説明

クラッチディスク

【課題】 クラッチ遮断のためにプレッシャプレートによるクラッチディスクに対する押圧力が解除された場合に、クラッチディスクがフライホイールから確実に離れさせることにある。
【解決手段】 フライホイールの摩擦面に摩擦連結可能なクラッチディスクであって、フライホイールの摩擦面と互いに摩擦係合可能な摩擦連結部2と、摩擦連結部2が摩擦面から離れるのを補助するクラッチ遮断補助機構16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチディスク、特に、クラッチの遮断を補助する機構を備えたクラッチディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチディスク組立体は、エンジンのフライホイールからのトルクをトランスミッションに伝達するためのものであり、一般に、摩擦部材を有するクラッチディスクと、クラッチディスクが固定される入力側プレートと、出力側ハブと、入力側プレートと出力側ハブとを円周方向に連結するダンパー部とを備えている。クラッチディスク組立体を操作する機構として、クラッチカバー組立体がフライホイールに装着されている。クラッチカバー組立体は、フライホイールに固定されたクラッチカバーと、クラッチカバーに支持されたダイヤフラムスプリングと、ダイヤフラムスプリングによってクラッチディスクに押し付けられるプレッシャプレートとを備えている。
【0003】
クラッチディスク組立体では、摩擦部材がプレッシャプレートによりフライホイールに押しつけられると、クラッチディスクはフライホイールとプレッシャプレートとの間に狭持され、フライホイールのトルクがクラッチディスクを介して入力側プレートに入力される。このトルクは、ダンパー部を介して出力側ハブに伝達され、出力側のトランスミッションに出力される。このようにクラッチディスクがフライホイールに摩擦係合することで、クラッチが連結されてトルクが伝達される。(例えば、特許文献1を参照。)
クラッチ接続状態からクラッチを遮断する場合には、レリーズ装置がダイヤフラムスプリングを駆動して、プレッシャプレートのクラッチディスクに対する押圧力を解除する。
【0004】
クラッチ解除時には、プレッシャプレートが離れていくと、クラッチディスクはフライホイールの摩擦面から離れていく。このときに、クラッチディスクの摩擦フェーシングがフライホイールの摩擦面から完全に離れず接触した状態を維持することがある。このようにクラッチの切れ性能が低下すると、変速を行う際のギヤ鳴りの原因になる。
【0005】
クラッチの切れ性能が低下することを防ぐため、クラッチディスクをフライホイールの摩擦面に対して傾斜させたものがある(例えば、特許文献2を参照。)。具体的には、クラッチプレートの外周部を折り曲げたり、クッショニングプレートや芯板の内周部を折り曲げたりして、クラッチディスクの外周側が内周側に比べてプレッシャプレート側に位置するように傾斜させている。このようにクラッチディスクの内周部をフライホイールに当てるようにすることで接触時の有効半径を小さくして、ドラグトルクを極力小さくしている。
【特許文献1】特開平11−72124号公報
【特許文献2】特開2001−263365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クラッチの接続と遮断とを繰り返すことで、コニカル付けされたクラッチディスクは徐々に傾斜が小さくなっていき、平坦な形状に近くなっていく。
【0007】
本発明の課題は、クラッチ遮断のためにプレッシャプレートによるクラッチディスクに対する押圧力が解除された場合に、クラッチディスクがフライホイールから確実に離れさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のクラッチディスクは、フライホイールの摩擦面に摩擦連結可能なクラッチディスクであって、フライホイールの摩擦面と互いに摩擦係合可能な摩擦部材と、摩擦部材が摩擦面から離れるのを補助するクラッチ遮断補助機構とを備えている。
【0009】
このクラッチディスクでは、クラッチ接続状態では、プレッシャプレートによってクラッチディスクがフライホイールに押圧され、フライホイールと摩擦部材とが摩擦係合している。クラッチを遮断する場合に、クラッチ遮断補助機構が、摩擦部材とフライホイールの摩擦面との離反を補助するため、摩擦部材がフライホイールから確実に離れる。つまり、クラッチ遮断補助機構によって、クラッチ切れ性能が向上する。
