説明

クフェア油およびその誘導体を含む化粧用および局所用組成物

【課題】比較的高いトリカプリン濃度を有する酸化的に安定なクフェア由来の皮膚軟化薬組成物を提供するための方法が開示される。様々な特徴および仕様を調節、適合、あるいは変更して、クフェア油およびクフェア油の誘導体の皮膚軟化薬としての用途および利用を改善することができる。
【解決手段】本発明は一般に、天然由来の皮膚軟化薬および/または合成皮膚軟化薬代替品と比較して、改善された酸化安定性およびその他の望ましい特徴を有する化粧品、パーソナルケア品およびその他の局所調製品の成分を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に局所用および化粧用皮膚軟化薬組成物に関し、特に本発明の代表的および例示的実施形態は、一般に、クフェア油およびその誘導体から製造される酸化的に安定な皮膚軟化薬の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
皮膚軟化薬は、使用者の皮膚に局所的に適用されて、柔らかさ、滑らかさまたはしなやかさを生じる材料である。これらは数世紀にわたって化粧品および医薬品の両方において使用されてきた。歴史的には、皮膚軟化薬は植物または動物から採取された抽出物または濃縮材料で構成された。現代の皮膚軟化薬は、さらに、部分合成材料(例えば、天然物の誘導体)または完全合成材料さえも含み得る。天然皮膚軟化薬は、一般に、皮膚に湿性または油性の感触および外観を提供する傾向があるが、合成および部分合成皮膚軟化薬は、様々な製品において使用するために特定の皮膚感触および外観を提供するように適合されている。このように適合された場合でも、満足できる乾燥した感触を提供するように適切に適合された合成皮膚軟化薬は比較的少ししか存在しない。
【0003】
近年、「全天然」と呼ばれる製品を好む消費者が増加している。また、再生可能な資源から得られる天然物または少なくとも「天然由来」の製品を使用することへの関心も高まっている。この努力の多くは、天然に存在する最小限の処理を必要とする生分解性材料の使用に向けられている。化粧品における生分解性天然物の使用への傾向は、合成成分に代わる成分を同定する機会を製造者および配合者に提供した。
【0004】
皮膚軟化薬の皮膚感触に加えて、局所適用およびその成分は通常、貯蔵中および使用中の両方において安定性を示さなければならない。一般に、局所適用は時間の経過と共に変質または分離してはならず、個々の成分は分解したり、あるいは別の方法でその望ましい特性を変化させる化学変化を受けたりしてはならない。例えば、製剤成分および最終製品の環境損傷の一因は酸化に関連する。天然皮膚軟化薬を含有する局所化粧品、香料、薬剤、医薬品および着色剤は、一般に、酸化による損傷効果の影響を受けやすい。
【0005】
酸化作用を低減するための従来の手段としては、酸素排除パッケージング(例えば、ボトル、缶、容器、および/または酸素不透過性ポリマーラップなど)と、望ましい特性を最小限に変化させながら酸化に対する感受性を低下させるための成分の化学修飾と、目的とする材料を酸化させる機会を有する前に酸化種を失活させるための酸化防止剤の直接添加とがあげられる。
【0006】
一般にパッケージングの管理は、パッケージが開かれ、空気が容器内に導入され、そしてその後の大気中の酸素との持続的な接触からの保護を少なくともいくらか提供するようにパッケージが構成された場合のように、製品が一度使用される場合に有効である。構成成分の化学修飾は通常改善された解決法を提供する。当然ながら、化学的変化は、元の構成成分の選択において所望された機能特性を保持しながら酸化への傾向を実質的に低減する特定の修飾が実際に考えられることを仮定する。これは、体力を消耗する時間のかかる仕事であり、確実に成功するとは限らない。
【0007】
酸化防止剤の使用は、早期の腐敗に対する食料品の保護を含む、様々な種類の材料および適用のための酸化問題に対するより一般的な解決法を提供する。酸化防止剤の使用は、酸化に対する必要な限界耐性を有する実現可能な最終製品を達成するために適切な市販の化合物の選択を必要とするに過ぎないと思われるかもしれないが、酸化防止剤は、物理的および/または化学的レベルで他の製剤成分との複雑で予測できない相互作用を起こすことが多い。成功する確実性のない広範囲にわたる研究を行う必要があることが多い。さらに、適切な酸化防止添加剤の探索を妨害し得る様々な種類の酸化防止剤および多数の変化形が存在する。
