説明

ギヤードモータ

【課題】歯車減速機とモータの組付け角度を変更することができ、歯車減速機とモータが互いに離れることがなく、歯車減速機内部のグリスが外部に流れ出るといった問題が生じないギヤードモータを提供する。
【解決手段】歯車減速機3とモータ2のいずれか一方のケーシングの内周側に半径方向に互いに重なるように組付けられる挿入部を前記歯車減速機3とモータ2のいずれか他方に設けるとともに、前記歯車減速機3とモータ2の軸方向に組付けられる締結手段によって前記歯車減速機3とモータ2が互いに固定されるギヤードモータ1であって、前記挿入部の外周面に円周方向に沿って溝部60を形成し、該溝部60内に位置して前記ケーシングと挿入部の軸方向の動きを係止するとともに円周方向の動きを可能にする抜け止め手段41を設け、前記締結手段4を外すことで、前記歯車減速機3とモータ2を円周方向に互いの位置を変えることを可能にしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車減速機とモータを組付けたギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のギヤードモータは、ギヤ出力軸の向きによって、次の二種類に大別できる。一つは、歯車減速機の入力軸と出力軸が直交する直交軸タイプのギヤードモータである。もう一つは、歯車減速機の入力軸と出力軸が同じ方向の平行軸タイプのギヤードモータである。
【0003】
直交軸タイプのギヤードモータには、その構造上、取付け方向によってギヤ出力軸位置が変化するため、モータに対してギヤ出力軸を右側にしたものと、左側にしたものの二種類が必要になるという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1には、二種類の製品をバリエーションとして持っていることが開示されている。特許文献2には、中空シャフトのギヤ出力軸と取付けボルト孔が貫通された2つの面を共に取付け可能面としたことが開示されている。特許文献3には、正方形に配設された取付けボルト孔の中心に中空シャフトのギヤ出力軸を配設したことが開示されている。
【0005】
上記特許文献以外の方法としては、歯車減速機とモータ各々を、単品として別々に販売する方法や、組み付けねじで固着した状態で販売する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−126468号公報
【特許文献2】特開平6−54483号公報
【特許文献3】特開平10−299840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来のギヤードモータにおいては、次のような問題があった。
特許文献1の方法にあっては、製品種類が2倍になるのは勿論のこと、ギヤ出力軸の部品種も2倍になってしまう。
特許文献2の方法にあっては、加工された2つの取付け面のうち、実際に取付けに使われるのは左右どちらか1つの面であるため、結果的に加工が不要の面まで取付け面加工を施していることになり、その分コストアップとなる。
特許文献3の方法にあっては、減速機内の歯車の種類や配置に制限が伴うため、限られた種類の減速機でしか実施できない。
歯車減速機とモータを各々単品で販売する方法では、顧客が歯車減速機とモータを好みの方向に組付けられるというメリットがある反面、顧客が歯車減速機とモータを組み付ける際、モータピニオンと歯車減速機の初段歯車とを噛み合わせる時に、歯車部に打痕をつけてしまい、それが噛み合い音不良の原因となる、という問題がある。
組付けた状態で販売する方法でも、組み付けねじを緩めると、モータピニオンと歯車減速機の噛み合いが外れてしまうため、顧客が、方向を変えて組み付け直す際、すなわち、再度噛み合わせる時に歯車部に打痕をつける恐れがある。
また、組み付けねじを緩めた際に、モータピニオンと歯車減速機の噛み合いが外れるため、グリスが流れ出るといった問題もあった。
【0008】
本発明は、こうした従来の問題点に着目してなされたもので、歯車減速機とモータを組み付ける締結手段を外すことで、歯車減速機とモータの組付け角度を変更することができ、かつ歯車減速機とモータが互いに離れることがないので、歯車部を再度噛み合わせる必要がないことから歯車部に打痕をつける恐れがなく、歯車減速機内部のグリスが外部に流れ出るといった問題が生じないギヤードモータを提供することを目的とする。
また、通常、出力軸の向きが右側のものと左側のものの二種類が必要になる直交軸タイプのギヤードモータにあっても一種類で対応できる直交軸ギヤードモータを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、歯車減速機とモータのいずれか一方のケーシングの内周側に半径方向に互いに重なるように組付けられる挿入部を前記歯車減速機とモータのいずれか他方に設けるとともに、前記歯車減速機とモータの軸方向に組付けられる締結手段によって前記歯車減速機とモータが互いに固定されるギヤードモータであって、前記挿入部の外周面に円周方向に沿って溝部を形成し、該溝部内に位置して前記ケーシングと挿入部の軸方向の動きを係止するとともに円周方向の動きを可能にする抜け止め手段を設け、前記締結手段を外すことで、前記歯車減速機とモータを円周方向に互いの位置を変えることを可能にしたことにある。
