説明

キーボード装置

【課題】キートップにおける照明の輝度の向上を図ることができるキーボード装置を提供する。
【解決手段】
キーボード装置1は、接点511,521を有するメンブレン基板50と、接点511,521に対向する位置でキートップ10をメンブレン基板50に対して接近離反可能に保持する保持板20と、光透過性を有し、キートップ10に光を導く導光板40、光透過性を有すると共に、キートップ10をメンブレン基板50から離反する方向に付勢するラバードーム35と、を備えており、導光板40は、メンブレン基板50よりもキートップ10側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコンやデスクトップ型パソコンに用いられる照明機能付きのキーボード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暗闇でもキーを視認することができるキーボードとして、導光板を介してキートップに光を照射するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−260478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のキーボード装置では、導光板から拡散した光は、キートップを保持する基板やメンブレン基板を介してキートップへと導かれるため、キートップにおいて照明の輝度が低いという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、キートップにおける照明の輝度の向上を図ることができるキーボード装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、第1の接点が形成されていると共に、前記導光板が直接積層された第1のシートと、所定間隔を介して前記第1の接点に対向する第2の接点が形成された第2のシートと、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に積層されたスペーサと、を有する回路基板と、前記第1及び第2の接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離反可能に保持する保持板と、光透過性を有し、前記キートップに光を導く導光板と、光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離反方向に付勢するラバードームと、を備えたキーボード装置であって、前記導光板は、前記保持板と前記回路基板との間であって前記回路基板よりも前記キートップ側に配置されていると共に、前記ラバードームよりも前記回路基板側に配置されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のキーボード装置であって、前記第1のシートは、白色のポリエチレンテレフタレート又は白色のポリエチレンナフタレートから構成されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のキーボード装置であって、前記導光板は、ウレタン系樹脂又はシリコーン系樹脂から構成されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のキーボード装置であって、前記ラバードームは、前記導光板に直接接合されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のキーボード装置であって、前記ラバードームの屈折率は、前記導光板の屈折率よりも相対的に高いことを特徴とするキーボード装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載のキーボード装置であって、前記ラバードームは、シリコーン系樹脂から構成されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載のキーボード装置であって、前記ラバードームは、前記導光板の屈折率以上であり且つ前記ラバードームの屈折率以下の屈折率を有する接着剤によって前記導光板に接合されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1〜7の何れかに記載のキーボード装置であって、前記保持板は、リンク機構を介して前記キートップを保持することを特徴とするキーボード装置である。
【0014】
なお、前記導光板は、1000[MPa]以下のヤング率を有する材料から構成されていてもよく、或いは、前記導光板は、300[MPa]以下のヤング率を有する材料から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、導光板を、保持板と回路基板との間であって回路基板よりもキートップ側に配置するので、キートップにおける照明の輝度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態におけるキートップを示す平面図である。
【図3】図3は、図2に示すキートップを暗闇で照明した様子を示す平面図である。
【図4】図4は、図1のIV部を示す拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【図7】図7は、試料1の輝度分布測定結果を示す写真である。
【図8】図8は、図7に示す輝度分布測定結果に設定したスポットを示す写真である。
【図9】図9は、試料2の輝度分布測定結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図、図2及び図3は本実施形態におけるキートップを示す平面図、図4は図1のIV部を示す拡大断面図である。
【0019】
本実施形態におけるキーボード装置1は、ノート型パソコン等に用いられるキーボードであり、図1に示すように、キートップ10と、保持板20と、ラバードームシート30と、導光板40と、メンブレン基板50と、筐体60と、を備えている。
【0020】
キートップ10は、図2に示すように、英語や日本語等の文字12が付されたキー面11を有しており、このキー面11を入力者が指で押圧することで、その文字がノート型パソコンに入力される。なお、文字12に代えて、数字、記号或いは図形等をキー面11に付してもよい。