【0008】
フリーラジカルターミネーターは酸化防止剤の1つの種類である。フリーラジカルターミネーターの代表的なサブクラスとしては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、およびヒドロキノン(第3級ブチルヒドロキノン、および没食子酸プロピルなど)がある。還元剤または酸素補足剤は別の種類の酸化防止剤を包含する。これらには、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)およびその誘導体(アスコルビン酸のエステルなど、例えばパルミチン酸アスコルビルなど)、亜硫酸塩(例えばアルカリ金属の亜硫酸塩および重亜硫酸塩など)、グルコースオキシダーゼ(カタラーゼを含む)、エリソルビン酸およびその誘導体などが含まれる。キレート化剤は、酸化の増強剤に関する問題に対処するために使用されているさらに別の種類の材料を含む。代表的なキレート化剤には、クエン酸(およびその誘導体)、ポリリン酸塩(polyphosphage)、ならびにエチレン−ジアミン四酢酸(EDTA)などのアミノポリカルボン酸が含まれる。また、様々な局所医薬品および化粧品製剤と共に使用するために一般にあまり適切でないその他の酸化防止剤の種類も存在する。
【0009】
天然油および天然由来油に関して、最近の注目は、中鎖脂肪酸が豊富であるクフェア種子に向けられている。例えばラウリン酸は、多くのクフェア種について通常高濃度で存在する。その他の種は、カプリン酸、ミリスチン酸およびその他の中鎖脂肪酸が豊富である。昔は、クフェアはいくつかの好ましくない作物形質(crop trait)のために商業的に収穫されていなかった。これらには、例えば、霜に対する不耐性、容易に脱粒する脆い種子鞘、予測できない開花、遅い発芽、ならびに葉および花を覆う粘着性の弾性毛が含まれる。おそらく軽減するのが最も困難な問題は脱粒性の問題であり、これによってクフェアは従来の収穫技術から通常排除される。しかしながら近年、研究者らは、遅延された脱粒性を示す種間クフェア種を生産することによってこの問題に対処した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のことにもかかわらず、
(1)純粋な油およびワックスだけに関して長期間の安定性を示し、
(2)それ自体が「全天然」および/または有機であるとみなされ、
(3)他の天然油および天然由来材料と比較して改善された特性を有し、そして
(4)より経済的に得られる
天然由来の油およびワックスを含む組成物の種類が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
様々な代表的および典型的な態様において、本発明は、医薬品、化粧品および局所調製品の製造における、比較的高いトリカプリン濃度を有するクフェア油の使用を開示する。本発明の利点は以下の詳細な説明において説明され、詳細な説明を鑑みれば明らかであろう。あるいは、本発明の例示的実施形態の実施によって分かるであろう。本発明のさらに他の利点は、特許請求の範囲において特に指摘される手段、方法または組み合わせのいずれかによって十分に理解されるであろう。
【0012】
本発明の代表的な要素、動作特徴、用途および/または利点は、以下により十分に描写、記載および請求されるように構成および動作の詳細において存在し、その一部を形成する添付図面が参照され、図中では、全体を通して同様の符号は同様の部分を指す。その他の要素、動作特徴、用途および/または利点は、詳細な説明において列挙される特定の例示的実施形態を考慮すれば明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
例示的実施形態の詳細な説明
以下の説明は、本発明の例示的実施形態および最良の形態についての発明者らの概念の説明であり、決して本発明の範囲、適用性または構成を限定することは意図されない。それどころか、以下の説明は、本発明の様々な実施形態を実施するための便利な実例を提供することが意図される。明らかになるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示される例示的実施形態において説明される要素のいずれかの機能および/または構成の変更が成され得る。
【0014】
