説明

クリップ

【課題】多少の寸法誤差があったとしてもクリップ及び取付部材のガタつきを吸収することができるクリップであって、強い衝撃荷重が加わって保持爪による係止が弱まっても完全には脱落しない保持力を有し、かつパネルと取付部材の間の作業スペースを確保でき取り外しが容易なクリップの提供。
【解決手段】クリップ11は、基体に形成又は組み付けられる被取付部材Bをパネル部材Pに取り付けるためのものであり、パネル部材Pの取付孔Hに差し込み可能な差込体と、差込体を支持する基体とから成り、差込体を取付孔Hに差し込むと、差し込んだ差込体を取付孔に対してガタ詰め状態で保持可能な保持爪27を備える。保持爪27による保持状態の解除が行われても、差込体が取付孔Hに対して引っ掛かり状態をなすロック爪35が形成されており、ロック爪35には、自身11の取付孔Hに対する引っ掛かり状態を解消可能な解除レバー31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボデー部材等のパネルの取付孔に対して取付部材を着脱可能に組み付けるための樹脂製クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図24にあるような、自動車のボデー部材等のパネルPに固定することができる係止爪を備えたクリップが知られている。意匠板B等の取付部材にあらかじめこのクリップを必要な数だけ取り付けておくことで、その取付部材をパネルPに対して着脱可能に組み付けることができる。このクリップは樹脂製であり、保持爪107を備えている。図25のように、パネルPに取り付けられた状態においては、保持爪107を支持する梁部105は撓んだ状態にあり、その弾性力と後ガイド部102の抗力によって取付孔Hにがたつくことなく固定される。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、たとえば、特許文献1及び2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―065524号公報
【特許文献2】特開2006―176089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構成のクリップには、着脱が容易な反面、走行中強い衝撃荷重が加わった場合、保持爪107が荷重に耐えられず取付部材がパネルPから完全に外れてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、上記の保持爪に代えて、より荷重に耐えうる形状のロック爪を設けるということが考えられる。このロック爪は解除レバーを工具等によって操作することでロック爪を引っ掛かり状態を解除できるようになっている。これによって、パネルPの取付孔Hから取り外すことが可能となる。しかし、このようなクリップは、クリップが取り付けられた状態でクリップのロック爪と取付穴との間に遊びがないため、パネルPに対して取付部材が隙間無く組みつけられている場合などにおいて、工具を差し込めるスペースが十分確保できず取付部材を取り外すことができなくなるという問題も生ずる。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、クリップまたは取付孔に多少の寸法誤差があったとしてもクリップ及び取付部材のガタつきを吸収することができるクリップであって、強い衝撃荷重が加わって保持爪による係止が弱まっても完全には脱落しない保持力を有し、かつパネルと取付部材の間の作業スペースを確保でき取り外しが容易なクリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、パネル部材の取付孔に差し込み可能な差込体と、差込体を支持する基体とから成り、差込体を取付孔に差し込むと、差し込んだ差込体を取付孔に対してガタ詰め状態で保持可能な保持爪を備え、基体に形成又は組み付けられる被取付部材をパネル部材に取り付けるためのクリップであって、
保持爪による保持状態の解除が行われても、差込体が取付孔に対して引っ掛かり状態をなすロック爪が形成されており、
ロック爪には、自身の取付孔に対する引っ掛かり状態を解消可能な解除レバーが形成されていることを特徴とするクリップ。
この構成によれば、保持爪による保持状態の解除が行われても、差込体が取付孔に対して引っ掛かり状態をなすロック爪が形成されている。また、ロック爪には、自身の取付孔に対する引っ掛かり状態を解消可能な解除レバーが形成されている。したがって、強い衝撃荷重が加わって保持爪による係止が弱まっても完全には脱落しない保持力を有し、かつパネル部材と取付部材の間の作業スペースを確保でき取り外しが容易となるクリップを提供できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクリップであって、
前記解除レバーによってロック爪の引っ掛かりの解消状態を保持することができる解除保持爪を備えることを特徴とするクリップである。
この構成よれば、解除レバーによるロック爪の引っ掛かりの解消状態を保持することができる解除保持爪を備えている。したがって、より取り外しが容易なクリップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1のクリップを座面とアダプタとに分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】図2は図1におけるアダプタを座面に取り付ける(a)前、(b)途中及び(c)後の状態を示す断面図である。
【図3】図3は実施例1のクリップを示す斜視図である。
【図4】図4は実施例1のクリップをパネルに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)更に差し込んだとき及び(d)後の状態を示す断面図である。
【図5】図5は実施例1のクリップをパネルから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)はそれぞれ図5(b)及び(c)におけるVI―VI断面図である。
【図7】図7は実施例2のクリップを座面とアダプタとに分解した状態を示す分解斜視図である。
【図8】図8は実施例3のクリップを示す斜視図である。
【図9】図9は実施例3のクリップをパネルに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
【図10】図10は実施例3のクリップをパネルから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
【図11】図11は実施例4のクリップを(a)斜め前から見た斜視図及び解除レバー65を斜め下から見た拡大図、ならびに(b)斜め後ろから見た斜視図である。
【図12】図12は実施例4のクリップをパネルに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
