説明

クラッチアクチュエータ

【課題】異なる変速比の第1、第2変速機と、入力歯車と第1変速機との間を断接する第1クラッチと、入力歯車と第2変速機との間を断接する第2クラッチと、第1クラッチを操作する第1駆動ピストンと、第2クラッチを操作する第2駆動ピストンと、モータによって駆動され第1、第2駆動ピストンの何れかを押圧駆動するカム体と、第1クラッチを断接させる第1受動ピストンと、第2クラッチを断接させる第2受動ピストンとを備えた変速機構において、コンパクトなクラッチアクチュエータを提供する。
【解決手段】カム体を回動可能に軸支する回動軸と、回動軸の回動に伴いカム体を助勢するアシスト機構と、上記アシスト機構による荷重が回動軸に伝達される荷重作用点Bとを備え、カム体の中立位置において、アシスト機構の荷重作用方向線上に、記荷重作用点Bと回動軸の中心Cとが配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインクラッチ付き変速機のクラッチアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つのクラッチを有する車両において、クラッチアクチュエータ内にモータを備えると共に、上記モータに連なるウォームホイール軸にクランクシャフトを設け、同クランクシャフトに連なるクランクピンに出力ロッド(油圧発生用のピストンのロッド)を連結し、上記モータの駆動によって上記出力ロッドを駆動するシステムにおいて、上記クラッチアクチュエータのモータにかかる負荷や、手動操作の場合のクラッチレバーの操作力を低減するために、クランクアームにアシストスプリングを取付け、クランクシャフトの回転を助勢することによって、出力ロッドのストロークを助勢する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、油圧ポンプ等を含む複雑な油圧系統を不要とすることを目的として、1つのモータで2つのクラッチを操作するツインクラッチ構造が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この構造においても、モータ負荷及びクラッチレバーの操作力低減を目的として、上記アシスト機構を採用することが望まれていたが、ツインクラッチ構造では2つのクラッチ操作機構を有することから、1つのクラッチ操作機構に比べて構成部品が増えてしまい、アシストスプリングのレイアウトに制約がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285453号公報(図11〜図13)
【特許文献2】特開2007−24079号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1つのモータで2つのクラッチを操作するツインクラッチ構造において、アシストスプリングを有しながらも、レイアウト上の制約をかけることのないコンパクトなツインクラッチ付き変速機のクラッチアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
異なる変速比を有する第1変速機2A及び第2変速機2Bとを備えると共に、
第1マスタシリンダ19Aの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第1変速機2Aとの間を断接する第1クラッチ3Aと、
第2マスタシリンダ19Bの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第2変速機2Bとの間を断接する第2クラッチ3Bと、
上記第1マスタシリンダ19Aの作動液を押し出して上記第1クラッチ3Aを操作する第1駆動ピストン22Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bの作動液を押し出して上記第2クラッチ3Bを操作する第2駆動ピストン22Bと、
モータ21によって傾動駆動され、一方に傾動したときに上記第1駆動ピストン22Aを押圧駆動し、他方に傾動したときに上記第2駆動ピストン22Bを押圧駆動するカム体63とを備えるツインクラッチ付き変速機のクラッチアクチュエータ5において、
上記カム体63を回動可能に軸支する回動軸61と、
上記回動軸61の回動に伴い上記カム体63を助勢するアシスト機構91と、
上記アシスト機構91による荷重が上記回動軸61に伝達される荷重作用点Bとを備え、
上記カム体63の中立位置において、上記アシスト機構91の荷重作用方向線上に、上記荷重作用点Bと回動軸61の中心Cとが配置されることを特徴とするクラッチアクチュエータ5に関するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記アシスト機構91は単一の機構であり、上記回動軸61の回動に伴い上記第1駆動ピストン22A又は上記第2駆動ピストン22Bの何れか一方を押圧駆動させるよう上記カム体63を助勢することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記第1マスタシリンダ19A及び第2マスタシリンダ19Bの軸線Dと、上記アシスト機構91の軸線Eが平行になるように配置されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記回動軸61方向視で、上記アシスト機構91が回動軸61に対して上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bと同じ側へ配置されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のクラッチアクチュエータにおいて、
