説明

クレーン装置およびクレーン装置の制御方法

【課題】荷役作業を、比較的低い燃費、低い排出ガス量で実施することができるクレーン装置、およびクレーン装置の制御方法を提供する。
【解決手段】エンジン21の駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機構22と、充電池27と、発電機構22が発電した電力を充電池27に充電するとともに充電した電力を充電池27から放電させて出力する放充電機構29と、発電機構22及び放充電機構29と接続され、発電機構22又は充電池27からの電力を受け取り、荷役動作を行なうクレーン機構と、を有するクレーン装置を制御する際、クレーンの現在の負荷の大きさを表す負荷量情報及び充電池27の現在の充電量を表す充電量情報を取得し、負荷量情報と充電量情報とに応じて発電機構22のエンジン21の動作状態と放充電機構29の放充電状態とを制御することで、クレーンが受け取る電力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物をつり上げ、上下・左右・前後に移動させて行なう荷役作業を、比較的低い燃費、かつ比較的低い排出ガス量で実施することができるクレーン装置、およびクレーン装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンテナヤードにおけるコンテナ荷役作業は、コンテナクレーンが、第1のコンテナ載置位置(地面や、コンテナ運搬用トラックのシャーシ、他のコンテナの上面など)に載置されたコンテナを吊り具によって吊り上げ、吊り上げたコンテナを第2のコンテナ載置位置(地面や、コンテナ運搬用トラックのシャーシ、他のコンテナの上面など)の上方まで水平方向に移動させて、このコンテナを吊り下げて第2のコンテナ載置位置に配置することで行なわれる。コンテナヤードにおけるコンテナ荷役作業では、複数のコンテナの1つ1つについて、コンテナクレーンがこのような吊り上げ、水平移動、吊り下げ動作を行なう。従来、コンテナクレーンの動力源は、一般的に、エンジンによって発電機を動かして電力を発生させるエンジン発電機であった。コンテナ荷役作業において、エンジン発電機のエンジンの負荷が比較的大きくなる(すなわち、最も大きなエンジン出力を必要とする)のは、コンテナを吊り上げる場合であり、逆に、エンジン発電機のエンジンの負荷が比較的小さくなる(すなわち、エンジンの出力が最も小さくて済む)のは、コンテナを吊り下げる場合である。
【0003】
図6は、コンテナヤードで行なうコンテナ荷役作業における、コンテナクレーンの動力源であるエンジン発電機のエンジンの出力(コンテナ荷役作業においてエンジン発電機のエンジンが受ける負荷に対応する)の時系列データの一例である。具体的には、図6に示す例では、コンテナクレーンの動力源は、エンジンと発電機とで構成されており、発電機が、エンジンの駆動出力に応じた電力を発電し、この電力によってクレーンが荷役作業を行なっている。図6に示す出力は、エンジンの駆動出力を表し、ひいては発電機の発電量、さらには荷役作業全体の負荷(荷役作業負荷)に対応している。図6に示すように、コンテナクレーンの荷役作業では、荷役作業負荷が比較的高い時間範囲と、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲とが繰り返される。荷役作業負荷の大きさは一貫性がなく、時間によってバラバラである。これは、コンテナ荷役作業では、上述のとおり、それぞれ重量が異なる複数のコンテナの1つ1つについて、コンテナクレーンが吊り上げ、水平移動、吊り下げ、の一連の荷役動作を行なうためである。図6に示すグラフにおいて、荷役作業負荷が比較的高い時間範囲はコンテナの吊り上げ中に対応し、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲はコンテナの水平移動、および吊り下げ中に対応する。
【0004】
図6の例では、エンジンの出力(荷役作業負荷)は瞬時的には300kW近く必要となっている。すなわち、コンテナクレーンの動力源を、エンジンと発電機のみで構成している場合、エンジンは300(kW)出力することが可能な、比較的大きな排気量の大出力用エンジンを選択しておく必要がある。しかし、このような場合、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲では、大出力用エンジンを0〜50%程度の低い出力割合で運転させざるを得ない。このため、コンテナの荷役作業全体での全仕事量(kWh)の割に、エンジンの燃費も比較的悪く、かつエンジンが出す排気量も比較的多くならざるを得なかった。
【0005】
動力源がエンジンと発電機のみで構成されている従来のクレーン装置に比べて、コンテナの荷役作業を比較的低い燃費、かつ比較的低い排出ガス量で実施することができるクレーン装置が、例えば下記非特許文献1に記載されている。コンテナの荷役作業全体の中で、特に、コンテナを吊り下げる作業は、コンテナのもつ位置エネルギーを低減させる作業である。下記非特許文献1では、コンテナの巻き下げ時にクレーン側に回生される上記位置エネルギー(回生エネルギー)(非特許文献1では「コンテナの巻き下げ時に発生するエネルギー」と記載されている)を電気二重層コンデンサと呼ばれる充電装置に蓄積し、巻き上げ時に再度この回生エネルギーを利用することにより、従来に比べて大幅な燃費の削減を可能にしていると記載されている。
【0006】
【非特許文献1】“TCM NEWSLETTER No0616”、[online]、[平成19年2月21日検索]、インターネット<URL:http://www.tcm.co.jp/ns/news/06082209513832046/hyRTGweb.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1では、コンテナの巻き下げ時の回生エネルギーを電気二重層コンデンサと呼ばれる充電装置に蓄積し、巻き上げ時に再度この回生エネルギーを利用すること以外については示唆されていない。非特許文献1の記載からは、非特許文献1記載のクレーンが行なう動作として、回生時すなわちコンテナの吊り下げ時以外は充電装置への充電を実施せず、吊り上げ時に回生エネルギーを消費してしまった後は、充電量がゼロ(0)のまま、次の回生時すなわちコンテナの吊り下げまで、エンジンの動力(発電した電力)のみで荷役動作を行なうことしか、当業者は想到することができない。このような動作では、例えばエンジンが0〜50%と低い出力割合で運転している時間範囲が、十分に低減されるわけではない。上記非特許文献1記載のクレーンでも、例えばコンテナヤードで行なうコンテナ荷役作業を、十分低い燃費かつ十分比較的低い排出ガス量で行なうことはできない。