【図13】図13は実施例4のクリップをパネルから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
【図14】図14は実施例5のクリップを差込体と基体とに分解した状態を示す斜視図である。
【図15】図15は実施例5のクリップの差込体と基体とを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図16】図16は実施例5のクリップをパネルに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
【図17】図17は実施例5のクリップをパネルから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
【図18】図18は実施例6のクリップを差込体と基体とに分解した状態を示す斜視図である。
【図19】図19は実施例6のクリップの差込体と基体とを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図20】図20は実施例7のクリップを差込体と基体とに分解した状態を示す斜視図である。
【図21】図21は実施例7のクリップの差込体と基体とを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図22】図22は実施例7のクリップをパネルに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
【図23】図23は実施例7のクリップをパネルから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。である。
【図24】図24は従来技術によるクリップの斜視図である。
【図25】図25は従来技術によるクリップをパネルに取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施した形態を図面を参照しながら説明する。各実施形態におけるクリップ11,12,13,14,15,16,17は、取付部材としての意匠板Bを、自動車のボデー部材等の被取付部材としてのパネルPに取り付けるためのものである。意匠板Bは、自動車の内装に用いられるクラスターパネル等の、意匠面を有する被取付部材である。パネルPには、長方形の取付孔Hが形成されており、意匠板Bに取り付けられたクリップ11,12,13,14,15,16,17をこの取付孔Hに差し込んで固定する。
【0012】
図1は実施例1のクリップ11をアダプタ3と座面部材2とに分解した状態を示す分解斜視図である。クリップ11は、図1のように、座面部材2とアダプタ3とで構成される。座面部材2及びアダプタ3は左右対称な形状を有する樹脂製の部材である。
【0013】
まず、図1を参照しながら座面部材2を説明する。座面部材2は、意匠板Bと一体的に形成されている。意匠板Bを自動車のパネルPに対して組み付けるためには、意匠板Bにあらかじめクリップ11の座面部材2を必要な数だけ形成しておく必要がある。座面部材2は、パネルPの取付孔Hに挿入される挿入体の一部(挿入体にはアダプタ3全体も含まれる)とそれを支持する基体とからなるが、実施例1においてはこの挿入体の一部と基体とが一体的に形成されている。そのため、以下の実施例1の説明においては、挿入体と基体との境目は特に明示しないものとする。
【0014】
座面部材2は、図1のように、意匠板Bから立設される帯状の部材である基板20と、そこから張り出す左右一対の前ガイド部21及び後ガイド部22とを備える。基板20は、先端部には幅方向のテーパが付けられているが、それ以外の部分は幅が一定である。基板20の先端部には、アダプタ3を座面部材2に対して装着するための構成として、略T字状のアダプタ取付孔40が設けられている。基板20の中央部には、上下に細長い梁部25と、この梁部25を挟むような左右一対のスリット26とが形成されている。すなわち梁部25は、上下端の二箇所で支持されており、前後に撓むことが可能となっている。梁部25の前面中央部には、クリップ11のがたつきを防止するための保持爪27が設けられている。保持爪27は、側面視が山形状であり、上側に挿入側斜面28を、下側に係止側斜面29を有する。
【0015】
前ガイド部21は、基板20の前面から平行に張り出して形成された左右一対の面状部材である。同様に、後ガイド部22は、基板20の背面から平行に張り出して形成された左右一対の面状部材である。前ガイド部21及び後ガイド部22は共に、基板20のスリット26よりも外側に形成されている。また、前ガイド部21及び後ガイド部22は共に、下端において意匠板Bに連結されており、基板20がねじれることのないように強度を保っている。前ガイド部21が基板20から張り出す量は、上端部においては徐々に低くなっていっているが、それ以外の部分では一定である。後ガイド部22が基板20から張り出す量は、肩部23を境に下部のほうが上部までより大きくなっており、上部においては上に行くに従って徐々に小さくなっていっている。後ガイド部22の間には、図2(a)のように、基板20と平行に補強板24が設けられている。
【0016】
次に図1を参照しながらアダプタ3を説明する。アダプタ3は、可撓性を備えた可撓板30と、これを撓ませるための解除レバー31とを備える。可撓板30は、屈曲した板状の部材であり、図1のように、上部が垂直な垂直部32に、下部が手前に傾斜した傾斜部33となっている。垂直部32の背面には、アダプタ3を座面部材2に取り付けるための構成として、上側に爪41が、下側にT字突起42がそれぞれ形成されている。傾斜部33の下部中央には、長方形状の切欠部34が形成されている。可撓板30の切欠部34の左右の部分はそれぞれ、衝撃によるクリップ11の脱落を防止するためのロック爪35となっている。
【0017】
解除レバー31は、左右それぞれのロック爪35の背面から互いに平行にのびる一対の平行部36と、平行部36の末端を互いに水平に連結する連結部37とを備える。各平行部36は後方に屈曲し、略コの字状に形成されている。平行部36は、図4(b)に示すように、座面部材2のスリット26に入り込める必要があるため、互いがスリット26と同じ間隔で、かつそれぞれがスリット26に入り込めるような幅で形成されている。連結部37には、解除レバー31を操作する力点としての、溝状の解除押圧部38が形成されている。一対の平行部36のうち下側の水平部分の外側には、それぞれに解除保持爪39が形成されている。
【0018】
次に、アダプタ3を座面部材2に取り付ける際の動作を説明する。図2は、図1におけるアダプタ3を座面部材2に取り付ける(a)前、(b)途中及び(c)後の状態を示す断面図である。まず図2(a)のように、アダプタ3の可撓板30に設けられたT字突起42を、座面部材2に設けられた略T字状のアダプタ取付孔40の幅が広い部分に挿入する。このとき、可撓板30にはT字突起42の他に爪41も設けられているため、可撓板30の垂直部32は座面部材2の基板20に対して完全に接することはできず撓んだ状態になる。