【0010】
請求項2に係るクラッチディスクは、請求項1に記載されたクラッチディスクであって、クラッチ遮断補助機構は摩擦部材の摩擦面側に配置されている。
【0011】
請求項3に係るクラッチディスクは、請求項2に記載のクラッチディスクであって、摩擦部材は、摩擦面側の第1面と、反対側の第2面と、軸方向に貫通する孔とを有しており、クラッチ遮断補助機構は、孔において摩擦部材の第1面から摩擦面側に飛び出した位置に配置された当接部材と、当接部材が孔内に収納可能となるように弾性的に支持する弾性部材とを有している。
【0012】
このクラッチディスクでは、クラッチを接続する際にはプレッシャプレートによってクラッチディスクがフライホイール側に押圧され、クラッチディスクとフライホイールとが摩擦係合する。このとき、当接部材はフライホイールによってトランスミッション側に押圧されて摩擦部材の孔内に収納される。クラッチ接続状態からクラッチを遮断する際には、プレッシャプレートによるクラッチディスクへの押圧力は解除され、当接部材が弾性部材の弾性力によって摩擦部材の孔内から押動してフライホイールから摩擦部材を引き離す。
【0013】
ここでは、クラッチ接続時には当接部材が摩擦部材の孔内に収納されるため、摩擦部材とフライホイールとが摩擦係合する場合の妨げとはならず、クラッチ遮断時には、摩擦部材の孔内から弾性部材が当接部材を押動することでフライホイールと摩擦部材とを引き離す。
【0014】
請求項4に係るクラッチディスクは、請求項3に記載のクラッチディスクであって、弾性部材は摩擦部材の第2面に固定されている。
【0015】
請求項5に係るクラッチディスクは、請求項3又は4に記載のクラッチディスクであって、摩擦部材の第2面側に配置された第2摩擦部材と、摩擦部材と第2摩擦部材との間に配置されたクッショニングプレートとをさらに備え、クラッチ遮断補助機構は、当接部材を前記弾性部材に固定する固定部材をさらに有し、クッショニングプレートは固定部材が移動可能な孔を有している。
【0016】
このクラッチディスクでは、クラッチ接続状態はプレッシャプレートによってクラッチディスクがフライホイール側に押圧され、摩擦部材とフライホイールとが摩擦係合している。このとき、当接部材がフライホイールによってトランスミッション側に押圧されて、クッショニングプレートの孔内に固定部材の一部が移動する。クラッチ遮断時には、プレッシャプレートによるクラッチディスクへの押圧力は解除され、弾性部材の弾性力によって摩擦部材から当接部材が押動してフライホイールから摩擦部材を引き離す。
【0017】
ここでは、クラッチ接続状態では固定部材の一部はクッショニングプレートの孔内に移動するため、当接部材がクラッチディスクとフライホイールとが摩擦係合する際の妨げとはならない。
【0018】
請求項6に係るクラッチディスクは、請求項3から5のいずれかに記載のクラッチディスクであって、当接部材は、摩擦面に当接可能な平坦面を有している。
【0019】
請求項7に係るクラッチディスクは、請求項3から6のいずれかに記載のクラッチディスクであって、当接部材は、摩擦部材より耐摩耗性が良い材料からなる。
【0020】
ここで、当接部材が摩擦によって摩耗するため、クラッチ遮断の際に摩擦部材から突出する量が減少する事が考えられるが、ここでは、当接部材の耐摩耗性は摩擦部材より良いため、クラッチ遮断の際に摩擦部材から突出する量が減りにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、クラッチ接続状態からクラッチを遮断する際に、クラッチディスクがフライホイールからより確実に離反するようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(1)構成
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態におけるクラッチディスク組立体1の断面図である。図2は本発明の実施形態におけるクラッチディスク組立体1の平面図である。図3はクラッチディスクの一部の拡大断面図である。図4はクラッチ接続時におけるクラッチディスクの一部の拡大断面図である。図5はクラッチディスク組立体1を一部切欠いた平面図である。図6は図5に示されたクラッチディスク組立体1のBーB断面図である。図7は図5に示されたクラッチディスク組立体1のCーC断面図である。図8は、クラッチ接続状態における図5に示されたクラッチディスク組立体1のCーC断面図である。
