説明

クレアチン成分を含有する固形の又は水性のアルカリ性調製物、その製造方法及びその使用

クレアチン成分を含有し、pH値8.0〜12.0に調整する緩衝系を含有する、固形の又は水性のアルカリ性調製物が記載される。この緩衝系を用いて、クレアチンは、胃中で、クレアチンへの変換からより良好に保護される。更に、意外にも、この新規の処方物が顕著により高いバイオアベイラビリティを有し、従って、細胞中に良好に吸収されることが確認された。最後に、本発明による調製物は、極めて良好な感覚受容性の特性を有し、これは同様に予期可能でなかった。この特別な利点のために、本発明による調製物は、傑出して、栄養サプリメント剤、強壮剤、医薬的調製物及び飼料として適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の主題は、クレアチン成分を含有する固形の又は水性のアルカリ性調製物、その製造方法並びに栄養サプリメント剤、強壮剤、医薬調製物並びに飼料としてのその使用である。
【0002】
1832年に、フランスの化学者Chevreul により肉ブイヨンから新規化合物が単離された。Cheuvreul は、この化合物をクレアチンと名付け、かつ、この際、肉のためのギリシャ語の言葉に決定した("Kreas")。この研究は、15年後にJustus von Liebigにより、再度評価され、その際、彼は、クレアチンが脊椎動物の筋形質(Muskelsaft)の天然成分であることを示すことができた。このLiebigにより後に製造された肉エキスは、クレアチンを濃縮した形態(約10質量%)で含有する最初の市販された食品であった。この時に南アメリカ中には、大過剰量の牛肉が存在し、というのも、これは、欠失した冷却手段のために、更なる道程にわたり輸送されることができなかったからである。この動物は、当時は特に、その皮膚、角及び骨の獲得のために維持された。肉エキスの発明は、大きな商業成功であり、というのは、これにより、この動物の肉もが、有効に利用されることができたからである。この肉ブイヨンは、後に、ヨーロッパ中での戦争を通じてもますます重大性を獲得し、かつ、栄養素豊富なエネルギー食品として兵士のために使用された。このLiebigにより開発された肉エキスは、今日でもまだなお、スープ及びソースの味覚的な強化のために愛好されている。
【0003】
1970年代の終わり以来、このクレアチンの検討された作用は前進的に検査された。今日までには、300を超える研究がスポーツの領域で実施され、その際、この研究の約80%が、筋肉量、筋肉力、脂肪不含の身体サイズ及び最大の、短時間の筋肉負担の際の能力に対するクレアチンの著しく有利な作用を、様々なスポーツ分野において示している。クレアチン一水和物は今日では、スポーツ分野において、最も重要な栄養サプリメント剤である。
【0004】
ほんの少し前に、クレアチンの更なる興味のもたれる特性が公知になった。従って、2つの研究において、経口クレアチンサプリメントの著しく有利な作用が、脳機能及び集中力に対して検出された(Rae, Caroline et al.: Oral creatine monohydrate supplementation improves brain Performance: a double-blind, placebo-controlled, cross-over trial. Proceedings of the Royal Society of London, Series B: Biological Sciences (2003), 270(1529), 2147-2150; Watanabe, Airi et al.: Effects of creatine on mental fatigue and cerebral hemoglobin oxygenation. Neuroscience Research (Oxford, United Kingdom) (2002), 42(4), 279-285)。
【0005】
更に、クレアチンが酸化防止剤的な及び神経保護作用的な特性を有し、かつ、従って、環境の影響による細胞の損傷の予防のためにも使用できることが示されることができた(Sestili, Piero et al.: Creatine supplementation affords cytoprotection in oxidatively injured cultured mammalian cells via direct antioxidant activity. Free Radical Biology & Medicine (2006), 40(5), 837-849; P. Klivenyi et al.: Neuroprotective effects of creatine in a transgenic animal model of amyotrophic lateral sclerosis. Nature Medicine 5, 347-350 (1999))。クレアチンは、従って、将来的には、アンチエイジングの分野においても、重要な意味合いを獲得するだろう。
【0006】
