説明

クッションパッドの製造方法

【課題】製作コストを低廉化でき、補強布の保形性をよくすることができ、リサイクル性に優れ、作業者の負担を軽減できるクッションパッドの製造方法を提供する。
【解決手段】成形型の型面部分に補強布14を嵌め込んで重ね合わせ、成形型内に発泡樹脂原液を供給して発泡させることで、補強布14がクッションパッド本体12の裏面60側に張付けられたクッションパッド10を製造するクッションパッドの製造方法であって、裁断した補強布14の被接合部同士を接合して立体形状の補強布14を製作する補強布接合工程と、立体形状の補強布14を型面部分に嵌め込んで重ね合わせる補強布取付け工程と、発泡樹脂原液供給工程と、脱型工程とから成り、補強布接合工程で補強布14の被接合部同士を超音波溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
成形型の型面部分に補強布を嵌め込んで重ね合わせ、前記成形型内に発泡樹脂原液を供給して発泡させることで、前記補強布がクッションパッド本体の裏面側に張付けられたクッションパッドを製造するクッションパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクッションパッドの一例として自動車用のシートクッションパッドがあり、補強布は、シートクッションパッドを保護したり、シートフレームとの間のこすれ音の発生を抑制したりする役割を果たしている。従来、上記のクッションパッドの製造方法は、裁断した補強布の被接合部同士を接合して立体形状の補強布を製作する補強布接合工程と、立体形状の補強布を型面部分に嵌め込んで重ね合わせる補強布取付け工程と、成形型内に発泡樹脂原液を供給する発泡樹脂原液供給工程と、成形型からクッションパッドを取り出す脱型工程とから成り、補強布接合工程で、補強布の被接合部同士を縫い合わせて補強布を立体形状にしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構造によれば、補強布の被接合部同士の縫い合わせ作業に時間と手間がかかって製作コストが高くなっていた。安価に製作するために被接合部同士をホッチキスのホッチキス針で接合することも考えられる。しかしながら、この手段では接合強度が弱くて補強布の保形性がよくなかった。また、クッションパッド本体内に金属のホッチキス針が残るために、リサイクルの際に樹脂から成る物品(クッションパッド本体)と金属から成る物品(ホッチキス針)とを選別しなければならず、リサイクル性が悪いという問題や、接合操作の際に作業者が大きな把持力を出さなければならず、長時間作業すると作業者の負担が大きいという問題もあった。
【0004】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、製作コストを低廉化でき、補強布の保形性をよくすることができ、リサイクル性に優れ、作業者の負担を軽減できるクッションパッドの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
成形型の型面部分に補強布を嵌め込んで重ね合わせ、前記成形型内に発泡樹脂原液を供給して発泡させることで、前記補強布がクッションパッド本体の裏面側に張付けられたクッションパッドを製造するクッションパッドの製造方法であって、
裁断した前記補強布の被接合部同士を接合して立体形状の補強布を製作する補強布接合工程と、
前記立体形状の補強布を前記型面部分に嵌め込んで重ね合わせる補強布取付け工程と、
前記成形型内に前記発泡樹脂原液を供給する発泡樹脂原液供給工程と、
前記成形型から前記クッションパッドを取り出す脱型工程とから成り、
前記補強布接合工程で前記補強布の被接合部同士を超音波溶着する点にある。
【0006】
つまり、裁断した補強布の被接合部同士を超音波溶着により接合することで、成形型の型面部分の形状に対応した立体形状の補強布を製作し(補強布接合工程)、この補強布を型面部分に嵌め込んで重ね合わせる(補強布取付け工程)。次に、成形型内に発泡樹脂原液を供給し(発泡樹脂原液供給工程)、成形型からクッションパッドを取り出す(脱型工程)。補強布接合工程では補強布の被接合部同士を超音波溶着するから、作業が簡単で短時間で済む(一例として0.2秒〜3秒)。また、接合強度を強くすることができて補強布の保形性をよくすることができ、クッションパッド本体内にホッチキス針のような金属の物品を残すことがない。さらに、接合操作の際に作業者が大きな把持力を必要としない。
