説明

クラッチ装置

本発明は、駆動ユニットによって駆動されるケーシング(8)と作用結合している入力部分によってトルクを供給される、少なくとも1つの湿式クラッチ(28,29)を備えたクラッチ装置(1)に関する。入力部分に同時にねじり振動吸振器(50)、例えば遠心力振り子(51)を配設することができるように、入力部分とねじり振動吸振器(50)のキャリアディスク(36)との振動のない若しくは振動の少ない接合が必要になり、その結果、ねじり振動吸振器(50)の十分な周波数規定を設定することができる。したがって、例えば入力側のプレートキャリア(34,35)を、クラッチボス(37)に不動に配置されていて、適切に補強されているキャリアディスク(36)と、少なくとも1つの、例えば入力側のプレートキャリア(34,35)を接合し、ねじり振動吸振器(50)をキャリアディスク(36)に配置することを提案する。本発明において有利には、プレートキャリア(34,35)は、振動遊びのさらなる減少のために組立て式に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳して配置された2つの湿式クラッチとねじり振動吸振器とを備えたクラッチ装置に関する。
【0002】
例えば遠心力振り子といったねじり振動吸振器をパワートレインにおいて使用することが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10310831号明細書において公知になっている。さらに湿式クラッチを備えたクラッチ装置が公知になっている。例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102005027610号明細書には、半径方向に重畳して配置されている2つの湿式クラッチを備えたクラッチ装置が開示されている。
【0003】
クラッチ装置の湿室にねじり振動吸振器を収納することは、共振領域の十分な調整を保証する必要があるので困難である。共振領域への障害には、特にトルクを伝達する接続部分の回動遊びが関与する。
【0004】
本発明の目的は、特にケーシングに収納された湿式クラッチと関連した、自動車のパワートレインにおけるねじり振動吸振器の使用を改良することである。
【0005】
上記目的は、駆動ユニット及び下流側に配置されている伝動装置を備えたパワートレインのためのクラッチ装置であって、入力側及び出力側のプレートキャリアに取り付けられていてかつ軸線方向に交互に配置されているプレート及び摩擦プレートを有する、駆動ユニットによって駆動されるケーシング内に配置されている少なくとも1つの湿式クラッチを備えており、入力側のプレートキャリアはクラッチボスに不動に取り付けられているキャリアディスクに不動に接合されており、キャリアディスクにねじり振動吸振器、例えば遠心力振り子が配置されていることにより達成される。有利には、少なくとも1つの湿式クラッチとケーシングとの間において有効に配置することができるねじり振動減衰器を、ねじり振動吸振器に並列に接続することができる。例えば湿式クラッチの入力部分は同時にねじり振動減衰器の出力部分であってよい。
【0006】
本発明において、少なくとも1つの湿式クラッチの入力部分とのねじり振動吸振器の接合は、入力側のプレートキャリアを介して行われる。金属薄板変形方法により製造された、例えば深絞り加工されたプレートキャリアを使用する場合、トルクを伝達する接続構成部分に対する遊びを伴う接合は、不十分又は高い製造コストによってのみ達成可能な形状接続に基づき十分に排除することはできないので、特に少なくとも1つの湿式クラッチの操作中に振動問題が発生することがある。例えばがたつき音、振動音又は、不快でさらにねじり振動吸振器の機能に不都合に作用する他の振動作用が発生することがあるので、場合によっては上記位置においてねじり振動吸振器を使用することが全くできない。したがって、少なくとも1つのプレートキャリア、例えば少なくとも1つの湿式クラッチの入力側のプレートキャリアを組立て式のプレートキャリアとして構成すると、特に有利であることが分かった。プレートキャリアは軸線方向に平坦に形成可能な接触面を、入力部分のフランジ部分と、ねじり振動吸振器のキャリアディスクとの間に有している。
【0007】
