説明

キャンバー角を形成する搬送台車用の駆動輪の旋回構造

【課題】従来の搬送台車用の駆動輪は、タイヤ面と通路面が平行に当接することで、走行と旋回を可能にしていたが、タイヤの接触面が広く負荷が大きくなり、旋回装置を大型化して対処していた。本発明は、接触面を旋回時のみに少なくして負荷を小さくすることで小型の旋回装置にする構造を提供する。
【解決手段】前記駆動輪4は円筒状のホイール5を備え、該ホイール5の外周面にタイヤ6を嵌着して、ホイール5に内蔵するギヤー群の変速機7を備え、該変速機7に入力する電動モータ8を接続して、該変速機7の出力軸21にはホイール5と制動装置9を接続して、電動モータ8のモータ軸20と変速機7の出力軸21と制動装置9とを配置して、ホイール5を回動可能に支持する取付ベース14を荷台の水平に対して、傾斜又は偏心させ、前記ホイール5は、旋回する時にキャンバー角Cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車を走行させる駆動輪の旋回構造であり、駆動輪には電動モータと変速機を内蔵したホイールを備え、ホイールの外周面に緩衝材で覆われたタイヤを配置して、駆動回転させることで搬送台車を走行可能にするもので、走行方向に小さな力で容易に旋回可能にする構造であり、旋回時にタイヤの外周面を水平面からキャンバー角を付けた傾斜面とする駆動輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無人搬送車の駆動ユニットは、駆動車輪を走行用モータと減速機を一体に内蔵して形成し、この駆動車輪の中心の上段に旋回させる操舵ユニットを備え、制御することで重量物を搭載して搬送可能にする。駆動車輪の設置面は、幅が広く重量が掛かり、旋回するときの通路面との抵抗が大きく、操舵ユニットを大型にして出力を上げて対策していた。
【0003】
【特許文献1】 特許第4079619号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、積載重量が重くなると、駆動車輪に掛かる負荷も大きくなり、旋回させる動力も大きくして対処するが高価になり大型化し、タイヤと通路面との摩擦抵抗が大きく、発熱・騒音・振動を発生させてタイヤを早く傷める原因になっていた。
本発明では、直進時ではタイヤ幅の接地面を有効に作用させ、旋回時に車輪と通路面の接地面を傾斜させて少なくすることで、旋回時の抵抗を小さくして、タイヤの耐久性を向上させると共に、旋回力を小さくできるので小型の旋回装置にして、小型化して安価な駆動輪にして解決するものであり、旋回時にホイールの軸心方向を水平方向から傾斜角を付けるキャンバー角を備える構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明では、通路を搬送可能に走行する搬送台車の駆動輪であり、この駆動輪は円筒状のホイールを車輪として備え、この車輪のホイールの外周面にタイヤを嵌着している。ホイールの内部には、内蔵するギヤー群の変速機を備え、この変速機に入力する電動モータを接続して、この変速機の出力軸にはホイールと制動装置を接続して、電動モータのモータ軸と変速機の出力軸と制動装置とを同方向に配置している。
ホイールは、旋回可能に支持する支持軸を備え、駆動回転する旋回ギヤーを備え、この旋回ギヤーが荷台に固着された固定旋回用ギヤーを旋回してホイールを旋回可能にする。支持軸と固定旋回ギヤーは、偏心する位置に備える。ホイールの旋回は、回転可能に軸着する軸心方向の水平に対して、旋回時にタイヤと通路との接地面に傾斜角を形成する構成とする。
【0006】
請求項2の発明では、請求項1の支持軸の偏心位置を、固定旋回用ギヤーの旋回中心点から外れた位置に支持軸受を備えている。旋回ギヤーは、支持軸を支持して固定旋回用ギヤーの外周面を旋回して、ホイールの軸心方向を旋回可能に噛合せている。
前記支持軸受は、ホイールを支持する支持軸を回動可能に互いに球面形状にしている。この旋回ギヤーは、固定旋回用ギヤーを回転するとき、支持軸を緊張させて傾斜させることで、前記ホイールの水平な軸心方向に対して傾斜させる構成とする。
【0007】
請求項3の発明では、請求項1の固定旋回用ギヤーの偏心位置は、水平な荷台に対して傾斜させた固定旋回用ギヤーを固着させる。この固定旋回用ギヤーに噛合せる旋回ギヤーを備え、この旋回ギヤーがホイールを旋回時に傾斜する構成とする。
