたはクリームと調合することができる。適当な担体としては、限定的ではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤製剤または適当な浣腸製剤により、腸管低部に局所塗布することもできる。局所経皮貼り剤およびイオン導入投与も、本発明に含まれる。
【0083】
本明細書の式(例えば、式Q、R、A、またはI)の化合物の特殊製剤は、例えば、国際公開第2006110811号に開示されたナノ粒子製剤である。
【0084】
動物とヒトに対する用量の相互関係(体表面1平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireichら、(1966)Cancer Chemother Rep 50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおおよそ決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照されたい。有効量は、当業者により認識されるように、治療する疾患、疾患の重篤度、投与経路、患者の性別、年齢、および一般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療処置に伴う、例えば、他の薬剤の使用との併用の可能性、および治療医の判断に応じて変化させてもよい。
【0085】
特定の増殖性疾患の治療または予防的治療に必要な投与量は、治療対象、投与経路、および治療する疾患の重篤度に応じて変化させる必要がある。かかる投与量は、米国特許第号5,770,599で見つけることができる。本発明の化合物は、通常、治療に有効な量である、対象の体表面1平方メートル当たり約5mg〜約10,000mg、即ち、約0.1mg/kg〜約200mg/kgの範囲内の単回用量で対象に投与される。錠剤またはカプセル剤などの単位剤形は、通常、例えば、約1mg〜約250mgの有効成分を含有する。対象治療の適用は、対象部位に投与するように局所であってもよい。注射や、カテーテル、トロカール、投射物、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放性ポリマー、または内部アクセスをもたらす他のデバイスを用いて対象部位に対象組成物をもたらす種々の技術を用いることができる。
【0086】
従って、さらに別の実施形態によれば、本発明の化合物は、プロテーゼ、人工弁、代用血管、ステント、またはカテーテルなどの移植医療機器を被覆するための組成物に組み込むことができる。適当な被覆および被覆された移植機器の一般的調製は、当該技術分野で周知であり、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に例示されている。被覆は通常、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびその混合物などの生体適合性ポリマー材料である。被覆は、必要に応じて、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはその組合せの適当な上塗りによりさらに被覆し、組成物に徐放特性を付与することができる。侵襲機器に対する被覆は、本明細書で使用される用語としての医薬的に許容される担体、アジュバント、または賦形剤の定義内に含まれるものである。
【0087】
別の実施形態によれば、本発明は、前記機器を上述の被覆組成物に接触させる工程を含む移植医療機器の被覆方法を提供する。当業者であれば、哺乳類への移植前に機器の被覆を行うことはすぐに分かるであろう。
【0088】
別の実施形態によれば、本発明は、前記薬物放出機器を本発明の化合物または組成物に接触させる工程を含む、移植型の薬物放出機器の含浸方法を提供する。移植型の薬物放出機器としては、限定的ではないが、生分解性のポリマーカプセル剤または薬剤(bullets)、非分解性、拡散性のポリマーカプセル剤、および生分解性のポリマーカシェ剤が挙げられる。
【0089】
別の実施形態によれば、本発明は、治療効果がある化合物または本発明の前記化合物を含む組成物で被覆した移植医療機器を提供する。
【0090】
別の実施形態によれば、本発明は、前記機器から放出され、かつ、治療効果がある化合物または本発明の化合物を含む組成物に含浸したもしくはを含む移植型の薬物放出機器を提供する。
【0091】
患者から除去することで器官または組織に接触可能である場合、かかる器官または組織を本発明の組成物を含む培地中に浴してもよく、本発明の組成物を器官上に塗布してもよく、あるいは、本発明の組成物を任意の他の簡便な方法で塗布してもよい。
【0092】
別の実施形態において、本発明の組成物は、第2の治療薬をさらに含む。第2の治療薬としては、エルロチニブと一緒に投与した際に、有利な特性を有することが知られている、あるいは、有利な特性を示す任意の化合物または治療薬が挙げられる。かかる薬剤としては、米国特許第5,770,599号;国際公開第2001/076586号;同第2002/005791号;同第2001/070255号;同第2003/088971号;同第2004/014426号;同第2005/000213号;同第2005/004872号;同第2005/046665号;同第2005/052005号;同第2005/117887号;同第2005/117888号;同第2005/117877号;同第2005/117915号;同第2005/117916号;同第2006/122227号;同第2006/026313号;同第2004/035057号;同第2006/099396号;同第2006/090930号;同第2006/047716号;同第2006/110175号;同第2006/081985号;同第2006/082428号;同第2007/106503号;同第2007/056244;同第2007/054573号;同第2007/075554号;および同第2007/127951号に詳細が記載されており、これらの開示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0093】
第2の治療薬は、癌、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、未分化胚芽細胞の成熟および着床、乾癬、または良性前立腺肥大症(BPH)から選択される疾患または疾病の治療または予防に有用な薬剤であるのが好ましい。
【0094】
一実施形態において、第2の治療薬は、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース、3’−デオキシ−3’−[18F]フルオロチミジン、5−フルオロウラシル、AV412、アバスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルシトリオール、カネルチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、セツキシマブ、CHR−2797、シスプラチン、ダサチニブ、ジゴキシン、エンザスタウリン、エトポシド、エベロリムス、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、マツズマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、ペグ化アルファインターフェロン、ペメトレキセド、ポリフェノン(登録商標)E、サトラプラチン、シロリムス、ソラフェニブ、スーテント、スリンダク、スニチニブ、タキソテール、テモダール、テモゾロマイド、テムシロリムス、TG01、チピファルニブ、トラスツズマブ、バルプロ酸、ビンフルニン、ボロシキシマブ、ボリノスタット、およびXL647から選択される。
【0095】
より特定の実施形態において、第2の治療薬はベバシズマブである。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、本発明の化合物と、上述の第2の治療薬のいずれかの1つ以上との別々の剤形を提供し、ここで、化合物と第2の治療薬とは互いに会合している。本明細書で使用する「互いに会合している」という用語は、別々の剤形を一緒に販売し、投与すること(連続的または同時に互いに24時間未満内)を意図することが容易に明らかとなるように、別々の剤形が一緒に包装されている、あるいは、互いに取り付けられていることを意味する。
【0097】
本発明の医薬組成物では、本発明の化合物は、有効量で存在する。本明細書で使用する「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与する場合、治療している疾患の重篤度、期間、または進行を軽減または改善する、治療している疾患の促進を予防する、治療している疾患を退行させる、あるいは、別の治療の予防または治療効果(単数または複数)を高めるまたは向上させるのに十分な量のことを言う。
【0098】
動物とヒトに対する用量の相互関係(体表面1平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireichら、(1966)Cancer Chemother.Rep50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおおよそ決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照されたい。
【0099】
一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、1回の治療で、約10mg〜約2000mgの範囲である。より特定の実施形態において、該量は、1回の治療で、約25mg〜約750mg、または約50mg〜約300mg、もしくは最も具体的には約100mg〜約150mgの範囲である。治療は、経口量、静脈投与量、またはその組み合わせとして投与してもよい。本発明の化合物は、日に1回もしくは2回、好ましくは日に1回投与してもよい。あるいは、治療は、週1回ボーラス、例えば、100〜2000mgの経口量として、あるいは、1.5mg/kg〜30mg/kgの静脈内注入として投与してもよい。
【0100】
有効量は、当業者により認識されるように、治療する疾患、疾患の重篤度、投与経路、患者の性別、年齢、および一般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療処置に伴う、例えば、他の薬剤の使用との併用の可能性、および治療医の判断に応じて変化させてもよい。例えば、有効量を選択するためのガイダンスは、エルロチニブの処方情報を参照することで決めることができる。
【0101】
第2の治療薬を含む医薬組成物において、第2の治療薬の有効量は、その薬剤のみを用いる単剤療法レジメンで通常使用される投与量の約20%〜100%の間である。有効量は、標準の単剤治療量の約70%〜100%の間であるのが好ましい。これら第2の治療薬の標準の単剤治療量は、当該技術分野で周知である。例えば、Wellsら、eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照されたい。これら参照文献の各々は、参照により本明細書に完全に引用したものとする。
【0102】
上記で参照した第2の治療薬が本発明の化合物と相乗的に作用する場合、第2の治療薬および/または本発明の化合物の有効薬量を単剤療法で必要な量より減らすことができる。これは、第2の治療薬または本発明の化合物いずれかの毒性の副作用の軽減、効果の相乗的な改善、投与または使用し易さの改善、および/または、化合物の調製または製剤の総費用の削減という利点を有する。