【0023】
クラッチディスク組立体1は、図1の左側に配置されたエンジン側のフライホイール(図示せず)から図1の右側のトランスミッション(図示せず)にトルクを伝達あるいは遮断するための装置である。図1におけるO−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸線である。
【0024】
このクラッチディスク組立体1は、主に、摩擦連結部2と、ハブフランジ3と、クラッチプレート12と、リティーニングプレート13と、高剛性ダンパー28と、出力ハブ4とから構成されている。
【0025】
摩擦連結部2は、フライホイール70にプレッシャプレートによって押し付けられる部分である。摩擦連結部2は、図5から図7に示すように、クッショニングプレート9と、第1摩擦部材10と、第2摩擦部材11と、クラッチ遮断補助機構16とを備える。
【0026】
クッショニングプレート9は、クラッチエンゲージの際の衝撃を緩和するための部材であって、平坦で環状の板状部材である。また、クッショニングプレート9は、クラッチプレート12の外周側にリベットによって一体に固定されている。クッショニングプレート9のフライホイール70側には第1摩擦部材10が配置され、トランスミッション側には第2摩擦部材11が配置されている。
【0027】
第1摩擦部材10は、摩擦連結部2がプレッシャプレートによってフライホイール70側に押しつけられた際にフライホイール70と摩擦係合する部材であって、環状に形成された板状部材である。第1摩擦部材10は、図3に示すように、クッショニングプレート9のフライホイール側の側面に第1リベット21を用いて固定されている。第1リベット21は、2つのフランジ部分とシャフト部分とから構成されておりフランジ部分の一方は第1摩擦部材10に配置され他方はクッショニングプレート9の第2摩擦部材11側側面に配置されている。なお、クッショニングプレート9と第1摩擦部材10との間には第1スぺーサー30が配置されている。
【0028】
第2摩擦部材11は、摩擦連結部2がプレッシャプレートによってフライホイール70側に押しつけられる際にプレッシャプレートと摩擦係合する部材であって、環状に形成された板状部材である。また、図3に示すように、クッショニングプレート9のトランスミッション側の側面に第2リベット22を用いて固定されている。第2リベット22は、2つのフランジ部分とシャフト部分とから構成されておりフランジ部分の一方は第2摩擦部材11に配置され他方はクッショニングプレート9の第1摩擦部材10側側面に配置されている。なお、クッショニングプレート9と第2摩擦部材11との間には第2スぺーサー31が配置されている。
【0029】
第1スぺーサー30及び第2スぺーサー31は、摩擦連結部2内にクッショニングプレート9が弾性変形を行うのに必要なスペースを形成するためのものである。第1スぺーサー30は、クッショニングプレート9と第1摩擦部材10との間に第1リベット21によって固定されている。第2スぺーサー31は、クッショニングプレート9と第2摩擦部材11との間に第2リベット22によって固定されている。隣り合う第1スぺーサー30の間には第2スぺーサー31が配置され、隣り合う第2スぺーサー31の間には第1スぺーサー30が配置されている。すなわち、第1及び第2スぺーサー30、31は、クッショニングプレート9を挟んで第1摩擦部材10が配置されている側と第2摩擦部材11が配置されている側とに円周方向に交互に配置されている。また、第1及び第2スぺーサー30、31は、半径方向長さが第1摩擦部材10の半径方向長さ以下であって円周方向の長さは半径方向長さや隣り合う第1及び第2スペーサー30、31間の距離よりも短くなっている。さらに、第1及び第2スぺーサー30、31は、角の丸まった長方形状に形成された板状の部材である。第1スぺーサー30は第1リベット121によってクッショニングプレート9と第1摩擦部材10とに固定され、第2摩擦部材11には第1リベット21のフランジ部分が進入可能な第2孔11aが配置されている。一方、第2スぺーサー31は第2リベット22によってクッショニングプレート9と第2摩擦部材11とに固定され、第1摩擦部材10には第2リベット22のフランジ部分が進入可能な孔10aが配置されている。第1及び第2孔10a、11aは第1及び第2リベット21、22の直径よりもやや大きな直径の円形状の孔である。