【0019】
次に図2(b)のように、T字突起42のくびれた部分がアダプタ取付孔40の幅が細い部分に嵌合するように、アダプタ3を座面部材2の先端方向にスライドしていく。T字突起42のくびれた部分がアダプタ取付孔40の終端まで嵌合するまでに、爪41がアダプタ取付孔40に落ち込み、可撓板30の垂直部32の撓みは解消される。これにより、可撓板30の垂直部32は座面部材2の基板20に完全に接する。したがって、クリップ11のパネルPへの取り付け取り外しの際にアダプタ3が座面部材2に対してスライドしたとしても、T字突起42と爪41がアダプタ取付孔40の周縁部に当接するため、クリップ11がアダプタ3と座面部材2に分解してしまうことはない。
【0020】
図3は実施例1のクリップ11のアダプタ3を座面部材2に取り付けた状態を示す斜視図である。保持爪27及びロック爪35は、左右の前ガイド部21の間に完全には隠れないようになっている。また、ロック爪35の下端は保持爪27の下端よりも上方に位置している。
【0021】
次に図3の状態のクリップ11をパネルPに対して取り付ける際の動作を説明する。図4は実施例1のクリップ11をパネルPに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)更に差し込んだとき及び(d)後の状態を示す断面図である。
まず、図4(a)の状態から、クリップ11をパネルPの取付孔Hに差し込んでいく。取付孔Hの周縁部は、可撓板30の傾斜部33に当接した後、後ガイド部22によってガイドされつつ傾斜部33を押さえつけていく。可撓板30は可撓性を有するため、押さえつけられた傾斜部33は、図4(b)のように、前ガイド部21の間へ倒れていく。
このとき可撓板30は、切欠部34を有するため保持爪27に接触することなく撓むことができる。可撓板30が撓むとこれに支持された解除レバー31も移動するが、解除レバー31に設けられた平行部36は座面部材2のスリット26に入り込むため、座面部材2と接触することなく移動可能である。
【0022】
図4(b)は、取付孔Hの周縁部がロック爪35を押さえつけたまま、保持爪27の挿入側斜面28に当接するに至った状態である。この状態から更にクリップ11を差し込んでいくと、取付孔Hの周縁部は、後ガイド部22によってガイドされつつ保持爪27の挿入側斜面28を押さえつけていく。保持爪27が押さえつけられると、保持爪27を支持している梁部25は後ろへ撓んでいく。
ロック爪35が取付孔Hによる押さえつけから開放されるまでクリップ11が差し込まれると、図4(c)のように、可撓板30の撓みが弾性によって解消され、解除レバー31も元の位置まで戻る。ここまでの動作における解除レバー31の移動は、解除レバー31に設けられた解除保持爪39がスリット26を通過しない程度となっている。そのため、後述のクリップ11を取り外す際の動作で説明するような、解除保持爪39がスリット26に係止して解除レバー31が元の位置に戻らなくなる状況は発生しない。
【0023】
この状態から更にクリップ11を差し込んでいくと、図4(d)のように、取付孔Hの周縁部は、後ガイド部22によってガイドされつつ、パネルPの下面が後ガイド部22の肩部23に当接する状態に至る。このとき、取付孔Hの周縁部は、保持爪27の係止側斜面29と当接しており、保持爪27を支持している梁部25はまだ撓んだままである。この梁部25の撓みが戻ろうとする反力によって、保持爪27の係止側斜面29は取付孔Hの周縁部を斜め下方に押さえつけている。これにより、パネルPは保持爪27の弾性力と後ガイド部22の抗力を受けることとなり、クリップ11はがたつくことなくパネルPに固定される。以上により、クリップ11のパネルPへの取り付けは完了する。なお、クリップ11及びパネルPの取付孔Hは、図4(d)の状態においてこれらの要件を満たすような範囲内ならば、製造時に生じた多少の寸法誤差は吸収され、クリップ11はがたつかずパネルPに安定して固定される。
【0024】
次に、クリップ11をパネルPから取り外す際における動作を説明する。図5は実施例1のクリップ11をパネルPから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。また、図6(a)及び(b)はそれぞれ図5(b)及び(c)におけるVI―VI断面図である。
図5(a)の状態は図4(d)の状態と同じである。すなわち先述のように、取付孔Hの周縁部は保持爪27の係止側斜面29と当接しており、保持爪27を支持している梁部25は撓んだ状態である。この状態からクリップ11が引っ張られると、取付孔Hの周縁部は保持爪27の係止側斜面29を押さえつけ、保持爪27を支持する梁部25は更に撓みを増す。図5(b)のようにパネルPの上面がクリップ11のロック爪35に当接した状態に達すると、クリップ11はそれ以上引き抜けなくなる。したがって、自動車の走行中等の状況において意匠板Bに衝撃荷重が加わった場合でも、意匠板Bに備えられたクリップ11がパネルPの取付孔Hから完全に抜けてしまうことはない。
【0025】
その一方、自動車のメンテナンスをする際においては、意匠板Bを完全にパネルPから取り外さなければいけない場合がある。その場合には、さらに以下の手順によってロック爪35の引っ掛かり状態を解消する必要がある。図5(b)の状態は、図5(a)の状態と比較してパネルPと意匠板Bとの間のスペースが広くなっている。よって以下の解除レバー31を操作する作業スペースを確保できクリップ11の取り外しが容易となる。図5(b)の状態において、手で又は工具を用いて解除レバー31の解除押圧部38を押すと、図5(c)のように、解除レバー31の平行部36が座面部材2のスリット26の中に入り込むとともに、解除レバー31を支持している可撓板30は撓む。
【0026】
平行部36にそれぞれ設けられた一対の解除保持爪39は、図6(a)のように、座面部材2のスリット26からはみ出るように形成されている。そのため、解除保持爪39がスリット26を通過する際には、平行部36は互いに内側に撓みながら通過する。解除保持爪39の通過後は、平行部36は弾性により平行な状態に戻る。解除押圧部38を押す力を取り除くと、可撓板30は弾性により元の状態に戻ろうとする。これにより可撓板30に設けられた解除レバー31も元の位置に戻ろうとするが、解除保持爪39が座面部材2の背面に係止されるため戻ることはできない。したがって、可撓板30の撓みは保持され、図5(c)に示すように、ロック爪35は一対の前ガイドの間に完全に隠れるため、ロック爪35によるパネルPの引っ掛かりは解消状態で保持される。図5(c)の状態においてクリップ11を引き抜くと、図5(d)のようにクリップ11をパネルPから完全にはずすことができる。
