説明

キーレスエントリー装置

【課題】車両の可動体に送信アンテナを取付けてあっても携帯機の位置判定を精度よく行うことのできるキーレスエントリー装置を提供する。
【解決手段】車両側制御部12は携帯機3の位置が車両1の内側に沿った際における複数の送信アンテナ15からのリクエスト信号の強度情報を可動体1bの動作前後状態についてそれぞれ複数有する第1のデータ群と、携帯機3の位置が車両1の外側に沿った際における複数の送信アンテナ15からのリクエスト信号の強度情報を可動体1bの動作前後状態についてそれぞれ複数有する第2のデータ群とを記憶したメモリ13を備え、車両側制御部12は携帯機3から受信したリクエスト信号の強度情報が第1のデータ群と第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側装置と携帯機の間で無線通信を行うことで車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置に関し、特に携帯機が車両を基準とした所定境界面の外側にあるか内側にあるかを精度よく判別することのできるキーレスエントリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設けられた車両側装置と使用者が携帯する携帯機の間で無線通信を行い、車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置が知られている。また近年、携帯機が車両に近づくと、車両側装置と携帯機の間で自動的に通信が行われ、個々の携帯機に一義的に設定されているIDの認証がなされれば車両のドアのロック・アンロック動作を行うパッシブ・キーレスエントリー装置も知られている。このようなキーレスエントリー装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2002−77972号公報
【0003】
特に、パッシブ・キーレスエントリー装置においては、携帯機が車両の外側にあるか内側にあるかを判別できることが重要である。このために、車両側装置には、車両の各所に複数の送信アンテナが設けられ、携帯機が車内側の送信アンテナからの電波を受信した場合には車内に携帯機があると判別し、車外側の送信アンテナからの電波を受信した場合には車外に携帯機があると判別するようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のキーレスエントリー装置では、携帯機の位置の判別精度が充分とは言えなかった。例えば、車内側の送信アンテナからの電波が車外にまで漏れていると、携帯機が車外側にあっても車内側にあるものと誤判別する場合がある。逆に、車外側の送信アンテナからの電波が車内に漏れることにより、携帯機が車内側にあっても車外側にあるものと誤判定する場合がある。電波の漏れを防ぐために送信アンテナからの電波の送信電力を下げると、携帯機が車内にあっても電波を受信できない場合があり、これも誤判定の原因となる。
【0005】
この問題点を解決するため、本願発明者は特願2005−173219に記載されているように、携帯機の位置が車両の内側に沿った際における複数の送信アンテナからの車両側から送信される信号の強度情報を複数有する内側データ群と、携帯機の位置が車両の外側に沿った際における複数の送信アンテナからの車両側から送信される信号の強度情報を複数有する外側データ群とを予め取得しておき、携帯機側で検出した各送信アンテナからの信号の強度データが内側データ群と外側データ群のいずれに近似するかを判別することにより、携帯機が車両内にあるか車両外にあるかを判定する発明をなした。
【0006】
ここで、車両側に設ける送信アンテナは、開閉動作が可能な車両のドアミラーに取付けており、内側データ群と外側データ群の取得に際しては、ドアミラーを開いた状態で行っていた。このため、ドアミラーが開いた状態であれば、上記発明により精度よく車両内外の判定を行うことができる。一方、ドアミラーが閉じた状態であると、車両における送信アンテナの位置が変化するため、携帯機側で検出する信号の強度が変化し、判定の精度が低下するという問題点がある。これは、送信アンテナをドアミラーに取付けた場合に限らず、車両における可動体に送信アンテナを取付けると発生する問題点である。また、送信アンテナが可動体に取付けられていなくても、可動体の動作が送信アンテナからの送信電波に影響を与えることがあり、この場合にも可動体の動作前後において携帯機側で検出する信号の強度が変化して、判定の精度が低下する。
【0007】
さらには、携帯機の位置判別は車両内外の判別だけではなく、ドアから所定距離離れた位置の外側か内側かを判別するといったことも行われている。この場合には、例えばドアに対し携帯機が所定距離以下まで近づいたことを判別した際にランプを点灯するなどの動作を行わせることができる。このため、車両内外境界面に限らず所定境界面の内外位置を判別できるキーレスエントリー装置が望まれている。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、送信アンテナを車両の可動体に取付け、または可動体により送信電波に影響を受けるように取付けてあっても、携帯機の位置判定を精度よく行うことのできるキーレスエントリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有し、上記送信アンテナの少なくとも一つは、車両に設けられる可動体または可動体の動作に伴い送信電波に影響を受けるように、取付けられたキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナから送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記車両側制御部または携帯機制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
該メモリには、上記携帯機の位置を車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて位置させた際の、上記可動体の動作前後状態における上記複数の送信アンテナからのそれぞれの受信強度情報を有する第1のデータ群、または該第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な第1のパラメータと、
