説明

クラゲ処理装置

【課題】腐敗に伴うスカム脱水効率低下を低コストで防止できるクラゲ処理装置を提供する。
【解決手段】クラゲ1を破砕する破砕ポンプ111と、生成したクラゲ破砕水2にタンク131〜133内の凝集剤11,13及び中和剤12を定量ポンプ134〜136で加えてフロック化させる凝集槽114等と、凝集槽114で生成したフロック4を液面上に浮上させて生成したスカム5を分離する分離槽115等と、分離槽115で分離されたスカム5を貯留するスカム貯留槽119等と、スカム貯留槽119で貯留されたスカム5を脱水する圧縮脱水機124等とを備えているクラゲ処理装置100において、スカム貯留槽119のスカム5に曝気処理を施す散気管121等と、スカム貯留槽119のスカム5を攪拌する攪拌翼120等と、スカム貯留槽119のスカム5にタンク131〜133内の凝集剤11,13及び中和剤12を加える定量ポンプ137〜139等とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や原子力発電所等の冷却水や海水淡水化設備等の原料水等として海水を取水した際に捕集されるクラゲを処理するクラゲ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所等の冷却水や海水淡水化設備等の原料水等として海水を取水した際に捕集されるクラゲは、従来、例えば、破砕処理されて凝集剤で粒子状に凝集(フロック)された後に固液分離され、液体分が廃液処理されてから放流される一方、固体分(スカム)がスカム貯留槽に一旦貯留され、規定量まで溜まった時点で脱水処理された後、産業廃棄物として処理されている(例えば、下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−179265号公報
【特許文献2】特開2001−122713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラゲは、捕集される量が時期によって大きく異なっている。このため、捕集量が比較的多い時期であると、前記スカム貯留槽に貯留される時間が比較的短くて済むものの、捕集量が比較的少ない時期であると、前記スカム貯留槽に貯留される時間が比較的長くなって腐敗を生じ、悪臭を発生してしまうだけでなく、フロックが微細化してスカムの脱水効率の低下を引き起こしてしまうことがあった。
【0005】
このため、例えば、スカム貯留槽において曝気処理することにより、スカムの腐敗を抑制することが考えられる。しかしながら、スカムを曝気処理すると、スカムの腐敗を抑制して悪臭の発生を防止することができるものの、曝気によってスカムのフロックが徐々に崩れて微細化してしまい、脱水効率が低下してしまう。そのため、脱水処理の際に、スカムに珪藻土等を加えて脱水効率を向上させるようにすることも考えられるが、廃棄物の量が増加してしまい、処理コストが高くなってしまう。
【0006】
また、例えば、スカム貯留槽に防腐剤を添加することにより(例えば、下記特許文献2等参照)、スカムの腐敗を抑制しようとすると、スカムの腐敗を抑制して悪臭の発生やフロックの崩れを防止することができるものの、防腐効果が短いため、添加量が多くなってしまい、処理コストが高くなってしまう。
【0007】
このようなことから、本発明は、腐敗によって生じるスカムの脱水効率の低下を低コストで防止することができるクラゲ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、本発明に係るクラゲ処理装置は、クラゲを破砕する破砕手段と、前記破砕手段で生成したクラゲ破砕水に凝集剤及び中和剤を加えてクラゲ有機物成分をフロック化させるフロック化手段と、前記フロック化手段で生成したフロックを液面上に浮上させて生成したスカムを分離するスカム分離手段と、前記スカム分離手段で分離された前記スカムを貯留するスカム貯留手段と、前記スカム貯留手段で貯留された前記スカムを脱水するスカム脱水手段とを備えているクラゲ処理装置において、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムに曝気処理を施す曝気手段と、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムを攪拌する攪拌手段と、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムに前記凝集剤及び前記中和剤を加える再フロック化手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るクラゲ処理装置は、上述したクラゲ処理装置において、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムのpHを計測するスカムpH計測手段と、前記スカムpH計測手段からの信号に基づいて、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムを規定のpH値とするように、前記再フロック化手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るクラゲ処理装置によれば、クラゲの捕集量が少なく、スカム貯留手段に貯留されるスカムの量が少なくて当該スカムを比較的長い時間にわたって貯留しなければならない場合、曝気手段で上記スカムを曝気処理することにより、当該スカムの腐敗を防止して、スカム貯留手段にスカム5が所定量にまで貯留されたら、スカム貯留手段のスカムを攪拌手段で攪拌しながら再フロック化手段で凝集剤及び中和剤を加えることにより、曝気によって微細化してしまった当該スカムを再フロック化することができることから、珪藻土や防腐剤等をわざわざ使用しなくても、腐敗を抑制して悪臭の発生を防止することができると同時に、脱水処理を容易に行うことができるので、腐敗によって生じるスカムの脱水効率の低下を低コストで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るクラゲ処理装置の主な実施形態の概略構成図である。
【図2】図1のクラゲ処理装置の要部の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るクラゲ処理装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
[主な実施形態]
本発明に係るクラゲ処理装置の主な実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、海水の取水口で捕集されたクラゲ1は、破砕ポンプ111によって破砕された後にクラゲ破砕水槽112に貯留される。このクラゲ破砕水槽112は、凝集槽114の前段槽114aに送給ポンプ113を介して連絡している。この凝集槽114の前段槽114aには、当該凝集槽114の後段槽114bがオーバフロー堰114cを介して隣接している。
【0015】
前記凝集槽114の前記前段槽114aの上方には、塩化第二鉄(FeCl3)等の水溶液からなる無機凝集剤11を貯蔵する無機凝集剤タンク131と、水酸化ナトリウム(NaOH)等の水溶液からなる中和剤12を貯蔵する中和剤タンク132とが定量ポンプ134,135を介してそれぞれ連絡している。前記凝集槽114の前記後段槽114bの上方には、ポリアクリルアミド(PAA)等からなる高分子凝集剤13を貯蔵する高分子凝集剤タンク133が定量ポンプ136を介して連絡している。
【0016】
前記凝集槽114の前記後段槽114bの下部は、当該後段槽114bの下部よりも下方に下部を位置させて前記オーバフロー堰114cの上部の高さ位置よりも上方に上部を位置させた円筒型の分離槽115の下部に連結している。この分離槽115の内部には、駆動モータ116aによって水平方向へ旋回するスクレーパ116が前記オーバフロー堰114cの上部の高さ位置と略同じ高さ位置に位置するように配設されている。
【0017】
前記分離槽115の高さ方向中程部分は、前記凝集槽114の前記後段槽114bと当該分離槽115との連結部分に送給ポンプ117を介して連結すると共に、図示しない廃水処理設備に連絡している。前記凝集槽114の前記後段槽114bと前記分離槽115との連結部分と前記送給ポンプ117との間には、空気10を送給するエアブロア118が連結されている。なお、図1中、115aはガイド筒である。
【0018】
前記分離槽115の側壁の前記スクレーパ116の高さ位置部分は、スカム貯留槽119に連絡している。このスカム貯留槽119の内部には、駆動モータ120aによって水平方向に回転する撹拌翼120が配設されている。上記スカム貯留槽119の内部下方には、散気管121が配設されている。この散気管121は、空気10を送給するエアブロア122が連結されている。前記スカム貯留槽119の上方には、前記無機凝集剤タンク131と、前記中和剤タンク132と、前記高分子凝集剤タンク133とが定量ポンプ137〜139を介してそれぞれ連絡している。
【0019】
前記スカム貯留槽119の内部は、圧縮脱水機124の受入口に送給ポンプ123を介して連結されている。この圧縮脱水機124の廃水口は、図示しない廃水処理設備に連絡している。
【0020】
前記凝集槽114の前記前段槽114a及び前記スカム貯留槽119には、内部のpHを計測するpH計測手段であるpH計141,142がそれぞれ設けられている。図2に示すように、これらpH計141,142は、制御手段である制御装置140の入力部に電気的に接続されている。さらに、この制御装置140の入力部には、スカム化処理作動の有無、腐敗防止処理作動の有無、再フロック化処理作動の有無等の指令を行う入力手段である操作盤143が電気的に接続されている。
【0021】