そこで、本発明は、荷物をつり上げ、上下・左右・前後に移動させて行なう荷役作業を、比較的低い燃費、かつ比較的低い排出ガス量で実施することができるクレーン装置、およびクレーン装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、エンジンを備え、前記エンジンの駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機構と、充電池を備え、前記発電機構が発電した電力の少なくとも一部を受け取って前記電力を前記充電池に充電するとともに、充電した前記電力を前記充電池から放電させて出力することが可能な放充電機構と、前記発電機構および前記放充電機構と接続されており、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取り、受け取った電力を動力源として荷役動作を行なうクレーン機構と、前記発電機構、前記放充電機構、および前記クレーン機構と接続されており、前記クレーン機構が行う荷役動作において前記クレーン機構が受ける現在の負荷の大きさを表す負荷量情報、および前記充電器の現在の充電量を表す充電量情報を少なくとも取得し、前記負荷量情報と前記充電量情報とに応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電状態とを少なくとも制御することで、前記クレーン機構が受け取る電力を調整する制御機構と、を有することを特徴とするクレーン装置を提供する。
【0009】
なお、前記制御機構は、取得した前記充電量情報と前記充電量閾値とをそれぞれ比較し、この比較結果に応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電状態とを少なくとも制御することが好ましい。
【0010】
また、前記制御機構では、前記充電池閾値を前記エンジンの現在の動作状態に応じて変更して設定し、現在の前記エンジンの動作状態が駆動状態である場合に比べて、現在の前記エンジンの動作状態が停止状態である場合の方が、前記充電池閾値をより小さい値に設定することが好ましい。
【0011】
また、前記制御機構は、取得した前記充電量情報と前記充電量閾値とをそれぞれ比較し、前記充電量情報が前記充電量閾値よりも大きい場合、前記発電機構の前記エンジンの動作状態を停止状態に制御し、前記放充電機構の前記充電池に充電した前記電力を放電させて、前記クレーン機構に、前記充電池から放電された電力のみを受け取らせることが好ましい。
【0012】
また、前記制御機構は、取得した前記充電量情報と、予め設定されている充電量閾値とをそれぞれ比較し、前記充電量情報が前記充電量閾値よりも小さい場合、前記発電機構の前記エンジンの動作状態を駆動状態に制御し、前記負荷量情報に応じて前記発電機構の前記エンジンの駆動出力量を制御するとともに、前記負荷量情報に応じて前記放充電機構の放充電動作を少なくとも制御することが好ましい。
【0013】
また、前記制御機構は、前記負荷量情報と予め設定されている1つ以上の負荷閾値とをそれぞれ比較し、この比較結果に応じて、前記発電機構の前記エンジンの駆動出力量と前記放充電機構の放充電動作とを少なくとも制御することが好ましい。
【0014】
なお、前記制御機構には、少なくとも前記エンジンの駆動出力の最大値に対応する第1の負荷閾値が予め設定されていることが好ましい。
【0015】
また、前記制御機構は、前記負荷量情報と前記第1の負荷閾値とを比較した結果、前記負荷量情報が前記第1の閾値よりも大きい場合、前記発電機構の前記エンジンを、前記最大値に対応する出力で駆動させるとともに、前記放充電機構の前記充電池に充電した前記電力を放電させて、前記クレーン機構に、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の双方を受け取らせることが好ましい。
【0016】
なお、前記制御機構には、少なくとも、前記エンジンの熱効率が所定の値以上となる場合に必要な前記エンジンの駆動出力のうちの最小値に対応する、第2の負荷閾値が予め設定されていることが好ましい。
【0017】
また、前記制御機構は、前記負荷量情報と前記第2の負荷閾値とを比較した結果、前記負荷量情報が前記第2の閾値よりも小さい場合、前記発電機構の前記エンジンを前記最小値に対応する出力で駆動させて前記発電機構に発電させて、前記クレーン機構に前記荷役動作を行なうための電力を受け取らせるとともに、前記放充電機構の前記充電池に、前記荷役動作を行なうために前記クレーン機構が受け取った電力以外の剰余電力を受け取らせ、受け取った前記剰余電力を前記充電池に充電させることが好ましい。
【0018】
本発明は、また、エンジンを備え、前記エンジンの駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機構と、充電池を備え、前記発電機構が発電した電力の少なくとも一部を受け取って前記電力を前記充電池に充電するとともに、充電した前記電力を前記充電池から放電させて出力することが可能な放充電機構と、前記発電機構および前記放充電機構と接続されており、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取り、受け取った電力を動力源として荷役動作を行なうクレーン機構とを有するクレーン装置の制御方法であって、前記クレーン機構が行う荷役動作において前記クレーン機構が受ける現在の負荷の大きさを表す負荷量情報、および前記充電器の現在の充電量を表す充電量情報を少なくとも取得するステップと、前記負荷量情報と前記充電量情報とに応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電動作状態とを少なくとも制御することで、前記クレーン機構が受け取る電力を調整するステップと、を有することを特徴とするクレーン装置の制御方法を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のクレーン装置およびクレーン装置の制御方法によれば、荷物をつり上げ、上下・左右・前後に移動させて行なう荷役作業を、比較的低い燃費、かつ比較的低い排出ガス量で実施することができる。また、クレーン装置の発電機構を、比較的小型なエンジンで構成できるので、クレーンを比較的安価に構成できるとともに、荷役作業中にエンジンから発する騒音も、比較的小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のクレーン装置およびクレーンの制御方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0021】
図1(a)および(b)は、本発明のクレーン装置の一例である、コンテナ荷役用クレーン10(以降、クレーン10とする)を説明する図である。図1(a)は、クレーン10の概略の構成を示す概略正面図であり、図1(b)は、クレーン10の概略の構成を示す概略側面図である。また、図2は、クレーン10において行なわれる情報および電力の受け渡しについて説明する図であり、クレーン10の一部の概略構成図である。
【0022】