請求項1の構成では、ホイールを旋回させる旋回ギヤーである支持点と、固定旋回用ギヤーの中心である旋回中心点とを、異なる位置にしているため、旋回ギヤーの回転によりホイールを回動させ、タイヤの接地面が支持軸の傾斜でキャンパー角を形成する作用がある。
請求項2の構成では、旋回ギヤーが回転する方向に支持軸を緊張させることで、支持軸を傾斜してキャンパー角を形成する作用がある。
請求項3の構成では、傾斜した固定旋回ギヤーに沿って旋回ギヤーが回転することで、支持軸を傾斜させて、キャンパー角を形成する作用がある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、直進時のタイヤの接触面が全面線状に接触して、旋回時にタイヤと通路の接触面を点状に接触させて少なくすることで、タイヤの異音・騒音・振動を小さくでき、旋回抵抗も小さくすることができるので、旋回用モータを小型化して、安価で小型化した駆動輪にする効果がある。
【0009】
請求項2の発明では、ホイールの支持点と固定旋回用ギヤーの旋回中心点が偏心しているため、旋回方向に回動するとき、支持軸が傾斜してタイヤと通路の接触面を少なくする効果がある。
請求項3の発明では、固定旋回用ギヤーと旋回ギヤーとが傾斜しているので、直進時にはタイヤの全面が通路と接触して、旋回時には支持軸が傾斜してタイヤも傾斜することで、通路の接触面を小さくできるので、旋回力を小さくできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、搭載物Wを載置する荷台3を備えた搬送台車1の駆動輪4であり、目的地に進行させることで搬送することができるもので、この駆動輪4を駆動回転するホイール5と、ホイール5を軽快に操舵する旋回構造を提供するものである。
図1は、搬送台車1を示し、水平面の床を備えた荷台3と、制御装置等の電気部品と手動操作装置を備えて箱型に形成する運転台2と、荷台3の下面に走行させる駆動輪4が複数個配置されている。
【0011】
駆動輪4は、操舵機能を各駆動輪4に独立して備えていて、最小の旋回径になるように、軸心方向10を制御されている。搬送台車1は、運転者が操縦することも可能であるが、通常では自動運転により、定められた通路22を走行することができる。定められた通路22では、搬送台車1の進行方向が目的地まで前進して、戻りを後退で引き返す走行を行い、進行方向を直線・曲面・湾曲・直角等を進行する。走行中は、搬送台車1が近づいたことを知らせる警告音・ブザー・音声・音楽等を鳴らしながら移動する。
【0012】
そして駆動輪4は、金属製の円筒型のホイール5に変速機7を内蔵して、変速機7に電動モータ8を接続し、制動装置9の電磁ブレーキを配置して、回転可能に形成している。ホイール5の外周面には、通路22の衝撃を緩和する緩衝材であるゴム・ウレタン等により覆われ、タイヤ6を形成している。このタイヤ6は、軸心を同軸にする変速機7・電動モータ8・制動装置9を一線状に配置させて軸心方向10として、旋回による軸心方向10の先を軸方向点19として、制御による最短の旋回径になるように駆動輪4を回動させる。
【0013】
図2は、搬送台車1を正面から見たもので、荷台3の下面に駆動輪4を備え、旋回用モータ13の回転で車輪を右方向又は左方向に回動することができる。荷台3には、搭載物Wが載置されて、駆動輪4の回転で目的地に走行する。駆動輪4は、荷台3と搭載物Wの重量を受けて、タイヤ6が全面の線状の接地で図面の左側に示すように駆動回転させて走行するために、駆動力の伝達性も制動性も高く耐久性も高いものにできる。
逆に、旋回するときのタイヤ6は、タイヤ6の軸心方向10を水平方向から数度の鉛直方向に傾斜することで、タイヤ6の全面の線状の接地から端面の一部の点状の接地に変わり、旋回する抵抗が大幅に小さくなるため、小型の旋回用モータ13で可能になる。
【0014】
図3は、駆動輪4の駆動機構と旋回機構を説明するものであり、荷台3に固定された取付ベースの固定旋回用ギヤー14が備えてあり、外周面を歯面で形成している。その歯面と噛合う旋回ギヤー15が固定旋回用ギヤー14の外周に設置され、旋回用モータ13で該固定旋回用ギヤー14の外周面を旋回することで、ホイール5の軸心方向10を変えることができる。旋回用モータ13は、ホイール5を軸着しているホイール受フレーム11に固定され、固定旋回用ギヤー14の中心である旋回中心点24を支点として外周を旋回することで、ホイール5を旋回することができる。
