説明

クリップ受け構造

【課題】少ない手間と時間で、2ピースクリップを取付部材に組み付けることができ、組み付け後のクリップの抜けも起こりにくいクリップ受け構造の提供。
【解決手段】筒部111と、該筒部111の一端に形成されたフランジ112とを備えたブッシュ110の筒部111に、ピン100の軸部102を押し込むことにより筒部111が拡径して取付状態となる2ピースクリップCを組み付けるためのクリップ受け構造であって、筒部111が挿入される取付穴21と、該取付穴21の外側位置に対向配置され、挿入された筒部111の反挿入方向への抜けを抑制する一対の押さえ部22,23とを備え、押さえ部22,23は、外側位置に立設された基部24と、基部24から取付穴21側に折曲し、取付穴21に係止したフランジ112を押さえる弾性片25とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンとブッシュとを備えた2ピースクリップを取付部材に組み付ける際のクリップ受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体などの被取付部材に、アンダーカバーやパネル材などの取付部材を取り付ける際には、図3に示す形態のクリップCが用いられることが多い。このクリップCは、ピン100とブッシュ110からなる2ピースクリップであり、ピン100はヘッダ101および軸部102を備え、ブッシュ110は、ピン100の軸部102が嵌入される筒部111と、筒部111の一端に形成されたフランジ112とを有している(例えば、特許文献1参照。)。このクリップCは、使用前には、図3に示すように、ヘッダ101がブッシュ110のフランジ112から図中上方に突出した状態で、軸部102が筒部111に嵌め込まれている。
一方、取付部材120には、クリップ受け構造として、クリップCの筒部111が挿入される取付穴121と、取付穴121の周縁に立設され、挿入されたクリップCを押さえる一対の係止片122,123とが形成されたものがある。
【0003】
図示例のクリップCは、図4(a)および(b)に示すように、組付工程において、取付部材120に組み付けられ、その後、図4(c)に示すように、取付工程において、被取付部材130に取り付けられる。これにより、クリップCを介して、取付部材120が被取付部材130に取り付けられた状態となる。
具体的には、図4(a)に示すように、作業者が指で、取付部材120に形成された一方の係止片123を外方へと押し開き、クリップCの筒部111を取付穴121に挿入する。その後、外方へと開いた係止片123を指で元の位置に押し戻すことにより、図4(b)に示すように、係止片122,123の係止凸起122a,123aによりフランジ112が上方から押さえられた状態となり、クリップCが取付部材120に組み付けられる(組付工程)。
【0004】
ついで、図4(c)に示すように、クリップCが組み付けられた取付部材120の下方に被取付部材130を位置させ、取付部材120の取付穴121と被取付部材130の取付穴131とを位置合わせし、突出しているヘッダ101を押して、軸部102を筒部111に押し込む。この操作により、筒部111を構成する複数の脚片111aが外側に開いて筒部111が拡径し、その状態で固定される。その結果、クリップCが取付部材120の取付穴121および被取付部材130の取付穴131から抜取不能となり、取付部材120の被取付部材130への取り付けが完了する(取付工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−196890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、組付工程において、図4(a)に示すように、作業者が指で一方の係止片123を外方へと押し開くと、その後にこの係止片123を押し戻して図4(b)の状態にしたとしても、残留応力により係止片123が再び外方へと開きやすい。そのため、取付部材120に組み付けられたクリップCは、組付工程から取付工程への搬送途中などに、取付部材120の取付穴121から抜けて、脱落してしまうことがあった。
特に、取付部材120が熱可塑性樹脂製である場合には、成形直後であって熱可塑性樹脂が未だ熱を帯び、可塑性を有している時点で、作業者が一方の係止片123を外方へと押し開く。そのような場合には、元の状態に押し戻された係止片123には、より大きな残留応力が作用して係止片123は外方へと再び開きやすく、クリップCの抜け(脱落)が起こりやすかった。
【0007】