上記回動軸61方向視で、上記アシスト機構91は上記第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bに挟まれるように形成されることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記回動軸から上記アシスト機構の長手方向端部までの長さは、上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bの長手方向端部までの長さより短いことを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記カム体63と上記モータ21との間にギヤ機構20が設けられ、
上記アシスト機構91は、上記カム体63を挟んで、上記ギヤ機構20及び上記モータ21の反対側に配置されることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5において、
上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bに設けられ、ホース86を介してリザーバタンク85に連結される作動油供給ポート83を備え、
上記アシスト機構91と作動油供給ポート83は、側面視で、上記回動軸61に対して同方向に設けられると共に、上記アシスト機構91と作動油供給ポート83は、側面視で、上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bを挟んで互いに反対側に形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明において、
上記構成により、上記カム体63の中立位置で上記アシスト機構91の荷重作用方向線上に、荷重作用点Bと上記回動軸61の中心Cとが配置されるので、ツインクラッチ3においてもアシスト機構91を採用することが可能となると共に、上記アシスト機構91は、上記カム体63の中立位置では回動軸61に対する回動力を発生せず、上記回動軸61が中立位置から回動した時には、上記第1駆動ピストン22A及び上記第2駆動ピストン22Bに対して均等に助勢することができる。
【0015】
請求項2の発明において、
上記構成において、第1駆動ピストン22A及び第2駆動ピストン22Bを助勢するためのアシスト機構を複数設ける場合と比べて、単一のアシスト機構91で複数の駆動ピストン22A、22Bを助勢することができるため、部品点数を削減することができる。
【0016】
請求項3の発明において、
上記第1マスタシリンダ19A及び第2マスタシリンダ19Bの軸線Dと、上記アシスト機構91の軸線Eが平行になるように配置されるので、互いに干渉することなく上記アシスト機構91を配置することが可能となる。
【0017】
請求項4の発明において、
上記アシスト機構91が回動軸61に対して上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bと同じ側へ配置されるので、上記クラッチアクチュエータ5をコンパクトに形成することができる。
【0018】
請求項5の発明において、
上記第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bの間の空いたスペースを利用してアシスト機構91をコンパクトに配置することができる。
【0019】
請求項6の発明において、
上記アシスト機構91が上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bの長手方向端部より外方に突出することを回避することができるので、上記クラッチアクチュエータ5を大型化することなくアシスト機構91をコンパクトに設けることができる。
【0020】
請求項7の発明において、
上記ギヤ機構20や上記モータ21側に設ける場合と比べて、上記ギヤ機構20周りの複雑化や互いの干渉を避けることができるので、上記アシスト機構91や上記モータ21等のメンテナンス性が向上する。
【0021】
請求項8の発明において、
上記アシスト機構91と作動油供給ポート83は、側面視で、上記回動軸61に対して同方向に設けられ、第1、第2マスタシリンダ19A、19Bを挟んで互いに反対側に形成されるので、上記アシスト機構と上記作動油供給ポートをコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るツインクラッチ付き変速機構1の構成図である。
【図2】上記ツインクラッチ付き常時噛み合い式変速機2の縦断面図である。
【図3】ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の拡大図である。
【図4】押圧部材50の図であり、図(a)は平面図、図(b)は側面図である。
【図5】クラッチアクチュエータ5の断面正面図である。
【図6】クラッチアクチュエータ5の断面側面図である。
【図7】アシスト機構91の断面側面図である。
【図8】アシスト機構91の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るツインクラッチ付き変速機構1の構成図である。この変速機構は、主として、常時噛み合い式変速機2と、ツインクラッチ3と、スレーブシリンダ装置4と、クラッチアクチュエータ5と、制御部6と、作動油供給装置7とからなっている。
【0024】
常時噛み合い式変速機2は、外軸10Aと内軸10Bとからなるメイン軸10と、これと平行なカウンタ軸11と、さらにこれらと平行な軸線を有するシフトフォーク駆動装置12とを備えている。上記外軸10Aは1、3、5速の奇数段変速歯車を備え、上記内軸10Bは、2、4、6速の偶数段変速歯車を備え、これら歯車に対応する歯車がカウンタ軸11に設けてある。外軸10Aと奇数段変速歯車によって変速する変速機を第1変速機2A、内軸と偶数段変速歯車によって変速する変速機は第2変速機2Bである。