【0030】
なお、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材11には、クラッチ接続時にクッショニングプレート9が弾性変形したときに第1リベット21または第2リベット22が進入可能な孔11bが設けられている。孔11bは第1リベット21及び第2リベット22のフランジ部よりも直径のやや大きな円形の孔である。
【0031】
クラッチ遮断補助機構16は、クラッチを遮断する場合に第1摩擦部材10とフライホイール70を確実に離すための機構であって、摩擦連結部2に円周方向に一定間隔ごとに配置されている。より具体的には、クラッチ遮断補助機構16は、第1摩擦部材10側に設けられた第1スペーサー30の一部(この実施例では円周方向に90度等分)を用いて実現されている。クラッチ遮断補助機構16は、第1スぺーサー30を構成するプレート部材17と、当接部材18と、リベット19とを備える。プレート部材17は、角を丸めた長方形部17a(スペーサに該当する部分)と、半径方向片側に突出し先端が半円形の突出部17bとを備えており、第1及び第2スぺーサー30、31と同じ厚さの板状部材である。長方形部17bは、第1摩擦部材10のトランスミッション側の面に第1リベット21によって固定されている。当接部材18は、円柱状の部材であって、第1摩擦部材10より耐摩耗性が良い材料からなる。また、当接部材18はプレート部材17の突出部17bに、リベット19によって固定されている。なお、第1摩擦部材10は、当接部材18に対応する位置に円形の孔10aを有しており、当接部材18は孔10a内に配置されている。孔10aは当接部材18よりわずかに径が大きくなっており、そのため当接部材18は孔10a内を軸方向に移動可能となっている。クッショニングプレート9は、プレート部材17の突出部17bが移動可能な位置に孔9aを備えている。より具体的には、孔9aは、図5に示すように、突出部17bの先端から根元付近部分までを囲むように形成されている。クラッチ遮断状態では、図6及び図7に示すように、当接部材18の一部が第1摩擦部材10の孔10aから突出している。また、突出部17bは長方形部17bと同じく平坦形状になっている。
【0032】
クラッチプレート12は環状に形成された鋼製のプレート部材である。クラッチプレート12の外周側には、摩擦連結部2が配置されている。クラッチプレート12の内周部は、出力ハブ4の軸方向エンジン側端部の外周と隙間をあけて位置し、かつ軸方向エンジン側に膨らんで絞り加工されてハブフランジ3の軸方向エンジン側の側面との間に所定の空間が設けられている。また、クラッチプレート12の半径方向中間部には、後述する高剛性ダンパー28を構成するトーションスプリング5,6を支持する支持部12a,21が形成されている。
【0033】
リティーニングプレート13は、クラッチプレート12と同様に、環状に形成された鋼製のプレートであり、クラッチプレート12に対向して配置されている。リティーニングプレート13は円周方向に所定間隔ごとに配置された複数のストップピン15によりクラッチプレート12に固定されている。これにより、クラッチプレート12とリティーニングプレート13との軸方向距離が定められ、両プレート12,13は一体回転可能となっている。リティーニングプレート13の内周部は、出力ハブ4の軸方向トランスミッション側端部の外周と隙間をあけて位置し、かつ軸方向トランスミッション側に膨らんで形成されているため、ハブフランジ3の軸方向トランスミッション側の側面との間に所定の空間を確保している。また、リティーニングプレート13の半径方向中間部にはクラッチプレート12の支持部12a,21と対向する位置にトーションスプリング5,6の支持部23,25が形成されている。リティーニングプレート13の内周側で、ハブフランジ3の側方には低剛性ダンパー8が配置されている。
【0034】
