説明

クランベリー抽出物を有効成分とする経口用皮膚改善剤

本発明は、皮膚の保湿、皮脂量調節、皮膚の弾力性保持、抹消血液循環保持のいずれか1つ以上の機能を有することを特徴とする、クランベリー抽出物を有効成分とすることを特徴とする経口用皮膚改善剤、及びこの経口用皮膚改善剤を含有することを特徴とする、飲食品または医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランベリー抽出物を有効成分とする経口用皮膚改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クランベリー(Vaccinium macrocarpon Ait.)は、北アメリカなどの寒冷地に生育するツツジ科スノキ属ツルコケモモ節の植物であり、小果実を実らせる。アメリカでは品種改良が行われて大規模に栽培されている。クランベリー果実はそのままでも食せるが、これまでドライフルーツとして、またジュースなどの飲料用、料理用ソース、ジャム、ゼリー菓子などの原料として広く利用されている。またクランベリージュースの摂取が、尿路感染症に有効であることが知られている(非特許文献1参照。)。
【0003】
従来、クランベリーを用いた化粧品の例として、主としてアントシアニン重合体からなるクランベリーの実の圧搾濾過物及び/又は抽出物からなる皮膚ひきしめ剤および化粧料(特許文献1参照。)、クランベリー果実搾汁液及び/又はクランベリー果実抽出物と、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤などの薬効剤を含有する皮膚外用剤(特許文献2参照。)などが知られている。しかしながら、これらはいずれも皮膚外用剤であり、経口用途については知られていなかった。
【非特許文献1】J.Am.Med.Association,271:751−754,1994
【特許文献1】特許第3156928号公報
【特許文献2】特開2002−275080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、クランベリー抽出物を有効成分とする経口用皮膚改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、クランベリー抽出物が、経口用皮膚改善剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に記載する経口用皮膚改善剤である。
【0006】
(1)クランベリー抽出物を有効成分とすることを特徴とする経口用皮膚改善剤。
【0007】
(2)経口用皮膚改善剤が、皮膚の保湿、皮脂量調節、皮膚の弾力性保持または抹消血液循環保持のいずれか1つ以上の機能を有することを特徴とする、上記(1)記載の経口用皮膚改善剤。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載の経口用皮膚改善剤を含有することを特徴とする、飲食品または医薬品。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例記載の自己申告による肌状態変化の測定結果を示す。
【図2】図2は、実施例記載の美容専門家による視診・触診の測定結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、クランベリー抽出物を有効成分とする経口用皮膚改善剤である。
【0011】
有効成分であるクランベリー抽出物とは、例えば、常法によりクランベリー果実から搾汁して得られた果汁もしくはその果汁を濃縮したもの、前記果汁もしくは濃縮果汁にデキストリンなどの賦形剤を添加混合し噴霧乾燥あるいは凍結乾燥するなどの手段で得られたクランベリー果汁中の固形分を含有するもの、またはクランベリーの果実や果皮・種子より適当な溶剤を用いて抽出された抽出物などをいう。これらのクランベリー抽出物は経口摂取により、皮膚改善作用を発揮する。
【0012】
本発明において得られるクランベリー抽出物中の有効成分としては、例えば、プロアントシアニジン、アントシアニン、フラボノール配糖体等のポリフェノール、キナ酸、クエン酸等の有機酸、無機物及びビタミン等が挙げられる。これらの中でも、プロアントシアニジン、アントシアニン等のポリフェノール、キナ酸等の有機酸を多く含有するものが好ましい。
【0013】