クレーン10は、脚部14に設けられた、発電機構22と放充電機構24とを有して構成された動力源ユニット20と、脚部14に支えられたクレーンガータ12を、図1(a)中の左右方向(図1(b)中、紙面に垂直な方向)に移動するトロリ30と、トロリ30に備えられ、吊り荷であるコンテナ16と固定されてコンテナ16ともにトロリ30によって昇降するスプレッダ40と、脚部14に備えられた車輪11を操舵するとともに回転駆動させて、脚部14を自由に移動(走行)させる車輪走行手段50と、制御機構である制御部72を内部に備える操作装置70とを有して構成されている。
【0023】
クレーン10は、車輪走行手段50によって、脚部14が地面を自由に移動(走行)可能となっている。また、トロリ30の横行手段32によってトロリ30(およびスプレッダ40)が図1(a)中の左右方向(図1(b)中、紙面に垂直な方向)に移動可能となっている。クレーン10は、さらに、トロリ30の昇降手段34によってスプレッダ40が図1(a)中の上下方向(図1(b)中の上下方向)に移動(昇降)可能となっている。これら、車輪走行手段50、トロリ30の横行手段32、トロリ30の昇降手段34、は本発明のクレーン機構を構成する。クレーン10では、操作装置70が受け付けるクレーン操縦者からの操作指示入力に応じた制御信号が、操作装置70の制御部72からクレーン機構を構成する各部に送られることで、スプレッダ40の空間位置を自在に制御することができる。
【0024】
操作装置70は、クレーン操縦者(図示せず)からの入力指示を受け付け、クレーン機構の各部、すなわちトロリ30が備える横行手段32と昇降手段34、および車輪走行手段50の動作を制御するための制御信号を送信する。操作装置70は制御部72を備えており、この制御部72が、入力手段76によるクレーン操縦者からの操作指示入力に応じた制御信号を生成し、クレーン機構の各部に送信する。操作装置70は、例えば、図示しないCPUと図示しないメモリを有し、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することで機能するコンピュータである。なお、このメモリには、後述する各種の閾値や所定値などの数値情報が、予め記憶されている。
【0025】
なお、スプレッダ40には、公知のコンテナ保持手段である図示しないツイストロックピンと、制御装置70の制御部72と接続された、図示しないツイストロックピン回転機構が備えられている。コンテナ荷役作業においては、制御信号によってスプレッダ40の位置が制御されて、このツイストロックピンがコンテナ16の上面側のコーナーボックスに挿入された後、操縦者の指示に応じた制御信号によって図示しないロックピン回転機構が動作してツイストロックピンが回転される。これにより、スプレッダ40のツイストロックピンとコンテナ16のコーナーボックスとが結合される。また、制御信号に応じて(クレーン操縦者の指示に応じて)図示しないロックピン回転機構によってツイストロックピンが逆回転されることで、スプレッダ40のツイストロックピンとコンテナ16のコーナーボックスとの結合は、容易に解除される。
【0026】
このように、クレーン10では、操作装置が受け付けるクレーン操縦者からの操作指示入力に応じて、スプレッダ40の空間位置や、スプレッダ40のツイストロックピンの回転が自在に制御されることで、第1のコンテナ載置位置(地面や、コンテナ運搬用のトラック80のシャーシ84、他のコンテナ16の上面など)に載置されたコンテナ16を吊り上げ、吊り上げたコンテナを第2のコンテナ載置位置(地面や、コンテナ運搬用のトラック80のシャーシ84、他のコンテナ16の上面など)の上方まで水平方向に移動させて、このコンテナ16を吊り下げて第2のコンテナ載置位置に配置することで、コンテナ荷役作業を実施する。
【0027】
本発明のクレーン10では、操作装置70が、クレーン機構の各部に加え、発電機構22のエンジン21、放充電機構24の後述する放充電制御部29とも接続されている。操作装置70の制御部72は、クレーン操縦者からの操作指示入力に応じた制御信号をクレーン機構の各部に送信するのみでなく、さらに、クレーン機構が行う荷役動作においてクレーン機構の各部が受ける現在の負荷の大きさを表す負荷量情報(後述する、横行負荷情報、昇降負荷情報、および走行負荷情報の少なくとも1つ)、および充電池27の現在の充電量を表す充電量情報を少なくとも取得する。操作装置70の制御部72は、取得した負荷量情報の合計値(荷役作業負荷情報とする)と、充電量情報とに応じて、発電機構22のエンジン21の動作状態と、放充電機構24の放充電動作状態とを少なくとも制御することで、クレーン機構を構成する各手段(車輪走行手段50、トロリ30の横行手段32、トロリ30の昇降手段34)が受け取る電力を調整する。クレーン10を構成する各部の詳細、および制御部72が行なう制御の詳細について、以後詳述していく。
【0028】
動力源ユニット20の発電機構22は、エンジン21と、エンジン21の駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機23と、発電機23によって発生した(発電した)交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ25とを有して構成されている。発電機構22のエンジン21は、制御装置70の制御部72と接続されている。操作装置70の制御部72は、エンジン21の現在の動作状態を表すエンジン動作情報を取得する。また、エンジン21は、操作装置70の制御部72によって動作状態(エンジンの駆動または停止、駆動状態におけるエンジン出力の大きさなど)が制御(設定)される構成となっている。エンジン21は、例えば公知のディーゼルエンジンを用いればよい。
【0029】
動力源ユニット20の放充電機構24は、充電池27と放充電制御部29とを有して構成されている。充電池27は放充電可能な、例えば電気二重層コンデンサなどの公知の充電池であり、放充電制御部29は、制御部72と接続されて、この制御部72の指示に応じて、発電機23が発電した電力の少なくとも一部を充電池27に充電させたり、充電した電力を充電池27から放電させて出力させる。放充電制御部29は、充電池27に充電されている電池残量(充電量)を表す情報(充電量情報)を検出可能な充電量検出手段26を備えている。充電量情報検出手段26が検出した充電量情報は、制御部72に送信される。なお、放充電機構24の放充電制御部29は、配線15を介し、必要に応じて後述の回生エネルギーを受け取り、受け取った回生エネルギーを充電池27に充電させる機能も有する。放充電制御部29や充電量検出手段26は、例えばスイッチやリレーを備えた専用回路によって構成されていればよい。
【0030】