このクレアチンの有利な作用は、現在では、医薬的分野においても集中的に検査され、その際、クレアチンは、パーキンソン及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療でも、臨床フェーズ3において、そして、ハンチントン舞踏病ではフェーズ2にある(EP 804 183 B1)。クレアチンの喘息に対する治療薬としての成功した使用も既に指向されている(EP 911 026 B1)。骨の形成の際には、クレアチンはin vitroでもまた同様にin vivoでも有利な作用を示している。骨の強化及び変性による骨−及び軟骨疾患、例えば骨粗鬆症の治療及び予防のための使用は、試験され、かつ、極めて良好な結果を提供している(EP 1 100 488 B1 ; Gerber, I et al.: Stimulatory effects of creatine on metabolic activity, differentiation and mineralization of primary osteoblast-like cells in monolayer and micromass cell cultures. European Cells and Materials (2005), 10, 8-22; Chilibeck, P. D. et al.: Creatine monohydrate and resistance training increase bone mineral content and density in older men. Journal of Nutrition, Health & Aging (2005), 9(5), 352-355)。
【0007】
更に、クレアチン−補給が、身体サイズの増加を生じることが公知である。これは、まず、筋肉中への水の増加した吸収のためである。このクレアチンは、長期的に、しかしながら、非直接的に、筋原繊維中での増加したタンパク質合成又は減少したタンパク質代謝により、筋肉量の増加を生じるようである(Int J Sports Med 21 (2000), 139-145)。結果として、従って、高められた脂肪不含の身体サイズを得る。
【0008】
このクレアチン自体の他に、即ち、クレアチン−一水和物は、この間に、また数々のクレアチン−塩、例えばクレアチンアスコルバート、−シトラート、−ピルバート、−ホスファート等々も、同様に栄養サプリメント剤として適していることが示されている。無論、この箇所では、このヨーロッパ特許EP 894 083及びドイツ国公開公報DE 197 07 694 A1は、技術水準としてあげられている。
【0009】
このクレアチンの代謝及び作用様式は、極めて良く試験されている。この生合成は、グリシン及びL−アルギニンから出発する。哺乳類では、特に、腎臓中では、また、肝臓及び膵臓でも、L−アルギニンのグアニジノ基は、酵素アミノトランスフェラーゼにより開裂され、N−C−N−基がグリシンに移行される。L−アルギニンは、この際、L−オルニチンに変換される。このようにして形成されたグアニジノ酢酸は、脊椎動物で特に肝臓中で実施される次の段階で、酵素トランスメチラーゼを用いて、クレアチンに変換される。この際、S−アデノシルメチオニンがメチル基ドナーとして使用される。クレアチンは、引き続き、血液循環中で分散し、かつ、目的器官へと輸送される。細胞膜を通じた細胞中へのこの輸送は、この際、特異的なNaCl依存性のクレアチントランスポーターにより生じる(Speer O, Neukomm LJ1 Murphy RM, Zanolla E, Schlattner U, Henry H, Snow RJ, Wallimann T. Creatine transporters: a reappraisal. Mol Cell Biochem. 2004 Jan-Feb;256257(1 -2):407-24)。
【0010】
クレアチンは、細胞のエネルギー代謝において重要な役割を果たし、その際、これは、エネルギー豊富なリンクレアチンとして、アデノシン三リン酸(ATP)の他に、重要な筋肉のエネルギー貯蔵庫を提示する。筋肉の静止状態においては、ATPは、ホスファート基をクレアチンに移すことができ、その際、ホスホクレアチンが形成され、これは、次いで、ATPと直接的な平衡にある。筋肉動作時には、ATP蓄えを可能な限り再度補充することは決定的な意味合いを有する。このためには、この最初の1秒間に、このホスホクレアチンの最大の筋肉負荷が提供される。これは、極めて迅速な反応において、酵素クレアチンキナーゼにより、アデノシンジホスファートに対してホスファート基が移行され、かつ従って、ATPを再形成することができる。これは、ローマン反応(Lohmann-Reaktion)とも呼ばれる。
【0011】
更に、クレアチンは、細胞中でのエネルギー伝達の際に重要な機能を有する。このように名付けられるクレアチン−シャトル−系は、エネルギーをミトコンドリアからエネルギーが必要とされる細胞中の部位へと輸送する。
【0012】