また、本発明は、前記抜け止め手段として、前記歯車減速機とモータのいずれか一方のケーシングに半径方向に貫通するピン穴を形成し、該ピン穴を通して前記挿入部の溝部に係合するピンを装着したことにある。
さらに、本発明は、前記抜け止め手段として、内周側が前記挿入部の溝部に配置され、外周側が前記ケーシングの内周面に係合する環状の弾性体を用いたことにある。
またさらに、本発明は、前記モータの出力軸を支持する軸受を前記歯車減速機のケーシングに設けられた前記モータの出力軸挿入孔の内周面に配置したことにある。
また、本発明は、前記歯車減速機として直交軸ギヤを用いると共に、該直交軸ギヤの出力軸の中心線と前記モータの出力軸の中心線が直交するように前記直交軸ギヤとモータを組み合わせ、前記ギヤードモータの4つの取付けボルト孔と、前記直交軸ギヤの出力軸の中心線と前記モータの出力軸の中心線とを含む平面と、の距離が夫々等しくなるように前記取付けボルト孔を配置したことにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によれば、締結手段を外すことで、歯車減速機とモータを円周方向に互いの位置を変えることを可能にしたので、歯車減速機に対してモータを90度おきに回転することができ、モータリード線の引き出し方向や、端子箱の位置の変更ができるため、製品の種類を削減することができる。減速機部がモータ部から外れないので、モータリード線の引き出し方向や、端子箱の位置を変更する際に、モータ部の噛み合い部への打痕傷などの発生や、減速機部からグリスが流れ出ることを防止できる。
請求項2によれば、簡単な構成で減速機とモータを回転可能で、かつ外れることがないので、モータリード線の引き出し方向や、端子箱の位置を変更する際に、モータ部の噛み合い部への打痕傷などの発生や、減速機部からグリスが流れ出ることを防止できる。
請求項3によれば、簡単な構成で減速機とモータを回転可能で、かつ外れることがないので、モータリード線の引き出し方向や、端子箱の位置を変更する際に、モータ部の噛み合い部への打痕傷などの発生や、減速機部からグリスが流れ出ることを防止できる。さらに、減速機とモータ部の接合面からギヤードモータ内部に液体などが侵入することも防止できる。
請求項4によれば、モータフランジを使用しない構造のため、部品削減によるコストダウンができる。
請求項5によれば、直交軸ギヤードモータであっても、減速機の取付け面に対してモータ部を180度回転させることによって、一種類のギヤードモータで左右両面の取付けに対応できるため、製品種類、部品種類、加工コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態によるギヤードモータを示す部分断面図である。
【図2】図1の部分を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態によるギヤードモータを示す斜視図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】図1のモータ部と歯車減速機部を分離した状態の断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるギヤードモータを示す部分断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】図6のモータ部と歯車減速機部を分離した状態の断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態によるギヤードモータを示す部分断面図である。
【図10】図9の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1ないし図5の実施の形態のギヤードモータ1は、モータ部2にモータフランジを使用せず、歯車減速機部3のケーシングでモータの出力軸の軸受を支持するようにしたものである。モータフランジの省略による部品の削減によりコストダウンを図ることが可能である。モータ部2は締結用ねじ4を介して歯車減速機部3に締結されている。
この実施の形態は、歯車減速機部3として直交軸歯車減速機50を使用した態様を説明する。
【0014】
前記モータ部2は、一端を閉塞した筒状のケーシング21の内周面に環状の固定子24が配設され、この固定子24の軸線上には、回転子25を支持した回転軸26が配設されており、この回転軸26の片側には、歯車減速機部3に連結される出力軸26aが設けられている。前記回転軸26は、両端部が軸受27,28を介して回転自在に支持されており、一端の軸受27はケーシング21のボス部21aに支持され、他端の軸受28は、直交軸歯車減速機50の減速機ケース51に支持されている。
この実施の形態では、前記モータ部2の出力軸26aの先端には、ハイポイドピニオン26cが設けられている。また、モータ部2のケーシング21には、開口側の周縁部に半径方向のピン孔21bが形成されている。