【0021】
本実施形態では、キー面11において、文字12の部分が透明になっているのに対して、その他の部分が不透明となっている。このため、キートップ10に下方から光を当てると文字12の部分のみから光が透過するので、図3に示すように、暗闇においてキーを視認することが可能となっている。なお、文字12の部分を不透明にし、キー面11におけるその他の部分を透明にしてもよい。
【0022】
キーボード装置1の上面にはこうしたキートップ10が多数配列されている。それぞれのキートップ10は、図4に示すように、リンク機構15を介して昇降可能に保持板20に保持されている。
【0023】
リンク機構15は、2つのアーム部材16,17から構成されるパンタグラフリンク機構である。この第1のアーム部材16と第2のアーム部材17とは、側面視においてX字状に交差している。
【0024】
第1のアーム部材16の上端は、キートップ10の下面にスライド可能に連結されており、第1のアーム部材16の下端は、保持板20に回動可能に連結されている。一方、第2のアーム部材17の上端は、キートップ10の下面に回動可能に連結されており、第2のアーム部材17の下端は、保持板20にスライド可能に連結されている。
【0025】
キートップ10が押し下げられると、第1のアーム部材16が、その下端を中心として回動して、その上端がキートップ10の下面をスライドする。これと同時に、第2のアーム部材17が、その上端を中心として回動して、その下端が保持板20上をスライドする。
【0026】
このようなリンク機構15がキートップ10と保持板20との間に介在していることで、キートップ10が同じ位置(メンブレン基板50の接点511,521に対向する位置)を維持しながら昇降可能となっていると共に、キーボード装置1からのキートップ10の脱落が防止されている。
【0027】
なお、本発明におけるリンク機構には、上述のパンタグラフ式のリンク機構15に限定されない。例えば、2つのアーム部材の端部にそれぞれ形成されたギアを相互に咬合させて当該アーム部材を逆V字状に組み合わせたギアリンク機構も含まれる。
【0028】
保持板20には、一つのキートップ10に対して一対の突起21,22が設けられている。第1の突起21は、リンク機構15の第1のアーム部材16の下端を回転可能に保持している。一方、第2の突起22には、第1の突起21に向かって開口し、保持板20の平面方向に沿った深さを有する溝221が形成されており、この溝221内に第2のアーム部材17の下端がスライド可能に挿入されている。
【0029】
また、保持板20において、第1の突起21と第2の突起22との間には、開口23が形成されている。この開口23からは、ラバードームシート30のラバードーム35がキートップ10に向かって突出している。
【0030】
この保持板20はラバードームシート30の上に積層されている。ラバードームシート30は、シート本体31とラバードーム35とを有している。シート本体31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)から構成されている。一方、ラバードーム35は、例えば、透明なシリコーン系樹脂から構成されている。このラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37でシート本体31に接合されている。
【0031】
また、ラバードーム35は、下方に向かって突出する凸部36を有している。一方、シート本体31においてラバードーム35の押圧部36に対向する位置に開口32が形成されており、キートップ10の押圧時における接点511,521のオン荷重(接点511,521が接触して電気的にオンとなる荷重)の低減が図られている。
【0032】
キートップ10が押し下げされると、ラバードーム35が押圧されて脚部36が座屈変形することで、ラバードーム35の凸部36が、導光板40を介して、メンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10の押圧が解除されると、脚部37が弾性力によって初期形状を復元し、接点511,521が離反すると共に脚部37の復元力によってキートップ10が押し上げられる。
【0033】
このラバードームシート30は、導光板40の上に積層されている。導光板40は、発光ダイオード54から入射される光を導光する透明なフィルムである。この導光板40は、柔軟な材料から構成されていることが好ましい。具体的には1〜1000[MPa]のヤング率を有する材料が好ましく、特に1〜300[MPa]のヤング率を有する柔軟な材料がより好ましい。このようなヤング率を有する材料の具体例としては、例えばウレタン系樹脂(ヤング率:5〜300[MPa]程度)やシリコーン系樹脂(ヤング率:1〜5[MPa]程度)等を例示することができる。
【0034】
本実施形態では、ラバードーム35とメンブレン基板50との間に導光板40が介在しているため、導光板をポリカーボネート(ヤング率:2000〜3000[MPa]程度)やアクリル系樹脂(ヤング率:3000〜3500[MPa]程度)で構成すると導光板が硬くなり、接点511,521をオンさせることができない場合がある。これに対し、導光板40を上記の範囲のヤング率を有する柔軟な材料で構成することで、小さな荷重で接点511,521をオンさせることが可能となっている。なお、メンブレン基板50のスペーサ53に形成する開口531の内径やメンブレン基材の厚みによって、接点511,521のオン荷重の低減を図ってもよい。
【0035】
導光板40においてラバードーム35に対応する箇所には、導光板40内の光を外部に拡散するための拡散部41が設けられている。この拡散部41は、白色のインクを導光板40の裏面にスクリーン印刷することで形成されている。この拡散部41で光を拡散させることで、導光板40から外部に光が拡散されて導光板40が上方に向かって発光する。なお、導光板40の表面をレーザ加工したり粗面化することによって拡散部41を形成してもよい。また、拡散部41を導光板40の上面に形成してもよい。
【0036】
この導光板40は、メンブレン基板50の上に積層されている。メンブレン基板50は、上部シート51と、下部シート52と、スペーサ53と、を有している。