強力な及び長期間にわたり停止される筋肉作動の場合には、この天然の、体内に存在するクレアチンストックは迅速に消尽される。この理由から、とりわけ、競技スポーツ選手では狙いを定めたクレアチン投与が、忍耐力及び能力に対して有利に作用し、その際、体内中での不所望な濃縮プロセス又は不利な分解生成物は知られていない。このための理由は、クレアチンが、過剰な供給の際には身体により、腎臓を介して排出されることにあるようである。更に、クレアチンは、一定の速度でもって、環式の廃棄生成物クレアチンに変換され、これは同様に、腎臓を介して排出され、かつ、従って、第2の代謝的な分解経路を示す。
【0013】
クレアチンの筋肉組織中への取り込みは、NaCl依存性のクレアチントランスポーターにより制御され、かつ、炭水化物及びタンパク質の同時の吸収により有利に影響を及ぼされることができる。この際、クレアチンと炭水化物の組み合わせは、クレアチン単独の服用に比較して、60%まで高められた、筋肉中でのクレアチン−含有量の上昇を生じることができることが示された。(Green AL, Hultman E, Macdonald IA, Sewell DA, Greenhaff PL. Carbohydrate ingestion augments skeletal muscle creatine accumulation during creatine supplementation in humans. Am J Physiol. 1996 Nov;271 (5 Pt 1):E821-6)。筋肉細胞中へのクレアチンの吸収の際のインスリンの排出は重要な役割を果たすことが示されることができた。筋肉組織中でのクレアチン濃度及び排出されたインスリン量の向上の間には、線形の関係が存在する(Steenge GR, Simpson EJ, Greenhaff PL. Proteinand carbohydrate-induced augmentation of whole body creatine retention in humans. J Appl Physiol. 2000 Sep;89(3): 1165-71)。
【0014】
その争われていない有利な生理学的な特性の他に、クレアチンは、しかしながら、相応する水溶液中では、顕著な安定性を有しないとの欠点も有する。クレアチンは、この際、水による分解により、クレアチニンへとサイクルする。このサイクル速度は、溶液のpH値及び温度に依存性であり、その際、この濃度は重要でない。特に、中性及び酸性のpH範囲においては、クレアチニンへの変換は極めて迅速に経過する。クレアチンのこの媒体中での迅速な分解のために、ヒト及び動物の栄養のための水性又は湿式の処方物中での使用は、実質的に不可能である。1〜2の胃のpH値で既に、滞留時間に応じて、クレアチンのクレアチニンへの著しい分解が生じることができる(Greenhaff, P. L.: Factors Modifying Creatine Accumulation in Human Skeletal Muscle. In: Creatine. From Basic Science to Clinical Application. Medical Science Symposia Series Volume 14, 2000, 75-82)。
【0015】
pH値に依存したクレアチンの安定性は、既に1928年から詳細に検査され、かつ、アルカリ範囲内でのこのより高い安定性が、既に、この時から公知である(Cannan, Robert Keith; Shore, Agnes. Creatine-creatinine equilibrium. The apparent dissociation constants of creatine and Creatinine. Biochemical Journal (1928), 22, 920-9)。アルカリ性クレアチンの、栄養に用いられる調製物のための使用は、しかしながら、まず最初に、もっと後に記載されたものである。
【0016】
従って、EP 669 083 A2は、アルカリ性クレアチン−飲料及びその製造を請求し、これは、クレアチンの安定性により、保存プロセスの際に際だっている。この保護範囲は、この際、1)塩基性pHを有する水を装入し、加熱し、2)100mlあたり1〜3gのクレアチンを撹拌しながら溶解し、かつ、3)この栄養物質含有量を高めるための及びこの風味を改善するための添加剤を添加する方法に及ぶ。pH値の調整のための特殊な塩基は、この出願中には記載されていない。
【0017】
US 6,399,661は、栄養目的に使用されるべきクレアチン調製物を請求する。この請求される製造は、3工程の方法を介して経過し、つまり、1)アルカリ性粉末を粉末状クレアチンと混合して、pH7〜14を有する混合物を得て、2)粉末状の添加剤を添加して、この混合物の甘み及び風味を改善し、3)更なるアルカリ性粉末を添加して、この混合物のpH値を、7〜14に調整する。塩基としては、有利には、炭酸ナトリウム及び/又はマグネシウム−グリセロールホスファートが使用される。更に、アルカリ性成分は、水酸化物、カーボナート、重炭酸塩、塩化物、木ラテックス(Baumlatex)又はホスファートの群から選択されることができる。
【0018】
EP 1 520 580 A1は、哺乳類及びヒトでの、pH7〜14を有するクレアチン調製物の使用による、忍耐力の向上のための方法を請求する。この使用される調製物は、US 6,399,661中に前もって記載された混合物に相当する。
