説明

キャンロール、長尺樹脂フィルム基板の処理装置及び処理方法

【課題】 処理装置等に用いるキャンロールにおいて、その外周面と長尺樹脂フィルム基板との間に形成されるギャップ部にガスを導入する際に、ギャップ部のギャップ間隔をほぼ一定にして、フィルムのシワ発生を防止することができるキャンロールを提供する。
【解決手段】 周方向に沿って略均等な間隔をあけ且つ全周に亘り回転軸方向に沿って配設された複数のガス導入路11を有し、各ガス導入路11はキャンロール10の回転軸方向に沿って略均等な間隔で外周面10a側に開口する複数のガス放出孔12を有すると共に、外径が回転軸方向の中央部で最も長く且つ中央部から両端部に向けて次第に短くなるクラウン形状の外周面10aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら連続してスパッタリング等の熱負荷の掛かる処理を行う装置に用いるキャンロールと、そのキャンロールを備えた処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルム上に金属膜を被覆したフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板には耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付耐熱性樹脂フィルムが用いられているが、近年の配線パターンの繊細化や高密度化に伴い、金属膜付耐熱性樹脂フィルム自体がシワ等のない平滑なものであることが重要であるとされている。
【0003】
この種の金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの製造方法として、従来から、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングし且つ乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、並びに、耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法若しくは真空成膜法と湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法に用いる真空成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
【0004】
メタライジング法について、特許文献1には、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上に導体層を形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリイミドフィルム上に、銅ニッケル合金をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜とを順に積層することにより得られるフレキシブル回路基板用材料が開示されている。尚、ポリイミドフィルムの様な耐熱性樹脂フィルムに真空成膜を行う場合には、スパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
【0005】
ところで、上述した真空成膜法において、一般にスパッタリング法は密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷がかかると、フィルムにシワが発生し易くなることも知られている。このシワの発生を防ぐために、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置であるスパッタリングウェブコータでは、搬送される耐熱性樹脂フィルムをキャンロールにロールツーロールで巻き付けることによって、成膜中の耐熱性樹脂フィルムを裏面側から冷却する方式が採用されている。
【0006】
例えば特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)の真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式の真空スパッタリング装置には、キャンロールの役割を担うクーリングロールが具備されており、更にクーリングロールの少なくともフィルム送入れ側若しくは送出し側に設けたサブロールによって耐熱性樹脂フィルムをクーリングロールに密着する制御が行われている。
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載されているように、キャンロールの外周面はミクロ的に見て平坦ではないため、キャンロールとその外周面に接触して搬送される耐熱性樹脂フィルムとの間には真空空間を介して離間する隙間(ギャップ部)が存在している。このため、成膜の際に生じる耐熱性樹脂フィルムの熱はキャンロールに効率よく伝熱されているとはいえず、これがフィルムのシワ発生の原因となっていた。尚、非特許文献2によれば、導入ガスがアルゴンガスで導入ガス圧力が500Paの場合、キャンロール外周面と耐熱性樹脂フィルムとのギャップ部の距離が約40μm以下の分子流領域のとき、ギャップ部の熱コンダクタンスは250(W/m・K)であるとされる。
【0008】