有利な構成によれば、組立て式のプレートキャリアは周方向に亘って分配された、少なくとも1つの湿式クラッチのフランジ部分として構成されている入力部分を、キャリアディスクに軸線方向に離間して遊びなしで接合する接合エレメントから形成されている。フランジ部分若しくはキャリアディスクにおける接合エレメントの平坦な接触面により、キャリアディスクと湿式クラッチの入力部分との特に堅固な接合がもたらされるので、入力部分からねじり振動吸振器へのトルクの伝達は規定され、遊びなしで行うことができる。これによりねじり振動吸振器、例えば遠心力振り子は、特に良好に所望の共振周波数若しくは狭い共振領域に合わせて設計することができる。
【0008】
本構成において、ねじり振動吸振器にねじり振動減衰器を並列に接続することが特に有利であることが分かった。ねじり振動減衰器はケーシングと少なくとも1つの湿式クラッチとの間に配置されていて、湿式クラッチの出力部分は同様に、少なくとも1つの湿式クラッチの入力部分のフランジ部分により形成されている。さらに例えば半径方向に重畳して配置されている2つの湿式クラッチから成る少なくとも1つの湿式クラッチ装置は、ツインクラッチ伝動装置のために設けられていてよい。本構成において、2つの湿式クラッチの、有利には半径方向外側のプレートキャリア又は両入力側のプレートキャリアが組み立てられていてよい。
【0009】
こうして組立て式に構成されたプレートキャリアは、有利にはフランジ部分及びキャリアディスクにリベット留めされている接合エレメントを備えている。これと同時に接合エレメントは、例えば鋼から製造されているプレートのための回動連行部を、軸線方向の移動性を同時に制限しながら形成する。これにより、プレートと、少なくとも1つの湿式クラッチに対応配置された、摩擦パッドを備えた摩擦プレートの出力側との交互の配置において、上述のように形成されたプレートセットの軸線方向の加圧に基づき、例えばフランジ部分によって形成された定置式の端部プレートに対して押圧可能なピストンにより湿式クラッチを適切に開閉することができると共に、スリップ運転することができる。回動連行は、接合エレメントの横断面輪郭に対して相補的なプレートの切欠きにより、特にプレートの外周に亘って行われるので、入力側のプレートを接合エレメントに、周方向において形状接続式にかつ軸線方向に制限されて移動可能に懸架することができる。
【0010】
特に安定性の理由から、接合エレメントは端部側において互いに周方向に隣り合う2つのリベットピンを夫々有することができる。これらのリベットピンはフランジ部分及びキャリアディスクにおける対応する開口に貫通係合して、リベット留めされる。組付けの理由から、フランジ部分から形成された端部プレートを備えた有利な構成において、キャリアディスクが接合エレメントとリベット留めにより接合される前に、プレート及び摩擦プレートは、既にフランジ部分にリベット留めにより接合されている接合エレメントに繋がれる。
【0011】
さらに特にプレートキャリアの安定性の理由から、接合エレメントがフランジ部分及び/又はキャリアディスクとのリベット留めのために、多角形の横断面を備えたリベットピンを有していると有利であることが分かった。上述のリベットピンは、フランジ部分及びキャリアディスクに、リベットピンに対して相補的に設けられた切欠きに貫通係合し、接合エレメントに相対するフランジ部分及びキャリアディスクの側に夫々リベット留めされる。本構成において、多角形は既にリベットピンの製造により設けられていてよい。
【0012】
接合エレメントは、例えば切削加工された段付きピンから製造されていてよい。プレートは、有利には横断面において円形の段付きピンに直接的に懸架される。本構成において、少なくとも3個、例えば6〜36個、有利には9〜24個の段付きピンが周方向に亘って分配されていてよい。択一的又は付加的には、接合エレメントは、例えば3〜16個、有利には12個の金属薄板部分から製造されていてよい。これらの金属薄板部分は周方向側の端部において半径方向外側に折り曲げられているので、金属薄板部分は横断面において、プレートを相対回動不能にかつ移動可能に取り付けることができる歯面輪郭を有している。本構成において、金属薄板部分のリベットピンを、金属薄板部分の平ら及び/又は折り曲げられた領域に設けることができる。
【0013】
少なくとも1つ、有利には周方向に分配された複数の接合エレメントは、ケーシングに向かって軸線方向に拡張されていて、ねじり振動減衰器に並列接続された摩擦装置を制御する少なくとも1つのピンを有していてよい。本構成において、上述のピンは、ケーシングに緊締されている摩擦ディスクを制御することができるので、プレートキャリアに対するケーシングの回動時に、ひいてはねじり振動減衰器の入力・出力部分の間において摩擦モーメントが発生する。この摩擦モーメントは、例えばピンが周方向に亘って配向されている摩擦ディスクの長手方向スリットに係合する場合、引きずられた摩擦を実現するために回動遊びを有していてもよい。
