説明

ギアボックスに取り付けられた始動装置を組み込んだガスタービンエンジン

【課題】始動装置全体にわたる油漏れに対してより耐性のある推進アセンブリを提供する。
【解決手段】本発明は、ガスタービンエンジンであって、補助機械を駆動するエンジンシャフトに機械的に連結されたギアハウジングAGB12と、ハウジングに取り付けられた空気始動装置10、10’とを備え、始動装置の潤滑油が、AGBハウジングから分配されるように、始動装置とハウジングのエンクロージャが連通している、ガスタービンエンジンに関する。このエンジンは、始動装置10、10’のオイルエンクロージャが、AGBハウジングとは別個に、空気源によって加圧されることを特徴とする。有利に、加圧空気は、エンジン軸受の加圧エンクロージャから取り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジン、より詳しくはターボジェットエンジンの分野に関する。本発明は、より詳しくは、動力伝達ギアボックスに取り付けられた空気始動装置の潤滑に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットエンジンは、外部ケーシングに固定されたハウジングを備え、ピニオンが、エンジンシャフトに機械的に連結され、エンジンシャフトによって駆動されるように配置されている。次いでこれらピニオンは、エンジンに供給するポンプまたは発電機などの補助エンジン用機械に連結されている。より詳しくは、このようなハウジングは、始動装置を支持し、始動装置は、例えば特に地上の始動で、マルチボディエンジン内の高圧ロータの1つであるエンジンシャフトを機械的に駆動する。ハウジングは、一般にAGBと呼ばれ、これは「Auxiliary Gear Box(補助ギアボックス)」という言葉の頭字語である。始動装置ケーシングの内側の回転部品に対する潤滑は、一般に、AGBハウジングから取り込まれる油によって行われる。図1は、一部のターボジェットエンジンで実施されるような、始動装置の始動装置潤滑モードを概略的に示す。始動装置1は、AGBハウジング2に取り付けられている。ケーシング壁4とAGBハウジング2の壁との間に、凹所形成インタフェース3が配置される。始動装置シャフト5は、そのピニオンアセンブリと一緒に、軸受6によって始動装置ケーシングで支持される。ここでは示していないが図1の左側で、シャフト5は、空気タービンに連結され、エンジン始動時に空気タービンを駆動する。タービンシール5Aが、ケーシングとこの箇所で交差するシャフト5の密閉をもたらしている。
【0003】
始動装置の回転部品の潤滑油は、ハウジング2からレセプタクル7内に供給される。レセプタクル7は、始動装置とAGBハウジングとの間のインタフェース3に配置され、始動装置と一体である。このようなレセプタクル7は、始動装置ケーシングの壁4に配置されたアパチャ8を通って、始動装置のエンクロージャと連通している。アパチャは、始動装置の凹所内に小さな破片が投げ出されるのを防止するために、ストレーナによって保護されている。始動装置のオイルエンクロージャの下方部に回収された油は、ここで示していない散布、ポンピング、または任意の他の手段によって、始動装置の回転部品を横切って循環される。始動装置のエンクロージャとハウジング2のエンクロージャとの間では、油は循環していない。レベルは、インタフェース3のレセプタクル7のオーバフロー7’によって画定される。両エンクロージャ、即ち始動装置用のエンクロージャとAGB用のエンクロージャとの間の圧力バランスは、壁4の上方部に配置されたアパチャ8’によってもたらされる。このような連通管の原理によって、始動装置のオイルレベルの監視が、エンジン油回路のリアルタイムの監視と関連付けられている。これによって、始動装置の目詰まりと、始動装置からの油によるエンジン汚染の危険との両方が防止される。
【0004】
始動装置エンクロージャに含まれる油は、様々な理由で不注意に外に漏れる場合がある。空気タービンシャフトと始動装置ケーシングとの間のシール5aが、損傷されている場合がある。例えば、オイルプラグが、もはや堅く締まっていないかもしれず、あるいはケーシングに亀裂さえ発生しているかもしれない。このようなことが起こっても、この漏れは、AGBハウジングからストレーナを横切る油の供給による、始動装置の潤滑に対して何ら影響を及ぼさない。しかしエンクロージャ内に存在する圧力が、大気圧よりも高くなると、AGBハウジングからのオイルミストを含む空気は、外側に放出される。このような供給は、エンジン潤滑油の漏れと見なされ、操縦者に伝えられる。漏れによって、エンジン潤滑油回路がパージされる場合があり、したがってエンジンが、飛行において遮断される可能性がある(IFSD)。
【0005】