このような問題を解決するため、キャンロール外周面と耐熱性樹脂フィルムとの間のギャップ部にキャンロール側からガスを導入して、ギャップ部の熱伝導率を真空に比べて高くする技術が提案されている。例えば特許文献4には、キャンロール側からガスを導入する方法として、キャンロールの外周面にガスの導入口となる多数の微細な孔を設ける技術が開示されている。また、特許文献5には、キャンロールの外周面にガスの導入口となる溝を設ける技術が開示されている。更に、キャンロール自体を多孔質体で構成し、その多孔質体自身の微細孔をガス導入口とする方法も知られている。
【0009】
尚、スパッタリングや蒸着の際に生じる熱に起因して発生するシワを伸び易くする手段として、特許文献6には、コーティングロールの外周面の形状をロール端部よりもロール中央部が太い太鼓型(クラウン形状)にすることが記載されている。このコーティングロールによれば、ロール中央部でのフィルムの密着力が高くなり、ロール端部の摩擦による拘束力が低下されるため、シワがフィルム幅方向に逃げることでシワの発生が抑えられるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−98994号公報
【特許文献2】特許第3447070号公報
【特許文献3】特開昭62−247073号公報
【特許文献4】国際公開第2005/001157号パンフレット
【特許文献5】米国特許第3414048号明細書
【特許文献6】国際公開第2002/070778号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】"Vacuum Heat Transfer Models for Web Substrates: Review of Theory and Experimental Heat Transfer Data," 2000 Society of Vacuum Coaters, 43rd. Annual Technical Conference Proceeding, Denver, April 15-20, 2000, p.335
【非特許文献2】"Improvement of Web Condition by the Deposition Drum Design," 2000 Society of Vacuum Coaters, 50th. Annual Technical Conference Proceeding (2007), p.749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献4や特許文献5に示すようなキャンロール外周面のガス放出孔からガスを導入する方法では、キャンロールと樹脂フィルムの間のキャップ部(隙間)における間隔は均一にならず、フィルム幅方向の中央部におけるギャップ部の間隔(ギャップ間隔)が両端部におけるギャップ間隔よりも広くなることが避けられなかった。その結果、キャンロールと樹脂フィルムの間でギャップ間隔の広い箇所の熱コンダクタンスが低下するため、部分的にフィルム温度が上昇してシワ発生の原因となっていた。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、ロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板をキャンロールの外周面に巻き付けて移動させながら、成膜などの熱負荷の掛かる処理を施す場合において、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルム基板との間に形成されるギャップ部にガスを導入する際に、ギャップ部の熱コンダクタンスが均一になるようにギャップ間隔をほぼ一定にして、フィルムのシワ発生を防止することができるキャンロール、そのキャンロールを備えた処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明者は、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルム基板との間にガスを導入したとき、キャンロール外周面と長尺樹脂フィルム基板との間に形成されるギャップ部の間隔を一定に制御する方法について検討した結果、キャンロールの外周面の形状を外径が回転軸方向の中央部で最も長く且つ中央部から両端部に向けて次第に短くなるクラウン形状とすることによって、ギャップ部の間隔をほぼ一定に制御でき、フィルムのシワ発生を防止できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
即ち、本発明が提供するキャンロールは、真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板を外周面に巻き付けながら熱負荷の掛かる処理をするキャンロールであって、周方向に略均等な間隔をあけ且つ全周に亘り回転軸方向に沿って配設された複数のガス導入路を有し、これら複数のガス導入路の各々はキャンロールの回転軸方向に沿って略均等な間隔で外周面側に開口する複数のガス放出孔を有すると共に、外径が回転軸方向の中央部で最も長く且つ該中央部から両端部に向けて次第に短くなるクラウン形状の外周面を備えることを特徴とする。
【0016】
また、キャンロール外周面に導入されたガスはキャンロール外周面の長尺樹脂フィルム基板が接触していない領域から放出されやすいが、本発明者の検討によれば、長尺樹脂フィルム基板がキャンロール外周面に接触していない範囲外に位置しているガス導入路に対してガスの供給を遮断することによって、キャンロールと樹脂フィルムの間のキャップ部に十分な量のガスを導入することができるため、より一層効果的にシワの発生を防ぐことができることも分かった。
【0017】