【0014】
さらにねじり振動減衰器が、プライマリといった入力側のフライホイールマスに連結されて、及びセカンダリといった出力側のフライホイールマスに連結されると有利であることが分かった。このために有利な構成によれば、少なくとも1つの湿式クラッチのケーシングをプライマリ側のフライホイールマスとして設計し、少なくとも1つの湿式クラッチをセカンダリ側のフライホイールマスとして設計することができる。
【0015】
少なくとも1つの湿式クラッチはあらゆる形状において、湿式クラッチの周辺の構成に関係なく有利に使用することができる。湿式クラッチは、例えばピストンの冷却及び操作のために圧力媒体が使用されるケーシング内に収納されていてよい。本構成において、少なくとも1つの湿式クラッチは、ケーシングによって形成されている回転する湿室内に収納されていてよい。さらに少なくとも1つの湿式クラッチがケーシング内に収納されていてよい。本構成において、少なくとも1つの湿式クラッチは、液圧式に操作されるピストンによってではなく、例えば電気式のアクチュエータによって操作されるので、圧力媒体を冷却媒体として適量、分配するだけでよく、これに応じて回転式の湿室は必要ではない。特にねじり振動吸振器は遠心力振り子として、圧力媒体に関係なく設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るクラッチ装置の部分断面図である。
【図2】図1に示す組立て式のプレートキャリアを詳細に示す図である。
【図3】組立て式の2つのプレートキャリアを詳細に示す図である。
【図4】図1に示すフランジ部分の一部分を示す図である。
【図5】プレートの回転連行部の構成を示す図である。
【図6】図5に対して択一的なプレートの回転連行部を示す図である。
【図7】プレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図8】プレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図9】プレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図10】図7〜9に対して択一的なプレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図11】図7〜9に対して択一的なプレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図12】図7〜9に対して択一的なプレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図13】摩擦装置を制御するプレートキャリアのための接合エレメントを示す図である。
【図14】段付きピンとして形成された接合エレメントを開放及び閉鎖した状態において示す図である。
【図15】段付きピンとして形成された接合エレメントを開放及び閉鎖した状態において示す図である。
【0017】
本発明を図1〜15に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1に、組み合わされた状態のクラッチ装置1を回転軸線2の上側の部分断面図にして示す。このクラッチ装置1は単にクランクシャフト20だけを示してある駆動ユニットと、単に伝動装置ケーシング22だけを示してある伝動装置との間に配置されている。クラッチ装置1のケーシング8は、クランクシャフト20の軸線方向の振動及び歳差振動を補償する、フレックスプレートといった軸線方向に柔軟な駆動金属薄板21を介してクランクシャフト20に取り付けられており、クランクシャフト20及び駆動金属薄板21により駆動される。さらに、ケーシング8は転がり軸受23により回動可能に伝動装置ケーシング22に支持されている。ケーシング部分7の環状の軸線方向の突設部24と転がり軸受23との間には、クラッチ装置1の圧力媒体を循環させることもできる伝動装置オイルポンプのための歯付きリム25がスリーブ状の突設部を介して配置されており、この突設部24によって歯付きリム25は駆動される。歯付きリム25と、この歯付きリム25を介してケーシング8のための支承部も伝動装置ケーシング22のケーシング壁部に形成する転がり軸受23とから形成されているポンプ駆動装置は、有利には伝動装置ケーシング22に予め組み付けられている。クラッチ装置1と伝動装置との接合時にすくい管14は供給装置においてセンタリングされ、ガイドピン83は上述の供給装置に貫通係合し、また軸線方向に移動可能にかつすくい管14を相対回動不能に支承しながら伝動装置ケーシング22に取り付けられる。軸線方向の突設部24に、伝動装置ケーシング22に対するケーシング8のシーリングのために、突設部24に対してラジアルシールリングといったシール27を備えた、例えば金属薄板又はプラスチックから成るシールディスク26が設けられている。
