説明

キャスタ装置及び移動体

【課題】本発明は、制動キャスタを移動体本体に容易に装着できるキャスタ及び移動体の提供を目的とする。
【解決手段】キャスタ装置1は、4つの制動キャスタ2と、制動操作部材4と、制動キャスタ2と制動操作部材4とを連結した4つの連結部材3とを備えている。制動キャスタ2は、夫々、制動部材と、制動状態の車輪24を制動解除状態に解除操作する移動可能なシャフト部材6とを備える。制動操作部材4は、制動操作部材4の回動操作に際して、連結部材3をシャフト部材6に対して移動させてシャフト部材6を制動状態位置から制動解除状態位置に移動できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン、椅子等の移動体を移動させるキャスタ装置及びそのキャスタ装置を有する移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャスタ装置を有する移動体は、広く知られている。このような移動体として、例えば特許文献1に提案されたものがある。この移動体は、ワゴンから構成されており、各制動キャスタに連結されたワイヤーを、ワゴンの支柱に通すようにして所定位置まで延ばして一箇所に集め、それらのワイヤーを同時に、引き操作することにより、各制動キャスタにおける制動状態になった車輪を制動解除状態に操作できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、ワイヤーを、ワゴンの支柱に通すように配設するため、制動キャスタをワゴン本体(移動体本体)に装着するのに時間を要する。又、ワイヤーを通す支柱等を有しないものでは、ワイヤーが外部に露出してしまい、外観を損なう。
【0005】
本発明は、制動キャスタを移動体本体に容易に装着できるキャスタ及び移動体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、移動体を移動させるキャスタ装置であって、少なくとも3つの制動キャスタと、それらの制動キャスタそれぞれを制動操作するための制動操作部材と、前記制動キャスタ夫々と制動操作部材とを連結した複数の連結部材とを備え、前記制動キャスタは、夫々、車輪を有する制動キャスタ本体と、前記車輪の回転を制動する制動部材と、前記制動部材により制動状態にされた車輪を制動解除状態に解除操作するシャフト部材とを備え、前記シャフト部材は、前記制動キャスタ本体に対して移動可能とされているとともに、その移動に際して、前記車輪を制動解除状態にし、前記連結部材は、夫々、その一端側に、前記シャフト部材と移動可能に連結されているとともに、そのシャフト部材に対する当該連結部材の移動に際してそのシャフト部材を、前記制動状態における制動状態位置から前記車輪を制動解除状態にした制動解除状態位置までの範囲に渡って移動させるシャフト移動手段を備え、前記制動操作部材は、前記連結部材夫々の他端側と回動自在に連結されているとともに、連結部材移動操作手段を備え、前記連結部材移動操作手段は、前記連結部材に対する制動操作部材の回動に際して、前記連結部材をシャフト部材に対して移動させて前記シャフト部材を前記制動状態位置から制動解除状態位置に移動できるように構成されていることを特徴とするキャスタ装置を提供する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1のキャスタ装置において、前記キャスタ装置は、前記制動キャスタ本体夫々に保持された板状の載置台を、更に備え、前記制動操作部材は、前記載置台の下方側に配設されているとともに、制動操作部材本体と、その制動操作部材本体を回動操作する操作片とを備え、前記載置台は、その下面側に、前記操作片を、前記シャフト部材の制動状態位置と制動解除状態位置との夫々に対応する位置に係脱自在に係止する操作片用係止手段を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2のキャスタ装置において、前記制動操作部材は、制動操作部材本体と、その制動操作部材本体を回動操作する操作片とを備え、前記制動操作部材本体は、前記連結部材夫々に設けられた摺動片を摺動させる長溝を備え、前記長溝は、その長手方向の一端から他端にかけて、前記制動操作部材本体の回動の中心からの距離が周方向に漸次短くなるように構成され、前記連結部材移動操作手段は、前記長溝から構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャスタ装置において、前記制動操作部材本体は、前記少なくとも3つの制動キャスタのほぼ中央位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、上記課題を解決するため、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャスタ装置と、そのキャスタ装置に載置された移動体本体とを備えていることを特徴とする移動体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、制動キャスタに、制動部材により制動状態にされた車輪を制動解除状態に解除操作するシャフト部材を備え、連結部材は、その一端側に、シャフト部材を、制動状態における制動状態位置から車輪を制動解除状態にした制動解除状態位置までの範囲に渡って移動させるシャフト移動手段を備える。又、制動操作部材は、連結部材夫々の他端側と回動自在に連結されているとともに、連結部材に対する制動操作部材の回動に際して、連結部材をシャフト部材に対して移動させてシャフト部材を制動状態位置から制動解除状態位置に移動できる連結部材移動操作手段を備えている。
【0012】
これにより、制動操作部材を連結部材に対して一方向側へ回動させれば、連結部材を介してシャフト部材を制動状態位置から制動解除状態位置に移動させることができ、制動状態の車輪を制動解除状態にできる。
【0013】
従って、従来のワイヤーを用いたもののようにワイヤーを支柱に通す必要のないものにでき、制動キャスタを移動体本体に容易に装着できる。しかも、支柱を有しないものに用いてもワイヤーが外部に露出するおそれのないものにでき、種々の移動体に幅広く適用できる。
【0014】
請求項2によれば、キャスタ装置は、制動キャスタ本体夫々に載置された板状の載置台を備え、そして、制動操作部材は、載置台の下方側に配設されているため、例えば載置台に、移動体本体を載置すれば、キャスタ装置を移動体本体に容易に装着できる。
【0015】
又、載置台は、その下面側に、操作片を、シャフト部材の制動状態位置と制動解除状態位置との夫々に対応する位置に係脱自在に係止する操作片用係止手段を備えているため、シャフト部材を、制動状態位置、制動解除状態位置の夫々に係止した状態に維持しておくことができ、不意に制動解除状態位置から制動状態位置に、或いは制動状態位置から制動解除状態位置に動くようなことのないものにできる。
【0016】
請求項3によれば、制動操作部材本体は、連結部材夫々に設けられた摺動片を摺動させる長溝を備え、また、長溝は、その長手方向の一端から他端にかけて、制動操作部材本体の回動の中心からの距離が周方向に漸次短くなるように構成されている。
【0017】
これにより、例えば制動操作部材本体を回動させると、連結部材夫々を制動操作部材本体の回動の中心側に引き寄せることができ、連結部材夫々を制動キャスタ本体から制動操作部材本体側に移動させることが可能になる。そして、その移動に際し、シャフト部材を、制動状態位置から制動解除状態位置に移動操作できる。従って、各制動キャスタのシャフト部材を、容易に操作できる。
【0018】
請求項4によれば、制動操作部材本体は、制動キャスタのほぼ中心位置に配設されているため、同じ長さの連結部材を用いることができ、容易に低コストで製作できる。
【0019】
請求項5の移動体によれば、移動体本体を、キャスタ装置に載置すれば良く、従来のワイヤーを用いたもののようにワイヤーを支柱に通す必要のないものにでき、移動体本体とキャスタ装置との組み付けを容易なものにでき、容易に低コストで製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のキャスタ装置の載置台を省略した平面図である。
【図2】本発明のキャスタ装置の要部の断面図である。
【図3】本発明のキャスタ装置の制動キャスタの一部の斜視図である。
【図4】本発明のキャスタ装置の制動キャスタの要部の分解斜視図である。
【図5】操作片用係止手段の正面図である。
【図6】制動操作部材を回動操作してシャフト部材を制動状態位置から制動解除状態位置に移動させた状態のキャスタ装置の載置台を省略した平面図である。
【図7】シャフト部材が制動解除状態位置に配置した状態の要部の断面説明図である。
【図8】シャフト部材が制動解除状態位置に配置した状態の要部の斜視図である。
【図9】本発明のキャスタ装置を有する移動体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のキャスタ装置の載置台を省略した平面図、図2は、本発明のキャスタ装置の要部の断面図、図3は、キャスタ装置の制動キャスタの一部の斜視図、キャスタ装置の制動キャスタの要部の分解斜視図である。