ミソハギ(Lythraceae)科のクフェアは、世界中の温帯地方および亜熱帯地方において成長する260種を超える植物を含有する。ほとんどのクフェア種子は中鎖脂肪酸が豊富である。例えばラウリン酸は、比較的高い濃度で存在する。C.ランコラタ(lancolata)およびC.ビスコシソーマ(viscosissoma)などのクフェアの特定の種間交雑は、比較的高い割合の他の中鎖脂肪酸も生じ、特に濃縮によって60〜75%のトリカプリンを生じる。
【0015】
例えば、霜に対する不耐性、容易に脱粒する傾向がある脆い種子鞘、予測できない開花、遅い発芽、ならびに葉および花を覆う粘着性の弾性毛などのいくつか満足できない作物形質のために、クフェア油は商業的に収穫されていなかった。おそらく最も困難な問題は脱粒性の問題であり、これによってクフェアはこれまで従来の収穫技術から排除されてきた。しかしながら近年、研究者らは、脱粒性を遅延する、あるいは完全に停止さえする種間クフェア植物を生産することによって脱粒性の問題に対処した。
【0016】
近年、「全天然」と呼ばれる製品に関心のある消費者が増加している。また、再生可能な資源からの天然物、または少なくとも天然由来の製品を使用することに対する要望もある。この努力の多くは、前処理および/または後処理を比較的少ししか必要としない天然の生分解性材料を使用することに向けられている。化粧品において「全天然」製品を使用する傾向は、合成成分に代わる成分を同定する機会および経済的動機を製造者および配合者に提供した。
【0017】
天然皮膚軟化薬は、一般に、皮膚に湿性または油性の感触および外観を提供する傾向があるが、合成および部分合成皮膚軟化薬は、とりわけ、より乾燥した皮膚感触および/または外観を提供するようにカスタマイズされている。それでも、満足できる乾燥した感触を提供する合成組成物は比較的少ししか存在しない。さらに、様々な取締機関によって、合成成分を含有する製品に適用される場合に「全天然」という語句の使用は制限され得る。
【0018】
皮膚に適用したときの皮膚軟化薬の感触に加えて、局所調製品およびその成分は通常、貯蔵中および使用中の両方において酸化安定性を示さなければならない。天然皮膚軟化薬を含有する化粧品、香料、薬剤、および着色剤などの多くの局所適用は、酸化による損傷効果に対する感受性を示すことが知られている。
【0019】
本発明は、局所適用における皮膚軟化薬として有用な代表的および典型的な組成物を開示する。1つの特定の種類の典型的な化合物には、一般式:
−COO−R
で表されるクフェア由来の脂肪酸エステルが含まれる。式中、Rは(CHCHに相当し、0≦n≦17(これらの異性体を含む)であり、そしてRは(CHCHを含む脂肪族残基に相当し、0≦x≦13である。
【0020】
クフェアおよびクフェア由来の脂肪酸のエステル交換およびエステル化反応は、アルカリ触媒、例えば0.5〜1%のナトリウムメトキシド(ナトリウムメチラート)と共に高温(例えば、80〜150℃)で行った。実質的に同様の結果をもたらすために様々な他の触媒が使用され得ることは認識されるであろう。従って、当該技術分野において現在知られているか、今後導出されるかあるいは記載される任意の触媒は、代替的に、組み合わせて、または連続して使用することができる。例えば、使用することができる代表的な触媒としては、水酸化ナトリウムおよび/またはパラ−トルエンスルホン酸などがあげられる。
【0021】
本発明の様々な例示的実施形態に係るさらなる代表的なクフェアート(cupheate)由来の組成物には、クフェア由来の脂肪酸塩などのその他の化合物も含まれ得る。本発明の様々な実施形態に係るクフェアおよびクフェア由来の化合物の代表的な脂肪酸成分は、例えば、6:0(カプロン酸)、8:0(カプリル酸)、10:0(カプリン酸)、12:0(ラウリン酸)、14:0(ミリスチン酸)、16:0(パルミチン酸)、16:1などを含むことができる。
【0022】
図1に概略的に描写されるように、少なくとも40%の濃度のトリカプリンを有するクフェア油が様々なサンスクリーン化合物(例えば、サリチル酸オクチル、オクチルジメチルPABA、オクトクリレン、ベンゾフェノン−3、パーソル(Parsol)1789、およびオクチルメトキシシンナマート)に添加される場合、得られるサンスクリーン調製品の酸化安定性は、ほとんど全ての他の油製剤(例えば、オリーブ油、従来のヒマワリ油、ゴマ油、パーム核油、鉱油、マカダミア油、ハイブリッドヒマワリ油、およびアーモンド油)に対して増大され、モリンガ油に相当するいくつかの例は、ベンゾフェノン−3を有する鉱油と同様に著しい例外を提供する。
【0023】
図1は、
