説明

キャップおよびベース構造のトレッドバンドを備える車両用タイヤ

略トロイダル形状に賦形された少なくとも1つのカーカスプライ(3)を備えたカーカス構造(2)であって、その対向側縁(3a)が、各々右側および左側ビードワイヤ(4)に対応し、各ビードワイヤが、各々のビード(5)内に囲まれている、カーカス構造(2)と、前記カーカス構造(2)に対して周方向外側位置に付与された少なくとも1本のベルトストリップ(7a,7b)を含んでなるベルト構造(6)と、地面に接触するように設計された半径方向外側層(12)と、前記半径方向外側層と前記ベルト構造(69)との間に挟まれた向内側層(12)とを含んでなる前記ベルト構造(6)上に周方向に重ねられたトレッドバンド(10)と、前記カーカス構造(2)に対して反対側の側面に沿って付与された一対のサイドウォール(9)とを含んでなる車両用タイヤであって、前記半径方向内側層(11)は、(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと、(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nm、好ましくは0.05nm〜15nmの各層厚みを有する層状無機材料とを含んでなる架橋エラストマー組成物を含む車両用タイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップおよびベース構造のトレッドバンドを備える車両用タイヤに関する。
【0002】
本発明は、さらに具体的には、半径方向外側層(トレッドキャップ)と半径方向内側層(トレッドベース)とを含むトレッドバンドを備える車両用タイヤに関し、前記半径方向内側層は、少なくとも1種の層状無機材料を含む架橋エラストマー組成物を含む。
【0003】
本発明は、さらに、前記タイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
車両用タイヤを製造する分野において、キャップおよびベース構造のトレッドバンドを使用することは公知である。
【0005】
従来、トレッドキャップは、地面に接触するように設計され、様々な形状およびサイズの複数のブロックを画定するように様々な形状の溝が慣用的に組み込まれており、タイヤに適切なトラクション、転動抵抗およびトレッド摩耗を提供することを目的とするエラストマー組成物を通常含んでなる。
【0006】
対応するトレッドベースは、従来的には共押出されるか、もしくはカレンダで圧延され、トレッドキャップの下に位置し、地面に接触することを本来目的とせず、トレッドキャップのエラストマー組成物の特性と異なる機械的特性(静的と動的の両方)とヒステリシス特性の両方を有するエラストマー組成物を通常含んでなる。
【0007】
本来、特に冬用タイヤの場合において、つまり、スノースタッドも他の機械的手段を用いずに、極度の大気や地面の状態、具体的には、氷面および/または雪面上のかなりの低温状態においてでさえも、良好な性能(例えば、良好なロードグリップ、良好な操縦安定性、良好な乗り心地)を確証できるタイヤの場合において、トレッドベースのエラストマー組成物は、トレッドキャップのエラストマー組成物に対してより優れた機械的特性とより低いヒステリシス値を有する。
【0008】
既に上記に開示した通り、キャップおよびベース構造のトレッドバンドは、当技術分野では公知である。
【0009】
例えば、米国特許第4,635,693号明細書は、キャップトレッドとベーストレッドを有する空気タイヤを記載する。
(1)前記キャップトレッドは、少なくとも50重量部の天然ゴムおよび/またはポリイソプレンゴムと、多くとも20%の1,2−結合単位を含有する多くとも50重量部のポリブタジエンゴムと、多くとも30重量%の結合スチレンを含有する多くとも50重量部のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムとを含んでなる100重量部のゴム成分が、50〜100重量部のカーボンブラックと以下の式:
1.1x−44<y<l.lx−30
式中、yは、軟化剤の重量部での総量であり、xは、カーボンブラックの重量部での量であり;前記軟化剤は、8.0〜9.0の範囲の全溶解パラメーターを有する;
を満たす量の軟化剤と共に組み込まれたゴム材料から製造され;
(2)前記ベーストレッドは、少なくとも60重量部の天然ゴムおよび/またはポリイソプレンゴムと、多くとも20%の1,2−結合単位を含有する多くとも40重量部のポリブタジエンゴムと、多くとも30重量%の結合スチレンを含有する多くとも40重量部のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムとを含んでなる100重量部のゴム成分が、2.6〜3.6重量部の硫黄と共に組み込まれたゴム材料から製造され;
(3)前記ベーストレッドは、トレッドの総体積に対して0.1〜0.5の体積比を有する。
【0010】
上記のタイヤは、雪で覆われた路面もしくは凍結した路面上で優れた操縦性を有し、長期間このような優れた性能を残存できる。
【0011】
本願特許出願人の米国特許第6,516,847号明細書は、少なくとも1つのカーカスプライの周りを同軸状に延在する少なくとも1つのベルト層と、該ベルト層の周りを同軸状に延在し、半径方向外側層と半径方向内側層を含んでなる1つの複合トレッドを備える転動抵抗が小さい車両用タイヤで、半径方向内側層の70℃での弾性率E’と半径方向外側層の70℃での弾性率E’の比は、1.1〜3からなり、半径方向内側層の70℃でのタンデルタ値と半径方向外側層の70℃でのタンデルタ値の比は、0.8より小さい車両用タイヤを記載する。上記のタイヤは、タイヤの転動抵抗と、ハンドリング性や快適さとの間にて良好な妥協に達すると言われている。
【0012】
米国特許出願公開第2003/0015271号明細書は、キャップ/ベース構造のゴムトレッドを備えるタイヤを開示する。トレッドベースは、トレッドキャップの下にある。トレッドベースは、比較的厚く、すなわち、トレッドキャップの少なくとも50%の厚さである。トレッドベースゴム組成物は、トレッドベースの物理的性質を高めるために大量の硫黄を含有することが望まれる。トレッドベースゴム組成物は、トレッドキャップと比べて比較的に厚いトレッドベースの物理的性質が戻る傾向を弱めるために、加硫戻り防止剤の配合を含む。加硫戻り防止剤の配合は、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンおよびヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)、二ナトリウム塩、脱水物である。上記のゴム組成物は、トレッドベースの物理的性質の完全な状態をほぼ維持して、タイヤの使用温度を下げ、さらにトレッドキャップ中の溝亀裂を遅延させまたは除去さえすると言われている。
【0013】
欧州特許出願EP第1 270 656号は、100重量部のゴム成分を基準として、30〜40重量部の少なくとも115m/gのヨウ素吸着量を有するカーボンブラックと、5〜10重量部のシリカと、1.2〜2.2重量部の硫黄とを含んでなる、ベーストレッドのためのゴム組成物を記載し、該カーボンブラックとシリカの合計量は、多くとも45重量部である。ベーストレッドに前記ゴム組成物を用いる空気タイヤも記載されている。上記のゴム組成物は、熱上昇を抑える性質と卓越した補強特性とを有すると言われている。
