説明

クランパおよび水室内作業装置

【課題】管材を安定的にクランプ保持できるクランパおよびこのクランパを備える水室内作業装置を提供すること。
【解決手段】このクランパ23は、挿入部2311aを管材に挿入して管材をクランプするクランプ機構231と、クランプ機構231を挿入部2311aの挿入方向に昇降させる昇降機構232とを備えている。また、クランプ機構231が、挿入部2311aを有するクランプ本体2311と、挿入部2311aから突出して管材に摩擦接触すると共に挿入部2311aの挿入方向に進退可能なコッタ2312と、挿入部2311aの挿入方向逆側に牽引されたときにコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させるピストンロッド2313と、クランプ本体2311に一体化されてピストンロッド2313を牽引するロッドシリンダ2315とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランパおよび水室内作業装置に関し、さらに詳しくは、管材を安定的にクランプ保持できるクランパおよびこのクランパを備える水室内作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの蒸気発生器では、水室内作業装置が用いられて水室内作業が行われている。また、近年では、作業用のツールを先端に取り付けたマニピュレータを備える水室内作業装置が提案されている。また、水室の床面が球面形状を有することから、水室内作業装置の作業性を高めるために、かかる室内作業装置を水室の管板面から懸垂状態で吊り下げて設置することが提案されている。このような水室内作業装置として、特許文献1に記載される技術が知られている。
【0003】
ここで、水室の管板面には、複数の伝熱管が開口して配列されている。そこで、かかる水室内作業装置では、先端部を伝熱管に挿入して伝熱管をクランプ保持するクランパを設け、このクランパにより水室内作業装置を管板面に固定する構成が提案されている。かかるクランパを有する水室内作業装置として、特許文献2に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183278号公報
【特許文献2】実用新案登録第2503172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の水室内作業装置では、マニピュレータの重量が嵩むと共に、水室内作業時にてマニピュレータの動作により多様な力およびモーメントがクランプ機構に作用する。このため、クランパが安定的に伝熱管をクランプ保持できることが要求される。
【0006】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、管材を安定的にクランプ保持できるクランパおよびこのクランパを備える水室内作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかるクランパは、挿入部を前記管材に挿入して前記管材をクランプするクランプ機構と、前記クランプ機構を前記挿入部の挿入方向に昇降させる昇降機構とを備えるクランパであって、前記クランプ機構が、前記挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記管材に摩擦接触すると共に前記挿入部の挿入方向に進退可能に配置されるコッタと、前記挿入部の挿入方向逆側に牽引されたときに前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを牽引するロッドシリンダとを備えることを特徴とする。
【0008】
このクランパでは、前記昇降機構が前記クランプ機構を上昇させて前記クランプ機構の前記挿入部を管材に挿入させる。そして、ロッドシリンダがピストンロッドを挿入部の挿入方向逆側(後端部側)に牽引すると、コッタがピストンロッドに押圧されて挿入部から突出する。すると、コッタが管材の内周面に押圧状態で摩擦接触して管材をクランプする。これにより、管材を安定的にクランプできる利点がある。
【0009】
また、この発明にかかるクランパは、前記ピストンロッドが前記ロッドシリンダを貫通して前記ロッドシリンダの後端側に突出する。
【0010】
このクランパでは、管材からのアンクランプ時にて、ピストンロッドがコッタに嵌り込んで抜けないときに、外部からピストンロッドの後端部を叩いてピストンロッドをコッタから外し得る。これにより、非常時のアンクランプが可能となる利点がある。
【0011】
また、この発明にかかるクランパは、前記ロッドシリンダの流体室のうち作動流体の加圧により前記ピストンロッドを牽引する側の流体室に配管を介して接続されると共に前記流体室の作動流体を加圧する加圧装置と、前記配管上に配置される逆止弁と、前記流体室の作動流体を放出するリリースバルブとを備える。
【0012】
このクランパでは、加圧装置が流体室の作動流体を加圧することにより、ロッドシリンダが下降して、コッタが管材をクランプ保持する。このとき、リリースバルブが閉止状態にあり、且つ、逆止弁が流体室からの作動流体の逆流を防止する。したがって、水室内作業時(管材のクランプ時)にて加圧装置が停止しても、流体室の流体圧が保持されて、管材のクランプ状態が適正に維持される。これにより、配管からエア漏れが生じたときのフェールセーフが実現される。
【0013】
また、この発明にかかるクランパは、前記クランプ機構が前記コッタを縮径させるコッタ縮径構造を有する。
【0014】
このクランパでは、クランパのアンクランプ時にて、コッタを縮径させて挿入部に収納できるので、挿入部を管材から容易に引き抜くことができる利点がある。
【0015】
また、この発明にかかるクランパは、前記コッタ縮径構造が、前記コッタに形成されたテーパ面と、前記テーパ面を前記クランプ本体に付勢させる弾性部材とから成ると共に、前記コッタを前記弾性部材からの付勢力によりテーパ面に沿って摺動させて縮径させる構造を有する。
【0016】
このクランパでは、コッタのテーパ面と弾性部材とから成る簡易な構成にてコッタ縮径構造を実現できる利点がある。
【0017】
また、この発明にかかるクランパは、前記コッタ縮径構造が前記コッタの外周に嵌め合わされた環状の弾性部材から成る。
【0018】
このクランパでは、環状の弾性部材から成る簡易な構成にてコッタ縮径構造を実現できる利点がある。
【0019】
