説明

キネシン活性の調節因子を同定するための方法

第一の局面において、標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための方法を提供し、この方法は、標的タンパク質を候補因子と接触させる工程;およびこの候補因子がその標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定する工程;を包含し、その標的タンパク質は、KIF14(配列番号2)またはKIF14モータードメイン(配列番号3)に対して80%より高いアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。第二の局面において、本発明は、細胞増殖を調節する方法を提供し、この方法は、細胞に、有効量の標的タンパク質の活性の調節因子を投与する工程を包含する。この局面のいくつかの実施形態は、細胞過剰増殖障害(例えば、癌)を有する被験体を処置するための方法を提供する。第三の局面において、本発明は、標的タンパク質の活性のインヒビターを用いる処置のための候補被験体を同定するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、KIF14タンパク質および関連タンパク質の活性の調節因子を同定するための方法、およびこれらの調節因子を使用して癌などの状態を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
乳癌は、女性において最も一般的な癌であり、そして米国において2番目に一般的な癌死亡原因である。KIF14は、その発現が、診断において局所リンパ節中に腫瘍細胞を含まない患者における遠隔転移に対する時間間隔によって評価した場合に、乳癌の予後が悪い結果と正に相関する遺伝子として、同定された(van’t Veerら(2002)Nature 415:530〜536)。KIF14は、キネシンファミリー(KIF)タンパク質のメンバーである。キネシンは、微小管依存性分子モーターであり、これは、ATP加水分解からのエネルギーを使用して、微小管に沿って荷物を移動する。多くのキネシンは、細胞分裂において重要な役割を果たすことが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細胞増殖を阻害し、細胞増殖性障害(例えば、乳癌)を有する患者を処置するために有用である化合物を同定するための方法についての必要性が、存在する。特に、標的タンパク質(例えば、KIF14)の活性の調節因子を同定するための方法についての必要性が存在し、その標的タンパク質の発現は、癌患者において予後が悪いことに関連する。本発明は、これらの必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
KIF14 cDNAの配列が、配列番号1において提供される。第一の局面において、本発明は、標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための方法を提供し、その標的タンパク質は、KIF14(配列番号2)またはKIF14モータードメイン(配列番号3)に対して、80%より高いアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。この方法は、標的タンパク質を候補因子と接触させる工程;およびその候補因子がこの標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定する工程;を包含する。いくつかの実施形態は、(a)上記標的タンパク質を、第一濃度の上記候補因子と接触させ、上記標的タンパク質の第一の活性レベルを測定し;(b)上記標的タンパク質を、第二濃度の上記候補因子と接触させ、上記標的タンパク質の第二の活性レベルを測定する、方法を提供し、上記標的タンパク質の第一の活性レベルと第二の活性レベルとの間の差異は、上記候補因子が上記標的タンパク質の活性を調節することを示す。いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、KIF14のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。上記標的タンパク質はまた、KIF14モータードメインをコードするアミノ酸356〜709(配列番号3)を含み得るか、またはATPアーゼ活性を有する配列番号3の任意のフラグメントを含み得る。例えば、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質のアミノ酸342〜720の間の配列(配列番号4)を含むタンパク質、KIF14タンパク質のアミノ酸342〜710の間の配列(配列番号5)を含むタンパク質、KIF14タンパク質のアミノ酸354〜アミノ酸720の間の配列(配列番号6)を含むタンパク質、またはKIF14タンパク質のアミノ酸354〜アミノ酸710の間の配列(配列番号7)を含むタンパク質であり得る。
【0005】
上記標的タンパク質は、インビボまたはインビトロで上記候補因子と接触させられ得る。例えば、この方法はまた、細胞中で上記標的タンパク質を発現させる工程も包含し得る。上記標的タンパク質の活性を測定するために使用されるアッセイとしては、ATPアーゼアッセイ、結合アッセイ、微小管結合アッセイ、微小管滑動(microtubule−gliding)アッセイ、細胞増殖アッセイ、細胞生存度(cell viability)アッセイ、細胞周期分布(cell cycle distribution)アッセイ、および細胞死アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアッセイは、上記候補因子が上記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために、蛍光、発光、放射能、または吸光度を使用し得る。いくつかの実施形態において、高スループットスクリーニングアッセイが、上記候補因子が上記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用される。
【0006】
第二の局面において、本発明は、細胞増殖を調節する方法を提供し、この方法は、細胞に、有効量の標的タンパク質の活性の調節因子を投与する工程を包含し、この標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む。上記調節因子は、インビトロ(例えば、組織培養中)またはインビボで(例えば、被験体に)細胞に投与され得る。いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、配列番号2において提供されるアミノ酸配列、配列番号3において提供されるアミノ酸配列、またはATPアーゼ活性を有する配列番号3の任意のフラグメントを含む。上記標的タンパク質の活性の調節因子は、インヒビター(例えば、標的タンパク質発現のインヒビター、またはその標的タンパク質による微小管依存性ATP加水分解のインヒビター)であり得る。いくつかの実施形態において、上記調節因子は、RNAインヒビター(例えば、配列番号8において提供される配列、配列番号9において提供される配列、または配列番号23において提供される配列を含む、KIF14 RNAインヒビター)である。いくつかの実施形態において、上記調節因子は、上記標的タンパク質による微小管依存性ATP加水分解のインヒビターである。上記標的タンパク質による微小管依存性ATP加水分解のインヒビターとしては、有機低分子化合物(例えば、セミカルバゾンおよびチオセミカルバゾン)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、上記インヒビターは、アリルチオセミカルバゾンであり得る。
【0007】
本発明のこの局面のいくつかの実施形態は、細胞過剰増殖障害(例えば、癌)を有する被験体を処置するための方法を提供する。これらの方法は、細胞過剰増殖障害(例えば、乳癌)を有する被験体に、治療上有効な量の標的タンパク質の活性のインヒビターを投与する工程を包含し、この標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む。本発明のこの局面のいくつかの実施形態は、細胞過剰増殖障害を有する被験体に、治療上有効な量の既知治療剤と、標的タンパク質の活性のインヒビターとを投与する工程によって、その細胞増殖障害を有する被験体を処置する方法を提供する。
【0008】
第三の局面において、本発明は、標的タンパク質の活性の調節因子を用いる処置のための候補被験体を同定するための方法を提供し、その標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む。これらの方法は、(a)被験体のサンプル細胞における標的タンパク質の発現レベルを測定する工程;および(b)そのサンプル細胞における上記標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に異なる場合に、その被験体を、上記標的タンパク質の活性の調節因子を用いる処置のための候補被験体として同定する工程;を包含する。いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、配列番号2において提供されるアミノ酸配列、配列番号3において提供されるアミノ酸配列、またはATPアーゼ活性を有する配列番号3の任意のフラグメントを含む。サンプル細胞における上記標的タンパク質の発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルにて測定することにより決定され得る。上記方法は、上記候補被験体を、上記標的タンパク質の活性の調節因子で処置する工程をさらに包含し得る。
【0009】
いくつかの実施形態は、(a)被験体の異常に増殖する細胞における標的タンパク質の発現レベルを測定する工程;および(b)その異常に増殖する細胞における上記標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に高い場合に、その被験体を、上記標的タンパク質の活性のインヒビターを用いる処置のための候補被験体として同定する工程によって、上記標的タンパク質の活性のインヒビターを用いる処置のための候補被験体を同定するための方法を提供する。上記方法は、上記候補被験体を、上記標的タンパク質の活性のインヒビターを用いて処置する工程をさらに包含し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための方法を提供する。本発明はまた、有効量の標的タンパク質インヒビターを投与することにより、細胞増殖を阻害するための方法および細胞増殖障害を有する被験体を処置する方法を提供する。さらに、本発明は、標的タンパク質のインヒビターを用いる処置のための候補被験体を同定するための方法を提供する。これらの方法のいくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質(配列番号2)である。いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質(配列番号2)またはKIF14のモータードメイン(配列番号3)に対して80%より高いアミノ酸配列類似性を有する配列を含むタンパク質である。
【0011】
KIF14転写物(配列番号1)の発現は、診断において局所リンパ節中に腫瘍細胞を含まない患者における遠隔転移に対する時間間隔によって評価した場合に、乳癌の予後が悪い結果と正に相関することが、見出された(van’t Veerら(2002)Nature 415:530〜536)。KIF14遺伝子は、推定キネシンモータードメイン(MD)(配列番号3)を含むタンパク質(配列番号2)をコードする。本明細書中で使用される場合、用語「モータードメイン」とは、キネシンスーパーファミリーモータードメインにおける構成員であることを与える、標的タンパク質のドメインを指す(例えば、ValeおよびFletterick(1997)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.13:745〜77参照)。KIF14転写物(配列番号1)の発現は、実施例1に記載されるように、腫瘍細胞において上昇する。増殖因子で処理された細胞株におけるKIF14発現パターンは、実施例2において記載されるような、有糸分裂性キネシンのKIF14発現パターンと類似する。さらに、有糸分裂の間のKIF14 mRNAの蓄積および有糸分裂の間のKIF14タンパク質の動的細胞局在化は、実施例3において記載されるように、有糸分裂性キネシンについて観察されるものと類似する。さらに、細胞におけるKIF14発現の減少は、実施例4において記載されるように、増殖阻害および細胞死をもたらす。具体的には、KIF14発現の減少は、実施例5および実施例6において記載されるように、異常な細胞質分裂と関連する。細胞質分裂におけるKIF14除去の影響は、実施例6において示されるように、正常細胞においてよりも腫瘍細胞において顕著である。
【0012】
第一の局面において、本発明は、標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための方法を提供し、その標的タンパク質は、KIF14(配列番号2)またはKIF14モータードメイン(配列番号3)に対して80%より高いアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。上記方法は、標的タンパク質を候補因子と接触させる工程;およびその候補因子がこの標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定する工程;を包含する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「標的タンパク質」とは、KIF14の生物学的活性(例えば、ATPアーゼアッセイにおいて試験されるような、微小管により刺激されるATPアーゼ活性が挙げられるが、これに限定はされない)のうちの1つ以上を有するタンパク質を指す。「ATPアーゼ活性」とは、ATPを加水分解する能力を指す。生物学的活性はまた、微小管滑動(microtubule gliding)アッセイまたは微小管結合アッセイにおいて、実証され得る。標的タンパク質の他の生物学的活性としては、重合/解重合(微小管の動態に対する影響)、紡錘体の他のタンパク質への結合、細胞周期制御に関与するタンパク質への結合、または他の酵素(キナーゼもしくはプロテアーゼ)に対する基質として作用すること、および特定のキネシン細胞活性(染色体分離への関与)が挙げられ得る。用語「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を含む化合物を指す。この標的タンパク質は、真核生物または原核生物(例えば、哺乳動物、真菌、細菌、昆虫、植物、およびウイルス)に由来し得る。
【0014】
さらに、本発明の方法において使用される標的タンパク質は、KIF14(配列番号2)またはKIF14モータードメイン(配列番号3)に対して80%より高いアミノ酸配列同一性(例えば、90%より高いアミノ酸配列同一性、95%より高いアミノ酸配列同一性、または99%より高いアミノ酸配列同一性)を有する配列を有するタンパク質である。用語「同一」または「同一性」パーセントとは、2つ以上のアミノ酸配列の文脈においては、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用するかまたは手作業整列および視認により測定して、比較ウィンドウにわたって比較して最大対応について整列した場合に、同じであるか、もしくは特定の割合の同じアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列もしくは部分配列を指す。
【0015】
同一ではないアミノ酸位置は、しばしば、保存的アミノ酸置換によって異なり、この保存的アミノ酸置換において、あるアミノ酸残基が、類似する化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基を置換しており、従って、その分子の機能的特性を変化させないことが、認識される。配列が保存的置換にて異なる場合、配列同一性パーセントは、その置換の保存的性質について補正するために上向きに調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者にとって周知である。保存的置換のスコアリングは、例えば、MeyersおよびMillers(1988)Computer Applic.Biol.Sci.4:11〜17のアルゴリズムに従って計算され得る。
【0016】
「比較ウィンドウ」とは、連続する位置(例えば、約25位置と約600位置との間、または約50位置〜200位置の間、または約100位置と150位置との間)のセグメントに対する言及を包含し、そのセグメント全体にわたって、配列と参照配列とが最適に整列された後で、その配列は、同じ連続位置数の参照配列と比較され得る。比較のために配列を整列する方法は、当該分野で周知である。比較のために配列を最適に整列することは、例えば、局所相同性アルゴリズム(SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482)、グローバルアライメントアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443)、類似性検索方法(PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444;Altschulら(1997)Nucl.Acids Res.25(17):3389〜402))、代表的にはデフォルト設定を使用するこれらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(例えば、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびBLAST)、または手作業による整列および視認(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1994)Ausubelら編参照)によって、実施され得る。例えば、BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレンクス=3を使用して実施され得、KIF14のアミノ酸配列(配列番号2)またはKIF14モータードメインのアミノ酸配列(配列番号3)に対して80%より高く同一であるアミノ酸配列が、得られ得る。
【0017】
有用なアルゴリズム実施の一例は、PILEUPである。PILEUPは、進行性対合アライメントを使用して、一群の関連配列から多重配列アライメントを作成する。PILEUPはまた、そのアライメントを作成するために使用されるクラスター化の関連性を示す樹状図をプロットし得る。PILEUPは、FengおよびDoolittle(1987)J.Mol.Evol.35:351〜60の進行性整列方法の単純化を使用する。使用される方法は、HigginsおよびSharp(1989)CABIOS 5:151〜3により記載された方法と類似する。この多重アライメント手順は、最も類似する2つの配列の対合アライメントから始まり、整列された2つの配列のクラスターを作成する。その後、このクラスターは、次に最も関連する配列とか、または整列された配列のクラスターと、整列され得る。2つの配列クラスターは、2つの個々の配列の対合アライメントの単純な伸長によって、整列され得る。各反復においてますます類似しない配列および配列クラスターを含むこのような一連の対合アライメントは、最終アライメントを作成する。
【0018】
標的タンパク質の定義はまた、KIF14をコードする配列(配列番号1)にハイブリダイズして、KIF14(配列番号1)ホモ二重鎖のTの20℃以内にあるTでヘテロ二重鎖を形成する核酸配列によってコードされるタンパク質を包含する。DNA二重鎖の融解温度は、式:
=81.5+16.6(log10[Na+]+0.41(G+C画分)−0.63(ホルムアミド%)−(600/l)
を使用して計算され、lは、塩基対で示したそのハイブリッドの長さである(Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY、第9.51頁)。この等式は、OD257における深色性の光学的測定によって定義される、「可逆的」Tに適用される。この融解温度は、配列同一性が1%減少することに対して1℃〜1.5℃減少する(Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY、第9.51頁)。
【0019】
また、本発明の標的タンパク質の定義内に包含されるのは、野生型標的タンパク質のアミノ酸配列改変体である。これらの改変体は、置換改変体、挿入改変体、または欠失改変体という3つの種類のうちの1つ以上に当てはまる。これらの改変体は、標的タンパク質をコードするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的変異誘発によって調製され得る。部位特異的変異誘発は、カセット変異誘発もしくはPCR変異誘発または当該分野で周知の他の技術を使用して実施され得、その改変体をコードするDNAが生成され得、その後、そのDNAは組換え細胞培養物中で発現され得る。約100〜150アミノ酸残基までを有する改変体標的タンパク質フラグメントが、確立された技術を使用してインビトロ合成により調製され得る。アミノ酸配列改変体は、その改変の所定の性質(その標的タンパク質アミノ酸の天然に存在する対立遺伝子改変体または種間改変から、その改変体を際立たせる特徴)によって特徴付けられる。その改変体は、代表的には、天然に存在するアナログと同じ定性的生物学的活性を示すが、改変された特性を有する改変体もまた、選択され得る。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該分野で周知である(HenikoffおよびHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915〜9)。
【0020】
アミノ酸置換は、代表的には、一残基の置換である。挿入は、通常は、ほぼ、約1アミノ酸〜約20アミノ酸であるが、かなり長い挿入が、許容され得る。欠失は、約1残基〜約20残基の範囲であるが、いくつかの場合、欠失は、もっと長いものであり得る。置換、欠失、および挿入、またはこれらの任意の組み合わせが、最終誘導体に到達するために使用され得る。
【0021】
従って、上記方法のいくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質(配列番号2)を含む。他の実施形態において、上記標的タンパク質は、KIF14モータードメイン(配列番号3)をコードするKIF14タンパク質(配列番号2)の一部、または微小管依存性ATPアーゼ活性を有するそのフラグメントを含む。例えば、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質のアミノ酸342〜アミノ酸720の間の配列(配列番号4)を含むタンパク質であり得る。あるいは、上記標的タンパク質は、KIF14タンパク質のアミノ酸342〜アミノ酸710の間の配列(配列番号5)を含むタンパク質、KIF14タンパク質のアミノ酸354〜アミノ酸720の間の配列(配列番号6)を含むタンパク質、またはKIF14タンパク質のアミノ酸354〜アミノ酸710の間の配列(配列番号7)を含むタンパク質であり得る。
【0022】
本発明の方法において使用される標的タンパク質は、代表的には、発現系を使用して発現され、そして精製される。発現系は、発現ベクターおよび宿主細胞を含む。この発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクター、または宿主ゲノム中に組み込むベクターのいずれかであり得る。一般的には、発現ベクターは、転写調節核酸および翻訳調節核酸を、上記標的タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されて含む。用語「制御配列」とは、作動可能に連結されたコード配列が特定の宿主生物において発現するために必要な、DNA配列を指す。原核生物のために適切な制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。核酸は、その核酸が別の核酸配列と機能的関係にあるように配置された場合に、「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、あるポリペプチドのDNAに対して、そのDNAがそのポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、作動可能に連結されている。プロモーターまたはエンハンサーは、あるコード配列に対して、そのプロモーターまたはエンハンサーがそのコード配列の転写に影響を与える場合に、作動可能に連結されている。あるいはリボソーム結合部位は、あるコード配列に対して、そのリボソーム結合部位が翻訳を促進するように配置された場合に、作動可能に連結されている。作動可能に連結されているDNA配列は、連続的していても、不連続であってもよい。連結は、ライゲーションによって(例えば、好都合な制限部位におけるライゲーションによって)、達成され得る。そのような部位が存在しない場合には、平滑末端ライゲーションおよび/または合成オリゴヌクレオチドアダプターもしくは合成オリゴヌクレオチドリンカーが、使用され得る。上記転写調節核酸および翻訳調節核酸は、一般的には、上記標的タンパク質を発現するために使用される宿主細胞にとって適切である。例えば、Bacillus由来の転写調節核酸配列および翻訳調節核酸配列が、好ましくは、Bacillusにおいて上記標的タンパク質を発現するために使用される。多数の型の適切な発現ベクターおよび適切な調節配列が、種々の宿主細胞について当該分野で公知である。
【0023】
一般的には、上記転写調節配列および翻訳調節配列はとしては、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終止配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が挙げられ得るが、これらに限定されない。プロモーター配列は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターをコードする。これらのプロモーターは、天然に存在するプロモーターであっても、またはハイブリッドプロモーターであってもよい。ハイブリッドプロモーターは、1つより多くのプロモーターのエレメントを合わせており、これもまた、当該分野で公知である。
【0024】
発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、その発現ベクターは、2つの複製系を有し得、それにより、その発現ベクターが2種の生物において(例えば、発現のために哺乳動物細胞または昆虫細胞中にて、そしてクローニングおよび複製のために原核生物宿主において)維持されるのを可能にし得る。さらに、発現ベクターを組み込むために、その発現ベクターは、宿主細胞ゲノム中の配列に対して相同な少なくとも1つの配列を含み、好ましくは、その発現構築物に隣接する2つの相同な配列を含む。その組み込みベクターは、そのベクター中に含めるために適切な相同な配列を選択することによって、その宿主細胞中の特定の位置に対して向けられ得る。組み込みベクターのための構築物は、当該分野で周知である。
【0025】
さらに、発現ベクターは、代表的には、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は、当該分野で周知であり、そしてそれは、使用される宿主細胞により変化する。
【0026】
本発明において使用される標的タンパク質は、標的タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、その標的タンパク質の発現を誘導するかまたは引き起こすために適切な条件下で培養することによって、生成され得る。標的タンパク質発現のために適切な条件は、その発現ベクターおよび宿主細胞の選択により変化し、そしてそれは、慣用的実験を使用して当業者によって容易に確定される。例えば、その宿主細胞の成長および増殖は、その発現ベクター中での構成的プロモーターの使用のために最適にされ得る。誘導のために適切な増殖条件が、誘導性プロモーターの使用のために提供される。さらに、いくつかの実施形態において、例えば、バキュロウイルス系を使用する場合には、採集の時期が重要である。
【0027】
適切な宿主細胞としては、酵母細胞、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、および昆虫細胞、および動物細胞(哺乳動物細胞を包含する)が挙げられる。特に興味深いのは、Drosophila melanogaster細胞、Saccharomyces cerevisiaeおよび他の酵母、E.coli、Bacillus subtilis、Sf9細胞、C129細胞、Neurospora、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、THP1細胞株(マクロファージ細胞株)、ならびにヒト細胞およびヒト細胞株である。
【0028】
従って、いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現系もまた、当該分野で公知であり、それには、レトロウイルス系が挙げられる。ウイルス遺伝子由来のプロモーターは、哺乳動物発現系において頻繁に使用される。なぜなら、このウイルスの遺伝子は、しばしば高度に発現され、そして広い宿主範囲を有するからである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが挙げられる。代表的には、哺乳動物細胞により認識される、転写終結配列およびポリアデニル化配列が、翻訳終止コドンの3’側に位置する調節領域であり、従って、プロモーターエレメントとともにコード配列に隣接する。転写ターミネーターおよびポリアデニル化シグナルの例としては、SV40に由来する、転写ターミネーターおよびポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0029】
外因性核酸を哺乳動物宿主および他の宿主に導入する方法は、当該分野において周知であり、使用される宿主細胞とともに変化する。技術としては、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、ポリヌクレオチドのリポソームへの封入およびDNAの核への直接のマイクロインジェクションが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質は、細菌系において発現される。細菌発現系は、当該分野において周知である。バクテリオファージからのプロモーターがまた使用され得、そして当該分野において公知である。さらに、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターがまた有用である;例えば、tacプロモーターは、trpプロモーター配列とlacプロモーター配列とのハイブリッドである。さらに、細菌プロモーターとしては、細菌性RNAポリメラーゼに結合し、そして転写を開始する能力を有する非細菌性起源の天然に存在するプロモーターが挙げられ得る。機能的プロモーター配列に加えて、有効なリボソーム結合部位が所望される。発現ベクターはまた、細菌中で上記標的タンパク質の分泌を提供する、シグナルペプチド配列を含み得る。上記標的タンパク質は、増殖培地中に分泌されるか(グラム陽性細菌)、または上記細胞の内膜と外膜との間に位置するペリプラズム空間に分泌されるか(グラム陰性細菌)のいずれかである。上記発現ベクターはまた、上記標的タンパク質のアフィニティー精製を提供するエピトープ標識を含み得る。上記細菌発現ベクターはまた、選択マーカー遺伝子を含み、形質転換された細菌株の選択を可能にし得る。適切な選択遺伝子としては、上記細菌を、薬物(例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリン)に対して耐性にする遺伝子が挙げられる。選択マーカーとしてはまた、生合成遺伝子(例えば、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシンの生合成経路における生合成遺伝子)が挙げられる。これらの構成要素は、発現ベクター中に集められる。細菌のための発現ベクターは、当該分野において周知であり、そしてこれらの発現ベクターとしては、とりわけ、Bacillus subtilis、E.coli、Streptococcus cremorisおよびStreptococcus lividansに対するベクターが挙げられる。上記細菌発現ベクターは、当該分野における周知技術(例えば、塩化カルシウム処理、エレクトロポレーションなど)を用いて細菌宿主細胞に形質転換される。細菌発現系を用いたKIF14運動性ドメインタンパク質の発現のための例示的方法は、実施例7に記載される。
【0031】
標的タンパク質はまた、昆虫細胞中で生成され得る。昆虫細胞の形質転換のための発現ベクター(特に、バキュロウイルスベースの発現ベクター)は、当該分野において周知である。さらに、標的タンパク質は、酵母細胞中で生成され得る。酵母発現系は、当該分野において周知であり、そしてこれらとしては、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicansおよびC.maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilisおよびK.lactis、Pichia guillerimondiiおよびP.pastoris、Schizosaccharomyces pombeならびにYarrowia lipolyticaのための発現ベクターが挙げられる。
【0032】