【0037】
上部シート51は、例えば、白色のポリエチレンテレフタレートや白色のポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などの可撓性を有する白色の樹脂製フィルムから構成されている。白色PETや白色PENは、PETやPENに白色顔料を混合したり、PETやPEN自体を発泡させることで得ることができる。
【0038】
また、この上部シート51の下面には第1の接点511が形成されている。この第1の接点511は、例えば銀ペーストを上部シート51にスクリーン印刷することで形成されている。
【0039】
導光板40が直接積層される上部シート51を白色とすることで、上部シート51に反射板の機能を付与することができる。これにより、導光板40とメンブレン基板50との間に専用の反射板を積層する場合と比較して、キーボード装置1全体の薄型化を図ることができる。なお、上部シート51や筐体60の内側面に白色のインクを塗布することで、上部シート51や筐体60に反射板の機能を付与してもよい。
【0040】
下部シート52も、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等から構成されている。この下部シート52の上面において第1の接点511に対向する位置には、第2の接点521が形成されている。この第2の接点521は、第1の接点511と同様に、例えば銀ペーストを下部シート52にスクリーン印刷することで形成されている。なお、この下部シート52は白色である必要はなく透明であってもよい。また、上部シート51に反射板の機能を付与する代わりに、上部シート51を透明にして、スペーサ53に反射板の機能を付与してもよいし、上部シート51とスペーサ53を透明にして、下部シート52に反射板の機能を付与しても良い。
【0041】
スペーサ53は、下部シート52と同様の材料から構成されている。このスペーサ53には、第1及び第2の接点511,521に対応する開口531が形成されている。なお、このスペーサ53も、下部シート52と同様に、白色である必要はなく透明であってもよい。
【0042】
本実施形態では、上部シート51と下部シート52とがスペーサ53を介して積層されており、第1の接点511と第2の接点521とが開口531を介して接近/離反可能に対向している。
【0043】
キートップ10が押し下げされると、ラバードーム35の凸部36が導光板40を介してメンブレン基板50の上部シート51を押圧する。これにより、上部シート51が変形するので、第1の接点511が第2の接点521と接触して接点511,521がオン状態となる。一方、キートップ10の押圧が解除されると、上部シート51は弾性力によって初期形状に復元し、接点511,521がオフ状態となる。
【0044】
このメンブレン基板50には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)54が実装されている。この発光ダイオード54は、側方照射型のLEDであり、図1に示すように、その照射面541が導光板40の入射面41に対向するようにメンブレン基板50に実装されている。
【0045】
この発光ダイオード54が発光すると、発光ダイオード54の照射面541から照射された光は、入射面41を介して導光板40内に進入し、当該導光板40内を反射しながら伝播される。
【0046】
そして、導光板40において拡散部41が形成された箇所で、導光板40内の光が拡散部41で拡散して上方に漏れる。導光板40から上方に漏れた光は、ラバードーム35を通過してキートップ10の下面に到達する。この光は、キートップ10において文字12の部分のみを透過し、その他の部分は透過しないため、キーボード装置1を上方から見ると、文字12の部分のみが光っている状態となる。このため、暗闇であってもキーを視認することができる。
【0047】
本実施形態では、図1に示すように、下側から、メンブレン基板50、導光板40、ラバードームシート30、及び保持板20の順で積層し、これらを筐体60の収容部61内に収容している。そして、筐体60の折り返し部62に保持板20の周縁が係合することで、ラバードームシート30、導光板40、及びメンブレン基板50が、保持板20と筐体60との間に挟み込まれている。
【0048】
このように、本実施形態では、導光板40をメンブレン基板50よりキートップ10側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度が向上する。
【0049】
また、従来のキーボード装置では、保持板がメンブレン基板の下に積層され、保持板の突起が貫通するための貫通孔がメンブレン基板に形成されている。一方、導光板に貫通孔を形成すると光の漏洩の原因となるため、導光板は保持板よりも下に積層されている。これに対し、本実施形態では、導光板40を保持板20とメンブレン基板50との間に配置して、保持板を導光板40よりも上に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を導光板40に形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度の更なる向上を図ることができる。
【0050】
<<第2実施形態>>
図5は本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0051】
本実施形態では、ラバードームシートのシート本体を備えておらず、ラバードームが導光板に直接接合されている点で第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態におけるキーボード装置1Bについて第1実施形態と相違する点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、図5に示すように、ラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37で導光板40に直接接合されている。この接着剤は、導光板40の屈折率以上であり且つラバードーム35の屈折率以下の屈折率を有しており、具体的には、例えばシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂から構成される接着剤を例示することができる。
