説明

クロック信号生成回路、及びクロック信号生成回路の使用方法

【課題】リングオシレータを利用して基準クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号を生成するクロック信号生成回路において、逓倍クロック信号のジッタを抑制する。
【解決手段】高速クロック発生回路2の主要部であるリングオシレータへの電源供給を時定数がτに設定されたローパスフィルタ23を介して行い、高速クロック信号CKrで基準クロック信号CKs(周波数fs)の周期をカウントする周期カウンタ4のカウント値(周期カウント値)DGを、基準クロック信号CKsに従って動作する逓倍クロック生成回路5が、nクロック周期で、逓倍クロック信号CKoに反映させる。そして、基準クロック発生回路3は、周波数fsがτ>n/fsを満たす基準クロック信号CKsを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状に接続した複数の遅延素子からなるリングオシレータからの高速クロック信号を用いて基準クロック信号を逓倍した逓倍クロック信号を生成するクロック信号生成回路、及びクロック信号生成回路の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用周波数の異なる複数の通信回路を内蔵したカーナビゲーション用LSI(ナビLSI)等のように、複数種類のクロック信号を用いる半導体集積回路に、周波数精度の高い単一の基準クロック信号から周波数の異なる複数のクロック信号を生成するクロック信号生成回路を内蔵することが行われている。
【0003】
ここで、図6に、この種のクロック信号生成回路の一例を示す。
図6に示すように、クロック信号生成回路101は、リング状に接続した複数の遅延素子からなるリングオシレータ102と、外部より入力される基準クロック信号CKsの周期を、リングオシレータ102が発生させる高速クロック信号CKrによりカウントする周期カウンタ104と、周期カウンタ104でのカウント値(以下、周期カウント値という)DGに基づいて、基準クロック信号CKsの周波数fsを逓倍した逓倍クロック信号CKoを生成する逓倍クロック生成回路105とを備えている。
【0004】
また、逓倍クロック生成回路105は、周期カウント値DGを逓倍率設定レジスタ151に設定された逓倍率DVを除数とし、周期カウント値DGを被除数とした除算を実行する除算器153と、その演算結果CDに従って、高速クロック信号CKrを分周することで逓倍率DVに応じた周期を有する逓倍クロック信号CKoを生成する分周器155とからなる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
この場合、逓倍クロック信号CKoの周波数foは、次式で表されることになる。
fo=fr/(DG/DV)
【特許文献1】特開平8−265111号公報
【特許文献2】特開2006−121178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リングオシレータ102を構成する遅延素子は、インバータゲート等の論理回路を用いて構成されており、通常、電源電圧が低いほど、また温度が高いほど遅延量が大きくなる。このため、リングオシレータ102は、図7(a)に示すように、電源電圧が低いほど発振周波数が低下する電圧特性と、図7(b)に示すように、温度が高いほど発振周波数が低下する温度特性を有する。
【0007】
つまり、クロック信号生成回路101では、負荷変動(消費電力の変化)やノイズ等の影響により、遅延素子に印加される電源電圧が変動すると、高速クロック信号の周波数(周期)が変動する。
【0008】
ここで、周期カウント値DGを求めることは、基準クロック信号CKsの周期単位で高速クロック信号CKrの周波数(周期)を平均化することに相当する。従って、この周期カウント値DG(ひいては制御値CD)に基づいて生成される逓倍クロック信号CKoは、図8に示すように、基準クロック信号CKsの周期単位でみれば、その平均周波数は安定したものとなる。
【0009】
しかし、逓倍クロック信号CKoは、制御値CDに従って高速クロック信号CKrを分周することで生成されており、逓倍クロック信号CKoの周期(通常、数百ns〜数μs程度)は、基準クロック信号CKsの周期(通常、数百μs程度)より大幅に短いため、逓倍クロック信号CKoの個々のクロック周期は、高速クロック信号CKrの周波数変動の影響を受け易く、その結果、逓倍クロック信号CKoは、電源電圧の変動に基づくジッタを有したものとなるという問題があった。
【0010】