また、この発明にかかる水室内作業装置は、上記のいずれか一つに記載のクランパを備える。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかるクランパでは、昇降機構がクランプ機構を上昇させてクランプ機構の挿入部を管材に挿入させる。そして、ロッドシリンダがピストンロッドを挿入部の挿入方向逆側(後端部側)に牽引すると、ピストンロッドがコッタを押圧して挿入部から突出させる。すると、コッタが管材の内周面に押圧状態で摩擦接触して管材をクランプする。これにより、管材を安定的にクランプできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、この発明の実施例にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【図2】図2は、図1に記載したクランパのクランプ工程を示す説明図である。
【図3】図3は、図1に記載したクランパのアンクランプ工程を示す説明図である。
【図4】図4は、図1に記載したクランパの具体例を示す模式図である。
【図5】図5は、図4に記載したクランパの作用を示す説明図である。
【図6】図6は、図1に記載したクランパにおけるコッタ縮径構造を示す説明図である。
【図7】図7は、図1に記載したクランパにおけるコッタ縮径構造を示す説明図である。
【図8】図8は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図9】図9は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図10】図10は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図11】図11は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図12】図12は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図13】図13は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図14】図14は、図11に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図15】図15は、蒸気発生器の水室内作業装置を示す斜視図である。
【図16】図16は、図15に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。
【図17】図17は、図15に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。
【図18】図18は、図16に記載したベースの設置状態を示す説明図である。
【図19】図19は、図16に記載したベースの設置状態を示す説明図である。
【図20】図20は、ベースの設置工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0023】
[水室内作業装置]
このクランパ23は、例えば、原子力プラントの蒸気発生器130にて水室内作業を行う水室内作業装置1に適用される(図15参照)。
【0024】
水室内作業装置1は、蒸気発生器130の水室131に搬入されて設置され、遠隔操作されて水室内作業を行う装置である。この水室内作業装置1は、ベース2と、中間リンク3と、マニピュレータ4と、ツール5とを備える。ベース2は、水室内作業装置1のベースとなる装置であり、水室131の管板面137aに設置される。このベース2は、管板面137aの伝熱管132をクランプ保持して管板面137aに固定される。中間リンク3は、ベース2とマニピュレータ4とを連結して、マニピュレータ4の基準軸をベース2(管板面137a)に対して傾斜させるための部品である。マニピュレータ4は、多軸マニピュレータであり、ベース2および中間リンク3を介して水室131の管板面137aから吊り下げられて設置される。このマニピュレータ4は、遠隔操作により、その姿勢を変化させ得る。ツール5は、所定の水室131内作業に対応したツールであり、マニピュレータ4の先端部に取り付けられる。このツール5は、例えば、水室内の保全作業に用いられる保全作業ツールであり、検査ツール、切削ツール、溶接ツールなどにより構成される。
【0025】
この水室内作業装置1では、マニピュレータ4が水室131の管板面137aから懸垂状態で吊り下げられ、この状態にて、旋回しつつ姿勢を変化させることにより、ツール5を移動させて水室内作業を行う。これにより、管板面137aのベース2を起点とした広範囲での水室内作業を実現できる。また、水室内作業装置1は、ベース2が後述する管板歩行機能を有することにより、管板面137aに沿って水室131内を移動できる。これにより、水室131内での作業領域が拡大されて、水室131内作業の作業性が向上する。なお、水室131内作業には、例えば、入口管台135や出口管台136、伝熱管132、仕切板134と管板137との溶接作業、仕切板134と水室鏡部との溶接部の検査作業あるいは補修作業などが含まれる。
【0026】
[ベース]
図16および図17は、図15に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。図18および図19は、図16に記載したベースの設置状態を示す説明図である。これらの図において、図16および図18は、ベースがすべてのウイングを開いた状態を示し、図17および図19は、ベースがすべてのウイングを閉じた状態を示している。
【0027】
このベース2は、ベース本体21と、4つのウイング22a、22bと、複数のクランパ23a、23bとを有する。ベース本体21は、枠型形状のケーシングである。4つのウイング22a、22bは、ベース本体21に挿入されて設置される。これらのウイング22a、22bは、例えば、伸縮式のはしご機構により駆動されて、ベース本体21の設置位置に対して相互に直交する方向にスライド変位できる(図16および図17参照)。また、4つのウイング22a、22bは、相互に異なる方向にスライド変位でき、また、相互に独立して駆動される。クランパ23a、23bは、先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持する機構である。例えば、この実施の形態では、3つを一組とするクランパ23a(23b)が各ウイング22a(22b)の端部にそれぞれ設置されている。また、これらのクランパ23a(23b)が管板面137aにおける伝熱管132の設置間隔に合わせて一列に揃えられて配置されている。なお、クランパ23a、23bの具体的な構成については、後述する。