ホイール受フレーム11は、支持軸16により回動可能に固定旋回用ギヤー14の偏心位置に軸受されている。この偏心位置の支持軸16は、旋回用モータ13が旋回中心点24を旋回することで、鉛直方向の支持軸16が数度(1度から3度)の傾斜をして、タイヤ6の接地面も傾斜する。この傾斜状態でタイヤ6は、旋回するので抵抗が小さく旋回力が小さくてよいことになる。
【0015】
ホイール5は、金属製の円柱であり、外周面にゴム・ウレタン・樹脂等のタイヤ6が嵌着されて、側面を軸受で軸着するホイール受フレーム11で回転可能に支持して、ホイール5内部に変速機7を備え、その変速機7に電動モータ8と制動装置9を同軸上に接続している。ホイール受フレーム11は、支持軸16を中心にして回動可能にし、傾斜も可能にする半球面体の軸受18を備えて、旋回と傾斜を可能にしている。
【0016】
図4は、直進するときの駆動輪4を示し、固定旋回用ギヤー14には偏心位置(中心点より前方)に支持軸16を備え、該固定旋回用ギヤー14の外周面には中心を支点にして一対に挟持する旋回ギヤー15・15aが回転することで、ホイール受フレーム11が旋回することになる。ホイール受フレーム11は、図5に示す平面図のように、固定旋回用ギヤーの旋回中心点24を中心にして回転する。支持軸16は、旋回中心点24より外れた位置に軸着して直進方向と一線上に配置されている。
【0017】
図6は、駆動輪4を図面上で左方向に旋回するもので、支持軸16の支持点25の位置が変わらずに、旋回中心点24を中心とするホイール5の方向が変わるため、支持軸16が傾斜することになる。支持軸16は、傾斜するとホイール5を傾斜することになる。図7は、ホイール5を右方向に傾斜するもので、旋回ギヤー15・15aを左回転することで、支持軸16が傾斜してキャンバー角Cを形成する。
【0018】
実施形態2では、旋回中心点24と支持点25を同心にして、固定旋回用ギヤー14を傾斜させて取り付け、この傾斜した固定旋回用ギヤー14に噛合う旋回ギヤー15・15aが回転することで、旋回用モータ13が旋回フレーム12を介して、ホイール受フレーム11を傾斜させながら旋回をする。ホイール5は、直進方向の回転では鉛直方向に支持軸16が旋回用ギヤー15・15aにより維持されている。
【0019】
旋回時には、旋回用ギヤー15・15aが傾斜した固定旋回用ギヤー14に沿って回転をするため、ホイール受フレーム11が傾斜されて支持軸16も傾斜することで、ホイール5が旋回されると共に支持軸16の傾斜によりタイヤ6と通路22の接地面とにキャンバー角Cを形成し、摩擦抵抗を小さくして旋回用モータ13の負荷を小さくして旋回容易にする。旋回用ギヤー15・15aは、固定旋回用ギヤー14の外周面を噛合って転動できるように図示略の補助ローラにより固定旋回用ギヤー14の側面に当接させて回転させるため、位置ずれも無く正確に外周面を噛合って回転することができる。
【0020】
図8は、台車フレーム17に固定旋回用ギヤー14を傾斜させて固着している。この固定旋回用ギヤー14の軸心である旋回中心点と、固定旋回用ギヤー14に噛合い旋回する旋回ギヤー15・15aの軸心である支持軸16とは、同心であり同軸上を回転するが、傾斜分だけ支持軸16も傾斜する。傾斜した支持軸16は、通路22の面とタイヤ6の接触面に傾斜角ができ、タイヤ6の摩擦力を小さくして旋回する。
【0021】
図9は、図面の左側に旋回しているところであり、正面を向けて固定旋回用ギヤー14が高い又は低くする位置に傾斜して、旋回ギヤー15・15aが噛合って旋回用モータ13の駆動回転により傾斜面を回転する。前記旋回ギヤー15・15aは、ホイール5が直進方向のときでは固定旋回用ギヤー14の中間位置で停止しているが、左に旋回するとき下り傾斜面の方向に旋回ギヤー15が噛合って進み、反対位置の旋回ギヤー15aが固定旋回用ギヤー14の中間位置から上り傾斜の方向へ進むことで、支持軸16を傾斜させることでホイール5も傾斜させキャンバー角Cを形成させて、タイヤ6の接地面を少なくして旋回を容易にする。