上記携帯機の位置を車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて位置させた際の、上記可動体の動作前後状態における上記複数の送信アンテナからのそれぞれの受信強度情報を有する第2のデータ群、または該第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な第2のパラメータとを記憶し、
上記メモリを備える車両側制御部または携帯機制御部は上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記第1のデータ群と第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記第1のデータ群と第2のデータ群または上記第1のパラメータと第2のパラメータを用いて判別することを特徴として構成されている。
【0010】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有し、上記送信アンテナの少なくとも一つは、車両に設けられる可動体または可動体の動作に伴い送信電波に影響を受けるように、取付けられたキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナからの車両側から送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記可動体には該可動体の動作を検出する検出部が設けられ、該検出部は上記車両側制御部に可動体の動作状態情報を送信できるように接続され、
上記車両側制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
該メモリは上記携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作前状態について複数有する動作前第1のデータ群または該動作前第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作前第1のパラメータと、上記携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作後状態について複数有する動作後第1のデータ群または該動作後第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作後第1のパラメータと、上記携帯機の位置が上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作前状態について複数有する動作前第2のデータ群または該動作前第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作前第2のパラメータと、上記携帯機の位置が上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作後状態について複数有する動作後第2のデータ群または該動作後第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作後第2のパラメータとを記憶し、
上記車両側制御部は、上記検出部からの動作状態情報が上記可動体の動作前状態を示す場合、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記動作前第1のデータ群と動作前第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記動作前第1のデータ群と動作前第2のデータ群または上記動作前第1のパラメータと動作前第2のパラメータを用いて判別し、上記検出部からの動作状態情報が上記可動体の動作後状態を示す場合、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群または上記動作後第1のパラメータと動作後第2のパラメータを用いて判別することを特徴として構成されている。
【0011】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置は、上記車両を基準とした所定境界面は車両内外境界面であることを特徴として構成されている。
【0012】
さらにまた、本発明に係るキーレスエントリー装置は、上記車両を基準とした所定境界面は車両のドア近傍に設けられた送信アンテナから車両外方に所定距離を有して離隔した面であることを特徴として構成されている。
【0013】
そして、本発明に係るキーレスエントリー装置は、上記車両側制御部または携帯機制御部は上記信号の強度情報と各データ群とのマハラノビス距離を上記各データ群または各パラメータを用いてそれぞれ算出し、マハラノビス距離の小さいデータ群に近似すると判別することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際における複数の送信アンテナからのリクエスト信号の強度情報を可動体の動作前後状態についてそれぞれ複数有する第1のデータ群または第1のパラメータと、携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際における複数の送信アンテナからのリクエスト信号の強度情報を可動体の動作前後状態について複数有する第2のデータ群または第2のパラメータとを記憶したメモリを備え、車両側制御部または携帯機制御部はリクエスト信号の強度情報が第1のデータ群と第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを判別することにより、車両の可動体に送信アンテナが取付けられ、または可動体の動作により送信電波に影響がある場合に、可動体の動作前後状態においてそれぞれ精度よく携帯機の位置判別を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、可動体には動作を検出する検出部が設けられ、携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際における