【0014】
本願特許出願人は、場合によっては、具体的には非常に高性能なタイプの冬用タイヤ、例えば高速車用に設計されたタイヤ、さらに一般的には高い作動速度を含む実用性を目的とするタイヤの場合において、極端な大気の状態や地面の状態で、乾燥地面もしくは湿潤地面上において良好な上記性能を確実にするために、トレッドベースのエラストマー組成物の機械的特性、静的特性(特に、引張係数と硬度)と動的特性(特に、動的弾性率)との両方、を高めることが必要であると気付いている。
【0015】
前記タイヤは、「HP」および「UHP」(「高性能」および「超高性能」)タイヤと一般的に呼ばれ、具体的には、210Km/時〜240Km/時の最高速度を提供する「V」クラスと、240Km/時以上を提供する「Z」クラスに属するタイヤであり、このクラスのタイヤにとって、あらゆる大気状態や地面状態における良好な性能が、その最も重要な要因のひとつとなることは明らかである。
【0016】
エラストマー組成物の機械的特性を高める別の方法も、既に知られている。
【0017】
例えば、エラストマー組成物の硬度は、多量の硫黄を用いて架橋密度を高めるか、または多量のカーボンブラックもしくは非常に細かく構造化されたカーボンブラックを用いることにより、高められうる。しかしながら、上記の硬度を高くする方法は、多くの欠点を導く結果となる場合もある。
【0018】
例えば、多量の硫黄の使用は、顕著な加硫戻り現象を起こし、使用中のタイヤの性能を改変する結果となる場合があることが知られている。一方、カーボンブラックは、架橋製品に著しいヒステリシス特性をもたらし、つまり動的状態下で散逸した熱の増加を生じ、その結果、タイヤの転動抵抗が大きくなることが知られている。さらに、多量のカーボンブラックは、エラストマー組成物の粘性を増し、結果として、組成物の加工性や押出適性に悪影響をもたらす。
【0019】
カーボンブラックの使用によって生じる欠点を打開するために、所謂「白色」補強充填剤、具体的にはシリカが、カーボンブラックに全てもしくは一部代わって通常使用される。しかしながら、前記補強充填剤の使用は、良好な引裂き抵抗を導くが、タイヤの生産に通常使用されるエラストマーに対するこれらの充填剤の劣等な親和性に本質的に相関する一連の欠点を伴う。特に、ポリマーマトリックス中のシリカ分散液の良好度を得るために、エラストマーブレンドに長期間熱機械的なブレンド作用を施す必要がある。シリカとエラストマーマトリックスの親和性を高めるために、例えば、硫黄含有オルガノシラン生成物等のような適切なカップリング剤の使用が必要である。しかしながら、上記のカップリング剤を使用する必要性があると、カップリング剤が不可逆熱劣化する不利益を回避するために、組成物のブレンド中や熱機械的加工処理中に達しうる最高温度が制限される。
【0020】
従って、本願特許出願人は、極端な大気状態と地面状態の両存在下で、具体的には氷状および/または雪状の地面上でのかなりの低温下で、乾燥地面もしくは湿潤地面上において良好な性能(良好なロードグリップ、良好な操縦安定性、良好な乗り心地)を有するキャップおよびベース構造のトレッドバンドを備える車両用タイヤを提供する問題に取り組んできた。特に、本願特許出願人は、前記の良好な性能を得るためには、トレッドベースのエラストマー組成物の機械的特性を高めるだけでは十分ではなく、以下の他の特性における望ましくない効果が生じることなく、前記の機械的特性を高めるエラストマー組成物を提供することが必要であることに気付いていた。たとえば:
− 粘性、特に、良好な加工性と良好な押出適性を有するエラストマー組成物を得ることを可能とするために、非常に高い粘性値が生じないようにする必要がある。
− ヒステリシス(タンデルタ値)、特に、非常に高い転動抵抗を回避するために、非常に高いヒステリシス値が生じないようにする必要がある。
− 素地接着性(green adhesiveness)、製造工程中にタイヤの様々な構造要素間で位置ずれを回避するため。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本願特許出願人は、少なくとも1種の層状無機材料を添加する架橋性エラストマー組成物を含んでなるトレッドベースを利用して、上記性能を示すタイヤを得ることが可能であると判明した。前記層状無機材料の添加により、その他の特性(つまり、粘性、ヒステリシス、素地接着性)に望ましくない効果を観察することなく、エラストマー組成物の機械的特性を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第一態様によれば、本発明は、
− 略トロイダル形状に賦形された少なくとも1つのカーカスプライを備えたカーカス構造であって、その対向側縁が、各々右側および左側ビードワイヤに対応し、各ビードワイヤが、各々のビード内に囲まれている、カーカス構造と、
− 前記カーカス構造に対して周方向外側位置に付与された少なくとも1本のベルトストリップを含んでなるベルト構造と、
− 地面に接触するように設計された半径方向外側層と、前記半径方向外側層と前記ベルト構造の間に挟まれた半径方向内側層とを含んでなる前記ベルト構造上に周方向に重ねられたトレッドバンドと、
− 前記カーカス構造に対して反対側の側面に沿って付与された一対のサイドウォールとを含んでなる車両用タイヤに関し、
前記半径方向内側層は、
(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと
(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nm、好ましくは0.05nm〜15nmの各層厚みを有する層状無機材料
を含んでなる架橋エラストマー組成物を含む。
【0023】
さらなる態様によれば、本発明は、車両用タイヤを製造する方法に関し、前記方法は、
少なくとも1つのカーカスプライと、前記カーカスプライに対して周方向外側位置のベルト構造と、前記ベルト構造に対して周方向外側位置のトレッドバンドとを組み立てることにより生タイヤを製造する工程であって、前記トレッドバンドは、地面に接触するように設計された半径方向外側層と、前記半径方向外側層と前記ベルト構造の間に介在された半径方向内側層とを含んでなる工程と、
− 生タイヤを、加硫成形型中に形成された成形キャビティ中で成形する工程と、
− 前記生タイヤを過熱することにより架橋する工程と
を含み、
前記半径方向内側層は、
(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと、
(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nm、好ましくは0.05nm〜15nmの各層厚みを有する層状無機材料と
を含んでなる架橋性エラストマー組成物を含む。
【0024】