上記標的タンパク質はまた、当該分野における周知技術を用いて、融合タンパク質として作製され得る。例えば、上記標的タンパク質は、融合タンパク質として作製されて、発現を上昇し得るかまたは標的タンパク質と、抗標識抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供する標識ポリペプチドとを結合し得る。例示的標識としては、mycエピトープおよび6−ヒスチジンが挙げられる。上記エピトープ標識は、一般的に、上記標的タンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。標的タンパク質のこのようなエピトープ標識形態の存在は、上記標識ポリペプチドに対する抗体を用いて検出され得る。従って、上記エピトープ標識は、上記標的タンパク質が、抗標識抗体または上記エピトープ標識に結合する別の型のアフィニティーマトリックスを用いるアフィニティー精製によって容易に精製されることを可能にする。種々の標識ポリペプチドおよびそれらの対応する抗体は、当該分野において周知である。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ−his)標識またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)標識;flu HA標識ポリペプチドおよびその抗体12CA5(Fieldら(1988)Mol.Cell.Biol.8:2159−65);c−myc標識およびその8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体および9E10抗体(Evanら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3610−6)ならびに単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)標識およびその抗体(Paborskyら(1990)Prot.Eng.3(6):547−53)が挙げられる。他の標識ポリペプチドとしては、Flagペプチド(Hoppら(1988)BioTechnol.6:1204−10);KT3エピトープペプチド(Martinら(1992)Science 255:192−4);チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら(1991)J.BIol.Chem.266:15163−6);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz−Freyermuthら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6393−7)が挙げられる。
【0033】
本発明の方法において使用される標的タンパク質は、標識され得る。本明細書中で使用される場合、用語「標識された」とは、上記標的タンパク質の検出を可能にするための少なくとも1つの元素、同位体または化学化合物の結合をいう。標識は、分光学的手段、光化学的手段、生物化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学手段によって検出され得る任意の組成物である。従って、標識は、同位体標識(放射性同位体であっても重同位体であってもよい)、免疫標識(抗体であっても抗原であってもよい)および色素または蛍光色素であり得る。上記標識は、任意の位置で、上記標的タンパク質に組み込まれ得る。例えば、上記標識は、直接的にかまたは間接的にかのいずれかで、検出可能シグナルを生成可能であるべきである。上記検出可能部分は、放射性同位体、蛍光化合物もしくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン)または酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)であり得る。上記標識を上記標的タンパク質に結合するための当該分野において公知の任意の方法が、用いられ得る。
【0034】
標的タンパク質の共有結合改変は、本発明の範囲内に含まれる。共有結合改変の1つの型としては、標的タンパク質の標的アミノ酸残基と、標的タンパク質の選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基との反応を可能にする有機誘導体化試薬との反応が挙げられる。二官能性試薬を用いた誘導体化は、例えば、標的タンパク質を、非水溶性の支持体マトリックスまたはスクリーニングアッセイにおける用途のための表面に架橋するために、有用である。一般的に使用される架橋剤としては、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、同種二官能性イミドエステル(ジスクシンイミジルエステル(例えば、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))、二官能性マレイミド(例えば、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタン)およびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような試薬を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
上記標的タンパク質は、発現後に精製または単離され得る。用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋」とは、実質的または本質的に、天然の状態に見られるような通常はそれに付随する成分を、含まない物質をいう。純度および均一性は、代表的に、分析化学技術(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィー)を用いて決定される。調製物中に存在する主要な種類であるタンパク質は、実質的に純粋である。用語「精製された」とは、タンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを示す。例えば、用語「精製された」は、上記タンパク質が、少なくとも85%純粋(例えば、少なくとも95%純粋、例えば、少なくとも99%純粋)であることを意味する。
【0036】
標的タンパク質は、他のどの成分がそのサンプル中に存在するかに依存して、当業者に公知の種々の方法で、単離または精製され得る。標準的な精製方法としては、電気泳動技術、分子技術、免疫学的技術およびクロマトグラフィー技術(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび逆相HPLCクロマトグラフィーおよびクロマトフォーカシング(chromatofocusing)を含む)が挙げられる。例えば、上記標的タンパク質は、標準的な抗KIF14抗体カラム(例えば、KIF14抗体 ab3746,Abcamを参照のこと)を用いて精製され得る。タンパク質濃縮と組み合わせた限外濾過技術および透析技術はまた、有用である。適切な精製技術は、当該分野において標準的なものである(例えば、Scopes(1982)Protein Purification,Springer−Verlag,NYを参照のこと)。精製の必要性の程度は、上記標的タンパク質の用途に依存して変化する。いくつかの場合、精製は必要とされなくてもよい。本発明の方法における使用のために標的タンパク質を精製するための例示的なプロトコールは、実施例7および8に提供される。
【0037】
本発明のこの局面の方法の第1の工程において、上記標的タンパク質は、候補因子と接触される。候補因子は、多くの化学的なクラスを含み得る。代表的に、候補因子は、有機分子(好ましくは、100ダルトン超かつ約2500ダルトン未満の分子量を有する低分子有機化合物)である。低分子は、本明細書中で、150ダルトンと2000ダルトンとの間の分子量(例えば、1500ダルトン未満または1200ダルトン未満または1000ダルトン未満または750ダルトン未満または500ダルトン未満)を有するとしてさらに規定される。従って、低分子は、約100ダルトン〜200ダルトンの分子量を有し得る。候補因子は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)のために必要な官能基を含み、そして代表的には、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基、好ましくは、上記官能化学基のうちの少なくとも2つを含む。上記候補因子は、しばしば、上記官能基のうちの1つ以上で置換された環状炭素または複素環構造および/または芳香環構造もしくはポリ芳香環構造を含む。候補因子はまた、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログまたはそれらの組み合わせを含む生体分子中に見られる。
【0038】
候補因子は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む広範な種々の供給源からもたらされ得る。例えば、多くの手段が、広範な種々の有機化合物および生体分子のランダムな合成または直接的な合成のために利用可能であり、これらの手段としては、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現が挙げられる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーが、利用可能であるかまたは容易に生成される。さらに、天然にまたは合成的に生成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理的手段および生物化学的手段を介して容易に改変される。公知の薬理学的な因子は、直接的な化学的改変またはランダムな化学的改変(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化およびアミド化)に供されて、構造アナログを生成し得る。
【0039】
上記方法の第2の工程は、上記候補因子が、上記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定する工程を包含する。本明細書中で使用される場合、用語「標的タンパク質の活性を調節する」とは、上記標的タンパク質の活性のあらゆる変化(例えば、上記活性の減少または上昇)をいう。代表的に、サンプルまたはアッセイは、試験濃度およびコントロール濃度で、候補因子を用いて処理される。上記コントロール濃度は、ゼロであり得る。上記2つの濃度の間で標的タンパク質活性に変化がある場合、この変化は、上記候補因子が、上記標的タンパク質の活性を調節することを示す。従って、いくつかの実施形態は、(a)上記標的タンパク質が、第1の濃度で上記候補因子と接触され、そして上記標的タンパク質の活性の第1のレベルが測定され;そして(b)上記標的タンパク質が、第2の濃度で上記候補因子と接触され、そして上記標的タンパク質の活性の第2のレベルが測定される、方法を提供し、ここで、上記標的タンパク質の上記活性の第1のレベルと上記活性の第2のレベルとの間の差は、上記候補因子が、上記標的タンパク質の活性を調節することを示す。活性の差は、上昇しても減少してもよく、コントロールと比較して、少なくとも20%〜50%(例えば、少なくとも50%〜75%、例えば、少なくとも75%〜100%、例えば、少なくとも150%〜200%、例えば、少なくとも200%〜1000%)の変化であり得る。さらに、活性の差は、結合特異性および基質の変化によって示され得る。
【0040】
上記標的タンパク質の活性は、インビトロアッセイおよび精製タンパク質または部分的に精製されたタンパク質を用いて測定され得る。上記標的タンパク質の活性はまた、細胞内で上記標的タンパク質を発現することによるインビトロアッセイを用いて測定され得る。使用されるアッセイは、少なくとも2つのデータ点を有する複数時間点(multi−time−point)(速度論的)アッセイであり得る。複数測定の場合、上記タンパク質活性の絶対的速度が決定され得る。当業者に理解されるように、上記アッセイにおける成分は、標的タンパク質活性をアッセイし、そして最適シグナルを与えるための緩衝液中および試薬中に添加され得る。さらに、速度論的測定を可能にするために、インキュベーション時間は、代表的に、最適化されて、バックグラウンドを上回る充分な検出シグナルを与える。
【0041】
上記標的タンパク質の活性を測定するためのアッセイとしては、ATPアーゼ活性、微小管滑動(microtubule−gliding)、微小管重合/脱重合活性(微小管動力学に対する効果)および結合活性(例えば、微小管結合、紡垂体のタンパク質への結合、細胞周期制御に関与するタンパク質への結合またはヌクレオチドアナログの結合)の測定が挙げられる(例えば、Kodamaら(1986)J.Biochem.99:1465−72;Stewartら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5209−13;Lombilloら(1995)J.Cell Biol.128:107−15;Valeら(1985)Cell 42:39−50を参照のこと)。使用される標的タンパク質が、別の特定の活性(例えば、有糸分裂または軸索輸送への関与)を有する場合、それらの特定の活性のためのアッセイが使用され得る。例示的なアッセイは、以下に記載される。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記標的タンパク質の活性を測定するために使用されるアッセイとしては、実施例7〜9に記載されるようなATPアーゼ活性の測定が挙げられる。従って、ADPまたはホスフェートが、標的タンパク質活性のための読み出しとして使用される。これらの実施形態において、上記標的タンパク質は、上記標的タンパク質によるADPまたはホスフェートの生成を可能にする条件下で、上記候補因子と接触され、そして、上記標的タンパク質による上記候補因子のADPまたはホスフェートの生成に対する効果が測定される。上記標的タンパク質によるADPまたはホスフェートの生成を可能にする条件は、上記標的タンパク質の活性を調節する候補因子の非存在下で、ADPまたはホスフェートを生成する反応が通常生じる条件である。
【0043】
ADPまたはホスフェートの上記生成は、酵素学的に測定され得る。ADPを基質として使用する、当該分野において公知の多くの酵素反応が存在する。例えば、キナーゼ反応(例えば、ピルビン酸キナーゼ反応)は、周知であり、そしてATPの再生成を可能にする(例えば、Greengard(1956)Nature 178:632−4を参照のこと)。上記酵素反応の活性レベルは、直接的に決定され得る。例えば、ピルビン酸キナーゼ反応において、ピルベートまたはATPは、当該分野において公知の従来方法により測定され得る。ADPを基質として使用する酵素反応の活性レベルはまた、別の反応(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ反応)と連結することにより、間接的に測定され得る。連結による酵素反応の測定は、当該分野において公知である(例えば、Greengard(1956)Nature 178:632−4を参照のこと)。
【0044】
さらに、ホスフェートを利用する多くの反応(例えば、プリンヌクレオシドリン酸化反応)が存在する。この反応は、当該分野において公知の従来方法によって直接的に測定され得る。上記反応はまた、上記反応と別の反応(例えば、通常、プリンアナログの切断を可能にする条件下での、プリンアナログ切断反応)とを連結することによって、間接的に測定され得る(例えば、Webb(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4884−7;Riegerら(1997)Anal.Biochem.246:86−95;Banikら(1990)Biochem.J.266:611−4を参照のこと)。あるいは、キサンチンオキシダーゼは、プリンヌクレオシドホスホリラーゼと連結して使用されて、ホスフェート生成と、キサンチンオキシダーゼに対する基質の吸光度の変化とを連結し得る(Ungererら(1993)Clin.Chim.Acta.223:149−57)。
【0045】
ADPまたはホスフェートの上記生成は、例えば、上記ADPまたはホスフェートと検出可能化合物との結合または反応によって、非酵素的に検出され得る。例えば、遊離のホスフェートのホスホモリブデート錯体への変換を含むホスホモリブデートベースのアッセイが、使用され得る(Fiskeら(1925)J.Biol.Chem.66:375−400)。上記ホスホモリブデートを定量する1つの方法は、マラカイトグリーン(malachite green)を用いる。あるいは、ホスフェート結合タンパク質(例えば、E.coliホスフェート結合タンパク質)の蛍光標識形態が使用されて、その蛍光のシフトによってホスフェートを測定し得る。
【0046】
好ましい実施形態において、上記アッセイの検出は、検出可能標識(例えば、同位体標識(放射性同位体または重同位体)、磁気、電気、熱、色素または蛍光色素、酵素、粒子(例えば、磁気粒子))を使用して実施される。上記色素は、発色団、リン光体または蛍光色素であり得る。代表的に、蛍光シグナルは、検出のための良好なシグナル対ノイズ比を提供する。本発明における使用のために適切な色素としては、蛍光ランタニド錯体(ユーロピウムおよびテルビウムの蛍光ランタニド錯体を含む)、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、カスケードブルー(Cascade Blue)、テキサスレッド(Texas Red)およびそれらの誘導体ならびにその他が挙げられるが、これらに限定されない(また、Richard P.Haughland、Molecular Probes Handbook、第6版を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ホスフェート生成は、色素キナルジンレッドを用いて測定され、この色素キナルジンレッドは、実施例7〜9に記載されるように、無機ホスフェートに結合すると、540nmの波長で光を吸収する。
【0047】
本発明は、標的タンパク質活性の調節因子として働く能力に対して、候補因子をスクリーニングする方法を提供する。例えば、高スループットスクリーニング(HTS)システムが使用され得る。HTSシステムは、ロボットシステムの使用を含み得、そして多くのサンプルが短時間で処理され得るという利益を提供し得る。HTSシステムは、市販されている(例えば、Zymark Corp.、Hopkinton、Mass.;Air Technical Industries、Mentor、Ohio;Beckman Instruments,Inc.、Fullerton、Calif.;Precision Systems,Inc.、Natick、Mass.を参照のこと)。HTSシステムは、代表的に、手順全体(全てのサンプルおよび試薬のピペッティング、液体の分配、決められた時間のインキュベーションおよび上記アッセイのために適切な検出器におけるマイクロプレートの最終的な読み取りを含む)を自動化する。これらの設置可能なシステムは、変更され得、そして高スループット、迅速な始動および高度な柔軟性を提供し得る。
【0048】
複数のアッセイ混合物が、種々の候補因子濃度で並行して実行されて、その種々の濃度に対する示差的反応をもたらし得る。代表的に、これらの濃度のうちの1つは、ネガティブコントロール(すなわち、ゼロまたは検出レベルより下の候補因子濃度)として働く。しかし、あらゆる濃度が、比較の目的のためのコントロールとして使用され得る。
【0049】
HTS方法は、一般的に、多くの数の候補因子を含むライブラリーを提供する工程を包含する。例えば、コンビナトリアルケミカルライブラリーは、1つ以上のアッセイにおいてスクリーニングされて、本明細書中で記載されるように、所望される特徴的な活性を示すそれらのライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定し得る。従って、同定された化合物は、従来のリード化合物として働いても、それ自体が、潜在的な治療化合物または実際の治療化合物として使用されてもよい。
【0050】
例えば、候補因子は、マルチウェルプレートを用いること、そして上記候補因子を、各々別個にウェルに配置するかまたは混合物中で試験することによって、高度に並行した様式でアッセイされ得る。次いで、アッセイ化合物(例えば、標的タンパク質、タンパク質フィラメント、結合酵素および基質のような)およびATPが、上記ウェルに添加され得、そして上記プレートの各ウェルの吸光度または蛍光が、プレートリーダーによって測定され得る。上記標的タンパク質の機能を調節する候補因子は、その候補因子の非存在下でのコントロールアッセイと比較した、ATP加水分解速度の上昇または減少によって同定される。
【0051】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、標的タンパク質活性は、上記に記載されるようなATP加水分解アッセイによって同定される。しかし、標的タンパク質活性は多くのアッセイによって同定され得ることが、理解される。このようなアッセイとしては、微小管滑動、脱重合/重合ならびに結合およびATPアーゼ活性の両方を必要とする任意の活性が挙げられる。一般的に、運動性アッセイは、上記系のうちの1つの成分(例えば、上記標的タンパク質または上記微小管)を固定化する工程、そして次いで、他の成分の移動またはその変化を検出する工程を包含する。従って、例えば、上記標的タンパク質は、固定化(例えば、固体基板への結合)され得、そして微小管の移動が、モニタリングされ得る。代表的に、検出されるべき分子は、(例えば、蛍光標識を用いて)標識されて、検出を容易にする。運動性アッセイを実施する方法は、当業者に周知である(例えば、Hallら(1996)Biophys.J.71:3467−76、Turnerら(1996)Anal.Biochem.242(1):20−5;Gittesら(1996)Biophys.J.70(1):418−29;Shirakawaら(1995)J.Exp.Biol.198:1809−15;Winkelmannら(1995)Biophys.J.68:2444−53;Winkelmannら(1995)Biophys.J.68:72Sを参照のこと)。
【0052】
さらに、使用されるタンパク質が、別の特定の活性(例えば、有糸分裂または軸索輸送への関与)を有する場合、それらの活性に対する特定のアッセイが利用され得る。例えば、標的タンパク質活性は、培養細胞を用いてインビトロでの標的タンパク質活性の調節を決定することによって調べられ得る。上記細胞は、上記標的タンパク質を内因的に発現し得るか、または上記細胞は、例えば、上記のように、上記標的タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターを導入することによって、遺伝子操作されて標的タンパク質を発現し得る。上記細胞は、候補因子を用いて処理され、そして次いで、上記細胞に対する上記候補因子の効果が、直接的にかまたは関連する代替的マーカーを調べることによってかのいずれかで決定される。
【0053】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質を含む細胞は、細胞増殖に対する候補因子の効果を評価することによる、候補因子スクリーニングアッセイにおいて使用される。有用な細胞型としては、正常細胞および異常な増殖率を有する細胞(例えば、腫瘍細胞)が挙げられる。細胞増殖を評価する方法は、当該分野において公知であり、そしてこれらの方法としては、培養細胞を用いる増殖アッセイおよび生存度アッセイが挙げられる。このようなアッセイにおいて、細胞集団は、しばしば、時間をかけて、そして種々の濃度の上記候補因子と一緒にかまたは上記候補因子なしでインキュベートされたサンプルと比較して、増殖および/または生存度についてモニタリングされる。細胞数は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(diphenyltetrazolim)ブロミド(MTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)およびalamarBlueTMのような試薬を用いて定量され得、これらの試薬は、代謝的に活性な細胞の存在下で、色素化合物または蛍光化合物に変換される。あるいは、細胞タンパク質に結合する色素(例えば、スルホローダミンB(SRB)またはクリスタルバイオレット(crystal violet))が使用されて、細胞数を定量し得る。細胞はまた、粒子計測器(例えば、Beckman Coulterにより製造されるCoulter Counter)を用いて直接計数され得るか、または顕微鏡を用いて、ヘモサイトメーター上で細胞を観察することによって計数され得る。代表的に、上記ヘモサイトメーターを用いて計数された細胞は、トリパンブルーの溶液中で観察されて、生細胞を死細胞から区別する。細胞数を定量する他の方法は、当業者に公知である。これらのアッセイは、壊死状態にある細胞を含む、上記細胞のいずれに対しても実施され得る。
【0054】
さらに、アポトーシスが、当該分野において公知の方法によって決定され得る。例えば、アポトーシスに対するマーカーは、公知であり、そしてTUNEL(TdT媒介性dUTP−フルオレセインニック末端標識)キットは、市販され得る(例えば、Boehringer Mannheim、カタログ番号168795)。アポトーシスに対する他のマーカーとしては、実施例4に記載されるようなカスパーゼ活性が挙げられる。
【0055】
上記細胞増殖アッセイは、生理学的シグナル(例えば、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、増殖因子、活動電位、薬理学的な因子(化学療法剤、放射線、発癌性物質または他の細胞(すなわち、細胞−細胞接触)を含む))の存在下もしくは非存在下、またはそれらに曝す前または曝した後に評価される。さらに、上記細胞増殖アッセイは、細胞周期プロセスの種々の段階で評価されて、特徴(例えば、有糸分裂紡錘体形態および細胞周期分布)を評価し得る(例えば、Mayerら(1999)Science 286:971−4を参照のこと)。
【0056】
KIF14発現細胞の増殖および生存度に対する候補因子の効果を評価するための例示的な方法は、実施例4および9に記載される。高い増殖率を有する細胞(例えば、癌細胞)は、一般的に、実施例1に記載されるように高いレベルのKIF14を発現する。逆に、RNA干渉を用いたKIF14発現の低下は、実施例4に記載されるように、増殖阻害および細胞死をもたらす。従って、KIF14活性を調節する候補因子は、実施例9に記載されるように、KIF14発現細胞の細胞増殖または生存度の変化をもたらし得る。
【0057】
特徴(例えば、KIF14発現細胞の有糸分裂紡錘体形態および細胞周期分布)に対する候補因子の効果を評価するための例示的な方法は、実施例5および6に記載される。RNA干渉を用いたKIF14発現の低下は、実施例5および6に記載されるように、異常なサイトカインおよび二核性細胞の形成をもたらす。従って、KIF14活性を調節する候補因子は、KIF14を発現しない細胞においては効果を有さないかまたは最小の効果を有しながら、KIF14発現細胞においては、サイトカイン変化をもたらし得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質の活性を調節する候補因子は、競合的結合アッセイを用いて同定され得る。これらのアッセイにおいて、競合因子は、上記標的タンパク質に結合することが公知である結合部分(例えば、抗体、ペプチド、結合パートナーまたはリガンド)である。
【0059】
競合的スクリーニングアッセイは、第1のサンプル中で、上記標的タンパク質と、候補因子とを合わせることによって実施され得る。第2のサンプルは、その候補因子、上記標的タンパク質およびその標的タンパク質に結合することが公知である化合物を含有する。これらのアッセイは、微小管の存在下または非存在下のいずれかで実施され得る。上記候補因子の結合は、両方のサンプルに対して決定され、そして上記2つのサンプル間の結合の変化または差は、上記標的タンパク質に結合可能であり、そして潜在的にその活性を調節可能な因子の存在を示す。すなわち、上記候補因子の結合が、上記第1のサンプルに対して上記第2のサンプルにおいて異なる場合、その候補因子は、上記標的タンパク質に結合可能である。
上記候補因子は、標識され得る。上記候補因子もしくは上記競合因子のいずれか、またはその両方は、第1に、結合させるために充分な時間、上記標的タンパク質に添加される。インキュベーションは、最適な活性を容易にする任意の温度(代表的には、4℃と40℃との間)で実施され得る。インキュベーション時間はまた、最適化されて、迅速な高スループットスクリーニングを容易にし得る。代表的に、0.1時間と1時間との間が、充分である。過剰な試薬は、一般的に、除去されるかまたは洗浄されて除かれる。次いで、上記第2の成分が添加され、そして結合を示すために、上記標識成分の存在または非存在が追跡される。
【0060】
競合剤が、最初に添加され得、続いて、候補因子が添加され得る。この競合剤の置換は、候補因子が標的タンパク質に結合し、従って、候補因子がこの標的タンパク質に結合し得、そして潜在的にこの標的タンパク質の活性を調節し得るという指標である。この実施形態では、いずれかの成分が標識され得る。従って、例えば、この競合剤が標識される場合、洗浄溶液における標識の存在は、この薬剤による置換を示す。あるいは、この候補因子が標識化される場合、支持体上の標識の存在は、置換を示す。
【0061】
あるいは、この候補因子は、最初に添加され得、続いて競合剤が添加され得る。競合剤による結合が存在しないことは、この候補因子がより高い親和性で標的タンパク質に結合されていることを示し得る。従って、この候補因子が標識される場合、競合剤の結合の欠如を伴った、支持体上の標識の存在は、この候補因子が標的タンパク質に結合し得ることを示し得る。
【0062】
第2の局面では、本発明は、細胞増殖を調節するための方法を提供する。この方法は、標的タンパク質の活性の有効量の調節因子を細胞に投与する工程を包含し、ここで、上記標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3に提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む。本発明のこの局面の方法において使用される標的タンパク質は、本発明の第1の局面の方法について上で記載された通りである。この標的タンパク質の活性の調節因子は、上で規定されるように、その投与によりこの標的タンパク質の活性に変化が生じる薬剤である。例えば、標的タンパク質の活性の調節因子は、この標的タンパク質の活性を阻害または刺激し得る。本発明のこの局面において使用され得る調節因子は、本発明の第一の局面について上で記載されたように、候補因子をスクリーニングすることにより同定され得る。
【0063】
代表的には、この標的タンパク質の活性を阻害する調節因子の投与は、実施例4または実施例9において記載されているように、細胞の増殖を阻害する効果または細胞死を引き起こす効果を有する。このような阻害性調節因子の投与は、例えば、細胞の過剰増殖(例えば、癌、再狭窄、自己免疫疾患、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、または医療行為の後に誘導される増殖)が存在する状態を処置するために有用である。
【0064】
逆に、標的タンパク質の活性を増加する調節因子は、実施例1に記載されているように、細胞分裂を刺激する効果を有する。このような刺激性調節因子の投与は、例えば、細胞の過剰増殖が存在する状態または細胞増殖の増強が望まれる状態(例えば、損傷治癒の間または幹細胞の拡大の間)を処置するために有用である。
【0065】
いくつかの実施形態は、この標的タンパク質の活性のインヒビターを投与することにより細胞増殖を調節する方法を提供する。このインヒビターは、RNAインヒビターであり得る。用語「RNAインヒビター」とは、標的タンパク質の発現をRNA干渉によりサイレンシングする阻害性RNAをいう(McManusおよびSharp(2002)Nat.Rev.Genet.3:737〜47;Hannon(2002)Nature 418:244〜51;PaddisonおよびHannon(2002)Cancer Cell 2:17〜23)。RNA干渉は、進化を通じて(C.elegansからヒトまで)ずっと保存されており、RNAウイルスの浸潤から細胞を保護する際に機能すると考えられる。細胞がdsRNAウイルスにより感染された場合、このdsRNAは、ダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII型酵素により、切断のために認識され、そして標的化される。このダイサー酵素は、このRNAを21ヌクレオチドの短い二重鎖(短い干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる)へと「ダイス」し、この21ヌクレオチドの短い二重鎖は、各鎖の3’末端において完全に対にされたリボヌクレオチドと対になっていない2個のヌクレオチドとの19ヌクレオチドからなる。これらの短い二重鎖は、RISCと呼ばれるマルチタンパク質複合体と結合し、そしてこの複合体を上記siRNAに対して配列類似性を有するmRNA転写産物へと方向付ける。結果として、RISC複合体に存在するヌクレア−ゼは、mRNA転写産物を切断し、これにより遺伝子産物の発現を廃止する。ウイルス感染の場合、この機構は、ウイルス転写産物の破壊をもたらし、このようにしてウイルス合成を妨害する。siRNAは、二重鎖であるので、いずれかの鎖がRISCと結合する潜在能力を有しており、そして配列類似性を有する転写産物のサイレンシングを指向する。
【0066】