米国特許第6,681,579号明細書で開示されている解決方法は、ABGハウジングと始動装置エンクロージャとの間の流体フローを検査することを含む。シーリングプレートが、始動装置とハウジングとの間のインタフェース形成領域の側の始動装置に取り付けられることにより、始動装置エンクロージャ内の圧力が低下した際に、始動装置エンクロージャを分離することが可能になる。弁は、圧力バランスを確保するように、通常動作では開けられたままである。このような弁は、圧力が低下すると自動的に閉まる。
【特許文献1】米国特許第6,681,579号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の解決方法とは異なった手段によって、始動装置全体にわたる油漏れに対してより耐性のある推進アセンブリを作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、ガスタービンエンジンは、補助機械を駆動するエンジンシャフトに機械的に連結されたギアハウジングと、ハウジングに取り付けられた空気タービン始動装置とを備え、始動装置の潤滑油が、AGBハウジングから分配されるように、始動装置とハウジングのエンクロージャが連通し、始動装置のオイルエンクロージャが、AGBハウジングとは別個に、空気源によって加圧されることを特徴とする。
【0008】
本発明の解決方法によると、始動装置のレベルでの油またはオイルミストを含む空気の漏れは、ギアハウジングからの油を含む空気によって補償されない。したがって、エンジン潤滑回路がパージされる危険性はより低い。
【0009】
さらに、推進アセンブリは、AGBからの油を含む空気の循環を強制的に室内圧力に戻すことによって、始動装置全体にわたる油漏れに対するより大きな耐性で作られる。油が含まれていない空気による加圧は、始動装置のエンクロージャからの油漏れに対して障壁を作るこという目的を有する。
【0010】
第1の実施形態によると、加圧空気が、始動装置のケーシングとハウジングのケーシングとの間のインタフェース領域内に流れ込む。したがって、加圧空気は、ギアハウジングから循環する傾向にある空気に対して障壁を作り出す。このような加圧空気が、それ自体にオイルミストが含まれていない限り、漏れは主に空気からなり、油が、このような漏洩空気によって駆動されることはない。
【0011】
他の実施形態によると、内部シールと外部シールとを備えたシャフトの二重シールが、始動装置内で空気タービン側に配置され、加圧空気は、両シール間を流れる。この実施形態によると、この加圧空気は、始動装置のエンクロージャ内の内部シール側で漏れ、加圧空気は、場合によって始動装置とハウジングケーシングとの間のインタフェース領域内に流れ込む前に、始動装置のエンクロージャ内の内部シール側を流れる。
【0012】
好ましくは、空気戻り部が、始動装置とハウジングとの間に、加圧空気の供給圧力よりも低い圧力で配置される。このような構成は、有利に、デオイラ(de−oiler)との連結をもたらし、デオイラは、空気流によって駆動されるオイルミストを形成する油の回収を可能にする。
【0013】
有利な実施形態によると、加圧空気は、ターボジェットエンジン軸受の1つの外部加圧エンクロージャから取り込まれる。ギアハウジングが、エンジン前部に向かって位置付けられている限り、これは、ターボジェットエンジンのシャフトの第1または第2の支持軸受である。この場合、空気の戻りは、ターボジェットエンジン軸受の内部エンクロージャに供給されることが好ましい。
【0014】
次に、本発明の2つの非制限的実施形態が、添付図面を参照して記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に図2を参照すると、本発明の第1の実施形態による例示的構成が、概略的に示されている。
【0016】
始動装置10は、始動装置10の回転部品の潤滑油用のケーシング11を形成するエンクロージャを備える。これらの回転部品は、軸受16によってケーシング11に回転可能に取り付けられた回転アセンブリまたはシャフト15として表されている。言うまでもなく、このような回転アセンブリには、これに結合されるピニオンと、減速装置と、ヒューズと、始動装置を形成する他の部品とが存在する。本発明は、始動装置の構造には言及しないので、その実施形態をさらに詳述することは有益ではない。このような回転アセンブリ15は、ここでは示さない空気タービンと一方側で連結される。このタービンは、ターボジェットエンジンの始動時に、回転アセンブリ15を駆動する。タービンシール15aは、回転アセンブリ15とケーシング11との間にシーリングをもたらす。他方側で、シーリング手段15bを備えた、ケーシングの壁14と交差する回転アセンブリは、ギアボックス12の歯車と一体であるピニオン121に連結される。以上で述べたように、AGBギアボックスまたはハウジング12は、適切な伝動シャフトによって、ターボエンジンのエンジンシャフトに機械的に連結される。ターボジェットエンジンが、2軸または3軸、あるいは単一体である場合、多くの場合、それはエンジンの高圧シャフトである。ハウジングは、一般に、ターボジェットエンジンのいわゆる中間ケーシングに取り付けられ、伝動シャフトは、径方向であり、かつ中間ケーシングの1つのアーム内のガス流れと交差する。このようなAGBハウジングはよく知られ、さらにこのようなAGBハウジングを詳述しない。