【0025】
ツインクラッチ3は、外側の第1クラッチ3Aと内側の第2クラッチ3Bとから構成されている。第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aは入力歯車15に接続されている。
【0026】
スレーブシリンダ装置4は、シリンダブロック16に第1スレーブシリンダ17Aと第2スレーブシリンダ17Bの2本のスレーブシリンダを備えている。メイン軸10の中心線の延長上にあるのが第2スレーブシリンダ17Bであり、内部に第2受動ピストン18Bが摺動可能に設けてある。これは第2クラッチ3Bを断接するものである。第2スレーブシリンダ17Bの隣に設けてあるのは第1スレーブシリンダ17Aであり、内部に第1受動ピストン18Aが摺動可能に設けてある。これは第1クラッチ3Aを断接するものである。スレーブシリンダ装置4とツインクラッチ3との間に駆動力伝達機構44が設けてある。
【0027】
クラッチアクチュエータ5は、第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bの2本のマスタシリンダと、ウォームギヤ機構20と、ウォームギヤ機構20を駆動する制御モータ21と、ウォームギヤ機構20によって傾動駆動されるカム体63と、カム体63の動きを助勢するアシスト機構91とを備えている。第1マスタシリンダ19Aは内部に摺動可能な第1駆動ピストン22Aを備え、第2マスタシリンダ19Bは内部に摺動可能な第2駆動ピストン22Bを備えている。これらの駆動ピストンは、制御モータ21で駆動されるウォームギヤ機構20とカム体63によって駆動される。第1マスタシリンダ19Aと第1スレーブシリンダ17A、及び第2マスタシリンダ19Bと第2スレーブシリンダ17Bは、それぞれ第1管路23Aおよび第2管路23Bで接続され、駆動ピストンの動きに応じてスレーブシリンダ装置4の受動ピストン18A、18Bの何れかが動くようになっている。制御部6の指令によって、制御モータ21の停止、回転、および回転方向が制御され、ウォームギヤ機構20によって、駆動ピストン19A、19Bの何れかが駆動され、作動油が加圧される。
【0028】
図2は、上記常時噛み合い式変速機2の縦断面図である。図において、メイン軸10の内軸10Bの中央部より右側の細径部に、ニードルベアリング24を介して外軸10Aが被せてあり、相対回転可能である。メイン軸10の左端は、内軸10Bがクランクケース25にボールベアリング26Lを介して支持され、メイン軸10の中央部は、外軸10Aがクランクケース25にボールベアリング26Rを介して支持されている。カウンタ軸の両端は、それぞれクランクケース25にボールベアリング27L、27Rを介して支持されている。
【0029】
メイン軸10にはM1〜M6の6個の歯車が設けてあり、カウンタ軸11には上記歯車M1〜M6に対応して、これらと常時噛み合うC1〜C6の6個の歯車が設けてある。Mはメイン軸付属歯車、Cはカウンタ軸付属歯車、添数字1〜6は1速〜6速の変速比を決める歯車であることを示している。奇数段変速歯車M1、M3、M5、は外軸10Aに、偶数段変速歯車M2、M4、M6、は内軸10Bに設けてある。奇数段変速歯車からなる変速機が第1変速機2A、偶数段変速歯車からなる変速機が第2変速機2Bである。
【0030】
上記歯車符号に付した添字xは、軸と一体形成された固定歯車、添字wは、軸に保持され、軸上の所定の位置で軸に対して相対回転可能の空転歯車、添字sは、軸方向摺動可能の摺動可能歯車を表す。摺動可能歯車(添字s)は、スプラインによって軸に保持され、軸に対して周方向に相対回転しないが軸方向には摺動が可能な歯車である。固定歯車(添字x)が噛み合う相手側の歯車、及び摺動可能歯車(添字s)が噛み合う相手側の歯車は、必ず空転歯車(添字w)である。空転歯車(添字w)は単独では歯車としての機能を果たせず、歯車としての機能を果たすには、隣に設けられている摺動可能歯車(添字s)に係合して軸に固定されることが必要である。摺動可能歯車には、シフトフォーク駆動機構のシフトフォークF(図1)が係合する係合溝Gが設けてあり、これに係合するシフトフォークFによって、摺動可能歯車(添字s)は必要に応じて軸方向に移動する。常時噛み合い式変速機の作用については、公知技術であるので、説明を省略する。
【0031】
図3は、ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の拡大図である。図において、メイン軸外軸10Aの右端部に、クランク軸の出力歯車に常時噛み合う入力歯車15がニードルベアリング28を介して回転可能に設けてある。この入力歯車15に第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aが、ゴム製緩衝材29を介して取付けてある。第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aの内側に、第1クラッチ3Aのクラッチインナ14Aが設けてあり、その内周はスプライン30とワッシャ31とナット32によってメイン軸外軸10Aに固定されている。
【0032】
第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aの内側に、第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bが一体回転可能に取付けてある。第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bの内側に、第2クラッチ3Bのクラッチインナ14Bが設けてあり、その内周部はスプライン33とワッシャ34とナット35によってメイン軸内軸10Bに固定されている。