上述したように、コンテナの荷役作業では、荷役作業負荷が比較的高い時間範囲と荷役作業負荷が比較的低い時間範囲とが繰り返される。上述したように、エンジン発電機のみで、荷役作業負荷が比較的高い時間範囲で必要な出力(電力)を全て賄おうとすると、比較的大きな排気量の大型エンジンを備えるエンジン発電機が必要となり、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲における熱効率が著しく悪化する。クレーン10では、クレーン10を用いて行なわれる荷役作業において想定される荷役作業負荷の最高値、すなわちクレーン機構に必要な最高出力(例えば、想定最高重量のコンテナを、スプレッダ40に固定して上昇させる際に必要な出力)に比べて、発電できる最大出力がより低い、比較的低排気量のエンジン21を備えるエンジン発電機を用いる。加えて、充電池27としては、エンジン21が最高出力で駆動した場合に発電される電力と、充電池27から放電される電力とで、クレーン機構に必要な最高仕事量が賄いきれる充電可能容量をもつ充電池が用いられる。ここで、クレーン装置において、クレーン機構が行なう仕事量が最も大きくなるのは、想定最高重量のコンテナを、地面から想定最高到達位置まで上昇させる場合である。一般的に、想定最高重量や想定最高到達位置は、クレーン装置毎に規格が定まっており、クレーン機構に必要な最高仕事量もクレーン装置毎に予め既知であるといえる。充電池27は、クレーン10に応じた最高仕事量が賄いきれる充電可能容量をもつ充電池が用いられている。本実施形態のクレーン10では、エンジン21として、例えば、最高出力200kWのエンジンを用いる。この最高出力200kWのエンジン21では、エンジンの熱効率が比較的高く十分な基準値以上となるのは、例えばエンジン出力が50%〜100%の範囲にある場合であり、エンジン出力が50%未満ではエンジン熱効率は低くなっている。
【0031】
トロリ30には、トロリ30を図1(a)中の左右方向(図1(b)中、紙面に垂直な方向)に移動させるための横行手段32と、コンテナ16と固定されたスプレッダ40を図1(a)中の上下方向(図1(b)中の上下方向)に昇降させるための昇降手段34とが備えられている。横行手段32は、例えば図示しない車輪と、図示しない車輪を回転させてトロリ30をクレーンガータ12上で移動させるための横行モータ33と、横行モータ33の動作を制御するための横行モータ制御部35と、を有して構成されている。横行モータ制御部35は、発電機構22および放充電機構24の双方に接続された配線15と接続しており、発電機23が発電した電力、および充電池27から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取る。横行モータ制御部35は、公知のインバータ回路を備えている。横行モータ制御部35は、操作装置70の制御部72と接続されており、制御部72の指示に応じて、横行モータ33の動作を制御する。例えば、横行モータ制御部35は、トロリ30がクレーンガータ12上を、制御信号に応じた条件(例えば移動速度および距離)で横行するよう、配線15を介して受け取った直流電力を、この制御信号に応じた交流電流に変換して横行モータ33に供給して、横行モータ33の動作を制御する。横行モータ制御部35は、また、例えば横行モータ33のモータ電流など、横行モータが受ける現在の負荷を表す情報(横行負荷情報)を検出可能な横行負荷検出手段36を備えている。横行負荷検出手段36が検出した横行負荷情報は、制御部72に送信される。横行モータ制御部35や横行負荷検出手段36は、例えば専用回路によって構成されていればよい。
【0032】
昇降手段34は、例えば、スプレッダ40に固定されたワイヤを、巻き上げまたは巻き下げ可能な図示しないワイヤドラムと、スプレッダ40を昇降させるために図示しないワイヤドラムを回転させるための昇降モータ37と、昇降モータ37の動作を制御するための昇降モータ制御部39と、を有して構成されている。昇降モータ制御部39は、発電機構22および放充電機構24の双方に接続された配線15と接続しており、発電機23が発電した電力、および充電池27から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取る。昇降モータ制御部39は、公知のインバータ回路を備えている。昇降モータ制御部39は、操作装置70の制御部72と接続されており、制御部72の指示に応じて、昇降モータ37の動作を制御する。例えば、昇降モータ制御部39は、スプレッダ40が制御信号に応じた条件(例えば移動速度および距離)で昇降するよう、配線15を介して受け取った直流電力を、この制御信号に応じた交流電流に変換して昇降モータ37に供給して、昇降モータ37の動作を制御する。昇降モータ制御部39は、また、例えば昇降モータ37のモータ電流など、昇降モータ37が受ける現在の負荷を表す情報(昇降負荷情報)を検出可能な昇降負荷検出手段38を備えている。昇降負荷検出手段38が検出した昇降負荷情報は、制御部72に送信される。昇降モータ制御部39や昇降負荷検出手段38は、例えば専用回路によって構成されていればよい。
【0033】
また、昇降手段34の昇降モータ制御部39には、昇降モータ37が外力(配線15を解して受け取った電力以外)によって回転することで生じる回生電力を受け取り、この回生電力を配線15を介して放充電機構24に向けて送るための回生電力取得手段41も、併せて有している。コンテナの荷役作業全体の中で、特に、コンテナを吊り下げる作業、すなわち、スプレッダ40に固定された状態のコンテナ16を下降させる作業は、コンテナ16のもつ位置エネルギーを低減させる作業である。スプレッダ40に固定されたコンテナ16を下降させる際、昇降モータ37では、コンテナ16がもつ位置エネルギーが電気エネルギー(回生エネルギー)に変換される。例えば、スプレッダ40に固定されたコンテナ16を下降させる際、モータの回転子がコンテナ16にかかる重力によって回転されて誘導電流が生じることで、位置エネルギーが回生エネルギー(回生電力)に変換される。回生電力取得手段41は、スプレッダ40に固定されたコンテナ16を下降させる際に生じる、この回生電力を受け取り、この回生電力を配線15を介して放充電機構24に向けて送る。上述の放充電機構24の放充電制御部29は、制御部72による制御の下、必要に応じてこの配線15から回生電力を受け取り、受け取った回生電力を充電池27に充電させる。なお、回生電力取得手段41は、例えば回生電力の電圧値など、回生電力取得手段41が取得した回生電力の大きさを表す情報(回生電力情報)を検出する機能も有している。回生電力取得手段41が取得した回生電力情報は、制御部72に送られる。回生電力取得手段41も、例えば専用回路によって構成されていればよい。
【0034】
なお、回生エネルギーは、昇降モータ37だけに限らず、横行モータ33や走行モータ52などでも発生する。例えば、走行モータ52によって走行させた車輪の回転を停止して脚部14の移動を止めるときなど、走行モータ52をブレーキ装置と連動させて回転させることで、回生エネルギーを得ることができる。本発明では、このように、横行モータ33や走行モータ52で発生した回生エネルギーを取り扱っても構わない。本実施形態では、クレーン機構において取得できる回生エネルギーのうち支配的に大きなエネルギーである、昇降手段のモータによって得られる回生エネルギーについてのみ説明しておく。
【0035】