また、このような組付工程では、作業者が一方の係止片123を押し開く操作と、クリップCの筒部111を取付穴121に挿入する操作と、係止片123を元の状態に戻す操作との合計3アクションが必要であり、手間と時間を要した。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、少ない手間と時間で、クリップを取付部材に組み付けることができ、組み付け後のクリップの抜けも起こりにくいクリップ受け構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクリップ受け構造は、筒部と、該筒部の一端に形成されたフランジとを備えたブッシュの前記筒部に、ピンの軸部を押し込むことにより前記筒部が拡径して取付状態となる2ピースクリップを組み付けるためのクリップ受け構造であって、前記筒部が挿入される取付穴と、該取付穴の外側位置に対向配置され、挿入された前記筒部の反挿入方向への抜けを抑制する一対の押さえ部とを備え、前記押さえ部は、前記外側位置に立設された基部と、前記基部から前記取付穴側に折曲し、前記取付穴に係止したフランジを押さえる弾性片とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリップ受け構造によれば、少ない手間と時間で、クリップを取付部材に組付けることができ、組み付け後のクリップの抜けも起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一例であるクリップ受け構造を備えた取付部材と、これに組み付けられるクリップとを示す斜視図である。
【図2】(a)、(b)図1のクリップを図1の取付部材に組み付ける組付工程を示す部分断面図、(c)図1のクリップにより、取付部材を被取付部材に取り付ける取付工程を示す部分断面図である。
【図3】従来のクリップ受け構造を備えた取付部材と、これに組み付けられるクリップとを示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)図3のクリップを図3の取付部材に組み付ける組付工程を示す部分断面図、(c)図3のクリップにより、取付部材を被取付部材に取り付ける取付工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の一例であるクリップ受け構造を備えた取付部材20と、これに組み付けられるクリップCとを示す斜視図である。
図1のクリップCは、自動車の車体などの被取付部材に対して、アンダーカバーやパネル材などの取付部材20を取り付ける際に用いられるものであって、まず、組付工程において取付部材20に組み付けられ、その後、取付工程において被取付部材に取り付けられる。これにより、クリップCを介して、取付部材20が被取付部材に取り付けられた状態となる。
【0013】
図示例のクリップCは、樹脂製のピン100と樹脂製のブッシュ110とを備えた2ピースクリップであり、ピン100は円板状のヘッダ101と、ヘッダ101の中央から垂下した軸部102とを備えている。ブッシュ110は、ピン100の軸部102が嵌入される筒部111と、筒部111の一端に形成されたフランジ112とを有している。
このクリップCは、使用前には、図1に示すように、ヘッダ101がフランジ112から図中上方に突出した状態で、ピン100の軸部102がブッシュ110の筒部111に抜取不能に嵌め込まれている。筒部111は、長手方向に延びる4つの脚片111aを備えて構成され、後述するように、取付工程において、フランジ112から突出しているヘッダ101を下方に押して、ピン100の軸部102をブッシュ110の筒部111に完全に押し込む操作により、4つの脚片111aが外方に開いて筒部111が拡径した状態で固定され、取付状態となるものである。なお、図1では、4つのうち3つの脚片111aが図示されている。
【0014】
図示例の取付部材20は、樹脂の射出成形により形成された板状物であって、クリップCを組み付けるためのクリップ受け構造が形成されている。
この例のクリップ受け構造は、クリップCの筒部111が挿入される略長孔からなる取付穴21と、取付穴21の長手方向の外側位置(この例では取付穴の長手方向の縁部。)に対向配置され、挿入された筒部111の反挿入方向(図中上方向)への抜けを抑制する一対の押さえ部22,23とを備えている。
各押さえ部22,23は、取付穴21の縁部から立設された基部24と、基部24から取付穴21側に向けて折曲した弾性片25とからなり、基部24と弾性片25とは鋭角αを成すように形成されている。そして、次に説明する組付工程(図2(a)および(b))において、クリップCの筒部111が取付部材20の取付穴21に挿入された際には、弾性片25が、取付穴21に係止したフランジ112を上方から押さえ、クリップCの抜けを抑制するようになっている。また、この例の基部24は、基部24を補強する補強部24aを備えている。
【0015】
このようなクリップ受け構造にクリップCを組付ける組付工程では、作業者は、図2(a)および(b)に示すように、取付部材20の取付穴21に、取付部材20の上面(押さえ部22,23が形成された面)側からクリップCの筒部111を差し込み、クリップCに対して下方に力を加えて、クリップCの筒部111を取付穴21に完全に挿入する。
このようなクリップCの挿入操作においては、各弾性片25は、まず図2(a)に示すように、フランジ112の周端面により各基部24に接近する方向(外方)に押され、弾性反発力を生じつつ外方へと押し開かれた状態となる。ついで、この弾性反発力に抗してさらにクリップCの取付穴21への挿入操作を進め、図2(b)に示すように、クリップCの筒部111が完全に挿入されてフランジ112が取付穴21に係止した状態に達すると、フランジ112は弾性片25の先端よりも下方に位置することになり、もはやその周端面で弾性片25を押せなくなる。このようにフランジ112からの押圧力が解除された弾性片25は、その弾性反発力により元の状態に戻り、その結果、弾性片25の先端がフランジ112の上面に位置し、クリップCを挿入方向に押さえた状態となる。このようにしてクリップCの組付工程が完了する。