(治療方法)
【0103】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の式Q、R、A、またはIの1つ以上の化合物を細胞に接触させる工程を含む、細胞におけるヒト上皮増殖因子受容体1型/上皮増殖因子受容体(HER1/EGFR)チロシンキナーゼの活性を阻害する方法を提供する。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または組成物の有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、エルロチニブにより有利に治療される疾患に罹患しているまたは罹患しやすい対象の治療方法を提供する。かかる疾患は、当該技術分野では周知であり、例えば、米国特許第5,770,599号、同第5,747,498号、欧州特許第1,110,953号、同第817,775号、および米国特許第6,476,040号に開示されている。特に、本発明は、癌、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、未分化胚芽細胞の成熟および着床、乾癬、または良性前立腺肥大症(BPH)に罹患しているまたは罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0105】
さらに別の実施形態において、上述の疾患または疾病のいずれかに罹患しているもしくは罹患しやすい患者は、喫煙者である。さらに別の実施形態において、上述の疾患または疾病のいずれかに罹患しているもしくは罹患しやすい患者は、非喫煙者である。
【0106】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、非小細胞肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、脳癌、膀胱癌、肉腫、前立腺癌、黒色腫、子宮頸癌、固形腫瘍、星状細胞腫、乳癌、膵臓癌、多形性膠芽腫、腎臓癌、消化器/胃腸癌、肝臓癌、婦人科癌、中枢神経腫瘍、胸腺腫、および胃癌から選択される疾患または疾病に罹患しているもしくは罹患しやすい患者の治療に用いる。
【0107】
別の特定の実施形態において、本発明の方法は、非小細胞肺癌および膵臓癌から選択される疾患または疾病に罹患しているもしくは罹患しやすい患者の治療に用いる。
【0108】
本発明の化合物は、いまだ同定されていないチロシンキナーゼ酵素を含む、受容体チロシンキナーゼ酵素または非受容体チロシンキナーゼ酵素による異常な細胞間シグナル伝達を伴う細胞増殖のさらなる疾患の治療にも効果を有する。かかる疾患としては、例えば、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、および未分化胚芽細胞の成熟および着床が挙げられる。さらに、本発明の化合物は、乾癬および良性前立腺肥大症(BPH)などの過剰な細胞増殖を伴う他の疾患の治療にも用いることができる。
【0109】
本明細書に記載の方法としては、対象が特定の治療の必要があると見なされているものを含む。かかる治療が必要である対象の同定は、対象または医療専門家の判断であってよく、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断法により測定可能)であってもよい。
【0110】
別の実施形態において、上記の治療方法のいずれかは、患者に1つ以上の第2の治療薬を同時投与する工程をさらに含む。第2の治療薬の選択は、エルロチニブとの同時投与に有用であると知られている任意の第2の治療薬から行ってよい。第2の治療薬の選択は、治療する特定の疾患または疾病にもよる。本発明の方法で用いてもよい第2の治療薬の例は、本発明の化合物と第2の治療薬とを含む配合組成物に用いる上述のものである。
【0111】
特に、本発明の併用療法としては、式Q、A、I、またはRの化合物と、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース、3’−デオキシ−3’−[18F]フルオロチミジン、5−フルオロウラシル、AV412、アバスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルシトリオール、カネルチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、セツキシマブ、CHR−2797、シスプラチン、ダサチニブ、ジゴキシン、エンザスタウリン、エトポシド、エベロリムス、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、マツズマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、ペグ化アルファインターフェロン、ペメトレキセド、ポリフェノン(登録商標)E、サトラプラチン、シロリムス、ソラフェニブ、スーテント、スリンダク、スニチニブ、タキソテール、テモダール、テモゾロマイド、テムシロリムス、TG01、チピファルニブ、トラスツズマブ、バルプロ酸、ビンフルニン、ボロシキシマブ、ボリノスタット、およびXL647から選択される第2の治療薬とをそれを必要とする患者に投与する工程を含む、癌に罹患しているもしくは罹患しやすい患者の治療方法が挙げられる。
【0112】
より特定の実施形態において、同時投与される第2の治療薬はベバシズマブである。
【0113】
さらにより特定の実施形態において、同時投与される第2の治療薬はベバシズマブであり、患者は非小細胞肺癌に罹患している。
【0114】
本明細書で使用する「同時投与する」という用語は、単一剤形(例えば、本発明の化合物と、上述の第2の治療薬とを含む本発明の組成物)の一部として、あるいは、別個の複数剤形として、第2の治療薬を本発明の化合物とともに投与することを意味する。あるいは、本発明の化合物の投与前、投与に続いて、または投与後に、追加の薬剤を投与してもよい。かかる併用療法による治療では、本発明の化合物と第2の治療薬(単数または複数)の両方を従来の方法で投与する。本発明の化合物と第2の治療薬との両方を含む本発明の組成物を患者に投与することは、治療期間中に別時で、同一治療薬、任意の他の第2の治療薬、または本発明の任意の化合物を前記患者に個別投与することを妨げるものではない。
【0115】
これら第2の治療薬の有効量は、当業者に公知であり、投与ガイダンスは、本明細書に引用した特許および特許出願公開のみならず、Wellsら、eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)、および他の医療テキストに見ることができる。しかしながら、第2の治療薬の最適な有効量の範囲を判断するのは当業者の十分な範囲内である。
【0116】
本発明の一実施形態において、第2の治療薬を対象に投与する場合、本発明の化合物の有効量は、第2の治療薬を投与しない場合におけるその有効量未満である。別の実施形態において、第2の治療薬の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合におけるその有効量未満である。これにより、高用量のいずれの薬剤に伴う望ましくない副作用を最小限にすることができる。他の潜在的利点(限定的ではないが、投与計画の向上、および/または、薬剤費の削減を含む)は、当業者に明らかになるであろう。
【0117】
別の態様において、本発明は、対象内に抗増殖効果をもたらすために使用される薬剤の製造における、本明細書の式の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。
【0118】
別の実施形態において、本発明は、本明細書のいずれの式の1つ以上の化合物を細胞に接触させる工程を含む、細胞における上皮増殖因子受容体キナーゼ(EGFR)を含む細胞表面チロシン受容体キナーゼの活性を調節する方法を提供する。
【0119】
さらに別の態様において、本発明は、対象の上述の病気、疾患、または症状を治療または予防するため、単一組成物または別々の剤形として、薬剤の製造において本明細書の式(例えば、式Q、R、A、またはI)の化合物のみを使用、または、1つ以上の上述の第2の治療薬とともに本明細書の式の化合物を使用することを提供する。本発明の別の態様は、対象の本明細書に記載の病気、疾患、または症状を治療または予防に使用する本明細書の式の化合物である。
(医薬用キット)
【0120】
本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、脳癌、膀胱癌、肉腫、前立腺癌、黒色腫、子宮頸癌、固形腫瘍、星状細胞腫、乳癌、多形性膠芽腫、腎臓癌、消化器/胃腸癌、肝臓癌、婦人科癌、中枢神経腫瘍、胸腺腫、および胃癌の治療に用いるキットも提供する。これらのキットは、a)式Q、R、A、またはIの化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、入れ物に入った医薬組成物と;b)非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、脳癌、膀胱癌、肉腫、前立腺癌、黒色腫、子宮頸癌、固形腫瘍、星状細胞腫、乳癌、多形性膠芽腫、腎臓癌、消化器/胃腸癌、肝臓癌、婦人科癌、中枢神経腫瘍、胸腺腫、および胃癌を治療するための医薬組成物の使用方法を記載した説明書と、を含む。
【0121】
入れ物は、前記医薬組成物を保持できる任意の容器あるいは他の密閉されたまたは密閉可能な装置であってよい。例としては、ボトル、アンプル、分割型ボトル、またはマルチチャンバ式ホルダボトル(各区分またはチャンバは単回投与の前記組成物を含む)、分割型ホイルパケット(各区分は単回投与の前記組成物を含む)、または単回投与の前記組成物を分注するディスペンサが挙げられる。入れ物は、医薬的に許容される材料、例えば、紙または段ボール箱、ガラスまたはプラスチックボトルあるいは瓶(jar)、ジッパー付バッグ(例えば、異なる入れ物に配置するための「詰め替え」用錠剤を保持)、または治療スケジュールに従ってパックから押し出す個別用量を備えたブリスターパックからなる当該技術分野で周知の任意の従来の形状または型であってよい。用いる入れ物は、関連する正確な剤形に左右される。例えば、従来の段ボール箱は、液体懸濁液を保持するのには一般に使用されないであろう。単一剤形を販売するため単一包装に複数の入れ物を一緒に使用することも可能である。例えば、錠剤は、ボトルに収容し、次いで、ボックス内に収容してもよい。一実施形態において、入れ物はブリスターパックである。
【0122】
本発明のキットは、単回投与の医薬組成物を投与するまたは測り分ける機器をさらに含んでいてもよい。かかる機器としては、前記組成物が吸入可能組成物である場合は吸入器;前記組成物が注射用組成物である場合は注射器および針;前記組成物が口腔液体組成物である場合は容量マーキング付または無しの注射器、匙、ポンプ、または容器;あるいは、キット内に存在する組成物の投与製剤に適切な任意の他の計測機器または送達機器が挙げられる。
【0123】
ある実施形態において、本発明のキットは、別の容器の入れ物に、本発明の化合物と同時投与するのに用いる上記で列挙したものなどの第2の治療薬を含む医薬組成物を含んでもよい。
(実施例)
【0124】
実施例1.種々の重水素化されたメトキシエチルメタンスルホネート中間体27の合成。
スキーム3aおよび3bに概説されるように中間体27を調製した。
A.(メトキシ−d)エチル−dメタンスルホネート(27−d7)。
【化22】