車輪走行手段50は、脚部14に備えられた車輪11を操舵および回転駆動させ、脚部14を地面上で移動させるための走行モータ52と、走行モータ52の動作を制御するための走行モータ制御部54と、を有して構成されている。走行モータ制御部54は、発電機構22および放充電機構24の双方に接続された配線15と接続しており、発電機23が発電した電力、および充電池27から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取る。走行モータ制御部54は、公知のインバータ回路を備えている。走行モータ制御部54は、操作装置70の制御部72と接続されており、制御部72の指示に応じて、走行モータ52の動作を制御する。例えば、走行モータ制御部54は、脚部14が制御信号に応じた条件(例えば移動速度および距離)で移動するよう、配線15を介して受け取った直流電力を、この制御信号に応じた交流電流に変換して走行モータ52に供給して、走行モータ52の動作を制御する。走行モータ制御部54は、また、例えば走行モータ52のモータ電流など、走行モータ52が受ける現在の負荷を表す情報(走行負荷情報)を検出可能な走行負荷検出手段56を備えている。走行負荷検出手段56が検出した走行負荷情報は、制御部72に送信される。
【0036】
トロリ30が備える横行手段32と昇降手段34、および車輪走行手段50は、本発明のクレーン機構を構成する。クレーン10では、このクレーン機構(横行手段32と昇降手段34、および車輪走行手段50)が、発電機構22および放充電機構24の双方に接続された配線15と接続しており、発電機23が発電した電力、および充電池27から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取り、受け取った電力を動力源として荷役動作を行なう。なお、本発明において、トロリ30および車輪走行手段50の細部の構成については特に限定されない。
【0037】
図3(a)および(b)は、制御部72が取得する荷役作業負荷情報および充電量情報と、制御部72が行なう、発電機構22のエンジン21の動作制御および放充電機構24の放充電動作制御の関係(制御ロジック)について説明する概略図である。また、図4は、本発明のクレーン装置の制御方法の一例のフローチャートであり、クレーン10による荷役作業中に制御部72が行なう、発電機構22のエンジン21の動作状態および放充電機構24の放充電動作状態の制御について説明するフローチャートである。以下、図3(a)(b)および図4を用いて、制御部72が行なう、発電機構22のエンジン21の動作状態および放充電機構24の放充電動作状態の制御について説明する。
【0038】
以下に説明する制御ロジックは、本願発明者が、比較的小さい排気量のエンジンと、充電池とを動力源として備えるクレーンについて、エンジンの燃費をなるべく良く、すなわち少なくする制御ロジックについて鋭意検討することで創作されたものである。具体的に、本願発明者は、実際のコンテナの荷役作業では、エンジンの出力だけでは賄いきれない比較的高い作業出力(作業負荷)が、いつどのようなタイミングで必要になるか、事前に完全に把握することができないため、充電池には、なるべく多くの時間、一定の電力量が確保されておく必要があると考えた。さらに、例えば、エンジンの熱効率が比較的悪い、比較的低い出力割合(例えば、エンジン出力0〜50%)で、充電池に充電させるためだけにエンジンを駆動させ続けるのは、避けるべきであると考えた。以下に示す制御ロジックは、本願発明者が、従来提示されていなかったこのような発想の下、なるべく多くの時間、充電池に一定の電力量(充電量)を確保しておきつつ、比較的低い出力割合でエンジンを駆動させる時間を極力少なくするための制御ロジックを、鋭意検討することで創作されたものである。
【0039】
クレーン10による荷役作業が開始されると、操作装置70の制御部72は、所定の時間間隔毎で訪れる制御タイミング毎に(すなわち、ステップS100の判定がYesとなる度に)、クレーン機構を構成する各手段(クレーン30の横行手段32および昇降手段34、走行手段50)から、荷役作業負荷情報(横行負荷情報、昇降負荷情報、および走行負荷情報の少なくとも1つ)を取得するともに、充電量検出手段26から充電量情報を取得する。制御部72は、取得した荷役作業負荷情報と充電量情報とに応じて、以下に示す各ステップのように、発電機構22のエンジン21の動作状態と放充電機構24の放充電動作状態とを制御する。このような制御は、荷役作業が終了するまで、すなわちステップS102の判定がNoとなるまで、所定の時間間隔毎で訪れる制御タイミング毎に繰り返される。
【0040】
制御タイミングとなり(すなわち、ステップS100の判定がYesとなり)、荷役作業が継続される場合(すなわち、ステップS102の判定がYesとなる場合)、操作装置70の制御部72は、まず、発電機構22のエンジン21の動作状態を表すエンジン動作情報を取得し、エンジン21の現在の動作状態に応じた充電量閾値を設定する(ステップS104)。この際、現在のエンジン21の動作状態が駆動状態である場合に比べて、現在のエンジン21の動作状態が停止状態である場合の方が、充電量閾値をより小さい値に設定する。本実施形態では、エンジン21の現在の動作状態が停止状態にある場合は、図3(a)に示すように充電量閾値を充電率80%に設定する。一方、エンジン21が駆動状態にある場合は、図3(b)に示すように充電量閾値を充電率100%に設定する。操作装置70の図示しないメモリには、エンジン21の動作情報に応じた複数の充電量閾値が予め記憶されている。
【0041】
次に、制御部72では、取得した充電量情報と、設定した充電量閾値とをそれぞれ比較する(ステップ106)。制御部72は、この比較結果に応じて、発電機構22のエンジン21の動作状態と放充電機構24の放充電制御部26による放充電状態とを少なくとも制御する。
【0042】
制御部72は、取得した充電量情報と、予め設定されている充電量閾値とをそれぞれ比較し、充電量情報が充電量閾値よりも大きい場合、発電機構22のエンジン21の動作状態を停止状態に制御する(ステップS108)。加えて、放充電機構24の放充電制御部26を、充電池27に充電した電力を放電させる状態に設定する(ステップS110)。すなわち、クレーン機構の各手段には、充電池27から放電された電力のみが供給され、クレーンの機構の各部は、充電池27から放電された電力のみをもってコンテナ荷役作業を実施する。クレーン10では、このようにして、充電池27に電力が十分に充電されている場合は、エンジン21が駆動して余分な燃料を消費する必要をなくし、荷役作業を効率化している。
【0043】