トコフェロール以外の添加剤を全く添加しないと、その酸化安定性においてクフェア140を越えるのはモリンガ油だけであることと、
クフェア100にオクチルメトキシシンナマートを添加すると、得られる製剤の酸化安定性は、モリンガ110を含む全ての他のシンナマート混合物を越えることと、
クフェア120にPABAを添加すると、この場合もモリンガを除いて、得られる製剤の酸化安定性は全ての他のPABA混合物を越えることと、
クフェア130にオクトクリレンを添加すると、酸化安定性は全ての他のオクトクリレン製剤を越え、少なくとも実質的にモリンガの酸化安定性と一致することと
を代表的に示す。
【0024】
従って、開示されるサンスクリーン化合物の酸化安定性は、通常、大部分の製剤例において大部分の他の油に対して(もちろんモリンガは著しい例外として)クフェア油の添加により改善されることが分かる。その結果として、高トリカプリン濃度のクフェア油と混合したサンスクリーン、サンブロック、および紫外線吸収剤は、他の皮膚軟化薬と混合した同様のサンスクリーン、サンブロックまたは紫外線吸収剤と比較してより長期間貯蔵および使用することができる。
【0025】
図2は、様々な油(例えば、アボカド250、アプリコット240、アーモンド230、従来のヒマワリ220、ハイブリッドヒマワリ210、およびクフェア200)の酸化安定性に対するトコフェロール濃度の増大(0ppm〜5000ppm)の効果を概略的に描く。図2に示されるように、クフェア200は、開示される天然油代替物(210、220、230、240および250)に対して、トコフェロールの添加による酸化安定性の著しい増大を示す。
【0026】
別の代表的な用途では、本発明の例示的実施形態によると、開示される組成物は、通常、高ラウリン酸濃度を有する天然に得られるクフェア油とは対照的に比較的高いトリカプリン濃度(例えば、少なくとも約40%)を有するクフェア油およびクフェア由来化合物を含む。このような組成物は、パーム核油、ココナッツ油、およびババス油などの他の中鎖トリグリセリドと共に、あるいはこれらの代替品として使用することができる。さらに、このような組成物は、ケイ素ベースの化合物、合成皮膚軟化薬、鉱油、ココアバター、シアバター、オリーブ油、サフラワー油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマワリ油、ベジタブル油、ならびに当該技術分野において現在知られているかあるいは今後記載される他の植物油と共に処方することもできる。
【0027】
開示される組成物は、化粧品、ファンデーション、マスカラ、リーブインコンディショナー、マッサージオイル、有機および無機顔料、ローション、局所薬剤、紫外線吸収剤、サンスクリーン、日焼けローション、日焼けオイル、撥水剤(repellant)、クリーム、軟膏、粉末、セッケン、香料、スクラブ、クレンザー、ワックス、ジェル、洗剤、消毒剤、香油、グロス、口紅、リップグロス、リップバーム、および/または化粧用リムーバーなどにおいて使用することができる。本発明の代表的および例示的実施形態に従って開示されるクフェアート化合物が、当該技術分野において現在知られているかあるいは今後記載される任意の種類の化粧用局所調製品または医薬品を製造するために様々な他の成分と共に配合され得ることは認識されるであろう。
【0028】
本発明の代表的な実施形態に係る組成物は、他の皮膚軟化薬よりも優れたいくつかの利点を有する。例えば図3に概略的に描かれるように、クフェアート由来の化合物(例えば、クフェアニルアセタート(cupheanyl acetate)310、エチルクフェアート315、およびクフェアアルコール320)の閉塞性(occlusivity)は、天然に得られるクフェア340、または大豆油345、ヒマシ油350、マカダミア油355、ホホバ油360、モリンガ油365、鉱油370、モリンガエステル30(375)、モリンガエステル60(380)、モリンガエステル75(385)、およびペトロラタム390などの他の皮膚軟化薬と比較して実質的に高められているか、そうでなければ変化されている。一般に、より高い水分閉塞性を有する化合物によって通常生じる油っぽい感触と比較して、閉塞性が実質的に低いほど、局所適用されたときにより乾燥した皮膚感触が与えられる。これは、一部には、クフェアおよびクフェア由来の皮膚軟化薬化合物の蒸散による水透過性がより高いためである。
【0029】