最近、遺伝子のサイレンシングが、細胞にsiRNA(ダイサー(Dicer)切断の産物を模倣している)を与えることにより、誘導され得るという結論が出された(Elbashirら(2001)Nature 411:494〜8;Elbashirら(2001)Genes Dev.15:188〜200)。合成siRNA二重鎖は、RISCと結合する能力を維持し、そしてmRNA転写産物のサイレンシングを指向し、これにより、哺乳類細胞における遺伝子サイレンシングのための強力なツールを研究者に提供する。遺伝子サイレンシングのためのdsRNAを導入するさらに別の方法は、shRNA(短いヘアピン状RNA)である(Paddisonら(2002)Genes Dev.16:948〜58;Brummelkampら(2002)Science 296:550〜3;Suiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:5515〜20)。この場合、所望のsiRNA配列が、介在ループ配列を有する逆方向反復配列としてプラスミド(またはウイルス)より発現され、ヘアピン構造を形成する。結果として生じた、このヘアピンを含むRNA転写産物が、後にダイサー(Dicer)によりプロセシングされ、サイレンシングのためのsiRNAを産生する。プラスミドベースのshRNAは、細胞中で安定に発現され得、細胞内(または、動物内においてさえ)長期間の遺伝子サイレンシングを可能にする(McCaffreyら(2002)Nature 418:38〜9;Xia(2002)Nat.Biotech.20:1006〜10;Lewisら(2002)Nat.Genetics 32:107〜8;Rubinsonら(2003)Nat.Genetics 33:401〜6;Tiscorniaら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:1844〜8)。RNA干渉は、マウスを劇症肝炎から保護するために、治療上首尾よく使用されている(Songら(2003)Nat.Medicine 9:347〜51)。
【0067】
従って、本発明のいくつかの実施形態において、細胞増殖は、実施例4〜実施例6において記載されているように、KIF14 siRNAを投与することにより阻害される。このKIF14 siRNAは、配列番号8、配列番号9、または配列番号23に提供される配列を含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、細胞増殖は、標的タンパク質による微小管依存性ATP加水分解のインヒビターを投与することにより阻害される。例示的なインヒビターとしては、低分子有機化合物(例えば、セミカルバゾンおよびチオセミカルバゾン)が挙げられる。例えば、このインヒビターは、実施例9に記載されているように、アリールチオセミカルバゾンであり得る。例示的なアリールチオセミカルバゾンインヒビターとしては、1,1’−ビフェニル−4−カルバルデヒドチオセミカルバゾン(化合物1)、4−イソプロピルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物2;例えば、米国特許第3,849,575号を参照のこと)、4−シクロへキシルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物3)および4−イソプロピル−3−ニトロベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物4;例えば、Saripinarら(1996)Arzneimittel−Forschung 46(II):824〜8を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
調節因子は、例えば、調節因子を組織培養物中の細胞に投与することによりインビトロで細胞に投与され得る。調節因子は、当該分野の従来のプロトコール(トランスフェクション、リポフェクション、マイクロインジェクション、および上に記載の他のプロトコールが挙げられる)を用いてインビトロで細胞へ投与され得る。この調節因子はまた、この調節因子を被験体に投与することにより、インビボで細胞へと投与され得る。用語「被験体」とは、生きている生物(例えば、植物または動物)をいう。例示的な被験体は、哺乳類(例えば、ヒト)である。例えば、この被験体は、ヒトの癌患者であり得る。調節因子の被験体への投与は、任意の有効な経路(例えば、局所経路、全身性経路、非経口経路または経口経路)により達成される。例えば、阻害性調節因子は、腫瘍中に直接的に注入され得るか、または血液を腫瘍に供給する血管へと注入され得る。非経口送達の方法としては、局所的投与、動脈内投与、皮下投与、骨髄内投与、静脈投与、または鼻内投与が挙げられる。
【0070】
本発明のこの局面の方法で実際に投与される調節因子の量は、有効量である。用語「有効量」とは、実質的な効果を生み出すのに必要とされる量をいう。本発明のこの局面の方法で投与される調節因子の有効量は、一般的に、最大寛容投薬量までの範囲であるが、大幅に変動し得る。使用される正確な量は、化合物、投与経路、被験体の身体状態、および他の要因に依存して変動する。この日投薬量は、単回投薬量として投与され得るか、または、投与のための複数回用量へと分割され得る。
【0071】
この調節因子の有効量は、インビトロの系または動物モデル試験系に由来する用量−応答曲線から外挿され得る。この動物モデルはまた、代表的には、望ましい濃度範囲および投与経路を決定するのに使用される。次いで、このような情報は、ヒトまたは他の哺乳類における有用な用量および投与経路を決定するのに使用され得る。有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。従って、実際に投与される量は、処置が適用される個体に依存し、そして好ましくは、所望の効果が著しい副作用なしに達成されるように最適化された量である。
【0072】
この調節因子の治療上の効力および発生し得る毒性(例えば、ED50(母集団の50%において治療上有効な用量);LD50(母集団の50%に致死的な用量))は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定され得る。治療上の効果と毒性の効果との間の用量比率は、治療上の指数であり、そしてそれは、比率ED50/LD50として表現され得る。大きな治療上の指数を示す調節性化合物は、本発明の方法の実施において特に適切である。細胞培養アッセイおよび動物研究より得られるデータは、ヒトまたは他の哺乳類における使用のための投薬量の範囲を定式化する際に使用され得る。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性をほとんど有さないかまたは全く有さないED50を含む循環濃度の範囲内である。この投薬量は、代表的には、使用される投薬形態、患者の感受性、および投与経路に依存するこの範囲内で変動する。従って、最適量が、投与方法と共に変動し、そして一般的に、同一または類似の形態で投与される従来の医薬の量と一致する。
【0073】
この調節因子は、組成物中に処方され得、この組成物は、薬学的に受容可能な適切なキャリアをさらに含有し、このキャリアとしては、賦形剤およびこの調節因子の哺乳類被験体への投与を促進する他の化合物が挙げられる。処方および投与に関する技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co,Easton PA)の最新版において見出され得る。
【0074】
経口投与のための組成物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを用いて、経口投与に適した投与量で処方され得る。このようなキャリアのおかげで、インヒビターを含有する組成物が、被験体による接種に対して適切な、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして処方されることが可能になる。経口使用のための組成物が、例えば、固体の賦形剤と組み合わせて処方され、必要な場合には適切な付加化合物を添加した後、生じた混合物を必要に応じて削合し、そして顆粒剤の混合物を処理し、錠剤または糖剤のコアを得得る。適切な賦形剤としては、炭水化物の充填材またはタンパク質の充填材が挙げられる。これらとしては、糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ由来のデンプン、コムギ由来のデンプン、コメ由来のデンプン、ジャガイモ由来のデンプン、もしくは他の植物由来のデンプンが挙げられる);セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム);およびゴム(アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合、崩壊剤または溶解補助剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはこれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)が添加され得る。
【0075】
適切なコーティング(例えば、濃縮された糖類の溶液)を有する糖剤のコアが提供され、このコーティングはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、および/もしくは二酸化チタン、ラッカー(lacquer)溶液、および適切な有機溶媒、または溶媒混合物が挙げられ得る。染料または色素は、製品の同定のためにまたは活性化合物の量(すなわち、投薬量)を特徴付けるために錠剤もしくは糖剤のコーティングに添加され得る。
【0076】
経口投与のための調節因子は、例えば、ゼラチン製の押しはめる(push−fit)カプセルとして、および軟質ゼラチンおよびコーティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)の密閉カプセルとして処方され得る。押しばめカプセルは、充填材または結合剤(例えば、ラクトースもしくはデンプン)、潤滑剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)および必要に応じて安定剤、と混合された調節因子を含有し得る。軟性カプセルでは、調節因子は、安定な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、もしくは液体ポリエチレングリコール)中に、安定剤ありまたはなしで溶解または懸濁され得る。
【0077】
非経口投与のための組成物としては、一種以上の調節因子の水溶液を含有する。注射のために、この調節因子は、水溶液中(例えば、生理学的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理学的に緩衝化された生理食塩水の中)に処方され得る。水溶性の注射懸濁物は、懸濁物の粘度を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン)を含有し得る。さらに、この調節因子の懸濁物は、適切な油性注射懸濁物として調製され得る。適切な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド)あるいはリポソームが挙げられる。必要に応じて、この懸濁物はまた、この調節因子の溶解度を増加させて非常に濃縮された溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含有し得る。
【0078】
局所投与または鼻内投与に関して、特定の障壁に対して適切な浸透すべき浸透剤は、この処方において代表的に使用される。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチル−ホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールもしくはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾン(azone)である。さらなる薬剤としては、この処方物を化粧品として受容可能にするために、さらに含まれ得る。これらの例は、脂肪、蝋、油、染料、芳香剤、保存剤、安定剤、および界面活性剤である。角質溶解性の薬剤(例えば、当該分野において公知のもの)がまた含まれ得る。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0079】
これらの種々の型の添加物の各々の量は、当業者において容易に明らかであり、最適量は、同一の投与の型のために設計された他の公知の処方物における量と同一である。例えば、角質層浸透促進剤(stratum corneum penetration enhancer)は、代表的には、約0.1%〜15%の範囲内のレベルに含まれる。
【0080】
調節因子を含有する組成物は、当該分野で公知の様式と類似の様式で(例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖剤製造プロセス、研和プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、トラッププロセス、もしくは凍結乾燥プロセスにより)製造され得る。この組成物はまた、適切な放出の特徴(例えば、従来の手段(例えば、コーティング)による徐放性放出もしくは標的化放出)を提供するために改変され得る。
【0081】
この調節因子を含有する組成物は、塩として提供され得、そして多くの酸(塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられるが、これらに限定されない)とともに形成され得る。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒において、対応する遊離塩基形態より溶解性である傾向がある。
【0082】
調節因子および受容可能なキャリアを含有するように処方された組成物が調製された後、この組成物は、適切な容器中に設置され、そして使用のために標識される。
【0083】
本発明のこの局面のいくつかの実施形態は、細胞の過増殖障害を有する被験体を、被験体に対する標的タンパク質の活性の治療上有効な量のインヒビターを投与することにより処置する方法を提供し、ここで、この標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3に提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む。
【0084】
用語「細胞の過増殖障害」とは、細胞の過剰の増殖が存在する任意の状態(例えば、癌、再狭窄、自己免疫疾患、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、または医療行為の後に誘導される増殖)をいう。いくつかの実施形態では、細胞の過増殖障害は、癌(脳の癌、頭部癌および頚部癌、食道癌、乳癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸癌、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮癌、黒色腫、多発性黒色腫、白血病、およびリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない)である。上記方法のこの実施形態において投与されるインヒビターは、阻害性RNA(例えば、KIF14 siRNA)であり得る。このKIF14 siRNAは、配列番号8、配列番号9、または配列番号23において提供される配列を含み得る。投与されるインヒビターはまた、標的タンパク質による微小管依存性ATP加水分解のインヒビターであり得る。例示的なインヒビターとしては、低分子有機化合物(例えば、セミカルバゾンおよびチオセミカルバゾン)が挙げられる。例えば、このインヒビターは、実施例9に記載されるような、アリールチオセミカルバゾン(例えば、1,1’−ビフェニル−4−カルバルデヒドチオセミカルバゾン(化合物1)、4−イソプロピルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物2;例えば、米国特許第3,849,575号を参照のこと)、4−シクロへキシルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物3)または4−イソプロピル−3−ニトロベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物4;Saripinarら(1996)Arzneimittel−Forschung 46(II):824〜8を参照のこと)であり得る。有効量および有用な投与経路が上に記載される。
【0085】
本発明のこの局面のいくつかの実施形態は、治療上有効な量の公知の治療用薬剤および標的タンパク質の活性のインヒビターを細胞の過増殖障害を有する被験体に投与することにより、この被験体を処置する方法を提供し、ここで、この標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3に提供される配列と80%より高い配列同一性を有する配列を含む。本明細書中で用いられる場合、用語「公知の治療用薬剤」としては、抗癌剤および放射線治療が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明の標的タンパク質インヒビター(例えば、上に記載されたインヒビター)は、公知の抗癌剤と組み合わせて投与され得る。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology(DevitaおよびHellman編)、第6版(2001年2月15日)Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出され得る。当業者は、薬剤のどの組み合わせが有用であるかを薬物および関連する癌の特定の特徴に基づいて識別し得る。このような抗癌剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エストロゲンレセプター調節因子、アンドロゲンレセプター調節因子、レチノイドレセプター調節因子、細胞傷害性/細胞増殖抑制性の薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG−CoAレダクターゼインヒビターおよび他の新脈管形成インヒビター、細胞増殖および細胞生存のシグナル伝達のインヒビター、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、HIVプロテアーゼインヒビター、逆転写酵素インヒビター、および他の新脈管形成インヒビター。
【0086】
「エストロゲンレセプター調節因子」とは、機構に関わらず、レセプターへのエストロゲンの結合を妨害または阻害する化合物をいう。エストロゲンレセプターの調節因子の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラウント(fulvestrant)、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、およびSH646が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
「アンドロゲンレセプター調節因子」とは、機構に関わらず、レセプターへのアンドロゲンの結合を妨害または阻害する化合物をいう。アンドロゲンレセプター調節因子の例としては、フィナステリド(finasteride)および他の5α−レダクターゼインヒビター、ニルタミド(nilutamide)、フルタミド、ビカルタミド(bicalutamide)、リアロゾール(liarozole)、およびアビラテロンアセテート(abiraterone acetate)が挙げられる。
【0088】
「レチノイドレセプター調節因子」とは、機構に関わらず、レセプターへのレチノイドの結合を妨害または阻害する化合物をいう。このようなレチノイドレセプター調節因子の例としては、ベキサロテン(bexarotene)、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミドおよびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられる。
【0089】
「細胞傷害性/細胞増殖抑制性の薬剤」とは、主として直接的に細胞の機能を妨害することにより細胞死を引き起こすかもしくは細胞増殖を阻害する化合物、または細胞減数分裂を阻害もしくは妨害する化合物(アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素症活性化化合物、微小管インヒビター/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンのインヒビター、有糸分裂の進行に関与するキナーゼのインヒビター、代謝拮抗物質);生物学的応答の改変剤;ホルモン性/抗ホルモン性の治療用薬剤、造血性増殖因子、治療用薬剤に標的化されたモノクローナル抗体、トポイソメラーゼインヒビター、プロテオソ−ムインヒビターおよびユビキチンリガーゼインヒビターをいう。
【0090】
細胞傷害性薬剤の例としては、セルテネフ(sertenef)、カケクチン、イホスファミド(ifosfamide)、タソネルミン(tasonermin)、ロニダミン(lonidamine)、カルボプラチン、アルトレタミン(altretamine)、プレジニムスチン(prednimustine)、ジブロモモジュルシトール(dibromodulcitol)、ラニムスチン(ranimustine)、ホテムスチン(fotemustine)、ネダプラチン(nedaplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、テモゾロミド(temozolomide)、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン(estramustine)、インプロスルファントシレート(improsulfan tosilate)、トロホスファミド(trofosfamide)、ニムスチン、ジブロスピジウムクロライド(dibrospidium chloride)、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン(lobaplatin)、サトラプラチン(satraplatin)、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン(irofulven)、デキシホスファミド(dexifosfamide)、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)プラチナ、ベンジルグアニン、グルホスファミド(glufosfamide)、GPX100、(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−プラチナ(II)]ビス[ジアミン(クロロ)プラチナ(II)]テトラクロライド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ビサントレン(bisantrene)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン(valrubicin)、アムルビシン(amrubicin)、アンチネオプラストン(antineoplaston)、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン(carminomycin)、アンナマイシン(annamycin)、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド(elinafide)、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO 00/50032を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
低酸素症活性可能化合物の例は、チラパザミン(tirapazamine)である。
【0092】
プロテオソームインヒビターの例としては、ラクタシスチンおよびMLN−341(Velcade)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
微小管インヒビター/微小管安定化剤の例としては、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカリューコブラスチン(norvincaleukoblastine)、ドセタキソール、リゾキシン(rhizoxin)、ドラスタチン(dolastatin)、ミボブリン(mivobulin)イセチオネート、アウリスタチン(auristatin)、セマドチン(cemadotin)、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン(vinflunine)、クリプトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、無水ビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号および同第6,288,237号を参照のこと)ならびにBMS188797が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エポチロンが微小管インヒビター/微小管安定化剤に含まれない。
【0094】
トポイソメラーゼインヒビターの例としては、トポテカン(topotecan)、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン(rubitecan)、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートレウシン(benzylidene−chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]−アクリジン−2−(6H)−プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−20Sカンプトテシン(camptothecin)、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド(teniposide)、ソブゾキサン(sobuzoxane)、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ (3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナンチリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、 5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジメチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナ(dimesna)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
有糸分裂のキネシン(特にヒトの有糸分裂キネシンKSP)のインヒビターの例は、PCT公報WO 01/30768およびWO 01/98278、ならびに(2001年12月6日に出願された)係属中の米国特許出願番号60/338,779、(2001年12月6日に出願された)60/338,344、(2001年12月6日に出願された)60/338,383、(2001年12月6日に出願された)60/338,380、(2001年12月6日に出願された)60/338,379、ならびにWO 03/39460に記載されている。ある実施形態では、有糸分裂キネシンのインヒビターとしては、KSPのインヒビター、MKLP1のインヒビター、CENP−Eのインヒビター、MCAKのインヒビターおよびRab6−KIFLのインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
有糸分裂の進行に関与するキナーゼのインヒビター」としては、オーロラキナーゼのインヒビター、Polo様キナーゼ(PLK)のインヒビター(特に、PLK−1のインヒビター)、bub−1のインヒビターおよびbub−R1のインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
「抗増殖剤」としては、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド(例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、およびINX3001、および代謝拮抗剤(例えば、エノシタビン、カルモフール(carmofur)、テガファー(tegafur)、ペントスタチン(pentostatin)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、ガロシタビン(galocitabine)、シタラビンオクホスフェート(cytarabine ocfosfate)、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキシド(raltitrexed)、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール(emitefur)、チアゾフリン(tiazofurin)、デシタビン(decitabine)、ノラトレキシド(nolatrexed)、ペメトレキシド(pemetrexed)、ネルザラビン(nelzarabine)、2’−デオキシ−2’−メチリデネシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリセルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アピリジン、エクテイナスシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−チエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン(swainsonine)、ロメトレキソール(lometrexol)、デキシラゾキサン(dexrazoxane)、メチオニナーゼ(methioninase)、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒド(carboxaldehyde)チオセミカルバゾンおよびトラスツズマブ(trastuzumab)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
モノクローナル抗体を標的とする治療剤の例としては、細胞傷害性薬剤を有する治療剤、または癌細胞特異的モノクローナル抗体もしくは標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合された放射性同位元素が挙げられる。例としては、Bexxarが挙げられる。
【0099】
「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼのインヒビターをいう。HMG−CoAレダクターゼに対して阻害活性を有する化合物は、当該分野において周知のアッセイを使用することによって、容易に同定され得る。例えば、米国特許第4,231,938号第6欄、およびWO84/02131の30〜33頁に記載されるかまたは引用されるアッセイを参照のこと。用語「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」および「HMG−CoAレダクターゼのインヒビター」は、本明細書中で使用される場合、同じ意味を有する。
【0100】
使用され得るHMG−CoAレダクターゼインヒビターの例としては、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、同第4,294,926号および同第4,319,039号を参照のこと)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、同第4,820,850号、および同第4,916,239号を参照のこと)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、同第4,537,859号、同第4,410,629号、同第5,030,447号、および同第5,180,589号を参照のこと)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、同第4,911,165号、同第4,929,437号、同第5,189,164号、同第5,118,853号、同第5,290,946号、および同第5,356,896号を参照のこと)、アトロバスタチン(atorvastatin)(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、同第4,681,893号、同第5,489,691号、および同第5,342,952号を参照のこと)ならびにセリバスタチン(リバスタチン(rivastatin)およびBAYCHOL(登録商標)としてもまた公知、米国特許第5,177,080号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法において使用され得る、これらのHMG−CoAレダクターゼインヒビターおよびさらなるHMG−CoAレダクターゼインヒビターの構造式は、M.Yalpani、「Cholesterol Lowering Drugs」,Chemistry & Industry,85−89頁(1996年2月5日)の87頁、ならびに米国特許第4,782,084号および同第4,885,314号に記載されている。用語HMG−CoAレダクターゼインヒビターとは、本明細書中で使用される場合、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の、全ての薬学的に受容可能なラクトンおよび開環酸(open−acid)形態(すなわち、ラクトン環が開いて遊離酸を形成しているもの)、ならびに塩形態およびエステル形態を包含し、従って、このような塩、エステル、開環酸形態およびラクトン形態の使用は、本発明の範囲内に含まれる。ラクトン部分およびその対応する開環酸形態の説明は、以下に構造IおよびIIとして示される。
【0101】
【化1】