ハブフランジ3は、環状に形成された鋼製のプレート部材であり、クラッチプレート12とリティーニングプレート13との軸方向間に配置されている。ハブフランジ3は、図2に示すように、外周部に外側に開いた複数の切欠き69が形成されており、その切欠き69内をストップピン15が通過している。ハブフランジ3の内周部には、複数の内周歯37が形成されている。また、ハブフランジ3の半径方向中間部にはクラッチプレート12の支持部12a,21及びリティーニングプレート13の支持部23,25に対応する位置に窓孔91,92が形成され、この窓孔91,92内にはトーションスプリング5,6が配置されている。
【0035】
出力ハブ4は、筒状に形成された鋼製の部材であり、クラッチプレート12及びリティーニングプレート13及びハブフランジ3の中心孔内にこれらの中心軸と同軸に配置されている。出力ハブ4は外周部にハブフランジ3の内周歯37と噛み合う複数の外周歯57が形成されている。外周歯57と内周歯37とは、図2に示すように、円周方向に所定の隙間を介して係合するストッパーを構成している。これにより、出力ハブ4及びハブフランジ3は、内周歯37と外周歯57との円周方向隙間の角度だけ相対回転可能となっている。出力ハブ4の内周部には軸方向に延びる複数のスプライン孔44が形成されている。このスプライン孔44にトランスミッションから延びるシャフトのスプラインが係合することで、出力ハブ4からトランスミッションにトルクが伝達可能となっている。また、リティーニングプレート13の内周側における出力ハブ4の外周面には、軸方向に延びる複数の係合溝41が全周にわたり形成されている。この係合溝41には、低剛性ダンパー8の作動プレート及びブッシュが軸方向に移動可能に係合している。
【0036】
高剛性ダンパー28は、トルクの大きい範囲でクラッチプレート12及びリティーニングプレート13とハブフランジ3との間で捩り方向の振動を減衰するためのものである。高剛性ダンパー28は、第1トーションスプリング5と,第2トーションスプリング6と、第2ヒステリシストルク発生機構67と、第1ヒステリシストルク発生機構77とを有している。
【0037】
第1トーションスプリング5、第2トーションスプリング6は、クラッチプレート12及びリティーニングプレート13とハブフランジ3とを回転方向に弾性的に連結するための部材である。第1トーションスプリング5は、大小のコイルスプリングが組み合わされてなるコイルスプリングである。第2トーションスプリング6は、1個のコイルスプリングであり、第1トーションスプリング5よりばね定数が大きい。
【0038】
第2ヒステリシストルク発生機構67は、ハブフランジ3内周部とクラッチプレート12内周部との軸方向間に配置されておりクラッチプレート12とハブフランジ3とが相対回転するときにヒステリシストルクを発生するための機構である。第1ヒステリシストルク発生機構77は、リティーニングプレート13とハブフランジ3との軸方向間の空間に配置されており、リティーニングプレート13と固定プレート20とが相対回転するときにヒステリシストルクを発生するための機構である。
(2)作用・効果
次に、作用・効果ついて説明する。
【0039】
クラッチを接続する場合には、プレッシャプレートによって摩擦連結部2がフライホイールに押しつけられて第1摩擦部材10とフライホイールとが摩擦係合し、エンジンのトルクを出力ハブ4に伝達する。このとき、図4に示すように、第2リベット22付近のクッショニングプレート9は第2摩擦部材11側に配置された第2スぺーサー31に押圧されて第1摩擦部材10側に弾性変形し、第1リベット21付近のクッショニングプレート9は第1摩擦部材10側に配置された第1スぺーサー30に押圧されて第2摩擦部材11側に弾性変形する。そして、第1リベット21のフランジ部が第2孔11a内に進入し、第2リベット22のフランジ部が第1孔10a内に進入する。ここでは、クッショニングプレート9が弾性変形するために、クラッチエンゲージの際の衝撃が緩和される。
【0040】
クラッチ接続状態では、図8に示すように、プレッシャプレートによって摩擦連結部2はフライホイール70に押しつけられるため、クラッチ遮断補助機構16のプレート部材17に固定された当接部材18は第1摩擦部材10の孔10aに進入させられる。また、プレート部材17は弾性変形を行って、クッショニングプレート9に設けられた孔9aの内部へリベット19が移動する。このとき、クッショニングプレート9に孔9aが設けられているため、プレート部材17に固定されたリベット19が待避できる。これによって、第1摩擦部材10とフライホイール70との摩擦係合を当接部材18によって妨げられない。