さらなる好適な実施形態によれば、前記半径方向内側層は、前記架橋性エラストマー組成物からなる少なくとも1本のリボン状ストリップをコイル状に重ねて巻き取ることにより得られる。トレッドバンドの半径方向外側層も、架橋性エラストマー組成物からなる少なくとも1本のリボン状ストリップをコイル状に重ねて巻き取ることにより得られるのが好ましい。前記リボン状ストリップは、例えば、前記架橋性エラストマー組成物を押出成形して製造されうる。好ましくは、生タイヤは、その構造要素をトロイダル状支持体上に組み立てることにより得られる。トロイダル状支持体上にタイヤの各種成分を成形および/または積層する方法のさらなる詳細な説明は、例えば、国際特許出願国際公開第WO 01/36185号パンフレットおよびEP第976536号に本願特許出願人の名で記載されている。
【0025】
好適な一実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、さらに(c)少なくとも1種のカーボンブラック補強充填剤を含んでなる。
【0026】
好適な一実施形態によれば、前記半径方向内側層は、10MPa〜30MPa、好ましくは15MPa〜20MPaの23℃での動的弾性率(E’)を有する架橋エラストマー組成物により、形成される。前記動的弾性率は、牽引−圧縮モードでインストロン(Instron)動的装置を用い、以下の実施例に記載される手順に従って測定されうる。
【0027】
好適な一実施形態によれば、前記半径方向内側層は、トレッドバンドの総厚みに対して、少なくとも10%、好ましくは20%〜70%の厚みを有する。
【0028】
好適な一実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、さらに少なくとも1種のシランカップリング剤(d)を含んでなる。
【0029】
好適な一実施形態によれば、前記層状無機材料(b)は、1phr〜120phr、好ましくは5phr〜80phrの量でエラストマー組成物中に存在する。
【0030】
本明細書および以下の特許請求の範囲の目的上、用語「phr」は、ジエンエラストマーポリマー100重量部当たりのエラストマー組成物の各成分の重量部を意味する。
【0031】
好適な一実施形態によれば、本発明に使用されうる層状無機材料(b)は、例えば、スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト;バーミキュライト;ハロイサイト;セリサイト;またはそれらの混合物のようなフィロケイ酸塩から選択されうる。モンモリロナイトが、特に好ましい。
【0032】
層状無機材料(b)をジエンエラストマーポリマー(a)とさらに相溶性があるようにするために、前記層状無機材料(b)を相溶化剤で表面処理してもよい。
【0033】
好適な一実施形態によれば、前記相溶化剤は、例えば、以下の一般式(I):
【化1】


式中、
− Yは、NもしくはPを表し;
− R、R、RおよびRは、同一でも異なってもよく、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキルもしくはヒドロキシアルキル基;直鎖もしくは分岐のC〜C20アルケニルもしくはヒドロキシアルケニル基;基−R−SHもしくは−R−NH、式中、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキレン基を表す;C〜C18アリール基;C〜C20アリールアルキルもしくはアルキルアリール基;C〜C18シクロアルキル基、該シクロアルキル基は、場合により酸素、窒素または硫黄のようなヘテロ原子を含有する、を表し;
− Xn−は、塩素イオン、硫酸イオンまたはリン酸イオンのようなアニオンを表し;
− nは、1,2または3を表す。
を有する第4級アンモニウム塩もしくはホスホニウム塩から選択されうる。
【0034】
相溶化剤での層状無機材料(b)の表面処理は、例えば、層状無機材料と相溶化剤との間のアニオン交換反応のような公知の方法に従って、実施されることが可能である。さらなる詳細な説明は、例えば、米国特許第4,136,103号明細書、同第5,747,560号明細書または同第5,952,093号明細書に記載されている。
【0035】
本発明に従って使用されうる市販の層状無機材料(b)の例は、ラビオサ・ケミカ・ミネラリアS.p.A社(Laviosa Chimica Mineraria S.p.A)製のデライト(Dellite)(登録商標)67Gの名称で公知の製品である。
【0036】
好適な一実施形態によれば、本発明に使用されうるジエンエラストマーポリマー(a)は、硫黄架橋性エラストマー組成物に一般的に使用されるポリマー、つまりタイヤの製造に特に適切であるポリマー、即ち一般的に20℃未満、好ましくは0℃〜−110℃の範囲のガラス転移温度(T)を有する、不飽和鎖を有するエラストマーポリマーもしくは共重合体から選択されうる。これらのポリマーもしくは共重合体は、天然由来の物質でもよいし、或いは、1種もしくはそれ以上の共役ジオレフィンの溶液重合、乳化重合または気相重合により、得られてもよく、場合により、60重量%以下の量のモノビニルアレーンおよび/または極性のコモノマーから選択される少なくとも1種のコモノマーとブレンドしてもよい。
【0037】
上記の共役ジオレフィンは、通常4〜12個、好ましくは4〜8個の炭素数を有し、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、またはそれらの混合物を含んでなる群から選択されうる。1,3−ブタジエンとイソプレンが、特に好ましい。
【0038】
コモノマーとして場合により使用されうるモノビニルアレーンは、通常8〜20個、好ましくは8〜12個の炭素原子を含有し、例えば、スチレン;1−ビニルナフタレン;2−ビニルナフタレン;各種のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルのスチレン誘導体(例えば、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−p−トリルスチレン、4−(4−フェニルブチル)スチレン、またはそれらの混合物等)から選択されうる。スチレンが特に好ましい。
【0039】
場合により使用されうる極性コモノマーは、例えば、ビニルピリジン、ビニルキノリン、アクリル酸エステル、アルキルアクリル酸エステル、ニトリル、またはそれらの混合物例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル、またはそれらの混合物等から選択されうる。
【0040】
好ましくは、本発明で使用されうるジエンエラストマーポリマー(a)は、例えば、シス−1,4−ポリイソプレン(天然または合成、好ましくは天然ゴム)、3,4−ポリイソプレン、ポリブタジエン(特に、1,4−シスの含有量が多いポリブタジエン)、場合によりハロゲン化されたイソプレン/イソブテン共重合体、1,3−ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン/1,3−ブタジエン共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、およびそれらの混合物から選択されうる。