本発明の様々な例示的実施形態に係る代表的な組成物の追加の利益は、例えば図3に見られるように、通常これらが低い閉塞性値の範囲を提供することである。特に、本発明に係るRがメチルを含む(すなわち、n=0)クフェア由来の組成物310またはエチルを含む(すなわち、n=l)クフェア由来の組成物315は、通常、Rがデシル(すなわち、n=9)などのより大きいアルキル残基を含む場合330よりも低い閉塞性値を提供する。従って、本発明が所望の皮膚感触を得るために本発明の開示される組成物の蒸散による閉塞性を制御するか、そうでなければ変更するためのメカニズムをさらに提供することは認識されるであろう。
【0030】
また、本発明の例示的実施形態に係る代表的に開示されるクフェア由来の組成物は、本出願人によってこれまで観察された皮膚軟化薬の最も低い滑り性値(例えば、71°)も示す。局所調製品の多くのユーザーは、「滑りやすさ」の感触を有することを好まない。この特定の例としては、例えば、特徴的に高い滑り性値を有する皮膚軟化薬を含むサンスクリーンまたはサンブロックを使用することによってその能力が悪影響を受けるかもしれない運動選手が含まれる。従って、低滑り性値の皮膚軟化薬を有することは特定の用途において有益であり、サンスクリーンまたはサンブロックなどの局所調製品において特定の商業的な有用性を有するであろう。
【0031】
また、本発明の例示的実施形態に従って代表的に開示されるクフェア由来の組成物は、天然に得られるクフェア油と比較して、時間に応じたより大きい延展性値を示す。これは、あまり機械的に広げたりこすったりしなくてもより広い材料の被覆を提供するように適合された局所調製品を含む用途において有益であろう。本発明の例示的実施形態に従って代表的に開示されるクフェア由来の組成物は、天然に得られるクフェア油よりも低い屈折率も示す。
【0032】
本発明の様々な例示的実施形態に従って開示されるクフェア由来の組成物の代表的に記載される特徴および利点のいくつかは、少なくとも部分的に、その蒸気圧に関して比較的高い所望の化合物の揮発性に起因し得る。このような特徴的に高い揮発性が、少なくとも部分的に、滑り性、閉塞性および延展性について観察された値を生じさせ得ることが示唆された。当該技術分野において現在知られているかあるいは今後記載される比較的高い揮発性を示すクフェア由来の皮膚軟化薬製剤を用いることによって、様々な他の特徴が高められるか、そうでなければ改善されることは認識されるであろう。
【0033】
本発明の別の実施形態に係るクフェア由来の組成物を製造するための代表的および典型的な方法は、通常、少なくとも約40%のトリカプリン濃度を有するクフェア油を提供するステップと、クフェア油とランダム化触媒とを加熱して反応させるステップとを含む。
【0034】
図4は、比較的高いトリカプリン濃度を有する天然に得られるクフェア油について得られたガスクロマトグラムを描く。図5は、本発明の代表的および例示的実施形態に従って、触媒的にランダム化されたクフェア油について得られたガスクロマトグラムを示す。これらのクロマトグラムに代表的に描かれるように、触媒的にランダム化された製品混合物は、通常、クフェア油出発材料の分布に現れる400と比較してより少ない高分子量トリグリセリドを有する(図5を参照)。ランダム化製品混合物中のいくつかの低分子量のピーク(例えば、510)は実質的に増大されているが、いくつかの中間範囲の分子量成分(例えば、500)はいくらか減少している。ここで、図4および図5の垂直および水平スケールが実質的に同一であることに注意することが重要である。
【0035】
ランダム化混合物は、天然に得られるクフェア油と比較して実質的により低い融点と、より低くそして著しく予想外の曇り点とを示す。通常ランダム化の後により高い沈殿物含量を有する傾向がある他の油(例えば、モリンガ油)と比較して、実質的に低い沈殿物含量は非常に意外なほどのものである。一般に、低融点および低沈殿物含量はいずれも、熱安定性、および製品の処方に関連する様々な他の物理特性の点で好ましい利益を提供する。
【0036】
ランダム化クフェア製品混合物は、天然油出発材料よりも低い粘度(40℃で測定した場合)も示す。一般に、より低い粘度は、ほとんどの油および油に由来する製品に通常関連する厚い感触と比較して、局所適用されたときにより薄い感触を付与する。
【0037】
本発明の別の代表的な実施形態に従ってクフェア由来の組成物を製造するための典型的な方法は、通常、