塩化メチレン(5.00mL)中の2−メトキシエタノール−d 35[99原子%D、CDN同位体](0.65g、7.72mmol)の溶液に塩化メタンスルホニル36(1.00mL、11.59mmol)およびトリエチルアミン(2.15mL、15.45mmol)を加え、溶液を室温で1時間攪拌した。水(10mL)を反応混合物に加え、有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、真空下(in vacuo)で濃縮し、27−d7(0.90g、80%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 3.10(s、3H)。
【0125】
B.(メトキシ−d)−2,2−d−エチルメタンスルホネート(27−d5)。
【化23】

工程1.(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)メチル)ベンゼン(38−d5)。
塩化メチレン(50.0mL)中の2−ベンジルオキシ−2,2−d−エタノール37−d2(5.00g、32.2mmol、LiAlD[96原子%D、Aldrich]を用いて、Bird,Iら.,Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,1989,27(2):199−216に記載のように調製した)の溶液に塩化メタンスルホニル36(4.00mL、48.3mmol)およびトリエチルアミン(6.70mL、48.3mmol)を加え、溶液を室温で1時間攪拌した。反応混合物に水(25mL)を加え、有機層を分離し、飽和ブライン溶液(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗メシレート中間体(6.00g、25.5mmol、80%)をDMF(20.0mL)中に溶解させ、CDNa 39−d3と組み合わせた。CDNa 39−d3は、DMF(30.0mL)中のCDOD[99.8原子%D、Aldrich](2.00mL、51.0mmol)を水素化ナトリウム(2.00g、84.19mmol、油中55%分散)とインキュベートし、室温で30分間攪拌することでin situで生成した。メシレート/CDNa溶液を室温で6時間攪拌した。反応混合物に水(25mL)を加え、溶液をメチルt−ブチルエーテル(2×15mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、38−d5(4.00g、85%)を得た。
【0126】
工程2.(メトキシ−d)−2,2−d−エチルメタンスルホネート(27−d5)。
THF(20mL)中の(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)メチル)ベンゼン38−d5(4.00g、23.4mmol)の溶液に10%Pd/C(1.00g)を加え、溶液を6.0時間水素化させた。得られた混合物をセリットのパッドを通して濾過した。得られた濾液にトリエチルアミン(5.22mL、37.5mmol)および塩化メタンスルホニル36(3.25mL、37.5mmol)を加え、溶液を室温で一晩攪拌した。溶液に水(10mL)を加え、反応混合物をEtOAc(2×10mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、27−d5(2.50g、68%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 4.40(s、2H)、3.10(s、3H)。
【0127】
C.メトキシ−2,2−d−エチルメタンスルホネート(27−d2)。
【化24】