【0041】
好適な一実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーポリマー(a)の総重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは20重量%〜90重量%の天然ゴムを含んでなる。
【0042】
上記のエラストマー組成物は、場合により、少なくとも1種の、1種もしくはそれ以上のモノオレフィンとオレフィンコモノマーもしくはそれらの誘導体とのエラストマーポリマー(a’)を含んでもよい。モノオレフィンは、エチレンおよび一般的に3〜12個の炭素原子を含有するα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの混合物等)から選択されうる。以下のものが好ましい:エチレンとα−オレフィン、場合によりジエンとの共重合体;僅かな量のジエンを含有するイソブテンホモポリマーまたはそれらの共重合体で、場合により少なくとも一部ハロゲン化した共重合体。場合により存在するジエンは、一般的に4〜20個の炭素原子を含有し、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネンまたはそれらの混合物から選択されるのが好ましい。これらのうちで、以下が特に好ましい:エチレン/プロピレン共重合体(EPR)もしくはエチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM);ポリイソブテン;ブチルゴム;ハロブチルゴム、特に、クロロブチルもしくはブロモブチルゴム;またはそれらの混合物。
【0043】
適切な停止剤もしくはカップリング剤との反応により官能化されたジエンエラストマーポリマー(a)もしくはエラストマーポリマー(a’)を使用してもよい。特に、有機金属開始剤(具体的に、有機リチウム開始剤)の存在下でアニオン重合により得られたジエンエラストマーポリマーは、開始剤から誘導された残留有機金属基を例えば、イミン、カルボジイミド、ハロゲン化アルキルスズ、置換ベンゾフェノン、アルコキシシランもしくはアリールオキシシランのような適切な停止剤もしくはカップリング剤と反応させることにより、官能化されうる(例えば、EP第451 604号または米国特許第4,742,124号明細書および同第4,550,142号明細書を参照のこと)。
【0044】
上記に開示した通り、前記エラストマー組成物は、さらに少なくとも1種のカーボンブラック補強充填剤(c)を含んでなる。
【0045】
好適な一実施形態によれば、本発明に使用されうるカーボンブラック補強充填剤(c)は、20m/g以上の表面積(ISO規格6810に記載されるCTAB吸着法により測定)を有するカーボンブラック補強充填剤から選択されうる。
【0046】
好適な一実施形態によれば、前記カーボンブラック補強充填剤(c)は、0.1phr〜120phr、好ましくは20phr〜90phrの量でエラストマー組成物中に存在する。
【0047】
上記に開示した通り、前記エラストマー組成物は、さらに少なくとも1種のシランカップリング剤(d)を含んでなる。
【0048】
好適な一実施形態によれば、本発明に使用されうるシランカップリング剤(d)は、例えば、以下の一般式(II):
(R)Si−C2n−X(II)
式中、基Rは、同一でも異なってもよく、少なくともひとつの基Rがアルコキシもしくはアリールオキシ基であるとする条件で、アルキル、アルコキシもしくはアリールオキシ基または水素原子から選択され;nは、1から6の整数であり;Xは、ニトロソ、メルカプト、アミノ、エポキシド、ビニル、イミド、クロロ、−(S)2n−Si−(R)、式中、mおよびnは、1〜6の整数であり、基Rは、上記の定義の通りである。
により、同定されうる少なくとも1種の加水分解性シラン基を有するシランカップリング剤から選択されうる。
【0049】
シランカップリング剤のうち特に好適なのは、ビス(3−トリエトキシシリル−プロピル)テトラサルファイドおよびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジサルファイドである。前記カップリング剤は、それ自体で用いるか、またはエラストマー組成物中への不活性充填剤(例えば、カーボンブラック)の組み込みを促進するために、それらとの適切な混合物として使用されうる。
【0050】
好適な一実施形態によれば、前記シランカップリング剤(d)は、エラストマー組成物中に、0.01phr〜10phr、好ましくは0.5phr〜5phrの量で存在する。
【0051】
少なくとも1種の追加の補強充填剤を、一般的に0.1phr〜120phr、好ましくは20phr〜90phrの量で、上記のエラストマー組成物に有利に加えてもよい。上記補強充填剤は、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、カオリン、またはそれらの混合物のような、架橋製品、特にタイヤに一般的に使用される補強充填剤から選択されうる。
【0052】
本発明に使用されうるシリカは、50m/g〜500m/g、好ましくは70m/g〜200m/gのBET表面積(ISO規格5794/1に従って測定)を有する、一般的には発熱性シリカ、好ましくは沈降シリカである。
【0053】
シリカを含んでなる補強充填剤が存在する場合、エラストマー組成物は、加硫中に、シリカと相互作用し、ジエンエラストマーポリマーにシリカを結合することが可能であるシランカップリング剤(d)を有利に組み込んでもよい。使用されうるシランカップリング剤(d)の例は、上記に既に開示している。
【0054】
好適な一実施形態によれば、タイヤトレッドバンドの半径方向外側層(トレッドキャップ)は、5MPa〜15MPa、好ましくは8MPa〜10MPaの0℃での動的弾性率(E’)を有する架橋エラストマー組成物により、形成される。前記動的弾性率は、以下の実施例に記載される手順に従って、牽引−圧縮モードでインストロン動的装置を用いて測定されうる。前記架橋エラストマー組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと、硫黄架橋性エラストマー組成物に通常使用される補強充填剤、つまりタイヤを製造するのに特に適切である補強充填剤、例えば、半径方向内側層(トレッドベース)の架橋性組成物に関して上記に開示した補強充填剤から選択される少なくとも1種の補強充填剤とを含んでなるのが好ましい。
【0055】
上記のエラストマー組成物は、トレッドベース用とトレッドキャップ用共に、よく知られた方法で、具体的にはジエンエラストマーポリマーに通例使用される硫黄ベースの加硫系を用いて、加硫されうる。この目的のために、エラストマー組成物に、熱機械的処理の1段階もしくはそれ以上の段階後に、硫黄ベースの加硫剤を加硫促進剤と一緒に含有させる。上記の最終処理段階において、望ましくない全ての早期架橋現象(pre−crosslinking)を回避するために、温度は、通常120℃未満、好ましくは100℃未満に維持される。
【0056】
最も有利に使用される加硫剤は、当業者に公知の促進剤および活性化剤と共に、硫黄と、または硫黄(硫黄供与体)を含有する分子とである。