複数の送信アンテナからのリクエスト信号の強度情報を、可動体の動作前状態について複数有する動作前第1のデータ群及び可動体の動作後状態について複数有する動作後第1のデータ群またはそれらに対応した近似判別に必要なパラメータと、携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際における複数の送信アンテナからのリクエスト信号の強度情報を、可動体の動作前状態について複数有する動作前第2のデータ群及び可動体の動作後状態について複数有する動作後第2のデータ群またはそれらに対応した近似判別に必要なパラメータとが記憶されたメモリを備え、車両側制御部は検出部により検出された可動体の動作状態に応じて動作前後のデータまたはパラメータを使い分けることにより、車両の可動体に送信アンテナが取付けられ、または可動体の動作により送信電波に影響がある場合でも、可動体の動作前後状態においてそれぞれ精度よく携帯機の位置判別を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、車両を基準とした所定境界面は車両内外境界面であることにより、携帯機が車両内外のいずれにあるかを判別することができる。
【0017】
さらにまた、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、車両を基準とした所定境界面は車両のドア近傍に設けられた送信アンテナから車両外方に所定距離を有して離隔した面であることにより、携帯機が車両に所定距離まで近づいたか否かを判別することができる。
【0018】
そして、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、車両側制御部または携帯機制御部は信号の強度情報と各データ群とのマハラノビス距離を各データ群または各パラメータを用いてそれぞれ算出し、マハラノビス距離の小さいデータ群に近似すると判別することにより、より精度よく位置判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、車両1のドア1aをロックまたはアンロックするものであり、車両1側には車両側装置2が設けられ、使用者は携帯機3を携帯し、車両側装置2と携帯機3の間で無線通信を行って認証やロック・アンロックの指令等をなすものである。車両側装置2は、車両1の各所に複数の送信アンテナ15を有しており、各送信アンテナ15から携帯機3に対してリクエスト信号が送信される。なお、リクエスト信号は低周波信号からなっている。
【0020】
送信アンテナ15の一部は、車両1に設けられる可動体の一つであるドアミラー1bに取付けられる。ドアミラー1bは、前側のドア1aの前端付近に設置されるもので、手動または自動で開閉動作するものである。図1にはドアミラー1bが開いた状態を示している。車両1を駐車場などに停めておく際には、ドアミラー1bの鏡面が車両1の内側を向くように閉じておくことで、車両1の側面においてドアミラー1bの突出を少なくすることができるようにされている。このため、ドアミラー1bに取付けられた送信アンテナ15は、ドアミラー1bの開閉に伴ってその位置が変化する。
【0021】
以下、使用者が車両1に近づいて、ドア1aをアンロックする場合について主に説明する。本実施形態では、携帯機3を持った使用者がドア1aをアンロックするには、ドア1aのドアノブ1b近傍に設けられたリクエストスイッチ16を押すことを必要としている。リクエストスイッチ16が押されると、車両側装置2と携帯機3との間で認証等の通信が行われ、認証がなされた場合に車両側装置2はドア1aのロックを解除する。
【0022】
次に、車両側装置2及び携帯機3の構成について説明する。図2には車両側装置2の構成図を、図3には携帯機3の構成図を、それぞれ示している。図2に示すように、車両側装置2は、携帯機3からのアンサー信号を受信する車両側受信部10と、携帯機3に対してリクエスト信号を送信する車両側送信部11と、アンサー信号を受信した際やリクエストスイッチ16が押された際に各種制御を行う車両側制御部12とを有している。
【0023】
また、車両側制御部12には、車固有の識別符号であるV−ID(Vhicle−ID)や1台の車両を操作可能な複数の携帯機のIDなど制御に必要な情報を記憶するメモリ13と、上述したリクエストスイッチ16が接続されている。さらに、車両側受信部10にはアンサー信号を受信するための受信アンテナ14が接続され、車両側送信部11にはリクエスト信号を送信するための複数の送信アンテナ15、15が接続される。複数の送信アンテナ15、15は、それぞれ車両1の内外各所に設けられる。
【0024】
図3に示すように、携帯機3は、車両側装置2からのリクエスト信号を受信する携帯機受信部20と、車両側装置2に対してアンサー信号を送信する携帯機送信部21と、リクエスト信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部22と、自機に設定されているID及びV−ID等を記憶したメモリ24とを有している。また、携帯機受信部20と携帯機送信部21には、リクエスト信号やアンサー信号の送受信を行う三軸アンテナ23が接続される。
【0025】
携帯機制御部22は、携帯機受信部20で受信する車両側装置2からのリクエスト信号に含まれるウェークアップ信号によって、消費電力が略ゼロの状態であるスリープ状態から通常状態に切り替わる。また、携帯機制御部22は、リクエスト信号に含まれるコマンドに基づいて各種動作を行う。
【0026】
図4には、車両1における受信アンテナ14及び送信アンテナ15の配置について示している。受信アンテナ14は、車両1内に1か所設けられており、一方で送信アンテナ15は、送信アンテナ15a〜15fまで車両1の内外に複数設けられている。本実施形態においては、送信アンテナ15a〜15cまでの3つが車両1の内側に、送信アンテナ15d〜15fまでの3つが車両1の外側に、それぞれ設けられている。特に、送信アンテナ15dと送信アンテナ15eが車両1のドアミラー1bに設けられている。
【0027】
