説明

キャビンの前窓

【課題】上窓の窓枠下辺部への結露水の滞留を阻止して下辺部部の錆び付きを防止する。
【解決手段】上窓14と下窓15とから成り、上窓14は窓枠の外面にガラス板16を取付けて構成されるキャビンの前窓において、上窓14の窓枠下辺部19とガラス板16との間に、ガラス板16の内面に生じる結露水を下辺部下方に流出させる隙間Cを設けた。また、下辺部19を、垂直壁19aと傾斜壁19bとから成る断面V字形に形成し、垂直壁19aにトリム23を設けるとともに、底部に水抜き穴24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械におけるキャビンの前面に設けられる前窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示す油圧ショベルのキャビン1を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
このキャビン1は、内部に各種操作装置が設けられるとともに、左側に出入り用のドア2、前面に前窓3がそれぞれ設けられている。
【0004】
この前窓3は、たとえば上下方向にスライド式に開閉自在に設けられた上窓4と、この上窓4に接してその下方に設けられた下窓5とから成っている。
【0005】
上窓4は、額縁状に組まれた図示しない窓枠の外面にガラス板6が接着されたガラス板貼り付け構造となっており、この上窓4のガラス板6と下窓5のガラス板7の相接する端部間に緩衝用のトリム8が介装されている。
【0006】
図5,6は、従来の前窓3における上窓4と下窓5の相接する端部の構造の詳細を示す。
【0007】
両図において、9は上窓4の窓枠の下辺部で、この下辺部9は、垂直壁9aと、この垂直壁9aの下端からキャビン内側(図5,6の右側)に斜め上向きに延びる張り出し壁9bとから成る断面V字形に形成され、垂直壁9aの外面にダムゴム(緩衝ゴム)10を介してガラス板6が接着される。
【0008】
図5,6中、11は下辺部9の上面に取付けられた補強板、12はこの補強板11に取付けられた上窓開閉用の下部取手である。
【0009】
補強板11は、断面くの字形に形成され、くの字の一辺が垂直に立ち上がる状態で他辺が張り出し壁9bの上面に接合されている。
【0010】
以上の構成が示された特許文献は見当たらないが、関連する技術として特許文献1,2に記載されたものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−27700号公報
【特許文献2】実開平6−42328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図5,6に示す従来の前窓構造によると、上窓4の窓枠下辺部9がガラス板6の内面にダムゴム10を介して棚状に接しているため、キャビン内外の温度差によってガラス板6の内面に生じた結露水Wが、ガラス板6及びダムゴム10を伝って下辺部に溜まり、下辺部9(とくに垂直壁9aの上端面)に錆が発生し易いという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上窓の窓枠下辺部への結露水の滞留を阻止して下辺部の錆び付きを防止することができるキャビンの前窓を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、キャビンの前面に上窓と下窓が上下に相接して設けられ、上記上窓は、窓枠の外面にガラス板が取付けられて構成されるキャビンの前窓において、上記上窓の窓枠の下辺部とガラス板との間に、ガラス板の内面に生じる結露水を下辺部下方に流出させる隙間が設けられたものである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記下辺部は、上記ガラス板と平行な垂直壁を有し、この垂直壁にガラス板緩衝用のトリムが、垂直壁の上端面を含む上端部を被覆し、かつ、ガラス板との間に上記隙間が形成される状態で設けられたものである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記下辺部は、上記垂直壁と、この垂直壁の下端からキャビン内側に向けて突出する張り出し壁とから成り、この下辺部の底部に水抜き穴が設けられたものである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、上記下辺部は、上記張り出し壁がキャビン内側に斜め上向きに延びる断面V字形に形成され、このV字の底部に上記水抜き穴が設けられたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、上窓の窓枠下辺部とガラス板との間に、ガラス板の内面に生じる結露水を下辺部下方に流出させる隙間を設けたから、下辺部への結露水の滞留を阻止して下辺部の錆び付きを防止することができる。