およそ大気圧〜約200psiよりも高圧までの範囲のガス圧において、約20℃〜約200℃よりも高温までで、異種金属またはニッケル、パラジウム、ルテニウム、白金またはロジウムをベースとする触媒などの触媒の存在下、水素ガスと、比較的高いトリカプリン濃度を有するクフェア油とを反応させるステップと、
得られた水素化生成物と、ナトリウムメチラート(または他の適切に適合されたランダム化触媒)とを加熱してエステル交換させるステップと、
得られたランダム化トリグリセリド混合物を単離するステップと、
を含む。
【0038】
得られた水素化およびランダム化クフェア由来製品混合物は通常30〜35%のトリカプリンを含む。
【0039】
図6は、本発明の様々な代表的および例示的実施形態に従って触媒的に水素化されたクフェア油のガスクロマトグラムを描く。図7は、本発明の様々な代表的および例示的実施形態に従って、触媒的に水素化およびランダム化されたクフェア油のガスクロマトグラムを概略的に示す。
【0040】
図6および7のクロマトグラムに代表的に描かれるように、水素化およびランダム化された製品混合物(図7)は通常水素化クフェアの分布に現れる600よりも少ない高分子量トリグリセリド710を有するが、水素化およびランダム化製品の特定の中間範囲の分子量種700は実質的に増大される。図6および図7の垂直および水平スケールが実質的に同一であることに注意することが重要である。
【0041】
水素化およびランダム化製品混合物の融点はプレランダム化製品よりも実質的に高いので、水素化およびランダム化製品は室温で固体である。また、曇り点および粘度はプレランダム化製品よりも実質的に高い。
【0042】
上記の明細書において、本発明は特定の例示的実施形態を参照して説明されたが、特許請求の範囲で説明される本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更が成され得ることは認識されるであろう。明細書および図面は限定的なものではなく実例となるものとして考えられるべきであり、このような修正は全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。従って、本発明の範囲は、単に上記の例によってではなく、特許請求の範囲およびその法律上の等価物によって決定されるべきである。例えば、方法またはプロセスの請求項のいずれかにおいて列挙されるステップはどの順序で実行されてもよく、請求項において示される特定の順序に限定されない。さらに、組成物の請求項のいずれかにおいて列挙される構成要素および/または要素は様々な順序で統合されて本発明と実質的に同一の結果を生じることができ、従って、請求項で列挙される特定の集合体(aggregation)に限定されない。
【0043】
利益、他の利点および問題の解決法は特定の実施形態に関連して上記で記載されたが、任意の利益、利点、問題の解決法、もしくは任意の特定の利益、利点または解決法を生じさせるまたはより明白になるようにすることができる任意の要素は、任意のまたは全ての請求項の決定的、必須、または本質的な特徴または構成要素であると解釈されてはならない。本明細書において使用される場合、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」という用語またはそれらの任意の変化形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、組成物または装置が、列挙される要素のみを含むのではなく、明確に記載されていない他の要素またはこのようなプロセス、方法、物品、組成物または装置に固有の他の要素も含むように、非排他的な包含を指すことが意図される。本発明の実施において使用される上記の構造、配列、用途、割合、要素、材料または構成要素のその他の組み合わせおよび/または修正は、特に列挙されていないものに加えて、同じものの一般的な原理から逸脱することなく変更されてもよく、そうでなければ特定の環境、製造仕様、設計パラメータまたは他の動作要求に特に適合されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】様々な油の酸化安定性に対するサンスクリーン化合物の添加の効果を概略的に示す。
【図2】様々な油の酸化安定性に対するトコフェロールの添加の効果を概略的に示す。
【図3】様々な天然油および天然由来油(いくつかは本発明の様々な代表的および例示的実施形態に係る)の閉塞性値を概略的に示す。
【図4】比較的高いトリカプリン濃度を有する天然に得られるクフェア油のガスクロマトグラムを概略的に示す。