【0028】
このベース2では、各クランパ23a、23bが先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持することにより、ベース2が管板面137aから懸垂した状態で固定される(図18および図19参照)。また、ベース2は、ウイング22a(22b)を伸縮させてクランパ23a(23b)の位置をスライド変位させ、また、伝熱管132に対するクランパ23a(23b)のクランプ位置を順次切り替えることにより、管板面137aに沿って移動できる(管板歩行)(図示省略)。なお、かかるベース2の管板歩行にかかる歩行ロジックは、当業者自明の範囲内にて任意のものが採用され得る。
【実施例】
【0029】
[ベースのクランパ]
図1は、この発明の実施例にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【0030】
なお、この実施の形態では、伝熱管132側(水室131の管板面137a側)を上方あるいはクランパの先端部側と呼び、逆側(水室131の床面側)を下方あるいはクランパの後端部側と呼ぶ。
【0031】
このクランパ23は、先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプする機構であり、例えば、上記したベース2のクランパ23a、23bとして採用され得る。このクランパ23は、クランプ機構231と、昇降機構232とを備える。
【0032】
クランプ機構231は、先端部を伝熱管132に挿入して摩擦接触により伝熱管132をクランプする機構であり、クランプ本体2311と、コッタ2312と、ピストンロッド2313と、弾性体2314と、ロッドシリンダ2315とを有する。
【0033】
クランプ本体2311は、クランプ機構231の本体を構成する。このクランプ本体2311は、伝熱管132に挿入可能な挿入部2311aを軸方向の先端部に有する。また、クランプ本体2311は、挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて伝熱管132の管板面137aに当接可能な当接部2311bを有する。例えば、この実施例では、クランプ本体2311が長尺な円筒部材から成り、その一方の端部に挿入部2311aを有している。また、クランプ本体2311が挿入部2311aの付け根にフランジ状の当接部2311bを有し、挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて、この当接部2311bを伝熱管132の開口縁部132aに面接触させ得る。また、クランプ本体2311の挿入部2311aには、コッタ2312の設置数に対応するスリット2311cが形成される。
【0034】
コッタ2312は、伝熱管132のクランプ時にて伝熱管132の内周面に押圧して摩擦接触する部材であり、例えば、金属材などから成る。このコッタ2312は、クランプ本体2311に設置され、クランプ本体2311の挿入部2311aから突出可能かつ挿入部2311aに収納可能に配置される。また、コッタ2312は、挿入部2311aに対してクランプ本体2311の軸方向に進退可能に配置される。例えば、この実施例では、クランプ本体2311の挿入部2311aにスリット2311cが形成され、このスリット2311cにコッタ2312が差し込まれて配置されている。また、コッタ2312がスリット2311c内にてクランプ本体2311の径方向および軸方向に進退可能に配置されている。
【0035】
ピストンロッド2313は、コッタ2312を駆動するためのロッドであり、クランプ本体2311に挿入されてクランプ本体2311の軸方向に進退可能に配置される。このピストンロッド2313は、テーパ形状の先端部を有し、そのテーパ面2313aをクランプ本体2311の後端部側に向けつつコッタ2312に当接させて配置される。また、ピストンロッド2313は、クランプ本体2311の後端部側に牽引されたときに、そのテーパ面2313aにてコッタ2312の内周面を押圧してクランプ本体2311から突出させる。また、ピストンロッド2313は、その後端部にピストン部2313bを有する。
【0036】
弾性体2314は、コッタ2312をスリット2311cの上部に配置するための部材であり、例えば、コイルバネあるいはゴム管から成る。この弾性体2314は、クランプ本体2311内に挿入され、クランプ本体2311に支持されてコッタ2312の後端部に付勢する。この弾性体2314の付勢力により、コッタ2312がスリット2311cの上部で保持される。
【0037】
ロッドシリンダ2315は、ピストンロッド2313(ピストン部2313b)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。このロッドシリンダ2315は、クランプ本体2311の後端部に一体形成され、ピストンロッド2313を駆動してクランプ本体2311の軸方向に進退変位させる。また、ロッドシリンダ2315には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンロッド2313が駆動される。例えば、この実施例では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313のピストン部2313bを介して第一流体室2315aと第二流体室2315bとに区画されている。そして、第一流体室2315aの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引される。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押圧して、コッタ2312がクランプ本体2311から突出する。また、第二流体室2315bの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれる。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312への押圧状態を解除して、コッタ2312がクランプ本体2311に収納される。
【0038】