車両側装置2のメモリ13には、携帯機3の認証に必要なIDと、携帯機3の位置を判別するためのデータが記憶されている。携帯機3の位置を判別するためのデータは、車両1の内側と外側のそれぞれについて、各送信アンテナ15からの電波の強度と送信アンテナ15の識別符号を関連付けたデータを多数有した第1のデータ群と第2のデータ群から算出されるパラメータ値である。
【0028】
第1のデータ群の各データは、車両1内の車外との境界線近傍における各送信アンテナ15からの電波強度のうち、強度の大きいものから3つについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する電波強度とを有している。このようなデータを、あらかじめ車両1の内側の略全周に渡って取得しておく。第2のデータ群は、車両1の外側であって車内との境界線近傍の略全周に渡って、第1のデータ群と同様にあらかじめデータを取得しておく。これらのデータの取得は、製品の開発時に、携帯機3あるいは強度測定装置を用いて実際の車両1について行う。または、製造ラインにおいてデータの取得を行うこともできる。
【0029】
ここで、第2のデータ群は、可動体であるドアミラー1bが開いた状態のときについて取得すると共に、ドアミラー1bが閉じた状態のときについても取得し、これら全てのデータを合わせて一つの第2のデータ群とする。第1のデータ群についても同様に、ドアミラー1bが開いた状態のときと閉じた状態のときの両方のデータを合わせて一つの第1のデータ群とする。第1のデータ群と第2のデータ群を取得したら、それぞれのデータ群についてマハラノビス距離を算出するためのパラメータを算出する。これが携帯機3の位置を判別するためのデータとして、メモリ13に記憶されている。
【0030】
携帯機3の位置を判別する際には、各送信アンテナ15のうち携帯機3での受信強度の大きいものから3つについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する電波強度とを有したデータが携帯機3から送信される。車両側制御部12では、携帯機3から送信されたデータについて、メモリ13に記憶されたパラメータを用いて第1のデータ群とのマハラノビス距離と、第2のデータ群とのマハラノビス距離をそれぞれ算出し、マハラノビス距離の小さい方、すなわちどちらの集合により近似しているかを判断して、そちら側に携帯機3が位置しているものと判別する。
【0031】
図5は、各データ群の分布を概念的に示した図である。この図のX軸方向は、車両の外形と直交する面での車両の外形を基準とした携帯機3の位置を示し、Y軸方向は測定されたデータが現れる頻度(測定回数)を示している。具体的には、車両の外形に沿った複数の地点に携帯機3をおき、その点毎に得られた強度データから携帯機3の位置を算出し、該データを集計して、横軸に位置、縦軸に測定回数をプロットしたものである。
この図に示すように、車両1の内側に沿って取得された第1のデータ群と、車両1の外側に沿って取得された第2のデータ群とでは、Y軸方向に示された頻度のピークの現れるX軸方向位置がそれぞれ異なっている。また、第1のデータ群と第2のデータ群のそれぞれにおいても、ドアミラー1bが開状態の時と閉状態の時では、データの多くが重なっているものの頻度のピークの現れるX軸方向位置が異なっている。本実施形態では、車両1の内側に沿った際の取得データである第1のデータ群として、ドアミラー1bが開状態の場合と、それとは異なる位置に頻度のピークが現れるドアミラー1bが閉状態の場合の両方のデータを合わせ、また第2のデータ群についても同様にドアミラー1bが開状態の場合とドアミラー1bが閉状態の場合の両方のデータを合わせた上で、1つのマハラノビス基準空間を設定し、マハラノビスの距離を求める為の各パラメータ値を設定する。そして模式的にはどちらのデータ群に近似するかの判別は、図5中に示す点線の位置、すなわち、第1のデータ群と第2のデータ群の中間位置に対応する位置が境界となって、どちらのデータ群により近いかで車内と車外を判別することになる。仮にドアミラー1bの閉状態だけでデータを取得し実際の使用において開状態となっている場合を想定すると、ミラー閉における境界は、該ミラー閉状態における第1、第2データ群の中間位置となるので、図5の点線位置よりもX軸においてより左側の位置となる。一方でドアミラー1bが開状態のとき、データ群は全体的にX軸における右側にシフトしていることから分かるように、携帯機3による取得データはドアミラー1bの閉状態のときよりも右側に偏り、よって境界も右側に偏る。このため、携帯機3が車内にあっても境界よりも右側、すなわち車外にあると判別する確率が大きくなって、判別の精度が低くなる。
以上のように、本実施形態ではドアミラー1bの開状態と閉状態の両方のデータを合わせてマハラノビス基準空間を設定しているため、ドアミラー1bの開閉状態によらず精度の高い判別を行うことができる。
【0032】
次に、キーレスエントリー装置の動作について説明する。図6には、ドアをアンロックする際の動作についてのフローチャートを示している。また、図7には、図6のフローにおいて車両側装置2と携帯機3からそれぞれ送信される信号のチャート図を示している。本実施形態のキーレスエントリー装置は、車両1に設けられたリクエストスイッチ16が押されることで、車両側装置2と携帯機3との間で無線通信がなされ、ドアのアンロックがされるものである。したがって、まず使用者が車両1のリクエストスイッチ16を押すことでフローが開始する(S1)。
【0033】
リクエストスイッチ16が押されると、車両側制御部12は車両側送信部11にリクエスト信号LF1を送信させる(S2)。図7に示すように、リクエスト信号LF1は、ウェークアップ信号を含む信号Aと、コマンド信号CMDとからなっている。コマンド信号CMDには、車固有の識別符号であるV−ID(Vhicle−ID)の情報が含まれている。
【0034】
携帯機3は、携帯機受信部20でリクエスト信号LF1を受信すると、携帯機制御部22がウェークアップ信号によりスリープ状態から通常状態となり、リクエスト信号LF1に含まれるV−IDが、自機が保持するV−IDと一致するか否かを判定する。ここでV−IDが一致しなければ、そこでフローは終了する。V−IDが一致すれば、携帯機制御部22は携帯機送信部21にアンサー信号RF1を送信させる(S5)。
【0035】