実施例1の説明は以上である。
【0027】
次に、実施例2のクリップ12を説明する。実施例2は実施例1の変形であるため、相違点のみ説明し、残りの部分の説明は省略する。図7は実施例2のクリップ12をアダプタ3と座面部材2とに分解した状態を示す分解斜視図である。座面部材2の基板20において、アダプタ3の取付孔Hは、実施例1と比較して上下逆の位置構成となっている。すなわち、可撓板30の先端部において、上側に爪41、下側にT字突起42を有する構成となっている。この構成により、アダプタ3を座面部材2に取り付ける際に、アダプタをスライドすべき方向が上下逆になる。
実施例2の説明は以上である。
【0028】
次に、実施例3のクリップ13を説明する。図8は実施例3のクリップ13を示す斜視図である。クリップ13は意匠板Bと一体に形成されている。意匠板Bを自動車のパネルPに対して組み付けるためには、意匠板Bにあらかじめクリップ13を必要な数だけ形成しておく必要がある。実施例3のクリップ13は、パネルPの取付孔Hに挿入される挿入体とそれを支持する基体とからなるが、実施例3においてはこの挿入体と基体とが一体的に形成されている。そのため、以下の実施例3の説明においては、挿入体と基体との境目は特に明示しないものとする。
【0029】
クリップ13は、図8のように、帯状の部材である基板50と、そこから後ろへ張り出す左右一対の後ガイド部51とを備える。基板50は、先端部には幅方向のテーパが付けられているが、それ以外の部分は幅が一定である。基板50の中央右側には、左右一対のスリット54,54と、それらに挟まれた梁部55とが形成されている。梁部55は、上下端の二箇所で支持されており、前後に撓むことが可能となっている。梁部の前面中央部には、保持爪56が設けられている。保持爪56は、側面視が山形状であり、上側に挿入側斜面57を、下側に係止側斜面58を有する。
【0030】
基板50の中央左側には、左右一対のスリット60,60と、それらに挟まれた可撓係止片61と、可撓係止片61を撓ませるための解除レバーとが形成されている。可撓係止片61には、手前に突出してロック爪62が設けられている。ロック爪62は、上部に挿入側斜面63、下部に係止面64を有する。
解除レバーは、可撓係止片61の下端を延長するように、略L字状に形成されている。解除レバーの先端は、解除レバーを操作する力点としての解除押圧部66となっている。解除レバーの水平部分は、基板50から手前に垂直に形成され、その両側にはスリット60,60に係止可能な一対の解除保持爪67,67が形成されている。図8に示すように、側面視において梁部55と可撓係止片61の挿入側斜面57,63は同様の傾斜状態となるように形成されている。
【0031】
後ガイド部51は、基板50の背面から平行に張り出して形成された左右一対の面状部材である。後ガイド部51は、基板50のスリット54,54,60,60よりも外側に形成されている。また、後ガイド部51は、下端において意匠板Bに連結されており、基板50がねじれることのないように強度を保っている。後ガイド部51が基板50から張り出す量は、肩部52を境に下部のほうが上部までより大きくなっており、上部においては上に行くに従って徐々に小さくなっていっている。後ガイド部51の間には、図8のように、基板50と平行に補強板53が設けられている。
【0032】
次に、図8の状態のクリップ13をパネルPに対して取り付ける際の動作を説明する。図9は実施例3のクリップ13をパネルPに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
まず、図9(a)の状態から、クリップ13をパネルPの取付孔Hに差し込んでいく。取付孔Hの周縁部は、可撓係止片61の挿入側斜面63に当接した後、後ガイド部51によってガイドされつつ、保持爪56とロック爪62の挿入側斜面57,63を押さえつけていく。可撓係止片61は可撓性を有するため、押さえつけられた保持爪56とロック爪62は、図9(b)のように、スリット60,60の間へ沈んでいく。
【0033】
図9(b)は、取付孔Hの周縁部が保持爪56とロック爪62の挿入側斜面57,63の下端に至った状態である。このとき、梁部55及び可撓係止片61は、クリップ13を差し込む動作において最大の撓み量となる。
ロック爪62が取付孔Hによる押さえ付けから開放されるまでクリップ13が差し込まれると、可撓係止片61の撓みが弾性によって解消され、これに支持されている解除レバー65も元の位置まで戻る。ここまでの解除レバー65の移動量は、解除レバー65に設けられた解除保持爪67が、スリット60,60の間を完全には通過しない程度となっている。そのため、後述のクリップ13を取り外す際の動作で説明するような、解除保持爪67がスリット60,60に係止して解除レバーが元の位置に戻らなくなる状況は発生しない。
【0034】
この状態から更にクリップ11を差し込んでいくと、図9(c)のように、取付孔Hの周縁部は、後ガイド部51によってガイドされつつ、パネルPの下面が後ガイド部51の肩部52に当接する状態に至る。このとき、取付孔Hの周縁部は、保持爪56の係止側斜面58と当接しており、保持爪56を支持している梁部55はまだ撓んだままである。この梁部55の撓みが戻ろうとする反力によって、保持爪56の係止側斜面58は取付孔Hの周縁部を斜め下方に押さえつけている。これにより、パネルPは保持爪56の弾性力と後ガイド部51の抗力を受けることとなり、クリップ13はがたつくことなくパネルPに固定される。以上により、クリップ13のパネルPへの取り付けは完了する。なお、クリップ13及びパネルPの取付孔Hは、図9(c)の状態においてこれらの要件を満たすような範囲内ならば、製造時に生じた多少の寸法誤差は吸収され、クリップ13はがたつかずパネルPに安定して固定される。
【0035】
次に、クリップ13をパネルPから取り外す際における動作を説明する。図10は実施例3のクリップ13をパネルPから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
図10(a)の状態は図9(c)の状態と同じである。すなわち先述のように、取付孔Hの周縁部は保持爪56の係止側斜面58と当接しており、保持爪56を支持している梁部55は撓んだ状態である。この状態からクリップ13が引っ張られると、取付孔Hの周縁部は保持爪56の係止側斜面58を押さえつけ、保持爪56を支持する梁部55は更に撓みを増す。図10(b)のようにパネルPの上面がクリップ13のロック爪62の係止面64に当接した状態に達すると、クリップ13はそれ以上引き抜けなくなる。したがって、自動車の走行中等の状況において意匠板Bに衝撃荷重が加わった場合でも、意匠板Bに備えられたクリップ13がパネルPの取付孔Hから完全に抜けてしまうことはない。
【0036】