【0019】
ねじり振動減衰器12と、半径方向に重畳して配置されている2つの湿式クラッチ28,29とが、圧力媒体によって少なくとも部分的に充填されたケーシング8の内側に収容されている。本発明においてねじり振動減衰器12の入力部分は、図示の実施の形態においては、半径方向に入れ子式に接続されている2つの円弧ばね30,31を夫々備えた、有利には周方向に亘って配置されている2つの円弧ばね群から形成された、周方向において有効なエネルギ貯蔵体11を、円弧ばね30,31の端面に半径方向に係合する連行体17,18により周方向に加圧するケーシングによって形成される。本実施の形態において連行体17は、周方向に亘って配置されているケーシング部分6の加工成形部から形成されており、連行体18は環状フランジ部分16の突き出た領域により形成されている。環状フランジ部分16は円弧ばね30,31の挿入後に、ケーシング部分6の半径方向の段部32に接触し、例えば溶接により軸線方向に固定され、組付け前に円弧ばね30,31を失わないように収容するために働くと共に、運転中に円弧ばね30,31を軸線方向に案内するために働く。円弧ばね30とケーシング部分6の半径方向外側の領域との間には、磨耗保護シェル33が設けられている。この磨耗保護シェル33は2つの部分から成り、周方向において連行体17の間に配置されていて、ケーシング8に対して浮動可能に支承されていてよい。
【0020】
ねじり振動減衰器12はトルク伝達経路において、湿式クラッチ28,29の上流側で有効であるので、ねじり振動減衰器12の出力部分は同時に湿式クラッチ28,29の共通の入力部分13である。さらに入力部分13は、ねじり振動減衰器12の出力側の連行体19を備えたフランジ部分13aを有している。連行体19はフランジ部分13aの半径方向に拡張されたアームとして形成されており、円弧ばね30,31が緊縮していない状態において、連行体17,18の同じ周方向に沿って円弧ばね30,31の端面を加圧し、もって湿式クラッチ28,29の入力部分13に対するケーシング8の相対回動時に、円弧ばね30,31の緊縮がもたらされる。その結果、エネルギ貯蔵体11として有効な円弧ばねが、トルクピークのエネルギを短時間蓄えることにより、上述の相対回動を引き起こすトルクピークは減衰される。
【0021】
ねじり振動減衰器12を介して、駆動ユニットのトルクは入力部分13にもたらされる。入力部分13はトルクを湿式クラッチ28,29の入力側のプレートキャリア34,35に分配する。これらのプレートキャリア34,35は、クラッチボス37に溶接により不動に接合されている共通のキャリアディスク36を介してセンタリングされて支承されている。本実施の形態において、半径方向外側のプレートキャリア34は組立て式に製造されている一方で、半径方向内側のプレートキャリア35は深絞り加工されている。ねじり振動吸振体50、例えば上述のように、キャリアディスク36に対して周方向にかつ半径方向に制限されて移動可能な調進機おもり52を備えた遠心力振り子51が、半径方向外側に、有利には軸線方向に離間されて半径方向において同じ高さでキャリアディスク36に配置されている。入力側のプレートキャリア34,35にプレート38,39が夫々取り付けられている。これらのプレート38,39は出力側の摩擦プレート40,41と軸線方向において交互に配置されており、軸線方向の加圧時には摩擦係合を形成する。出力側の摩擦プレート40,41はプレートキャリア42,43に取り付けられている。これらのプレートキャリア42,43は夫々、歯列46.47を備えたボス44,45によって、伝動装置入力軸48若しくはこの伝動装置入力軸48の周囲に配置されている、中空軸として形成されている伝動装置入力軸49と溶接により接合されているので、2つの伝動装置入力軸48,49に支承されてかつセンタリングされている。
【0022】
クラッチ装置1が組み付けられていない状態において、2つの湿式クラッチ28,29はクラッチボス37と共に構成ユニットとして形成されている。組付け後にクラッチボス37は転がり軸受53,54を介して伝動装置入力軸49に軸線方向に浮動に支承される。伝動装置入力軸49は転がり軸受55を介して、軸線方向にかつ半径方向に不動に、伝動装置ケーシング22において支承されている。