【0033】
第1クラッチ3Aにおいて、クラッチアウタ13Aに複数枚の駆動摩擦板36Aが軸方向に摺動可能に設けてあり、クラッチインナ14Aには上記駆動摩擦板36Aと交互に複数枚の従動摩擦板37Aが軸方向に摺動可能に設けてある。図において、クラッチインナ14Aの右端側外周部は、上記各摩擦板からなる摩擦板群38Aの一方の端部に当接する受圧プレート部39Aとなっている。摩擦板群38Aの他方の端部にはこれらに当接する環状の加圧プレート40Aが設けられ、クラッチインナ14Aに設けられたサークリップ41Aで内端が支持されている皿ばね42Aによって摩擦板群38Aを上記受圧プレート部39Aの方へ押し、第1クラッチ3Aを接続状態にしている。
【0034】
第2クラッチ3Bにおいて、クラッチアウタ13Bに複数枚の駆動摩擦板36Bが軸方向に摺動可能に設けてあり、クラッチインナ14Bには上記駆動摩擦板36Bと交互に複数枚の従動摩擦板37Bが軸方向に摺動可能に設けてある。図において、クラッチインナ14Bの右端側外周部は、上記各摩擦板からなる摩擦板群38Bの一方の端部に当接する受圧プレート部39Bとなっている。摩擦板群38Bの他方の端部にはこれらに当接する環状の加圧プレート40Bが設けられ、クラッチインナ14Bに設けられたサークリップ41Bで内端が支持されている皿ばね42Bによって摩擦板群38Bを上記受圧プレート部39Bの方へ押し、第2クラッチ3Bを接続状態にしている。
【0035】
第1クラッチ3Aには、一端が第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aに当接し、第1クラッチ3Aのクラッチインナ14Aと第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bとを貫通し、他端が第1クラッチ3Aの外方へ突出する複数の第1駆動ロッド43Aが設けてある。後述の駆動力伝達機構44によってこの第1駆動ロッド43Aが押されたとき、第1クラッチ3Aは断となる。
【0036】
第2クラッチ3Bには、一端が第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bに当接し、第2クラッチ3Bのクラッチインナ14Bを貫通し、他端が第2クラッチ3Bの外方へ突出する複数の第2駆動ロッド43Bが設けてある。後述の駆動力伝達機構44によってこの第2駆動ロッド43Bが押されたとき、第2クラッチ3Bは断となる。
【0037】
上記クラッチの開放端側に、スレーブシリンダ装置4と駆動力伝達機構44とが設けてある。スレーブシリンダ装置4は、2本のスレーブシリンダと、これらにそれぞれ摺動可能に嵌挿されている受動ピストンを備え、駆動力伝達機構44は、受動ピストンの動きを、それぞれに対応するクラッチに伝達してクラッチを断接する。
【0038】
スレーブシリンダ装置4のシリンダブロック16は、第1スレーブシリンダ17Aと第2スレーブシリンダ17Bの2本のスレーブシリンダを備えている。メイン軸中心線の延長上にあるのが第2スレーブシリンダ17Bであり、内部に第2受動ピストン18BがOリング67を介して摺動可能に設けてある。これは第2クラッチ3Bを断接するものである。第2スレーブシリンダ17Bの隣に設けてあるのは第1スレーブシリンダ17Aであり、内部に第1受動ピストン18AがOリング67を介して摺動可能に設けてある。これは第1クラッチ3Aを断接するものである。
【0039】
上記第1スレーブシリンダ17Aの内径は上記第2スレーブシリンダ17Bの内径より大きい。第1スレーブシリンダ17A側には、後述の第1リフタ48Aを押す押圧部材50が介在しているので、第2スレーブシリンダ17Bに比してストロークが小さくてすむが、大きい作用力を必要とするので、内径を大きくしてある。これによって、必要油量がほぼ等しくなるので、クラッチアクチュエータ5の2本のマスタシリンダ19A、19Bの寸法・容量をほぼ同じくすることができる。
【0040】
上記シリンダブロック16の各スレーブシリンダ17A、17Bの端部には、それぞれ作動油の入力ポート45A、45Bが設けられ、クラッチアクチュエータ5のマスタシリンダ19A、19Bに繋がる管路23A、23Bを接続するスイベル管継手46A、46Bが設けてある。シリンダブロック16にはシリンダブロックカバー47が設けてある。
【0041】
駆動力伝達機構44は、ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の間に設けられ、第1クラッチ3Aへ駆動力を伝達する第1リフタ48Aと、第2クラッチ3Bへ駆動力を伝達する第2リフタ48Bとからなっている。第1受動ピストン18Aと第1リフタ48Aとの間には、押圧部材50が介装されている。
【0042】
第1リフタ48Aは、シリンダブロックカバー47に軸方向摺動可能に設けられた内側摺動リング48Aaと、同内側摺動リング48Aaにボールベアリング48Abを介して回転可能に設けられた外側回転リング48Acとで構成されている。外側回転リング48Acに、上記第1駆動ロッド43Aの端部が固定されている。内側摺動リング48Aaの端部は、円筒状端部48Adとなっている。
【0043】
第2リフタ48Bは、第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaの中心孔に軸方向摺動可能に設けられた内側摺動部材48Baと、同内側摺動部材48Baにボールベアリング48Bbを介して回転可能に設けられた外側回転リング48Bcとで構成されている。外側回転リング48Bcに、上記第2駆動ロッド43Bの端部が固定されている。
【0044】