【0016】
このような組付工程では、クリップCの挿入に伴って弾性片25がフランジ112の周端面により外方へと押し開かれて、自ずとクリップCが挿入されやすい状態となる。また、クリップCが挿入された後には、弾性片25が弾性反発力により自ずと元の状態に戻り、クリップCを押さえるように位置する。そのため、作業者は、クリップCを取付穴21に押し込むという1アクションにより、クリップCを組み付けることができ、少ない手間と時間で組付工程を行うことができる。
また、組付工程後の組付状態においては、仮にクリップCに対して反挿入方向の力が作用し、フランジ112が弾性片25を上方に押し上げるように動作したとしても、弾性片25と基部24との角度αが少なくとも90°になるまでは、弾性片25はフランジ112を挿入方向に押さえるように作用する。よって、組付状態におけるクリップCの抜けを効果的に抑制することができる。
【0017】
なお、弾性片25は、クリップCを取付穴21に挿入する組付工程においては、フランジ112の周端面により容易に押し開かれ、クリップCが挿入され易いように作用することが必要であるが、反対に、組付工程の終了後には、できるだけ可動(回動)せずに安定にフランジを押さえ、クリップCの抜けを抑制できるものであることが必要である。このようなクリップCの挿入し易さと抜け難さとをコントロールするには、例えば、弾性片25と基部24との境界部位(弾性片の回動中心に相当。)の厚みを調整すればよい。
【0018】
このような組付工程の後、図2(c)に示すように、クリップCが組み付けられた取付部材20の下面(押さえ部が形成されていない面)に、被取付部材130を配置し、取付部材20の取付穴21と被取付部材130の取付穴131とを位置合わせする。そして、突出しているヘッダ101を下方に押してヘッダ101とフランジ112とを面一にし、軸部102をブッシュ110の筒部111に押し込む。これにより、筒部111を構成している4つ脚片111aが外側に開いて筒部111が拡径し、その状態で固定される。その結果、クリップCが取付部材20の取付穴21および被取付部材130の取付穴131から抜取不能となり、取付部材20の被取付部材130への取り付けが完了する。
【0019】
なお、取付部材20としてはアンダーカバーやパネル材などが挙げられ、被取付部材130としては自動車の車体などが挙げられるが、図示例のような2ピースタイプのクリップCによる取り付けが可能なものであれば、取付部材20および被取付部材130には特に制限はない。
また、クリップCのピン100およびブッシュ110や取付部材20の材質にも特に制限はなく、各種の樹脂を使用できる。例えば、POMやポリアミドが使用され、その他にも、例えば、ABS、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどが用いられる。また、被取付部材130の材質にも特に制限はない。
【0020】
また、以上の例では、取付部材20に形成される取付穴21は略長孔であるが、クリップCの筒部111が挿入可能であるとともにフランジ112が係止可能で、かつ、筒部111の拡径後にはクリップCを係止して抜取不能とする形状であればよく、特に制限はない。また、押さえ部22,23の基部24が立設される位置は、基部24の先端側に設けられた弾性片25がフランジ112を押さえることができる位置であれば、取付穴21の縁部からやや外側に離れた位置であってもよい。
さらに、クリップCとしても、筒部111と、筒部111の一端に形成されたフランジ112とを備えたブッシュ110の筒部111に、ピン100の軸部102を押し込むことにより筒部111が拡径して取付状態となるものであればよく、具体的な構成には特に制限はない。
【符号の説明】
【0021】
C クリップ
20 取付部材
21 取付部材の取付穴
22,23 押さえ部
24 基部
25 弾性片
100 ピン
101 ヘッダ
102 軸部
110 ブッシュ
111 筒部
112 フランジ
130 被取付部材
131 被取付部材の取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と、該筒部の一端に形成されたフランジとを備えたブッシュの前記筒部に、ピンの軸部を押し込むことにより前記筒部が拡径して取付状態となる2ピースクリップを組み付けるためのクリップ受け構造であって、
前記筒部が挿入される取付穴と、該取付穴の外側位置に対向配置され、挿入された前記筒部の反挿入方向への抜けを抑制する一対の押さえ部とを備え、
前記押さえ部は、前記外側位置に立設された基部と、前記基部から前記取付穴側に折曲し、前記取付穴に係止したフランジを押さえる弾性片とからなることを特徴とするクリップ受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202450(P2012−202450A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65865(P2011−65865)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(591270257)クミ化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】