車両側受信部10がアンサー信号RF1を受信すると(S6)、車両側制御部12は車両側送信部11に位置確認信号LF2を送信させる。位置確認信号LF2は、図7に示すようにリクエスト信号LF1と同様にウェークアップ信号を含むと共に、携帯機のIDを含む信号Aと、コマンド信号CMDを含む信号及び各送信アンテナ15a〜15fから順に送信される複数のRssi測定用信号とからなっている。また、信号Aについては、全ての送信アンテナ15a〜15fから送信される。
【0036】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されるRssi測定用信号は、図7に示すように所定強度を有し所定時間に渡って継続するパルス状の信号であり、携帯機3側で受信強度を測定するために用いられる。各Rssi測定用信号は、車両側送信部11が各送信アンテナ15a〜15fに所定の順序かつ所定間隔で送信させるので、携帯機3は受信のタイミングによりどの送信アンテナ15からのRssi測定用信号であるかを識別することができる。
【0037】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されたRssi測定用信号を含む位置確認信号LF2は、携帯機3の携帯機受信部20によって受信される(S8)。携帯機制御部22は、上述のように各Rssi測定用信号の強度を測定し、そのうち強度の強い方から3つのデータについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する強度データとをアンサー信号RF2として車両側装置2に送信する(S9)。またこの際、アンサー信号RF2には、個々の携帯機に一義的に設定されているIDであるHU−IDも含めて送信される。なお、信号の強度測定は、車両1側からRssi測定用信号を送信して、携帯機3側でその強度を測定するものには限られず、車両1側から送信されるリクエスト信号そのものの強度を測定するものであってもよい。
【0038】
車両側装置2の車両側送信部11は、携帯機3からのアンサー信号RF2を受信する(S10)。アンサー信号RF2を受信したら、車両側制御部12はそれに含まれるHU−IDについて、車両に登録されたものと一致するか否かを判別する(S11)。ここでHU−IDが車両に登録されたものと一致しない場合には、そこでフローを終了する。一方、HU−IDが車両に登録されたものと一致する場合には、次に携帯機3の位置を判別する(S12)。
【0039】
リクエスト信号LF1の送受信時においては、当該リクエスト信号LF1を送信してから各携帯機3毎に異なる時間の後にアンサー信号RF1を送信し、この時間を測定することによって複数の携帯機3のうちどれから応答があるかによって迅速かつ簡易に携帯機3を特定する。リクエスト信号LF2の送受信時には、リクエスト信号LF1において検出した携帯機3に対して最初により情報量の大きい携帯機の個別IDを用いた正確な認証と位置の確認を行う。そして、認証ができなかった場合にはそれぞれの携帯機3に対して同様の動作を行う。なお、リクエスト信号LF1での携帯機3の特定を省略して、ここの携帯機3の認証のみを行う、あるいは個々の携帯機3の認証をRssi測定信号の送信の後に行うようにすることもできる。
【0040】
携帯機3の位置の判別は、上述のように携帯機3から送信されたアンサー信号RF2に含まれる識別符号及び強度データと、メモリ13に記憶されたパラメータを用いて、携帯機3が検出したデータと第1のデータ群とのマハラノビス距離及び第2のデータ群とのマハラノビス距離を算出し、データが第1のデータ群に近ければ携帯機3は車両1内に、第2のデータ群に近ければ携帯機3は車両1外にあるものと判別する。
【0041】
車両側制御部12は、携帯機3が車両1内にあるか、車両1外にあるかによってその後、異なる制御を行う(S13)。携帯機3の位置が車両1外にない、すなわち携帯機3が車両1内にあると判別した場合には、そのままフローを終了する。
【0042】
リクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせる際には、携帯機3は車両1外にあるはずであって、使用者と共に携帯機3が車両1内にある場合にドアをアンロックさせると、携帯機3を持っていない人でもリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせることができてしまう。これを防ぐために、携帯機3が車両1内にある場合には、ドアをアンロックしないようにしている。
【0043】
一方、携帯機3の位置が車両1外にあると判別した場合には、ドアの施錠装置(図示しない)に対してアンロックの指令信号を出力し、ドアをアンロックする(S14)。携帯機3の位置を、第1のデータ群と第2のデータ群からのマハラノビス距離算出により判別することとしたため、精度よく位置判別を行うことができ、したがってアンロックの誤動作を少なくすることができる。また、第1のデータ群と第2のデータ群は、車両1の可動体であるドアミラー1bの動作前後状態の両方においてデータを取得し、全てを合わせてデータ群を構成したので、ドアミラー1bの開閉状態がいずれであっても、精度よく携帯機3の位置判別を行うことができる。
【0044】
ここではリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックする動作について示したが、ドアをロックする動作についても同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じた制御を行うことができる。また、ドアのロック・アンロック動作に限らず、携帯機3の位置に応じてエンジンを起動させるなどの動作についても、同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じて動作させることができる。
【0045】
本実施形態では、携帯機3の位置が車両1の内側にあるか外側にあるかの判別を行っているが、位置判別はこれに限られない。位置判別の別の実施例としては、携帯機3が車両1から外方に向かって所定距離だけ離れた境界面の内側にあるか外側にあるかの判別を行うものである。ここでは、車両1のドアミラー1bに設けられる送信アンテナ15から1.5m離れた境界面について判別を行う。