このモータ部2の回転軸26の両端部を支持する軸受27,28のうち軸受28は、直交軸歯車減速機50の減速機ケース51に支持されている。7は電源および駆動装置に接続するためのモータリード線を接続する端子を内蔵した端子箱で、前記モータ部2のケーシング21に組付けられている。
【0015】
前記直交軸歯車減速機50は、前記モータ部2の出力軸26aの回転を、90度方向を変えて伝達するもので、モータ部2の回転軸26の延長線上に直交する向きに設けられた軸52に支持されたハイポイドギヤ53にハイポイドピニオン26cが噛合している。軸52には、減速歯車54が装着されており、この減速歯車54は減速大歯車55に噛合している。減速大歯車55は軸52と平行に設けられた出力軸56に装着されており、この出力軸56は、前記モータ部2の出力軸26aの延長線上に同じく直交する軸上に設けられている。
【0016】
前記減速機ケース51は、図示しない取付けボルトにより締結される角筒状のケーシング57と、該ケーシング57の開口部を塞ぐフランジ57Aとで形成されており、内部に前記ハイポイドギヤ53,減速歯車54,減速大歯車55,出力軸56が設けられている。51aは減速機ケース51に設けられた取付けボルト孔である。
前記ケーシング57の側面には、前記モータ部2の出力軸26aが導入される開口穴57aが形成され、該開口穴57aと直交する向きに前記出力軸56を導出する開口穴57bを形成したものである。前記開口穴57aの内面には、前記モータ部2の出力軸26aを支持する軸受28が支持されており、前記ケーシング57とフランジ57Aの内面には、軸52を支持する軸受58a,58bと、前記出力軸56を支持する軸受59a,59bがそれぞれ設けられている。前記出力軸56は、モータ部2の出力軸26aの中心線の延長線上で、図4に示すように減速機ケース51の幅方向の中心位置L1=L2になるように形成されている。
【0017】
前記モータ部2の出力軸26aが組付けられる前記ケーシング57の外面には、モータ部2のケーシング21の内面側に組付けられる挿入部としての円筒部57cが形成されており、モータ部2のケーシング21は、前記ケーシング57の円筒部57cに嵌合させて組み付けられてケーシング57の端面に係止されている。この円筒部57cの外周面には、図5に示すように円周方向に沿って溝部60が設けられており、この溝部60には、抜け止め手段として、前記モータ部2のケーシング21のピン孔21bに圧入されるピン41の先端が係合するように装着されている。
61は前記ケーシング57の開口穴57a内面に設けられたシール部材で、前記モータ部2の出力軸26aに密着して、前記ケーシング57内部をシールしている。
【0018】
こうして、図5に示すように、モータ部2の出力軸26aを開口穴57aに挿入するようにして、ケーシング57内に組み付けると、出力軸26aのハイポイドピニオン26cがハイポイドギヤ53に噛合して直交軸歯車減速機50にモータ部2が組付けられる。ピン41をモータ部2のケーシング21のピン孔21bに圧入して、ケーシング57の外面の溝部60に係合させる。そして、ねじ4をモータ部2のケーシング21縁部の鍔部に形成されたねじ孔21cに挿通させて、減速機ケース51のケーシング57のねじ孔に螺合して、モータ部2と歯車減速機部3を組付ける。
【0019】
そして、直交軸歯車減速機50の向きを変えるときは、ねじ4を外してモータ部2に対して歯車減速機部3の向きを90度ごとに変えると、ピン41が溝部60に沿って摺動しながら歯車減速機部3が回動し、所望の向きに変えることができる。この時、ピン41が溝部60に係合しているので、直交軸歯車減速機50がモータ部2から完全に離れることがないことからモータ部2の出力軸26aのハイポイドピニオン26cを直交軸歯車減速機50のハイポイドギヤ53に噛合した状態で、回動させることができる。したがって、ハイポイドピニオン26cおよびハイポイドギヤ53の歯車部に打痕をつける恐れがない。さらに、歯車減速機部3の方向を変えるときに、出力軸26aのハイポイドピニオン26cをハイポイドギヤ53に組み付け直す必要がないことから、歯車減速機部3内のグリスが漏れるといった不具合を生じず、必要に応じて歯車減速機部3、すなわち直交軸歯車減速機50の向きを変えることができる。直交軸歯車減速機50の向きを180度回転させれば、左右の向きを変えることができ、出力軸56を反対側に向けることができる。
【0020】
図6ないし図8は、本発明の他の実施形態であり、図1ないし図5と基本構成は、共通であり、同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
【0021】
この実施の形態では、抜け止め手段として、ピン41に代えて弾性変形できるゴム等の弾性部材で成形したリング状のシール部材42を用いたものである。シール部材42の断面形状は、上部片、下部片と、これらをつなぐ中間部材からなる弾性体、あるいは、略コ字形状(略C字状)、等の断面形状のものを用いることができる。
【0022】