開環酸形態が存在し得るHMG−CoAレダクターゼインヒビターにおいて、塩形態およびエステル形態は、開環酸から形成され得、そしてこのような全ての形態は、本明細書中で使用される場合の用語「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」の意味に含まれる。いくつかの実施形態において、HMG−CoAレダクターゼインヒビターは、ロバスタチンおよびシンバスタチンから選択され、そしてさらなる実施形態においては、シンバスタチンである。本明細書中で、HMG−CoAレダクターゼインヒビターに関する用語「薬学的に受容可能な塩」は、本発明において使用される化合物の非毒性の塩を意味するべきであり、これらの塩は、一般に、遊離酸を、適切な有機塩基または無機塩基と反応させることによって、調製される。特に、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛およびテトラメチルアンモニウムのようなカチオンから形成される塩、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンゾ−イミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのようなアミンから形成される塩である。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの塩形態のさらなる例としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム塩、d−カンファースルホン酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynapthoate)、ヨウ化物塩、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチルスルホン酸塩、ムチン酸塩、ナプシラート、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクトロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクラート(teoclate)、トシラート、トリエチオジド、および吉草酸塩が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0102】
記載されるHMG−CoAレダクターゼインヒビター化合物のエステル誘導体は、プロドラッグとして働き得、このプロドラッグは、温血動物の血流に吸収されると、薬物形態を放出し、そしてこの薬物が、改善された医療効力を与えることを可能にするような様式で開裂し得る。
【0103】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター」とは、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素のいずれか1つまたは任意の組み合わせを阻害する化合物をいい、この化合物としては、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTase)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTase−I)、およびゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTase−II、Rab GGPTaseともまた称される)が挙げられる。プレニル−タンパク質トランスフェラーゼを阻害する化合物の例としては、(±)−6−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−(3−クロロフェニル)−1−メチル−2(1H)−キノリノン、(−)−6−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−(3−クロロフェニル)−1−メチル−2(1H)−キノリノン、(+)−6−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−(3−クロロフェニル)−1−メチル−2(1H)−キノリノン、5(S)−n−ブチル−1−(2,3−ジメチルフェニル)−4−[1−(4−シアノベンジル)−5−イミダゾリルメチル]−2−ピペラジノン、(S)−1−(3−クロロフェニル)−4−[1−(4−シアノベンジル)−5−イミダゾリルメチル]−5−[2−(エタンスルホニル)メチル)−2−ピペラジノン、5(S)−n−ブチル−1−(2−メチルフェニル)−4−[1−(4−シアノベンジル)−5−イミダゾリルメチル]−2−ピペラジノン、1−(3−クロロフェニル)−4−[1−(4−シアノベンジル)−2−メチル−5−イミダゾリルメチル]−2−ピペラジノン、1−(2,2−ジフェニルエチル)−3−「N−(1−(4−シアノベンジル)−1H−イミダゾール−5−イルエチル)カルバモイル]ピペリジン、4−{5−[4−ヒドロキシメチル−4−(4−クロロピリジン−2−イルメチル)−ピペリジン−1−イルメチル]−2−メチルイミダゾール−1−イルメチル}ベンゾニトリル、4−{5−[4−ヒドロキシメチル−4−(3−クロロベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル]−2−メチルイミダゾール−1−イルメチル}ベンゾニトリル、4−{3−[4−(2−オキソ−2H−ピリジン−1−イル)ベンジル]−3H−イミダゾール−4−イルメチル}ベンゾニトリル、4−{3−[4−(5−クロロ−2−オキソ−2H−[1,2’]ビピリジン−5’−イルメチル]−3H−イミダゾール−4−イルメチル}ベンゾニトリル、4−{3−[4−(2−オキソ−2H−[1,2’]ビピリジン−5’イルメチル]−3H−イミダゾール−4−イルメチル}ベンゾニトリル、4−[3−(2−オキソ−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−4−イルメチル)−3H−イミダゾール−4−イルメチル}ベンゾニトリル、18,19−ジヒドロ−19−オキソ−5H,17H−6,10:12,16−ジメテノ−1H−イミダゾ[4,3−c][1,11,4]ジオキサアザシクロ−ノナデシン−9−カルボニトリル、(±)−19,20−ジヒドロ−19−オキソ−5H,18,21−エタノ−12,14−エテノ−6,10−メテノ−22H−ベンゾ[d]イミダゾ[4,3−k][1,6,9,12]オキサトリアザ−シクロオクタデシン−9−カルボニトリル、19,20−ジヒドロ−19−オキソ−5H,17H−18,21−エタノ−6,10:12,16−ジメテノ−22H−イミダゾ[3,4−h][1,8,11,14]オキサトリアザシクロエイコシン−9−カルボニトリル、および(±)−19,20−ジヒドロ−3−メチル−19−オキソ−5H−18,21−エタノ−12,14−エテノ−6,10−メテノ−22H−ベンゾ[d]イミダゾ[4,3−k][1,6,9,12]オキサ−トリアザシクロオクタデシン−9−カルボニトリルが挙げられる。
【0104】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの他の例は、以下の刊行物および特許に見出され得る:WO 96/30343、WO97/18813、WO 97/21701、WO97/23478、WO 97/38665、WO 98/28980、WO 98/29119、WO 95/32987、米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許公開第0 618 221号、欧州特許公開第0 675 112号、欧州特許公開第0 604 181号、欧州特許公開第0 696 593号、WO 94/19357、WO 95/08542、WO 95/11917、WO 95/12612、WO 95/12572、WO 95/10514、米国特許第5,661,152号、WO 95/10515、WO 95/10516、WO 95/24612、WO 95/34535、WO95/25086、WO 96/05529、WO96/06138、WO 96/06193、WO 96/16443、WO 96/21701、WO 96/21456、WO 96/22278、WO 96/24611、WO96/24612、WO 96/05168、WO 96/05169、WO 96/00736、米国特許第5,571,792号、WO 96/17861、WO 96/33159、WO 96/34850、WO 96/34851、WO 96/30017、WO 96/30018、WO 96/30362、WO 96/30363、WO 96/31111、WO 96/31477、WO 96/31478、WO 96/31501、WO97/00252、WO 97/03047、WO 97/03050、WO 97/04785、WO 97/02920、WO 97/17070、WO 97/23478、WO 97/26246、WO 97/30053、WO 97/44350、WO 98/02436、および米国特許第5,532,359号。
【0105】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの、新脈管形成に対する役割の例については、Eur.J.of Cancer 35(9):1394−1401(1999)を参照のこと。
【0106】
「新脈管形成インヒビター」とは、機構にかかわらず、新たな血管の形成を阻害する化合物をいう。新脈管形成インヒビターの例としては、チロシンキナーゼインヒビター(例えば、チロシンキナーゼレセプターFlt−1(VEGFR1)のインヒビターおよびFlk−1/KDR(VEGFR2)のインヒビター)、上皮由来線維芽細胞誘導体のインヒビター、または血小板由来増殖因子のインヒビター、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)インヒビター、インテグリンブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリスルフェート、シクロオキシゲナーゼインヒビター(アスピリンおよびイブプロフェンのような非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ならびにセレコキシブおよびロフェコキシブのような選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターが挙げられる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:7384(1992);J.Natl.Cancer Inst.69:475(1982);Arch.Opthalmol.108:573(1990);Anat.Rec.238:68(1994);FEBS Lett.372:83(1995);Clin,Orthop.313:76(1995);J.Mol.Endocrinol.16:107(1996),Jpn.J.Pharmacol.75:105(1997);Cancer Res.57:1625(1997);Cell 93:705(1998);Intl.J.Mol.Med.2:715(1998);J.Biol.Chem.274:9116(1999)))、ステロイド系抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、鉱質コルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド(methylpred)、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandezら.(1985)J.Lab.Clin.Med.105:141−5を参照のこと)ならびにVEGFに対する抗体(Nature Biotechnol.17:963−8(1999);Kimら(1993)Nature 362:841−4;WO 00/44777;およびWO 00/61186を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
新脈管形成を調節または阻害し、そしてまた、標的タンパク質インヒビターと組み合わせて使用され得る、他の治療剤としては、凝固系およびフィブリン溶解系を調節または阻害する薬剤が挙げられる(Clin.Chem.La.Med.38:679−92(2000)における概説を参照のこと)。凝固経路およびフィブリン溶解経路を調節または阻害するような薬剤の例としては、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10−23(1998)を参照のこと)、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼUインヒビター(活性トロンビン活性化可能フィブリン溶解インヒビター[TAFIa]のインヒビターとしてもまた公知)(Thrombosis Res.101:329−54(2001)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。TAFIaインヒビターは、WO 03/13526および米国特許出願番号60/349,925(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0108】
「細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナル伝達を形質導入するプロテインキナーゼを阻害し、これによって、癌細胞をDNA損傷薬剤に対して感受性にする化合物をいう。このような薬剤としては、ATRキナーゼのインヒビター、ATMキナーゼのインヒビター、Chk1キナーゼのインヒビターおよびChk2キナーゼのインヒビター、ならびにcdkキナーゼインヒビターおよびcdcキナーゼインヒビターが挙げられ、そして具体的には、7−ヒドロキシスタウロスポリン(7−hydroxystaurosporin)、フラボピリドール(flavopiridol)、CYC202(Cyclacel)およびBMS−387032によって例示される。
【0109】
「細胞の増殖および生存のシグナル伝達経路のインヒビター」とは、細胞表面レセプターの下流のシグナル伝達カスケードを阻害する化合物をいう。このような薬剤としては、セリン/スレオニンキナーゼ(WO 02/083064、WO 02/083139、WO 02/083140およびWO 02/083138に記載されるようなAktのインヒビター、Rafキナーゼのインヒビター(例えば、BAY−43−9006)、MEKのインヒビター(例えば、CI−1040およびPD−098059)、mTORのインヒビター(例えば、Wyeth CCI−779)、ならびにPI3Kのインヒビター(例えば、LY294002)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0110】
NSAIDとの組み合わせは、強力なCOX−2阻害剤であるNSAIDの使用に関する。本明細書の目的で、NSAIDは、COX−2の阻害に関して、細胞アッセイまたはミクロソームアッセイによって測定される場合に、1マイクロモル濃度以下のIC50を保有する場合に、強力である。
【0111】
本発明はまた、選択的COX−2インヒビターであるNSAIDとの組み合わせを包含する。本明細書の目的で、COX−2の選択的インヒビターであるNSAIDは、細胞アッセイまたはミクロソームアッセイによって評価される、COX−1についてのIC50に対するCOX−2についてのIC50の比によって測定される場合に、COX−1の阻害に対して少なくとも100倍の、COX−2の阻害に対する特異性を保有するNSAIDとして定義される。このような化合物としては、米国特許第5,474, 995号(1995年12月12日発行)、米国特許第5,861,419号(1999年1月19日発行)、米国特許第6,001,843号(1999年12月14日発行)、米国特許第6,020,343号(2000年2月1日発行)、米国特許第5,409,944号(1995年4月25日発行)、米国特許第5,436,265号(1995年7月25日発行)、米国特許第5,536,752号(1996年7月16日発行)、米国特許第5,550,142号(1996年8月27日発行)、米国特許第5,604,260号(1997年2月18日発行)、米国特許第5,698,584号(1997年12月16日発行)、米国特許第5,710,140号(1998年1月20日発行)、WO 94/15932(1994年7月21日公開)、米国特許第5,344,991号(1994年6月6日発行)、米国特許第5,134,142号(1992年7月28日発行)、米国特許第5,380,738号(1995年1月10日発行)、米国特許第5,393,790号(1995年2月20日発行)、米国特許第5,466,823号(1995年11月14日発行)、米国特許第5,633,272号(1997年5月27日発行)、および米国特許第5,932,598号(1999年8月3日発行)、)に記載される化合物が挙げられるが、これらに限定されず、これらの全ては、本明細書中に参考として援用される。
【0112】
本発明の処置方法において有用なCOX−2のインヒビターとしては、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;および
【0113】
【化2】