この電源電圧の変動は、電源配線の抵抗が大きいほど、また、消費電力(電源配線に流れる電流)の変動が大きいほど、その影響は大きくなる。従って、ナビLSI等のように、処理負荷の大きい画像処理を含めた様々な処理を実行可能とするために高速で動作するCPUが、クロック信号生成回路101と共に搭載されていると、そのCPUの動作状態によって電源電圧が大きく変動するため、クロック信号生成回路101が生成する逓倍クロック信号CKoのジッタも非常に大きなものとなり、通信エラーや回路の誤動作を引き起こす要因となるという問題があった。
【0011】
また、周期カウント値DGが逓倍クロック信号CKoに反映されるまでに要する遅延時間が大きいほど、電源電圧が大きく変動した時に、周波数が大きくずれた状態が長く継続してしまうという問題もあった。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するために、リングオシレータを利用して基準クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号を生成するクロック信号生成回路において、逓倍クロック信号のジッタを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明のクロック信号生成回路では、リング状に接続した複数の遅延素子からなるリングオシレータが、これら遅延素子にパルス信号を周回させることで高速クロック信号を生成し、また、基準クロック発生回路が、高速クロック信号より周波数の低い基準クロック信号を発生させる。
【0014】
そして、カウント回路が、基準クロック信号の周期を、高速クロック信号によりカウントし、逓倍クロック生成回路が、カウント回路でのカウント値と高速クロック信号に基づいて、基準クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号を生成する。
【0015】
特に、本発明のクロック信号生成回路では、リングオシレータへの電源入力に、逓倍クロック信号の周期より大きな時定数を有するローパスフィルタが設けられ、また、逓倍クロック生成回路は、基準クロック信号に従って動作し、カウント回路でのカウント値をn(nは正整数)クロック周期で逓倍クロック信号に反映するように構成されている。
【0016】
そして、基準クロック発生回路が生成する基準クロック信号の周波数fsは、ローパスフィルタの時定数をτとして、次式を満たすように設定されている。
τ>n×(1/fs) (1)
このように構成された本発明のクロック信号生成回路では、電源電圧の変動に基づく高速クロック信号の周波数(周期)変動をローパスフィルタによって抑制し、しかも、周期カウンタのカウント値(周期カウント値)を逓倍クロック信号に反映する周期(更新周期)n/fsが、電源電圧の変動周期(ローパスフィルタの時定数)τより短く設定され、更新周期の間に電源電圧が大きく変動することがないようにされている。
【0017】
従って、本発明のクロック信号生成回路によれば、長期的にはもちろん短期的にみても、周波数の安定した、即ちジッタの抑制された逓倍クロック信号を生成することができる。
【0018】
ところで、本発明のクロック信号生成回路が半導体集積回路として構成される場合、内蔵できる抵抗や容量の大きさに限度があり、せいぜい100KΩ,10pF程度であり、従って、ローパスフィルタの時定数はせいぜい1μs程度である。
【0019】
つまり、リングオシレータが発生させる高速クロック信号の周波数を安定させるには、ローパスフィルタの時定数を可能な限り大きな値に設定することが望ましいが、半導体集積回路では、その時定数の設定には製造上の制約が存在する。
【0020】
しかし、本発明のクロック信号生成回路のように、基準クロック信号を(1)式を満たすように設定することによって、ローパスフィルタの時定数が小さくても、その機能を効果的に働かせることができる。
【0021】
本発明のクロック信号生成回路において、逓倍クロック生成回路は、カウント回路でのカウント値を逓倍率の1/2の値で除算する除算器と、除算器での演算結果に基づき、該演算結果の整数部分の値を用いて、高速クロック信号の周期単位で時間を計測すると共に、演算結果の小数点以下の値を用いて、遅延素子の遅延時間単位のタイミングを選択することにより、前記クロック信号の信号レベルを反転させるタイミングを生成するように構成することが望ましい。
【0022】