ケーシング57の円筒部57cの外周面に形成する溝部60は、図7に示すように開口側の周縁部の壁部62の高さを低くして開口部63を広く形成し、前記壁部62の開口側の外側方向に向けて徐々に中心側に傾斜する斜面62aが設けられている。また、モータ部2のケーシング21の内面には、円周方向に沿って内径側に突出する段差部21dが設けられている。こうして、図7に示すように、シール部材42の外周端面42aをモータ部2のケーシング21の段差部21dに係合させて、直交軸歯車減速機50をモータ部2に組み付ける。シール部材42は、壁部62を乗り越えて溝部60に嵌まり、溝部60内に組付けられる。シール部材42は、溝部60に嵌まり、内周端面42bが壁部62の内側端面62bに係止されるので、直交軸歯車減速機50がモータ部2から離脱することなく、組付けられる。
【0023】
そして、直交軸歯車減速機50の向きを変えるときは、ねじ4を外して、モータ部2に対して直交軸歯車減速機50を回動させる。直交軸歯車減速機50は、シール部材42によって抜け防止が図られ、歯車減速機部3内のグリスが漏れるといった不具合を防ぐことができる。さらに、直交軸歯車減速機50とモータ部2の接触面部Gからギヤードモータ1内部に液体などが侵入することを防止できる。
【0024】
次に図9および図10は、本発明の別の他の実施の形態である。図9はモータ部と歯車減速機部のケーシングが完全に別体に構成されたギヤードモータを示したもので、このギヤードモータ1は、モータ部2と歯車減速機部3が独立に構成され、締結手段としての複数の締結用ねじ4を介してモータ部2と歯車減速機部3が一体になるように互いに締結されている。
【0025】
前記モータ部2は、一端を閉塞した筒状のケーシング21と、このケーシング21の開口端を塞ぐリング状のフランジ22とで、モータケース23が形成されている。このモ−タケース23は、ケーシング21の内周面に環状の固定子24が配設され、この固定子24の軸線上には、回転子25を支持した回転軸26が配設されており、この回転軸26の片側には、モータピニオン26bを形成した出力軸26aが設けられている。前記回転軸26は、両端部が軸受27,28を介して回転自在に支持されており、一端の軸受27はケーシング21のボス部21aに支持され、他端の軸受28は、フランジ22のボス部22aに支持されている。前記フランジ22の外側には、前記回転軸26の先端出力軸26aが導出されている。前記フランジ22の周縁部22bは、ケーシング21の内周面に圧入されており、かつ周縁部22bの外側面には、軸方向と同方向に延びる延長部22cが挿入部として設けられている。この延長部22cの外周面には、後述するピンが係合する溝部29が円周方向に沿って設けられている。前記回転軸26の先端出力軸26aは、フランジ22の軸線上に形成された穴22dを通して歯車減速機部3に挿入されている。また、前記ケーシング21の角部板面には、前記締結用ねじ4を通す穴21eが軸方向に沿って形成されている。
【0026】
前記歯車減速機部3は、一端を閉塞した筒状のケーシング31内に減速歯車32,33,34が内蔵され、ケーシング31の一端壁部31aに形成した出力軸孔31bから減速機出力軸35が外部に導出されている。
前記減速機出力軸35は、軸受36a,36bを介して支持されており、軸受36aはケーシング31の他端開口部を塞ぐ仕切り板37に支持され、軸受36bは、ケーシング31の一端壁部31aに設けられたボス部31cに支持されている。
前記減速機出力軸35には、前記減速歯車34が装着されており、この減速歯車34に前記減速歯車33が噛合している。この減速歯車33は、軸38に支持されており、この軸38に減速歯車32も支持されている。前記軸38は、軸受39a,39bを介して支持されており、軸受39aは仕切り板37に支持され、軸受39bはケーシング31の一端壁部31aに設けられたボス部31dに支持されている。
仕切り板37は、ねじ40を介してケーシング31に装着されており、仕切り板37に形成された孔37aを通して前記モータ部2の先端出力軸26aがケーシング31内に導入されている。前記モータ部2の出力軸26aは、モータピニオン26bが減速歯車32に噛合しており、減速歯車32を介して軸38、減速歯車33、減速歯車34と伝わり、減速機出力軸35から外部に出力が取り出される。前記ケーシング31の外周面には、半径方向の孔31eが形成されており、この孔31eにピン41が圧入されてピン41の先端を前記溝部29に係合させている。ケーシング31の四隅には、前記締結用ねじ4を螺合する、ねじ孔31fが軸方向に形成されている。
【0027】
上記ギヤードモータの作用を説明する。
モータ部2と歯車減速機部3の組付けに際して、フランジ22の周縁部22bの延長部(挿入部)22cを歯車減速機部3のケーシング31内に挿入して組み付けるとともに、モータ部2の出力軸26aを、歯車減速機部3の仕切り板37に形成された孔37aを通してケーシング31内に挿入して減速歯車32に噛合させる。次に、ケーシング31の外周面に形成された孔31eにピン41を圧入して溝部29に係合させる。