その一方、自動車のメンテナンスをする際においては、意匠板Bを完全にパネルPから取り外さなければいけない場合がある。その場合には、さらに以下の手順によってロック爪62の引っ掛かり状態を解消する必要がある。図10(b)の状態は、図10(a)の状態と比較してパネルPと意匠板Bとの間のスペースが広くなっている。よって以下の解除レバー65を操作する作業スペースを確保できクリップ13の取り外しが容易となる。図10(b)の状態において、手で又は工具を用いて解除レバー65の解除押圧部66を押すと、図10(c)のように、解除レバー65が基板50のスリット60,60の中に沈むともに、解除レバー65を支持している可撓係止片61は撓む。
【0037】
解除レバー65に設けられた一対の解除保持爪39のなす幅は、図10(a)のように、基板50のスリット60,60の間隔よりも広く形成されている。そのため、解除保持爪67がスリット26を通過する際には、撓みながら通過する。解除押圧部38を押す力を取り除くと、可撓係止片61は弾性により元の状態に戻ろうとする。これにより可撓係止片61に設けられた解除レバー65も元の位置に戻ろうとするが、解除保持爪67が基板50の背面に係止されるため戻ることはできない。したがって、可撓係止片61の撓みは保持され、図10(c)に示すように、ロック爪62はスリット60,60の間に完全に隠れるため、ロック爪62によるパネルPの引っ掛かりは解消状態で保持される。図10(c)の状態においてクリップ13を引き抜くと、図10(d)のようにクリップ13をパネルPから完全にはずすことができる。
実施例3の説明は以上である。
【0038】
次に実施例4のクリップ14を説明する。実施例4は実施例3との相違点のみを説明し、それ以外の部分の説明は省略する。図11は実施例4のクリップ14を(a)斜め前から見た斜視図及び解除レバー65を斜め下から見た拡大図、ならびに(b)斜め後ろから見た斜視図である。図12は実施例4のクリップ14をパネルPに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。図13は実施例4のクリップ14をパネルPから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
実施例4のクリップ14は実施例3と異なり、解除レバー65に解除保持爪67を設けない。その代わりに、図11のように、略L字状の解除レバー65の屈曲した部分の外側に解除保持溝68が設けられている。図13(b)において、解除レバー65を押してロック爪62の引っ掛かりの解消状態を保持する際には、解除保持爪としての補強板53が解除レバー65の解除保持溝68に係止する。なお、図12(b)に示すように、クリップ14を取り付ける際には、補強板53が解除保持溝68に係止して解除レバー65が戻らなくなってしまうことはない。
実施例4の説明は以上である。
【0039】
次に実施例5のクリップ15を説明する。図14は実施例5のクリップ15を差込体8と基体7とに分解した状態を示す斜視図である。図15は実施例5のクリップ15の差込体8と基体7とを組み付けた状態を示す斜視図である。
クリップ15は、図14のように、基体7と差込体8とで構成され、図15のように互いに組み付けた状態で上方向に向かってパネルPの取付孔Hに挿入される。基体7と差込体8は共に左右対称な形状をもった樹脂製の部材である。
【0040】
まず、図14を参照しながら、基体7を説明していく。基体7は意匠板Bと一体的に形成されている。意匠板Bを自動車のパネルPに対して組み付けるためには、意匠板Bにあらかじめクリップ15の基体7を必要な数だけ形成しておく必要がある。
【0041】
基体7は、中央に設けられた差込体8の基体係合片75,75を係合させる係合板70と、これをはさむように設けられた左右一対のガイド板71とを有する。係合板70の中央部には、差込体8の基体係合片75,75の先端に形成された基体係合爪76を係合させる係合孔73が形成されている。係合板70の下部には、解除保持爪98を差し込んで係止させるための、差込孔74が形成されている。係合板70の左右それぞれには、クリップ15をパネルPの取付孔Hに係合させるときのガイドとして、及び係合板70の補強としての、ガイド板71が形成されている。ガイド板71は前後対称の形状であり、中間の高さに肩部72を有する。ガイド板71は肩部72を境に下部の幅が上部の幅よりも広くなっている。
【0042】
次に、図14を参照しながら、差込体8を説明していく。差込体8は、基体7の係合板70に係合するための基体係合片75,75を有する。基体係合片75,75は、上端どうしが連結された前後一対の板状部材であり、基体7の係合板70を挟み込めるような間隔で設けられている。各基体係合片75,75の下端には、内側に向かって、基体7の係合孔73に係合する基体係合爪76が形成されている。
【0043】
差込体8には、基体係合片75,75の頂部から、基体係合片75,75の手前を覆うように、中央に第一の緩衝係止片80、左右に一対の可撓係止片90,90が設けられている。第一の緩衝係止片80と可撓係止片90,90は、スリットを隔てて平行に並んでいる。差込体8には、基体係合片75,75の頂部から、基体係合片75,75の後ろを覆うように、第二の緩衝係止片81が設けられている。第一、第二の緩衝係止片81及び可撓係止片90,90は、可撓性を有し、それぞれ独立して撓むことができる。第一及び第二の緩衝係止片80,81の下端は、内側に折り返され、基体係合片75,75の下端と連結している。
【0044】
第一及び第二の緩衝係止片80,81には、それぞれ外側に向かって、クリップ15のがたつきを防止するための保持爪82,82が設けられている。保持爪82,82は、側面視が山形状であり、上側に挿入側斜面83,83を、下側に係止側斜面84,84を有する。可撓係止片90,90はそれぞれ、上部に挿入側斜面91,91を、中間部に平坦部92,92を、下端に衝撃によるクリップ15の脱落を防止するためのロック爪93,93を有する。
【0045】
第一、第二の緩衝係止片80,81及び各可撓係止片90,90の挿入側斜面83,83,91,91は、全て同じ傾斜状態であり、下へ向かうにしたがって張り出し量が大きくなる。第一及び第二の緩衝係止片80,81の挿入側斜面83,83の下端からは、係止側斜面84,84が続き、張り出し量が少なくなっていく。可撓係止片90,90の挿入側斜面91,91の下端からは、張り出し量の変わらない平坦部92,92が続く。平坦部92,92の下端にはロック爪93,93があり、張り出し量が段差状に減少する。このとき、ロック爪93,93は、縦方向において第一の緩衝係止片80の係止側斜面84の中間部に位置している。
【0046】
可撓係止片90,90には、これを撓ませるための解除レバー94が設けられている。解除レバー94は、左右それぞれのロック爪93,93の裏から下方にのびている平行部95,95と、平行部95,95の末端を互いに水平に連結する連結部96とを備える。連結部96には、解除レバー94を操作する力点としての、溝状の解除押圧部97が形成されている。連結部96の裏側には、ロック爪93,93の解除状態を保持するための鉤状の解除保持爪98が、内側に突出して設けられている。解除保持爪98の根元は撓むことができ、基体7の差込孔74を通過するときには撓むことによって通過することができる。