工程1.(2−メトキシ−2,2−d−エトキシ)メチル)ベンゼン(38−d2)。
塩化メチレン(40.0mL)中の2−ベンジルオキシ−2,2−d−エタノール37−d2(4.50g、28.9mmol、上述のBを参照されたい)の溶液に塩化メタンスルホニル36(3.60mL、43.49mmol)およびトリエチルアミン(6.00mL、43.5mmol)を加え、溶液を室温で1時間攪拌した。反応混合物に水(20mL)を加え、有機層を分離し、飽和ブライン溶液(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗メシレート中間体(6.00g、25.5mmol、80%)をDMF(20.0mL)中に溶解させ、CHNa 39と組み合わせた。CHNa 39は、DMF(30.0mL)中のCHOD[99.8原子%D、Aldrich](2.00mL、55.9mmol)を水素化ナトリウム(2.00g、92.3mmol、油中60%分散)とインキュベートし、室温で30分間攪拌することでin situで生成した。メシレート/CHNa溶液を室温で6時間攪拌した。反応混合物に水(25mL)を加え、溶液をメチルt−ブチルエーテル(2×15mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、38−d2(4.00g、85%)を得た。
【0128】
工程2.メトキシ−2,2−d−エチルメタンスルホネート(27−d2)。
THF(70mL)中の(2−メトキシ−2,2−d−エトキシ)メチル)ベンゼン38−d2(4.00g、23.08mmol)の溶液に10%Pd/C(1.00g)を加え、溶液を6.0時間水素化させた。得られた混合物をセリットのパッドを通して濾過し、濾液にトリエチルアミン(5.00mL、35.7mmol)を加え、次いで、塩化メタンスルホニル36(2.30mL、35.7mmol)を加えた。得られた溶液を室温で一晩攪拌した。溶液に水(10mL)を加え、反応混合物をEtOAc(2×10mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、27−d2(2.50g、68%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 4.40(s、2H)、3.70(s、2H)、3.10(s、3H)。
【0129】
D.(メトキシ−d)エチルメタンスルホネート(27−d3)。
【化25】

工程1.(2−(メトキシ−d)エトキシ)メチル)ベンゼン(38−d3)。
塩化メチレン(80.0mL)中の2−ベンジルオキシエタノール 37(8.10g、53.2mmol)の溶液に塩化メタンスルホニル 36(6.60mL、79.7mmol)およびトリエチルアミン(11.1mL、79.78mmol)を加え、溶液を室温で1時間攪拌した。反応混合物に水(25mL)を加え、有機層を分離し、飽和ブライン溶液(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗メシレート中間体(3.73mL、92.0mmol)をDMF(100.0mL)中に溶解させ、CDNa 39−d3と組み合わせた。CDNa 39−d3は、DMF(100.0mL)中のCDOD[99.8原子%D、Aldrich](3.73mL、92.0mmol)を水素化ナトリウム(3.70g、151.8mmol、油中55%分散)とインキュベートし、室温で30分間攪拌することでin situで生成した。メシレート/CDNa溶液を室温で6時間攪拌した。反応混合物に水(25mL)を加え、溶液をメチルt−ブチルエーテル(2×15mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、38−d3(7.00g、95%)を得た。
【0130】
工程2.(メトキシ−d)エチルメタンスルホネート(27−d3)。
THF(20mL)中の(2−(メトキシ−d)エトキシ)メチル)ベンゼン 38−d3(2.70g、15.9mmol)の溶液に10%Pd/C(1.00g、50%湿気)を加え、溶液を6.0時間水素化させた。得られた反応混合物をセリットのパッドを通して濾過した。濾液にトリエチルアミン(2.90mL、21.1mmol)を加え、続いて、塩化メタンスルホニル36(1.70mL、21.1mmol)を加え、溶液を室温で一晩攪拌した。得られた溶液に水(10mL)を加え、混合物をEtOAc(2×10mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、27−d3(1.70g、77%)を得た。MS(M+H):158。
【0131】
実施例2.4−アミノ−2−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(51f)の合成。
スキーム5aに概説されるように中間体51fを調製した。
【化26】

工程1.4−ニトロ−2−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(53)。
ジオキサン(15mL)中の2−ヨード−4−ニトロフェノール52(2.00g、7.54mmol、J.Org.Chem.2005,70,2445−2454に記載のように調製した)の溶液にPd(PhCl(0.400g)、CuI(0.200g)、およびトリエチルアミン(2.40mL)を加えた。得られた混合物を室温で2時間攪拌した。混合物をセリットを通して濾過し、溶媒を真空下(in vacuo)で蒸発させ、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィーによって精製し、0.500g(29%)の53を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 0.04(s、9H)、7.0(d、J=8.8Hz、1H)、8.15(dd、J=8.8Hz、2.8Hz)、8.28(d、1H、J=2.8Hz)。
【0132】
工程2.4−アミノ−2−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(51f)。
EtOH(80mL)中の53(3.60g、15.3mmol)の攪拌溶液にSnCl.2HO(17.2g、76.4mmol)を加えた。混合物を2時間環流攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣をpH=8に塩基性化した後、EtOAc(2×5mL)中で溶解させ、蒸発させ、51f(2.00g、64%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 0.3(s、9H)、6.62(dd、1H、J=8.8、2.8Hz)、6.67(d、1H、J=2.8Hz)、6.77(d、1H、J=8.8Hz)。MS(M+H):206。
【0133】
実施例3.4−(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−イルアミノ)−2−エチニルフェノール(化合物138)の合成。
スキーム4に概説されるように化合物138を調製した。
【化27】