そして、モータ部2と歯車減速機部3の向きを調整して複数の締結用ねじ4をケーシング21のねじ穴21eを通して歯車減速機部3のケーシング31のねじ孔31fに螺合して固定する。
こうして、モータ部2の出力軸26aは、歯車減速機部3のケーシング31内の減速歯車32に噛合し、減速歯車32と同軸の減速歯車33を介して減速歯車34に噛合する。そして、減速歯車34を支持する減速機出力軸35から減速された回転が取り出される。
【0028】
次に、減速機出力軸35の位置を変えたい場合には、締結用ねじ4を外すと、歯車減速機部3は、モータ部2に対して回動可能となり、90度づつ回動することができる。このとき、ピン41が溝部29に係合されているので、歯車減速機部3は、モータ部2から外れることはなく、自在に回動させることができる。そして、所定の位置で、締結用ねじ4を歯車減速機部3のケーシング31のねじ孔31fに螺合させてモータ部2と歯車減速機部3を互いに固定する。
【0029】
よって、モータ部2と歯車減速機部3の締結用ねじ4を取り外しても、モータ部2から歯車減速機部3が外れることがなく、歯車減速機部3の取付け面に対して、モータ部2は90度おきに回転することができ、モータリード線の引き出し方向や、端子箱の位置の変更を容易に行うことができる。また、顧客が、歯車減速機部3の方向を変えて組み付け直す際、モータ部2の出力軸26aと歯車減速機部3のケーシング31内の減速歯車32とを噛合わせる必要がないので、歯車部に打痕をつける恐れがない。さらに、歯車減速機部3の方向を変えて組み付け直す際に、歯車減速機部3内のグリスが漏れるといった不具合を生じないので、必要に応じて歯車減速機部3の方向を変えることができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、第1の実施の形態および第3の実施の形態に、第2の実施の形態のシール部材42を組み合わせて用いることができる。これによって、減速機の抜け止めと、減速機部とモータ部の接合面からのギヤードモータ内部への液体などの侵入防止の両方を同時に図ることができる。等、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 ギヤードモータ
2 モータ部
3 歯車減速機部
4 締結用ねじ(締結手段)
21,31,57 ケーシング
21d 段差部
22 フランジ
23 モータケース
26 回転軸
26a 出力軸
26c ハイポイドピニオン
29,60 溝部
35 減速機出力軸
41 ピン(抜け止め手段)
42 シール部材(抜け止め手段)
50 直交軸歯車減速機
51 減速機ケース
56 出力軸






【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車減速機とモータのいずれか一方のケーシングの内周側に半径方向に互いに重なるように組付けられる挿入部を前記歯車減速機とモータのいずれか他方に設けるとともに、前記歯車減速機とモータの軸方向に組付けられる締結手段によって前記歯車減速機とモータが互いに固定されるギヤードモータであって、前記挿入部の外周面に円周方向に沿って溝部を形成し、該溝部内に位置して前記ケーシングと挿入部の軸方向の動きを係止するとともに円周方向の動きを可能にする抜け止め手段を設け、前記締結手段を外すことで、前記歯車減速機とモータを円周方向に互いの位置を変えることを可能にしたことを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
前記抜け止め手段として、前記歯車減速機とモータのいずれか一方のケーシングに半径方向に貫通するピン穴を形成し、該ピン穴を通して前記挿入部の溝部に係合するピンを装着したことを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記抜け止め手段として、内周側が前記挿入部の溝部に配置され、外周側が前記ケーシングの内周面に係合する環状の弾性体を用いたことを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記モータの出力軸を支持する軸受を前記歯車減速機のケーシングに設けられた前記モータの出力軸挿入孔の内周面に配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のギヤードモータ。
【請求項5】
前記歯車減速機として直交軸ギヤを用いると共に、該直交軸ギヤの出力軸の中心線と前記モータの出力軸の中心線が直交するように前記直交軸ギヤとモータを組み合わせ、前記ギヤードモータの4つの取付けボルト孔と、前記直交軸ギヤの出力軸の中心線と前記モータの出力軸の中心線とを含む平面と、の距離が夫々等しくなるように前記取付けボルト孔を配置したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−87882(P2012−87882A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235245(P2010−235245)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】