【0023】
クラッチボス37の浮動の支承は、2つのスラストワッシャ56,57により制限されている。このスラストワッシャ56はプラスチックから一体部品として形成されており、クラッチボス37の端面に挿入されている支持部分58を含み、潤滑油溝59が形成されている。ボス45はボス44に対して、転がり軸受60により軸線方向に接触していると共に回動可能に接触している。ボス44は転がり軸受61によりケーシング部分6に軸線方向に不動に回動可能に支持されるので、クラッチボス37はシムディスク(Shimmscheibe)67を介して軸線方向に支持されている。その結果、例えばシムディスク67により所定の遊びが調節される。軸受60,61に必要な軸線方向への予めの付勢は、軸線方向に有効なエネルギ貯蔵体45a、例えば波形ばねにより調節される。エネルギ貯蔵体45aは固定ディスク45bにより伝動装置入力軸49に支持される。段部63においてクラッチボス37に固定リング64を介して軸線方向に不動にシール金属薄板62が配置されており、シール金属薄板62により、反対方向にクラッチボス37はすくい管14に支持される。このすくい管14はまた、転がり軸受として形成されていてよいスラストワッシャ65によりケーシング部分7に軸線方向において支持される。シール金属薄板62とすくい管14との間に、軸線方向に有効なスラストワッシャ57が配置されている。ケーシング部分7へのクラッチボス37の作用に抗した、クラッチボス37の軸線方向に制限された移動がスラストワッシャ57に許容されるので、クラッチボス37は軸線方向に両方向でケーシング8に対して制限されて移動可能でありかつ浮動に支承されている。スラストワッシャ57はシール金属薄板62と噛み合ったキャリアディスク66と、このキャリアディスク66に不動に取り付けられたシムディスク67とから形成されている。このシムディスク67はすくい管14と噛み合ったスラストワッシャ68と接触する。
【0024】
2つの湿式クラッチ28,29は、圧力媒体により軸線方向に移動可能なピストン69,70により加圧される。これらのピストン69,70はプレート38若しくは39を軸線方向に摩擦プレート40若しくは41と共に端部プレート71,72に対して押し付けることで、摩擦係合を形成する。さらに圧力媒体は回動導入器(Drehdurchfuehrung)73,74を夫々介して供給管路75,76に導入されかつ圧力室77,78内へと適量、配分される。これによりピストン69,70は軸線方向に有効なエネルギ貯蔵体79,80の作用に抗して移動して、湿式クラッチ28,29は接している圧力媒体の圧力に応じて閉鎖される。圧力室77,78内の圧力が逃がされると、湿式クラッチはエネルギ貯蔵体79,80の弛緩により再び自動的に開放される。供給管路81,82は湿式クラッチ28,29、特に摩擦プレート40,41の摩擦パッドの冷却のために働く。摩擦パッドは特に湿式クラッチ28,29がスリップする条件下において、異常な熱ストレスにさらされている。配分された圧力媒体は摩擦プレート40,41を冷却して、半径方向外側に流れ、そこから圧力媒体はガイドピン83によって不動に伝動装置ケーシング22に接合されているすくい管14によりすくい取られ、排出管路84を介して伝動装置オイルパンに供給される。
【0025】
ねじり振動減衰器12と湿式クラッチ28,29の入力部分13との間には、摩擦装置85が設けられていてよい。さらに周方向に亘って分配されている、軸線方向に突出したプレートキャリア34のピン86により、摩擦リング87を加圧することができる。摩擦リング87はケーシング部分6に固定されている保持リング88によりセンタリングされており、例えば図示のように皿ばねであってよい、軸線方向に有効なエネルギ貯蔵体89によりケーシング部分6に対して緊締されている。付加的に又は択一的に摩擦装置85が伝動装置入力軸49にまだセンタリングされていない場合、摩擦装置85は最終組付け前には、ケーシング8における2つの湿式クラッチ28,29のセンタリング部として働く。
【0026】