第2受動ピストン18Bの先端は、半球状の先端を有する押圧用突出部49となっている。この部分が第2リフタ48Bの内側摺動部材48Baの端面に当接している。第2リフタ48Bの内側摺動部材48Baが第2受動ピストン18Bに押されると、外側回転リング48Bcと第2駆動ロッド43Bを介して第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bが押され、第2クラッチ3Bは断となる。
【0045】
図4は、第1受動ピストン18Aと第1リフタ48Aとの間に介装された押圧部材50の図であり、図(a)は第1受動ピストン18Aの軸方向から見た平面図、図(b)は側面図である。平面形は、基幹部50aと分岐部50bとからなるY字形をなし、基幹部50aは平面図では直線状であるが、側面視ではほぼ直角に曲げてあり、その端部の軸支部50cでシリンダブロック16に揺動可能に支持されている。分岐部50bは第2受動ピストン18Bの先端の押圧用突出部49を囲むように伸び、分岐部50bの先端部で第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaの円筒状端部48Adの端面に当接している。
【0046】
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aの先端突起53からの押圧入力を受ける1つの入力部51と、同入力部51が受けた押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する2個の半球状の出力部52X、52Yとを備えている。
【0047】
第1クラッチ3Aのリフタ48Aの内側摺動リング48Aaは円筒状端部48Adを備え、上記押圧部材50の第1出力部52Xと第2出力部52Yは、上記円筒状端部48Adの端面上において、上記円筒状端部48Adの中心Oに関して点対称となる位置にそれぞれ配置されている。
【0048】
押圧部材50の入力点51が第1受動ピストン18Aの先端突起53で押されると、分岐部50bの先端の出力部52X、52Yが第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaを押し、外側回転リング48Acと第1駆動ロッド43Aを介して第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aが押され、第1クラッチ3Aは断となる。
【0049】
図5は、クラッチアクチュエータ5の断面正面図、図6は、クラッチアクチュエータ5の断面側面図である。クラッチアクチュエータ5の殻体は、本体ケース55、2本のマスタシリンダ19A、19B、およびモータケース56からなっている。
【0050】
本体ケース55の中には、ウォームギヤ機構20が設けてある。ウォームギヤ機構20は、ウォーム57とウォームホイール58とからなっている。ウォーム57は、ボールベアリング59に回転可能に支持されている。ウォームホイール58は、ボールベアリング60に支持された回動軸61(図6)に固定され、回動可能となっている。回動軸61は互いに連結された前部回動軸61aと後部回動軸61bとからなり、上記ウォームホイール58は前部回動軸61aに固定され、後部回動軸61bにはカム体63が固定されている。カム体63はウォームホイール58と共に回動する。カム体63の左右の腕の端部(図5)には、それぞれ上向きの押圧突起64が設けてある。上記ウォーム57は、モータケース56内に設けられた制御モータ21の回転軸延長部65に結合されて駆動される。
【0051】
本体ケース55の上部には、第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bが、それぞれOリング68を介して嵌挿されている。各マスタシリンダ19A、19Bの上部には、それぞれ作動油の出力ポート69A、69Bが設けてあり、スイベル管継手70A、70Bを介してスレーブシリンダ17A、17Bに連なる管路23A、23Bが連結されている。これらのマスタシリンダにはそれぞれ同一構造の駆動ピストン22A、22Bが装着されている。したがって説明は、右側の第1マスタシリンダ19Aと第1駆動ピストン22Aについて行う。
【0052】
第1駆動ピストン22Aは、上部フランジ71と、上部フラン時71と比べてやや小径の中間フランジ72と、下部フランジ73とを備えている。上部フランジ71の上面に、ばね受け部材74が設けられ、第1マスタシリンダ19A内の上部との間にコイルばね75が装着され、第1駆動ピストン22Aを下方へ付勢している。ばね受け部材74の外周と第1マスタシリンダ19Aの内面との間には上部シール材76が設けられ、油の漏れを防止している。中間フランジ72と下部フランジ73との間には下部シール材77が設けられ、油の漏れを防いでいる。
【0053】
下部フランジ73の下方の第1マスタシリンダ19Aの下端部にサークリップ78を介してワッシャ79が固定されている。下部フランジ73の下面がワッシャ79の上面に当接することによって第1駆動ピストン22Aの抜け止めとなる。ワッシャ79の中央孔に第1駆動ピストン22Aの下部のロッド部80が挿通されている。ロッド部80の下端に上記カム体63の端部の押圧突起64が当接している。
【0054】
図6において、第1マスタシリンダ19Aの側面に作動油供給装置7が接続されている。これは第1マスタシリンダ19Aの側壁の作動油供給ポート83に接続されたスイベル管継手84と、作動油を貯留するリザーバタンク85と、上記スイベル管継手84とリザーバタンク85とを繋ぐホース86とからなっている。第2マスタシリンダ19Bの側面にも、同様に作動油供給装置7が接続されている。これは、リザーバタンク85に連なるホース86を途中で分岐して第2マスタシリンダ19Bの作動油供給ポート83に接続されているものである。