前記制御装置140の出力部は、前記送給ポンプ113,117、前記駆動モータ116a,120a、前記エアブロア118,122、前記定量ポンプ134〜139に電気的に接続しており、当該制御装置140は、前記操作盤143から入力されるスカム化処理作動の信号に基づいて、前記送給ポンプ113,117、前記駆動モータ116a、前記エアブロア118の作動を制御し、前記操作盤143から入力されるスカム化処理作動の信号及び内蔵されたタイマ(図示省略)からの信号に基づいて、前記定量ポンプ134,136の作動を制御し、前記操作盤143から入力されるスカム化処理作動の信号及び前記pH計141からの信号に基づいて、前記定量ポンプ135の作動を制御すると共に、前記操作盤143から入力される腐敗防止処理作動の信号及び再フロック化処理作動の信号に基づいて、前記エアブロア122の作動を制御し、さらに、前記操作盤143から入力される再フロック化処理作動の信号及び内蔵されたタイマ(図示省略)からの信号に基づいて、前記駆動モータ120a、前記定量ポンプ137,139の作動を制御し、前記操作盤143から入力される再フロック化処理作動の信号及び前記pH計142からの信号に基づいて、前記定量ポンプ138の作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する。)。
【0022】
このような本実施形態に係るクラゲ処理装置100においては、前記破砕ポンプ111、前記クラゲ破砕水槽112等により破砕手段を構成し、前記送給ポンプ113、前記凝集槽114、前記タンク131〜133、前記定量ポンプ134〜136等によりフロック化手段を構成し、前記分離槽115、前記スクレーパ116、前記送給ポンプ117、前記エアブロア118等によりスカム分離手段を構成し、前記スカム貯留槽119等によりスカム貯留手段を構成し、前記散気管121、前記エアブロア122等により曝気手段を構成し、前記撹拌翼120等により攪拌手段を構成し、前記タンク131〜133、前記定量ポンプ137〜139等により再フロック化手段を構成し、前記送給ポンプ123、前記圧縮脱水機124等によりスカム脱水手段を構成している。
【0023】
次に、上述したクラゲ処理装置100を使用した本実施形態に係るクラゲ処理方法を説明する。
【0024】
前記破砕ポンプ111を作動することによりクラゲ1を破砕して前記クラゲ破砕水槽112にクラゲ破砕水2(ミクロンオーダから数mmのサイズのクラゲ有機成分を含有する水)を貯留すると共に、前記操作盤143から前記制御装置140にスカム化処理作動開始の信号を入力すると、当該制御装置140は、前記送給ポンプ113を作動させて、前記クラゲ破砕水槽112内のクラゲ破砕水2を前記凝集槽114の前記前段槽114aに供給する。
【0025】
続いて、前記制御装置140は、前記凝集槽114の前記前段槽114aの内部に無機凝集剤11を所定時間ごとに所定量ずつ供給するように、前記タイマからの信号に基づいて、前記定量ポンプ134を作動させることにより、当該前段槽114aの内部の前記無機凝集剤11(塩化第二鉄)の量を規定の範囲(例えば、約0.5〜1.5g/L程度)にすると共に、当該前段槽114aの内部を中和剤12で規定のpH値(pH6〜9.5)にするように、前記pH計141からの信号に基づいて、前記定量ポンプ135を作動させる。これにより、上記前段槽114a内のクラゲ破砕水2中のクラゲ有機成分が、凝集してフロック3(直径約1mm前後)となって水分と共に前記オーバフロー堰114cをオーバフローして前記後段槽114b内に流入する。
【0026】
そして、前記制御装置140は、前記凝集槽114の前記後段槽114bの内部に高分子凝集剤13を所定時間ごとに所定量ずつ供給するように、前記タイマからの信号に基づいて、前記定量ポンプ136を作動させることにより、当該後段槽114bの内部の前記高分子凝集剤13(ポリアクリルアミド)の量を規定の範囲(例えば、約1〜10mg/L程度)にする。これにより、前記フロック3がさらに凝集してより大きいフロック4(直径約5〜10mm前後)となる。
【0027】
引き続き、前記制御装置140は、前記送給ポンプ117及び前記エアブロア118を作動させることにより、前記分離槽115内から抜き出した水分の一部に空気10を圧縮供給し、前記凝集槽114の前記後段槽114bから送出される前記フロック4を含有する水分と共に上記分離槽115の内部に送給する。これにより、上記フロック4は、前記空気10の微細気泡と共に前記ガイド筒115aを流通して浮上し、上記分離槽115の上面にスカム5となって浮遊する(加圧浮上分離)。なお、前記分離槽115内から抜き出した水分の残りは、廃水7として前記廃水処理設備に送給され、後処理されてから放流される。
【0028】
さらに、前記制御装置140は、前記スクレーパ116を旋回させるように前記駆動モータ116aを作動させる。これにより、前記スカム5は、掻き取られながら前記スカム貯留槽119に送給される。
【0029】