【0022】
この実施形態のキャスタ装置1は、4つの制動キャスタ2と、それらの制動キャスタ2夫々を制動操作する制動操作部材4と、それらの制動キャスタ2夫々と制動操作部材4とを連結した複数(この実施形態では、4つ)の連結部材3と、4つの制動キャスタ2上に保持された板状の載置台5とを備えている。
【0023】
4つの制動キャスタ2は、夫々、同構成を採っており、各制動キャスタ2は、図2、図4に示すように、制動キャスタ本体20と、後述の制動キャスタ本体20の車輪24の回転を制動する制動部材と、制動部材により制動状態にされた車輪24を制動解除状態に解除操作するシャフト部材6とを備えている。
【0024】
制動キャスタ本体20は、枠体21と(図4では省略)、枠体21に支持された主軸22と、主軸22に支持されたフレーム23と、フレーム23の両側方夫々に取り付けられた一対の車輪24(図3参照)と、車輪24の回転を制動する制動部材とを備えている。尚、図4では、車輪24の1つだけが表われている。
【0025】
枠体21は、図1〜図3に示すように、連結部材3の先端側(一端側)を収納する連結部材収納部21aと、載置台5を保持する保持部21bとを備えている。連結部材収納部21aは、底壁21cと底壁21cの両端縁からほぼ直角に上方に折り曲げ成形された両側壁21dとによって上面が開放されたコの字状に区画形成されている。
【0026】
保持部21bは、上記両側壁21d夫々から外側に折り曲げ成形されてほぼ水平状に形成され、連結部材収納部21aを挟んだ両側に配設されている。
【0027】
主軸22は、図2に示すように、シャフト部材6を通すシャフト挿通孔22aを有する筒状のものから構成されている。そして、主軸22は、上記枠体21の底壁21cに設けられた孔21eから下方側に通されるようにして、その上端側が上記枠体21の底壁21cに固定されている。
【0028】
これにより、主軸22の軸方向が上下方向に延ばされているとともに、シャフト挿通孔22aを介して、連結部材収納部21aと底壁21cの外下方とが連通されるようになっている。
【0029】
フレーム23は、主軸22を通す主軸挿通孔23aと、主軸挿通孔23aの下方側に制動部材を収納する制動部材収納部23bとを備えている。そして、このフレーム23は、主軸挿通孔23aに主軸22が通されるようにして主軸22に回動自在に支持されている。
【0030】
これにより、フレーム23は、主軸22回り(図2のY−Y)に回転し、このフレーム23の回転によって車輪24が水平方向に旋回できるようになっている。尚、この実施形態のフレーム23は、図4に示すように、側面に、軽量化等のために孔を設けているが、図2では、表していない。又、フレーム23は、後述するベアリング29によって、主軸22に対して円滑に回転できるようになっている。
【0031】
車輪24は、夫々、フレーム23に設けられた車軸23cに回転自在に取付けられており、車軸23c回り(図2のX−X)に回転できるようになっている。
【0032】
制動部材は、フレーム23(車輪24)の主軸22回りの回転を制動する旋回制動部材26a、26bと、車輪24の車軸23c回りの回転を制動する転がり制動部材27と、コイルバネ28とを備えている。
【0033】
旋回制動部材は、図2、図4に示すように、リング状の第1係合部材26aと、リング状の第2係合部材26bとを備えている。
【0034】
第1係合部材26aは、上面側に複数の歯を有し、内周が6角形状に形成されている。そして、この第1係合部材26aは、内周が、主軸22の下端側の先端部に設けられた6角柱部22bに嵌め入れられるようにして回転不能に保持された状態で、フレーム23の制動部材収納部23b内に配設されている。
【0035】
第2係合部材26bは、下面側に、第1係合部材26aの歯に係脱自在に噛合する複数の歯を有するとともに、後述の転がり制動部材27に回動不能に係止する係止凹部26cを備えている。
【0036】
そして、この第2係合部材26bは、内周に主軸22が通されるようにして、フレーム23の制動部材収納部23b内における第1係合部材26aの上方側に上下方向移動可能に配設されている。
【0037】
転がり制動部材27は、貫通孔27aを有し、この貫通孔27aに、シャフト部材6が通されるとともに、第1係合部材26aを保持した主軸22の6角柱部22bが受容可能とされている。