【0057】
特に効果的な活性化剤は、亜鉛化合物、具体的には、ZnO、ZnCO、8〜18個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和脂肪酸の亜鉛塩(例えば、ステアリン酸亜鉛)であり、それらは、ZnOと脂肪酸からエラストマー組成物中でその場(in situ)で生成されるのが好ましく、さらにBiO、PbO、Pb、PbO、またはそれらの混合物も効果的な活性化剤である。
【0058】
通常使用される促進剤は、ジチオカルバミン酸、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、スルフェンアミド、チウラム、アミン、キサントゲン酸塩、またはそれらの混合物から選択されうる。
【0059】
前記エラストマー組成物は、組成物に意図される特定の用途に基づいて選択される、一般的に用いられる他の添加剤を含むことができる。例えば、以下のものが前記組成物に添加されうる:酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤、粘着剤、オゾン劣化防止剤、変性樹脂、繊維(例えば、ケブラー(Kevlar)(登録商標)パルプ)、またはそれらの混合。
【0060】
特に、加工性をさらに改善する目的のため、鉱油、植物油脂、合成オイル、それらの混合物、例えば、芳香油、ナフテン油、フタラート、大豆油、またはそれらの混合物、から通常選択される可塑剤を前記エラストマー組成物に添加してもよい。可塑剤の量は、通常0phr〜70phr、好ましくは5phr〜30phrの範囲である。
【0061】
上記のエラストマー組成物は、当技術分野で公知の技法に従って、高分子成分を補強充填剤と、場合により存在する他の添加剤とを混合して、調製されうる。該混合は、例えば、開放式ミル型の開放式混練機、または接線方向回転子(バンバリー(Banbury))もしくは連結回転子(インターミックス(Intermix))を有する密閉式混練機、或いはコ・ニーダー(Ko−Kneader)型(バス(Buss))もしくは共回転または逆回転のツインスクリュータイプの連続ミキサーを用いて、実施されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明は、多くの例証となる実施形態により、添付の図面を参照して、さらに詳細に例証されるだろう。
【0063】
本発明に係る車両用タイヤは、参照番号(1)により、大体は確認される。
【0064】
図1に関して、m−mは、タイヤ(1)の赤道面を示す。
【0065】
タイヤ(1)は、少なくとも1つのカーカスプライ(3)を含んでなるカーカス構造(2)を備え、カーカスプライの対向する側方縁部(3a)が、各々のビードワイヤ(4)に結合されている。カーカスプライ(3)とビードワイヤ(4)との結合は、ここでは、カーカスプライ(3)の対向する側方縁部(3a)をビードワイヤ(4)周囲で折り返して、図1に示すような所謂カーカスの折返し(3a)を形成して行われる。
【0066】
別の方法として、従来型ビードワイヤ(4)は、同心コイル(図1に示さない)に配置された細長要素から形成された、周方向に伸張できない一対の環状挿入物と置き換えうる(例えば、本願特許出願人の欧州特許出願EP第928 680号およびEP第928 702号を参照のこと)。上記の場合において、カーカスプライ(3)は、前記環状挿入物の周囲で折り返されず、第1のカーカスプライの外側に付与された第2のカーカスプライ(図1に示さない)により結合がなされる。
【0067】
カーカスプライ(3)は、通常、互いに平行に配置されて、少なくとも部分的にエラストマー材料の層で被覆された複数の補強コードからなる。これらの補強コードは、通常、例えば、レーヨン、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレート、或いは互いに撚り合わせて、金属合金で被覆したスチールワイヤ(例えば、銅/亜鉛、亜鉛/マンガン、亜鉛/モリブデン/コバルト合金等のような紡織繊維から作られる。
【0068】
カーカスプライ(3)は、通常、ラジアル形であり、即ち、周方向に対してほぼ垂直方向に配置された補強コードを包含する。各ビードワイヤ(4)は、タイヤ(1)の内周方向縁部に沿って画定されるビード(5)内に囲まれ、上記ビードで、タイヤは、車輪の一部を形成するリム(図1に示さない)上に係合する。各カーカスの折返し(3a)によって画定される空隙には、ビードワイヤ(4)が埋め込まれるビード充填剤(4a)が含有される。耐磨耗性ストリップ(図1に示さない)は、カーカスの折返し(3a)に対して軸方向外側位置に配置されてもよい。
【0069】
ベルト構造(6)は、カーカスプライ(3)の円周に沿って付与される。図1の特定の実施態様において、ベルト構造(6)は、複数の補強コード、通常は金属のコード、を組み込む2つのベルトストリップ(7a、7b)を含んでなり、上記の補強コードは、各ストリップ内で互いに平行であり、隣接するストリップと交差して、周方向に対して予め決められた角度を形成するように方向付けられる。ベルトストリップ(7a)の半径方向に一番外側に、場合により、「0°ベルト」として一般に公知の少なくとも1つの0度補強層(8)を付与することができ、該補強層は、通常、複数の補強コード、通常は紡織コードを組み込み、周方向に対して数度の角度で配置されて、エラストマー材料により、被覆されて互いに結合される。
【0070】
サイドウォール(9)もまた、カーカスプライ(3)の外側に付与され、このサイドウォールは、軸方向外側位置で、ビード(5)からベルト構造(6)の端部に延在する。
【0071】
側方縁部がサイドウォール(9)に接続されるトレッドバンド(10)は、ベルト構造(6)の半径方向外側の位置に周方向に付与される。具体的に、図1および図2に示されるように、トレッドバンド(10)は、キャップおよびベース構造であり、さらに具体的には、前記トレッドバンド(10)は、半径方向内側層もしくはトレッドベース(11)と半径方向外側層もしくはトレッドキャップ(12)とを含んでなり、前記トレッドキャップ(12)は、地面に接触するように設計された転動面を有する。横断ノッチにより接続されて、転動面上に分布する様々な形状およびサイズの複数のブロックを画定する円周溝(13)は、通常、上記転動面に設けられる。
【0072】
図1および図2に示すように、トレッドベース(11)は、均一の厚みを有する。
【0073】
いかなる場合においても、トレッドベース(11)の厚みが、均一であると限らず、例えば、その外側端部近くおよび/またはそれらの中心領域でより大きくなる。
【0074】
トレッドキャップ(12)は、トレッドキャップ(12)が摩滅している場合にトレッドベース(11)が地面に接触しないように、溝(13)の厚みと少なくとも等しい厚みを有し、好ましくはそれより大きい厚みを有するべきである。
【0075】