ここで、ステップS108〜ステップS110のように、充電池27から放電された電力のみをもって、クレーンの機構の各部にコンテナ荷役作業を実施させる場合、充電池27の充電率は減少する一方である。仮に、充電量閾値が、現在のエンジン21の動作状態によって変わらない(すなわち、充電量閾値が1つだけ)とする。この場合、充電池27の充電率を表す充電量情報が、充電量閾値を超えてエンジン停止状態になると、充電率は減少を始め、充電率はすぐさま充電量閾値を下回る。充電量が充電量閾値を下回った場合の詳細については以下の段落で説明しているが、基本的に充電池27に充電が開始されるので、今度は充電率がすぐさま充電量閾値を超える。すなわち、充電量閾値が1つだけの場合、エンジン21は、駆動・停止を必要以上に頻繁に繰り返す(いわゆるハンチングを起こす)。エンジン21の駆動・停止を必要以上に頻繁に繰り返すことは、エンジン21の燃費の上でも、エンジン21の耐久性の上でも、不利益である。クレーン10では、充電池閾値をエンジン21の現在の動作状態に応じて変更して設定し、現在のエンジン21の動作状態が駆動状態である場合に比べて、現在のエンジン21の動作状態が停止状態である場合の方が、充電量閾値をより小さい値に設定する。クレーン10では、このように充電量閾値を設定することで、エンジン21の停止・駆動の切り替え回数を、比較的少なくしている。
【0044】
一方、制御部72は、取得した充電量情報と、予め設定されている充電量閾値とをそれぞれ比較し、充電量情報が充電量閾値よりも小さい場合、発電機構22のエンジン21の動作状態を駆動状態に制御する(ステップS112)。この場合、同時に取得した荷役作業負荷情報に応じて、発電機構22のエンジン21の駆動出力量を制御する。加えて、荷役作業負荷情報に応じて、放充電機構24の放充電制御部26による放充電状態を少なくとも制御する。操作装置70の図示しないメモリには、少なくとも1つ以上、本実施形態では3つの負荷閾値が予め記憶されている。制御部72はエンジン21を駆動状態に制御し、同時に取得した荷役作業負荷情報と3つの負荷閾値とを、それぞれ比較する(ステップS116)。
【0045】
本実施形態での3つの負荷閾値としては、少なくとも、エンジン21の駆動出力の最大値に対応する第1の負荷閾値が設定されている。また、エンジン21の熱効率が所定の値以上となる場合に必要なエンジン21の駆動出力のうちの最小値に対応する、第2の負荷閾値が設定されている。本実施形態では、第1の負荷閾値が、エンジン21の駆動出力の最大値に対応する200(kW)に設定されている。また、本実施形態では、第2の負荷閾値が、エンジンの熱効率が比較的高く十分な基準値以上となる場合に必要なエンジン21の駆動出力のうちの最小値に対応する、エンジン21の駆動出力の50%、すなわち100(kW)に設定されている。また、本実施形態では、第3の負荷閾値として、荷役作業が全く無い状態に対応する負荷の値、すなわち0(kW)に設定されている。
【0046】
制御部72は、荷役作業負荷情報と第1の負荷閾値(200(kW))とを比較した結果、荷役作業負荷情報が第1の負荷閾値よりも大きい場合、発電機構22のエンジン21を最大出力(200(kW))で動作させる状態に制御する。加えて、放充電制御部29を、放充電機構24の充電池27に充電した電力を放電させる状態に制御し、クレーン機構に、エンジン21が最大出力(200(kW))で動作して発電した電力、および充電池27から放電された電力の双方を供給する(ステップS118)。すなわち、コンテナ荷役作業において、エンジン21の最高出力以上の負荷がクレーン機構にかかった場合は、エンジン21が最高出力で駆動するとともに、荷役作業負荷(すなわち荷役作業全体で必要な出力)に足りない電力を充電機構24から供給する。このように、クレーン10では、エンジン21によって発電する電力のみでなく、充電池21に充電された電力も荷役作業に供することができるので、比較的小型なエンジンで動力源ユニットを構成することができる。
【0047】
また、制御部72が、荷役作業負荷情報と、第1の負荷閾値(200(kW))および第2の負荷閾値(100(kW))とを比較した結果、荷役作業負荷情報が第2の負荷閾値よりも大きく、かつ第1の負荷閾値よりも小さい場合、発電機構22のエンジン21を一定出力(175(kW))で動作させる状態に制御する。加えて、放充電制御部29を充電池27に充電した電力を放電させる状態に制御するか、または、エンジン21が一定出力(175(kW))で動作して発電した電力の一部を、充電池27に充電させる(ステップS120)状態に制御する(ステップS120)。この場合、制御部72はさらに、荷役作業負荷が、この一定出力(175(kW))以上であるか否かを判断する。
【0048】
このステップS120では、荷役作業負荷が一定出力(175(kW))以上の場合は、放充電制御部29を充電池27に充電した電力を放電させる状態に制御する。すなわち、クレーン機構の各手段に、エンジン21が一定出力(175(kW))で動作して発電した電力、および充電池27から放電された電力の双方を供給する。一方、荷役作業負荷が一定出力(175(kW))より小さい場合は、放充電制御部39の動作を制御することで、エンジン21が一定出力(175(kW))で動作して発電した電力のうち、荷役作業に供しなかった余分な電力を、充電池27に充電する。すなわち、クレーン機構に、エンジン21を上記一定出力(175(kW))で駆動させて発電させた電力を受け取らせるとともに、充電池27に、荷役動作を行なうためにクレーン機構が受け取った電力以外の剰余電力を受け取らせ、受け取った剰余電力を充電池27に充電させる。
【0049】
制御部72が、荷役作業負荷情報と第2の負荷閾値(100(kW))および第3の負荷閾値(0(kW))とを比較した結果、荷役作業負荷情報が第3の負荷閾値よりも大きく、かつ第2の負荷閾値よりも小さい場合、エンジン21を、第2の負荷閾値に対応する出力(100(kW))で動作させる状態に制御する。加えて、放充電制御部29を、荷役動作を行なうためにクレーン機構が受け取った電力以外の剰余電力を、充電池27に充電する状態に制御する(ステップS122)。すなわち、クレーン機構が行なう荷役作業全体に必要な出力(荷役作業全体の負荷)が、エンジンの熱効率が比較的低い、エンジン21の駆動出力の50%未満で賄える場合であっても、エンジン21を駆動出力50%以上で(本実施形態では50%)動作させてエンジンの熱効率は十分なレベルに維持していく。加えて、荷役作業に必要な電力を超えて発電される、荷役作業に供さない余分な電力は、充電池27に充電しておく。クレーン10では、このようにすることで、エンジン21が効率よく駆動することで発電された電力が、無駄なく効率よく荷役作業に供される。
【0050】
また、制御部72が荷役作業負荷情報と第3の負荷閾値(0(kW))とを比較した結果、荷役作業負荷情報が第3の負荷閾値以下である場合、すなわち、荷役作業負荷情報がゼロ(0)の場合、制御部72は、昇降手段34における回生電力の大きさに応じて、エンジン21の駆動出力量と、放充電機構24の放充電制御部26による放充電状態とを少なくとも制御する。コンテナ荷役作業において荷役作業負荷がゼロ(0)となるのは、クレーン機構を構成する各部が動作していない(停止している)ときか、クレーン機構の各部に電力以外の外力が加わっているときである。このようなときでは、クレーン機構の各部に電力を供給する必要もなく、エンジン21の駆動出力に応じて発電された電力は、充電池27に充電しておくことが好適であるといえる。荷役作業負荷情報がゼロ(0)のときのなかでも、コンテナを吊り下げる作業、すなわち、スプレッダ40に固定されたコンテナ16を下降させる作業では、位置エネルギーが回生エネルギー(回生電力)に変換される。この位置エネルギーは、クレーン10のクレーン機構が荷役作業を行なうことでコンテナ16に与えられたエネルギーである。この回生電力を充電池27に充電することができれば、荷役作業におけるエネルギー効率を、比較的高くすることができるのは言うまでもない。