【0038】
又、転がり制動部材27の下端には、車輪24夫々に設けられた内ギアからなる第2ギア24dに係脱自在に噛合する第1ギア27dが設けられている。
【0039】
この実施形態の第1ギア27dは、係合歯27bと係合溝27cとの一対のものから構成されており、車輪24の第2ギア24dに設けられた係合溝24c、係合歯24b夫々に係合するようになっている。
【0040】
そして、この転がり制動部材27は、フレーム23の制動部材収納部23b内における第2係合部材26bの下方側に、フレーム23に対して上下移動可能且つ回動不能に配設されている。
【0041】
コイルバネ28は、フレーム23の制動部材収納部23b内における第2係合部材26b側の上側に配設されており、第2係合部材26bを、第1係合部材26a側の下方側に付勢して両者を係合させているとともに、第2係合部材26bと転がり制動部材27とを係合させている。又、コイルバネ28は、第2係合部材26bを介して転がり制動部材27を車輪24の第2ギア24d側の下方側に付勢して両者を噛合させている。
【0042】
従って、この状態で、図2に示すように車輪24は、転がり制動部材27と車輪24の第2ギア24dとの噛合によって、車輪24の車軸23c回りの回転ができなくなっているとともに、第1係合部材26aと第2係合部材26bとの係合によって、車輪24の主軸22回りの回転ができなくなった制動状態になっている。
【0043】
次に、シャフト部材6について説明する。シャフト部材6は、シャフト本体61と、シャフト本体61の下端側(一端側)に設けられた制動部材係止部62と、シャフト本体61の上端側(他端側)に設けられた連結部材係止部63とを備えている。
【0044】
シャフト本体61は、制動キャスタ本体20の連結部材収納部21aから主軸22のシャフト挿通孔22a及び転がり制動部材27の貫通孔27aに、軸方向の上下方向に移動可能に通されている。
【0045】
制動部材係止部62は、転がり制動部材27と係止するためのもので、この実施形態では、シャフト本体61よりも径大の円柱状のものから構成されている。又、この実施形態では、制動部材係止部62は、固定補助部材62a及びベアリング29を介して転がり制動部材27の貫通孔27aの下端側の周縁部に係止されている。
【0046】
連結部材係止部63は、連結部材3と係止するためのもので、この実施形態では、シャフト本体61よりも径大の円柱体を軸方向にほぼ2分割した円弧面63aを有する半円柱体形状のものから構成されており、その円弧面63aにシャフト本体61の上端が連結されている。
【0047】
そして、このように構成されたシャフト部材6は、車輪24の制動状態における当該シャフト部材6の制動キャスタ本体20に対する制動状態位置(図2に示す位置)から、所定量だけ上方に引き上げ操作されると、図7に示すように、制動部材係止部62が、固定補助部材62a及びベアリング28を介して転がり制動部材27を、制動部材収納部23b内の上方側に引き上げる。
【0048】
この転がり制動部材27の引き上げに伴い、転がり制動部材27の第1ギア27dと車輪24の第2ギア24dとの噛合が外れて車輪24の車軸23c回りの回転が可能になる。
【0049】
又、上記転がり制動部材27の引き上げに伴い、第2係合部材26bを押し上げ、第2係合部材26bと第1係合部材26aとの係合が解除し、車輪24の主軸22回りの回転が可能になる。
【0050】
以上のように、シャフト部材6は、制動状態位置から、上記転がり制動部材27による車輪24の車軸23c回りの制動を解除するとともに、第2係合部材26bと第1係合部材26aとの係合による車輪24の主軸22回りの制動を解除できる位置(制動解除状態位置)まで、制動キャスタ本体20に対して上下方向に移動する。
【0051】
次に、連結部材3について説明する。連結部材3は、夫々、同構成を採っており、各連結部材3は、図1〜図3に示すように、長尺板状の連結部材本体31と、連結部材本体31の先端側(一端側)に設けられシャフト部材6と移動可能に連結したシャフト部材用連結部32と、連結部材本体31の基端側(他端側)に設けられ制動操作部材4と回動自在に連結した制動操作部材用連結部33とを備えている。
【0052】
シャフト部材用連結部32は、この実施形態では、連結部材本体31と別体の板状体から構成されている。このシャフト部材用連結部32は、連結部材本体31とほぼ同幅で、上記枠体21の連結部材収納部21aに、連結部材本体31の先端部と共に移動可能に収納できるようになっている。