このようにして前記スカム貯留槽119内に前記スカム5が所定量になるまで貯留したら、前記送給ポンプ123を作動して当該スカム貯留槽119内の当該スカム5を前記圧縮脱水機124に規定量送給して圧縮脱水する。これにより、上記スカム5は、圧縮脱水され、ケーキ(固体分)6が廃棄物として廃棄処理され、濾液(水分)8が廃水として前記廃水処理設備に送給され、後処理されてから放流される。
【0030】
このような処理を行うにあたって、クラゲ1の捕集量が少なく、前記スカム貯留槽119内に溜まる前記スカム5の量が少なくて当該スカム5を比較的長い時間にわたって貯留しなければならない場合には、前記操作盤143から前記制御装置140に腐敗防止処理作動開始の信号をさらに入力する。すると、前記制御装置140は、前記散気管121から空気10を送給するように前記エアブロア122を作動させる。これにより、前記スカム貯留槽119内の前記スカム5は、曝気されるため、腐敗が防止されるものの、曝気によって徐々に微細化してしまう。
【0031】
このようにして前記スカム貯留槽119内に前記スカム5が所定量にまで貯留されたら、前記操作盤143から前記制御装置140に再フロック化処理作動開始の信号をさらに入力する。すると、前記制御装置140は、前記散気管121からの空気10の送給を停止するように前記エアブロア122の作動を停止すると共に、前記攪拌翼120を回転させるように前記駆動モータ120aを作動させることにより、前記スカム貯留槽119内の前記スカム5を掻き混ぜる。
【0032】
そして、前記制御装置140は、前記スカム貯留槽119の内部に前記無機凝集剤11を所定量供給するように、前記タイマからの信号に基づいて、前記定量ポンプ137を作動させることにより、当該スカム貯留槽119の内部の前記無機凝集剤11(塩化第二鉄)の量を規定の範囲(例えば、約1〜30g/L程度、好ましくは5〜15g/L程度)にすると共に、当該スカム貯留槽119の内部を前記中和剤12で規定のpH値(pH6〜9.5)にするように、前記pH計142からの信号に基づいて、前記定量ポンプ138を作動させ、さらに、当該スカム貯留槽119の内部に前記高分子凝集剤13を所定量供給するように、前記タイマからの信号に基づいて、前記定量ポンプ139を作動させることにより、当該スカム貯留槽119の内部の前記高分子凝集剤13(ポリアクリルアミド)の量を規定の範囲(例えば、約10〜150mg/L程度、好ましくは30〜75mg/L程度)にする。
【0033】
これにより、曝気によって微細化してしまったフロック4のスカム5が再フロック化される。
【0034】
そして、上述と同様に、前記送給ポンプ123を作動して前記スカム貯留槽119内の前記スカム5を前記圧縮脱水機124に規定量送給して圧縮脱水する。
【0035】
つまり、本実施形態では、前記スカム貯留槽119内に比較的長い時間にわたって貯留するスカム5の腐敗を曝気によって防止すると共に、当該曝気によって微細化した当該スカム5を脱水処理直前に凝集処理と同一の前記薬剤11〜13を使用して攪拌翼120で撹拌しながら当該スカム貯留槽119内で再びフロック化させることによって脱水効率の低下を抑制するようにしたのである。
【0036】
このため、本実施形態においては、珪藻土や防腐剤等をわざわざ使用しなくても、腐敗を抑制して悪臭の発生を防止することができると同時に、脱水処理を容易に行うことができる。
【0037】
したがって、本実施形態によれば、腐敗によって生じるスカム5の脱水効率の低下を低コストで防止することができる。
【0038】
また、前記タンク131〜133内の前記凝集剤11,13及び前記中和剤12を前記凝集槽114でのフロック化と前記スカム貯留槽119での再フロック化の両方に使用するようにしたので、再フロック化用に別途の薬剤をわざわざ用意する必要がなく、設備の簡素化を図ることができる。
【0039】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、前記凝集槽114の前記前段槽114a及び前記スカム貯留槽119の内部を規定のpH値(pH6〜9.5)とするように、前記pH計141,142で計測して、当該pH計141,142からの信号に基づいて、前記制御装置140が前記定量ポンプ135,138を制御して前記中和剤12の添加量を調整するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記pH計141,142等を省略し、前記凝集剤131,133の場合と同様に、前記中和剤12を所定時間ごとに所定量ずつ供給するように、タイマ等からの信号に基づいて、前記定量ポンプ135,138を作動させるようにすることも可能である。しかしながら、前述した実施形態のようにすれば、脱水に最適な大きさのフロック化及び再フロック化をより確実に行うことができるので好ましい。
【0040】