図2に、図1に示した組立て式のプレートキャリア34を断面図にして詳細に示す。プレートキャリア34はフランジ部分13a、キャリアディスク36及びフランジ部分13aとキャリアディスク36との軸線方向の間に配置された、周方向に亘って分配された接合エレメント90から形成される。図示の実施の形態においては、接合エレメント90はあらかじめ曲げられた金属薄板部分91から形成されている。金属薄板部分91は軸線方向に延在しているリベットピン92,93を有しており、これらのリベットピン92,93は、フランジ部分13a若しくはキャリアディスク36における対応する開口94,95を通って案内されており、外側から上述のフランジ部分13a若しくはキャリアディスク36に対してリベット留めされている。周方向を向いている金属薄板部分91の端部は歯面96を形成するために、半径方向内側にエッジ付けされているか又は折り曲げられている。これにより金属薄板部分91の横断面において、プレート38が懸架されている、歯面輪郭が形成される。プレート38は懸架のために相補的な外側輪郭を有している。その結果、プレート38はプレートキャリア34においてセンタリングされており、プレートキャリア34に加わるトルクはプレート38に伝達される。出力側のプレートキャリア42に相対回動不能にかつ軸線方向に制限されて移動可能に懸架されている摩擦プレート40とプレート38は交互に積層されている。
【0027】
図3に、プレートキャリア35aの形式において、図1の深絞り加工されたプレートキャリア35に対して択一的な形態を組み立てた状態において示す。プレートキャリア35aは図2の接合エレメント90と同一に形成された接合エレメント98を有している。この接合エレメント98は端部プレート72aとキャリアディスク36aとの間においてリベット留めされている。さらに図3に、軸線方向に伸ばされたピン86を備えた接合エレメント90aを示す。この接合エレメント90aは、例えば複数の周方向位置において図2の接合エレメント90の代わりを担い、これによりプレートキャリア34(図1)の摩擦装置85への係合が可能になる。これにより、ピン86は摩擦リング87をクラッチ装置のケーシング8(図1)に対して周方向に連行するので、摩擦装置を制御する。
【0028】
図4に、ねじり振動減衰器12(図1)のエネルギ貯蔵体11のための連行体19と、図2のリベットピン92を介して接合エレメント90を収容するための開口94とを備えたフランジ部分13aの一部分を示す。開口94の横断面は多角形であり、本実施の形態においては、リベットピン92(図1)の方形の横断面に対して相補的である方形である。同様に各接合エレメント90(図2)は、図示の実施の形態においては、隣り合う2つのリベットピンを有しているので、接合エレメントごとに夫々、隣り合う少なくとも2つの開口94が設けられている。
【0029】
図5には、図1のプレート38と類似のプレート38aの一部分を示す。このプレート38aは、例えば鋼から製造されている。図1のクラッチ装置1の実施の形態に対してプレート38aは、半径方向外側の湿式クラッチ28のプレートキャリア34の接合エレメント90,90a及び/又は半径方向内側の湿式クラッチ29のプレートキャリア35の接合エレメント98とは異なる、段付きピン99から形成されている接合エレメント90bに懸架されている。さらにプレート38aには段付きピン99の数だけ、周方向に亘って分配された円弧状の切欠き100が設けられている。これによりプレート38aはプレートキャリア(図示せず)において段付きピン99を介してセンタリングされかつ連行される。プレート38aの接触面における、切欠き100aにより提供される図1〜4の接合エレメントに比べて小さい段付きピン99の接触面により、上述の接合エレメントの数と比べて段付きピン99の数は多くなっていて、図示の実施の形態においては24個である。
【0030】
図6に、図1〜4のプレート38の一部分を示す。プレート38には周方向に亘って分配された、接合エレメント90に対して相補的な切欠き100が設けられている。これらの切欠き100は夫々、半径方向外側に傾いて延びている接触面101を有している。これらの接触面101は金属薄板部分91の歯面96と共に周方向に形状接続を形成する。これによりプレート38の回動連行は接合エレメント90の回動加圧時にプレートキャリア(図示せず)により行われる。さらに、リベットピン92若しくはリベットピン93(図2)は、別方向から見た場合には、フランジ部分13aの開口94若しくはキャリアディスク36(図2,4)の開口95にリベット留めされている。
【0031】
図7〜9に、図1〜4において組み付けられた、つまりリベット留めされた状態において示されている接合エレメント90を、まだリベット留めされていな状態において3つの方向から示す。打抜き成形及び予め成形された金属薄板91から形成されている接合エレメント90は端面側の端部に夫々、リベット留めするための少なくとも2つのリベットピン92,93を有している。これらのリベットピン92,93は横断面において有利に、また上述のように方形に形成されている。本実施の形態においては、リベットピン92,93は平坦なベース面102から軸線方向に拡張されていて、ベース面102に対して歯面96が角度付けされて形成されている。