図10は、右方向に旋回する動作を示し、図9で示すように直進方向を高く傾斜させた固定旋回用ギヤー14に噛合う旋回ギヤー15・15aの回転で、支持軸16が傾斜してホイール5にキャンバー角Cを形成して、タイヤ6の旋回抵抗を小さくして旋回することができる。
【0022】
図11は、ホイールが傾斜して左に旋回している状態を示し、旋回用ギヤー15・15aが偏心した位置の固定旋回用ギヤー14に噛合って傾斜して、支持軸16を支持点25からホイール5の接地面までを、鉛直方向空から傾斜させながらホイール6を旋回させるので、タイヤ6の接地面の抵抗を少なくして旋回することができる。
図12は、図11で上述した方向とは反対の右方向に旋回する動作であり、図10のように旋回ギヤー15が上り方向に進み、もう一方の旋回ギヤー15aが下り方向に進むため、支持軸16が左側に傾斜してホイール5を左に傾斜させながら旋回をすることになる。支持軸16を回動可能にする支持受23は、半球面の皿状にして、支持軸16の球面状と同形にして、円滑に回動を容易にすることで支持軸16を傾斜させている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 搬送台車の斜視図。
【図2】 搬送台車に取付けた駆動輪の正面図。
【図3】 駆動輪の構造を示す正面図。
【図4】 搬送台車の旋回時の駆動輪の傾斜を説明する正面図。
【図5】 駆動輪の直進方向の動作を示す平面図。
【図6】 駆動輪の右旋回動作を示す平面図。
【図7】 駆動輪の左旋回動作を示す平面図。
【図8】 駆動輪の右旋回動作を示す正面図。
【図9】 駆動輪の直進方向を示す側面図。
【図10】 駆動輪の右旋回動作を示す平面図。
【図11】 ホイールの左旋回動作を示す正面図。
【図12】 ホイールの右旋回動作を示す正面図。
【符号の説明】
【0024】
1 搬送台車
3 荷台
4 駆動輪
5 ホイール
6 タイヤ
10 軸心方向
11 ホイール受フレーム
12 旋回フレーム
13 旋回用モータ
14 固定旋回用ギヤー
15 旋回ギヤー
16 支持軸
17 台車フレーム
18 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を搬送可能に走行する荷台を備えた搬送台車の駆動輪において、
前記駆動輪は円筒状のホイールを備え、該ホイールの外周面にタイヤを嵌着して、ホイールに内蔵するギヤー群の変速機を備え、該変速機に入力する電動モータを接続して、該変速機の出力軸にはホイールと制動装置を接続して、電動モータのモータ軸と変速機の出力軸と制動装置とを同方向に配置して、
前記ホイールは、操舵可能に支持する支持軸を備えると共に、駆動回転する旋回ギヤーを備え、
前記旋回ギヤーは、荷台に固着された固定旋回ギヤーを旋回して、ホイールを旋回可能にし、前記支持軸と該固定旋回ギヤーとが偏心する位置に備え、
該ホイールを回転可能に軸着する軸心方向の水平に対し、旋回時にタイヤと通路との接地面に傾斜角を形成することを特徴とするキャンバー角を形成する搬送台車用の駆動輪の旋回構造。
【請求項2】
前記支持軸の偏心位置は、固定旋回用ギヤーの旋回中心点から外れた位置にして、該外れた位置に支持軸受を備え、
前記支持軸受は、ホイールを支持する支持軸を回動可能な球面形状にして、
前記旋回ギヤーの回転が支持軸を緊張させ、
前記ホイールを軸心方向に対して傾斜させることを特徴とする請求項1記載のキャンバー角を形成する搬送台車用の駆動輪の旋回構造。
【請求項3】
前記固定旋回用ギヤーの偏心位置は、水平な荷台に対して固定旋回用ギヤーを傾斜させて、該固定旋回用ギヤーと噛合う旋回ギヤーを備え、
前記旋回ギヤーの回転が支持軸を緊張させ、
前記ホイールを軸心方向に対して傾斜させることを特徴とする請求項1記載のキャンバー角を形成する搬送台車用の駆動輪の旋回構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−52707(P2010−52707A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251636(P2008−251636)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000237835)富士変速機株式会社 (76)
【Fターム(参考)】