【0053】
又、シャフト部材用連結部32は、シャフト部材6の連結部材係止部63を移動可能に連結するとともに、そのシャフト部材6に対するシャフト部材用連結部32の移動に際してそのシャフト部材6を、上記制動状態位置から制動解除状態位置まで移動させるシャフト移動手段を備えている。
【0054】
この実施形態のシャフト移動手段は、低部32bと、低部32bよりも高さの高い高部32cと、低部32bと高部32cとの間に配設された案内部32dと、連結用溝32aとを備えている。
【0055】
連結用溝32aは、低部32bから高部32cにかけて、シャフト部材用連結部32の長手方向に沿って形成されている。また、連結用溝32aの溝幅は、シャフト本体61の径よりも大きく、且つ、連結部材係止部63よりも狭く設定され、シャフト本体61が連結用溝32aを相対移動できるようになっている。
【0056】
低部32bは、シャフト部材6を制動状態位置に配設するよう構成されたもので、一方、高部32cは、シャフト部材6を、制動解除状態位置に配設するよう構成されたものである。
【0057】
又、案内部32dは、低部32bから高部32cに行くに従い漸次高さが高くなるように形成されており、これにより、シャフト部材6の連結部材係止部63を、低部32bから高部32cに滑り動き易いようにしている。尚、この実施形態では、案内部32dは、低部32bから高部32cにかけて湾曲状に形成されているが、例えば低部32bから高部32cに行くに従い漸次高さが高くなる傾斜面でも良く、適宜変更できる。
【0058】
このように構成されたシャフト部材用連結部32は、この実施形態では、基端側に、連結部材本体31の先端側を重ね合わせるようにして、溶接等の固定手段によって固定されている。なお、この両者の固定によって、シャフト部材用連結部32における連結用溝32aの基端側に、連結部材本体31の厚さ分の段部が形成されており、連結用溝32aを移動するシャフト部材6の連結部材係止部63が当接してそれ以上移動しないようになっている。
【0059】
又、この実施形態のシャフト部材用連結部32の先端側には、シャフト部材用連結部32の先端一部を上方側に折り曲げて形成した止め片32eが設けられており、連結用溝32aを先端側に移動してきたシャフト部材6の連結部材係止部63が当接して連結用溝32aを抜け出ないようになっている。
【0060】
制動操作部材用連結部33は、この実施形態では、連結部材本体31の下方側に突出するように、連結部材本体31に取付けられた摺動片から構成されている。
【0061】
次に、制動操作部材4について説明する。制動操作部材4は、回転制動操作部材本体41と、回転制動操作部材本体41を回動自在に支持した載置台取付軸42と、制動操作部材本体41を操作する操作片43とを備えている。
【0062】
制動操作部材本体41は、円板状のものから構成されており、連結部材移動操作手段としての4つの長溝41aを備えている。長溝41aは、夫々、長手方向を周方向に延ばされており、一端側が連結部材3を、上記シャフト6の制動状態位置に対応する位置にする制動状態位置対応部41cをなし、他端側が連結部材3を、上記制動解除状態位置に対応する位置にする制動解除状態位置対応部41bをなしている。
【0063】
この制動状態位置対応部41bから制動解除状態位置対応部41c側に行くに従って、中心Oからの距離が漸次小さくなるように設定されており、制動状態位置対応部41bの中心Oからの距離L1が制動解除状態位置対応部41cのその距離L2よりも大きくなっている。
【0064】
この実施形態では、長溝41aは、夫々、図1の時計方向に中心Oからの距離が漸次小さくなるようになっている。そして、これらの長溝41a夫々に、上記摺動片33が移動可能に嵌め入れられている。又、この状態で、制動操作部材本体41は、4つの制動キャスタ2のほぼ中央に配置されている。
【0065】
載置台取付軸42は、制動操作部材本体41の中心部に、ほぼ同心になるように配設されている。従って、制動操作部材本体41は、その中心Oを回動の中心にして載置台取付軸42回りに回動する。
【0066】
そして、この載置台取付軸42は、図2に示すように上部側が載置台5に取付けられる。尚、この実施形態では、載置台取付軸42と制動操作部材本体41とが互いに回動自在としているが、例えば載置台取付軸42と制動操作部材本体41とを固定し、載置台取付軸42を載置台5に回動自在に取り付けてもよい。
【0067】
操作片43は、図1に示すように基端側が制動操作部材本体41に取付けられており、先端側に操作把持部43aを備えている。