【0046】
この場合、第1のデータ群の各データは、車両1のドアミラー1bに設けられる送信アンテナから1.5m離れた境界面から車両1側に5cm離れた面に沿ってデータを取得する。ここで取得するデータは上述のものと同様であって、各送信アンテナ15からの電波強度のうち、強度の大きいものから3つについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する電波強度が含まれる。また、第2のデータ群の各データは、車両1のドアミラー1bに設けられる送信アンテナから1.5m離れた境界面から車両1側とは反対側に5cm離れた面に沿ってデータを取得する。
【0047】
これらのデータは、可動体であるドアミラー1bが開いた状態と閉じた状態についてそれぞれ取得し、これらを合わせて各データ群を構成する。これら各データ群から、マハラノビス距離を算出するためのパラメータを算出し、メモリ13に記憶させる。車両側制御部12は、メモリ13に記憶されたパラメータを用いて携帯機3からのデータと第1のデータ群及び第2のデータ群との各マハラノビス距離を算出し、携帯機3が境界面の外側にあるか内側にあるか、すなわち車両1から1.5m以上離れているのか、それとも1.5m以内にあるのかを判別する。車両側制御部12はさらにこの判別結果に応じた制御を行う。例えば、携帯機3が1.5mよりも近づいたと判別した場合には、車両1のドア近傍に設けられ乗り込み位置を照らすライトを点灯させる。これにより、使用者が車両1に乗り込みやすいようにすることができると共に、車両1側で携帯機3の存在を認識したことを使用者に伝えることができる。
【0048】
このように、携帯機3の位置判別を行う境界面は車両内外境界面に限られず、車両1を基準として車両内外の任意の境界面とすることができる。さらに他の例として、車両1内において、携帯機3の位置が運転席側にあるか助手席にあるかを判別することもできる。この場合には、車両1内において運転席と助手席の間の面を境界面とし、その片方側に沿って第1のデータ群を取得し、他方側に沿って第2のデータ群を取得して、マハラノビス距離を算出するためのパラメータを算出する。携帯機3の位置判別の際には、携帯機3からのデータと第1のデータ群及び第2のデータ群との各マハラノビス距離を算出し、携帯機3が境界面の外側にあるか内側にあるか、すなわち運転席側にあるのか、それとも助手席側にあるのかを判別する。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8には本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。この図に示すように、本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、第1の実施形態のものと概ね同様の構成からなっている。したがって、以下第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について説明する。
【0050】
図8に示すように、本実施形態におけるキーレスエントリー装置では、送信アンテナ15は可動体には取付けられておらず、可動体が動作しても送信アンテナ15の位置は固定されたままである。しかし、送信アンテナ15が可動体に取付けられておらずそれ自体が移動しないものであっても、可動体が動作することにより送信アンテナからの送信電波に影響を与えることがある。例えば、送信アンテナ15が可動体であるドアミラー1bの近傍に設けられている場合や、車内において前後方向に移動するシートの近傍に設けられている場合などは、可動体の動作に伴い送信アンテナからの送信電波が影響される。本実施形態では図7に示すように、車内側に設けられた送信アンテナ15が、シート1cの近傍に設けられており、その動作に伴って送信電波が影響を受けるものとする。
【0051】
この場合にも、可動体であるシート1cの動作前後において、それぞれ任意に設定された境界面の両側でそれぞれ第1のデータ群と第2のデータ群を取得し、シート1cの動作前後のデータを合わせて携帯機3の位置判別のためのデータ群として用いることで、精度よく携帯機3の位置判別を行うことができる。また第1の実施形態と同様、境界面は車両内外境界面のほか、車両1の外側における任意の境界面、及び車両1の内側における任意の境界面を設定することができる。その他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0052】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図9には本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。この図に示すように、本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、第1の実施形態のものと概ね同様の構成からなっている。したがって、以下第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0053】
図9に示すように、車両1のドアミラー1bに対してその動作状態を検出する検出部17が設けられている。検出部17は、例えばリミットスイッチなどによって構成され、ドアミラー1bの動作前後状態である開状態または閉状態を検出することができる。また図10には、本実施形態における車両側装置2のブロック図を示している。この図に示すように、検出部17は車両側装置2の車両側制御部12に接続されており、この車両側制御部12に対してドアミラー1bの開閉状態情報を送信することができるように構成されている。
【0054】
本実施形態においても、予め第1のデータ群と第2のデータ群を取得しておく点は第1の実施形態と同様であるが、本実施形態では可動体であるドアミラー1bの動作前状態と動作後状態のそれぞれについてデータを取得すると共に、それらを別々のデータとしてマハラノビス距離を算出するためのパラメータを算出し、メモリ13に記憶させる。すなわち、メモリ13にはドアミラー1bの開状態に対応した動作前第1のデータ群と動作後第2のデータ群とに対応したパラメータと、ドアミラー1bの閉状態に対応した動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群とに対応したパラメータとが記憶される。