即ち、上記本発明によるキャンロールにおいては、前記ガス導入路のガス供給側に、長尺樹脂フィルム基板がキャンロール外周面に接触する角度範囲外に位置しているガス導入路に対してガスの供給を遮断するガス供給制御手段を備えることが更に好ましい。
【0018】
本発明は、また、上記本発明によるキャンロールを備えたことを特徴とする長尺樹脂フィルム基板の処理装置を提供するものである。更に、本発明は、上記本発明によるキャンロールに長尺樹脂フィルム基板を巻き付けながら処理することを特徴とする長尺樹脂フィルム基板の処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルム基板との間にガスを導入して両者のギャップ間隔をほぼ一定に維持することができるため、キャンロール外周面と長尺樹脂フィルム基板とのギャップ部全体において熱コンダクタンスが均一になり、前処理や成膜等の熱負荷の掛かる処理の際にフィルム温度を均一に維持して、長尺樹脂フィルム基板のシワの発生をなくすことができる。
【0020】
従って、本発明のキャンロール、長尺樹脂フィルム基板の処理装置あるいは処理方法を用いることにより、金属膜をスパッタリング等で成膜する際に、樹脂フィルム基板に与えられた熱を効率よくキャンロールへ伝導できるため、シワの発生のない高品質の金属膜付耐熱性樹脂フィルムを高い歩留まりで作製し、液晶テレビ、携帯電話等のフレキシブル配線基板に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】キャンロールを備えたロールツーロール方式による長尺樹脂フィルム基板の処理装置の一具体例を示す模式図である。
【図2】本発明によるキャンロールの一具体例を示す概略の断面図である。
【図3】図2のキャンロールのガス供給側からみた側面図である。
【図4】本発明のキャンロールが具備するガスロータリージョイントの一例を分解して示した概略の斜視図である。
【図5】従来のキャンロールにおけるガス導入時の樹脂フィルムの位置を示す概略の断面図である。
【図6】本発明のキャンロールにおけるガス導入時の樹脂フィルムの位置を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
キャンロールを備えたロールツーロール方式による長尺樹脂フィルム基板の処理装置としては、例えば図1に示す成膜装置、具体的にはスパッタリングによる真空成膜装置がある。このスパッタリングによる真空成膜装置について、図1を参照して具体的に説明する。尚、図1に示す長尺樹脂フィルム基板の成膜装置はスパッタリングウェブコータと称される装置であり、ロールツーロール方式で搬送される長尺樹脂フィルム基板の表面に連続的に効率よく成膜処理を施す場合に好適に用いられる。
【0023】
ロールツーロール方式で搬送される長尺樹脂フィルム基板の成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50は、真空チャンバー51内において巻出ロール52から巻き出された長尺樹脂フィルムFをモータでキャンロール56に巻き付けて搬送させながら、所定の成膜処理を行った後、巻取ロール64で巻き取るようになっている。巻出ロール52から巻取ロール64までの搬送経路の途中に配置されたキャンロール56はモータで回転駆動され、キャンロール56の内部には温調された冷媒が循環している。
【0024】
この成膜装置50では、スパッタリング成膜に際して、真空チャンバー51内を到達圧力10−4Pa程度まで減圧した後、スパッタリングガスの導入により0.1〜10Pa程度の圧力調整が行われる。スパッタリングガスにはアルゴンなど公知のガスが使用され、目的に応じて更に酸素などのガスが添加される。真空チャンバー51の形状や材質については、減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、種々のものを使用することができる。上記した真空チャンバー51内の減圧状態を維持するため、真空チャンバー51には図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置が具備されている。
【0025】
巻出ロール52からキャンロール56までの搬送経路には、長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール53と、長尺樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール54が配置されている。また、張力センサロール54から送り出されてキャンロール56に向かう長尺樹脂フィルムFは、キャンロール56の近傍に設けられたモータ駆動のフィードロール55によってキャンロール56の周速度に対する調整が行われ、これによりキャンロール56の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させて搬送することができる。
【0026】
キャンロール56から巻取ロール64までの搬送経路にも、上記と同様に、キャンロール56の周速度に対する調整を行うモータ駆動のフィードロール61、長尺樹脂フィルムFの張力測定を行う張力センサロール62、及び長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール63がこの順に配置されている。
【0027】
上記巻出ロール52及び巻取ロール64では、パウダークラッチ等によるトルク制御によって、長尺樹脂フィルムFの張力バランスが保たれている。また、キャンロール56の回転と、これに連動して回転するモータ駆動のフィードロール55、61により、巻出ロール52から長尺樹脂フィルムFが巻き出されて巻取ロール64に巻き取られるようになっている。