【0007】
本発明において、
前記補強布接合工程で、ホッチキス型の超音波溶着機である超音波ホッチキスを用いて前記補強布の被接合部同士を超音波溶着すると、上記の作用効果をより得やすくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
従って、製作コストを低廉化でき、補強布の保形性をよくすることができ、リサイクル性に優れ、作業者の負担を軽減できるクッションパッドの製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図2,図3に、自動車用のシートクッションパッド10(クッションパッドに相当)を示してある。このシートクッションパッド10は、高弾性の軟質ポリウレタンフォームであるクッションパッド本体12(以下、「パッド本体12」)と、その裏面60に積層一体化された(張付けられた)補強布14とから成る。パッド本体12は、乗員の臀部及び太股を下方から受止める幅方向中央部のメイン部16と、その幅方向両側において上方に隆起した左右一対のサイド部18とから成り、メイン部16とサイド部18は、パッド表面に形成された前後方向に沿う左右一対の表皮吊り込み用の縦溝20により複数の区画に区分けされている。図3に示すようにサイド部18は、縦溝20から外方に向けて上方に立ち上がり、湾曲した頂部18aを経て下方に垂れ下がる断面「レ」の字状に形成されている。これにより、サイド部18には、パッド本体12の縁部において裏面側に突出する突出部22が設けられており、サイド部18の裏面側には、上方に陥没した第1凹状部24が設けられている。メイン部16には第2凹状部26が設けられている。
【0010】
補強布14は、第2凹状部26を除くメイン部16の裏面60A全体と、サイド部18の第1凹状部24を含む裏面60Bとに張付けられている。詳しくは、補強布14はメイン部16の裏面60Aからサイド部18の裏面60B側の第1凹状部24の内側面にかけて張り付けられており、補強布14の左右両側の縁部14aが突出部22の内側面の下端部で終わっている。補強布14は、シートクッションパッド10を保護したり、シートフレームとの間のこすれ音の発生を抑制したりする役割を果たし、ポリエステルで形成されている。
【0011】
図4に示すように補強布14は、パッド本体12のメイン部16及び左右のサイド部18の裏面60(60A,60B)に対応した形状に裁断され、メイン部16の第2凹状部26に対応する開口部28が設けられている。パッド本体12の前縁側に対応する縁部の左右両側部にはV字状の切込み32が設けられており、その対向する縁部34(被接合部に相当)同士が接合されるようになっている。符号38は折曲線である。
【0012】
図1に示すように、シートクッションパッド10を成形する成形型40は、水平に保持されてパッド本体12の表面側を成形する凹状の下型42と、この下型42に対して開閉可能に設けられてパッド本体12の裏面60(60A,60B)側を成形する上型44とを備え、下型42と上型44の間に発泡空間としてのキャビティ46が形成される。
【0013】
下型42には、メイン部16を成形する幅方向中央部の棚状部48と、その左右両側においてサイド部18を形成する下方に陥没した凹部50とが設けられている。この凹部50に対応する上型44の左右両側部には上記突出部22を成形するための上方に陥没する凹部54が設けられている。
【0014】
上記のシートクッションパッド10の製造方法は次の通りである。
[1]補強布接合工程
補強布14を打抜き加工等により裁断し、裁断した補強布14の切込み32の対向する縁部34同士を接合して、上型44の型面部分61の形状に対応した立体形状の補強布14を製作する。この工程では、図5に示すように、ホッチキス型の超音波溶着機である超音波ホッチキス62を用いて補強布14の前記縁部34同士を超音波溶着する。超音波ホッチキス62は、超音波振動を発振する超音波振動子と、この超音波振動を増幅するとともに、先端面に加工面64を有するホーン部65と、これらを一端部で保持するアッパーフレーム66と、アッパーフレーム66に横軸芯O周りに揺動自在に連結され、遊端部に前記加工面64に対する加圧面67を有するロア−フレーム68とを備えている。符号69は発振器、70はスイッチ、71はプラグ、72は溶着時間設定つまみである。前記縁部34同士を加工面64と加圧面67で挟み込んで超音波溶着する。本実施形態では、発信周波数が60kHz、超音波溶着時間が0.2秒(この数値に限定されるものではない)である。超音波溶着部分の形状は×形(かける状の形)、=形(イコール状の形)、−形(マイナス状の形)など種々の形状にすることができる。