【0047】
次に、クリップ15をパネルPに取り付ける際の動作を説明する。図16は実施例5のクリップ15をパネルPに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。まず、図16(a)の状態から、クリップ15をパネルPの取付孔Hに差し込んでいく。取付孔Hの周縁部は、第一、第二の緩衝係止片80,81及び可撓係止片90,90の挿入側斜面91,91に当接した後、挿入側斜面91,91を、同時に内側に押さえつけていく。押さえつけられた挿入側斜面91,91は、図16(b)のように、内側へとすぼまるように撓んでいく。
【0048】
図16(b)は、取付孔Hの周縁部が挿入側斜面83,83,91,91の下端に至った状態である。このとき、第一、第二の緩衝係止片80,81及び可撓係止片90,90は、クリップ15を差し込む動作において最大の撓み量となる。ロック爪93,93が取付孔Hによる押さえ付けから開放されるまでクリップ15が差し込まれると、可撓係止片90,90の撓みが弾性によって解消され、これに支持されている解除レバー94も元の位置まで戻る。ここまでの解除レバー94の移動量は、解除レバー94に設けられた解除保持爪98が基体7の差込孔74を完全には通過しない程度となっている。そのため、後述のクリップ15を取り外す際の動作で説明するような、解除保持爪98が差込孔74に係止して解除レバー94が元の位置に戻らなくなる状況は発生しない。
【0049】
更に差し込んでいくと、図16(c)のように、取付孔Hの周縁部は、基体7のガイド板71によってガイドされつつ、ガイド板71の肩部72に当接する状態に至る。このとき、取付孔Hの周縁部は、保持爪82,82の係止側斜面84,84と当接しており、保持爪82,82を支持している第一及び第二の緩衝係止片80,81はまだ撓んだままである。この撓みが戻ろうとする反力によって、保持爪82,82の係止側斜面84,84は取付孔Hの周縁部を斜め下方に押さえつけている。これにより、パネルPは保持爪82,82の弾性力とガイド板71の抗力を受けることとなり、クリップ15はがたつくことなくパネルPに固定される。以上により、クリップ15のパネルPへの取り付けは完了する。なお、クリップ15及びパネルPの取付孔Hは、図16(c)の状態においてこれらの要件を満たすような範囲内ならば、製造時に生じた多少の寸法誤差は吸収され、クリップ15はがたつかずパネルPに安定して固定される。
【0050】
次に、クリップ15をパネルPから取り外す際における動作を説明する。図17は実施例5のクリップ15をパネルPから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
図17(a)の状態は図16(c)の状態と同じである。すなわち先述のように、取付孔Hの周縁部は保持爪82,82の係止側斜面84,84と当接しており、保持爪82,82を支持している緩衝係止片80,81は撓んだ状態である。この状態からクリップ15が引っ張られると、取付孔Hの周縁部は保持爪82,82の係止側斜面84,84に力を与え、保持爪82,82を支持する緩衝係止片80,81は更に撓みを増す。図5(b)のようにパネルPの上面がクリップ15のロック爪93,93に当接した状態に達すると、クリップ15はそれ以上引き抜けなくなる。したがって、自動車の走行中等の状況において意匠板Bに衝撃荷重が加わった場合でも、意匠板Bに備えられたクリップ15がパネルPの取付孔Hから完全に抜けてしまうことはない。
【0051】
その一方、自動車のメンテナンスをする際においては、意匠板Bを完全にパネルPから取り外さなければいけない場合がある。その場合には、さらに以下の手順によってロック爪93,93の引っ掛かり状態を解消する必要がある。図17(b)の状態は、図17(a)の状態と比較してパネルPと意匠板Bとの間のスペースが広くなっている。よって以下の解除レバー94を操作する作業スペースを確保できクリップ15の取り外しが容易となる。図17(b)の状態において、手で又は工具を用いて解除レバー94の解除押圧部97を押すと、図17(c)のように、解除レバー94とこれを支持している可撓係止片90,90は撓む。このとき、連結部96の裏側に設けられた解除保持爪98は、基体7の差込孔74に完全に入り込む。解除押圧部97を押す力を取り除くと、可撓係止片90,90とこれに支持された解除レバー94は弾性により元の状態に戻ろうとする。しかし、解除保持爪98が係合板70の背面に係止されるため、解除レバー94は元の位置に戻ることはできない。このとき、図17(c)に示すように、ロック爪93,93は、外側への張り出しが第一の緩衝係止片80の係止側斜面84よりも低い位置にある。したがって、ロック爪93,93によるパネルPの引っ掛かりは解消状態で保持される。この状態においてクリップ15を引き抜けば、図17(d)のようにクリップ15をパネルPから完全にはずすことができる。
実施例5の説明は以上である。
【0052】
次に実施例6のクリップ16を説明する。実施例6のクリップ16は実施例5との相違点のみ説明して残りの構成の説明は省略する。図18は実施例6のクリップ16を差込体8と基体7とに分解した状態を示す斜視図である。図19は実施例6のクリップ16の差込体8と基体7とを組み付けた状態を示す斜視図である。
【0053】
図19に示すように、実施例6のクリップ16は、実施例5とは異なり、左右非対称である。図18に示すように、差込体8の手前には可撓係止片90が一本のみ設けられており、第一の緩衝係止片80は右に、可撓係止片90は左にあり、スリットを隔てて平行に並んでいる。このため、可撓係止片90に設けられた解除レバー94には、平行部と連結部の区別はない。解除レバー94が全体の左側に偏っているため、解除レバー94の末端に設けられた解除押圧部97と解除保持爪98も左側に偏って設けられている。これに合わせて、図18に示すように、解除保持爪98が差し込まれる基体7の差込孔74も左側に偏って設けられている。この構成により、実施例5と比較して、クリップ16の構造がより簡単になっている。
実施例6の説明は以上である。
【0054】
次に実施例7のクリップ17を説明する。図20は実施例7のクリップ17を差込体8と基体7とに分解した状態を示す斜視図である。図21は実施例7のクリップ17の基体7と差込体8とを組み付けた状態を示す斜視図である。
クリップ17は、図20のように、基体7と差込体8とで構成され、図21のように互いに組み付けた状態で上方向に向かってパネルPの取付孔Hに挿入される。基体7と差込体8は共に左右対称な形状をもった樹脂製の部材である。
【0055】