【0053】
ここで、導光板40を構成するウレタン系樹脂は、1.4〜1.5程度の屈折率を有している。一方、ラバードーム35を構成するシリコーン系樹脂は、4.0〜4.5程度の屈折率を有しており、導光板40の屈折率よりもラバードーム35の屈折率の方が高くなっている。
【0054】
一般的に、屈折率の異なる部材が密着している場合には、光は屈折率が低い部材から屈折率の高い部材へと進む。また、屈折率の高い部材内の光は、屈折率の低い部材との密着面において全反射、屈折するため、当該高屈折率の部材内へと進んだ光が低屈折率の部材内に戻ってしまうことはない。そのため、本実施形態では、導光板40内を伝播してきた光は、ラバードーム35の脚部37が接合されている箇所を介して、ラバードーム35内へと積極的に進む。
【0055】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40をメンブレン基板50よりもキートップ10側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度が向上する。
【0056】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40を保持板20とメンブレン基板50との間に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を導光板40に形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度の更なる向上を図ることができる。
【0057】
さらに、上記のように、本実施形態では、拡散部41による発光に加えて、屈折率の差を利用して導光板40からラバードーム35内に直接導光するので、キートップ10における照明の輝度が更に向上させることができる。また、本実施形態では、第1実施形態で説明したラバードームシート30のシート本体31が不要となるので、キーボード装置1B全体の薄型化を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態ではラバードーム35を導光板40に接着剤によって直接接合し、この接着剤は、導光板40の屈折率以上であり且つラバードーム35の屈折率以下の屈折率を有しているので、導光板40からラバードーム35への進む光の進行を妨害することもない。
【0059】
<<第3実施形態>>
図6は本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0060】
本実施形態では、キートップ及び保持板の構造が異なる点で、第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態におけるキーボード装置1Cについて第1実施形態と相違する点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
本実施形態におけるキーボード装置1Cは、デスクトップ型パソコンに用いられるキーボードである。
【0062】
このキーボード装置1Cのキートップ10Cの下面からは、当接リブ13と係合リブ14が下方に向かって突出している。当接リブ13は、ラバードーム35に当接している。一方、係合リブ14は、保持板20Cの台座64に係合している。
【0063】
なお、特に図示しないが、第1実施形態と同様に、本実施形態のキートップ10Cのキー面11にも文字12が付されており、キー面11における文字12の部分が透明となっているのに対し、キー面11におけるその他の部分が不透明となっている。
【0064】
保持板20Cには、第1及び第2の突起21,22に代えて、台座64が形成されている。この台座64の上部開口の周縁には、内側に向かって突出する突起641が形成されており、この突起641に係合リブ14の係合爪141が係合している。
【0065】
キートップ10Cが押し下げられると、ラバードーム35が変形し、凸部36が導光板40を介してメンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10Cの押圧が解除されると、ラバードーム35が初期形状に復元してキートップ10Cを押し上げる。この際、台座64と係合リブ14とが係合することで、キーボード装置1Cからのキートップ10Cの脱落が防止されている。
【0066】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40をメンブレン基板50よりもキートップ10C側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50を介さずにキートップ10Cへと導くことができるので、キートップ10Cにおける照明の輝度が向上する。
【0067】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40を保持板20とメンブレン基板50との間に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を導光板40に形成する必要がなく、キートップ10Cにおける照明の輝度の更なる向上を図ることができる。
【0068】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0069】
例えば、第3実施形態におけるキーボード装置1Cにおいて、第2実施形態で説明したように、透明なシリコーン系樹脂からなる接着剤を用いて、ラバードームを導光板に直接接合してもよい。
【0070】
なお、本実施形態におけるメンブレン基板が本発明における回路基板の一例に相当し、本実施形態における上部シートが本発明における第1のシートの一例に相当し、本実施形態における下部シートが本発明における第2のシートの一例に相当し、本実施形態におけるラバードームが本発明における付勢部材の一例に相当する。
【0071】
以下に、本発明をさらに具体化した試料により本発明の効果を確認した。
【0072】
<<実施例1>>
以下の試料1及び試料2は、上述した実施形態におけるキーボード装置における照明の輝度向上の効果を確認するためのものである。