【0055】
第1マスタシリンダ19Aの側壁には、上記スイベル管継手84内の油路に連なる主供給孔87と副供給孔88が設けてある。主供給孔87は細径で、副供給孔88は比較的大径である。主供給孔87は、第1駆動ピストン22Aが下死点にまで下降しているときに、上部シール材76のやや上方となる位置に設けてあり、温度変化による作動油の体積変化等に応じて、不足する作動油をリザーバタンク85から供給し、過剰となる作動油がリザーバタンク85へ回収される。主供給孔87の先端は細径となっているので、ホース86の振動などの影響が、第1管路23Aに伝達することが防止される。副供給孔88はピストン22Aの位置に関係なく、常に上下のシール材76、77間の空間とリザーバタンク85とを連通している。
【0056】
第1駆動ピストン22Aがやや上昇すると、主供給孔87は上部シール材76によって塞がれ、第1管路23Aとリザーバタンク85は非連通となり、第1駆動ピストン22Aが更に上昇すると、第1管路23A内の作動油は加圧され、第1受動ピストン18Aが駆動される。
【0057】
第1マスタシリンダ19Aの上部に、シリンダ内部の油圧を検知する油圧センサ89が設けてある。上記油圧センサ89は、第2マスタシリンダ19Bにも設けてある。これは、制御性を向上させるためである。
【0058】
本体ケース55の側部にカム体63の傾動角度を検出するポテンショメータ90が設けてあり、その検出値は制御装置6(図1)に送られ、制御モータ21の制御操作に供される。第2マスタシリンダ19B内の構造作用は、第1マスタシリンダ19A内の構造作用と同じであるから説明を省略する。第1マスタシリンダ19Aに特有の部材の符号には、Aを付し、第2マスタシリンダ19Bに特有の部材の符号には、Bを付してある。
【0059】
図5において、マスタシリンダ19A、19Bの間に、アシスト機構91の外観が見えている。アシスト機構91はマスタシリンダ19A、19Bの間の後方に設けてある。
図6において、クラッチアクチュエータ5の本体ケース55は前部ケース55Fと後部ケース55Rとからなっている。後部回動軸61に、クランクアーム93が固定されている。
【0060】
図7は、回動軸61とアシスト機構91の軸線Eを含む断面側面図である。アシスト機構91の向こう側に、第1マスタシリンダ19Aの外観が見えている。クラッチアクチュエータ5の本体ケース55の前部ケース55Fと後部ケース55Rとによって、その境界部にアシスト機構ケース92が形成され、上方へ伸びている。後部回動軸61にクランクアーム93とクランクピン94が設けてある。アシスト機構ケース92の中に、アシスト機構ケース92の天井の円弧状凹部92aとクランクピン94との間に、スプリング支持軸95が設けてある。スプリング支持軸95は、上部部材95Uと下部部材95Lとからなる伸縮自在のテレスコピック構造の軸である。このスプリング支持軸95の外周にアシストスプリング96が装着され、スプリング支持軸95を伸張方向に付勢している。
【0061】
図8は、アシスト機構91の正面図である。スプリング支持軸95の上部部材95Uの頂部の円弧部95Uaは、アシスト機構ケース92の天井の円弧状凹部92aに挿入され回動可能となっている。下部部材95Lには、上記クランクピン94が挿通され、ワッシャ97と割りピン98によって抜けが防止されている。下部部材95Lとクランクピン94は相互に回動可能となっている。
【0062】
上部部材95Uの円弧部95Uaの中心Aは、アシストスプリング96の付勢力の基点である。クランクピン94の中心Bは、アシストスプリング96の付勢力の作用点である。クランクアーム93はアシストスプリング96の付勢力の作用点Bと回動軸の中心Cとの間に設けてある。
【0063】
図8において、上記カム体63の中立位置において、上部部材95Uの円筒部の中心Aと、アシストスプリング96の付勢力作用点Bと、回動軸61の中心Cとが、一直線となるよう設定されており、この状態がアシスト機構の中立位置である。この時、カム体63も中立位置であるから、駆動ピストン22A、22Bの何れにも押圧力は加わっていない。この時には、アシストスプリング96の付勢力は、回動軸61の回動方向には作用しない。
【0064】
回動軸61が左右何れかの方向へ回動を始めると、これに応じてアシストスプリング96の付勢力がその回動を助勢する方向へ作用し、モータ21の駆動力と、カム体63が駆動ピストン22A、22Bの何れかに加える押圧力を助勢する。カム体63とアシスト機構91とは同時に中立状態となるので、第1駆動ピストン22Aと第2駆動ピストン22Bとを平等に助勢することができる。
【0065】
上記アシスト機構91は単一のアシスト機構であり、上記回動軸61の回動に伴い上記第1駆動ピストン22A又は上記第2駆動ピストン22Bの何れか一方を押圧駆動させるよう上記カム体63を助勢するので、第1駆動ピストン22A及び第2駆動ピストン22Bを助勢するためのアシスト機構を別々に設ける場合と比べて、単一のアシスト機構で複数の駆動ピストンを助勢することができ、部品点数を削減することができる。
【0066】
図5、図7において、第1マスタシリンダ19A及び第2マスタシリンダ19Bの軸線Dと、アシスト機構91の軸線Eは、平行になるように配置されている。これによって、アシスト機構91をマスタシリンダ19A、19Bに干渉することなく配置することができる。
【0067】
図5において、アシスト機構91が回動軸61に対して上記第1、第2マスタシリンダ19Bと同じ側へ配置されている。したがって、クラッチアクチュエータ機構をコンパクトに形成されている。
【0068】