まず、図20を参照しながら、基体7を説明していく。基体7は意匠板Bと一体的に形成されている。意匠板Bを自動車のパネルPに対して組み付けるためには、意匠板Bにあらかじめクリップ17の基体7を必要な数だけ形成しておく必要がある。
【0056】
基体7は、中央に設けられた差込体8の基体係合片75,75を係合させる係合板70と、これをはさむように設けられた左右一対のガイド板71,71とを有する。係合板70の中央部には、差込体8の基体係合片75,75の先端に形成された基体係合爪76を係合させる係合孔73が形成されている。係合板70の左右それぞれには、クリップ17をパネルPの取付孔Hに係合させるときのガイドとして、及び係合板70の補強としてのガイド板71,71が形成されている。ガイド板71は前後対称の形状であり、中間の高さに肩部72を有する。ガイド板71は肩部72を境に下部の幅が上部の幅よりも広くなっている。
【0057】
次に、図20を参照しながら、差込体8を説明していく。差込体8は、基体7の係合板70に係合するための基体係合片75,75を有する。基体係合片75,75は、上端どうしが連結された前後一対の板状部材であり、基体7の係合板70を挟み込めるような間隔で設けられている。各基体係合片75,75の下端には、内側に向かって、基体7の係合孔73に係合する基体係合爪76が形成されている。
【0058】
差込体8には、基体係合片75,75の頂部から、基体係合片75,75の手前を覆うように、中央に可撓係止片90、左右に一対の第一の緩衝係止片80,80が設けられている。可撓係止片90と第一の緩衝係止片80,80は、スリットを隔てて平行に並んでいる。差込体8には、基体係合片75,75の頂部から、基体係合片75,75の後ろを覆うように、第二の緩衝係止片81が設けられている。第一、第二の緩衝係止片80,80,81及び可撓係止片90は、可撓性を有し、それぞれ独立して撓むことができる。
【0059】
第一及び第二の緩衝係止片80,80,81には、それぞれ外側に向かって、クリップ17のがたつきを防止するための保持爪82,82,82が設けられている。保持爪82,82,82は、側面視が山形状であり、上側に挿入側斜面83,83,83を、下側に係止側斜面84,84,84を有する。可撓係止片90は、上部に挿入側斜面91を、中間部に平坦部92を、下端に衝撃によるクリップ17の脱落を防止するためのロック爪93を有する。
【0060】
第一、第二の緩衝係止片80,80,81及び各可撓係止片90の挿入側斜面83,83,83,91は、全て同じ傾斜状態であり、下へ向かうにしたがって張り出し量が大きくなる。第一及び第二の緩衝係止片80,80,81の挿入側斜面83,83,83の下端からは、係止側斜面84,84,84が続き、張り出し量が少なくなっていく。可撓係止片90の挿入側斜面91の下端からは、張り出し量の変わらない平坦部92が続く。平坦部92の下端にはロック爪93があり、張り出し量が段差状に減少する。このとき、ロック爪93は、縦方向において第一の緩衝係止片80,80の係止側斜面84,84の中間部に位置している。
【0061】
可撓係止片90には、可撓係止片90を撓ませるための解除レバー94が設けられている。解除レバー94は、左右それぞれのロック爪93の裏から下方にのびている。解除レバー94の末端には、解除レバー94を操作する力点としての、ブロック状の解除押圧部97が外側に突出して設けられている。
第一の緩衝係止片80,80の下端には、それぞれの下端から下方にのびている平行部85,85と、平行部85,85の末端を互いに水平に連結する連結部86とが形成されている。連結部86の裏側には、ロック爪93の解除状態を保持するための解除保持爪87が形成されている。解除保持爪87の両側は切れ込みとなっており、解除保持爪87は撓むことができる。解除押圧部97は、第一の緩衝係止片80,80の間を通過し内側に移動する際には、解除保持爪87を撓ませながら通過することができる。
【0062】
次に、クリップ17をパネルPに取り付ける際の動作を説明する。図22は実施例7のクリップ17をパネルPに取り付ける(a)前、(b)途中、(c)後の状態を示す断面図である。
まず、図22(a)の状態から、クリップ17をパネルPの取付孔Hに差し込んでいく。取付孔Hの周縁部は、第一、第二の緩衝係止片80,80,81及び可撓係止片90の挿入側斜面91に当接した後、挿入側斜面91を、同時に内側に押さえつけていく。押さえつけられた挿入側斜面は、図22(b)のように、内側へとすぼまるように撓んでいく。このとき、第一、第二の緩衝係止片80,80,81及び可撓係止片90は、内側に多く撓んだ場合でも、これらの一部は基体7の係合孔73に逃げることができる。
【0063】
図22(b)は、取付孔Hの周縁部が挿入側斜面83,83,83,91の下端に至った状態である。このとき、第一、第二の緩衝係止片80,80,81及び可撓係止片90は、クリップ17を差し込む動作において最大の撓み量となる。ロック爪93が取付孔Hによる押さえ付けから開放されるまでクリップ17が差し込まれると、可撓係止片90の撓みが弾性によって解消され、これに支持されている解除レバー94も元の位置まで戻る。ここまでの解除レバー94の移動量は、解除レバー94に設けられた解除押圧部97が、第一の緩衝係止片80,80の間を完全には通過しない程度となっている。そのため、後述のクリップ17を取り外す際の動作で説明するような、解除押圧部97が解除保持爪87に係止して解除レバー94が元の位置に戻らなくなる状況は発生しない。
【0064】
更に差し込んでいくと、図22(c)のように、取付孔Hの周縁部は、基体7のガイド板71によってガイドされつつ、ガイド板71の肩部72に当接する状態に至る。このとき、取付孔Hの周縁部は、保持爪82,82,82の係止側斜面84,84,84と当接しており、保持爪82,82,82を支持している第一及び第二の緩衝係止片80,80,81はまだ撓んだままである。この撓みが戻ろうとする反力によって、保持爪82,82,82の係止側斜面84,84,84は取付孔Hの周縁部を斜め下方に押さえつけている。これにより、パネルPは保持爪82,82,82の弾性力とガイド板71の抗力を受けることとなり、クリップ17はがたつくことなくパネルPに固定される。以上により、クリップ17のパネルPへの取り付けは完了する。なお、クリップ17及びパネルPの取付孔Hは、図16(c)の状態においてこれらの要件を満たすような範囲内ならば、製造時に生じた多少の寸法誤差は吸収され、クリップ17はがたつかずパネルPに安定して固定される。
【0065】
次に、クリップ17をパネルPから取り外す際における動作を説明する。図23は実施例7のクリップ17をパネルPから引き抜く(a)前、(b)途中、(c)bの状態における解除保持状態及び(d)後の状態を示す断面図である。