【0028】
キャンロール56の近傍には、長尺樹脂フィルムFがキャンロール56の外周面上に巻き付けられる搬送経路(即ち、図1の角度範囲A:キャンロール56の外周面のうち長尺樹脂フィルムFが接触する領域)に対向する位置に、成膜手段としてのマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60が設けられている。尚、上記した角度範囲Aのことを、長尺樹脂フィルムFの抱き角と称することもある。
【0029】
金属膜のスパッタリング成膜の場合には、図1に示すように板状のターゲットを使用することができるが、板状ターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。これが問題になる場合には、ノジュールの発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用することが好ましい。
【0030】
また、図1の長尺樹脂フィルムFの成膜装置50は、熱負荷の掛かる処理としてスパッタリング処理を想定したものであるため、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60が図示されているが、熱負荷の掛かる処理が蒸着処理などの他のものである場合は、板状ターゲットに代えて他の真空成膜手段が設けられる。尚、他の熱負荷の掛かる真空成膜処理として、CVD(化学蒸着)又は真空蒸着などを用いることができる。
【0031】
上記成膜装置等の長尺樹脂フィルムの処理装置で使用する本発明のキャンロールは、図2に示すように、キャンロール10の周方向に略均等な間隔をあけ且つ全周に亘り回転軸14の方向に沿って配設された複数のガス導入路11を有し、これら複数のガス導入路11の各々はキャンロール10の回転軸14の方向に沿って略均等な間隔で外周面側に開口する複数のガス放出孔12を有している。
【0032】
更に、本発明のキャンロールでは、キャンロール10の外周面10aの形状がクラウン形状(太鼓型)になっている。即ち、キャンロール10の外径が回転軸14の方向の中央部で最も長く、且つ該中央部から両端部に向けて次第に短くなっている。このようなクラウン形状のキャンロールは、公知の切削研磨加工により作製することができる。また、キャンロールをクラウン形状とする加工は、ガス放出孔の穿設前でも穿設後でも適宜選択可能である。
【0033】
キャンロール10は有底円筒部材13で構成されており、そのクラウン形状をなす外周面10aが長尺樹脂フィルムの巻き付く搬送経路となる。有底円筒部材13の内面側には、冷却水などの冷媒が流通する冷却水循環部15が形成されている。冷媒は装置外部に設けられた冷媒冷却装置(図示せず)と冷却水循環部15との間を循環できるようになっており、これによりキャンロール10の温度調節が可能となっている。このような構造をジャケットロール構造と称している。また、キャンロール10の回転軸14は内側配管14aと外側配管14bの二重冷却配管構造になっており、その内側配管14aが冷媒の導入管及び外側配管14bが排出管となって、冷却水などの冷媒が循環している。
【0034】
キャンロール10のクラウン形状をなす外周面10aには、周方向に略均等な間隔をあけ且つ全周に亘り回転軸14の方向に沿って複数のガス導入路11が配設されている。これら複数のガス導入路11には、それぞれキャンロール10の回転軸14の方向に沿って略均等な間隔で、クラウン形状をなす外周面10a側に開口する複数のガス放出孔12が穿設されている。これらのガス導入路11とガス放出孔12により、キャンロール10の外周面10aとその外周面10aに巻き付けられる長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部(間隙)にガスを導入することができる。
【0035】
これらガス導入路11の本数や、各ガス導入路11が有するガス放出孔12の個数は、キャンロール10の外周面10aのうち長尺耐熱性樹脂フィルムが巻き付けられる領域の面積、長尺樹脂フィルムの張力やガスの放出量等に応じて、適宜定めることができる。各ガス放出孔12の直径は、キャンロール10の外周面10aと長尺樹脂フィルムとの間に形成されるギャップ部(隙間)に良好にガスを導入できる大きさであれば特に限定されない。しかし、ガス放出孔12の直径が1000μmを越えると付近の冷却効率が低下する原因となるため、一般的には30〜1000μm程度の直径が好ましい。
【0036】
また、キャンロール10のクラウン形状をなす外周面10aに開口するように各ガス導入路11に設ける複数のガス放出孔12については、小さな直径を有するガス放出孔12を狭ピッチにして多数は配置することがキャンロール10の外周面10aの全面に亘って熱伝導性を均一化できるという点において好ましい。しかしながら、小さな直径のガス放出孔12を狭ピッチで多数設ける加工技術は困難を伴うので、現実的には直径が150〜500μm程度のガス放出孔12を5〜10mmのピッチで配置することがより好ましい。
【0037】