【0041】
その後、クラッチ接続状態からクラッチを遮断する場合には、摩擦連結部2のプレッシャプレートからの押圧力が解除される。このとき、プレート部材17が弾性変形を行う前の姿勢に戻る。これに伴って、第1摩擦部材10の孔10aに進入させられていた当接部材18はプレート部材17と協動して、第1摩擦部材10の孔10aから突出する。この押動によって第1摩擦部材10からフライホイール70が離反するようにフライホイール70を押圧する。
【0042】
この結果、フライホイール70と第1摩擦部材10とは離反する。このとき、クッショニングプレート9は第1及び第2摩擦部材10、11側への弾性変形が解除され平坦な状態に戻る。
(3)他の実施例
本発明は、プレート部材17を弾性部材として用いたが、図9に示すように、コイル状のスプリング24やゴムなどを第2摩擦部材に取り付けても良い。また、上記実施例では、当接部材18をリベット19で固定したが、リベット19を用いないで接着や溶接しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態としてのクラッチディスク組立体の縦断面概略図。
【図2】本発明の一実施形態としてのクラッチディスク組立体の平面図。
【図3】クラッチディスクの一部を拡大した断面図。
【図4】クラッチ接続時のクラッチディスクの拡大断面図。
【図5】クラッチディスク組立体の一部を拡大した断面図。
【図6】クラッチディスク組立体の一部を拡大した断面図。
【図7】クラッチ接続状態におけるクラッチディスク組立体の一部を拡大した断面図。
【図8】別の実施形態におけるクラッチ接続時のクラッチディスクの拡大断面図。
【図9】別の実施形態におけるクラッチ接続時のクラッチディスクの拡大断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 クラッチディスク組立体
2 摩擦連結機構
3 ハブフランジ
4 出力ハブ
12 クラッチプレート
13 リティーニングプレート
16 クラッチ遮断補助機構
67 第2ヒステリシストルク発生機構
77 第1ヒステリシストルク発生機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールの摩擦面に摩擦連結可能なクラッチディスクであって、
前記フライホイールの摩擦面と互いに摩擦係合可能な摩擦部材と、
前記摩擦部材が前記摩擦面から離れるのを補助するクラッチ遮断補助機構と、
を備えるクラッチディスク。
【請求項2】
前記クラッチ遮断補助機構は前記摩擦部材の前記摩擦面側に配置されている、請求項1に記載のクラッチディスク。
【請求項3】
前記摩擦部材は、前記摩擦面側の第1面と、反対側の第2面と、軸方向に貫通する孔とを有しており、
前記クラッチ遮断補助機構は、前記孔において前記摩擦部材の前記第1面から前記摩擦面側に突出した位置に配置された当接部材と、前記当接部材が前記孔内に収納可能となるように弾性的に支持する弾性部材とを有している、請求項2に記載のクラッチディスク。
【請求項4】
前記弾性部材は前記摩擦部材の前記第2面に固定されている、請求項3に記載のクラッチディスク。
【請求項5】
前記摩擦部材の前記第2面側に配置された第2摩擦部材と、
前記摩擦部材と前記第2摩擦部材との間に配置されたクッショニングプレートとをさらに備え、
前記クラッチ遮断補助機構は、前記当接部材を前記弾性部材に固定する固定部材をさらに有し、
前記クッショニングプレートは前記固定部材が移動可能な孔を有している、請求項3または4に記載のクラッチディスク。
【請求項6】
前記当接部材は、前記摩擦面に当接可能な平坦面を有している、請求項3〜5のいずれかに記載のクラッチディスク。
【請求項7】
前記当接部材は、前記摩擦部材より耐摩耗性が良い材料からなる、請求項3〜6のいずれかに記載のクラッチディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−348973(P2006−348973A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172446(P2005−172446)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000149033)株式会社エクセディ (270)
【Fターム(参考)】