一般に「小型サイドウォール」として公知のエラストマー材料(図1には示さない)から作製されるストリップは、場合により、サイドウォール(9)とトレッドバンド(10)との間の接続領域に存在してもよく、この小型サイドウォールは、通常、トレッドバンド(10)との共押出により得られ、トレッドバンド(10)とサイドウォール(9)との間の機械的相互作用を改善することができる。或いは、サイドウォール(9)の端部部分は、トレッドバンド(10)の側方縁部を直接被覆する。
【0076】
トレッドバンド(10)とベルト構造(6)間の接続を提供する接着シートとして働くエラストマー材料(図1には示さない)は、トレッドバンド(10)とベルト構造(6)との間に配置されうる。
【0077】
チューブレスタイヤの場合、タイヤの膨張空気に対して必要な不浸透性を提供する一般に「ライナー」として公知のゴム層(図1には示さない)も、カーカスプライ(3)に対して半径方向内側位置に設けられうる。
【0078】
本発明に係るタイヤを製造する方法は、例えば、EP第199064号、米国特許第4,872,822号明細書、同第4,768,937号明細書に記載される当技術分野で公知の技法および装置を用いて実施され、前記方法には、グリーンタイヤを製造する少なくとも1つの段階と、上記タイヤを加硫する少なくとも1つの段階とが含まれる。
【0079】
さらに具体的には、タイヤを製造する方法は、適切な製造機械を用いて、後に一緒に組み合わされる様々なタイヤの構造要素(カーカスプライ、ベルト構造、ビードワイヤ、充填材、サイドウォールおよびトレッドバンド)に対応する一連の半完成品を事前に、互いに別々に製造する段階を含んでなる。次に、引き続く加硫段階により、上記の半完成品を一緒に接合して、一体式構造のブロック、つまり完成品のタイヤを得る。
【0080】
上記の半完成品を製造する段階の前に、従来型の技法に従って、前記半完成品を構成する様々なブレンドを調製して成形する段階が、実施される。
【0081】
このように得られた生タイヤは、続いての成形および加硫段階に送られる。この目的のため、使用される加硫成形型は、加硫が完了した時点でタイヤの外面を画定するように逆成形される壁部を有する成形用キャビティ内に、処理されるタイヤを収容するように設計されている。
【0082】
半完成品を使用せずに、タイヤまたはタイヤの部品を製造する別の方法が、例えば、上記の特許出願、EP第928680号およびEP第928702号に開示されている。
【0083】
生タイヤは、生タイヤの外面を成形キャビティの壁部に対して圧着できるようにタイヤの内面によって画定された空間内に加圧流体を導入して成形されうる。広範に実践されている成形方法の1つにおいて、エラストマー材料から製造された加硫チェンバが、蒸気および/または別の流体で圧力下で充填され、成形キャビティ内部に閉じ込められたタイヤ内で膨張する。このようにして、生タイヤは、成形キャビティの内壁に押され、所望の成形品が得られる。別の方法として、例えば、EP第242840号に記載のように得られるタイヤ内面の構成に従ってトロイダル状に賦形された金属支持体をタイヤ内部に設けることにより、膨張する加硫チャンバなしでも、成形を行うことができる。トロイダル状金属支持体と未加工のエラストマー材料との熱膨張係数の差は、適切な成形圧力を得るために利用される。
【0084】
この時点で、タイヤ内に存在する未加工のエラストマー材料を加硫する段階が、実施される。この目的のため、加硫成形型の外壁は、外壁が一般的に100℃〜230℃の最高温度に達するように、加熱流体(通常、蒸気)に接触して配置される。同時に、タイヤの内面は、タイヤを成形キャビティの壁部に圧着するために用いたのと同じ加圧流体を用いて、加硫温度まで加熱され、100℃〜250℃の最高温度まで加熱される。エラストマー材料の質量全体を十分な程度まで加硫するのに必要な時間は、通常3分〜90分の範囲で異なり、主にタイヤの寸法によって決まる。加硫が完了した時点で、タイヤを加硫成形型から取り出す。
【0085】
本発明は、以下の多くの実施例によってさらに例証されるが、単に説明する目的として付与するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0086】
実施例1〜3
エラストマー組成物の調製
表1に示すエラストマー組成物は、以下のように調製した(各種成分の量は、phrで示す)。
【0087】
硫黄、促進剤(CBS)および遅延剤(PVI)を除いて、全ての成分を、密閉式混練機(ポミーノ(Pomini) PL1.6型)内で約5分間一緒に混合した(第1工程)。温度が、145±5℃に達した直後に、エラストマー組成物を放出した。次に、硫黄、促進剤、遅延剤を添加して、開放式回転混練機内で混合した(第2工程)。
【0088】
【表1】

【0089】
100℃でのムーニー粘度ML(1+4)を、ISO標準289/1に従って、上記で得られた非架橋組成物に関して測定した。得られた結果を表2に示す。
【0090】
静的機械的特性を、151℃で30分間加硫した上記のエラストマー組成物のサンプルについてISO規格37に従って測定し、国際ゴム(IRHD)硬度における硬さ(ISO規格48に従って)を23℃と100℃で測定した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
表2は、以下の方法に従って、牽引−圧縮モードでインストロン(Instron)動的装置を用いて測定した動的機械的特性も示す。最初の長さに対して長手方向に10%変形するまで圧縮予荷重を加え、試験の全期間中、予め定めた温度(23℃または70℃)に保った、円筒形状を有する架橋材料の試験片(長さ=25mm、直径=14mm)に、予荷重下での長さに対して振幅±3.33%を有する動的正弦波歪を、周波数10Hzで加えた。動的機械的特性を、動的弾性率(E’)とタンデルタ(損失係数)値の点に関して表す。公知のように、タンデルタ値は、共に上記の動的測定で決定される粘性率(E”)と弾性率(E’)との比として、計算される。
【0092】
【表2】

【0093】
表2で示される結果から、本発明で開示されるエラストマー組成物から得られる架橋製品(実施例2および3)は、特に、引張弾性率、硬度および動的弾性率に関して、改善された機械的特性を有することがわかる。それらのヒステリシスが著しく高くなることなく、前記結果が得られる。さらに、表2で示される結果から、前記エラストマー組成物の粘性値は、著しく増加しなかったことがわかる。
【0094】
実施例4
本発明に従って、キャップおよびベース構造のトレッドバンドを有するサイズ265/35 R18のタイヤを製造した。
【0095】
実施例2のエラストマー組成物を用いて、半径方向内側層(トレッドベース)を調製した。
【0096】
表3で示される半径方向外側層(トレッドキャップ)のためのエラストマー組成物を、実施例1〜3で開示した通りに調製した(各種成分の量は、特に明記しない限り、phrで示す)。
【0097】
【表3】

【0098】
粘性、静的機械的特性および動的機械的特性を、実施例1〜3に記載した通りに測定した。得られた結果を表4に示した。
【0099】
【表4】

【0100】
キャップおよびベース構造を形成するように、上記のエラストマー組成物を共押出して、トレッドバンドを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明により製造されるタイヤの一部分の断面図である。