【0032】
図10〜12に、リベットピン92a,93aに比べて夫々拡幅されたリベットピン103,104によってリベット留めされた状態における、図7〜9に示した接合エレメント90に対して択一的な接合エレメント90cの実施の形態を3つの方向から見て示す。図7〜9の接合エレメント90とは異なり、リベットピン92a,93aは歯面96に配置されているので、比較的大きな間隔を互いに夫々有している。この広幅な間隔により、接合エレメント90cのフランジ部分13a若しくはキャリアディスク36における固定は高い安定性を持って達成することができる。
【0033】
図13に、図1〜3の接合エレメント90aをリベット留めした状態において示す。図1〜3の摩擦装置85の加圧及び制御のためのピン86は、歯面96から軸線方向に拡張されている。
【0034】
図14及び図15に、両側に配置されたリベットピン92b,93bによってリベット留めされていない状態若しくはリベット留めされた状態における図5の段付きピン99、及びリベット留めされた状態におけるリベットヘッド103a,104aを示す。この段付きピン99は、有利には切削加工されるので、リベットピン92b,93bは横断面において円形に形成されている。
【符号の説明】
【0035】
1 クラッチ装置、 2 回転軸線、 6 ケーシング部分、 7 ケーシング部分、 8 ケーシング、 11 エネルギ貯蔵体、 12 ねじり振動減衰器、 13 入力部分、 13a フランジ部分、 14 すくい管、 16 環状フランジ部分、 17 連行体、 18 連行体、 19 連行体、 20 クランクシャフト、 21 駆動金属薄板、 22 伝動装置ケーシング、 23 転がり軸受、 24 軸線方向の突設部、 25 歯付きリム、 26 シールディスク、 27 シール、 28 湿式クラッチ、 29 湿式クラッチ、 30 円弧ばね、 31 円弧ばね、 32 段部、 33 磨耗保護シェル、 34 プレートキャリア、 35 プレートキャリア、 35a プレートキャリア、 36 キャリアディスク、 37 クラッチボス、 38 プレート、 38a プレート、 39 プレート、 40 摩擦プレート、 41 摩擦プレート、 42 プレートキャリア、 43 プレートキャリア、 44 ボス、 45 ボス、 45a エネルギ貯蔵体、 45b 固定ディスク、 46 歯列、 47 歯列、 48 伝動装置入力軸、 49 伝動装置入力軸、 50 ねじり振動吸振器、 51 遠心力振り子、 52 調速機おもり、 53 転がり軸受、 54 転がり軸受、 55 転がり軸受、 56 スラストワッシャ、 57 スラストワッシャ、 58 キャリア部分、 59 潤滑油溝、 60 転がり軸受、 61 転がり軸受、 62 シール金属薄板、 63 段部、 64 固定リング、 65 スラストワッシャ、 66 キャリア部分、 67 シムプレート、 68 スラストワッシャ、 69 ピストン、 70 ピストン、 71 端部プレート、 72 端部プレート、 72a 端部プレート、 73 回動導入器、 74 回動導入器、 75 供給管路、 76 供給管路、 77 圧力室、 78 圧力室、 79 エネルギ貯蔵体、 80 エネルギ貯蔵体、 81 供給管路、 82 供給管路、 83 ガイドピン、 84 排出管路、 85 摩擦装置、 86 ピン、 87 摩擦リング、 88 保持リング、 89 エネルギ貯蔵体、 90 接合エレメント、 90a 接合エレメント、 90b 接合エレメント、 90c 接合エレメント、 91 金属薄板部分、 92 リベットピン、 92a リベットピン、 92b リベットピン、 93 リベットピン、 93b リベットピン、 94 開口、 95 開口、 96 歯面、 97 外側輪郭、 98 接合エレメント、 99 段付きピン、 100 切欠き、 100a 切欠き、 101 接触面、 102 ベース面、 103 リベットヘッド、 103a リベットヘッド、 104 リベットヘッド、 104a リベットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット及び該駆動ユニットの下流側に配置されている伝動装置を備えたパワートレインのためのクラッチ装置(1)であって、半径方向に重畳して配置されていて、入力側及び出力側のプレートキャリア(34,35,35a,42,43)に取り付けられ、軸線方向に交互に配置されているプレート(38,38a,39)及び摩擦プレート(40,41)を有する、前記駆動ユニットによって駆動されるケーシング(8)内に配置されている少なくとも1つの湿式クラッチ(28,29)を備えている、パワートレインのためのクラッチ装置において、