[2]補強布取付け工程
補強布接合工程で製作した補強布14を上型44の型面部分61に嵌め込んで重ね合わせる(図1参照)。
[3]発泡樹脂原液供給工程
図1に示すように、下型42内に発泡樹脂原液としてのポリウレタン原液58を供給し、上型44を下型42に被せて型締めする。これにより、上型44と下型42との間に形成されたキャビティ46内でポリウレタン原液58が発泡充填され、図2,図3に示すように、裏面60(60A,60B)に補強布14が張付けられたシートクッションパッド10が成形される。
[4]脱型工程
上型44を開いて下型42からシートクッションパッド10を取り出す。
【0015】
本発明者は、三井化学株式会社製のタフネル(商品名であり、目付け量は140g/m2)を準備し、このタフネルを裁断して図4に示す形状の補強布14を3枚形成し、1枚の補強布14の前記縁部34同士を縫製により接合し、別の1枚の補強布14の前記縁部34同士をホッチキスにより接合(金属のホッチキス針による接合)し、残りの1枚の補強布14の前記縁部34同士を前記超音波ホッチキス62で接合した。そして、各補強布14の保形性、強度、製作コスト(加工費)、品質、リサイクル性を調べ、図6に示す結果を得た。図6の加工費中の数値は、縫製の加工費を1とした場合の数値を示している。○は良、△は普通、×は不良を表す。この実験によれば、図6に示すように、前記縁部34同士を超音波溶着することで、補強布14の保形性、強度、製作コスト(加工費)、品質、リサイクル性が向上していることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】シートクッションパッドを製造している状態を示す縦断面図
【図2】シートクッションパッドの縦断側面図
【図3】シートクッションパッドの縦断正面図
【図4】補強布の平面図
【図5】超音波ホッチキスを示す斜視図
【図6】縫製による接合とホッチキスによる接合と超音波溶着による接合の効果の比較を示す図
【符号の説明】
【0017】
10……クッションパッド、12……クッションパッド本体、14……補強布、34……補強布の被接合部(縁部)、40……成形型、58……発泡樹脂原液、60……クッションパッド本体の裏面、61……成形型の型面部分、62……ホッチキス型の超音波溶着機(超音波ホッチキス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型の型面部分に補強布を嵌め込んで重ね合わせ、前記成形型内に発泡樹脂原液を供給して発泡させることで、前記補強布がクッションパッド本体の裏面側に張付けられたクッションパッドを製造するクッションパッドの製造方法であって、
裁断した前記補強布の被接合部同士を接合して立体形状の補強布を製作する補強布接合工程と、
前記立体形状の補強布を前記型面部分に嵌め込んで重ね合わせる補強布取付け工程と、
前記成形型内に前記発泡樹脂原液を供給する発泡樹脂原液供給工程と、
前記成形型から前記クッションパッドを取り出す脱型工程とから成り、
前記補強布接合工程で前記補強布の被接合部同士を超音波溶着するクッションパッドの製造方法。
【請求項2】
前記補強布接合工程で、ホッチキス型の超音波溶着機である超音波ホッチキスを用いて前記補強布の被接合部同士を超音波溶着する請求項1記載のクッションパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−304862(P2006−304862A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128048(P2005−128048)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】