【0019】
しかも、構成上は、下辺部(トリム)とガラス板との間に隙間を空けるだけであるため、水切り部材等の排水部品を追加したり、下辺部を水はけの良い形状に変更したりする場合と比較してコストダウンとなる。
【0020】
この場合、請求項2の発明によると、下辺部の垂直壁にガラス板緩衝用のトリムを、垂直壁の上端面を含む上端部を被覆し、かつ、ガラス板との間に上記隙間が形成される状態で設けたから、このトリムにより、廃止したダムゴムの代用としてガラス板の緩衝効果を確保しながら、下辺部のうち最も錆び付きのおそれが易い垂直壁の上端面の防錆効果を高めることができる。
【0021】
ところで、上記隙間の寸法は制限されるため、とくに冬期のようにキャビン内外の温度差が大きくてガラス板内面に生じる結露水が多くなると、結露水が隙間を越えて下辺部に流入し滞留する可能性がある。
【0022】
この点、請求項3,4の発明によると、下辺部を、垂直壁と張り出し壁とから成る樋状に形成し、その底部に水抜き穴を設けたから、結露水が下辺部に流入することがあっても、これを下辺部下方に排出し、滞留を阻止することができる。すなわち、下辺部の錆び付きをより確実に防止することができる。
【0023】
とくに請求項4の発明によると、下辺部を断面V字形に形成してその底部、つまりV字の谷底部分に水抜き穴を設けたから、流入した水を集めて速やかにかつ確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るキャビン前窓の部分垂直断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】上窓の窓枠の正面図である。
【図4】本発明の適用対象例である油圧ショベルのキャビンの概略斜視図である。
【図5】従来のキャビン前窓の部分垂直断面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図1〜図3によって説明する。
【0026】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて油圧ショベルのキャビン前窓13を適用対象としている。
【0027】
実施形態において、次の点は、図5,6に示す従来の前窓3と同じである。
【0028】
(i) 前窓13は、たとえば上下方向にスライド式に開閉自在に設けられた上窓14と、この上窓14に接してその下方に設けられた下窓15とから成っている。
【0029】
(ii) 上窓14は、額縁状に組まれた窓枠20(図3参照)の外面にガラス板16が接着されたガラス板貼り付け構造となっており、この上窓14のガラス板16と下窓15のガラス板17の相接する端部間に緩衝用のトリム18が介装されている。
【0030】
(iii) 上窓14における窓枠20の下辺部19は、垂直壁19aと、この垂直壁19aの下端からキャビン内側(図1,2の右側)に斜め上向きに延びる張り出し壁19bとから成る断面V字形に形成されている。
【0031】
実施形態の前窓13においては、図5,6に示す従来の前窓3における上窓4のダムゴム10を廃止する一方、窓枠下辺部19の垂直壁19aにガラス板緩衝用のトリム23を、垂直壁19aの上端面を含む上端部を被覆する状態で設け、このトリム23とガラス板16との間に、ガラス板16の内面に生じた結露水を下辺部下方に流出させる隙間Cを下辺部全幅に亘って設けている。
【0032】
また、下辺部19の底部、つまりV字の谷底部分に水抜き穴24を設けている。
【0033】
この水抜き穴24は、図3に示すように窓幅方向の複数個所(両端部及び中間部)に間隔を置いて設けている。
【0034】
さらに、断面くの字形の補強板21を、くの字の一辺が垂直に立ち上がる状態で他辺が下辺部19の張り出し壁19bの下面に接合し、この補強板21の下面側に上窓開閉用の下部取手22を取付けている。
【0035】
図3中、25は上窓開閉用の上部取手である。
【0036】