【0017】
始動装置10のケーシング11とAGBのハウジング12との間に、インタフェース凹所13が配置される。したがってこのような凹所は、始動装置ケーシングの壁14と、ピニオン121の端部を取り囲む壁または挿入物122との間で画定される。壁122と壁124との間に少なくとも1つの凹所123が配置され、両方の壁は、ピニオン121によって形成された回転部材によって交差される。ピニオン121と壁122および124との間には、2つのシールまたはネッキング12aおよび12bが存在する。
【0018】
以上で述べたように、始動装置エンクロージャの潤滑油は、AGBハウジング12のエンクロージャから供給される。このような油は、ケーシング11の底に回収され、そこから油は、ポンピングによって、またはエンクロージャ内の他の手段によって分配され、壁14の開口部18または他の任意の手段を介して、インタフェース領域13のレセプタクル17と連通する。油は、オーバフロー17’によってインタフェース領域13内に流れ込み、そこからAGBハウジングを通って循環する。始動装置エンクロージャとインタフェース領域13との間には、他の通路18’も存在する。
【0019】
本発明のシステムは、軸受のエンクロージャ20の圧力を適用する。ターボジェットエンジンでは、シャフトは、ステータの構造内で軸受によって支持される。このような軸受は、油の循環を、油が回収される領域に向けて方向付ける二重の加圧されたエンクロージャで、潤滑されかつ囲まれている。さらに、油を含む空気が適切に脱油される。このような手段は、それ自体知られている。本発明は、始動装置のエンクロージャに加圧するため、ならびに漏れた油を回収するためにそれらを利用する。
【0020】
図面には、エンクロージャ20が概略的に示される。エンジンのシャフト30は、ノズル33から油を受け取る軸受システム32によって支持される。このシャフトと軸受は、二重エンクロージャ20、即ち内部エンクロージャ20intと外部エンクロージャ20extとによって囲まれている。内部エンクロージャ22のジャケット22は、軸受32の両側のラビリンスシール22aおよび22bによって、シャフト30に対して緊密に作成されている。外部エンクロージャ20extのジャケット21は、内部エンクロージャ20intを囲み、これもラビリンスシール22aおよび22bそれぞれによって緊密である。
【0021】
内部エンクロージャ20intの油が漏れるのを防止するために、外部エンクロージャ20extには、内部エンクロージャ20intの圧力P2よりも僅かに高い圧力P1の加圧空気が供給される。このようにして、シール22aおよび22bを介して、外部エンクロージャ20extから内部エンクロージャ20intへと空気循環が作り出される。潤滑油は、油回収領域22c内で回収される。内部エンクロージャ20intの油が含まれた空気は、ここでは示していないデオイラで処理され、その後曝気路31によって、シャフト30を通ってエンジンの背部に放出される。
【0022】
本発明は、有利に、このような圧力P1の空気源を使用して、始動装置エンクロージャを加圧する。図2の例示的な実施形態では、導管40は、外部エンクロージャ20extを始動装置10のエンクロージャに連結する。ここでは導管は、インタフェース凹所の中に通じている。インタフェース凹所13と始動装置エンクロージャが連通していることから、始動装置エンクロージャは、実質的に凹所13の圧力P’1にある。圧力P’1は、導管40に設けられた較正された開口部41によって決定される。
【0023】
二重エンクロージャ20の内部エンクロージャ20intに向かった空気戻り導管43が、想定される。空気戻り導管43は、AGBハウジング12の壁124に、壁122を形成するインタフェース13に対して内側に設けられる。
【0024】
事故のない動作で、始動装置エンクロージャ10は、外部エンクロージャ20extからの空気によって加圧されるが、これは、同様にそれ自体加圧空気が供給されるAGBハウジング12のエンクロージャとは別個に行われる。これらの加圧圧力は、等しくてもよい。始動装置内の圧力が、ハウジング12内の圧力よりも高くてもよい。
【0025】
空気は、壁121と124との間のインタフェース凹所から循環し、次いで、内部エンクロージャ20intに向かって案内される。万一始動装置エンクロージャで漏れが発生すると、圧力は低下し、空気は、インタフェース凹所13から始動装置エンクロージャに循環する。このような空気には、AGBからの空気よりもオイルミストが少なく含まれている。したがって、AGB12のエンクロージャ全体を通して加圧が起こることになる場合に比べて、油の漏れは少ない。このような解決法は、空気戻り導管43によって駆動されている油を、デオイラを使用して回収することも可能にする。デオイラには、シャフト軸受の潤滑システムが設けられている。