【0068】
次に、載置台5について説明する。載置台5は、後述する移動体の移動体本体を載置するためのものである。この実施形態の載置台5は、所定の厚さの四角形状のものから構成されている。
【0069】
載置台5の下面には、制動操作部材4の操作片43をシャフト部材6の制動状態位置と制動解除状態位置との夫々に対応する位置に係脱自在に係止する操作片用係止手段が設けられている。
【0070】
この実施形態の操作片用係止手段は、図5に示すように、操作片43をシャフト部材6の制動位置に対応する位置に係止する第1係止部材81と、操作片43をシャフト部材6の制動解除位置に対応する位置に係止する第2係止部材82とから構成されている。
【0071】
第1係止部材81は、弾性を有する板状体から構成されており、その基端側が載置台5に固定されている。又、先端側には、出し入れ操作片81bを有する係止部81aを備えている。
【0072】
第2係止部材82は、第1係止部材81と略同構成を採っており、左右対称に配設されており、その基端側が載置台5に固定され、先端側には、出し入れ操作片82bを有する係止部82aを備えている。
【0073】
このように構成された載置台5は、図1中に一点鎖線で示すように、隅部の4箇所の夫々が、上方側から制動キャスタ本体20の保持部21bに置かれるようにして、図示しないボルト等の固定手段によって固定されている。
【0074】
次に、本発明のキャスタ装置の動作について説明する。尚、説明の都合上、車輪24の制動状態から説明する。制動状態では、図2に示すように、シャフト部材用連結部32は、連結部材3の低部32bに位置し、連結部材3の摺動片33は、図1に示すように制動状態位置対応部41bに位置し、又、制動操作部材4の操作片43は、図5に示すように、第1係止部材81の係止部81aに係止された状態になっている。
【0075】
この状態から、操作片43の操作把持部43aを把持して、図1、図5の右側に押圧操作する。これにより、操作片43が第1係止部材81の係止部81aの弾性に抗して出し入れ操作片81bを押し下げて係止部81aからはずれる。
【0076】
更に、操作把持部43aを、図1の右側に操作すると、制動操作部材本体41が、その中心Oを回動の中心にして図1の反時計方向に回動する。その回動に際して、制動操作部材用連結部33が、長溝41aを、制動状態位置対応部41cから制動解除状態位置対応部41b側に摺動していく。
【0077】
又、この摺動に際して連結部材3は、夫々、図6に示すように制動操作部材本体41側に引き寄せられ、制動キャスタ2に対して図2の右側に移動する。その移動に際して、シャフト部材6の連結部材係止部63が、低部32bから案内部32dを通って高部32cに移動していく。
【0078】
更に、操作把持部43aの操作を続けていくと、図5に示すように操作片が43が第2係止部材82の係止部82aに係止される。この状態で、図7に示すようにシャフト部材6の連結部材係止部63は、高部32cに配置され、これにより、シャフト部材6は、車輪24を制動解除状態にする。
【0079】
この制動解除状態から制動状態にする場合は、操作把持部43aを、上記とは逆方向に操作すれば良い。これにより、制動操作部材本体41が図6の反時計方向に回動し、制動操作部材用連結部33が、長溝41aを、制動解除状態位置対応部41bから制動状態位置対応部41c側に摺動する。
【0080】
そして、その摺動に際して連結部材3は、夫々、制動キャスタ2側に移動し、その移動に際して、シャフト部材6の連結部材係止部63が、高部32cから案内部32dを通って低部32bに移動する。
【0081】
この移動により、シャフト部材6は、コイルバネ28の付勢力によって、下方側の制動状態位置まで移動する。これにより、制動状態にできる。
【0082】
次に、キャスタ装置1を有する移動体を、図9に基づいて説明する。移動体100は、この実施形態では、物品収納箱とされており、移動体本体101と、移動体本体101が載置されたキャスタ装置1とを備えている。キャスタ装置1は、上述のものと同構成のものが用いられている。
【0083】
移動体本体101は、この実施形態では、縦及び横寸法が載置台5とほぼ同じ大きさのものから構成されており、キャスタ装置1の操作片43の操作把持部43aが移動体本体101の側方に突出している。
【0084】
又、この実施形態の移動体本体101は、物品を収納する物品収納部102と、物品収納部102の正面側に開口部103を備え、開口部103から物品収納部102に物品を収納可能とされている。