【図2】図1のタイヤトレッドバンドのいくつかの細部を拡大した断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 略トロイダル形状に賦形された少なくとも1つのカーカスプライを備えたカーカス構造であって、その対向側縁が、各々右側および左側ビードワイヤに対応し、各ビードワイヤが、各々のビード内に囲まれている、カーカス構造と、
− 前記カーカス構造に対して周方向外側位置に付与された少なくとも1本のベルトストリップを含むベルト構造と、
− 地面に接触するように設計された半径方向外側層と、前記半径方向外側層と前記ベルト構造の間に挟まれた半径方向内側層とを含む前記ベルト構造上に周方向に重ねられたトレッドバンドと、
− 前記カーカス構造に対して反対側の側面に沿って付与された一対のサイドウォールとを含む車両用タイヤであって、
前記半径方向内側層が、
(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと、
(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nmの各層厚みを有する層状無機材料と
を含む架橋エラストマー組成物を含む車両用タイヤ。
【請求項2】
前記層状無機材料(b)が、0.05nm〜15nmの各層厚みを有する請求項1に記載の車両用タイヤ。
【請求項3】
前記半径方向内側層が、10MPa〜30MPaの23℃での動的弾性率(E’)を有する架橋エラストマー組成物により形成される請求項1もしくは2に記載の車両用タイヤ。
【請求項4】
前記半径方向内側層が、15MPa〜20MPaの23℃での動的弾性率(E’)を有する架橋エラストマー組成物により形成される請求項3に記載の車両用タイヤ。
【請求項5】
前記半径方向内側層が、トレッドバンドの総厚みに対して、少なくとも10%の厚みを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項6】
前記半径方向内側層がトレッドバンドの総厚みに対して、20%〜70%の厚みを有する請求項5に記載の車両用タイヤ。
【請求項7】
前記層状無機材料(b)が、1phr〜120phrの量でエラストマー組成物中に存在する請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項8】
前記層状無機材料(b)が、5phr〜80phrの量でエラストマー組成物中に存在する請求項7に記載の車両用タイヤ。
【請求項9】
前記層状無機材料(b)が、スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト;バーミキュライト;ハロイサイト;セリサイト;またはそれらの混合物のようなフィロケイ酸塩から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項10】
前記層状無機材料(b)が、モンモリロナイトである請求項9項に記載の車両用タイヤ。
【請求項11】
前記層状無機材料(b)が、相溶化剤で表面処理されている請求項9もしくは10に記載の車両用タイヤ。
【請求項12】
前記相溶化剤が、以下の一般式(I):
【化1】


式中
− Yは、NもしくはPを表し;
− R、R、RおよびRは、同一でも異なってもよく、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキルもしくはヒドロキシアルキル基;直鎖もしくは分岐のC〜C20アルケニルもしくはヒドロキシアルケニル基;基−R−SHもしくは−R−NH、式中、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルキレン基を表す;C〜C18アリール基;C〜C20アリールアルキルもしくはアルキルアリール基;C〜C18シクロアルキル基、該シクロアルキル基は場合により酸素、窒素、硫黄のようなヘテロ原子を含有する、を表し;
− Xn−は、塩素イオン、硫酸イオンまたはリン酸イオンのようなアニオンを表し;
− nは、1,2または3を表す。
を有する第4級アンモニウム塩もしくはホスホニウム塩から選択される請求項11項に記載の車両用タイヤ。
【請求項13】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)が、20℃未満のガラス転移温度を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項14】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)が、シス−1,4−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、ポリブタジエン、場合によりハロゲン化されたイソプレン/イソブテン共重合体、1,3−ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン/1,3−ブタジエン共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、またはそれらの混合物から選択される請求項13項に記載の車両用タイヤ。
【請求項15】
前記エラストマー組成物が、少なくとも1種のジエンエラストマーポリマー(a)の総重量に対して、少なくとも10重量%の天然ゴムを含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項16】
前記エラストマー組成物が、少なくとも1種のジエンエラストマーポリマー(a)の総重量に対して、20重量%〜90重量%の天然ゴムを含む請求項15に記載の車両用タイヤ。
【請求項17】
前記エラストマー組成物が、少なくとも1種の、1種もしくはそれ以上のモノオレフィンと1種のオレフィンコモノマーまたはそれらの誘導体とのエラストマーポリマー(a’)をさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項18】
前記エラストマーポリマー(a’)が、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)もしくはエチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM);ポリイソブテン;ブチルゴム;ハロブチルゴム;またはそれらの混合物から選択される請求項17に記載の車両用タイヤ。
【請求項19】
前記エラストマー組成物が、さらに少なくとも1種のカーボンブラック充填剤(c)を含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項20】
前記カーボンブラック充填剤(c)が、20m/g以上の表面積(ISO規格6810に記載されるCTAB吸着法により測定)を有する請求項19に記載の車両用タイヤ。
【請求項21】
前記カーボンブラック充填剤(c)が、0.1phr〜120phrの量でエラストマー組成物中に存在する請求項19もしくは20に記載の車両用タイヤ。
【請求項22】