【0134】
工程1.(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)−4−オキソキナゾリン−3(4H)−イル)メチルピバレート(48−d10)。
DMF(5.0mL)中のジヒドロキシ化合物47(0.500g、1.71mmol、Hennequin,LFら.,J.Med.Chem.,1999、24:5369−5389に記載のように調製した)の溶液にCsCO(0.650g、4.10mmol)および2−(メトキシ−d)−2,2−d−エチルメタンスルホネート27−d5(0.806g、5.13mmol)を加えた。溶液を60℃で3時間攪拌した。DMFを反応混合物から減圧下で除去し、水(5mL)を加えた。溶液をEtOAc(2×5mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、粗48−d10(0.200g、40%)を得た。
【0135】
工程2.6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4(3H)−オン(49−d10)。
ジアルキル化生成物48−d10(0.150g、0.49mmol)にMeOH(4.0mL)中のアンモニアを加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した後、真空下で濃縮し、ジエチルエーテルを残渣に加えた。生成された固形物を濾過し、真空下で乾燥させ、49−d10(0.100g、71%)を得た。
【0136】
工程3.4−クロロ−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン(50−d10)。
CHCl(2.0mL)中の49−d10(0.100g、0.327mmol)の溶液にDMF(触媒量)および塩化オキサリル(0.1mL、0.443mmol)を加えた。溶液を0℃で15分間攪拌したた後、環流加熱し、6時間攪拌した。反応混合物に飽和NaHCOを加え、有機層を分離した。50−d10を含む有機層を次の工程に直接使用した。
【0137】
工程4.4−(6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−イルアミノ)−2−エチニルフェノール(化合物138)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.05g、0.155mmol)の溶液に、CHCl(1mL)中に溶解させた、TMS保護されたアニリン51f(0.034g、0.170mmol)を加え、溶液を環流温度で4時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、得られた固形物をジエチルエーテルで洗浄した。粗生成物(0.05g、0.101mmol)にMeOH(2mL)中のKCO(0.041g、0.303mmol)を加え、溶液を室温で4時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣を中性アルミナのカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物138(7mg)を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ 4.10(s、1H)、4.24(s、4H)、6.88〜6.90(m、1H)、7.17(s、1H)、7.54〜7.55(m、1H)、7.81(s、1H)、7.62〜7.65(m、1H)、7.81(s、1H)、8.38(s、1H)、9.35(s、1H)、9.87(s、1H)。MS(M+H):420。
【0138】
実施例4.N−(3−エチニル−4−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物135)の合成。
スキーム4に概説されるように化合物135を調製した。
【化28】

N−(3−エチニル−4−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物135)。
CHCl(5.0mL)中の50−d10(0.200g、0.62mmol、実施例3を参照されたい)の溶液に、CHCl(1.0mL)中に溶解させたアニリン51i(0.139g、0.682mmol、J.Org.Chem.,1981,2280−2296に記載のように調製した)を加え、溶液を4時間環流攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、得られた固形物をジエチルエーテルで洗浄し、生成物(0.200g、60%)を得た。粗生成物(0.200g、0.4mmol)にMeOH(4mL)中のアンモニアを加え、溶液を室温で4時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物135(40mg)を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ 4.26(s、4H)、4.50(s、1H)、6.50(s、1H)、7.21(s、1H)、7.30〜7.34(m、1H)、7.84〜7.88(m、2H)、7.99〜8.00(m、1H)、8.46(s、1H)、9.48(s、1H)。MS(M+H):422。
【0139】
実施例5.4−(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−イルアミノ)−2−エチニルフェノール(化合物124)の合成。
スキーム4に概説されるように化合物124を調製した。
【化29】

【0140】
工程1.(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)−4−オキソキナゾリン−3(4H)−イル)メチルピバレート(48−d14)。
DMF(5.0mL)中のジヒドロキシ化合物47(0.500g、1.71mmol、実施例3を参照されたい)の溶液にCsCO(0.650g、4.10mmol)および2−メトキシエチルメタンスルホネート−d7 27−d7(0.806g、5.13mmol)を加えた。混合物を60℃で3時間攪拌した。DMFを真空下で除去し、水(5mL)を残渣に加えた。混合物をEtOAc(2×5mL)で抽出した。組み合わせたEtOAc層をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、48−d14(0.200g、40%)を得た。
【0141】
工程2.6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4(3H)−オン(49−d14)。
ジアルキル化生成物48−d14(0.200g、0.49mmol)にMeOH(4.0mL)中のアンモニアを加え、反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、ジエチルエーテルを残渣に加えた。生成された固形物を濾過し、真空下で乾燥させ、49−d14(0.100g、70%)を得た。
【0142】
工程3.4−クロロ−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン(50−d14)。
CHCl(2.0mL)中の49−d14(0.100g、0.327mmol)の溶液にDMF(触媒量)および塩化オキサリル(0.1mL、0.443mmol)を加え、溶液を0℃で15分間攪拌した。反応混合物を6時間環流加熱した。得られた反応混合物に飽和NaHCOを加えた。有機層を分離し、次の工程に直接使用した。
【0143】
工程4.4−(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−イルアミノ)−2−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール。
CHCl(2mL)中の50−d14(0.100g、0.306mmol)の溶液に、イソプロパノール(1mL)中に溶解させたTMS保護されたアニリン51f(0.069g、0.337mmol)を加え、溶液を4時間環流攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、得られた固形物をジエチルエーテルで洗浄した。分取TLCを用いて所望の生成物を単離し、8mgを得た。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ 3.90(s、1H)、6.88〜6.90(m、1H)、7.17(s、1H)、7.54〜7.55(m、1H)、7.81(s、1H)、7.62〜7.65(m、1H)、7.80(s、1H)、8.39(s、1H)、9.30(s、1H)、9.84(s、1H)。MS(M+H):496。
【0144】
工程5.4−(6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−イルアミノ)−2−エチニルフェノール(化合物124)。
先の工程で生成したTMS保護されたフェノールと、MeOH中のKCOとの混合物を室温で4時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣を中性アルミナのカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物である化合物124を得た。化合物124の不安定な性質により、分析特性については行わなかった。
【0145】
実施例6.N−(3−エチニル−4−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−アミン(化合物121)の合成。
スキーム1に概説されるように化合物121を調製した。
【化30】