【0051】
ステップS116における比較の結果、荷役作業負荷情報が第3の負荷閾値以下の場合、制御部72は、昇降モータ制御部39の回生電力取得手段41から送られた回生電力情報と、操作装置70の図示しないメモリに予め記憶されている回生閾値とを比較する(ステップS124)。回生電力情報が回生閾値よりも大きい場合、すなわち昇降モータ37において発生した回生電力が比較的大きい場合、エンジン21をアイドリング状態に制御するとともに、昇降モータ37において発生した回生電力のみを充電池27に充電する状態に、放充電制御部29を制御する(ステップS126)。
【0052】
一方、回生電力情報が回生閾値よりも小さい場合(回生電力がゼロの場合も含む)、エンジン21を、第2の負荷閾値に対応する出力(100(kW))で動作する状態に制御する。加えて、放充電制御部29を、昇降モータ37において発生した回生電力を充電池27に充電するとともに、エンジン21が動作して発電した電力の全部も充電池27に充電する状態に制御する(ステップS128)。なお、当然であるが、回生電力がゼロ(0)である場合は、エンジン21が第2の負荷閾値に対応する出力(100(kW))で動作して発電した電力のみを、充電池27に充電する。コンテナの荷役作業においては、上述した図6に示すように、荷役作業負荷が比較的高い時間範囲と、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲とが繰り返される。荷役作業負荷が比較的低い時間範囲は、充電池27に電力を充電する最も好適な時間範囲であるが、このような荷役作業負荷が比較的低い時間範囲は、十分長い時間連続するわけではない。本実施形態では、ステップS124〜S126の各処理を実施することで、荷役作業負荷が比較的低い時間範囲中、十分な電力をもって、なるべく短時間で充電池27に電力を充電することができる。
【0053】
クレーン10では、発電機構22のエンジン21の動作状態と放充電機構29の放充電状態が、ステップS110、ステップS118、ステップS120、ステップS122、ステップS126、ステップS128、のいずれかに示す状態に制御されたまま、次の制御タイミングまで、操作装置70が操縦者から受け付けた指示入力に応じた荷役動作を実施する。このように、クレーン10では、制御部72が、各制御タイミング毎に、取得した負荷量情報と充電量情報とに応じて、エンジン発電機の動作状態と放充電機構の放充電動作状態とを少なくとも制御(設定)する。
【0054】
図5は、本発明のクレーン装置によって荷役作業を行なった際の、エンジン発電機のエンジンの出力の時系列データの一例のグラフである。図5に示す実施例のグラフは、従来のエンジン発電機のみを動力源とするクレーン装置を用いて行なった、図6に示すコンテナ荷役作業と同様の荷役作業を、本願発明のクレーン装置によって行なった場合のデータである。図5に示す実施例のデータは、図6に示すデータを取得した従来のクレーンについて、動力源のみを、最高出力150(kW)のエンジン発電機と充電池とで構成された電力源ユニットに交換して構成される本発明のクレーン装置の一例を用いて、図6に示すコンテナ荷役作業と同様の荷役作業を行なった場合のデータである。図5に示す実施例のデータは、エンジン発電機のエンジンの出力(すなわちエンジンが受ける負荷)の大きさを、計算によって求めた値である。なお、図5には、比較のために、比較例として、図6に示している、従来のエンジン発電機のみを動力源とするクレーン装置を用いて荷役作業を行なった際のエンジン出力の時系列データも、併せて示している。
【0055】
図5に示す、本発明のクレーン装置で実施した荷役作業自体は、図6に示す荷役作業と全く等価であり、荷役作業全体でクレーン機構が行なう仕事量の大きさは、図6と全く同様である。しかし、図5に示す実施例のグラフと比較例のグラフとを比較して明らかなように、実施例のグラフで示すエンジンの出力量(kWh)は、従来のエンジン発電機のみを動力源とするクレーン装置を用いた場合に比べて、著しく小さい。さらに、比較例のグラフでは、エンジンの出力割合は、比較的小さな範囲から比較的大きな範囲まで幅広く変動している。一方、実施例に示す本発明のクレーン装置の一例の場合では、クレーン機構に必要な最高出力に比べて、発電できる最大出力がより低い、比較的低排気量のエンジンを備えるエンジン発電機を用いているので、エンジンの平均的な出力割合(最高出力に対する、エンジン出力の割合)を、荷役作業全体において一貫して高い値に維持することが可能となっている。すなわち、実施例に示す本発明のクレーン装置の一例の場合では、エンジンは、停止しているか、ほぼ最高出力で駆動しているか、熱効率が十分ある十分大きな出力で駆動しているか、のいずれかである。実施例のグラフでは、エンジンの熱効率が、一貫して高いレベルに保つことが可能となっている。
【0056】
本発明のクレーン装置およびクレーン装置の制御方法によって、荷物をつり上げ、上下・左右・前後に移動させて行なう荷役作業を、比較的高い燃費、かつ比較的低い排出ガス量で実施することができることが確認できる。また、クレーン装置の発電機構を、比較的小型なエンジンで構成できるので、クレーンを比較的安価に構成できるとともに、荷役作業中にエンジンから発する騒音も、比較的小さくすることができることが確認できた。
【0057】
以上、本発明のクレーン装置およびクレーン装置の制御方法について説明したが、本発明のクレーン装置およびクレーン装置の制御方法は上記実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a)および(b)は、本発明のクレーン装置の一例を説明する図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略側面図である。
【図2】図1に示すクレーン装置において行なわれる情報および電力の受け渡しについて説明する図であり、クレーン装置の一部について説明する概略構成図である。
【図3】(a)および(b)は、図1に示すクレーン装置の制御部が取得する荷役作業負荷情報および充電量情報と、制御部が行なう、発電機構のエンジンの動作制御および放充電機構の放充電動作制御の関係について説明する概略図である。
【図4】本発明のクレーン装置の制御方法の一例のフローチャートである。
【図5】本発明のクレーン装置によって荷役作業を行なった際の、エンジン発電機のエンジンの出力の時系列データの一例のグラフである。
【図6】従来のクレーン装置によって荷役作業を行なった際の、エンジン発電機のエンジンの出力の時系列データの一例のグラフである。