複数のガス導入路11に供給するガスは、ガス供給源(図示せず)からパイプなどを経て複数のガス分配管25により各ガス導入路11に供給される。各ガス導入路11のガス供給側には、長尺樹脂フィルムが回転しているキャンロール外周面に接触する角度範囲A(図1参照)以外、即ち角度範囲B(図1参照)の内側に位置しているガス導入路11に対して、ガスの供給を遮断するガス供給制御手段を備えることが好ましい。このような角度範囲B内のガス導入路11へのガスの供給を遮断するガス供給制御手段としては、邪魔板のような機械的にガス導入路11を閉鎖する手段のほか、電気的又は電磁気的に弁等でガス導入路11を閉鎖する手段などがある。
【0038】
好ましいガス供給制御手段として、図2〜4に示すガスロータリージョイント20について説明する。ガスロータリージョイント20は、ガス導入側の固定リングユニット21とガス放出側の回転リングユニット22から構成され、その中央開口部にキャンロール10の回転軸14が挿入された状態で保持されている。具体的には、固定リングユニット21は真空チャンバーの底部などに固定され、回転リングユニット22はキャンロール10の側面に固定されてキャンロール10と共に回転するようになっている。
【0039】
このように固定リングユニット21と回転リングユニット22は対向して配置され、互いに接した状態で摺動する構造となっている。従って、ガスロータリージョイント20からのガスのリークを防ぐために、固定リングユニット21と回転リングユニット22の摺動界面には、公知のガスシール手段を配置することが好ましい。
【0040】
ガス導入側の固定リングユニット21は、ガス供給源から送られてきたガスのガス導入口23と、ガス導入口23に接続しているガス分配溝24とを備えている。ガス分配溝24はリング状ではなく、図3〜4に示すように上部が欠けた略C型の形状になっている。一方、回転リングユニット22は放射状に伸びる複数のガス分配管25を備えており、各ガス分配管25のガス導入側の端部はキャンロール10の回転に伴って上記固定リングユニット21のガス分配溝24に開口するようになっており、ガス放出側の他端はそれぞれキャンロール10に設けた複数のガス導入路11に連通している。
【0041】
ガス供給源から送られてきたガスは固定リングユニット21のガス導入口23に入り、ガス導入口23から固定リングユニット21内のガス分配溝24に供給される。ガス分配溝24に導入されたガスは、回転リングユニット22の複数のガス分配管25を通ってキャンロール10に設けた各ガス導入路11に入り、各ガス導入路11に設けた複数のガス放出孔12からキャンロール10の外周面と長尺樹脂フィルムの間に放出される。その際、ガス分配溝24は上部が欠けた略C型に形成されているため、長尺樹脂フィルムFがキャンロール10に接触していない角度範囲B(図1参照)に位置しているガス導入路11は閉鎖されてガスが流れない構造になっている。
【0042】
尚、ガスロータリージョイントは、上記した固定リングユニットと回転リングユニットが対向して摺動する構造に限定されるものではない。例えば、固定リングユニットの外周に回転リングユニットを設けてもよい。また、ガス導入路の数が非常に多く、それぞれガス分配管を通じてガスロータリージョイントに接続することが困難な場合には、隣接する数本のガス導入路をまとめてから、まとめた数本のガス導入路に接続するガス分配管をそれぞれガスロータリージョイントに接続してもよい。
【0043】
上記ガスロータリージョイントを備えた本発明のキャンロールによれば、ガスロータリージョイントによりキャンロールに長尺樹脂フィルムFが接触している箇所(図1の角度範囲A)のキャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムにより形成される隙間(ギャップ部)にガスが放出され、長尺樹脂フィルムが巻かれていない箇所(図1の角度範囲B)には放出されることはない。従って、導入したガスのほとんどをキャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムとの間に形成さえるギャップ部に放出できるため、ギャップ間隔をほぼ一定に維持することが容易になり、キャンロール外周面と長尺樹脂フィルムとの隙間全体における熱コンダクタンスを均一にすることが可能となる。
【0044】
尚、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルム基板とのギャップ部が40μm程度のとき、キャンロールに導入してギャップ部に放出されガスは真空成膜装置が備える真空ポンプで排気可能である。従って、ギャップ部に導入するガスをスパッタリング雰囲気のガスと同じにすれば、スパッタリング雰囲気を汚染することもない。
【0045】
本発明のキャンロールは、上述した成膜装置以外にも、プラズマ処理やイオンビーム処理にも好適に使用することができる。即ち、プラズマ処理やイオンビーム処理は、長尺樹脂フィルム基板の表面改質を目的として真空チャンバー内の減圧雰囲気下で行われるが、長尺樹脂フィルム基板に熱負荷が掛かる処理であるためシワ発生の原因となる。そのため、本発明のキャンロールを使用すれば、キャンロールの外周面と樹脂フィルムとの間のギャップ間隔をほぼ一定に維持することができ、熱コンダクタンスを簡単に均一にすることができるので、シワの発生をなくすことが可能となる。
【0046】
尚、プラズマ処理とは、公知のプラズマ処理方法により、例えばアルゴンと酸素の混合ガスまたはアルゴンと窒素の混合ガスからなる減圧雰囲気下において放電を行うことにより、酸素プラズマまたは窒素プラズマを発生させて長尺樹脂フィルム基板を処理する方法である。また、イオンビーム処理とは、公知のイオンビーム源を用い、強い磁場を印加した磁場ギャップでプラズマ放電を発生させ、プラズマ中の陽イオンを陽極による電解でイオンビームとして照射することにより、長尺樹脂フィルム基板を処理する方法である。