【0146】
工程1.6,7−ジヒドロキシ−4(3H)−キナゾリノン(11)。
6,7−ジメトキシ−4(3H)−キナゾリノン10(3.0g、14.5mmol)および48%HBr(36mL)の溶液を100℃で12時間環流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、固形物を濾過により除去した後、水性NH(pH=8)で中性化した。得られた溶液を濾過し、固形物を水で洗浄し、乾燥させ、オフホワイトの結晶性固体として6,7−ジヒドロキシ−4(3H)−キナゾリノン11(2.20g、84%)を得た。
【0147】
工程2.6,7−ジアセトキシ−4(3H)−キナゾリノン(12)。
6,7−ジヒドロキシ−4(3H)−キナゾリノン11(2.20g、12.2mmol)にAcO(13.3mL)と、一滴のピリジンとを加え、得られた反応混合物を120℃で2時間環流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を水中で溶解させ、混合物を室温で1時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過し、乾燥させ、オフホワイトの結晶性固体として6,7−ジアセトキシ−4(3H)−キナゾリノン12(1.70g、53%)を得た。
【0148】
工程3.4−クロロキナゾリン−6,7−ジイル=ジアセテート(13)。
CHCl(60mL)中の6,7−ジアセトキシ−4(3H)−キナゾリノン12(3.20g、11.42mmol)の溶液に塩化オキサリル(2.2mL、17.3mmol)を0℃で滴下した。得られた反応混合物を室温で15分間攪拌した後、5時間徐々に環流加熱した。反応混合物を10℃に冷却し、溶液を水性重炭酸ナトリウムで急冷した。有機層を分離し、ブラインで洗浄した後、NaSOで乾燥させ、濃縮することなく次の工程に直接使用した。
【0149】
工程4.4−(3−エチニル−4−フルオロフェニルアミノ)キナゾリン−6,7−ジオール(26)。
CHCl(10mL)中の13(0.800g、2.10mmol)の溶液に3−エチニル−4−フルオロアニリン24d(0.311g、2.31mmol、J Org Chem,1981,2280−2296に記載のように調製した)を加え、溶液を一晩環流攪拌した。得られた固形物を濾過し、乾燥させ、ジアセチル生成物25(0.700g、70%)を得た。生成物25をMeOH(2mL)中のアンモニアと室温で1時間攪拌した。混合物を真空下で濃縮し、残渣を水(5mL)で洗浄し、濾過し、生成物26(0.300g、55%)を得た。
【0150】
工程5.N−(3−エチニル−4−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−アミン(化合物121)。
DMF(15mL)中の26(0.500g、1.69mmol)の溶液にKCO(0.930g、6.70mmol)および2−(メトキシ−d)エチル−dメタンスルホネート27−d7(0.59g、3.71mmol)を加えた。溶液を90℃で4時間攪拌した。DMFを真空下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物121を22mg得た。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ 4.50(s、1H)、7.22(s、1H)、7.31〜7.36(m、1H)、7.83(s、1H)、7.86〜7.89(m、1H)、8.00〜8.47(m、1H)、8.47(s、1H)、9.49(s、1H)。MS(M+H):426。
【0151】
実施例7.N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−アミン(化合物120)の合成。
スキーム1に概説されるように化合物120を調製した。
【化31】

【0152】
工程1.N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ジアセトキシ−4−キナゾリンアミンヒドロクロリド(25)。
実施例6で生成したCHCl中の4−クロロキナゾリン−6,7−ジイル=ジアセテート13の溶液にエチニルアニリン24e(1.19ml、11.42mmol、市販のもの)を加えた。反応混合物を一晩環流加熱し、室温に冷却し、濾過し、固体として25(3.0g、94%)を得た。
【0153】
工程2.N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ジヒドロキシ−4−キナゾリンアミンヒドロクロリド(26)。
メタノール(30mL)中のヒドロクロリド塩25(4.2g、11.62mmol)に25%水性アンモニア(4.73mL)を加え、溶液を4時間攪拌した。反応混合物を濾過し、固形物を水で洗浄し、黄褐色固体として26(3.0g、93%)を得た。
【0154】
工程3.N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)エトキシ−d)キナゾリン−4−アミン(化合物120)。
DMF(25mL)中のジヒドロキシ化合物26(0.800g、2.88mmol)の溶液にKCO(1.59g、11.52mmol)および2−(メトキシ−d)エチル−dメタンスルホネート27−d7(1.12g、7.21mmol)を加えた。溶液を室温で15分間攪拌した後、60℃に加熱し、2時間攪拌した。得られた混合物を真空下でDMFにストリップさせて、残渣を水(10mL)中で溶解させた。水溶液をEtOAc(2×5mL)で抽出し、組み合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をジエチルエーテル(3mL)中で溶解させ、固形物を濾過し、化合物120(0.500g、43%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ 4.10(s、1H)、7.10(m、1H)、7.30(m、1H)、7.80(m、1H)、7.90(s、1H)、8.50(s、1H)、9.50(s、1H)。MS(M+H):408。
【0155】
実施例8.N−(3−ブロモフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物105)の合成。
【化32】

N−(3−ブロモ)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2,−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物105)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.056g、0.174mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に3−ブロモアニリン51a(21μL、0.191mmol)を加えた。得られた溶液を15時間環流攪拌した後、飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3%MeOH/CHCl)、化合物105(20.4mg、26%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.66(s、1H)、8.00〜7.97(m、1H)、7.66〜7.60(m、1H)、7.47(s、1H)、7.66〜7.22(m、2H)、7.19(s、1H)、7.17(s、1H)、4.23(s、2H)、4.19(s、2H)。MS(M+H):476。
【0156】
実施例9.N−(3−クロロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物106)の合成。
【化33】

N−(3−クロロ)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物106)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.058g、0.180mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に3−クロロアニリン51b(21μL、0.198mmol)を加えた。得られた混合物を15時間環流攪拌した後、飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3% MeOH/CHCl)、化合物106(37mg、49%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.67(s、1H)、7.89(t、J=2.0Hz、1H)、7.56(ddd、J=0.8、2.0、8.1Hz、1H)、7.38(br s、1H)、7.31(t、J=8.1Hz、1H)、7.19(d、1.8Hz、2H)、7.11(ddd、J=1.0、2.0、8.1Hz、1H)、4.25(s、2H)、4.21(s、2H)。MS(M+H):414。
【0157】
実施例10.N−(3−トリフルオロメチルフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物108)の合成。
【化34】

N−(3−トリフルオロメチル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(108)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.058g、0.180mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に3−トリフルオロメチルアニリン51c(25μL、0.198mmol)を加え、得られた溶液を15時間環流攪拌した。反応混合物を飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3% MeOH/CHCl)、化合物108(33.7mg、42%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.67(s、1H)、8.03〜7.96(m、2H)、7.55〜7.46(m、2H)、7.41〜7.36(m、1H)、7.20(s、1H)、7.19(s、1H)、4.27(s、2H)、4.21(s、2H)。MS(M+H):448。
【0158】
実施例11.N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物115)の合成。
【化35】

N−(3−クロロ−4−フルオロ)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物115)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.058g、0.180mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に3−クロロ−4−フルオロアニリン51d(29mg、0.198mmol)を加えた。混合物を15時間環流攪拌した後、飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3% MeOH/CHCl)、化合物115(42.5mg、55%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.60(s、1H)、7.86(dd、J=2.8、6.6Hz、1H)、7.72(br s、1H)、7.56〜7.49(m、1H)、7.22(s、1H)、7.13(t、J=8.6Hz、1H)、7.12(s、1H)、4.20(s、2H)、4.16(s、2H)。MS(M+H):432。
【0159】
実施例12.N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物119)の合成。
【化36】