【0085】
尚、上記実施形態では、キャスタ装置1の制動キャスタ2を4つから構成したが、この形態のものに限らず、適宜変更でき、少なくとも3つ備えていればよい。また、連結部材3は、制動キャスタ2と同じ数だけ設ける形態のものに限らず、制動キャスタ2と異なる数にしてもよく、適宜変更できる。
【0086】
又、上記実施形態では、キャスタ装置1は、載置台5を備えたものとしその載置台5上に移動体本体101を載置するようにしたが、例えば制動キャスタ2の保持部21bに移動体本体101を直接載置するようにして、載置台5を備えていない形態のものでもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、移動体を、物品収納箱から構成したが、キャスタ装置1を用いる移動体は、特に限定されず、例えばワゴン、椅子、本箱、或いは、ベッドの側方側に置く収納台等の種々のものに使用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 キャスタ装置
2 制動キャスタ
3 連結部材
4 制動操作部材
5 載置台
6 シャフト部材
41a 長溝(連結部材移動操作手段)
100 移動体
101 移動体本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を移動させるキャスタ装置であって、
少なくとも3つの制動キャスタと、それらの制動キャスタそれぞれを制動操作するための制動操作部材と、前記制動キャスタ夫々と制動操作部材とを連結した複数の連結部材とを備え、
前記制動キャスタは、夫々、車輪を有する制動キャスタ本体と、前記車輪の回転を制動する制動部材と、前記制動部材により制動状態にされた車輪を制動解除状態に解除操作するシャフト部材とを備え、
前記シャフト部材は、前記制動キャスタ本体に対して移動可能とされているとともに、その移動に際して、前記車輪を制動解除状態にし、
前記連結部材は、夫々、その一端側に、前記シャフト部材と移動可能に連結されているとともに、そのシャフト部材に対する当該連結部材の移動に際してそのシャフト部材を、前記制動状態における制動状態位置から前記車輪を制動解除状態にした制動解除状態位置までの範囲に渡って移動させるシャフト移動手段を備え、
前記制動操作部材は、前記連結部材夫々の他端側と回動自在に連結されているとともに、連結部材移動操作手段を備え、
前記連結部材移動操作手段は、前記連結部材に対する制動操作部材の回動に際して、前記連結部材をシャフト部材に対して移動させて前記シャフト部材を前記制動状態位置から制動解除状態位置に移動できるように構成されていることを特徴とするキャスタ装置。
【請求項2】
前記キャスタ装置は、前記制動キャスタ本体夫々に保持された板状の載置台を、更に備え、
前記制動操作部材は、前記載置台の下方側に配設されているとともに、制動操作部材本体と、その制動操作部材本体を回動操作する操作片とを備え、
前記載置台は、その下面側に、前記操作片を、前記シャフト部材の制動状態位置と制動解除状態位置との夫々に対応する位置に係脱自在に係止する操作片用係止手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のキャスタ装置。
【請求項3】
前記制動操作部材は、制動操作部材本体と、その制動操作部材本体を回動操作する操作片とを備え、
前記制動操作部材本体は、前記連結部材夫々に設けられた摺動片を摺動させる長溝を備え、
前記長溝は、その長手方向の一端から他端にかけて、前記制動操作部材本体の回動の中心からの距離が周方向に漸次短くなるように構成され、
前記連結部材移動操作手段は、前記長溝から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のキャスタ装置。
【請求項4】
前記制動操作部材本体は、前記少なくとも3つの制動キャスタのほぼ中央位置に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャスタ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャスタ装置と、そのキャスタ装置に載置された移動体本体とを備えていることを特徴とする移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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