【0047】
上記長尺樹脂フィルム基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂フィルムや、ポリイミドフィルムのような耐熱性樹脂フィルムが挙げられる。長尺樹脂フィルム基板として耐熱性樹脂フィルムを用い、金属膜をスパッタリング等により成膜することで、金属膜付耐熱性樹脂フィルムが得られる。具体的には、金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの成膜装置(スパッタリングウェブコータ)を用いるメタライジング法により、シワのない金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムを製造することができる。
【0048】
上記金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルムの表面にNi系合金等からなる膜とCu膜が積層された構造体が例示される。このような構造を有する金属膜付耐熱性樹脂フィルムは、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板に加工される。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
【0049】
上記Ni合金等からなる膜はシード層と呼ばれ、Ni−Cr合金又はインコネル、コンズタンタンやモネル等の各種公知の合金を用いることができるが、その組成は金属膜付耐熱性樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の所望の特性に応じて選択される。また、金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの金属膜を更に厚くしたい場合は、湿式めっき法を用いて金属膜を形成することがある。尚、電気めっき処理のみで金属膜を形成する場合と、一次めっきとして無電解めっき処理を行い、二次めっきとして電解めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合もある。湿式めっき処理は、常法による湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
【0050】
また、金属膜付耐熱性樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルム等が挙げられる。これらの耐熱性樹脂フィルムは、金属膜付フレキシブル基板としての柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性を有する点から好ましいものである。
【0051】
尚、上記金属膜付耐熱性樹脂フィルムとして、長尺耐熱性樹脂フィルムにNi-Cr合金やCu等の金属膜を積層した構造体を例示したが、上記金属膜以外に目的に応じて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等を用いることも可能である。その場合にも、酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の成膜に本発明のキャンロール及び成膜装置や成膜方法を用いることができる。
【0052】
一般に、上記した耐熱性樹脂フィルムの表面並びにキャンロールの外周面は、ミクロ的に完全な平面ではない。そのため、従来の円筒形状のキャンロールを備えた成膜装置では、キャンロールの外周面と樹脂フィルムの間に隙間(ギャップ部)が生じ、ギャップ部では真空による断熱のため熱伝導効率が低下している。その結果、ギャップ部での熱コンダクタンスが高まり、成膜等の熱負荷によって耐熱性樹脂フィルムにシワが発生する原因になっている。例えば導入ガスがアルゴンガスの場合、導入ガス圧力が500Paでギャップ間距離が約40μm以下の分子流領域においては、ギャップ部の熱コンダクタンスは250W/m・Kとなることが報告されている(非特許文献2参照)。
【0053】
本発明者の検討によれば、従来のキャンロールは回転軸と外周面との距離が一定の円柱状であるため、このガス放出機能付きキャンロールを長尺樹脂フィルム基板の真空成膜装置に組込み、真空条件下でキャンロールの外周面からガスを放出したとき、長尺耐熱樹脂フィルムとキャンロール外周面のギャップ間隔をレーザ変位計で測定すると、均一ではない状態になっていることが分かった。
【0054】
即ち図5に示すように、従来のキャンロール56のガス導入路56aに設けた多数のガス放出孔56bからガスを放出した場合、長尺樹脂フィルムFとキャンロール56の円筒形状の外周面とのギャップ間隔は、キャンロール56の中心部付近で広く、両端部付近では狭くなっていた。勿論、長尺樹脂フィルムFの張力を強くすればギャップ間隔は狭くなり、逆に張力を弱くすればギャップ間隔は広くなるが、いずれの場合においても長尺樹脂フィルムFの伸びとの導入ガス圧のバランスによって長尺樹脂フィルムFは図5に示す断面が円弧状の形状を保っている。
【0055】
上記したギャップ間隔が広くなると、分子同士の衝突が無視できない粘性流領域となり、熱コンダクタンスが低下することが知られている。従って、図5に示す長尺樹脂フィルムFとキャンロール56のギャップの状態(回転軸の中心部付近で広く且つ両端部付近で狭い)では、中央部の熱コンダクタンスが小さく、両端部の熱コンダクタンスが大きくなる。即ち、キャンロール56の中央部のフィルム温度は両端部より高くなる可能性が高くなり、フィルム温度にムラが生じる結果、長尺樹脂フィルムFが歪んでシワ発生の原因となる。