5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン;
【0114】
【化3】

またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。
【0115】
上記COX−2インヒビターの調製のための、一般的な合成手順および特殊な合成手順は、米国特許第5,474,995号(1995年12月12日発行)、米国特許第5,861,419号(1999年1月19日発行)、および米国特許第6,001,843号(1999年12月14日発行)に見出され、これらの全ては、本明細書中に参考として援用される。
【0116】
従って、COX−2の特異的インヒビターとして記載されている化合物は、本発明において有用であり、これらの化合物としては、以下:
【0117】
【化4】

【0118】
【化5】

またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。
【0119】
従って、COX−2の特異的インヒビターとして記載されている化合物は、本発明、およびその合成方法において有用であり、以下の特許、係属中の出願および刊行物に見出され得、これらは、本明細書中に参考として援用される:WO 94/15932(1994年7月21日公開)、米国特許第5,344,991号(1994年6月6日発行)、米国特許第5,134,142号(1992年7月28日発行)、米国特許第5,380,738号(1995年1月10日発行)、米国特許第5,393,790号(1995年2月20日発行)、米国特許第5,466,823号(1995年11月14日発行)、米国特許第5,633,272号(1997年5月27日発行)、および米国特許第5,932,598号(1999年8月3日発行)。
【0120】
従って、COX−2の特異的インヒビターである化合物は、本発明、およびその合成方法において有用であり、以下の特許、係属中の出願および刊行物に見出され得、これらは、本明細書中に参考として援用される:米国特許第5,474,995号(1995年12月12日発行)、米国特許第5,861,419号(1999年1月19日発行)、米国特許第6,001,843号(1999年12月14日発行)、米国特許第6,020,343号(2000年2月1日発行)、米国特許第5,409,944号(1995年4月25日発行)、米国特許第5,436,265号(1995年7月25日発行)、米国特許第5,536,752号(1996年7月16日発行)、米国特許第5,550,142号(1996年8月27日発行)、米国特許第5,604,260号(1997年2月18日発行)、米国特許第5,698,584号(1997年12月16日発行)、および米国特許第5,710,140号(1998年1月20日発行)。
【0121】
新脈管形成インヒビターの他の例としては、エンドスタチン、ウクライン(ukrain)、ランピルナーゼ(ranpirnase)、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン(acetyldinanaline)、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミド、コンブレスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、および3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
上で使用されるように、「インテグリンブロッカー」とは、αβインテグリンへの生理学的リガンドの結合に、選択的に拮抗するか、阻害するか、または反作用する化合物、αvβ5インテグリンへの生理学的リガンドの結合に、選択的に拮抗するか、阻害するか、または反作用する化合物、αβインテグリンとαβインテグリンとの両方への生理学的リガンドの結合に拮抗するか、阻害するか、または反作用する化合物、ならびに毛細血管内皮細胞上で発現される特定のインテグリンの活性に拮抗するか、阻害するか、または反作用する化合物をいう。この用語はまた、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリンおよびαβインテグリンのアンタゴニストをいう。この用語はまた、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリンおよびαβインテグリンの任意の組み合わせのアンタゴニストをいう。
【0123】
チロシンキナーゼインヒビターのいくつかの具体例としては、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド,3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン,17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン,4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン,N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン(genistein)、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン,4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジナミン、およびEMD121974が挙げられる。
【0124】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせもまた、本発明の方法において企図される。例えば、本願発明の化合物と、PPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニストおよびPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組み合わせは、特定の悪性疾患の処置において有用である。PPAR−γおよびPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγおよび核ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現およびその新脈管形成への関与は、文献に報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.(1998)31:909−13;J.Biol.Chem.(1999)274:9116−21;Invest.Ophthalinol Vis.Sci.(2000)41:2309−17を参照のこと)。より最近、PPAR−γアゴニストは、インビトロにおいて、VEGFに対する脈管形成応答を阻害することが示された;トログリタゾンとマレイン酸ロシグリタゾンとの両方が、マウスにおいて、網膜新生血管形成の発達を阻害する(Arch.Ophthamol.(2001)119:709−17)。PPAR−γアゴニストおよびPPAR−γ/αアゴニストの例としては、チアゾリジンジオン(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、およびピオグリタゾン)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN 09/782,856に開示される)、および2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(米国出願番号60/235,708および同60/244,697に開示される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態において、標的タンパク質インヒビターは、癌の処置のための遺伝子両方と組み合わせて使用される。癌を処置するための遺伝子的ストラテジーの概説については、Hallら(1997)、Am J Hum Genet 61:785−9およびKufeら(2000)、Cancer Medicine,第5版、876−89頁、BC Decker,Hamiltonを参照のこと。遺伝子療法を使用して、任意の腫瘍抑制遺伝子を送達し得る。このような遺伝子の例としては、p53(これは、組換えウイルス媒介遺伝子移入を介して送達され得る(例えば、米国特許第6,069,134号を参照のこと))、uPA/uPARアンタゴニスト(「Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppressers Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice」、Gene Therapy 5(8):1105−13(1998))およびインターフェロンγ(J Immunol.164:217−22(2000))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
標的タンパク質インヒビターはまた、固有の多剤耐性(MDR)(特に、トランスポータータンパク質の高レベルの発現に関連するMDR)のインヒビターと組み合わせて、投与され得る。このようなMDRインヒビターとしては、p−糖タンパク質(P−gp)(例えば、LY335979、XR9576、OC114−093、R101922、VX853およびPSC866(バルスポダール(valspodar)))のインヒビターが挙げられる。
【0127】
標的タンパク質インヒビターは、悪心および嘔吐(急性嘔吐、遅延型嘔吐、後期(late phase)嘔吐、および予測性嘔吐が挙げられ、これらは、単独でかまたは放射線療法と組み合わせた本発明の化合物の使用から生じ得る)を処置するために、制吐薬と組み合わせて使用され得る。嘔吐の予防または処置のために、本発明の化合物は、他の制吐剤(特に、ニューロキニン−1レセプターアンタゴニスト、5HT3レセプターアンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、およびザチセトロン)、GABABレセプターアゴニスト(例えば、バクロフェン)、コルチコステロイド(例えば、Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten)、または他のもの(例えば、米国特許第2,789,118号、同第2,990,401号、同第3,048,581号、同第3,126,375号、同第3,929,768号、同第3,996,359号、同第3,928,326号および同第3,749,712号に開示されるもの)、抗ドパミン作用薬(例えば、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン))メトクロプラミドまたはドロナビノール)と組み合わせて使用され得る。標的タンパク質インヒビターの投与の際に生じ得る嘔吐の処置または予防のために、制吐薬との併用療法は、ニューロキニン−1レセプターアンタゴニスト、5HT3レセプターアンタゴニスト、およびコルチコステロイドから選択され得る。
【0128】
本発明の標的タンパク質インヒビターと組み合わせて使用するニューロキニン−1レセプターアンタゴニストは、例えば、以下に完全に記載される:米国特許第5,162,339号、同第5,232,929号、同第5,242,930号、同第5,373,003号、同第5,387,595号、同第5,459,270号、同第5,494,926号、同第5,496,833号、同第5,637,699号、同第5,719,147号;欧州特許公開番号EP 0 360 390、同EP 0 394 989、同EP 0 428 434、同EP 0 429 366号、同EP 0 430 771号、同EP 0 436 334、同EP 0 443 132、同EP 0 482 539、同EP 0 498 069、同EP 0 499 313、同EP 0 512 901、同EP 0 512 902、同EP 0 514 273、同EP 0 514 274、同EP 0 514 275、同EP 0 514 276、同EP 0 515 681、同EP 0 517 589、同EP 0 520 555、同EP 0 522 808、同EP 0 528 495、同EP 0 532 456、同EP 0 533 280、同EP 0 536 817、同EP 0 545 478、同EP 0 558 156、同EP 0 577 394、同EP 0 585 913、同EP 0 590 152、同EP 0 599 538、同EP 0 610 793、同EP 0 634 402、同EP 0 686 629、同EP 0 693 489、同EP 0 694 535、同EP 0 699 655、同EP 0 699 674、同EP 0 707 006、同EP 0 708 101、同EP 0 709 375、同EP 0 709 376、同EP 0 714 891、同EP 0 723 959、同EP 0 733 632、および同EP 0 776 893号;PCT国際特許公開番号WO 90/05525、同WO 90/05729、同WO 91/09844、同WO 91/18899、同WO 92/01688、同WO 92/06079、同WO 92/12151、同WO 92/15585、同WO 92/17449、同WO 92/20661、同WO 92/20676、同WO 92/21677、同WO 92/22569、同WO 93/00330、同WO 93/00331、同WO 93/01159、同WO 93/01165、同WO 93/01169、同WO 93/01170、同WO 93/06099、同WO 93/09116、同WO 93/10073、同WO 93/14084、同WO 93/14113、同WO 93/18023、同WO 93/19064、同WO 93/21155、同WO 93/21181、同WO 93/23380、同WO 93/24465、同WO 94/00440、同WO 94/01402、同WO 94/02461、同WO 94/02595、同WO 94/03429、同WO 94/03445、同WO 94/04494、同WO 94/04496、同WO 94/05625、同WO 94/07843、同WO 94/08997、同WO 94/10165、同WO 94/10167、同WO 94/10168、同WO 94/10170、同WO 94/11368、同WO 94/13639、同WO 94/13663、同WO 94/14767、同WO 94/15903、同WO 94/19320、同WO 94/19323、同WO 94/20500、同WO 94/26735、同WO 94/26740、同WO 94/29309、同WO 95/02595、同WO 95/04040、同WO 95/04042、同WO 95/06645、同WO 95/07886、同WO 95/07908、同WO 95/08549、同WO 95/11880、同WO 95/14017、同WO 95/15311、同WO 95/16679、同WO 95/17382、同WO 95/18124、同WO 95/18129、同WO 95/19344、同WO 95/20575、同WO 95/21819、同WO 95/22525、同WO 95/23798、同WO 95/26338、同WO 95/28418、同WO 95/30674、同WO 95/30687、同WO 95/33744、同WO 96/05181、同WO 96/05193、同WO 96/05203、同WO 96/06094、同WO 96/07649、同WO 96/10562、同WO 96/16939、同WO 96/18643、同WO 96/20197、同WO 96/21661、同WO 96/29304、同WO 96/29317、同WO 96/29326、同WO 96/29328、同WO 96/31214、同WO 96/32385、同WO 96/37489、同WO 97/01553、同WO 97/01554、同WO 97/03066、同WO 97/08144、同WO 97/14671、同WO 97/17362、同WO 97/18206、同WO 97/19084、同WO 97/19942、および同WO 97/21702;ならびに英国特許公開番号第2 266 529号、同第2 268 931号、同第2 269 170号、同第2 269 590号、同第2 271 774号、同第2 292 144号、同第2 293 168号、同第2 293 169号、および同第2 302 689号。このような化合物の調製は、前述の特許および公報に完全に記載され、これらは、本明細書中で参考として援用される。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物と組み合わせて使用するためのニューロキニン−1レセプターアンタゴニストは、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、またはその薬学的に受容可能な塩から選択され、これは、米国特許第5,719,147に記載される。
【0130】
標的タンパク質インヒビターはまた、貧血の処置に有用な薬剤と一緒に投与され得る。このような貧血処置薬剤は、例えば、持続的赤血球生成(eythropoiesis)レセプター活性化因子(例えば、エポエチンα)である。
【0131】
標的タンパク質インヒビターはまた、好中球減少症の処置に有用な薬剤と一緒に投与され得る。このような好中球減少症処置薬剤は、例えば、好中球の産生および機能を制御する造血成長因子(例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF))である。G−CSFの例としては、フィルグラスチムが挙げられる。
【0132】
標的タンパク質インヒビターはまた、免疫学的増強薬(例えば、レバミゾール、イソプリノシンおよびザダキシン(Zadaxin))と一緒に投与され得る。
【0133】
第3の局面において、本発明は、標的タンパク質の活性の調節因子での処置のために候補被験体を同定するための方法を提供する。この方法は、(a)被験体からのサンプル細胞における標的タンパク質の発現レベルを測定する工程であって、ここで上記標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む、工程;および(b)上記サンプル細胞における標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に異なる場合に、上記被験体を、標的タンパク質の活性の調節因子で処置するための候補被験体として同定する工程、を包含する。
【0134】
第1の工程において、被験体のサンプル細胞における標的タンパク質の発現レベルが測定される。本明細書中で使用される場合、用語「サンプル細胞」とは、任意の臨床的に関連性のある組織サンプル(例えば、腫瘍生検もしくは細針吸引物)、または体液のサンプル(例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水液、嚢胞性液、尿、もしくは乳頭滲出液)由来の細胞をいう。上記サンプルは、ヒト被験体または非ヒト被験体から採られ得る。本発明のこの局面の方法で使用される標的タンパク質は、上記のように、本発明の第1の局面の方法のためのものである。
【0135】
標的タンパク質の発現レベルは、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。この発現レベルは、標的タンパク質をコードする遺伝子から転写された核酸を単離してその量を測定することにより決定され得る。あるいは、またはさらに、翻訳された標的タンパク質の量が決定され得る。例えば、標的タンパク質の発現レベルは、RNAをサンプルから単離して、それを、その標的タンパク質をコードする遺伝子の転写物に相当するDNAまたはRNAに特異的な核酸プローブにハイブリダイズすることによって決定され得る。mRNAレベルを測定するのに有用な技術としては、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン分析、RNase保護、およびマイクロアレイへのハイブリダイゼーションが挙げられるが、これらに限定されない。標的タンパク質の発現レベルはまた、タンパク質レベルにおいて評価され得る。タンパク質レベルを測定するのに有用な技術としては、標的タンパク質に対する抗体を使用する、標準的な免疫アッセイ、質量分析アッセイ、抗体マイクロアレイ、および2Dゲル電気泳動アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。標的タンパク質の発現レベルを測定するための例示的な方法は、実施例1、2および6に提供される。
【0136】
第2の方法において、サンプル細胞における標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に異なる場合に、上記被験体は、標的タンパク質の活性の調節因子で処置するための候補被験体として同定される。用語「コントロール細胞」とは、所望のレベルの標的タンパク質を発現する参照細胞をいう。このコントロール細胞は、サンプル細胞が得られた被験体と同じ被験体からの細胞であり得るが、そうである必要はない。コントロール細胞は、サンプル細胞が得られた組織と同じ組織から得られ得る。このコントロール細胞はまた、同じ組織型由来であるが異なる被験体由来の細胞であり得る。コントロール細胞はまた、仮想細胞(例えば、複数の被験体における標的タンパク質の発現レベルの平均を表す想像の細胞、または標的タンパク質の理想的な発現レベルを表す想像の細胞)を含み得る。
【0137】
サンプル細胞における発現レベルとコントロール細胞における発現レベルとの比較は、当該分野の従来の方法を使用してなされ得る。例えば、発現レベルの比較は、視覚的に達成され得るか、または濃度計によって達成され得る。一般的に、遺伝子発現レベルを比較するための方法は、発現レベルにおける差異の統計学的有意性の見積もりを提供する。例えば、個々のサンプルの反復測定は、測定された発現レベルの平均および標準誤差を見積もるために使用され得る。本発明のこの局面の方法に従って、コントロール細胞と異常に増殖する細胞とにおける発現レベルの差異が、統計学的に有意であると決定される場合、被験体は、標的タンパク質の活性の調節因子での処置のための候補被験体として同定される。いくつかの実施形態において、本発明のこの局面の方法は、さらに、上記のように、標的タンパク質の活性の調節因子を投与することにより候補被験体を処置する工程を包含する。
【0138】
いくつかの実施形態において、上記方法は、標的タンパク質の活性のインヒビターでの処置のための候補被験体を同定する。しかし、本発明のこの局面の方法はまた、標的タンパク質の活性を刺激する調節因子での処置のための候補被験体を同定するために、適用可能である。標的タンパク質の活性のインヒビターでの処置のための候補被験体を同定するための方法は、以下の工程を包含する:(a)被験体の異常に増殖する細胞における標的タンパク質の発現レベルを測定する工程であって、ここで、上記標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む、工程;および(b)上記異常に増殖する細胞における標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に高い場合に、上記被験体を、標的タンパク質の活性のインヒビターでの処置のための候補被験体として同定する工程。本実施形態に従って、上記サンプル細胞は、異常に増殖する細胞である。代表的には、本実施形態で使用されるコントロール細胞は、異常に増殖しない細胞である。いくつかの実施形態において、本発明のこの局面の方法は、上記のような、標的タンパク質の活性のインヒビターを投与することにより候補被験体を処置する工程をさらに包含する。
【0139】
本発明はまた、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするためのキットを提供する。これらのキットは、標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための材料および試薬、ならびにそのスクリーニングをどのように行うかを説明する指示書を備え得る。例えば、上記キットは、生物学的に活性な標的タンパク質、反応チューブ、およびその標的タンパク質の活性を試験するための指示書を備え得る。上記キットは、標的タンパク質の活性に対する特異的なアッセイの使用のために作製され得る。従って、上記キットは、ATPアーゼアッセイ、微小管結合アッセイ、微小管滑動アッセイ、または細胞の増殖および生存度のアッセイのために作製され得る。
【0140】
提供される実施例は、本発明のさらなる理解を補助することを意図し、そして本発明を実施するためにここで企図される最も良好な様式を例示する。使用される特定の材料、種および条件は、本発明の例示であり、本発明の合理的な範囲を限定しないことを意図する。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
本実施例は、正常細胞および腫瘍細胞におけるKIF14発現レベルを記載する。
【0142】
KIF14 mRNA発現レベルを、2つの正常細胞株(ヒト乳房上皮細胞HMEC(Cambrex Corporation(Clonetics)、カタログ番号CC−2551)およびヒト骨格筋細胞SKMC(Cambrex Corporation,East Rutherford,NJ(Bio Whittaker)、カタログ番号CC−2561))、ならびに2つの腫瘍細胞株(結腸直腸癌細胞株HT−29(American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号HTB−38)および乳癌細胞株MCF−7(ATCC、カタログ番号HTB−22))において評価した。これらの細胞株由来のRNAを、標準的なQIAシュレッダー(Qiagen、カタログ番号79656)ホモジナイゼーション、およびRNaseを含まないDNase工程(Qiagen、カタログ番号7925)を使用するQiagen RNeasyプロトコル(Qiagen、カタログ番号74106)に従うことによって収集した。カスタムメイドのヒトhu25kマイクロアレイ(Agilent Technologies,Inc.,Palo Alto,CA)へのハイブリダイゼーションのための標識コピーRNAの調製、ハイブリダイゼーション条件、および続いてのデータ処理は、以前に記載される通りである(van’t Veerら(2002)Nature 415:530−536)。
【0143】
(結果)
KIF14 mRNAの発現レベルは、表1に示すように、正常細胞においてよりも、腫瘍細胞株において約4倍〜約6.6倍高かった。
【0144】
(表1.正常細胞および腫瘍細胞におけるKIF14 mRNA発現)
【0145】
【表1】