【0026】
加圧空気源は、シャフト軸受のうちの任意のものに対する加圧エンクロージャであってもよい。より一般的には、加圧は、所望の圧力レベルを提供することができるのであれば、任意の空気源、または気体源によってさえもたらされてよい。
【0027】
図3には、代替実施形態が示され、ここでは加圧空気は、始動装置とギアハウジングとの間の凹所を形成するインタフェースに流れ込むのではなく、回転アセンブリの反対側端子部の加圧エンクロージャ内に流れ込む。
【0028】
始動装置の同一の部分を示す参照注記は、同一のプライム符号を有する。始動装置械10’は、2つのシール15a1と15a2との間のシーリング二重エンクロージャ15a’を備える。両シールは、エンクロージャ15a’からの加圧空気が、始動装置エンクロージャ10’に向かって漏れるように配置される。これらのシールは、外部シール15a1には炭素シール、内部シール15a2にはラビリンスシールであることが好ましい。このようなエンクロージャ15a’は、導管41’によって、軸受の加圧二重エンクロージャの外部エンクロージャ21と連通している。内部エンクロージャ22への空気の戻りは、インタフェース凹所13と連結している導管43’によってもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ターボジェットエンジンの空気始動装置がAGBハウジングに取り付けられているときの、ターボジェットエンジンの空気始動装置の潤滑モードを概略的に示す。
【図2】本発明によるAGBハウジングに取り付けられた空気始動装置のオイルエンクロージャの加圧回路を示す。
【図3】代替加圧の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0030】
10 始動装置
11 ケーシング
12 ギアボックス、ハウジング
12a、12b シール
13、123 インタフェース凹所
14、122、124 壁
15、30 シャフト、回転アセンブリ
15a、15b タービンシール
16、20、32 軸受
17 レセプタクル
18、41 開口部
18’ 通路
20 エンクロージャ
21、22 ジャケット
22a、22b ラビリンスシール
22c 油回収領域
31 曝気路
43、40 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンであって、補助機械を駆動するエンジンシャフトに機械的に連結されたギアハウジングAGB(12)と、AGBハウジングに取り付けられた空気始動装置(10、10’)とを備え、始動装置の潤滑油が、AGBハウジングから分配されるように、始動装置とAGBハウジングのエンクロージャが連通し、始動装置(10、10’)のオイルエンクロージャが、AGBハウジングとは別個に、空気源によって加圧されることを特徴とする、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
加圧空気が、始動装置(10、10’)のケーシング(11、11’)とAGBハウジング(12)のケーシングとの間のインタフェース領域(13、13’)内に流れ込む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
始動装置(10’)の回転アセンブリ(15’)の二重シール(15a’)が、空気タービンの側に配置されて、加圧空気が、二重シール(15a’)を形成している両シール(15a1、15a2)間を流れる、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
空気戻り部(43、43’)が、始動装置とハウジングとの間に、加圧空気の供給圧力よりも低い圧力で配置される、請求項2または3に記載のエンジン。
【請求項5】
空気の戻りが、デオイラに向けて送られる、請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項6】
加圧空気が、ターボジェットエンジン軸受の1つの外部加圧エンクロージャ(20ext)から取り込まれる、請求項1から5のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項7】
ターボジェットエンジン軸受の1つの内部エンクロージャ(20int)に向かっている空気戻り部を備える、請求項5に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−185033(P2008−185033A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−17153(P2008−17153)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(502150878)イスパノ・シユイザ (44)
【Fターム(参考)】