【0056】
一方、本発明のキャンロールは、回転軸方向の両端部よりも中央部が太い太鼓型(クラウン形状)になっている。このようなクラウン形状のキャンロールを用いれば、図6に示すように、キャンロール10のガス導入路11に設けた多数のガス放出孔12から放出されるガスにより、長尺樹脂フィルムFとキャンロール10の外周面10aとのギャップはほぼ均一になる。特に、クラウン形状のキャンロール10の外周面10aは、外径が略均一の曲率で変化していることが望ましい。
【0057】
また、本発明のクラウン形状のキャンロールは、キャンロールの中央部の外径と両端部の外径との差Yが、中央部と両端部までの距離Xmmに対して下記数式1で示される範囲にあることが好ましい。
[数式1]
0.1×X/375≦Y≦1.0×X/375
【0058】
例えば、キャンロールの片方の端部から他方の端部までの長さ、即ち回転軸方向の長さが750mmであれば、その中央部から各端部までの距離は375mmであるから、上記数式1からキャンロールの端部と中央部の外径の差Yは0.1〜1mmの範囲となる。そして、このような外径の差Yで中央部が両端部より太くなるような曲率であれば、長尺樹脂フィルムとキャンロールの外周面とのギャップ間隔はほぼ均一になるからである。
【0059】
キャンロールの外周面の形状について、両端部よりも中央部が太くなり過ぎる(中央部と端部の外径の差Yが大きくなり過ぎる)と、長尺樹脂フィルムの中央部のギャップが端部より狭くなってしまい、両端部の熱コンダクタンスが低下する原因となる。逆に、両端部と中央部の太さが接近し過ぎる(中央部と端部の外径の差Yが小さくなり過ぎる)と、従来のキャンロールの外周面形状に近くなるため、本発明の効果はほとんど得られなくなる。
【実施例】
【0060】
図2に示す金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの成膜装置(スパッタリングウェブコータ)を用いて、長尺樹脂フィルム基板上にシード層であるNi−Cr膜を成膜し、その上にCu膜を成膜した。尚、長尺樹脂フィルム基板には、幅500mm、長さ800m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
【0061】
[実施例1]
図2に示すキャンロールとして、中央部の高さが両端部よりも200μm大きい本発明によるクラウン形状のキャンロールを使用して、長尺樹脂フィルム基板上にNi−Cr膜とCu膜を積層して成膜した。
【0062】
このキャンロールは直径900mm、幅750mmのアルミニウム製で、ロール本体のクラウン形状をなす外周面にハードクロムめっきが施されている。ジャケットロール構造のキャンロールの内部外周面側に直径4mmのガス導入路を360本形成し、各ガス導入路には10mm間隔で直径0.2mmのガス放出孔を47個設けた。ただし、樹脂フィルムの両端20mm付近にはガス放出孔は存在しない。
【0063】
成膜装置のキャンロールに長尺樹脂フィルムを巻き付けて搬送するとき、長尺樹脂フィルムが接触しない角度範囲B(図1参照)は約30°であり、この角度範囲B内に存在するガス導入路は30本になる。従って、ガスロータリージョイントの固定リングユニットのガス分配溝は、上記角度範囲Bの約30°を除き、約330°の角度範囲Aにのみ形成した。尚、360本のガス導入路をガスロータリージョイントに直接接続するのは困難なため、ガス導入管を10本ごとにガス集合管に接続した後、そのガス集合管36本をロータリージョイントの固定リングユニットに接続した。
【0064】
上記ポリイミドフィルムにシード層であるNi−Cr膜とCu膜を積層して成膜するため、マグネトロンスパッタターゲットにはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタターゲットにはCuターゲットを使用した。また、アルゴンガスを300sccm導入し、各カソードへの印加電力は5kWとした。更に、巻出ロールと巻取ロールの張力は80Nとし、キャンロールは水冷により20℃に制御した。
【0065】
そして、巻出ロールに上記耐熱性ポリイミドフィルムをセットし、キャンロールを経由して耐熱性ポリイミドフィルムの先端部を巻取ロールに取り付けた。また、真空チャンバーを複数台のドライポンプにより5Paまで排気した後、更に複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10−3Paまで排気した。次に、耐熱性ポリイミドフィルムの搬送速度を3m/分にした後、各マグネトロンスパッタカソードにアルゴンガスを導入して電力を印加し、キャンロールにはアルゴンガスを1000sccm導入して、Ni−Cr膜及びその上にCu膜の成膜を開始した。
【0066】
この成膜の際に、マグネトロンスパッタカソードの間に設置したレーザ変位計により、耐熱性ポリイミドフィルムの表面形状を測定したところ、耐熱性ポリイミドフィルムの中央部は両端部より約200μm盛り上がって入ることが分かった。この結果から、本発明のクラウン形状のキャンロールと耐熱性ポリイミドフィルムのギャップ間隔は、耐熱性ポリイミドフィルムの中央部と両端部とでほぼ等しく、図6に示すようなギャップ状態になっていることが推定できる。
【0067】