この場合、逓倍クロック信号の周期を遅延素子の遅延時間単位で制御することになるため、カウント値を周波数に変換する際に生じる逓倍クロック信号の周波数のばらつき、ひいてはジッタを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明のクロック信号生成回路において、カウント回路は、高速クロック信号によって動作する周期カウンタだけで構成されていてもよいが、(1)式の条件が存在することにより、基準クロック信号の周期が短く制限される。すると、カウント回路でのカウント値が小さくなり、その結果、基準クロック信号の周期をカウント値に変換する際の量子化誤差が大きくなる。
【0024】
そこで、カウント回路は、周期カウンタに加えて、周期カウンタの出力をラッチするタイミングで、リングオシレータ内を周回するパルス信号の位置を検出して二進数に符号化する符号化回路を設けて、周期カウンタでの出力を上位ビット、符号化回路による符号値を下位ビットとするカウント値を出力するように構成されていることが望ましい。
【0025】
即ち、リングオシレータを周回するパルス信号の位置は、周期カウンタのLSB以下の値(換言すれば小数点以下の値)を表すものであるため、これを符号化回路によって符号化してカウント値の下位ビットに付加することにより、カウント値を確保すること、ひいてはカウント値の量子化誤差を圧縮することができる。
【0026】
ところで、基準クロック発生回路を備えていないクロック信号生成回路、即ち、外部より基準クロック信号の供給を受けるクロック信号生成回路を使用する場合は、(1)式を満たすような基準クロック信号を、そのクロック信号生成回路に供給するようにして使用すれば、上述した本発明のクロック信号生成回路と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、カーナビゲーション用LSI(ナビLSI)に組み込まれるクロック信号生成回路1の全体構成を示すブロック図である。
【0028】
<全体構成>
図1に示すように、クロック信号生成回路1は、周波数の安定した基準クロック信号CKsを発生させる基準クロック発生回路3と、基準クロック信号CKsより周波数の高い(周期の短い)高速クロック信号CKrを発生させる高速クロック発生回路2と、基準クロック信号CKsの周期を、高速クロック信号CKrによってカウントする周期カウンタ4と、周期カウンタ4でのカウント値(以下、周期カウント値という)DG及び高速クロック信号CKrに基づいて、基準クロック信号CKsの周波数fsを逓倍した逓倍クロック信号CKoを生成する逓倍クロック生成回路5とを備えている。
【0029】
但し、逓倍クロック生成回路5は、基準クロック信号CKsに従って動作し、n(nは正整数)クロック周期で(即ち、n×(1/fs)毎に)、周期カウント値DGを逓倍クロック信号CKoに反映するように構成されている。
【0030】
<高速クロック発生回路>
このうち、高速クロック発生回路2は、図2に示すように、インバータゲートを2段接続してなる遅延素子DLを、リング状にm(本実施形態では、m=2p :pは正整数)個接続することで構成されたリングオシレータ21を備え、各遅延素子DLに対して、ローパスフィルタ(LPF)23、ボルテージフォロア回路25を介して電源供給を行うように構成されている。
【0031】
なお、図示されているリングオシレータ21は、模式的に示したものであり、実際には、起動用のパルス信号を入力するための構成や、パルス信号の周回を維持するための回路構成を有している。但し、このようなリングオシレータ21は公知技術(例えば、特許文献1参照)であるため、ここではその説明を省略する。
【0032】
そして、リングオシレータ21は、各遅延素子DLの出力Q1〜Qmを通過信号として逓倍クロック生成回路5に供給すると共に、最終段の出力Qmを高速クロック信号CKrとして周期カウンタ4及び逓倍クロック生成回路5に供給するように構成されている。
【0033】
つまり、通過信号Q1〜Qmは、高速クロック信号CKrの周期の1/mずつ異なったタイミングで信号レベルが変化する信号であり、リングオシレータ21を周回するパルス信号は、入力がHレベル、出力がLレベルとなっている遅延素子DLを通過中であるとみることができる。
【0034】
また、ローパスフィルタ23は、抵抗,容量からなる周知のものである。そして、当該クロック信号生成回路1が生成する逓倍クロック信号CKoの最大周波数をfmaxとして、ローパスフィルタ23の時定数τは、1/fmaxより大きな値となるように設定されている。
【0035】
なお、本実施形態では、fmax=6.29MHz(1/fmax=159ns)として、τ=1μs程度に設定されている。
<基準信号発生回路>
基準クロック発生回路3は、水晶発振子等を用いて発生させたクロック信号を分周することで、周波数の安定した基準クロック信号CKsを生成する周知のものである。