図23(a)の状態は図22(c)の状態と同じである。すなわち先述のように、取付孔Hの周縁部は保持爪82,82,82の係止側斜面84,84,84と当接しており、保持爪82を支持している第一及び第二の緩衝係止片80,80,81は撓んだ状態である。この状態からクリップ17が引っ張られると、取付孔Hの周縁部は保持爪82,82,82の係止側斜面84,84,84に力を与え、保持爪82,82,82を支持する第一及び第二の緩衝係止片80,80,81は更に撓みを増す。図23(b)のようにパネルPの上面がクリップ17のロック爪93に当接した状態に達すると、クリップ17はそれ以上引き抜けなくなる。したがって、自動車の走行中等の状況において意匠板Bに衝撃荷重が加わった場合でも、意匠板Bに備えられたクリップ17がパネルPの取付孔Hから完全に抜けてしまうことはない。
【0066】
その一方、自動車のメンテナンスをする際においては、意匠板Bを完全にパネルPから取り外さなければいけない場合がある。その場合には、さらに以下の手順によってロック爪93の係止を解く必要がある。図23(b)の状態は、図23(a)の状態と比較してパネルPと意匠板Bとの間のスペースが広くなっている。よって以下の解除レバー94を操作する作業スペースを確保できクリップ17の取り外しが容易となる。図23(b)の状態において、手で又は工具を用いて解除レバー94の解除押圧部97を押すと、図23(c)のように、解除レバー94とこれを支持している可撓係止片90は撓む。このとき、解除押圧部97は、連結部86の裏側に設けられた解除保持爪87を撓ませながら、第一の緩衝係止片80,80の間を完全に通過する。解除押圧部97を押す力を取り除くと、可撓係止片90とこれに支持された解除レバー94は弾性により元の状態に戻ろうとする。しかし、解除押圧部97の先端が解除保持爪87に係止されるため、解除レバー94は元の位置に戻ることはできない。このとき、図23(c)に示すように、ロック爪93は、外側への張り出しが第一の緩衝係止片80,80の係止側斜面84,84よりも低い位置にある。したがって、ロック爪93によるパネルPの引っ掛かりは解消状態で保持される。この状態においてクリップ17を引き抜けば、図23(d)のようにクリップ17をパネルPから完全にはずすことができる。
実施例7の説明は以上である。
【0067】
以上の実施例1〜7の構成によれば、保持爪27,56,82を支持する部材の弾性による保持状態が弱まってもクリップ11,12,13,14,15,16,17が取付孔に対して引っ掛かり状態をなすようなロック爪35,62,93が形成されている。したがって、強い衝撃荷重が加わって保持爪27,56,82を支持する部材の弾性による保持状態が弱まっても完全には脱落しない保持力を有する。
また、ロック爪35,62,93にはクリップ11,12,13,14,15,16,17自身の取付孔に対する引っ掛かり状態を解消可能な解除レバー31,65,94が形成されている。したがって引っ掛かり状態を解消することができ、クリップの取り外しが容易となる。
また、クリップ11,12,13,14,15,16,17をパネル部材Pから取り外す際に、保持爪27,56,82が弱まりロック爪35,62,93による引っ掛かり状態を生じるまで取付部材を引くことができる。したがってパネル部材Pと取付部材の間の作業スペースを確保できクリップの取り外しが容易となる。
また、解除レバーによるロック爪35,62,93の引っ掛かりの解消状態を保持することができる解除保持爪39,67,87,98を備えている。したがって、よりクリップ11,12,13,14,15,16,17の取り外しが容易となる。
【0068】
なお、以上の実施例1〜7の構成において、基板20,50や係合板70に対して、保持爪27,56,82およびロック爪35,62,93が前後の片側または両側にあってもよく、これらの数はそれぞれ一つであっても複数であってもよい。また、保持爪27,56,82とロック爪35,62,93の並びは直列であっても並列であってもよい。また、実施例5〜7の構成において、第一及び第二の緩衝係止片80,81の下端は、内側に折り返され基体係合片75,75の下端と連結していても連結していなくてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11 クリップ
12 クリップ
13 クリップ
14 クリップ
15 クリップ
16 クリップ
17 クリップ
2 座面部材
20 基板
21 前ガイド部
22 後ガイド部
23 肩部
24 補強板
25 梁部
26 スリット
27 保持爪
28 挿入側斜面
29 係止側斜面
3 アダプタ
30 可撓板
31 解除レバー
32 垂直部
33 傾斜部
34 切欠部
35 ロック爪
36 平行部
37 連結部
38 解除押圧部
39 解除保持爪
40 アダプタ取付孔
41 爪
42 T字突起
50 基板
51 後ガイド部
52 肩部
53 補強板
54 スリット
55 梁部
56 保持爪
57 挿入側斜面
58 係止側斜面
60 スリット
61 可撓係止片
62 ロック爪
63 挿入側斜面
64 係止面
65 解除レバー
66 解除押圧部
67 解除保持爪
68 解除保持溝
7 基体
70 係合板
71 ガイド板
72 肩部
73 係合孔
74 差込孔
75 基体係合片
76 基体係合爪
8 差込体
80 第一の緩衝係止片
81 第二の緩衝係止片
82 保持爪
83 挿入側斜面
84 係止側斜面
85 平行部
86 連結部
87 解除保持爪
90 可撓係止片
91 挿入側斜面
92 平坦部
93 ロック爪
94 解除レバー
95 平行部
96 連結部
97 解除押圧部
98 解除保持爪
B 意匠板
H 取付孔
P パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部材の取付孔に差し込み可能な差込体と、差込体を支持する基体とから成り、差込体を取付孔に差し込むと、差し込んだ差込体を取付孔に対してガタ詰め状態で保持可能な保持爪を備え、基体に形成又は組み付けられる被取付部材をパネル部材に取り付けるためのクリップであって、
保持爪による保持状態の解除が行われても、差込体が取付孔に対して引っ掛かり状態をなすロック爪が形成されており、
ロック爪には、自身の取付孔に対する引っ掛かり状態を解消可能な解除レバーが形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
前記解除レバーによってロック爪の引っ掛かりの解消状態を保持することができる解除保持爪を備えることを特徴とするクリップ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−112407(P2012−112407A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259976(P2010−259976)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】