尚、耐熱性ポリイミドフィルムの中央部が膨らむ量は、耐熱性ポリイミドフィルムの種類や厚さ、フィルム搬送張力、ガス導入量等により異なるが、フィルムが厚いほど膨らむ量は小さい傾向にあった。
【0068】
[参考例]
図2に示すキャンロールとして従来から使用されている円筒形状のキャンロールを使用した以外は上記実施例1と同様にして、長尺樹脂フィルム基板上にNi−Cr膜とCu膜を積層して成膜した。
【0069】
その際、上記実施例1における円筒形状のキャンロールの場合と同様に、レーザ変位計で耐熱性ポリイミドフィルムの表面形状を測定したところ、中央部は両端部よりも約200μm盛り上がって入ることが分かった。このことから、円筒形状のキャンロールと耐熱性ポリイミドフィルムのギャップ間隔は、耐熱性ポリイミドフィルムの中央部が両端部よりも約200μm広く、図5に示すようなギャップ状態になっていることが推定できた。
【0070】
[実施例2]
上記実施例1の本発明によるクラウン形状のキャンロールと、上記参考例の円筒形状のキャンロールについて、上記耐熱性ポリイミドフィルムをフィルム搬送2m/minで搬送させながら、成膜中におけるキャンロール上のポリイミドフィルム表面の観察が可能な観察窓から、スパッタリングの熱負荷によるシワが発生しない最大スパッタリング電力(4台の合計)を求めた。
【0071】
その結果、円筒形状のキャンロールでは、最大スパッタリング電力(4台の合計)が24kWを超えると、キャンロール上でスパッタリング時の熱負荷によりシワが発生した。一方、本発明のクラウン形状のキャンロールでは、最大スパッタリング電力(4台の合計)が52kWを超えるまで、フィルムにシワが発生することはなかった。
【0072】
従って、本発明のクラウン形状のキャンロールを使用すれば、スパッタリング電力を高くすることが可能なため、同じ膜厚を得るためのフィルム搬送速度を速くすることができ、生産性の向上とコストダウンに寄与することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 キャンロール
10a 外周面
11 ガス導入路
12 ガス放出孔
13 有底円筒部材
14 回転軸
15 冷却水循環部
20 ガスロータリージョイント
21 固定リングユニット
22 回転リングユニット
23 ガス導入口
24 ガス分配溝
25 ガス分配管
50 成膜装置
51 真空チャンバー
52 巻出ロール
56 キャンロール
64 巻取ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板を外周面に巻き付けながら熱負荷の掛かる処理をするキャンロールであって、周方向に沿って略均等な間隔をあけ且つ全周に亘り回転軸方向に沿って配設された複数のガス導入路を有し、これら複数のガス導入路の各々はキャンロールの回転軸方向に沿って略均等な間隔で外周面側に開口する複数のガス放出孔を有すると共に、外径が回転軸方向の中央部で最も長く且つ該中央部から両端部に向けて次第に短くなるクラウン形状の外周面を備えることを特徴とするキャンロール。
【請求項2】
前記ガス導入路のガス供給側に、長尺樹脂フィルム基板がキャンロール外周面に接触する角度範囲外に位置しているガス導入路に対してガスの供給を遮断するガス供給制御手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のキャンロール。
【請求項3】
前記クラウン形状の外周面は外径が略均一の曲率で変化していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキャンロール。
【請求項4】
前記キャンロールの中央部の外径と両端部の外径との差Yが、中央部と両端部までの距離Xmmに対して下記数式2で示される範囲にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のキャンロール。
[数式2]
0.1×X/375≦Y≦1.0×X/375
【請求項5】
真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板を外周面に巻き付けながら熱負荷の掛かる処理をするキャンロールを備えた長尺樹脂フィルム基板の処理装置であって、請求項1〜4のいずれかに記載のキャンロールを備えたことを特徴とする長尺樹脂フィルム基板の処理装置。
【請求項6】
前記熱負荷の掛かる処理が、プラズマ処理、イオンビーム処理、真空成膜処理の少なくともいずれか1種であることを特徴とする、請求項5に記載の長尺樹脂フィルム基板の処理装置。
【請求項7】
真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板をキャンロールの外周面に巻き付けながら、熱負荷の掛かる処理をする長尺樹脂フィルム基板の処理方法であって、請求項1〜4のいずれかに記載のキャンロールに長尺樹脂フィルム基板を巻き付けながら処理することを特徴とする長尺樹脂フィルム基板の処理方法。
【請求項8】
前記熱負荷の掛かる処理が、プラズマ処理、イオンビーム処理、真空成膜処理の少なくともいずれか1種であることを特徴とする、請求項7に記載の長尺樹脂フィルム基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144798(P2012−144798A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5833(P2011−5833)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】