【図5】本発明の代表的および例示的実施形態に従って、触媒的にランダム化されたクフェア油のガスクロマトグラムを概略的に示す。
【図6】本発明の様々な代表的および例示的実施形態に従って、触媒的に水素化されたクフェア油のガスクロマトグラムを概略的に示す。
【図7】本発明の様々な代表的および例示的実施形態に従って、触媒的に水素化およびランダム化されたクフェア油のガスクロマトグラムを概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚への局所適用のための実質的にクフェア油に由来する組成物であって、
式:
−COO−R
(式中、Rは、(CHCH(ここで、0≦n≦17であり、その異性体を含む)からなる群から選択され、
は、(CHCH(ここで、0≦x≦13である)に相当する脂肪族残基を含む)
に相当する少なくとも1つのクフェアートエステルを含む組成物。
【請求項2】
x=1である実質的に高濃度のRをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
n=9である実質的に高濃度の脂肪族残基をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の閉塞性が、天然に得られるクフェア油に対して実質的に向上される請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記向上が、閉塞性の相対的な増大および相対的な減少の少なくとも1つに相当する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の屈折率が、少なくとも、天然に得られるクフェア油よりも低い請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の滑り性が、少なくとも、天然に得られるクフェア油よりも低い請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の粘度が、少なくとも、天然に得られるクフェア油よりも低い請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の時間に応じた延展性が、少なくとも、天然に得られるクフェア油よりも高い請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記クフェア由来の組成物が、ケイ素ベースの化合物、合成皮膚軟化薬、中鎖トリグリセリド、鉱油、ココナッツ油、パーム核油、ババス油、ココアバター、シアバター、オリーブ油、サフラワー油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマワリ油、ベジタブル油、および植物油のうちの少なくとも1つの代わりに使用される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記クフェア由来の組成物が、化粧品、パーソナルケア品、ファンデーション、マスカラ、リーブインコンディショナー、アイシャドウ、アイライナー、リップライナー、口紅、リップバーム、マッサージオイル、無機顔料、有機顔料、ローション、局所薬剤、紫外線吸収剤、サンスクリーン、日焼けローション、日焼けオイル、撥水剤、クリーム、軟膏、粉末、セッケン、芳香剤、スクラブ、クレンザー、ワックス、ジェル、洗剤、消毒剤、香油、グロス、および化粧用リムーバーのうちの少なくとも1つにおける構成成分をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記クフェア由来の組成物が、少なくとも部分的に、実質的に合成の皮膚軟化薬化合物の代わりに使用される請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも40%のトリカプリン濃度を有するクフェア油の添加によって、サンスクリーン、サンブロック、および紫外線吸収剤のうちの少なくとも1つの酸化安定性が、向上されているか実質的に低下していないかの少なくとも1つである組成物。
【請求項14】
トコフェロール、オクチルメトキシシンナマート、オクトクリレン、およびオクチルジメチルPABAのうちの少なくとも1つをさらに含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも部分的に、実質的に合成の皮膚軟化薬化合物の代わりに使用される請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