N−(4−ブロモ−2−フルオロ)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物119)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.058g、0.180mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に4−ブロモ−2−フルオロアニリン(38mg、0.198mmol)を加えた。得られた混合物を15時間環流攪拌した後、飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3% MeOH/CHCl)、化合物119(44.7mg、52%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.68(s、1H)、8.53(t、J=8.8Hz、1H)、7.37〜7.29(m、3H)、7.25(s、1H)、7.21(s、1H)、4.30(s、2H)、4.28(s、2H)。MS(M+H):476。
【0160】
実施例13.4−ブロモ−3−エチニルアニリン(24f)の合成。
スキーム5bに概説されるように中間体24fを調製した。
【化37】

4−ブロモ−3−エチニルアニリン(24f)。
トリエチルアミン(32mL)中の3,4−ジブロモアニリン54(2.00g、7.97mmol)およびトリメチルシリルアセチレン(1.10mL、7.97mmol)の溶液に臭化銅(I)(69.0mg、0.478mmol)を加えた後、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(184mg、0.159mmol)を加えた。反応物を20時間環流攪拌した後、室温に冷却した。反応物を濃縮し、トリエチルアミンを除去し、得られた残渣を飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をメタノール(80mL)中に溶解させ、KCO(5.51g、39.9mmol)を加えた。この混合物を室温で15時間攪拌した後、水で希釈し、メタノールを真空下で除去し。得られた水溶液をEtOAcで抽出し、組み合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜15% EtOAc/ヘプタン)、24f(70mg、45%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.30(d、J=8.6Hz、1H)、6.84(d、J=3.0Hz、1H)、6.54(dd、J=2.8、8.6Hz、1H)、3.31(s、1H)。MS(M+H):197。
【0161】
実施例14.N−(4−ブロモ−3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物113)の合成。
【化38】

N−(4−ブロモ−3−エチニル)−6,7−ビス(2−(メトキシ−d)−2,2−d−エトキシ)キナゾリン−4−アミン(化合物113)。
CHCl(2.0mL)中の50−d10(0.058g、0.180mmol、調製には実施例3を参照されたい)の溶液に4−ブロモ−3−エチニルアニリン(24f)(39mg、0.198mmol)を加えた。得られた溶液を15時間環流攪拌した後、飽和NaHCOで希釈し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(SiO、0〜3% MeOH/CHCl)、化合物113(15.9mg、18%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 8.64(s、1H)、7.92(d、J=2.5Hz、1H)、7.66(dd、J=2.5、8.8Hz、1H)、7.57(d、J=8.6Hz、1H)、7.40(br s、1H)、7.17(d、J=2.0Hz、1H)、4.24(s、2H)、4.19(s、2H)、3.39(s、1H)。MS(M+H):482。
【0162】
実施例15.ヒト肝ミクロソームにおける化合物安定性の評価。
化合物120、121、135、138、およびエルロチニブの比較。
本発明の化合物の代謝的安定性について、プール肝臓のミクロソームインキュベーションを用いて試験した。プールヒト肝ミクロソームに曝された試験化合物の試料をHPLC−MS(またはMS/MS)検出を用いて分析した。代謝的安定性の判定では、多反応モニタリング(MRM)を用いて試験化合物の消失を測定した。
【0163】
実験手順.XenoTech,LLC(Lenexa,KS))からヒト肝ミクロソーム(「HLM」;20mg/mL)を入手した。Sigma−Aldrichからβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl)、およびジメチル・スルホキシド(DMSO)を購入した。
【0164】
試験化合物のストック溶液(7.5mM)をDMSO中で調製した。7.5mMのストック溶液をアセトニトリル(ACN)中で50μMに希釈した。20mg/mLヒト肝ミクロソームを3mMのMgClを含有するpH7.4の0.1Mリン酸カリウム緩衝液中で0.625mg/mLに希釈した。希釈したミクロソーム(375μL)を、3通り(in triplicate)で、96ウェルディープウェルポリプロピレンプレートのウェルに加えた。試験化合物溶液50μMの一定分量10μLをミクロソームに加え、混合物を10分間予熱した。125μLの予熱したNADPH溶液(3mMのMgClを含有する、pH7.4の、0.1Mリン酸カリウム緩衝液中の8mM NADPH)を加えることで反応を開始させた。最終反応体積は、0.5mLであり、0.5mg/mLのヒト肝ミクロソーム、1μMの試験化合物、および、pH7.4の、0.1Mリン酸カリウム緩衝液中の2mM NADPH、ならびに3mMのMgClを含有した。反応混合物を37℃でインキュベートし、50μLの一定分量を0分、5分、10分、20分、および30分で取り出し、内部標準によって50μLの氷冷ACNを含んだ浅いウェルの96ウェルプレートに加え、反応を止めた。100μLの水をプレートのウェルに加えた後、プレートを4℃で20分間保存し、遠心分離してペレット状の沈降タンパク質にした。上清を別の96ウェルプレートに移し、Applied Bio−systemsのAPI4000質量分析計を用いてLC−MS/MSによって親残余の量を分析した。7−エトキシクマリンを陽性対照として用いた。
【0165】
試験化合物のin vitro半減期(t1/2s)は、以下の式を用いて、%親残余(ln)対インキュベーション時間の関係を持つ線形回帰の傾きから算出した。in vitro t1/2=0.693/k、ここで、k=−[%親残余(ln)対インキュベーション時間の線形回帰の傾き]。データ分析は、マイクロソフトのエクセルソフトウェアを用いて行った。
【0166】
これらの実験結果を表5に示す。
表5.ヒト肝ミクロソームにおける化合物の安定性。
【表5】


a)%差=[(重水素化種)−(非重水素化種)](100)/(非重水素化種)
【0167】
試験したアッセイ条件下(0.5mg/mL HLM、1μM試験化合物)で、化合物120は、エルロチニブと比較して19%長いt1/2を示したが、化合物138は、エルロチニブと比較して53%長いt1/2を示した。
【0168】
実施例16.ヒト肝ミクロソームにおける化合物安定性の評価。
化合物105、106、105−H、106−H、およびエルロチニブの比較。
【0169】
実施例16は、非重水素化アナログおよびエルロチニブに対して化合物105および106を試験した以外は、実施例15と同様の構成である。化合物105−Hは、水素、もしくは化合物105の非重水素化バージョンであり、化合物106−Hは、水素、もしくは化合物106の非重水素化バージョンである(即ち、化合物105−Hおよび106−Hにおいて、各Yおよび各Zは水素である)。
【0170】
これらの実験結果を表6に示す。
表6.ヒト肝ミクロソームにおける化合物105および106対105−H、106−H、およびエルロチニブの安定性。
【表6】


a)%差=[(重水素化種)−(非重水素化種)](100)/(非重水素化種)
b)非重水素化アナログに対する%差
c)非重水素化エルロチニブに対する%差
【0171】
試験したアッセイ条件下(0.5mg/mL HLM、1μM試験化合物)で、化合物105は、エルロチニブと比較して19%長いt1/2、105−Hと比較して35%長いt1/2を示したが、化合物106は、エルロチニブと比較して55%長いt1/2、106−Hと比較して22%長いt1/2を示した。
【0172】
さらに説明することなく、当業者は、前述の説明および例示実施例を用いて、本発明の化合物を作り、利用し、請求項に記載の方法を実行することができると考えられる。上述の議論および実施例は、特定の好適な実施形態の詳細な説明を単に述べたにすぎないこと理解すべきである。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱せずにさまざまな変更物および同等物の作成が可能であることが明らかであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Qの化合物:
【化39】