昇降機構232は、クランプ機構231を昇降させる機構であり、昇降シリンダ2321を有する。昇降シリンダ2321は、クランプ本体2311(ピストン部2311d)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。また、昇降シリンダ2321は、クランプ機構231のロッドシリンダ2315に対して直列に連結される。また、昇降シリンダ2321は、ベース2のウイング22a(22b)に固定される。これにより、クランパ23が昇降シリンダ2321を介してベース2のウイング22a(22b)に固定されて保持される。この昇降シリンダ2321には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンであるクランプ本体2311が進退変位してクランプ機構231が昇降する。例えば、この実施例では、昇降シリンダ2321がクランプ本体2311のピストン部2311dを介して第一流体室2321aと第二流体室2321bとに区画されている。そして、第一流体室2321aの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が先端部側に押し込まれて、クランプ本体2311が上昇する。また、第二流体室2321bの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が後端部側に牽引されて、クランプ本体2311が下降する。
【0039】
[伝熱管のクランプ工程]
図20は、ベース2の設置工程を示す説明図である。図2は、図1に記載したクランパのクランプ工程を示す説明図である。これらの図において、図20は、ベース2と中間リンク3との組立体を水室131に搬入して管板面137aに設置する工程(ベース設置工程)を示しており、図2は、このベース設置工程にて、ベース2のクランパ23が伝熱管132をクランプ保持する様子を示している。
【0040】
ベース2の設置工程では、一対のベース搬入取付治具11が水室131の管板面137aに取り付けられ、ベース2と中間リンク3との前記組立体がマンホール138から水室131内に搬入される(図20参照)。そして、ベース搬入取付治具11が当該組立体をワイヤまたはベルト12で管板面137aまで吊り上げて保持する。その後に、ベース2がクランパ23a、23bの先端部(クランプ機構231の挿入部2311a)を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持する。
【0041】
伝熱管132へのクランパ23のクランプ工程では、まず、初期状態として、クランパ23が先端部(クランプ機構231の挿入部2311a)を伝熱管132側に向けつつ軸方向を鉛直に立てて配置される(図2(a)参照)。また、クランパ23が昇降機構232の昇降シリンダ2321にてベース2のウイング22a(22b)に固定保持されている。また、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれた状態にあり、コッタ2312が縮径してクランプ本体2311のスリット2311c内に収納されている。また、弾性体2314が伸びた状態にあり、クランプ本体2311のスリット2311c内にて、コッタ2312を先端部側に押し上げている。また、昇降機構232がクランプ機構231を下降させた状態にあり、挿入部2311aが伝熱管132の手前に位置している。
【0042】
次に、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第一流体室2321aの作動流体を加圧してクランプ機構231を上昇させる(図2(b)参照)。これにより、クランプ機構231の挿入部2311aが伝熱管132に挿入される。このとき、昇降シリンダ2321がベース本体21側(ウイング22a(22b))に保持され、このベース本体21がベース搬入取付治具11のワイヤ12により吊り下げられて保持されるので(図20参照)、昇降シリンダ2321の高さ位置が一定に維持される。また、この状態では、通常、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0043】
次に、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引されて下降し、そのテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312がクランプ本体2311のスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧されて摩擦接触する。これにより、コッタ2312が伝熱管132をクランプ保持する。
【0044】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図2(d)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランプ本体2311がピストンロッド2313を後端部側に牽引して、クランパ23全体が上方に持ち上がる。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、クランプ機構231の当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。具体的には、ロッドシリンダ2315と、このロッドシリンダ2315に一体化されているクランプ本体2311と、このクランプ本体2311に係合する昇降シリンダ2321と、この昇降シリンダ2321に連結されたベース2全体とが、ロッドシリンダ2315の流体圧により牽引されて持ち上がる。また、このとき、クランプ本体2311の軸方向変位により、スリット2311cの位置がコッタ2312に対してクランプ本体2311の先端部側に移動する。また、クランプ本体2311とコッタ2312との間にある弾性体2314が圧縮変形する。
【0045】
そして、ベース2に設置された複数のクランパ23(23a、23b)が上記のように伝熱管132をクランプ保持することにより、ベース2が管板面137aに対して懸垂状態で固定される(図20参照)。このとき、各クランパ23が当接部2311bを伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)に密着させて伝熱管132をクランプ保持するので(図2(d)参照)、ベース2が管板面137aにしっかりと固定される。これにより、水室内作業時にて、水室内作業装置1が管板面137aに安定的に設置される。