【0036】
但し、基準クロック信号CKsの周波数fsは、(2)式を満たすように、即ち、周期カウント値DGが逓倍クロック信号CKoに反映されるまでに要する時間n×1/fが、ローパスフィルタ23の時定数τより小さくなるように設定されている。
【0037】
τ>n×(1/fs) (2)
<逓倍クロック生成回路>
図1に戻り、逓倍クロック生成回路5は、逓倍率DVが設定される逓倍率設定レジスタ51と、逓倍率DVによって決まる除数(本実施形態ではDV/2)で周期カウント値DGの除算を実行する除算器53とを備えている。なお、除算器53での演算結果CDは、小数点以下の値をpビット含むように算出され、その演算結果CDの下位pビット(即ち、小数点以下の値)を、下位制御値CDL、残りの上位ビット(即ち、整数部分の値)を上位制御値CDHという。
【0038】
また、逓倍クロック生成回路5は、上位制御値CDHが繰り返しプリセットされ、高速クロック信号CKrによってダウンカウントを行うダウンカウンタ55と、下位制御値CDLに基づいてタイミング選択値STを算出すると共に、ダウンカウンタ55のカウント値が「2」になると、その直後にくるタイミング選択値STに対応した通過信号Qi(i=ST+1)のタイミングを用いて、そのタイミングで信号レベルが反転する信号を生成する位相選択回路57とを備えており、この位相選択回路57の出力が逓倍クロック信号CKoとなる。
【0039】
なお、タイミング選択値STは、最初は、下位制御値CDLがそのまま設定され、以後、下位制御値CDLが更新されるまでの間は、逓倍クロック信号CKoの信号レベルを反転させる毎に、下位制御値CDLを順次加算した値をタイミング選択値STとする。そして、タイミング選択値STが2p 以上となった時には、その値から2p を引いた値を新たなタイミング選択値STとすると共に、ダウンカウンタ55のカウント値が「1」になったタイミングで、タイミング選択値STによるタイミング選択を行うようにされている。
【0040】
なお、このような逓倍クロック生成回路5は、例えば特許文献2等に記載されている公知技術である。
つまり、逓倍クロック生成回路5は、高速クロック信号CKrの周波数をfrとして、次式によって表される周波数foWO有した逓倍クロック信号CKoを生成することになる。
【0041】
fo=fr/(DG/DV) (3)
なお、図3は、クロック信号生成回路1の動作(但し、n=2の場合)を示すタイミング図であり、周期カウンタ4がカウントを終了した次のクロックの立ち上がりで、制御値CDが更新される様子を示す。
【0042】
<効果>
以上、説明したように、クロック信号生成回路1では、電源電圧の短期的な変動に基づく高速クロック信号CKrの周波数fr(周期)変動をローパスフィルタ23によって抑制し(図3参照)、しかも、周期カウンタ4のカウント値(周期カウント値)を逓倍クロック信号CKoに反映させる周期(更新周期)n/fsが、ローパスフィルタ23の時定数τより短く設定され、更新周期n/fsの間に電源電圧が大きく変動することがないようにされている。
【0043】
従って、クロック信号生成回路1によれば、長期的にはもちろん短期的にみても、周波数の安定した、即ちジッタの抑制された逓倍クロック信号CKoを生成することができる。
【0044】
また、クロック信号生成回路1では、制御値CDの更新周期を規定するクロック数nを小さくするほど、電源電圧が大きく変動した場合に、周波数がずれている状態をより短縮することができる(図3参照)。
【0045】
また、クロック信号生成回路1では、周期カウント値DGを逓倍率の1/2の値で除算した演算結果CDに基づき、その演算結果CDの整数部分の値CDHを用いて、高速クロック信号CKrの周期Tr単位で時間を計測すると共に、演算結果CDの小数点以下の値CDLを用いて、遅延素子DLの遅延時間単位のタイミングを選択することにより、逓倍クロック信号CKoの信号レベルを反転させるタイミングを生成している。
【0046】
従って、クロック信号生成回路1によれば、逓倍クロック信号CKoの周期を、高速クロック信号CKrの周期より短い遅延素子DLの遅延時間単位で制御することになるため、周期カウント値DGを周波数に変換する際に生じる逓倍クロック信号CKoの周波数のばらつき、ひいてはジッタを抑制することができる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0047】
図4は、本実施形態のクロック信号生成回路1aの全体構成を示すブロック図である。