さらに、例えば、前記スカム貯留槽119の前記pH計142のみを省略し、当該スカム貯留槽119の内部に前記中和剤12を過剰(例えば、pH9.5〜10)に供給するように制御手段で前記定量ポンプ138を制御することにより再フロック化を行って、前記脱水機124で脱水処理して生じた濾液8を廃水処理せずに前記凝集槽114の前記前段槽114aの内部に戻し、当該前段槽114aの内部が規定のpH値(pH6〜9.5)となるように、前記pH計141からの信号に基づいて、制御手段が前記定量ポンプ135を制御して前記中和剤タンク132からの前記中和剤12の添加量を調整するようにすれば、前記凝集槽114の前記前段槽114aのpH計141だけで前記中和剤12を無駄にすることなく脱水に最適な大きさの再フロック化を前記スカム貯留槽119で行うことができ、設備の簡略化を図って、保守点検等の簡素化を図ることが可能となる。
【0041】
また、前述した実施形態においては、クラゲ1の捕集量が少なく、前記スカム貯留槽119内に溜まる前記スカム5の量が少なくて当該スカム5を比較的長い時間にわたって貯留しなければならない場合には、前記散気管121から空気10を連続的に送給することにより、前記スカム貯留槽119内の前記スカム5を常に曝気して腐敗を防止するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記散気管121から空気10を間欠的に送給することにより、前記スカム貯留槽119内の前記スカム5を間欠的に曝気するようにすれば、より長い時間にわたってスカム5を貯留しなければならない場合であっても、消費電力を抑制することが可能となる。
【0042】
さらに、例えば、スカム5を長い時間にわたって貯留しても、腐敗臭が許容できる程度である場合には、脱水処理の直前(例えば、3〜24時間前)のみに、前記散気管121から空気10を送給することにより、上記スカム5の腐敗に伴って生じた当該スカム5中の炭酸ガス等の放散を脱水処理前に行うだけにすることも可能である。
【実施例】
【0043】
本発明に係るクラゲ処理装置及びクラゲ処理方法の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明する。なお、本発明は以下の確認試験のみに限定されるものではない。
【0044】
[試験1:再フロック化状態確認試験]
〈原料の調整〉
クラゲを破砕ポンプで破砕したクラゲ破砕水(高濃度タイプ(100%))及び淡水を加えて希釈したクラゲ破砕水(低濃度タイプ(40%))に対して、それぞれフロック化処理し、それぞれ加圧浮上分離して生成したスカムを回収して、それぞれスカム貯留槽にそのまま貯留(9日間)して原料A(低濃度クラゲ破砕水使用)及び原料B(高濃度クラゲ破砕水使用)を用意した。
【0045】
〈試験体の作成〉
次に、上記原料A,Bをビーカにそれぞれ分取し(1L)、下記の表1に示す量となるように無機凝集剤(38wt%塩化第二鉄水溶液)を加えてよく撹拌した後、pH7〜9となるようにpH計で計測しながら中和剤(24wt%水酸化ナトリウム水溶液)を加えて中和したら、下記の表1に示す量となるように高分子凝集剤(0.1wt%ポリアクリルアミド水溶液)を加えてゆっくり撹拌することにより、再フロック化処理をそれぞれ行って、下記試験体A1〜A9,B1〜B4を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
〈評価方法〉
作成した上記試験対A1〜A9,B1〜B4をメスシリンダに入れ、15分間静置した後、フロックの凝集状態を目視確認すると共に、大気と水との界面の位置に対するフロックと水との界面の位置の割合(SV15)を計測した。
【0048】
〈評価結果〉
結果を下記の表2に示す。なお、比較のため、原料A,Bにおけるフロックの状態及びSV15も下記の表2に併せて示す。
【0049】
【表2】

【0050】
上記結果から、以下のことが認められた。
【0051】
《試験体A1〜A9》
(1)全体的に懸濁しており、静置するだけでは沈殿を生じなかった。
(2)無機凝集剤及び中和剤を添加することなく高分子凝集剤のみを添加した場合(試験体A8)、フロックを生成するものの、フロックの径が小さかった。
(3)無機凝集剤及び高分子凝集剤を添加すると、フロックが生成し、上澄み液も透明であり、再フロック化できていると認められる。
【0052】
(4)無機凝集剤を添加する量が7g/Lまでは、無機凝集剤の添加量が多いほど、生成するフロックが大きくなった(試験体A4,A2,A6)。無機凝集剤を増やした条件(試験体A5)では、フロックが小さくなった。これは、無機凝集剤に対する高分子凝集剤の添加量が少なかったことによると考えられる。
(5)大きなフロックを生成する無機凝集剤の添加量(5g/L)において高分子凝集剤の添加量を増やしても(試験体A7,A9)、フロックのサイズに変化がなかった。
【0053】
(6)以上のことから、原料A(低濃度クラゲ破砕水)の場合、無機凝集剤を5g/L、高分子凝集剤を50mg/Lで添加することが最も好ましいといえる。
【0054】
《試験体B1〜B4》
(1)全体が懸濁しており、静置するだけでは沈殿を生じなかった。