【0046】
[伝熱管のアンクランプ工程]
図3は、図1に記載したクランパのアンクランプ工程を示す説明図である。同図は、水室内作業装置1を水室131から撤去する工程(撤去工程)にて、クランパ23a、23bが伝熱管132をアンクランプする様子を示している。
【0047】
伝熱管132からのクランパ23のアンクランプ時には、クランパ23が伝熱管132をクランプ保持している状態(図3(e)参照)にて、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の第二流体室2315bの作動流体を加圧し、第一流体室2315aの作動流体を減圧する(図3(f)参照)。すると、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し上げられ、コッタ2312が縮径してクランプ本体2311内に収納される。また、弾性体2314の圧縮状態が解除されて、弾性体2314が復元する。これにより、クランプ本体2311が伝熱管132から引き抜き可能となる。
【0048】
次に、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第二流体室2321bの作動流体を加圧し、第一流体室2321aの作動流体を減圧して、クランプ機構231を下降させる(図3(g)参照)。これにより、クランプ本体2311の挿入部2311aが伝熱管132から引き抜かれて、伝熱管132のクランプ保持が解除される。
【0049】
そして、ベース2に設置された複数のクランパ23(22a、23b)が伝熱管132のクランプ保持を解除することにより、ベース2が管板面137aから取り外し可能となる。また、この状態では、ベース2がベース搬入取付治具11のワイヤ12により吊り下げられて保持されるので、ベース2の落下が防止される(図20参照)。
【0050】
なお、この実施例では、クランパ23が伝熱管132をクランプ保持している状態にて、ピストンロッド2313がロッドシリンダ2315を貫通してロッドシリンダ2315の後端側に突出している(図3(e)参照)。かかる構成では、伝熱管132のアンクランプ時にて、ピストンロッド2313がコッタ2312に嵌り込んで抜けないときに、外部からピストンロッド2313の後端部を叩くことにより、ピストンロッド2313をコッタ2312から外し得る。これにより、非常時のアンクランプが可能となる。
【0051】
[ロッドシリンダの流体圧制御機構]
図4は、図1に記載したクランパの具体例を示す模式図である。図5は、図4に記載したクランパの作用を示す説明図である。これらの図は、ロッドシリンダ2315の流体圧制御機構の構成(図4)および作用(図5)を示している。
【0052】
図4に示すように、このクランパ23では、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の流体圧を制御する流体圧制御機構2316を有する。この流体圧制御機構2316は、加圧ポンプ2316aと、逆止弁2316bと、リリースバルブ2316cとから成り、これらとロッドシリンダ2315とが配管2316d〜2316fを介して接続されて構成される。加圧ポンプ2316aは、ロッドシリンダ2315の作動流体(例えば、空気)を加圧するためのポンプである。この加圧ポンプ2316aは、配管2316dを介してロッドシリンダ2315の第一流体室2315aに接続され、また、配管2316eを介してロッドシリンダ2315の第二流体室2315bに接続される。また、加圧ポンプ2316aは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315aおよび第二流体室2315bの作動流体を選択的に加圧できる。逆止弁2316bは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315a側の配管2316d上に配置されて、第一流体室2315aからの作動流体の逆流を防止する。リリースバルブ2316cは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を外部にリリースするバルブであり、第一流体室2315aに取り付けられて設置される。このリリースバルブ2316cは、配管2316fを介して加圧ポンプ2316aに接続され、加圧ポンプ2316aにより駆動されて開閉動作する。
【0053】
伝熱管132のクランプ工程では、加圧ポンプ2316aがロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図5(a)参照)。このとき、リリースバルブ2316cが閉止状態にある。したがって、第一流体室2315aの流体圧が上昇して、ピストンロッド2313が下降する。これにより、コッタ2312が拡径して伝熱管132をクランプ保持する(図5(b)参照)。このとき、逆止弁2316bが第一流体室2315aからの作動流体の逆流を防止する。したがって、加圧ポンプ2316aが停止しても、第一流体室2315aの流体圧が保持されて、伝熱管132のクランプ状態が適正に維持される。この逆止弁2316bにより、例えば、水室内作業時にて加圧ポンプ2316aと第一流体室2315aとを接続する配管2316dからエア漏れが生じたときに、伝熱管132のクランプ状態を維持するためのフェールセーフが実現される。
【0054】
伝熱管132のアンクランプ工程では、加圧ポンプ2316aが第二流体室2315bの作動流体を加圧し、同時に、リリースバルブ2316cが開放されて第一流体室2315aの作動流体を減圧する(図5(c)参照)。同時に、第二流体室2315bの流体圧が上昇して、ピストンロッド2313が上昇する。これにより、コッタ2312が縮径して伝熱管132のクランプ状態が解除される(図5(d)参照)。なお、この実施例では、空気がロッドシリンダ2315の作動流体として用いられている。このため、第一流体室2315aの作動流体がリリースバルブ2316cからそのまま水室131内に放出されている。
【0055】
[コッタ縮径構造]
図6および図7は、図1に記載したクランパのコッタ縮径構造を示す説明図である。これらの図は、クランパ23のアンクランプ工程にて、クランプ機構231のコッタ2312を縮径させるための構造を示している。
【0056】