なお、クロック信号生成回路1aは、上述したクロック信号生成回路1とは、一部構成が異なるだけであるため、構成が同じ部分については図中に同一符号を付して説明を省略し、構成の相違する部分を中心に説明する。
【0048】
<カウンタ回路>
図4に示すように、クロック信号生成回路1aでは、周期カウンタ4の代わりに、カウンタ回路4aが設けられている。
【0049】
このカウンタ回路4aは、高速クロック信号CKrによってカウント動作し、基準クロック信号CKsの立ち上がりエッジでカウント値をラッチして出力する周期カウンタ41と、高速クロック発生回路2からの通過信号Q1〜Qmに従って、リングオシレータ21内でのパルス信号の位置をpビットの値に符号化する小数点以下符号化回路43とからなる。
【0050】
そして、周期カウンタ41の出力DGHを上位ビット、小数点以下符号化回路43の出力DGLを下位ビットとする周期カウント値DGを逓倍クロック生成回路5に供給するように構成されている。
【0051】
<小数点以下符号化回路>
小数点以下符号化回路43は、図5に示すように、基準クロック信号CKsの信号レベルを、通過信号Q1〜Qmの立ち上がりエッジでそれぞれ保持するm個のフリップフロップ回路FF1〜FFmと、各フリップフロップ回路FF1〜FFmの出力のいずれかがHレベルである時に出力がLレベルとなる否定論理和回路NORと、否定論理和回路NORの出力がHレベルからLレベルに変化した時に、各フリップフロップ回路FF1〜FFmの出力をそれぞれラッチするラッチ回路LT1〜LTmと、ラッチ回路LT1〜LTmの出力がHレベルとなっている箇所をパルス信号の位置として、その位置をnビットの2進数に符号化する小数点以下符号化回路43とを備え、小数点以下符号化回路43にて符号化された値を、下位ビットDGLとして出力するように構成されている。
【0052】
つまり、通過信号Q1〜Qmは、高速クロック信号CKrの周期の1/m(即ち、遅延素子DLの遅延時間)単位で異なったタイミングを表すものであり、これを符号化することにより、周期カウンタ41のカウント値のLSB以下の値、即ち、小数点以下の値を表すことができる。
【0053】
<効果>
以上説明したように、クロック信号生成回路1aは、周期カウンタ41の出力をラッチするタイミングで、小数点以下符号化回路43がリングオシレータ21内を周回するパルス信号の位置を検出して二進数に符号化し、周期カウンタ41の出力を上位ビットDGH、小数点以下符号化回路43による符号値を下位ビットDGLとする周期カウント値DGを出力するように構成されている。
【0054】
従って、クロック信号生成回路1aによれば、高速クロック信号CKrの周期より短い遅延素子DLの遅延時間単位でカウントしたものと同等の周期カウント値DGを得ることができる。その結果、(1)式を満たすために基準クロック信号CKsの周期が短縮されることによる周期カウント値DGの減少分を補うこと、即ち、量子化誤差の増大分を圧縮することができ、基準クロック信号CKsの周期を長くしたときと同等の周波数検出精度を確保することができる。
[他の実施形態]
以上本発明の実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0055】
例えば、上述したクロック信号生成回路1,1aは、基準クロック発生回路3を備えているが、これを省略して、基準クロック信号CKsを外部から入力するように構成されたクロック信号生成回路の場合、周波数fsが(1)式を満たす基準クロック信号CKsを入力して使用すれば、クロック信号生成回路1,1aと同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、上述したクロック信号生成回路1,1aでは、除算器53にて小数点以下の値を算出し、その小数点以下の値に基づいてタイミングを選択する位相選択回路57を備えているが、除算器53では整数部分の値だけを求め、位相選択回路57を省略し、ダウンカウンタ55がカウントアウトするタイミングで信号レベルが変化する逓倍クロック信号CKoを生成するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態のクロック信号生成回路の全体構成を示すブロック図。
【図2】高速クロック発生回路の構成を示す回路図を含んだブロック図。
【図3】クロック信号生成回路の動作を示すタイミング図。
【図4】第2実施形態のクロック信号生成回路の全体構成を示すブロック図。
【図5】小数点以下符号化回路の構成を示す回路図。
【図6】従来装置の構成を示すブロック図。
【図7】リングオシレータの電圧特性および温度特性を示すグラフ。
【図8】従来装置の問題点を示す説明図。