<試料1>
試料1では、第1実施形態と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。
【0073】
この試料1のサンプルでは、ラバードームシートのシート本体として、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用い、このPETフィルム上に透明なラバードーム(信越ポリマー株式会社製)を接着剤(東亜合成株式会社製LCR0628A)で接合した。
【0074】
また、導光板として、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いた。さらに、このウレタンシートの下面に、白色インク(十条ケミカル株式会社製4700M白)をスクリーン印刷することで拡散部を形成した。
【0075】
また、メンブレン基板の上部シートとして、厚さ100μmの白色PETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製FW2)を用い、下部シート、スペーサとして、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用いた。
【0076】
また、上部シート及び下部シート上に、銀フィラーを含有した導電性ペースト(東洋紡績株式会社製DX−351H−30)をスクリーン印刷することで、厚さ10μmの第1及び第2の接点をそれぞれ形成した。
【0077】
このメンブレン基板に、長さ2.8mm、幅1.0mm、高さ0.6mmの側面発光型LED(シチズン電子株式会社社製CL−432F)を、導電性接着剤(株式会社スリーボンド製3302B)を用いて実装した。
【0078】
なお、この試料1のサンプルでは、下部シートへのLEDの実装に際して、下部シート上にLED実装用の回路パターンを形成すると共に、下部シートに実装されたLEDを挿入するための貫通孔を上部シート及びスペーサに形成した。
【0079】
この試料1のサンプルのLEDに、低圧電流発生電源(株式会社アドバンテスト製R6142)を用いて電流100mAを通電し、LEDを点灯させた状態でのキートップにおける照明の輝度分布を二次元色彩輝度計(コニカミノルタセンシング株式会社製CA−2000)を用いて測定した。このときの輝度分布測定結果を図7に示す。また、図8に示すようなスポットをそれぞれのキーに対して設定し、全てのスポットの輝度の平均値を算出した。その算出結果を表1に示す。なお、図8において実線の枠がスポットである。
【0080】
【表1】

<試料2>
試料2では、各部材の積層順序を変更したこと以外は、試料2と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。すなわち、この試料2のサンプルでは、下側から、導光板、保持板、メンブレン基板、ラバードームシートの順(上述の特開2002−260478号公報記載の積層順序)で積層した。
【0081】
なお、この積層順序の変更に伴って、厚さ100μmの白色PETフィルムから構成される反射シート(帝人デュポンフィルム株式会社製FW2)を導光板の下に追加した。また、メンブレン基板の上部シートを、下部シートやスペーサと同様の透明なPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)に変更した。さらに、ラバードームシートとメンブレン基板に、保持板の第1及び第2の突起が貫通する貫通孔を形成した。
【0082】
この試料2のサンプルに対して、試料1と同様の要領でLEDを点灯させて、キートップにおける照明の輝度分布を測定した。このときの輝度分布測定結果を図9に示す。また、試料1と同様のスポットをそれぞれのキーに設定し、全てのスポットの輝度の平均値を算出した。その算出結果を上記の表1に示す。
【0083】
<考察>
試料1では、試料2と比較して各部材の積層順序を変更しただけにも関わらず、図7及び図9に示すように、キートップにおける照明の輝度が全体的に向上しており、表1に示すように輝度が2倍程度向上している。
【0084】
このことから、導光板を、保持板とメンブレン基板との間であってメンブレン基板よりもキートップ側に配置することで、キートップにおける照明の輝度が向上することを理解することができる。
【0085】
<<実施例2>>
次に、上述した実施形態におけるキーボード装置のオン荷重上昇の有無を、以下に説明する試料3〜9によって確認した。
【0086】
<試料3>
試料3では、導光板として、厚さ150μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いたこと以外は、試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料3の導光板の構成を表2に示す。
【0087】
【表2】

この試料3のサンプルに対して、メンブレン基板の接点同士が接触して電気的にオンとなった時点の荷重(オン荷重)を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

<試料4>
試料4では、導光板として、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料4の導光板の構成を上記の表2に示す。
【0089】
この試料4のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0090】
<試料5>
試料5では、導光板として、厚さ150μmのシリコーンシート(富士高分子工業株式会社製Light Guide Film)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料5の導光板の構成を上記の表2に示す。
【0091】
この試料5のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0092】
<試料6>
試料6では、導光板として、厚さ200μmのシリコーンシート(富士高分子工業株式会社製Light Guide Film)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料6の導光板の構成を上記の表2に示す。