図5、図7において、アシスト機構91は第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bとに挟まれるように形成されている。第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bの間の空いたスペースが有効活用され、アシスト機構91がコンパクトに配置されている。
【0069】
図5において、回動軸61から上記アシスト機構91の長手方向端部までの長さは、上記第1、第2マスタシリンダ19Bの長手方向端部までの長さより短い。したがって、アシスト機構91が第1、第2マスタシリンダ19Bの長手方向端部より外方に突出することを回避し、クラッチアクチュエータ5を大型化することなくアシスト機構91をコンパクトに設けることができる。
【0070】
図7において、アシスト機構91は、カム体63を挟んで、ウォームギヤ機構20及びモータ21の反対側に配置されている。これは、アシスト機構91を、ウォームギヤ機構20やモータ21側に設ける場合と比べて、上記ウォームギヤ機構20周りの複雑化や互いの干渉を避けることができるので、アシスト機構91やモータ21等のメンテナンス性が向上する。
【0071】
図6、図7において、アシスト機構91と作動油供給ポート83は、回動軸61に対して同方向に設けられると共に、アシスト機構91と作動油供給ポート83は、第1、第2マスタシリンダ19A、19Bを挟んで互いに反対側に形成されている。したがって、アシスト機構91と作動油供給ポート83をコンパクトに配置することができる。
【0072】
以上述べた構成を備えたツインクラッチ付き変速機構1は次のように作用する。
変速機構停止時には、ツインクラッチ3A、3Bは、いずれも接続状態となっている。
第1変速機2Aを作動させる場合は、第2クラッチ3Bを断にする。制御装置6の指令により、制御モータ21が一方向に回転駆動され、ウォームギヤ機構20とカム体63が回動し、第2駆動ピストン22Bが上方へ押され、第2マスタシリンダ19B、第2管路23Bおよび第2スレーブシリンダ17Bの作動油が加圧され、第2受動ピストン18Bが押し出される。上記カム体63の回動に際して、アシスト機構91によって、回動軸61の回動とカム体63の押圧力が助勢される。第2受動ピストン18Bの移動によって、第2リフタ48Bが押され、第2駆動ロッド43Bを介して第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bが押され、第2クラッチ3Bが断となり、第1変速機2Aの作動が可能となる。
【0073】
第2変速機2Bを作動させる場合は、第1クラッチ3Aを断にする。制御装置6の指令により、制御モータ21が上記の逆方向に回転駆動され、ウォームギヤ機構20とカム体63が上記と逆方向に回動し、第1駆動ピストン22Aが上方へ押され、作動油が加圧されて、第1受動ピストン18Aが押し出される。上記カム体63の回動に際して、アシスト機構91によって、回動軸61の回動とカム体63の押圧力が助勢される。第1受動ピストン18Aの移動によって、押圧部材50を介して第1リフタ48Aが押され、第1駆動ロッド43Aを介して第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aが押され、第1クラッチ3Aが断となり、第2変速機2Bの作動が可能となる。
【0074】
以上詳述したように、上記実施形態においては次のような効果がもたらされる。
(1)アシスト機構91の中立位置は、カム体63が中立状態の時、上部部材95Uの頂部の円弧部95Uaの中心Aと、アシストスプリング96の付勢力作用点Bと、回動軸61の中心Cとが、一直線となる位置であり、この時には、アシストスプリング96の付勢力は、回動軸61の回動方向には作用しない。したがって、この機構によって、第1駆動ピストン22Aと第2駆動ピストン22Bを平等に助勢することができる(図7、図8)。
(2)アシスト機構91は単一の機構であり、回動軸61の回動に伴い上記第1駆動ピストン22A又は上記第2駆動ピストン22Bの何れか一方を押圧駆動させるようカム体63を助勢するので、アシスト機構91を、第1駆動ピストン22Aと第2駆動ピストン22Bに別々に設ける場合と比べて、部品点数を削減することができる。
(3)第1マスタシリンダ19A及び第2マスタシリンダ19Bの軸線Dと、アシスト機構91の軸線Eは、平行になるように配置されている。これによって、これらの機構は、互いに干渉することなく、アシスト機構91が配置されている(図5、図7)。
(4)アシスト機構91が、回動軸61に対して上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bと同じ側へ配置されているので、クラッチアクチュエータ5をコンパクトに形成することができる(図5)。
(5)アシスト機構91は第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bとに挟まれるように形成されている。上記両マスタシリンダ19A、19Bの間の空いたスペースが有効活用され、アシスト機構がコンパクトに配置される(図5、図7)。
(6)回動軸61から上記アシスト機構91の長手方向端部までの長さは、第1、第2マスタシリンダ19A、19Bの長手方向端部までの長さより短い。したがって、アシスト機構91がマスタシリンダ19A、19Bの長手方向端部より外方に突出することを回避し、クラッチアクチュエータ5を大型化することなくアシスト機構91をコンパクトに設けることができる(図5)。
(7)アシスト機構91は、カム体63を挟んで、ウォームギヤ機構20及びモータ21の反対側に配置されている。これは、アシスト機構91を、ウォームギヤ機構20やモータ21側に設ける場合と比べて、ウォームギヤ機構20周りの複雑化や互いの干渉を避けることができるので、アシスト機構91やモータ21等のメンテナンス性が向上する(図7)。