図6に示すクランパ23では、コッタ2312が、テーパ面2312aを有し、クランプ本体2311のスリット2311c内にて、このテーパ面2312aをクランプ本体2311の先端部側に向けて配置されている。また、弾性体2314がクランプ本体2311に支持されてコッタ2312の後端部に付勢している。この弾性体2314の付勢力により、コッタ2312がテーパ面2312aをスリット2311cの先端部側の壁面に押圧している。
【0057】
伝熱管132のクランプ状態(図3(e)参照)では、ピストンロッド2313が牽引されて下降した状態にあり、コッタ2312が拡径してクランプ本体2311のスリット2311cから突出している(図6参照)。このとき、弾性体2314が圧縮状態にある。次に、伝熱管132のアンクランプ工程にて、ピストンロッド2313が上昇すると(図3(f)参照)、弾性体2314がコッタ2312をスリット2311cの先端部側の壁面に押圧するので(図6参照)、コッタ2312がテーパ面2312aに沿ってスリット2311c内を摺動して縮径する(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0058】
図7に示すクランパ23では、コッタ2312が環状の弾性部材2312bを有している。この弾性部材2312bは、例えば、環状の板バネ、ゴム製のOリングから成り、コッタ2312の外周面(径方向外側)に嵌め合わされて、コッタ2312に径方向内側への弾性力を付与している。
【0059】
伝熱管132のクランプ状態(図3(e)参照)では、ピストンロッド2313が牽引されて下降した状態にあり、コッタ2312が拡径してクランプ本体2311のスリット2311cから突出している(図7参照)。このとき、弾性部材2312bは、コッタ2312の拡径により伸びた状態にある。次に、伝熱管132のアンクランプ工程にて、ピストンロッド2313が上昇すると(図3(f)参照)、弾性部材2312bが縮んでコッタ2312を縮径させる(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0060】
[コッタ縮径構造の変形例1]
図8〜図10は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例1を示す説明図である。これらの図は、コッタ縮径構造の要部拡大図(図8)、クランプ工程における作用説明図(図9)およびアンクランプ工程における作用説明図(図10)をそれぞれ示している。
【0061】
図8に示すクランパ23は、図6に示すクランパ23と比較して、以下の相異点を有する。すなわち、クランプ本体2311の挿入部2311aがクランプ本体2311に対して別体構造を有している。具体的には、挿入部2311aが、スリット2311cを有する筒状部材から成り、クランプ本体2311の先端部に挿入されて軸方向に進退可能に配置されている。また、コッタ2312が、挿入部2311aのスリット2311cに差し込まれて、スリット2311c内を挿入部2311aの軸方向および径方向に進退可能に配置されている。また、コッタ2312が、テーパ面2312aを有し、このテーパ面2312aをクランプ本体2311の先端部側に向けて配置されている。また、コッタ2312の後端部側に、コッタ2312を支持するための支持部材2317が設けられている。この支持部材2317は、フランジ形状の先端部を有する筒状部材であり、その先端部をコッタ2312の後端部に当接させて配置されている。また、支持部材2317は、挿入部2311aに挿入されて、スリット2311c内を挿入部2311aの軸方向に進退可能に配置されている。また、支持部材2317の後端部とクランプ本体2311との間に、弾性体2318が挟み込まれて配置されている。この弾性体2318は、例えば、コイルバネあるいはゴム管から成り、クランプ本体2311に支持されて支持部材2317の後端部に付勢している。この弾性体2318の付勢力により、支持部材2317がコッタ2312をスリット2311cの先端部側の壁面に押圧した状態で保持され、また、挿入部2311aがクランプ本体2311の先端部から軸方向に突出した状態で保持されている。
【0062】
クランプ工程では、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させて、クランプ機構231が挿入部2311aを伝熱管132に挿入する(図9(a)および図2(b)参照)。このとき、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0063】
次に、クランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引して下降させる(図9(b)および図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312が挿入部2311aのスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧状態で摩擦接触する。このとき、スリット2311c内にて、支持部材2317がクランプ本体2311の後端部側に変位することにより、コッタ2312がそのテーパ面2312aに沿って摺動変位できる。
【0064】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引する(図9(c)および図2(d)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランパ23全体が上方に持ち上がる。このとき、クランプ本体2311と挿入部2311aとが別体構造を有するので、クランプ本体2311が挿入部2311aに対して軸方向の先端部側にスライド変位する。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。また、クランプ本体2311の軸方向変位により、クランプ本体2311と支持部材2317との間にある弾性体2318が圧縮変形する。
【0065】
アンクランプ工程では、クランパ23が伝熱管132へのクランプ状態にて、ピストンロッド2313が上昇すると、ピストンロッド2313からコッタ2312への押圧力が解除される(図10(d)および(e)参照)。すると、支持部材2317が弾性体2318の付勢力によりコッタ2312をクランプ本体2311(スリット2311cの先端部側の壁面)に押圧しているので、コッタ2312がテーパ面2312aに沿ってスリット2311c内を摺動して縮径する。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0066】