【0093】
この試料6のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0094】
<試料7>
試料7では、導光板を設けなかったこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。すなわち、この試料7のサンプルでは、メンブレン基板とラバードームシートとの間に導光板を介在させずに、メンブレン基板にラバードームシートを直接積層した。この試料7の構成を上記の表2に示す。
【0095】
この試料7のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重の測定をした。その測定結果を上記の表3に示す。
【0096】
<試料8>
試料8では、導光板として、厚さ130μmのポリカーボネートシート(出光興産株式会社製LC1500)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料8の導光板の構成を上記の表2に示す。
【0097】
この試料8のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0098】
<試料9>
試料9では、導光板として、厚さ200μmのソフトアクリルシート(有限会社シーアールディー製SA−00−R)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料9の導光板の構成を上記の表2に示す。
【0099】
この試料9のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0100】
<考察>
導光板として柔軟なシート(ウレタンシート、シリコーンシート)を用いた試料3〜6では、導光板を備えていない試料7に近い値となっている。これに対し、比較的硬いシート(ポリカーボネート、ソフトアクリル)を導光板として用いた試料8及び9では、試料3〜7と比較してオン荷重が大幅に増加している。なお、試料8及び9は、キーボード装置のオン荷重の低減効果を確認するための参考例である。
【0101】
以上のことから、導光板としてウレタンシートやシリコーンシートを採用することで、導光板を備えていない構成と同等程度にオン荷重を低減可能であることを分かる。
【符号の説明】
【0102】
1,1B,1C…キーボード装置
10,10C…キートップ
11…キー面
12…文字
15…リンク機構
20,20C…保持板
30ラバードームシート
31…シート本体
35…ラバードーム(付勢部材)
40…導光板
50…メンブレン基板(回路基板)
51…上部シート(第1のシート)
511…第1の接点
52…下部シート(第2のシート)
521…第2の接点
53…スペーサ
54…LED
60…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接点が形成されていると共に、前記導光板が直接積層された第1のシートと、所定間隔を介して前記第1の接点に対向する第2の接点が形成された第2のシートと、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に積層されたスペーサと、を有する回路基板と、
前記第1及び第2の接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離反可能に保持する保持板と、
光透過性を有し、前記キートップに光を導く導光板と、
光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離反方向に付勢するラバードームと、を備えたキーボード装置であって、
前記導光板は、前記保持板と前記回路基板との間であって前記回路基板よりも前記キートップ側に配置されていると共に、前記ラバードームよりも前記回路基板側に配置されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキーボード装置であって、
前記第1のシートは、白色のポリエチレンテレフタレート又は白色のポリエチレンナフタレートから構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキーボード装置であって、
前記導光板は、ウレタン系樹脂又はシリコーン系樹脂から構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のキーボード装置であって、
前記ラバードームは、前記導光板に直接接合されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項5】
請求項4に記載のキーボード装置であって、
前記ラバードームの屈折率は、前記導光板の屈折率よりも相対的に高いことを特徴とするキーボード装置。
【請求項6】
請求項5に記載のキーボード装置であって、
前記ラバードームは、シリコーン系樹脂から構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項7】
請求項6に記載のキーボード装置であって、
前記ラバードームは、前記導光板の屈折率以上であり且つ前記ラバードームの屈折率以下の屈折率を有する接着剤によって前記導光板に接合されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のキーボード装置であって、
前記保持板は、リンク機構を介して前記キートップを保持することを特徴とするキーボード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−129160(P2011−129160A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57013(P2011−57013)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【分割の表示】特願2009−184554(P2009−184554)の分割
【原出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】