異なるヒト組織および腫瘍細胞株のパネルにおけるKIF14 mRNA発現を測定するために、KIF14転写配列(配列番号1)にわたる位置由来の29個のオリゴヌクレオチドプローブを生成して、マイクロアレイに配置させた。68個の組織/細胞株由来のRNAを、全長増幅プロトコルを使用して増幅し、Cy3色素またはCy5色素のいずれかで標識し、そしてマイクロアレイにハイブリダイズした(Hughesら(2001)Nature Biotechnol.19:342−347およびvan’t Veerら(2002)Nature 415:530−536に以前に記載されたように)。各組織におけるmRNA発現を、バックグラウンド除去および色素標準化の後に、プローブの自然対数強度の平均の指数として計算した。見積誤差は、モデル化プローブの測定誤差とプローブ間の差異との組み合わせを表す。KIF14は、一般的に、表2に示すように、腫瘍細胞株において高レベルで発現され、そしてヒト組織においてはより低いレベルで発現されることが見出された。
【0146】
(表2.ヒト組織および腫瘍細胞株におけるKIF14 mRNA発現)
【0147】
【表2−1】

【0148】
【表2−2】

(実施例2)
本実施例は、有糸分裂キネシンのmRNA発現パターンに対する、成長因子で処理した細胞株におけるKIF14 mRNA発現パターンの類似性を記載する。
【0149】
実施例1に記載した細胞株MCF−7、HT−29、SKMCおよびHMECを使用した。56の10cmプレートに、本実験の最初の日に70〜80%コンフルエンスの密度を与えるように、各細胞株を播種した。この細胞を、10% FBS/DMEMを吸引して0.2% FBS/DMEM (タンパクシツ除去(charcoal stripped)血清)を加えることによって、血清を枯渇させた。37℃での血清枯渇の24時間後、5個のプレートの5セットを、100 ng/mLのEGF(Upstate Biotechnology、カタログ番号01−407)、100 ng/mLのβ−FGF(Promega、カタログ番号G507A)、100 ng/mLのIGF−1(Sigma、カタログ番号I3769)、100 ng/mLのインスリン(Sigma、カタログ番号I2767)、および30ng/mLのヘレグリン(NeoMarkers、カタログ番号RP−318−P1AX)で処理した。成長因子を再懸濁し(ここで適用可能)、製造業者の指示書に従って保存した。5個のプレートの5セットを、コントロール溶液として0.2% FBS/DMEM(タンパクシツ除去(charcoal stripped)血清)で対応するように処理した。さらなる6個のプレートを、5種の成長因子のうちの1つまたはコントロールで処理した。コントロールプレートを、それらの適合した処理したサンプルと並行して処理した。これらの後者の6個のプレートを溶解し、15分後、リン酸化AktおよびMAPKの標準的なウエスタンブロッティングを行い、刺激が起こったことを確認した。残りのプレートを、処理したサンプルとコントロールサンプルのペアにおいて、固定時間(30分、2時間、6時間、18時間、および24時間)インキュベートし、その後、標準的なQIAシュレッダー(Qiagen、カタログ番号79656)ホモジナイゼーション、およびRNaseを含まないDNase工程(Qiagen、カタログ番号7925)を使用するQiagen RNeasyプロトコル(Qiagen、カタログ番号74106)に従ってRNAを収集した。カスタムメイドのヒトhu25kマイクロアレイ(Agilent Technologies,Inc.,Palo Alto,CA)へのハイブリダイゼーションのための標識コピーRNAの調製、ハイブリダイゼーション条件、および続いてのデータ処理は、以前に記載される通りである(van’t Veerら(2002)Nature 415:530−536)。
【0150】
(結果)
図1に示すように、成長因子で処理した細胞株におけるmRNA発現パターンは、ニューロンキネシンのmRNA発現パターンと異なったが、9個の公知の有糸分裂サイクリンである、CENP−E、KIF4A、MPOHOPH1、hklp2、KNSL6、RAB6KIFL、KNSL5、KNSL4、およびKNSL1のmRNA発現パターンと類似であった。
【0151】
(実施例3)
本実施例は、有糸分裂の間の、KIF14 mRNAの蓄積およびKIF14タンパク質の動的な細胞局在を記載する。
【0152】
有糸分裂の間の転写物蓄積は、有糸分裂キネシンの決定的な特徴である(Yenら(1992)Nature 359(6395):53609;Hillら(2000)EMBO J.19(21):5711−9)。さらに、細胞局在の研究は、有糸分裂サイクリンの機能を解明することに役立った(Yenら(1992)Nature 359(6395):53609;Hillら(2000)EMBO J.19(21):5711−9;Matulieneら(2002)Mol.Biol.Cell.13(6):1832−45;Abazaら(2003)J.Biol.Chem.278(3):27844−52)。免疫蛍光顕微鏡を、細胞周期の間のKIF14タンパク質の局在を可視化するために使用し、マイクロアレイプロファイリングを、同調された細胞におけるKIF14 mRNAの蓄積を分析するために使用した。
【0153】
(チミジン細胞同調)
HCT116細胞を、10cmのプレートに、1プレートあたり1.5×10の細胞で播種し、そして一晩増殖させた。もともとの培地を吸引し、そして2 mMのチミジン(Sigma、カタログ番号T−1895、ロット番号28H0393)を含有する10mlの新鮮な濾過した培地を、G1/Sで細胞をブロックするために各プレートに添加した。細胞を、37℃で15〜16時間インキュベートした。チミジン含有培地を吸引し、そして細胞をチミジンブロックから放出し、2×5mlのPBSで洗浄し、続いて24μMのデオキシシチジンを含有する培地を10ml添加した。細胞を37℃で10時間インキュベートし、続いて培地を吸引し、5mlのPBSで洗浄し、そして2mMのチミジン含有培地を10ml添加することによってG1/Sブロックを繰り返した。チミジンブロックの15時間後、上記細胞を洗浄し、そしてデオキシシチジン培地に入れ、この時t=0であり、そして時間経過させた。サンプルをFACSのために収集し、RNAを、t=0〜24時間の間、2時間間隔で抽出し、さらにもう1点36時間に抽出した。
【0154】
(同調HCT116細胞の分子プロファイリング)
各10cmプレートについて、各指定したタイムポイントにおいて、上記培養培地を完全に吸引し、そして細胞を、1%BMEを含有するRLT緩衝液(Qiagen,Inc.(Valencia,CA),RNeasyキット)中に溶解した。細胞を小片にし、そして溶解物をピペットで取って混合して、凝集物を減らした。細胞溶解物を、QIAシュレッダースピンカラムを使用してホモジナイズし、そして細胞RNAの全体を、Rneasyミニキット(Qiagen)を使用して単離した。RNA増幅、標識、およびhu25KインクジェットDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションを、以前に記載したように行った(Hughesら(2001)Nat.Biotechnol.19:342−7;van’t Veerら(2002)Nature 4l5:530−6)。
【0155】
KIF14転写物は、G2/Mを経た細胞において蓄積した。KIF14発現の細胞周期依存型制御は、公知の有糸分裂キネシン、CENPEの制御を反映した。これらの観察は、KIF14が有糸分裂キネシンとして機能するという仮説を強く支持することを補助する。
【0156】
(免疫蛍光顕微鏡)
ガラスチャンバウェルスライド上で培養したHeLa−S3細胞を固定し、100 mM PIPES(pH 6.8)、10 mM EGTA、1 mM MgCl、0.2% Triton X−100、4%ホルムアルデヒドを含有する免疫組織化学的緩衝液(Kapoorら(2000)J.Cell.Biol.150(5):975−88)中で15分間透過化処理した。固定の後、細胞をTBSTで2回洗浄し(実施例5を参照のこと)、2時間37℃で一次抗体とインキュベートした。ウサギ抗KIF14ポリクローナル抗体をAbcam,Inc.(ab3746)から得て、1:500希釈で使用した。抗αチューブリンモノクローナル抗体(clone DM1A0)を、SIGMAから得て、1:500希釈で使用した。細胞をTBSTで2回洗浄し、そして一次抗体結合を、Alexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes)およびAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)を使用して(両方とも1:250希釈で使用した)検出した。二次抗体とのインキュベーションを、室温で1時間行い、続いて、TBSTで3回洗浄し、DNAを染色するために10μg/mlのHoechstを補充した。スライドを、Fluoromount G(Southern Biotech)に取り付け、DAPI、FITC、およびRD−TR−PEフィルターセット(それぞれ、青色、緑色、および赤色用)を使用して、Deltavision v3.5デコンボルーション顕微鏡(Applied Precision,Inc.)で直接可視化した。
【0157】
KIF14は、間期細胞においては細胞質内に散在して分散したが、前期細胞においては、中心体およびそれらの関連する微小管に局在した。中期細胞において、KIF14は、紡錘体の極に、および紡錘体微小管に沿って位置した。後期細胞において、KIF14は、紡錘体の中間帯に見出され、一方、終期細胞において、KIF14は、より濃縮され、中央体マトリックスおよび収縮環と共存した。KIF14はまた、チューブリンに結合する細胞外環様構造体(細胞脱離が完了した後の収縮環を連想させる)に局在することが見出された。KIF14の細胞より下での局在は、細胞質分裂におけるこのタンパク質の役割を示唆する。対照に、KLP38B(Drosophila KIF14相同分子種(Molinaら(1997)J.Cell.Biol.139(6):1361−71))は、濃縮クロマチンと共存し、KIF14が染色体分離の間に機能することを示唆している。
【0158】
(実施例4)
本実施例は、KIF14 siRNAのトランスフェクションが、細胞増殖阻害および細胞死をもたらすことを記載する。
【0159】
(siRNAのトランスフェクション)
KIF14の機能喪失表現型を決定するため、siRNAのトランスフェクトを使用してKIF14 mRNAのレベルを低下させた。トランスフェクションの前日、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で約90%コンフルエンシーまで増殖した、100μlの子宮頸癌HeLa細胞(ATCC、カタログ番号CCL−2)、直腸結腸癌HCT116細胞(ATCC、カタログ番号CCL−247)、または黒色腫A2058細胞(ATCC、カタログ番号CRL−1147)を、1500細胞/ウェルで96ウェル組織培養プレート(Corning,Corning,NY)に播種した。各トランスフェクションについて、85μlのOptiMEM(登録商標)(Invitrogen)を、20μMストックからの5μlのsiRNA(Dharmacon,Denver)と混合した。以下の2つのKIF14 siRNA配列を使用した:
KIF14−4476:5’AAACUGGGAGGCUACUUACdTdT 3’(配列番号8);および
KIF14−5128:5’CUCACAUUGUCCACCAGGAdTdT 3’(配列番号9)。
【0160】
コントロールとしてルシフェラーゼsiRNA(5’CGUACGCGGAAUACUUCGAdTdT 3’,配列番号10)を3つの異なる細胞株の各々にトランスフェクトした。各トランスフェクションについて、5μlのOptiMEM(登録商標)を、5μlのOligofectamineTM試薬(Invitrogen)と混合し、室温で5分インキュベートした。この10μlのOptiMEM(登録商標)/OligofectamineTM混合物をOptiMEM(登録商標)/siRNA混合物を有する各チューブに分散し、混合して、室温で15〜20分インキュベートした。10μlのトランスフェクション混合物を、96ウェルプレートの各ウェルにアリコートし、37℃および5%COで4時間インキュベートした。4時間後、100μl/ウェルのDMEM/10%ウシ胎児血清を添加し、このプレートを、37℃および5%COで72時間インキュベートした。
【0161】
(細胞増殖についてのalamarBlueTMアッセイ)
alamarBlueTMアッセイは、細胞呼吸の尺度であり、生細胞の数の尺度として使用される。増殖中の細胞の内部環境は、非増殖細胞の内部環境より還元されている。具体的には、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAFの比は、増殖の間、増加する。alamarBlueTMは、これらの代謝中間体によって還元され得、従って、細胞増殖をモニタリングするために使用され得る。
【0162】
siRNAを用いたトランスフェクション後72時間で、KIF14 siRNAトランスフェクションが、細胞増殖の低下および/または細胞死の上昇をもたらすか否かを決定するために、alamarBlueTMアッセイを実行した。トランスフェクション後72時間で、培地を、ウェルから除去し、100μl/ウェルのDMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen)(10%(vol/vol)alamarBlueTM試薬(Biosource International Inc.,Camarillo,CA)および0.001体積の1M Hepes緩衝組織培養試薬 (Invitrogen)を含む)に置換した。このプレートを37℃で2時間インキュベートし、Softmax Pro 3.1.2ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、このプレートを、SpectraMaxプラスプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で570nmおよび600nmの波長にて読み取った。
【0163】
以下の式を使用して還元した%として、alamarBlueTM還元を算出した。
【0164】
【数1】

ここで:
λ=570nm
λ=600nm
(εred λ)=155,677(570nmでの還元したalamarBlueTMのモル吸光係数)
(εred λ)=14,652(600nmでの還元したalamarBlueTMのモル吸光係数)
(εox λ)=80,586(570nmでの酸化したalamarBlueTMのモル吸光係数)
(εox λ)=117,216(600nmでの酸化したalamarBlueTMのモル吸光係数)
(A λ)=570nmでの試験ウェルの吸光度
(A λ)=600nmでの試験ウェルの吸光度
(A’λ)=培地およびalamarBlueTMを含むが、細胞を添加していないネガティブコントロールのウェルの570nmでの吸光度
(A’λ)=培地およびalamarBlueTMを含むが、細胞を添加していないネガティブコントロールのウェルの600nmでの吸光度。
【0165】
培地を含まないウェルの還元%を、サンプルを含むウェルの還元%から差し引いて、上記のバッググランドの還元%を決定した。KIF14 siRNAでトランスフェクトした細胞についての還元%を、ルシフェラーゼsiRNAトランスフェクトウェルと比較した。ルシフェラーゼsiRNAトランスフェクトウェルについての還元%について計算した数値を100%であるとみなした。
【0166】
(カスパーゼ活性測定)
カスパーゼ活性は、細胞死の指標である。コントロールおよびKIF14 siRNAをトランスフェクトした細胞におけるカスパーゼ活性を測定するために、100μlのDMEM+10% FBS(抗生物質を添加せず)中に96ウェル黒色壁で透明の底の組織培養処理したCostarプレート(Costar,カタログ番号3603)にてHeLa細胞を2000細胞/ウェルの密度で播種した。加湿の5% COインキュベーターにて全ての37℃インキュベーションを実行した。37℃で一晩インキュベーション後、トランスフェクション混合物を用いて各ウェルを処理して、合計10μlのOptimem(登録商標)(添加する前に周囲温度で15〜20分放置させた)中、0.5μlのOligofectamineTM(Invitrogen,カタログ番号12252−011)とともに最終濃度100nMのオリゴ二重鎖(Dharmacon,A4 preparation)を生成させた。37℃で4〜16時間後、90μlの温めた培地をさらに添加した。37℃で合計48時間の間、トランスフェクション混合物とともに細胞をインキュベートした。次いで、4℃で10分間、1200rpmでBeckman遠心機(ローターJS−4.2)にてこのプレートをスピンさせた後、培地を吸引し、そして各ウェルに40μlの溶解緩衝液(ApoAlertキット、Clonetech−蛍光検出カスパーゼ3キット、カタログ番号K2026−2から)を添加した。10μlの基質反応ストック溶液を添加する前に、4℃で20分間このプレートをインキュベートした。このストックは、20μlの10mM DEVD−afc(Biosource,カタログ番号77−935,25mg,−10mMまでDMSOを添加から)、20μlの1M DTT(最終濃度約6mM)、および760μlの5×緩衝剤の溶液である。この5×緩衝剤は、250mM Tris−HCI、50mM NaCl、5mM MgCl、5mM DTT、5mM EDTA、および25%グリセロールから構成される。接着箔でこのプレートを覆い、37℃で一晩インキュベートした。Gemini SpectroMaxにおいて励起400nm、発光505nmでプレートを読み取った。
【0167】
(結果)
表3に示されるように、ルシフェラーゼsiRNAをトランスフェクトしたコントロール細胞と対照的に、2つのKIF14 siRNAのいずれのトランスフェクションの後に、3つ全ての細胞の型の有意な増殖阻害が存在した。
【0168】
【表3】