抽出処理に用いる溶剤は特に限定されず、通常の極性溶媒、両極性溶媒等が使用できる。溶剤としては、例えば、水、有機溶媒またはそれを含む溶剤、水と有機溶媒との混合液等が使用できる。有機溶媒としては例えば、低級アルコール(具体的にはエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール)、エーテル類(具体的にはジエチルエーテル)、ハロゲン化炭化水素(具体的にはクロロホルム)、ニトリル類(具体的にはアセトニトリル)、エステル類(具体的には酢酸エチル)、ケトン類(具体的にはアセトン)などの他に、ヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等であるが、作業性の面から、エタノール、メタノール、または、酢酸エチルが好ましい。有機溶媒は2種以上を混合して使用しても良い。
【0014】
なお、クランベリー抽出物中の有効成分を濃縮・精製するために更なる溶媒抽出、合成吸着剤やイオン交換樹脂処理等を行ってもよい。
実施例に示す通り、クランベリー抽出物は、皮膚の保湿、皮脂量調節、皮膚の弾力性保持、抹消血液循環保持等の機能を有するので、経口用皮膚改善剤として有用である。
【0015】
皮膚の保湿とは、肌水分量を良好に保ち、肌のすべすべ感・なめらかさ・しっとりさなどを改善することである。
【0016】
皮脂量調節とは、皮脂量を良好に調節し、肌のあぶらっぽさ・ニキビ・吹き出物などを改善することである。
【0017】
皮膚の弾力性保持とは、肌弾力を良好に保ち、肌のはり・目の下のたるみなどを改善することである。
【0018】
抹消血液循環保持とは、抹消血液循環機能を良好に保ち、冷え性などを改善することである。
【0019】
本発明の剤は、そのまま或いは飲食品、水または医薬品に添加して、液状または固形状で使用できる。経口用として使用可能であれば、剤としての形状は特に限定されず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤とすることができる。有効成分の摂取量は、有効成分の濃縮・精製度合い、投与目的、使用者の皮膚の状態により適宜設定すればよく、例えば、経口用として使用する場合には、施用者の体重に対し、1日あたり、有効成分量として0.0001〜50g/kg、好ましくは0.0005〜25g/kg、更に好ましくは0.001〜10g/kg程度の量で用いられる。
【0020】
本発明の経口用皮膚改善剤は、継続して使用することが好ましく、少なくとも2週間、好ましくは、4週間以上、更に好ましくは8週間以上の継続使用が好ましい。
【0021】
以下、実施例により、本発明のクランベリー抽出物の皮膚改善作用を確認する方法とその結果を示す。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
(クランベリー抽出物の経口摂取による皮膚改善効果)
試験参加に同意を得た33〜38歳の健常人女性24名を対象に、試験群と対照群の2グループ(12名ずつ)に分けた。試験群には、市販の65%クランベリー果汁入り飲料(クランベリーUR65、キッコーマン株式会社)125mlを毎日朝夕1本ずつ飲用させた。対照群では、特に飲料の摂取を指定せずに、季節変動計測モニターとした。試験期間は4週間で、スタート時と4週間後に、自己申告による肌状態及び体調の変化、美容専門家による肌診断、肌水分量及び肌弾力、抹消血液循環機能の測定を行った。洗顔後23℃、湿度50%RHに調整した環境試験室内で20分間座位安静の後、各測定を実施した。
【0023】
自己申告による肌状態および体調の変化は、アンケート調査によって行い、その変化を数値化した。スタート時を基準とした4週間後の自己評価による肌状態の変化を図1に示した。それぞれ12名の平均値では、試験群が対照群に比べて、すべての評価項目で改善傾向が見られた。特に、「あぶらっぽさ」、「はり」、「ニキビ・吹き出物」、「透明感」、「肌の総合評価」の項目は統計的に有意な差が認められた。この結果、試験群において、経口摂取による皮膚改善効果が確認された。
【0024】
美容専門家による肌診断は、視診・触診にて行い、その変化を数値化した。スタート時を基準とした4週間後の視診・触診による肌状態の変化を図2に示した。それぞれ12名の平均値では、試験群が対照群に比べて、すべての評価項目で改善傾向が見られた。特に、「目尻のしわ」、「目の下のたるみ」、「はりのよさ」、「肌の総合評価」の項目は統計的に有意な差が認められた。この結果、試験群において、経口摂取による皮膚改善効果が確認された。
【0025】
肌水分量は、電気伝導度型商品名SKICON−200(IBS社製)を用いて、頬中央部位の角層水分量を測定した。その結果、スタート時を基準とした4週間後の水分量の変化量は、試験群で+6.9μS、対照群で−0.7μSとなり、試験群で良好な皮膚保湿効果が認められた。自己申告による「すべすべ」の改善、触診による「なめらかさ」、「しっとりさ」の改善の結果と考え合わせて、本発明の経口用皮膚改善剤が、皮膚の保湿の機能を有していることがわかる。