【0019】
技術水準に応じたこの調製物の欠点は、既に少量の酸が、この混合物を中和又は酸性pHに調節するために十分であるとの事実である。この実施においては、この種のクレアチン調製物の数グラムの最大の用量が選択される。これは、水中での溶解後に最初は安定であり、この経口投与後に、このような用量は、この少量の含有された塩基のために迅速に、胃の酸により酸性のpH値に調整され、かつ、クレアチンは従って不安定になる。
【0020】
この技術水準により公知の塩基性クレアチン調製物は、従って、身体に、最大で可能な量では提供されることができず、というのは、更に、胃の酸性の媒体中で、クレアチンの一部は、クレアチニンに変換されるからである。
【0021】
このクレアチンの安定性に関して説明された技術水準の欠点からは、クレアチンをより良好に胃中でのクレアチニンへの分解から保護する調製物を開発するとの課題が本発明のために提示される。決定的なのは、この際、身体では役に立たず、かつ、従って、腎臓を介して身体から排出されなくてはならないクレアチニンが形成されることのない、クレアチンでの体細胞の最適な供給である。
【0022】
この課題は、クレアチン成分の他に、pH値8.0〜12.0に調整する緩衝系を含有するクレアチン成分を含有する調製物の提供により解決された。本発明の有利な一実施態様において、この調製物は、特に有利には固形又は水性であるアルカリ性調製物である。
【0023】
この処方物を用いて、この提示課題は完全に満たされることができることが示されることができ、つまり、クレアチンは、緩衝系により胃中でクレアチニンへの変換から良好に保護される。意外にも、この新規の処方物が顕著により高いバイオアベイラビリティを有し、従って、細胞中に吸収されることが確認された。更に、本発明による調製物は、極めて良好な感覚受容性(organoleptisch)の特性を有し、これは同様に予期可能でなかった。
【0024】
本発明による調製物は、クレアチン成分及び緩衝系からなり、その際、この緩衝系は、弱酸及び相応する塩基からなる組み合わせを提示する。クレアチン成分として、有利には、クレアチン、クレアチン一水和物及び/又はこの少なくとも1種の塩並びに付加化合物又は錯体化合物が使用される。 特に有利には、本発明の範囲内において、少なくとも1種の塩、少なくとも1種の付加化合物及び/又は錯体化合物が、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、ピルビン酸、フマル酸、アスパルギン酸、グルコン酸、α−ケトグルタル酸、シュウ酸、ピログルタミン酸、3−ニコチン酸、マレイン酸、硫酸、酢酸、ギ酸、リン酸、塩酸、2−ヒドロキシ安息香酸、α−リポ酸、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、タウリン、ベタイン、コリン及びメチオニンからなる群から選択されている。有利な一実施態様において、クレアチン成分は、固形、特に有利には粉末として又は水溶液中に存在する。
【0025】
緩衝系が、pH値8.0〜12.0、有利には10.0〜11.0に調節することが本発明により重要であるようである。有利な緩衝系として、本発明は、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる混合物を予定する。この両方の成分の比は、広範囲で自由に選択されることができ、その際、これらは、有利には、この処方物のpHが10.0〜11.0に調整されるように選択される。この際、この混合物比の正しい選択では、この使用量は実質的に限定されないことが有利である。従って、1対1混合物の使用の際には、必然的にpH値10.4に調整され、その際、これは、緩衝液の使用される全体の量には依存しない。
【0026】
従って、官能刺激性の観点から許容可能なpH値に調整され、かつ、同時に、このクレアチンは、最適な様式において、酸の影響から保護され、これにより、クレアチニンへの変換が回避される。
【0027】
更なる緩衝系として、リン酸水素ナトリウム及びリン酸ナトリウム又はL−リシン及びL−リシンナトリウム塩又はL−アルギニン及びL−アルギニン−ナトリウム塩からなる混合物もが考慮され、その際、この使用される比は、再度、この処方物のpH値が有利には10.0〜11.0に調節されるように選択される。
【0028】
この処方物は、緩衝液成分に関して限定されず、その際、特に、調製物中に存在することができる緩衝液成分の量は、制限されない。栄養生理学的な理由から、但し、この調整物の全体の質量に対して0.1〜90.0質量%の量が推奨される。特に有利には、この調製物の全体の質量に対して2.5〜15.0質量%、特には5.0〜10.0質量%の量である。
【0029】
意外にも、この記載された緩衝系の使用の際には、これは、胃中でクレアチンのより少ない分解を生じるのみならず、この投与されたクレアチンはより良好にも細胞中に吸収されることが判明した。
【0030】
従って、実験においては、本発明による処方物が、クレアチン一水和物又は技術水準から公知である場合のアルカリ性処方物の使用の際と比較して、このクレアチン濃度の顕著に高められた上昇を筋肉中で生じることが示されることができた。