クフェア油を提供するステップと、
前記クフェア油と、ランダム化触媒とを加熱して反応させるステップと
を含む、クフェア油をランダム化する方法。
【請求項17】
前記ランダム化触媒が、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム、およびパラ−トルエンスルホン酸のうちの少なくとも1つを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
得られる製品が、プレランダム化クフェア出発材料と比較して、実質的により低いトリカプリン濃度を有する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
得られる製品が、プレランダム化クフェア出発材料よりも実質的に低い融点を有する請求項16に記載の方法。
【請求項20】
得られる製品が、プレランダム化クフェア出発材料よりも実質的に低い曇り点を有する請求項16に記載の方法。
【請求項21】
得られる製品が、プレランダム化クフェア油出発材料よりも低い粘度を有する請求項16に記載の方法。
【請求項22】
得られる製品が、少なくとも部分的に、合成皮膚軟化薬の代わりになるために使用される請求項16に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも40%のトリカプリン濃度を有するクフェア油を水素化およびランダム化する方法であって、
水素化触媒の存在下において、約20℃〜少なくとも約200℃の間、そしておよそ大気圧〜少なくとも約200psiの間で、水素ガスを前記クフェア油と反応させるステップと、
前記水素化された脂肪酸混合物を高温でランダム化触媒に導入するステップと
を含む方法。
【請求項24】
前記水素化触媒が、異種金属触媒、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、白金およびロジウムをベースとする触媒のうちの少なくとも1つを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ランダム化触媒が、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム、およびパラ−トルエンスルホン酸のうちの少なくとも1つを含む請求項23に記載の方法。
【請求項26】
得られる製品が、プレランダム化前水素化クフェア油出発材料と比較して、実質的により低いトリカプリン濃度を有する請求項23に記載の方法。
【請求項27】
得られる製品が、プレランダム化クフェア油出発材料と比較して、少なくともよりも低い粘度を有する請求項23に記載の方法。
【請求項28】
得られる製品混合物が、プレランダム化クフェア油出発材料と比較して、少なくとも部分的により少ない含量のより高分子量のトリグリセリドを有する請求項23に記載の方法。
【請求項29】
得られる製品混合物が、少なくとも、プレランダム化クフェア油出発材料よりも高い延展性値を有する請求項23に記載の方法。
【請求項30】
得られる製品混合物が、少なくとも、プレランダム化クフェア油出発材料よりも低い閉塞性を有する請求項23に記載の方法。
【請求項31】
得られる製品混合物が、少なくとも、プレランダム化クフェア油出発材料よりも低い滑り性を有する請求項23に記載の方法。
【請求項32】
得られる製品混合物が、少なくとも部分的に、合成皮膚軟化薬の代わりになるために使用される請求項23に記載の方法。
【請求項33】
医薬品、化粧品、パーソナルケア品および局所調製品のうちの少なくとも1つの製造における、少なくとも40%のトリカプリン濃度を有するクフェア油の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−505965(P2009−505965A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524969(P2008−524969)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/024966
【国際公開番号】WO2007/018792
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500176311)インターナショナル フローラ テクノロジーズ,リミテッド (15)
【Fターム(参考)】