(Q)、
またはその医薬的に許容される塩であって、
式中:
各X、各Y、および各Zは、水素および重水素から独立に選択され;
は、水素、ハロ、−OH、−OCD、および−OCHから選択され;
は、−C≡CH、および−C≡CDから選択され;
は、水素およびフルオロから選択され;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、RおよびRの各々が水素である場合、Xの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、RおよびRの各々が水素であり、Rが−C≡CHであり、かつ、各Xおよび各Zが重水素である場合、Yの少なくとも1つは重水素である。
【請求項2】
各Yが同一であり、各Yが同一であり、各Zが同一であり、各Zが同一であり、各Xが同一であり、かつ、各Xが同一である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各Yが重水素であり、各Yが重水素であり、各Zが重水素であり、かつ、各Zが重水素である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がハロである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
各Yが重水素であり、各Yが重水素であり、各Zが重水素であり、各Zが重水素であり、各Xが水素であり、各Xが水素であり、Rが−C≡CHであり、Rが水素であり、かつ、RがBrまたはFである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Aの化合物:
【化40】

(A)、
またはその医薬的に許容される塩であって、
式中:
各X、各Y、各Z、およびWは、水素および重水素から独立に選択され;
は水素、OH、F、OCD、またはOCHであり;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは重水素であり;
但し、Rが水素である場合、Xの少なくとも1つは重水素であり;
さらに但し、Rが水素であり、Wが水素であり、かつ、各Xおよび各Zが重水素である場合、Yの少なくとも1つは重水素である。
【請求項7】
以下に記載の化合物のいずれか1つから選択される請求項6に記載の化合物:
【表7】

【請求項8】
以下に記載の化合物のいずれか1つから選択される請求項6に記載の化合物:
【表8】

【請求項9】
【化41】

化合物120、および
【化42】

化合物138から選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
式Rの化合物:
【化43】

(R)、
またはその医薬的に許容される塩であって、
式中:
各X、各Y、および各Zは、水素および重水素から独立に選択され;
は、水素、ハロ、−OH、−OCD、および−OCHから選択され;
は、水素、ハロ、および−CFから選択され;
は、水素およびフルオロから選択され;
但し、X、Y、またはZの少なくとも1つは、重水素である。
【請求項11】
各Yが同一であり、各Yが同一であり、各Zが同一であり、各Zが同一であり、各Xが同一であり、かつ、各Xが同一である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
各Yが重水素であり、各Yが重水素であり、各Zが重水素であり、かつ、各Zが重水素である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が水素またはハロである請求項10〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
以下に記載の化合物のいずれか1つから選択される請求項10に記載の化合物:
【表9】

【請求項15】
【化44】

化合物105、
【化45】

化合物106、
【化46】

化合物108、
【化47】

化合物115、および
【化48】

化合物119から選択される請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1、請求項6、または請求項10のいずれか1項に記載の化合物と、医薬的に許容される担体とを含むピロゲンフリー医薬組成物。
【請求項17】
癌、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、未分化胚芽細胞の成熟および着床、乾癬、および良性前立腺肥大症(BPH)から選択される疾患または疾病の治療に有用な第2の治療薬をさらに含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第2の治療薬が、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース、3’−デオキシ−3’−[18F]フルオロチミジン、5−フルオロウラシル、AV412、アバスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルシトリオール、カネルチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、セツキシマブ、CHR−2797、シスプラチン、ダサチニブ、ジゴキシン、エンザスタウリン、エトポシド、エベロリムス、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、マツズマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、ペグ化アルファインターフェロン、ペメトレキセド、ポリフェノン(登録商標)E、サトラプラチン、シロリムス、ソラフェニブ、スーテント、スリンダク、スニチニブ、タキソテール、テモダール、テモゾロマイド、テムシロリムス、TG01、チピファルニブ、トラスツズマブ、バルプロ酸、ビンフルニン、ボロシキシマブ、ボリノスタット、およびXL647から選択される請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2の治療薬がベバシズマブである請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
癌、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、未分化胚芽細胞の成熟および着床、乾癬、および良性前立腺肥大症(BPH)から選択される疾患または疾病に罹患しているもしくは罹患しやすい患者の治療方法であって、
請求項16に記載の組成物をそれを必要とする前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項21】
前記患者が、非小細胞肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、脳癌、膀胱癌、肉腫、前立腺癌、黒色腫、子宮頸癌、固形腫瘍、星状細胞腫、乳癌、膵臓癌、多形性膠芽腫、腎臓癌、消化器/胃腸癌、肝臓癌、婦人科癌、中枢神経腫瘍、胸腺腫、および胃癌から選択される癌に罹患しているもしくは罹患しやすい請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、非小細胞肺癌に罹患している請求項21に記載の方法。
【請求項23】
癌、炎症、血管新生、血管再狭窄、免疫学的疾患、膵炎、腎疾患、未分化胚芽細胞の成熟および着床、乾癬、および良性前立腺肥大症(BPH)から選択される疾患または疾病の治療に有用な第2の治療薬をそれを必要とする前記患者に投与する工程をさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、癌に苦しんでおり、前記第2の治療薬が、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース、3’−デオキシ−3’−[18F]フルオロチミジン、5−フルオロウラシル、AV412、アバスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルシトリオール、カネルチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、セツキシマブ、CHR−2797、シスプラチン、ダサチニブ、ジゴキシン、エンザスタウリン、エトポシド、エベロリムス、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、マツズマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、ペグ化アルファインターフェロン、ペメトレキセド、ポリフェノン(登録商標)E、サトラプラチン、シロリムス、ソラフェニブ、スーテント、スリンダク、スニチニブ、タキソテール、テモダール、テモゾロマイド、テムシロリムス、TG01、チピファルニブ、トラスツズマブ、バルプロ酸、ビンフルニン、ボロシキシマブ、ボリノスタット、およびXL647から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の治療薬がベバシズマブであり、前記患者が非小細胞肺癌に罹患している請求項24に記載の方法。


【公表番号】特表2011−516426(P2011−516426A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502126(P2011−502126)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038701
【国際公開番号】WO2009/121042
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】