【0031】
この関連において、この処方物のナトリウム含有量が、このバイオアベイラビリティ及びクレアチンの細胞中への吸収に対して決定的な影響を有することが示されることができた。これは、クレアチントランスポーターのナトリウムイオンに対する依存性のためであるようである。クレアチンの筋肉中への吸収の改善のための、このクレアチン及びナトリウム塩からなる混合物の使用は、これまでには、まだ記載されておらず、かつ、高い炭化水素−又はタンパク質用量の使用のこれまでの実施に対して、著しい利点を提供する。
【0032】
本発明は、従って、緩衝系の他に、また選択的に、1種又は数種の更なる生理学的に許容可能なナトリウム塩又はこの混合物の、本発明による調製物中への組み込みをも予定する。このためには、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、パントテン酸ナトリウム及び乳酸ナトリウム又はこの塩の混合物が考慮される。
【0033】
このナトリウム塩の割合は、比較的臨界的でなく、しかしながら、更なるナトリウム塩を、この調製物の全体の質量に対して、0.1〜75.0質量%、特に5.0〜55.0質量%、及び特に有利には10.0〜20.0質量%の量で使用することが、特に有利であることが確かめられた。
【0034】
この記載された緩衝系の使用は、従って理想的であるようであり、というのは、一方では、このクレアチンの酸に対する安定性は高められ、そして、従って、胃中でのクレアチンの分解は回避されるからである。更に、この含有されるナトリウム−イオンは、細胞中への吸収を改善し、その際、この作用は、更なるナトリウム塩の添加を介して更に増強されることができる。
【0035】
有利な一実施態様によれば、本発明による調製物は、また更なる生理学的に活性のある化合物、例えば炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素並びにこの誘導体及び混合物を含有する。更に、本発明による調製物は、バイオアベイラビリティの改善のために、更にα−リポ酸及び/又はグアニジノ酢酸が添加されることができる。本発明による調製物が水溶液として使用される場合には、この固形物質含有量は、0.01〜14.0質量%に調節される。
【0036】
本発明の更なる一主題は、本発明による調製物の製造方法であり、その際、クレアチン成分が装入され、緩衝系、有利には、弱酸及び相応する塩基からなる混合物が組み込まれ、そして、場合により、更なるナトリウム塩、生理学的に活性のある化合物及び/又はα−リポ酸及び/又はグアニジノ酢酸が添加されることができる。有利には、このクレアチン成分は粉末又は水溶液として装入される。更に、この緩衝系は有利には均質に混和される。
【0037】
本発明の有利な一観点は、本発明による調製物並びに場合により1種又は数種の医薬的に許容可能な担体及び/又は助剤を含有する医薬組成物に関する。本発明は、更に、栄養サプリメント剤としての本発明による調製物の使用を請求する。特に、生理学的な強壮剤としての及びこの関連において特に機能性栄養剤(機能性食品)の形態にあるこの請求された調製物の、ヒトのための使用が考慮され、その際、この学校−、スポーツ−、回復−及び/又は老人病学の領域において重要である。
【0038】
この記載された処方物は、この記載された有利な作用を、動物でも発揮し、この結果、この領域での使用も予定される。この記載されたクレアチン処方物が飼料添加物として使用される場合には、特に、飼育−及び肥育動物並びに競技スポーツにおける動物に対する投与が有利であるとみなされ、かつ、この関連において、特に有利には、ブタ、ウマ、家禽及び魚に対するものであり、その際、動物−及び/又は魚の餌の代替剤並びにここから製造された製品としての使用が特に適していることが分かった。この使用は、この際、部分−又は全体的な代替として生じることができる。
【0039】
更に、この新規のクレアチン調製物は、栄養補助又は栄養成分としても、家畜、例えばイヌ、ネコ及びトリのために使用されることができる。
【0040】
適用形態としては、特に、パウダー、顆粒、トローチ(Pastille)、カプセル、タブレット、溶液、ジュース及び/又はゼリー製品が特に適していることが判明した。この際、それぞれの具体的な使用の事情に依存して、本発明による調製物を他の生理学的に活性のある有効成分と組み合わせて使用することが是非にも推奨されることができる。
【0041】
本発明による調製物は、0.001〜0.3g/kg体重の1回量において、又は、0.001〜1.0g/kg体重の1日量において投与されることができる。これは、特に、医薬組成物、並びに、飼料、栄養サプリメント剤、生理学的強壮剤、また同様に、機能性栄養剤としての使用に当てはまる。
【0042】
全体として、この前もって提案された処方物及びその使用は、クレアチン処方物の安定性の向上に関して、技術水準の更なる前進を提示する。更に、クレアチン成分の改善されたバイオアベイラビリティが、特に有利であると判明した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、酸に対する挙動を示す図である。