前記カーボンブラック補強充填剤(c)が、20phr〜90phrの量でエラストマー組成物中に存在する請求項21に記載の車両用タイヤ。
【請求項23】
前記エラストマー組成物が、さらに少なくとも1種のシランカップリング剤(d)を含む請求項1〜22のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項24】
前記シランカップリング剤(d)が、以下の一般式(II):
(R)Si−C2n−X(II)
式中、
基Rは、同一でも異なってもよく、少なくともひとつの基Rがアルコキシもしくはアリールオキシ基であるとする条件で、アルキル、アルコキシもしくはアリールオキシ基または水素原子から選択され;nは、1〜6の整数であり;Xは、ニトロソ、メルカプト、アミノ、エポキシド、ビニル、イミド、クロロ、−(S)2n−Si−(R)、式中、mおよびnは、1〜6の整数であり、基Rは、上記の定義の通りである。
により、同定されうる少なくとも1種の加水分解性シラン基を有するシランカップリング剤から選択される請求項23に記載の車両用タイヤ。
【請求項25】
前記シランカップリング剤(d)が、前記エラストマー組成物中に、0.01phr〜10phrの量で存在する請求項23もしくは24に記載の車両用タイヤ。
【請求項26】
前記シランカップリング剤(d)が、前記エラストマー組成物中に、0.5phr〜5phrの量で存在する請求項25に記載の車両用タイヤ。
【請求項27】
少なくとも1種の追加の補強充填剤が、0.1phr〜120phrの量で、前記エラストマー組成物中に存在する請求項1〜26のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項28】
前記補強充填剤が、シリカである請求項27に記載の車両用タイヤ。
【請求項29】
少なくとも1種のシランカップリング剤(d)が存在する請求項28に記載の車両用タイヤ。
【請求項30】
前記トレッドバンドの半径方向外側層が、0℃において5MPa〜15MPaの動的弾性率を有する架橋エラストマー組成物により形成される請求項1〜29のいずれか1項に記載の車両用タイヤ。
【請求項31】
前記トレッドバンドの前記半径方向外側層が、0℃において8MPa〜10MPaの動的弾性率を有する架橋エラストマー組成物により形成される請求項30に記載の車両用タイヤ。
【請求項32】
車両用タイヤを製造する方法であって、前記方法は、
− 少なくとも1つのカーカスプライと、前記カーカスプライに対して周方向外側位置のベルト構造と、前記ベルト構造に対して周方向外側位置のトレッドバンドとを組み立てることにより生タイヤを製造する工程であって、前記トレッドバンドは、地面に接触するように設計された半径方向外側層と、前記半径方向外側層と前記ベルト構造の間に介在された半径方向内側層とを含む工程と、
− 前記生タイヤを、加硫成形型中に形成された成形キャビティ中で成形する工程と、
− 前記生タイヤを過熱することにより架橋する工程と、
を含み、
前記半径方向内側層が、
(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと
(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nmの各層厚みを有する層状無機材料と
を含む架橋性エラストマー組成物を含む車両用タイヤを製造する方法。
【請求項33】
前記層状無機材料(b)が、0.05nm〜15nmの各層厚みを有する請求項32に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項34】
前記半径方向内側層が、
(a)少なくとも1種のジエンエラストマーポリマーと、
(b)少なくとも1種の0.01nm〜30nmの各層厚みを有する層状無機材料と
を含む架橋性エラストマー組成物からなる少なくとも1本のリボン状ストリップをコイル状に重ねて巻き取ることにより得られる請求項32に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項35】
前記層状無機材料(b)が、0.05nm〜15nmの各層厚みを有する請求項34に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項36】
前記層状無機材料(b)が、請求項7〜12のいずれか一項に従い規定される、請求項32〜35のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項37】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)が、請求項13〜16のいずれか1項に従い規定される、請求項32〜36のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項38】
前記エラストマー組成物が、さらに、請求項18に従い規定される、少なくとも1種の、1種もしくはそれ以上のモノオレフィンとオレフィンコモノマーもしくはそれらの誘導体とのエラストマーポリマー(a’)を含む請求項32〜37のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項39】
前記エラストマー組成物が、さらに、請求項20〜22のいずれか1項に従い規定される、少なくとも1種のカーボンブラック充填剤(c)を含む請求項32〜38のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項40】
前記エラストマー組成物が、さらに、請求項24〜26のいずれか1項に従い規定される、少なくとも1種のカップリング剤(d)を含む請求項32〜39のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項41】
少なくとも1種の追加の補強充填剤が、0.1phr〜120phrの量で、前記エラストマー組成物中に存在する請求項32〜40のいずれか1項に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項42】
前記補強充填剤が、シリカである請求項41に記載の車両用タイヤを製造する方法。
【請求項43】
少なくとも1種のシランカップリング剤(d)が、存在する請求項42に記載の車両用タイヤを製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−506589(P2007−506589A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503304(P2005−503304)
【出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006620
【国際公開番号】WO2005/002883
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(598164186)ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (123)
【Fターム(参考)】