【0055】
携帯機3の位置判別にあたっては、車両側制御部12はまず、検出部17からドアミラー1bの開閉状態情報を受信し、ドアミラー1bが開状態である場合には動作前第1のデータ群と動作前第2のデータ群に対応したパラメータをメモリ13から読み出し、それを用いてマハラノビス距離を算出する。一方、ドアミラー1bが閉状態である場合には動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群に対応したパラメータをメモリ13から読み出し、それを用いてマハラノビス距離を算出する。
【0056】
このように検出部17からの情報に基づいてそれぞれ動作前と動作後のパラメータを使い分けることにより、送信アンテナ15が可動体に取付けられていても精度よく携帯機3の位置判別を行うことができる。ただし、この場合には検出部17が必要であると共に、検出部17が動作する場合でなければ可動体の状態を判別することができないので、ドアミラー1bを手動で開閉させる場合に対応できないことがある。また、メモリ13には動作前後のパラメータの両方を記憶させる必要があるので、データ量が大きくなる。これらが問題となる場合には、第1の実施形態を用いた方がよい。
【0057】
なお、本実施形態では、携帯機3の位置が車両1の内側にあるか外側にあるかの判別を行っているが、位置判別はこれに限られず、第1の実施形態の場合と同様に携帯機3が車両1から外方に向かって所定距離、例えば1.5m離れた境界面の内側にあるか外側にあるかの判別を行うようにしてもよい。さらには、車両1内において携帯機3が運転席側にあるか助手席側にあるかを判別するために、運転席と助手席の間の面を境界面としてデータ群を取得するようにしてもよい。さらには、第2の実施例に適用して、送信電波に影響を与える可動体の移動を検知し、これによって動作前後のデータ群にそれぞれ切り替えるようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、第1の実施形態では図4に示すように送信アンテナ15を車両1内外にそれぞれ3つずつ設けているが、送信アンテナ15の数と配置はこれに限られず、車両1の内側と外側にそれぞれ1つ以上ずつあればよい。ただし、送信アンテナ15は複数あった方がより精度よく位置を判別することができる。また本実施形態では、送信アンテナ15からの受信強度が大きいものから3つを選び、それをデータとして位置判別に用いているが、これも3つには限られず、全てのデータを用いるようにしてもよい。また、可動体としてはドアミラー1bには限られず、例えば前後方向に移動可能なシートや、高さ調節可能なハンドルなどもこれに含まれる。これらについても、動作前後のデータをそれぞれ取得し、それらを使い分けるまたはそれらを合わせたデータにより携帯機3の位置判別を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では車両側装置2側の車両側制御部12で、携帯機3からのデータと第1のデータ群及び第2のデータ群とのマハラノビス距離を算出しているが、携帯機3にメモリ13と同様のメモリを設けて第1のデータ群及び第2のデータ群とのマハラノビス距離の算出に必要なパラメータを記憶しておき、携帯機制御部22においてマハラノビス距離を算出して、携帯機3の位置判別を行うようにしてもよい。
【0060】
さらにまた、メモリ13に記憶させておくデータとしては、本実施形態のように各データ群に対応したマハラノビス距離の算出に必要なパラメータではなく、第1のデータ群及び第2のデータ群そのものであってもよく、この場合には携帯機3の位置判別の際に各データ群からパラメータ及びマハラノビス距離を算出することになる。すなわち、第1のデータ群及び第2のデータ群の取得は、車両の開発時または製造ラインにおいて行うが、各データ群からマハラノビス距離の算出に必要なパラメータを算出するのはその後のどの段階であってもよい。ただし、パラメータを予め算出しておいてメモリ13に記憶させておくことにより、メモリ13に記憶させるデータ量を少なくすることができる。
【0061】
そして、位置判別の手法としては、本実施形態のようにマハラノビス距離を算出するものには限られず、線形判別式を用いるものであってもよい。ただし、マハラノビス距離を用いた方がより精度よく位置判別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図2】第1の実施形態における車両側装置のブロック図である。
【図3】携帯機のブロック図である。
【図4】車両に設けられるアンテナの配置を示した図である。
【図5】各データ群の分布を概念的に示した図である。
【図6】アンロック動作の際のフローチャートである。
【図7】車両側装置と携帯機からの信号のチャート図である。
【図8】第2の実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図9】第3の実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図10】第3の実施形態における車両側装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 車両側装置
3 携帯機
10 車両側受信部
11 車両側送信部
12 車両側制御部
13 メモリ
14 受信アンテナ
15 送信アンテナ
16 リクエストスイッチ
20 携帯機受信部
21 携帯機送信部
22 携帯機制御部
23 三軸アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有し、上記送信アンテナの少なくとも一つは、車両に設けられる可動体または可動体の動作に伴い送信電波に影響を受けるように、取付けられたキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナから送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記車両側制御部または携帯機制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