【図2】図2は、バイオアベイラビリティを示す図である。
【0044】
この以下の実施例は、本発明の利点を詳説する。
【0045】
実施例
1.栄養サプリメント剤
以下においては、中性の又は美味しい処方物の典型的な組成を挙げ、これら成分は室温で500mlのフルーツジュース、水、ヨーグルト及び/又はホエー中に導入される。
1.1 2980mg クレアチン一水和物
150mg 炭酸ナトリウム
118mg 炭酸水素ナトリウム。
1.2 1500mg クレアチン一水和物
400mg 炭酸ナトリウム
600mg 炭酸水素ナトリウム
100mg クエン酸ナトリウム
2000mg 塩化ナトリウム。
1.3 1500mg クレアチン一水和物
4000mg 炭酸ナトリウム
6000mg 炭酸水素ナトリウム
500mg グアニジノ酢酸
500mg ベタイン
300mg α−リポ酸
400mg (MgCO34・Mg(OH)2・5H2O=約100Mg
500mg ビタミンC。
1.4 1500mg クレアチン一水和物
750mg L−アルギニン
250mg L−アルギニン−ナトリウム塩
1000mg グルコサミン
300mg 硫酸コンドロイチン
500mg メチオニン
3100mg クレアチノール−スルファート。
1.5 750mg クレアチン一水和物
750mg L−リシン
750mg L−リシン−ナトリウム塩
1000mg アスコルビン酸ナトリウム。
【0046】
2. 飼料
2.1 クエン酸クレアチン2000mg、インスリン5000mg、塩化ナトリウム3000mg、炭酸ナトリウム600mg及び炭酸水素ナトリウム700mgからなる処方物を、ウマの飼料補給のための飼料ペレットのための典型的な処方中に、導入した。
【0047】
2.2 クレアチン一水和物7000mg、酒石酸カルニチン750mg、ステアリン酸スクロース100mg、タルク160mg、フルクトース1090mg、炭酸ナトリウム2000mg及び炭酸水素ナトリウム4700mgを、イヌビスケットのための基礎材料中に導入した。
【0048】
2.3 マスターバッチとして、市販のネコ缶詰飼料混合物中に均質中に以下の処方物を導入した:クレアチノールスルファート3000mg、クレアチン一水和物3000mg、ステアリン酸マグネシウム40mg、カルボキシメチルセルロース25mg及びラクトース135mg、リン酸ナトリウム500mg及びリン酸水素ナトリウム1500mg。
【0049】
3.酸に対する挙動
強酸の添加の、本発明によるクレアチン調製物の溶液のpH値に対する影響を検査し、かつ、これまでに、市販に存在するアルカリ性クレアチン調製物(Kre-Alkalyn(R))及びクレアチン一水和物と比較した。
【0050】
クレアチン一水和物及びKre-Alkalyn(R)及び実施例1.1に応じた本発明によるクレアチン調製物をそれぞれ500mlの水中に溶解した。この量を、それぞれの溶液中に2980mgのクレアチン一水和物が導入されるように常に選択した。引き続き、0.1molarの塩酸で滴定し、その際、このpHの経過をpH電極を用いて測定した。この本発明による処方物は、この際、酸性の領域中に転換する前に、酸の顕著により大量の添加に耐え、これは、図1から明らかに取り出すことができる。
【0051】
バイオアベイラビリティ
それぞれ10人の発端者の群を、この全ての群においておおよそ同じ平均的なクレアチンの出発値が、筋肉乾燥物質中に存在するように構成した。
【0052】
4週間にわたり、この3つの群に毎日、実施例1.1に応じた本発明による調製物、クレアチン一水和物又はKre-Alkalyn(R)を投与した。この用量は既に、それぞれの発端者により1日あたりそれぞれ2.0gの純粋なクレアチン一水和物が取り込まれるように選択した。この試験の直前及びこの服用後2週間、筋肉中のクレアチン含有量を、筋肉バイオプシーを用いて測定した。この結果は、図2中に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH値8.0〜12.0に調整する緩衝系を付加的に含有することを特徴とする、クレアチン成分を含有する調製物。
【請求項2】
クレアチン成分が、クレアチン、クレアチン一水和物及び/又は少なくとも1種のこの塩、付加化合物及び/又は錯体化合物であることを特徴とする、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
少なくとも1種の塩、少なくとも1種の付加化合物及び/又は錯体化合物が、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、ピルビン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルコン酸、α−ケトグルタル酸、シュウ酸、ピログルタミン酸、3−ニコチン酸、マレイン酸、硫酸、酢酸、ギ酸、リン酸、塩酸、2−ヒドロキシ安息香酸、α−リポ酸、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、タウリン、ベタイン、コリン及びメチオニンからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項2記載の調製物。
【請求項4】