【符号の説明】
【0059】
10 コンテナ荷役用クレーン
11 車輪
12 クレーンガータ
14 脚部
15 配線
16 コンテナ
20 動力源ユニット
21 エンジン
22 発電機構
24 放充電機構
26 充電量検出手段
27 充電池
29 放充電制御部
30 トロリ
32 横行手段
34 昇降手段
35 横行モータ制御部
36 横行負荷検出手段
37 昇降モータ
38 昇降負荷検出手段
39 昇降モータ制御部
40 スプレッダ
41 回生電力取得手段
50 車輪走行手段
52 走行モータ
54 走行モータ制御部
56 走行負荷検出手段
70 操作装置
72 制御部
76 入力手段
80 トラック
84 シャーシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備え、前記エンジンの駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機構と、
充電池を備え、前記発電機構が発電した電力の少なくとも一部を受け取って前記電力を前記充電池に充電するとともに、充電した前記電力を前記充電池から放電させて出力することが可能な放充電機構と、
前記発電機構および前記放充電機構と接続されており、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取り、受け取った電力を動力源として荷役動作を行なうクレーン機構と、
前記発電機構、前記放充電機構、および前記クレーン機構と接続されており、前記クレーン機構が行う荷役動作において前記クレーン機構が受ける現在の負荷の大きさを表す負荷量情報、および前記充電器の現在の充電量を表す充電量情報を少なくとも取得し、前記負荷量情報と前記充電量情報とに応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電状態とを少なくとも制御することで、前記クレーン機構が受け取る電力を調整する制御機構と、
を有することを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
前記制御機構は、取得した前記充電量情報と前記充電量閾値とをそれぞれ比較し、この比較結果に応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電状態とを少なくとも制御することを特徴とする請求項1記載のクレーン装置。
【請求項3】
前記制御機構では、前記充電池閾値を前記エンジンの現在の動作状態に応じて変更して設定し、現在の前記エンジンの動作状態が駆動状態である場合に比べて、現在の前記エンジンの動作状態が停止状態である場合の方が、前記充電池閾値をより小さい値に設定することを特徴とする請求項2記載のクレーン装置。
【請求項4】
前記制御機構は、取得した前記充電量情報と前記充電量閾値とをそれぞれ比較し、
前記充電量情報が前記充電量閾値よりも大きい場合、前記発電機構の前記エンジンの動作状態を停止状態に制御し、前記放充電機構の前記充電池に充電した前記電力を放電させて、前記クレーン機構に、前記充電池から放電された電力のみを受け取らせることを特徴とする請求項2または3記載のクレーン装置。
【請求項5】
前記制御機構は、取得した前記充電量情報と、予め設定されている充電量閾値とをそれぞれ比較し、前記充電量情報が前記充電量閾値よりも小さい場合、前記発電機構の前記エンジンの動作状態を駆動状態に制御し、前記負荷量情報に応じて前記発電機構の前記エンジンの駆動出力量を制御するとともに、前記負荷量情報に応じて前記放充電機構の放充電動作を少なくとも制御する請求項2〜4のいずれかに記載のクレーン装置。
【請求項6】
前記制御機構は、前記負荷量情報と予め設定されている1つ以上の負荷閾値とをそれぞれ比較し、この比較結果に応じて、前記発電機構の前記エンジンの駆動出力量と前記放充電機構の放充電動作とを少なくとも制御する請求項1〜5のいずれかに記載のクレーン装置。
【請求項7】
前記制御機構には、少なくとも前記エンジンの駆動出力の最大値に対応する第1の負荷閾値が予め設定されていることを特徴とする請求項6記載のクレーン装置。
【請求項8】
前記制御機構は、前記負荷量情報と前記第1の負荷閾値とを比較した結果、前記負荷量情報が前記第1の閾値よりも大きい場合、前記発電機構の前記エンジンを、前記最大値に対応する出力で駆動させるとともに、前記放充電機構の前記充電池に充電した前記電力を放電させて、前記クレーン機構に、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の双方を受け取らせることを特徴とする請求項7記載のクレーン装置。
【請求項9】
前記制御機構には、少なくとも、前記エンジンの熱効率が所定の値以上となる場合に必要な前記エンジンの駆動出力のうちの最小値に対応する、第2の負荷閾値が予め設定されていることを特徴とする請求項6記載のクレーン装置。
【請求項10】
前記制御機構は、前記負荷量情報と前記第2の負荷閾値とを比較した結果、前記負荷量情報が前記第2の閾値よりも小さい場合、前記発電機構の前記エンジンを前記最小値に対応する出力で駆動させて前記発電機構に発電させて、前記クレーン機構に前記荷役動作を行なうための電力を受け取らせるとともに、前記放充電機構の前記充電池に、前記荷役動作を行なうために前記クレーン機構が受け取った電力以外の剰余電力を受け取らせ、受け取った前記剰余電力を前記充電池に充電させることを特徴とする請求項9記載のクレーン装置。
【請求項11】
エンジンを備え、前記エンジンの駆動出力の大きさに応じた電力を発電する発電機構と、充電池を備え、前記発電機構が発電した電力の少なくとも一部を受け取って前記電力を前記充電池に充電するとともに、充電した前記電力を前記充電池から放電させて出力することが可能な放充電機構と、前記発電機構および前記放充電機構と接続されており、前記発電機構が発電した電力、および前記充電池から放電された電力の少なくともいずれか一方を受け取り、受け取った電力を動力源として荷役動作を行なうクレーン機構とを有するクレーン装置の制御方法であって、
前記クレーン機構が行う荷役動作において前記クレーン機構が受ける現在の負荷の大きさを表す負荷量情報、および前記充電器の現在の充電量を表す充電量情報を少なくとも取得するステップと、
前記負荷量情報と前記充電量情報とに応じて、前記発電機構の前記エンジンの動作状態と前記放充電機構の放充電動作状態とを少なくとも制御することで、前記クレーン機構が受け取る電力を調整するステップと、
を有することを特徴とするクレーン装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89856(P2010−89856A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258915(P2008−258915)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】