表4に示されるように、ルシフェラーゼsiRNA処理したHeLa細胞と対照的に、KIF siRNA処理したHeLa細胞においてカスパーゼ活性の有意な誘導が存在した。KIF siRNA処理したHeLa細胞における相対量のカスパーゼ活性は、alamarBlueTMアッセイにおいて観察した増殖阻害は、少なくとも部分的に、細胞死に起因することを示唆する。
【0169】
【表4】

(実施例5)
本実施例は、KIF14 siRNAのトランスフェクションが、HeLa細胞において異常な細胞質分裂および/またはアポトーシスを生じることを記載する。
【0170】
(細胞形態学免疫蛍光法)
100μlのDMEM+10% FBS(抗生物質を添加せず)中に96ウェル黒色壁で透明の底の組織培養処理したCostarプレート(Costar,カタログ番号3603)にてHeLa細胞を2000細胞/ウェルの密度で播種した。37℃で一晩インキュベーション後、トランスフェクション混合物を用いて各ウェルを処理して、合計10μlのOptimem(登録商標)(添加する前に周囲温度で15〜20分放置させた)中、最終濃度100nMのオリゴ二重鎖(Dharmacon,A4 preparation)、0.5μlのOligofectamineTM(Invitrogen,カタログ番号12252−011)を生成した。コントロールとして、HeLa細胞をOligofectamineTM単独でmockトランスフェクトした。37℃で4〜16時間後、90μlの温めた培地をさらに添加した。37℃で指定数の時間(24時間、48時間または72時間)の間、トランスフェクション混合物とともに細胞をインキュベートした。これらを1バット(vat)の−20℃のメタノール中に浸水する前に、このプレートからこの培地を吸引した。−20℃で10分後、メタノールを除去し、100μlの事前に作製した試薬の混合物を添加した。この混合物は、10ml TBST(0.2% Triton X−100(Sigma,カタログ番号T 9284)、5mg/ml BSA(Roche,カタログ番号100377)、および0.05% NaN3を含むTBS)、1:1000 DM1Aモノクローナル抗体(マウスIgG1,Sigma,カタログ番号T 9026)、1:1000 Alexa−Fluor(登録商標)488(Molecular Probes, カタログ番号A−11029、488nmヤギ抗マウス)、および10μlのDAPI(Sigma,カタログ番号D 9542)の1mg/mLストックから構成された。次いで、このプレートのTBSTでのリンスおよび画像化の前に、このプレートを4℃で1〜2時間保管した。
【0171】
(KIF14 siRNAの時間経過からの画像化データの作表のための手順)
免疫蛍光についての手順に従って、96ウェルプレートから得られた個々の40×視野からHeLa細胞を手動で数えた。各細胞を、以下の状態であるとして分類した:(1)細胞質分裂、(2)正常な外見の、他の相の有糸分裂、(3)異常な外見の、他の相の有糸分裂(三分裂中期、星状体または部分的星状体、遅れている染色体など)、(4)2つの核を有する間期(二核性)、(5)2つより多くの核を有する間期(多核性)、(6)アポトーシス(小胞形成、および/または丸まった染色質および凝集した染色質によって特徴付けられる)、または(7)その他。上記の分析のために1回より多く数えた細胞はなかった。1視野あたりの合計数もまた評価し、なお、1つの細胞として細胞質分裂のプロセスにおける二核性、多核性、または細胞を数えた。
【0172】
(結果)
表5は、細胞質分裂における全細胞の百分率、正常な有糸分裂における細胞の百分率、異常な有糸分裂における細胞の百分率、二核細胞の百分率、多核細胞の百分率、およびアポトーシス細胞の百分率を示す。これらの結果は、KIF14が、細胞質分裂に関与し得、RNA干渉を使用したKIF14の低下は、異常な細胞質分裂、二核細胞の形成、およびアポトーシスをもたらし得ることを示唆する。
【0173】
【表5−1】

【0174】
【表5−2】

(実施例6)
本実施例は、種々の効能のあるKIF14 siRNAのトランスフェクションが、正常細胞における明白な細胞質分裂よりも、腫瘍細胞においてより明白な細胞質分裂を生じることを記載する。
【0175】
導入遺伝子の過剰発現、抗体マイクロインジェクションおよびsiRNA媒介性遺伝子サイレンシングは、Rab6−KIFL、CHO1、およびMPHOSPH1(細胞質分裂を調節する3つの哺乳類N6キネシン(Hillら(2000)EMBO J.19(21):5711−9;Matulieneら(2002)Mol.Biol.Cell.13(6):1832−45;Abazaら(2003)J.Biol.Chem.278(3)):27844−52))の必須の役割を規定するために使用されている。これらの遺伝子産物の機能的分裂に関連する表現型は、アポトーシスの誘導、ならびに/または二核細胞および多核細胞の形成を含み、これらの全ては、細胞質分裂における欠損に起因する(Hillら(2000)EMBO J.19(21):5711−9;Matulieneら(2002)Mol.Biol.Cell.13(6):1832−45;Abazaら(2003)J.Biol.Chem.278(3)):27844−52)。本実施例において、細胞分裂のKIF14の欠乏の効果を調査するために、KIF14を標的とする複数のsiRNAを使用した。
【0176】
(細胞培養およびsiRNAトランスフェクション)
10%ウシ胎児血清(Gibco)を補充したDMEM中でHCT116細胞およびHeLa−S3細胞を培養した。ヒト腎上皮細胞(HRE)をCambrex(East Rutherford NJ)から得た。Cambrexの推奨に従い、HRE細胞を、REGMTMを補充した弾丸キット(bullet kit)(CC−3190)中で培養した。全て3つの細胞株を、5% COにて37℃で培養した。siRNAトランスフェクションのために、血清を含む適切な増殖培地2ml中、6ウェル(9.60cm)培養皿に60,000〜90,000細胞/ウェルの密度で細胞を播種し、通常の増殖条件下でインキュベートした。播種した後24時間で、70μlの無血清のOPTIMEM(登録商標)中に100pmolのsiRNAを希釈し、20μlの無血清のOPTIMEM中に希釈した5μlのOligofectamine(登録商標)(Invitrogen)トランスフェクション試薬を、上記希釈したsiRNAに添加した。室温で20分のインキュベーション後、siRNA:Oligofectamine複合体を、直接細胞に滴下した。次いで、トランスフェクション後の特定の時点で分析のために細胞収集するまでに、通常の増殖条件下で細胞をトランスフェクト複合体とともにインキュベートした。全てのsiRNA二重鎖は、Dharmacon(Lafayette Co.)より購入した。2つのKIF14 siRNA配列および1つのKSP siRNA配列を使用した。Tuschlルール(AAリーディングダイマー,ATGの下流>=75塩基,GC%範囲)およびFASTAヒットに対しての特異的スクリーニングを使用して、弱めとして設計したKIF14:204(5’AAACUGGGAGGCUACUUACTT 3’,配列番号8)を選択した。GC%、塩基対開始、およびリーディングダイマーを考慮して遺伝子を横断して、一様に分布するsiRNAを選択する疑似ランダム設計アルゴリズムによって、強めとして設計したKIF14:3053(5’GUUGGCUAGAAUUGGGAAATT 3’,配列番号23)を選択した。oligoengineTM siRNA設計ソフトウェアを使用して、KSP:119(5’GGACAACUGCAGCUACUCUTT 3’,配列番号24)を選択した。ルシフェラーゼsiRNA(5’CGUACGCGGAAUACUUCGAdTdT 3’,配列番号10)をコントロールとして使用した。
【0177】
(定量的PCR)
1% BMEを含むRLT緩衝液(Qiagen RNeasyキット)中に、トランスフェクトした細胞を溶解した。QIAshredderスピンカラム(Qiagen)を使用して、溶解物をホモジェナイズし、RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して、全細胞RNAを精製した。ランダムプライマーおよび逆転写試薬キット(Applied Biosystems)を使用してRNAからcDNAを合成した。TaqmanリアルタイムRT−PCR(SDS 7000システム,Applied Biosystems)を使用してKIF14およびグルクロニダーゼβ(hGUS)mRNA発現を測定した。KIF14(Hs00208408)およびhGUS(4310888E)のための遺伝子特異的プライマープローブを、Applied Biosystemsから得た。以下の計算を使用して、相対的KIF14発現を決定した:相対的発現=2−ΔΔCt(ここで、このΔΔCt=(Ct標的−CthGUSKIF14 siRNA−(Ct標的−CthGUSルシフェラーゼsiRNA)。
【0178】
(KIF14発現のウェスタンブロッティング分析)
トランスフェクトした細胞を、トリプシン処理し、遠心分離(5分、300×g)により収集し、そしてPBSで1回洗浄した。小さい体積(<100μl)の溶解緩衝液(20mM Tris HCl pH 7.6、150mM NaCl、1mM EDTA、1% TritonX−100、1×プロテアーゼインヒビターミックス(Roche Completed))中に細胞ペレットを再懸濁させ、氷上で10分インキュベートした。遠心分離(10分、10000×g)の後、上清を収集し、Bio−Rad DCタンパク質アッセイキットを使用して、タンパク質濃度を決定した。25μgの各サンプルを、Bio−Rad Ready−Gels(7.5%アクリルアミドまたは4〜15%アクリルアミド勾配)においてSDS−PAGEにかけた。製造者の取扱説明書に従って、Bio−Rad Mini Trans−Blot(登録商標)Transfer Cellを使用して、タンパク質をニトロセルロース膜にトランスファーした。5%無脂肪ドライミルクを含むTBS−T緩衝液(150mM NaCl、10mM Tris−HCl pH 7.6、0.1% Tween−20)(ブロッキング緩衝液)中で撹拌しながら、膜を室温で30分間ブロッキングした。次いで、ブロッキング緩衝液中に1:1000で希釈したアフィニティー精製したポリクローナル抗KIF14(Abcam Inc.ab3746)とともに撹拌しながら室温で90分間、膜をインキュベートした。TBS−T中で3回膜を洗浄し、次いで、再度ブロッキングした。ブロッキング緩衝液中に1:10000で希釈したHRP−結合体化ヤギ抗ウサギIgG(Zymed)とともに撹拌しながら室温で45分間、膜をインキュベートした。TBS−T中で3回膜を洗浄した後、化学発光検出試薬(ECL−plus,Amersham)中で膜をインキュベートし、CCDカメラ(Kodak Image Station 440CF)を使用して画像を取り込んだ。
【0179】
(細胞周期分析)
細胞周期プロフィールを分析するため、その後のフローサイトメトリー分析のための接着細胞および浮遊細胞の両方を得るために、細胞に付随する培地とともに、約1×10〜5×10細胞を収集し、遠心分離によりペレットにした。200μlのPBS中に細胞を再懸濁させ、1mlの100%冷エタノールの添加により、この細胞を氷上で30分間固定した。次いで、細胞をペレットにし、そして凝集塊を破壊するようにPBSで1回洗浄した。10mg/mlのヨウ化プロピジウムおよび1mg/mlのRNaseAを含むPBS中でエタノール固定した細胞を37℃で30分間固定した。各サンプルについて、FACSCaliburTMフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用して、10,000イベントを収集し、ヨウ化プロピジウムの取り込みを、DNA含有量のマーカーとして使用した。FlowJoサイトメトリー分析ソフトウェアバージョン4.0.2を使用して、細胞周期プロフィールを分析した。
【0180】
(BrdU取り込みアッセイ)
HeLa−S3およびHREを、100μlの増殖培地中、96ウェルプレート(3×10細胞/ウェル)に別々に播種した。播種した後24時間で、種々のsiRNAオリゴを用いて細胞をトランスフェクトした。上記の6ウェルのプロトコールに従って、トランスフェクトを行った。200μlの培地に添加したsiRNA:オリゴフェクタミン複合体の量を、50nM/ウェルの最終siRNA濃度を維持するように調整した。比色BrdU ELISA(Roche Applied Science)を使用して、トランスフェクション後24時間、48時間および72時間に細胞増殖を測定した。製造者のプロトコール(Roche)に従って、細胞固定およびDNA変性の前に、細胞を10nM BrdUで、37℃で2.5時間パルスした。100μlのペルオキシダーゼ結合体化モノクローナル抗BrdU−POD抗体(1:100に希釈した)(Roche)とともに固定した細胞を室温で90分間、インキュベートした。次いで、250μlの1×PBSで細胞を3回洗浄し、明白な色の差異の出現がポジティブコントロールとネガティブコントロールとの間で検出されるまで、この細胞を室温で100μlの基質溶液(Roche)とともにインキュベートした。分光光度計を使用して、各サンプルの光発光を370nm(492nmの波長を基準)にて測定した。
【0181】
(結果)
KIF14の欠乏は、表6に示されるように、細胞質分裂の欠陥と関連し、そしてsiRNA効能の機能である腫瘍選択的表現型を誘導する。HeLa細胞およびHRE細胞を、100nMの、4つの別々のsiRNA二重鎖(ルシフェラーゼ、KIF14:20、KIF14:3053、,およびKSP:119)でトランスフェクトした。KIF14特異的siRNAでトランスフェクトしたサンプルを、トランスフェクション後72時間で分析し、KSP特異的siRNAでトランスフェクトしたサンプルを、トランスフェクション後48時間で分析した。
【0182】
【表6】