前記入力側のプレートキャリア(34,35)はクラッチボス(37)に不動に取り付けられているキャリアディスク(36)に不動に接合されており、前記キャリアディスク(36)にねじり振動吸振器(50)が配置されていることを特徴とする、パワートレインのためのクラッチ装置。
【請求項2】
前記入力側のプレートキャリア(34,35a)が組み立てられていることを特徴とする、請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記プレートキャリア(34,35a)は周方向に亘って分配された接合エレメント(90,90a,90b,90c,98)から組み立てられており、該接合エレメント(90,90a,90b,90c,98)は少なくとも1つの湿式クラッチ(28,29)のフランジ部分(13a)として形成された入力部分(13)を、軸線方向に離間して遊びなしでキャリアディスク(36)に接合していることを特徴とする、請求項2記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記接合エレメント(90,90a,90c,98)は端部側に夫々、周方向に互いに隣り合う少なくとも2つのリベットピン(92,92a,93,93a)を有していることを特徴とする、請求項3記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記接合エレメント(90,90a,90b,90c,98)は前記フランジ部分(13a)及び/又はキャリアディスク(36)にリベット留めするために、多角形の横断面を備えた前記リベットピン(92,92a,93,93a)を有しており、該リベットピン(92,92a,93,93a)は、前記フランジ部分(13a)若しくはキャリアディスク(36)における前記リベットピン(92,92a,93,93a)に対して相補的に設けられている開口(94,95)に貫通して係合し、かつ、前記接合エレメント(90,90a,90c,98)とは反対の前記フランジ部分(13a)若しくは前記キャリアディスク(36)の側に夫々リベット留めされることを特徴とする、請求項3又は4記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記フランジ部分(13a)は少なくとも1つの湿式クラッチ(28)の端部プレート(71)を形成することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項7】
前記ケーシング(8)と少なくとも1つの湿式クラッチ(28,29)との間において有効なねじり振動減衰器(12)が、前記接合エレメント(90,90a,90b,90c,98)を介して前記ねじり振動吸振器(50)に並列に接続されていることを特徴とする、請求項3から6までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項8】
1つの接合エレメント(90a)の少なくとも1つのピン(86)が、前記ケーシング(8)に向かって軸線方向に拡張されており、かつ、前記ねじり振動減衰器(12)に並列に接続されている摩擦装置(85)を制御することを特徴とする、請求項7記載のクラッチ装置。
【請求項9】
重畳して配置されている2つの前記湿式クラッチ(28,29)が設けられており、少なくとも1つの前記湿式クラッチ(28,29)は組立て式のプレートキャリア(34,35a)を有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項10】
前記ねじり振動吸振器(50)は遠心力振り子(51)であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−515308(P2012−515308A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545623(P2011−545623)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001810
【国際公開番号】WO2010/081455
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】