【0026】
皮脂量は、透過光比率型セブメーターを用いて左側の眉上の皮脂レベルを測定し、パターン化して判定した。その結果、スタート時を基準とした4週間後の皮脂量判定は、試験群で改善4名、変化なし4名、悪化4名、対照群で改善0名、変化なし7名、悪化5名となった。このことは、試験期間中に季節変動計測モニターである対照群で悪化した皮脂量が、試験群では維持されていることを示す。自己申告による「あぶらっぽさ」、「ニキビ・吹き出物」の改善の結果と考え合わせて、本発明の経口用皮膚改善剤が、皮脂量調節の機能を有していることがわかる。
【0027】
肌弾力は、キュートメーターSEM575(インテグラル社製)を用い、右側の頬骨上部位の肌弾力(吸引戻り率)を測定した。その結果、スタート時を基準とした4週間後の肌弾力の変化率は、試験群で+5.9%、対照群で−3.9%となり、試験群で良好な皮膚弾力性の改善効果が認められた。自己申告による「はり」の改善、視診による「目の下のたるみ」の改善、触診による「はりのよさ」の改善の結果と考え合わせて、本発明の経口用皮膚改善剤が、皮膚の弾力性保持の機能を有していることがわかる。
【0028】
抹消血液循環機能は、BCチェッカー(加速度脈波測定システム、フューチャー・ウエイブ社製)を使って、人差し指尖をセンサー部分にのせ、指尖脈波をスコアー値として測定した。その結果、スタート時を基準とした4週間後の抹消血液循環機能スコアー値の変化量は、試験群で+3.9、対照群で−23.9となった。このことは、試験期間中に季節変動計測モニターである対照群で悪化した抹消血液循環機能が、試験群では維持されていることを示す。自己申告による「冷え性」の改善の結果と考え合わせて、本発明の経口用皮膚改善剤が、抹消血液循環保持の機能を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の経口用皮膚改善剤は、皮膚の保湿、皮脂量調節、皮膚の弾力性保持、抹消血液循環保持等の機能を有しており、医薬品、食品の分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランベリー抽出物を有効成分とすることを特徴とする経口用皮膚改善剤。
【請求項2】
クランベリー抽出物がポリフェノール及び有機酸を含有するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項3】
クランベリー抽出物がプロアントシアニジン、アントシアニン、フラボノール配糖体、キナ酸及びクエン酸を含有するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項4】
クランベリー抽出物がプロアントシアニジン、アントシアニン及びキナ酸を含有するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項5】
クランベリー抽出物を有効成分量として、施用者の体重に対し、1日あたり、0.0001〜50g/kg内服するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項6】
クランベリー抽出物を有効成分量として、施用者の体重に対し、1日あたり、0.0005〜25g/kg内服するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項7】
クランベリー抽出物を有効成分量として、施用者の体重に対し、1日あたり、0.001〜10g/kg内服するものである請求項1記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項8】
経口用皮膚改善剤が、皮膚の保湿、皮脂量調節、皮膚の弾力性保持または抹消血液循環保持のいずれか1つ以上の機能を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経口用皮膚改善剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の経口用皮膚改善剤を含有することを特徴とする、飲食品または医薬品。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/079825
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510238(P2006−510238)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002554
【国際出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】