緩衝系が、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム/リン酸水素ナトリウム、L−リシン/L−リシンナトリウム塩及びL−アルギニン/L−アルギニンナトリウム塩の群から選択されている、弱酸及び相応する塩基からなる組み合わせであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項5】
緩衝系の割合が、この組成物の全質量に対して、0.1〜90.0質量%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項6】
調製物が付加的に、1種のナトリウム塩又は数種のナトリウム塩又はこの混合物を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項7】
1種のナトリウム塩又は数種のナトリウム塩又はこの混合物が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、パントテン酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項6記載の調製物。
【請求項8】
1種のナトリウム塩又は数種のナトリウム塩又はその混合物の割合が、この調製物の全質量に対して、0.1〜75.0質量%であることを特徴とする、請求項6又は7記載の調製物。
【請求項9】
炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、鉱酸、微量元素並びにその誘導体及び混合物からなる群から選択されている更なる生理学的に活性のある化合物を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項10】
更にグアニジノ酢酸及び/又はα−リポ酸を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項11】
緩衝系が、pH10.0〜11.0に調整することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項12】
固形又は水性であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項13】
水性の調製物が、この組成物の全質量に対して、0.01〜14.0質量%の固形物含有量を示すことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項14】
パウダー、顆粒、トローチ、カプセル、タブレット、溶液、ジュース及び/又はゼリー製品として存在することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項15】
調製物が、0.001〜0.3g/kg体重の1回量で投与されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項16】
調製物が、0.001〜1g/kg体重の1日量で投与されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項17】
(a)請求項1から3までのいずれか1項に定義されるクレアチン成分を準備する工程、(b)請求項4、5又は11のいずれか1項に定義される緩衝系を組み込む工程、及び(c)場合により、請求項6から8までのいずれか1項に定義された1種のナトリウム塩又は数種のナトリウム塩又はその混合物、請求項11に定義される生理学的に活性のある化合物、及び/又は請求項10に定義されるグアニジノ酢酸及び/又はα−リポ酸を添加する工程、を含む、請求項1から16までのいずれか1項記載の調製物の製造方法。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の調製物並びに場合により少なくとも1種の医薬的に今日可能な担体及び/又は助剤を含有する、医薬組成物。
【請求項19】
栄養サプリメント剤、飼料及び/又は飼料添加剤としての、請求項1から17までのいずれか1項記載の調製物の非治療的な使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−508249(P2010−508249A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533741(P2009−533741)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009324
【国際公開番号】WO2008/052712
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(506390292)アルツケム トロストベルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【氏名又は名称原語表記】AlzChem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Str. 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】