この構成によると、図2中の実線矢印イで示すように、ガラス板16の内面に生じた結露水Wが、窓枠20の下辺部19(トリム23)とガラス板16との間の隙間Cを通って下辺部19の下方に流れ落ちるため、従来と異なり、基本的に結露水Wが下辺部19に溜まらない。このため、滞留水による下辺部19の錆び付きを防止することができる。
【0037】
しかも、構成上は、下辺部19(トリム23)とガラス板16との間に隙間Cを空けるだけであるため、水切り部材等の排水部品を追加したり、下辺部19を水はけの良い形状に変更したりする場合と比較してコストダウンとなる。
【0038】
また、下辺部19の垂直壁19aにガラス板緩衝用のトリム23を、垂直壁19aの上端面を含む上端部を被覆し、かつ、ガラス板16との間に上記隙間Cが形成される状態で設けたから、このトリム23により、廃止したダムゴムの代用としてガラス板16の緩衝効果を確保しながら、下辺部19のうち最も錆びが発生し易い垂直壁19aの上端面の防錆効果を高めることができる。
【0039】
さらに、下辺部19の底部に水抜き穴24…を設けたから、とくに冬期のようにキャビン内外の温度差が大きくてガラス板内面に生じる結露水Wが多くなり、図2中破線矢印ロで示すように隙間C及びトリム23を越えて下辺部19に流入する事態が発生しても、流入した結露水Wを水抜き穴24…によって下辺部19から排出することができる。
【0040】
とくに、この実施形態では、下辺部19を断面V字形に形成してその底部、つまりV字の谷底部分に水抜き穴24…を設けたから、流入した水を集めて速やかにかつ確実に排出することができる。
【0041】
このため、下辺部19の錆び付きをより確実に防止することができる。
【0042】
加えて、補強板21を、従来とは逆に、下辺部張り出し壁19bの下面側、すなわち、補強板21の下端面が結露水Wにさらされない状態で設けたから、この補強板下端面の錆び付きをも防止することができる。
【0043】
他の実施形態
(1) 上窓14における窓枠下辺部19の断面形状は、上記実施形態で挙げたV字形に限らず、垂直壁と水平な張り出し壁とから成るL字形や、この水平な張り出し壁の先端にさらに垂直な立ち上がり壁が連続するU字形等としてもよい。
【0044】
(2) 上記実施形態では、窓枠下辺部19(トリム23)とガラス板16との間に隙間Cを下辺部全幅に亘って形成したが、結露水の流出作用を確保できる範囲で、下辺部幅方向の一乃至複数個所にダムゴムを、隙間Cを部分的に埋める状態で設け、これによって隙間Cを断続的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 キャビン
13 前窓
14 上窓
15 下窓
16 上窓のガラス板
17 下窓のガラス板
18 トリム
19 上窓の窓枠下辺部
19a 下辺部の垂直壁
19b 下辺部の張り出し壁
20 上窓の窓枠
21 補強板
23 トリム
24 水抜き穴
C 隙間
W 結露水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンの前面に上窓と下窓が上下に相接して設けられ、上記上窓は、窓枠の外面にガラス板が取付けられて構成されるキャビンの前窓において、上記上窓の窓枠の下辺部とガラス板との間に、ガラス板の内面に生じる結露水を下辺部下方に流出させる隙間が設けられたことを特徴とするキャビンの前窓。
【請求項2】
上記下辺部は、上記ガラス板と平行な垂直壁を有し、この垂直壁にガラス板緩衝用のトリムが、垂直壁の上端面を含む上端部を被覆し、かつ、ガラス板との間に上記隙間が形成される状態で設けられたことを特徴とする請求項1記載のキャビンの前窓。
【請求項3】
上記下辺部は、上記垂直壁と、この垂直壁の下端からキャビン内側に向けて突出する張り出し壁とから成り、この下辺部の底部に水抜き穴が設けられたことを特徴とする請求項2記載のキャビンの前窓。
【請求項4】
上記下辺部は、上記張り出し壁がキャビン内側に斜め上向きに延びる断面V字形に形成され、このV字の底部に上記水抜き穴が設けられたことを特徴とする請求項3記載のキャビンの前窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246975(P2011−246975A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121334(P2010−121334)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】