【符号の説明】
【0058】
1,1a…クロック信号生成回路 2…高速クロック発生回路 3…基準クロック発生回路 4,41…周期カウンタ 4a…カウンタ回路 5…逓倍クロック生成回路 21…リングオシレータ 23…ローパスフィルタ 25…ボルテージフォロア回路 43…小数点以下符号化回路 51…逓倍率設定レジスタ 53…除算器 55…ダウンカウンタ 57…位相選択回路 DL…遅延素子 FF1〜FFm…フリップフロップ回路 LT1〜LTm…ラッチ回路 NOR…否定論理和回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に接続した複数の遅延素子からなり、該遅延素子にパルス信号を周回させることで高速クロック信号を生成するリングオシレータと、
前記高速クロック信号より周波数が低く且つ安定した基準クロック信号を発生させる基準クロック発生回路と、
前記基準クロック信号の周期を、前記高速クロック信号によりカウントするカウント回路と、
前記カウント回路でのカウント値、及び前記高速クロック信号に基づいて、前記基準クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号を生成する逓倍クロック生成回路と、
を備えたクロック信号生成回路において、
前記リングオシレータへの電源入力に、前記逓倍クロック信号の周期より大きな時定数を有するローパスフィルタを設け、
前記逓倍クロック生成回路は、基準クロック信号に従って動作し、前記カウント回路でのカウント値をn(nは正整数)クロック周期で前記逓倍クロック信号に反映するように構成され、
前記基準クロック発生回路が生成する前記基準クロック信号の周波数fsは、前記ローパスフィルタの時定数をτとして、次式を満たすように設定されていることを特徴とするクロック信号生成回路。
τ>n×(1/fs)
【請求項2】
半導体集積回路として構成されることを特徴とする請求項1に記載のクロック信号生成回路。
【請求項3】
前記逓倍クロック生成回路は、
前記カウント回路でのカウント値を逓倍率の1/2の値で除算する除算器を備え、
前記除算器での演算結果に基づき、該演算結果の整数部分の値を用いて、前記高速クロック信号の周期単位で時間を計測すると共に、前記演算結果の小数点以下の値を用いて、前記遅延素子の遅延時間単位のタイミングを選択することにより、前記逓倍クロック信号の信号レベルを反転させるタイミングを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のクロック信号生成回路。
【請求項4】
前記カウント回路は、
前記高速クロック信号によって動作する周期カウンタと、
前記周期カウンタの出力をラッチするタイミングで、前記リングオシレータ内を周回するパルス信号の位置を検出して二進数に符号化する符号化回路と、
を備え、前記周期カウンタでの出力を上位ビット、前記符号化回路による符号化値を下位ビットとするカウント値を出力することを特徴とする請求項3に記載のクロック信号生成回路。
【請求項5】
リング状に接続した複数の遅延素子からなり、該遅延素子にパルス信号を周回させることで高速クロック信号を生成するリングオシレータと、
前記高速クロック信号より周波数が低く且つ安定した基準クロック信号を入力し、該基準クロック信号の周期を、前記高速クロック信号によりカウントするカウント回路と、
前記基準クロック信号に従って動作し、前記カウント回路でのカウント値、及び前記高速クロック信号に基づいて、前記基準クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号を生成する逓倍クロック生成回路と、
前記リングオシレータへの電源入力に、前記逓倍クロック信号の周期より大きな時定数を有するローパスフィルタと、
を備えたクロック信号生成回路の使用方法であって、
前記ローパスフィルタの時定数がτ、前記カウント回路でのカウント値がn(但し、nは正整数)クロック周期で前記逓倍クロック信号に反映されるものとして、
前記基準クロック信号として、次式を満たす周波数fsを有するものを用いることを特徴とするクロック信号生成回路の使用方法。
τ>n×(1/fs)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−153014(P2009−153014A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330541(P2007−330541)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】