該メモリには、上記携帯機の位置を車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて位置させた際の、上記可動体の動作前後状態における上記複数の送信アンテナからのそれぞれの受信強度情報を有する第1のデータ群、または該第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な第1のパラメータと、
上記携帯機の位置を車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて位置させた際の、上記可動体の動作前後状態における上記複数の送信アンテナからのそれぞれの受信強度情報を有する第2のデータ群、または該第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な第2のパラメータとを記憶し、
上記メモリを備える車両側制御部または携帯機制御部は上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記第1のデータ群と第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記第1のデータ群と第2のデータ群または上記第1のパラメータと第2のパラメータを用いて判別することを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項2】
車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有し、上記送信アンテナの少なくとも一つは、車両に設けられる可動体または可動体の動作に伴い送信電波に影響を受けるように、取付けられたキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナからの車両側から送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記可動体には該可動体の動作を検出する検出部が設けられ、該検出部は上記車両側制御部に可動体の動作状態情報を送信できるように接続され、
上記車両側制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
該メモリは上記携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作前状態について複数有する動作前第1のデータ群または該動作前第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作前第1のパラメータと、上記携帯機の位置が車両を基準とした所定境界面の片方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作後状態について複数有する動作後第1のデータ群または該動作後第1のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作後第1のパラメータと、上記携帯機の位置が上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作前状態について複数有する動作前第2のデータ群または該動作前第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作前第2のパラメータと、上記携帯機の位置が上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿った際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報を、上記可動体の動作後状態について複数有する動作後第2のデータ群または該動作後第2のデータ群と強度情報を対比するために必要な動作後第2のパラメータとを記憶し、
上記車両側制御部は、上記検出部からの動作状態情報が上記可動体の動作前状態を示す場合、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記動作前第1のデータ群と動作前第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記動作前第1のデータ群と動作前第2のデータ群または上記動作前第1のパラメータと動作前第2のパラメータを用いて判別し、上記検出部からの動作状態情報が上記可動体の動作後状態を示す場合、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる強度情報が上記動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群のうちどちらのデータ群に近似するかを、上記動作後第1のデータ群と動作後第2のデータ群または上記動作後第1のパラメータと動作後第2のパラメータを用いて判別することを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項3】
上記車両を基準とした所定境界面は車両内外境界面であることを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。
【請求項4】
上記車両を基準とした所定境界面は車両のドア近傍に設けられた送信アンテナから車両外方に所定距離を有して離隔した面であることを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。
【請求項5】
上記車両側制御部または携帯機制御部は上記信号の強度情報と各データ群とのマハラノビス距離を上記各データ群または各パラメータを用いてそれぞれ算出し、マハラノビス距離の小さいデータ群に近似すると判別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−205004(P2007−205004A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24199(P2006−24199)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】