(2)無機凝集剤を5g/L(原料Aの場合の最適条件)で添加した場合(試験体B1)、大きなフロックを生成するものの、すぐに崩れそうな状態であった。また、上澄み液が濁っていた。
(3)無機凝集剤を10g/Lで添加した場合(試験体B2)、大きなフロックを生成すると共に、崩れそうにない状態であったものの、上澄み液に若干の濁りがあった。
【0055】
(4)ピンフロック解消のため、高分子凝集剤の添加量を増やしても、上澄み液の濁りが解消せず、ピンフロックが残ったままとなった(試験体B4)。
(5)無機凝集剤を15g/Lで添加した場合(試験体B3)、大きくて強固なフロックが生成し、上澄み液も透明であり、再フロック化が良好に行われていると認められる。
【0056】
(6)以上のことから、原料B(高濃度クラゲ破砕水)の場合、無機凝集剤を15g/L、高分子凝集剤を75mg/Lで添加することが最も好ましいといえる。
【0057】
[試験2:脱水性確認試験]
前記原料A,Bに対して、上記試験1で最も好ましいと認められた上記条件にそれぞれ基づいて、実機において、再フロック化処理をそれぞれ行った後、脱水処理(フィルタプレス機)をそれぞれ行った。その結果、原料A,Bの両方共に、濾液は透明であり、脱水されたケーキは、しっかりとした塊を形成していた。また、脱水ケーキの含水率をそれぞれ測定したところ、原料A(低濃度クラゲ破砕水)の場合は平均65%(4点測定法)、原料B(高濃度クラゲ破砕水)の場合は平均52%(3点測定法)となり、目標値(75%以下)を十分に満足できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るクラゲ処理装置は、腐敗によって生じるスカムの脱水効率の低下を低コストで防止することができるので、発電産業等を始めとして各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 クラゲ
2 クラゲ破砕水
3,4 フロック
5 スカム
6 ケーキ
7 廃水
8 濾液
10 空気
11 無機凝集剤
12 中和剤
13 高分子凝集剤
100 クラゲ処理装置
111 破砕ポンプ
112 クラゲ破砕水槽
113 送給ポンプ
114 凝集槽
114a 前段槽
114b 後段槽
114c オーバフロー堰
115 分離槽
115a ガイド筒
116 スクレーパ
116a 駆動モータ
117 送給ポンプ
118 エアブロア
119 スカム貯留槽
120 撹拌翼
120a 駆動モータ
121 散気管
122 エアブロア
123 送給ポンプ
124 圧縮脱水機
131 無機凝集剤タンク
132 中和剤タンク
133 高分子凝集剤タンク
134〜139 定量ポンプ
140 制御装置
141,142 pH計
143 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラゲを破砕する破砕手段と、
前記破砕手段で生成したクラゲ破砕水に凝集剤及び中和剤を加えてクラゲ有機物成分をフロック化させるフロック化手段と、
前記フロック化手段で生成したフロックを液面上に浮上させて生成したスカムを分離するスカム分離手段と、
前記スカム分離手段で分離された前記スカムを貯留するスカム貯留手段と、
前記スカム貯留手段で貯留された前記スカムを脱水するスカム脱水手段と
を備えているクラゲ処理装置において、
前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムに曝気処理を施す曝気手段と、
前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムを攪拌する攪拌手段と、
前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムに前記凝集剤及び前記中和剤を加える再フロック化手段と
を備えていることを特徴とするクラゲ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラゲ処理装置において、
前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムのpHを計測するスカムpH計測手段と、
前記スカムpH計測手段からの信号に基づいて、前記スカム貯留手段で貯留されている前記スカムを規定のpH値とするように、前記再フロック化手段を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とするクラゲ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−130867(P2012−130867A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285515(P2010−285515)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504444832)堺LNG株式会社 (2)
【Fターム(参考)】