特定のsiRNAの効能および終末点での効力に依存するKIF14サイレンシングに応答した2つの特異的な表現型が観察された。弱いsiRNA(例えば、KIF14:204)は、約60〜約80%のKIF14サイレンシングを生じ、二核細胞の増加によって達成されたトランスフェクション(表6)後3日で最大となるアポトーシスを誘発した。この表現型は、ミッドボディ(midbody)形成の後に細胞質分裂を完了できなかったことと一致する(Abazaら(2003)J.Biol.Chem.278(3):27844−52)。強いsiRNA(例えば、KIF:3053)は、約80%より大きいKIF14サイレンシングを生じ、四倍体(4N)および倍数体(>4N)のDNA含有量(表6)および多核細胞を示す細胞の顕著な蓄積を誘導した。強いKIF14 siRNAでトランスフェクトの後の細胞死の証拠は、表6に示されるより短期間の実験では見られなかったが、他の実験は、このような細胞が、コロニー形成能力の有意な減少を有したことを示した。細胞分裂(核内倍加)の非存在下で連続性染色体の複製は、HeLa細胞(機能的なTP53調節性四倍体チェックポイントおよびRB1調節性四倍体チェックポイントを欠損する)のような細胞で起き得、これは、4N DNA含有量でG1に入った細胞の増殖をブロックする(Hillら(2000)EMBO J.19(21):5711−9)。これらの倍数体細胞は、長期の増殖を持続しないことが予期され、コロニーを形成しないようである。従って、弱いKIF14 siRNAおよび強いKIF14 siRNAの両方によって誘発される表現型は、細胞質分裂におけるKIF14に対する役割を示す。
【0183】
明白な細胞質分裂欠陥および/またはアポトーシスはまた、KIF14の欠陥の後、他の腫瘍細胞(SW480、HCT116およびA549)において観察された。しかしながら、正常なヒト腎上皮細胞(HRE)におけるKIF14のsiRNA媒介性の欠陥は、さらにより控えめな効果を誘導した:3日後、二核細胞の約20%の増加および細胞増殖全体において約50%の低下が存在した。従って、細胞質分裂に対するKIF14の効果は、正常細胞よりも試験した腫瘍細胞においてより明白であった。KIF14 mRNAおよびタンパク質のサイレンシングは、両方の細胞型において類似していたことから、この腫瘍細胞の選択性は、KIF14欠乏における差異に起因しなかった。この選択性は、KSP(KIF11)(表6)または細胞質分裂(KNSL5、RAB6−KIFL、およびMPP1)、紡錘体形成もしくは染色体移動(MCAK、CENPE)における公知の役割を有する他のキネシンの欠乏よりもKIF14の欠乏について明白であった。
【0184】
KIF14欠乏における腫瘍細胞選択性についての理由は、現在理解されていない。文献からの1つのもっともらしい説明は、大部分の腫瘍細胞が、TP53/RB1調節性四倍体チェックポイントを欠如するというものである。
【0185】
(実施例7)
本実施例は、KIF14モータードメインの発現および機能的特徴づけを記載する。
【0186】
(材料)
PfuポリメラーゼおよびE.coli BL21(DE3)を、Stratageneより入手した。T4 DNAリガーゼ、NdeIおよびXhoIを、New England Biolabsより入手した。アンピシリン、カルベニシリンを、Sigmaより入手した。pET22bを、Novagenより購入した。E.coli TOP10をInvitrogenより購入した。MgCl、Tris−Cl、NaCl、イミダゾール、β−メルカプトエタノール、リゾチーム、PIPES、BSA、EGTA、およびNa−ATPを、Sigmaより購入した。Tweenを、Aldrichより購入し、DTTを、Promegaより購入し、そしてKClを、Fisherより購入した。タキソール(Taxol(登録商標))およびチューブリン(微小管を形成するのに使用される)を、Cytoskeletonより購入した。キナルジンレッドを、Acrosより購入した。
【0187】
(K14モータードメインのクローニング)
V342〜K720の範囲におよぶKIF14モータードメイン(MD)(配列番号4)をコードするDNA配列を、pBluescriptプラスミドベクターにクローン化されたKIF14のcDNA(配列番号1)からのPCRにおいて、Pfuポリメラーゼにより増幅した。そのDNAを増幅するために使用したプライマーは、5’末端においてNdeI部位を組み込み、そして3’末端においてXhoI部位を組み込んだ隣接配列を有した。(プライマー1:5’−GTCTAGACATATGGTTCAGAACACCTCTGCA−3’(配列番号11);プライマー2:5’−TGCCTCGAGCTTCAATTCTCTAATTAACTT−3’(配列番号12))。内部のNdeI重複を、部分伸長によるスプライシング(Splicing by Overlap Extendion)(SOE)として公知の変異誘発方法を使用して破壊した。得られたフラグメントを、制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびXhoIで消化し、そして同様に処理したpET22bプラスミドベクターに連結した。このライゲーション混合物を、化学的にコンピテントなE.coli TOP10細胞に形質転換し、細胞をアンピシリンで選別し、そして所望のクローンを制限断片長多型(RFLP)およびジデオキシヌクレオチド配列決定法により、スクリーニングした。単一のポジティブクローンを、PCRの鋳型として2つのさらなるプライマー(プライマー3:5’−GTCTAGACATATGGTAGAGAATAGTCAAGTG−3’(配列番号13);プライマー4:5’−TGCCTCGAGATCTTCATTTACTTTAGCAAT−3’(配列番号14)とともに使用して、V342〜D710(配列番号5)、V354〜K720(配列番号6)、およびV354〜D710(配列番号7)に広がる、より小さな3つのMDをコードするDNAを産生した。オリジナルのようにして全てを消化し、連結し、そしてスクリーニングして、pET22bプラスミドベクター中にある単一のポジティブクローンを生成した。このpET22bベクターは、遺伝子にDNA配列を付加し、その遺伝子は、そのC末端において6個のヒスチジン残基を有する発現タンパク質を生じる。
【0188】
(KIF14 モータードメインの発現)
4つ全てのクローンをE.coli BL21(DE3)細胞に形質転換し、遺伝子発現について単一のコロニーを選別した。培養物(0.5L)を、新鮮な飽和培地を用いて1%の最終容量まで接種した後、2mM MgClおよび50μg/mLカルベニシリンを補充したLuria−Bertani培地中で、18℃にて50時間増殖させた。
【0189】
(KIF14モータードメインの精製)
精製手順全てを、4℃にて実行した。細胞を溶菌緩衝液(20mM Tris−HCl(pH8.0)、300mM NaCl、0.1% Tween、10mMイミダゾール、2mM MgCl、および5mM β−メルカプトエタノール)に懸濁し、それにリゾチームを1mg/mLまで添加し、そして4℃で10分間反応させた。細胞を、Fisher Sonicator中でマイクロチップを使用して各々30秒間の4回の振動で溶菌した。溶解産物を、60,000×gで30分間遠心分離し、Qiagen Nickel−NTA Superflow樹脂(床体積 0.25mL)に120分間バッチ結合させることにより、澄ませた。樹脂を、低速の遠心分離により回収し、その樹脂を、20カラム容量の溶菌緩衝液で洗浄するBio−Rad 使い捨てカラムに移した。タンパク質を、20mM、50mM、100mM、150mMおよび250mMのイミダゾールを含有する溶菌緩衝液の5カラム容量の勾配の工程にてその樹脂から溶出させた。各々の画分の試料(10μL)を、4〜20% Tris−グリシン SDS−PAGEゲル(Novex)で分析した。少なくとも50%のKIF14 MD (44.0kDA〜41.6kDAの間の分子量)を含有する画分を、プールし、400容量の20mM Tris(pH 8.0)、50mM KCl、2mM MgCl、0.1% Tween、1mM DTTに対して透析し、そしてCentricon−30(Amicon)中で5倍に濃縮した。タンパク質の定量は、Bradford法に従った。試料を、5つ〜6つのアリコートに分割し、液体窒素N中で急速凍結し、−80℃にて貯蔵した。
【0190】
(KIF14モータードメインアッセイ)
KIF14 MDを、微小管(MT)依存性ATP加水分解について、キナルジンレッド色素(無機リン酸塩(Pi)に結合した場合、540nmの光を吸収する)を使用してPi放出の速度を測定することにより、アッセイした。アッセイ(50μL)は、50mM K−PIPES (pH 6.9)(90mM KClを含有する)、1mM EGTA(pH 8.0)、1mM DTT、100μg/mL BSA、2mM MgCl、1mM Na−ATP(pH 7.0)、0.25〜5μM MT(等モル量のタキソール(登録商標)を含む)、および20〜200nM KIF14 MD酵素を含有した。反応を酵素の添加により開始し、決まった時間間隔における50μLの1.8M KCl、50mM EDTAの添加によりその反応をクエンチするまで、室温にて進行させた。これに、150μLのキナルジンレッド色素溶液(0.07mg/mL キナルジンレッド、0.09% ポリビニルアルコール、4.1mM モリブデン酸アンモニウム、および380mM HSO)を添加した。室温で10分間インキュベーションした後、540nMにおける吸収を、Molecular Devices Microtiter プレートリーダー(plate reader)上で読取った。その反応の直線(定常状態)期を使用して、速度を計算した。
【0191】
(結果)
表7は、4つの異なるKIF14 MDクローンを発現するE.coli細胞から調製される部分精製KIF14 MDタンパク質抽出物により、タキソール安定化微小管の速度論的利用性を示す。k(obs)(/分)は、生成物が形成される酵素の量(μM)によって除算した速度(μM/分)を指す。放出された[Pi]とは、形成された生成物の量(μM)を指し、速度の計算において分子を形成する。KIF14 MDタンパク質全ては、微小管依存性のATP加水分解活性を示した。V342〜K720(配列番号4)およびV354〜K720(配列番号6)は、上位の(かつ匹敵する)速度効率を示した。これらのデータは、以前に同定された他のキネシン(例えば、Eg5(Mayerら(1999)Science 286:971−974)に対して配列相同性を有するKIF14 MDタンパク質は、他の公知のキネシンタンパク質に特有の微小管依存性ATP加水分解活性を有することを証明する。
【0192】
(表7.KIF14 MDによるタキソール安定化微小管の速度論的利用性)
【0193】
【表7】

表8に、上記KIF14 MDの2つのうちの1つに速度論的特徴を、他の一群のヒトキネシンモータードメインと比較したものを示す。
【0194】
(表8.ヒトキネシンモータードメインの速動性特性)
【0195】
【表8−1】

【0196】
【表8−2】

KIF14 V342〜K720(配列番号4)によるタキソール安定化微小管利用の速度論的パラメータを、ミこのデータを得、カエリス−メンテン式に当てはめることにより、21.3+/−3.5(標準偏差)のkcatおよび2.6+/−1.1(標準偏差)のkを生じた。
【0197】
(実施例8)
本実施例は、KIF14モータードメイン V342〜K720(配列番号4)の微小管の使用の効率の最適化を記載する。
【0198】
(KIF14モータードメインの2段階精製)
KIF14モータードメイン V342〜K720(配列番号4)の透析工程までの精製を、実施例7に記載した。一晩の透析物を、陽イオン交換カラム緩衝液(50mM HEPES(pH6.8)、1mM MgCl、1mM EGTA、1mM DTT)に入れた。試料を、平衡化された5mL HiTrap SP HPに適用し、10カラム容量の緩衝液で洗浄し、次いで、12カラム容量をより多い緩衝液中の750mM KClに対する直線勾配により2mL/分の流速にて溶出させた。画分(2mL)を、SDS−PAGE(10%)により分析し、純度が90%より高いKIF14 MDを有する画分を、プールし、Centricon−30で濃縮し、そして10%スクロース中で−80℃にて貯蔵した。この手順により、純度が95%より高い、収量0.4mg/LのKIF14 V342〜K720モータードメイン(配列番号4)を得た。
【0199】
(KIF14モータードメイン活性化のためのpHおよびイオン強度の最適化)
pHおよびイオン強度を最適化するために、モータードメインアッセイを、以下の改変を伴って、実施例7に記載されるとおりに実行した。pHの最適化について、50mM MES緩衝液系列(5.5〜6.9のpH範囲にわたり、各々一定のイオン強度を有する)を、使用した。イオン強度の最適化について、その緩衝液は、50mM MES(pH5.9)(20mM KClを含有)であり、その緩衝液に、20〜120mMのさらなるKClを添加した。KIF14 V342〜K720 MDタンパク質(配列番号4)の活性のためのpH最適値は、約5.9であることを決定した。KIF14 V342〜K720 MD(配列番号4)活性のための緩衝液の最適なイオン強度は、約40mM KClであることが見出された。
【0200】
pHおよびイオン強度の最適化により、KIF14 V342〜K720 MDタンパク質(配列番号4)による微小管の増加した使用効率が得られた。例えば、最適化されていない条件下(K−PIPES、pH6.7、90mM KCl)で、V342〜K720モータードメイン(配列番号4)についてのkcat/kは224であり、それと比較して最適化された条件(MES、pH6.0、40mM KCl)は、13.2であった。
【0201】
(Mg2+およびATPへのKIF14 モータードメイン結合の特徴付け)
モータードメインアッセイは上記のとおりであり、ただし、50mM MES(pH6.0)、添加された20mM KClを使用したこと、そしてMgCl濃度を、0〜4mMに変化させるか、またはATP濃度を0〜1mMに変化させた。KIF14 V342〜K720(配列番号4)タンパク質の活性のためのMgClの最適な濃度は、1mMであることが見出された。最大速度に到達するための最小限のATP濃度は、250mMであることが決定された。
【0202】
(KIF14モータードメイン活性に対する温度の効果)
モータードメインアッセイは、上記のとおりであり、50mM MES(pH6.0)、添加された20mM KClを使用し、温度変化を、21℃〜37℃で変動させた。KIF14 V342〜K720 MD(配列番号4)による生成物形成の速度は、温度を21℃から37℃に増加した場合、4.1倍に増加することが観察された。
【0203】
(高スループットスクリーニングについてのK14モータードメインの適合性)
モータードメインアッセイは、上記のとおりであり、50mM MES(pH6.0)、添加された20mM KCl、0.5μM MTを37℃の温度で使用し、酵素濃度を0〜10mMに変動させた。シグナル対バックグラウンド比(酵素の非存在下に対する酵素の存在下において90分間のインキュベーション後に、形成されたPiの量として計算した)を、種々の濃度のV342〜K720 モータードメイン(配列番号4)を使用して決定した。それを表9に示す。高スループットスクリーニング(HTS)を可能にするのに十分に高いバックグラウンドに対するシグナルが、低濃度の酵素において得られた。さらには、V342〜K720 モータードメイン(配列番号4)は、少なくとも90分間の反応において安定であった。
【0204】
(表9.種々のKIF14モータードメインにおけるシグナル対バックグラウンド比)
【0205】
【表9】

(実施例9)
本実施例は、KIF14モータードメインの活性の調節因子の同定を記載する。
【0206】
(KIF14調節因子のスクリーニング)
実施例7に記載されたATPアーゼアッセイ(実施例8で最適化された)を、KIF14 V342〜K720 MDタンパク質(配列番号4)の活性を調節する化合物についてスクリーニングするのに使用した。試験したいくつかの化合物は、KIF14 V342〜K720 MDタンパク質(配列番号4)の候補インヒビターであることが見出され、それらのうちの4つは、表10に示されるとおりに、関連するキネシンモータードメインKSP(配列番号15)、KIF3A(配列番号16)、uKHC(配列番号17)、nKHC(配列番号18)、CENP−E(配列番号19)、MKLP−1(配列番号20)、KIF1B(配列番号21)およびMCAK(配列番号22)と比較して、KIF14 MDに対する選択的阻害活性を有した。これら4つの化合物は、1,1’−ビフェニル−4−カルバルデヒドチオセミカルバゾン(化合物1)、4−イソプロピルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物2;例えば、米国特許第3,849,575号を参照のこと)、4−シクロヘキシルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物3)、および4−イソプロピル−3−ニトロベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(化合物4;例えば、Saripinarら(1996)Arzneimittel−Forschung 46(II):824−8を参照のこと)であった。
【0207】
(表10.4つのKIF14 MDインヒビターの特徴付け)
【0208】
【表10】

(Hela細胞における候補KIF14調節因子の特徴付け)
スクリーニングにおいて同定された4つの候補KIF14インヒビター(化合物1〜4)の効果を、実施例4に記載される細胞増殖のためのalamarBlueTMアッセイを使用して、Hela細胞において試験した。Hela細胞を、96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3606)において、10%DMEM中で1ウェルあたり2000/細胞の密度で20時間プレーティングし、その後、一連の希釈物(200μLの培地に添加されるKIF14阻害化合物の11倍濃縮溶液20μL)中のKIF14阻害化合物で処理した。その細胞を、37℃で72時間インキュベートし、その後、1ウェルあたり100μLの培地を、10%(vol/vol) alamarBlueTM試薬で置き換えた。37℃で2時間インキュベーションした後、そのプレートを、SpectroMax Gemini分光蛍光計(励起 544nm、発光 590nm)で読み取った。バックグラウンド値(細胞を含まないウェルより平均化した)を、各々の読み取り値より減算した。その読み取り値を、DMSOコントロールを使用した0%阻害(または、100%の生存度)に対して正規化し、そして候補KIF14調節因子の最大阻害濃度を使用した100%阻害(または0%生存度)に対して正規化した。試験した3つの候補KIF14調節因子は、表11に示されるとおりに、1.0μMと5.0μMとの間のIC50を示した。
【0209】
(表11.候補KIF14調節因子によるHela細胞における増殖阻害)
【0210】
【表11】

(A2780細胞における候補KIF14調節因子の特徴付け)
スクリーニングにおいて同定された4つの候補KIF14インヒビター(化合物1〜4)の効果を、実施例4に記載される細胞増殖のためのalamarBlueTMアッセイを使用して、A2780細胞において試験した。A2780細胞を、96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3606)において、RPMI1640(10% FBS、1% Pen/Strep、0.01mg/ml インスリン)中で、1ウェルあたり4000/細胞の密度で16時間プレーティングし、その後、処理した。化合物の希釈プレートを、DMSO中の3倍連続希釈系列を使用して、10mMのストック溶液から調製した。各濃度の1.2μLのアリコートを、0.6mLの培地中へ移した。各濃度の100μLのアリコートを、化合物を含まない培地100μLをすでに含む適切なウェルに添加した。37℃で48時間インキュベーションした後、20μLのalamarBlueTMを各ウェルに添加した(10% vol/vol)。37℃でさらに6時間インキュベーションした後、そのプレートを、SpectroMax Gemini分光蛍光計(励起 544nm、発光 590nm)で読み取った。バックグラウンド値(細胞を含まないウェルより平均化した)を、各々の読み取り値より減算した。その読み取り値を、DMSOコントロールを使用した0%阻害(または、100%の生存度)に対して正規化し、そして公知のコントロール化合物を使用した100%阻害(または0%生存度)に対して正規化した。試験した4つの候補KIF14調節因子は、表12に示されるとおりに、10000nMと3600nMとの間のEC50を示した。
【0211】
(表12.候補KIF14調節因子によるA2780細胞における増殖阻害)
【0212】
【表12】

本発明の好ましい実施形態が、例示されかつ記載されているが、種々の変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその中でなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0213】
本発明の上記の局面および付随する利点の多くは、上記詳細な説明を添付の図面とともに考慮して参照することによって、より良く理解されるので、より容易に認識される。
【図1】図1は、実施例2に記載されるような、漸増する時間量の間に一群の増殖因子で処理した種々の細胞株における遺伝子調節パターンを示す。腫瘍細胞(MCF7、HT29)および正常細胞(HMEC、SKMC)が、血清除去され、その後、増殖因子であるヒレグリン、インスリン、IGF1、FGF、およびEGFを用いて0.5時間、2時間、6時間、18時間、または24時間刺激された。白棒は、アップレギュレートされた遺伝子を示す。黒棒は、ダウンレギュレートされた遺伝子を示す。各列は、種々の増殖因子で処理された細胞を、上向きに増加する処理時間とともに示す。データは、hu25kアレイ上に存在するキネシン配列によりクラスター化された。有糸分裂機能を有するとしてLocusLinkにおいて注釈されたキネシンが、菱形で示されている。輸送機能として注釈されたキネシンが、四角で示されている。有糸分裂機能および輸送機能の両方を有すると注釈されたキネシンが、円形で示されている。矢印は、KIF14を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質の調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
標的タンパク質を候補因子と接触させる工程;および
該候補因子が該標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定する工程;
を包含し、該標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高いアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、(a)前記標的タンパク質を、第一濃度の前記候補因子と接触させ、該標的タンパク質の第一の活性レベルを測定し;(b)該標的タンパク質を、第二濃度の該候補因子と接触させ、該標的タンパク質の第二の活性レベルを測定し;該標的タンパク質の第一の活性レベルと第二の活性レベルとの間の差異は、該候補因子が該標的タンパク質の活性を調節することを示す、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記標的タンパク質を、インビボで前記候補因子と接触させる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記標的タンパク質を、インビトロで前記候補因子と接触させる、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、微小管刺激ATPアーゼアッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、結合アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、微小管結合アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、微小管滑動アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、高スループットスクリーニングアッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項10】
請求項1に記載方法であって、蛍光、発光、放射能、または吸光度を、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項11】
請求項3に記載の方法であって、前記標的タンパク質を前記候補因子とインビボで接触させる工程は、該標的タンパク質を細胞中で発現させる工程を包含する、方法。
【請求項12】
請求項3に記載の方法であって、細胞生存度アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項13】
請求項3に記載の方法であって、細胞形態アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項14】
請求項3に記載の方法であって、細胞増殖アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項15】
請求項3に記載の方法であって、細胞周期分布アッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項16】
請求項3に記載の方法であって、アポトーシスアッセイを、前記候補因子が前記標的タンパク質の活性を調節するか否かを決定するために使用する、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記標的タンパク質は、配列番号2において提供されるアミノ酸配列、配列番号3において提供されるアミノ酸配列、またはATPアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメントを含む、方法。
【請求項18】
細胞増殖を調節する方法であって、該方法は、
細胞に、有効量の標的タンパク質の活性の調節因子を投与する工程
を包含し、該標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記調節因子を、インビボで細胞に投与する、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記調節因子は、インヒビターである、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記インヒビターは、RNAインヒビターである、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記インヒビターは、KIF14 RNAインヒビターである、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記KIF14 RNAインヒビターは、配列番号8において提供される配列、配列番号9において提供される配列、または配列番号23において提供される配列を含む、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記インヒビターは、セミカルバゾンである、方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、前記インヒビターは、チオセミカルバゾンである、方法。
【請求項26】
細胞過剰増殖障害を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、
細胞過剰増殖障害を有する被験体に、治療上有効な量の標的タンパク質の活性のインヒビターを投与する工程、
を包含し、該標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記細胞過剰増殖障害は、癌である、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記癌は、乳癌である、方法。
【請求項29】
請求項26に記載の方法であって、前記調節因子は、インヒビターである、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記インヒビターは、RNAインヒビターである、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記インヒビターは、KIF14 RNAインヒビターである、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記KIF14 RNAインヒビターは、配列番号8、配列番号9、または配列番号23において提供される配列を含む、方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法であって、前記インヒビターは、セミカルバゾンである、方法。
【請求項34】
請求項29に記載の方法であって、前記インヒビターは、チオセミカルバゾンである、方法。
【請求項35】
標的タンパク質の活性のインヒビターを用いる処置のための候補被験体を同定するための方法であって、該方法は、
(a)被験体の異常に増殖する細胞における標的タンパク質の発現レベルを測定する工程であって、該標的タンパク質は、配列番号2または配列番号3において提供される配列に対して80%より高い配列同一性を有する配列を含む、工程;および
(b)該異常に増殖する細胞における該標的タンパク質の発現レベルがコントロール細胞においてよりも有意に高い場合に、該被験体を、該標的タンパク質の活性のインヒビターを用いる処置のための候補被験体として同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記異常に増殖する細胞は、乳癌細胞である、方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法であって、前記標的タンパク質は、配列番号2において提供されるアミノ酸配列、配列番号3において提供されるアミノ酸配列、またはATPアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメントを含む、方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、前記異常に増殖する細胞における前記標的タンパク質の発現レベルを、mRNAレベルにて測定することにより決定する、方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法であって、前記候補被験体を、前記標的タンパク質の活性のインヒビターで処置する工程をさらに包含する、方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−515945(P2007−515945A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533541(P2006−533541)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/017234
【国際公開番号】WO2004/109290
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505441904)ロゼッタ インファーマティックス エルエルシー (9)
【出願人】(505441661)メルク アンド カンパニー, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】