[コッタ縮径構造の変形例2]
図11〜図13は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例2を示す説明図である。これらの図は、コッタ縮径構造の要部拡大図(図11)、クランプ工程における作用説明図(図12)およびアンクランプ工程における作用説明図(図13)をそれぞれ示している。
【0067】
図11に示すクランパ23は、図7に示すクランパ23と比較して、以下の相異点を有する。すなわち、クランプ本体2311の挿入部2311aがクランプ本体2311に対して別体構造を有している。具体的には、挿入部2311aが、スリット2311cを有する筒状部材から成り、クランプ本体2311の先端部に挿入されて軸方向に進退可能に配置されている。また、挿入部2311aとクランプ本体2311との間に、弾性体2318が挟み込まれて配置されている。この弾性体2318が挿入部2311aに付勢することにより、挿入部2311aがクランプ本体2311の先端部から軸方向に突出した状態で保持されている。また、コッタ2312が、挿入部2311aのスリット2311cに差し込まれ、スリット2311c内を挿入部2311aの径方向にのみ進退可能に配置されている。そして、このコッタ2312の外周面(径方向外側)に、コッタ2312を縮径させるための環状の弾性部材2312bが嵌め合わされている。
【0068】
クランプ工程では、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させて、クランプ機構231が挿入部2311aを伝熱管132に挿入する(図12(a)および図2(b)参照)。このとき、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0069】
次に、クランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引して下降させる(図12(b)および図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312が挿入部2311aのスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧状態で摩擦接触する。
【0070】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引する(図12(c)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランパ23全体が上方に持ち上がる。また、クランプ本体2311と挿入部2311aとが別体構造を有するので、クランプ本体2311が挿入部2311aに対してスライド変位する。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。また、クランプ本体2311の軸方向変位により、クランプ本体2311と挿入部2311aとの間にある弾性体2318が圧縮変形する。
【0071】
アンクランプ工程では、クランパ23が伝熱管132へのクランプ状態にて、ピストンロッド2313が上昇すると、ピストンロッド2313からコッタ2312への押圧力が解除される(図13(d)および(e)参照)。すると、弾性部材2312bが縮んでコッタ2312を縮径させる(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0072】
なお、このコッタ縮径構造の変形例2では、弾性体2318が、挿入部2311aの後端部とクランプ本体2311の内底部との間に挟み込まれて配置されている(図11参照)。しかし、これに限らず、弾性体2318が、コッタ2312の後端部を支えているコッタ支え2319とクランプ本体2311の内底部との間に挟み込まれて配置されてもよい(図14参照)。かかる構成の場合、弾性体2318の付勢力がコッタ支え2319とコッタ2312を介してスリット2311cの先端部側を押圧することにより、挿入部2311aをクランプ本体2311から突出することができ、同様の機能が得られる。
【0073】
[効果]
以上説明したように、このクランパ23は、挿入部2311aを管材132(伝熱管132)に挿入して管材132をクランプするクランプ機構231と、クランプ機構231を挿入部2311aの挿入方向に昇降させる昇降機構232とを備える(図1および図2参照)。また、クランプ機構231が、挿入部2311aを有するクランプ本体2311と、挿入部2311aから突出して管材132に摩擦接触すると共に挿入部2311aの挿入方向に進退可能なコッタ2312と、挿入部2311aの挿入方向逆側に牽引されたときにコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させるピストンロッド2313と、クランプ本体2311に一体化されてピストンロッド2313を牽引するロッドシリンダ2315とを備える。
【0074】
かかる構成では、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させてクランプ機構231の挿入部2311aを管材132に挿入させる(図2参照)。そして、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を挿入部2311aの挿入方向逆側(後端部側)に牽引すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させる。すると、コッタ2312が管材132の内周面に押圧状態で摩擦接触して管材132をクランプする。これにより、管材132を安定的にクランプできる利点がある。
【0075】
また、このクランパ23では、ピストンロッド2313がロッドシリンダ2315を貫通してロッドシリンダ2315の後端部側に突出する(図1参照)。
【0076】
かかる構成では、管材132のアンクランプ時にて、ピストンロッド2313がコッタ2312に嵌り込んで抜けないときに、外部からピストンロッド2313の後端部を叩いてピストンロッド2313をコッタ2312から外し得る。これにより、非常時のアンクランプが可能となる利点がある。
【0077】