(8)アシスト機構91と作動油供給ポート83は、回動軸61に対して同方向に設けられると共に、アシスト機構91と作動油供給ポート83は、第1、第2マスタシリンダ19A、19Bを挟んで互いに反対側に形成されている。したがって、アシスト機構91と作動油供給ポート83をコンパクトに配置することができる(図6、図7)。
【符号の説明】
【0075】
2A…第1変速機、2B…第2変速機、3A…第1クラッチ、3B…第2クラッチ、5…クラッチアクチュエータ、15…入力歯車、19A…第1マスタシリンダ、19B…第2マスタシリンダ、20…ウォームギヤ機構、21…制御モータ、22A…第1駆動ピストン、22B…第2駆動ピストン、61…回動軸、63…カム体、83…作動油供給ポート、85…リザーバタンク、86…ホース、91…アシスト機構、A…基点、B…作用点、C…回動軸の中心、D…マスタシリンダの軸線、E…アシスト機構の軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる変速比を有する第1変速機2A及び第2変速機2Bとを備えると共に、
第1マスタシリンダ19Aの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第1変速機2Aとの間を断接する第1クラッチ3Aと、
第2マスタシリンダ19Bの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第2変速機2Bとの間を断接する第2クラッチ3Bと、
上記第1マスタシリンダ19Aの作動液を押し出して上記第1クラッチ3Aを操作する第1駆動ピストン22Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bの作動液を押し出して上記第2クラッチ3Bを操作する第2駆動ピストン22Bと、
モータ21によって傾動駆動され、一方に傾動したときに上記第1駆動ピストン22Aを押圧駆動し、他方に傾動したときに上記第2駆動ピストン22Bを押圧駆動するカム体63とを備えるツインクラッチ付き変速機のクラッチアクチュエータ5において、
上記カム体63を回動可能に軸支する回動軸61と、
上記回動軸61の回動に伴い上記カム体63を助勢するアシスト機構91と、
上記アシスト機構91による荷重が上記回動軸61に伝達される荷重作用点Bとを備え、
上記カム体63の中立位置において、上記アシスト機構91の荷重作用方向線上に、上記荷重作用点Bと回動軸61の中心Cとが配置されることを特徴とするクラッチアクチュエータ5。
【請求項2】
上記アシスト機構91は単一の機構であり、上記回動軸61の回動に伴い上記第1駆動ピストン22A又は上記第2駆動ピストン22Bの何れか一方を押圧駆動させるように上記カム体63を助勢することを特徴とする請求項1に記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項3】
上記第1マスタシリンダ19A及び第2マスタシリンダ19Bの軸線Dと、上記アシスト機構91の軸線Eが平行になるように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項4】
上記回動軸61方向視で、上記アシスト機構91が回動軸61に対して上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bと同じ側へ配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項5】
上記回動軸61方向視で、上記アシスト機構91は上記第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bに挟まれるように形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項6】
上記回動軸61から上記アシスト機構91の長手方向端部までの長さは、上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bの長手方向端部までの長さより短いことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項7】
上記カム体63と上記モータ21との間にギヤ機構20が設けられ、
上記アシスト機構91は、上記カム体63を挟んで、上記ギヤ機構20及び上記モータ21の反対側に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5。
【請求項8】
上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bに設けられ、ホース86を介してリザーバタンク85に連結される作動油供給ポート83を備え、
上記アシスト機構91と作動油供給ポート83は、側面視で、上記回動軸61に対して同方向に設けられると共に、上記アシスト機構91と作動油供給ポート83は、側面視で、上記第1、第2マスタシリンダ19A、19Bを挟んで互いに反対側に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のクラッチアクチュエータ5。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185412(P2011−185412A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53966(P2010−53966)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】