また、このクランパ23は、ロッドシリンダ2315の流体室(第一流体室2315aおよび第二流体室2315b)のうち作動流体の加圧によりピストンロッド2313を牽引する側の流体室(第一流体室2315a)に配管2316dを介して接続されると共にこの流体室2315aの作動流体を加圧する加圧装置(加圧ポンプ2316a)と、この配管2316d上に配置される逆止弁2316bと、流体室2315aの作動流体を放出するリリースバルブ2316cとを備える(図4参照)。
【0078】
かかる構成では、加圧装置2316aが流体室2315aの作動流体を加圧することにより、ロッドシリンダ2315が下降して、コッタ2312が伝熱管132をクランプ保持する(図5(a)および(b)参照)。このとき、リリースバルブ2316cが閉止状態にあり、且つ、逆止弁2316bが流体室2315aからの作動流体の逆流を防止する。したがって、水室内作業時(伝熱管132のクランプ時)にて加圧装置2316aが停止しても、流体室2315aの流体圧が保持されて、伝熱管132のクランプ状態が適正に維持される。これにより、クランパ23の作動流体の元圧が切断されたときのフェールセーフが実現される。
【0079】
また、このクランパ23では、クランプ機構231がコッタ2312を縮径させるコッタ縮径構造を有する(図6〜図8および図11参照)。
【0080】
かかる構成では、クランパ23のアンクランプ時にて、コッタ2312を縮径させて挿入部2311aに収納できるので、挿入部2311aを管材132から容易に引き抜くことができる利点がある。
【0081】
また、このクランパ23では、上記のコッタ縮径構造が、コッタ2312に形成されたテーパ面2312aと、テーパ面2312aをスリット2311cの先端部側の壁面に押圧して、コッタ2312をクランプ本体2311に付勢させる弾性体2318とから成ると共に、コッタ2312を弾性体2318からの付勢力によりテーパ面2312aに沿って摺動させて縮径させる構造を有する(図6および図8参照)。
【0082】
かかる構成では、コッタ2312のテーパ面2312aと弾性体2318とから成る簡易な構成にてコッタ縮径構造を実現できる利点がある。
【0083】
また、このクランパ23では、上記のコッタ縮径構造がコッタ2312の外周に嵌め合わされた環状の弾性部材2312bから成る(図7および図11参照)。
【0084】
かかる構成では、環状の弾性部材2312bから成る簡易な構成にてコッタ縮径構造を実現できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、この発明にかかるクランパは、管材を安定的にクランプ保持できる点で有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 水室内作業装置
2 ベース
3 中間リンク
4 マニピュレータ
5 ツール
11 ベース搬入取付治具
12 ワイヤまたはベルト
21 ベース本体
22a、22b ウイング
23、23a、23b クランパ
130 蒸気発生器
131 水室
132 伝熱管(管材)
132a 開口縁部
134 仕切板
135 入口管台
136 出口管台
137 管板
137a 管板面
138 マンホール
231 クランプ機構
2311 クランプ本体
2311a 挿入部
2311b 当接部
2311c スリット
2311d ピストン部
2312 コッタ
2312a テーパ面
2312b 弾性部材
2313 ピストンロッド
2313a テーパ面
2313b ピストン部
2314 弾性体
2315 ロッドシリンダ
2315a 第一流体室
2315b 第二流体室
2316 流体圧制御機構
2316a 加圧ポンプ
2316b 逆止弁
2316c リリースバルブ
2316d〜2316f 配管
2317 支持部材
2318 弾性体
2319 コッタ支え
232 昇降機構
2321 昇降シリンダ
2321a 第一流体室
2321b 第二流体室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部を管材に挿入して前記管材をクランプするクランプ機構と、前記クランプ機構を前記挿入部の挿入方向に昇降させる昇降機構とを備えるクランパであって、
前記クランプ機構が、前記挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記管材に摩擦接触すると共に前記挿入部の挿入方向に進退可能に配置されるコッタと、前記挿入部の挿入方向逆側に牽引されたときに前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを牽引するロッドシリンダとを備えることを特徴とするクランパ。
【請求項2】
前記ピストンロッドが前記ロッドシリンダを貫通して前記ロッドシリンダの後端側に突出する請求項1に記載のクランパ。
【請求項3】
前記ロッドシリンダの流体室のうち作動流体の加圧により前記ピストンロッドを牽引する側の流体室に配管を介して接続されると共に前記流体室の作動流体を加圧する加圧装置と、前記配管上に配置される逆止弁と、前記流体室の作動流体を放出するリリースバルブとを備える請求項1または2に記載のクランパ。
【請求項4】
前記クランプ機構が前記コッタを縮径させるコッタ縮径構造を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載のクランパ。
【請求項5】
前記コッタ縮径構造が、前記コッタに形成されたテーパ面と、前記テーパ面を前記クランプ本体に付勢させる弾性部材とから成ると共に、前記コッタを前記弾性部材からの付勢力によりテーパ面に沿って摺動させて縮径させる構造を有する請求項4に記載のクランパ。
【請求項6】
前記コッタ縮径構造が前記コッタの外周に嵌め合わされた環状の弾性部材から成る請求項4に記載のクランパ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載のクランパを備える水室内作業装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−42185(P2012−42185A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186628(P2010−186628)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】