説明

クロット結合化合物に関連する方法および組成物

開示されるのは、表面分子および複数のクロット結合化合物を含む結合体であり、クロット結合化合物は、凝固した血漿タンパク質に選択的に結合し得、この結合体が凝固を引き起こし、そして腫瘍において上記結合体の蓄積を増幅し得る。1つの実施形態では、この結合体は、この結合体が凝固を引き起こし、そして腫瘍中のこの結合体の蓄積を増幅するように、十分な数および組成のクロット結合化合物を含み得る。また開示されるのは、クロット結合化合物に関連する組成物および方法である。開示される標的化は、癌およびその他の疾患および障害の処置のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年1月3日に出願された米国仮出願番号第60/883,229号および2007年1月8日に出願された米国仮出願番号第60/883,890号に基づく利益を主張しており、両者は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府によって保証された研究に関する陳述)
本発明は、国立癌研究所によって授与されたCA119335の下の政府支援でなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般に分子医学および癌生物学の分野に、そしてより詳細には、腫瘍脈管構造に選択的にホーミングする(home)クロット結合化合物に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
癌処置における進歩に対する主要な障害物は、正常組織は容赦しながら癌を選択的に標的にし得る薬剤の相対的欠如である。例えば、一般に、局在化された処置である、放射線治療および手術は、処置フィールドで正常組織に実質的な損傷を引き起こし得、瘢痕および正常組織の損失を生じる。比較すれば、一般に全身に投与される化学療法は、急速な細胞代謝回転および連続的細胞分裂を経験する、骨髄、粘膜、皮膚および小腸のような器官に実質的な損傷を引き起こし得る。結果として、吐き気、毛髪の損失および血液細胞数における低下のような所望されない副作用が、癌患者が化学療法薬物で静脈内処置されるとき、しばしば起こる。このような所望されない副作用は、安全に投与され得る薬物の量を制限し得、それによって、生存率を妨げ、そして患者寿命の質に衝撃を与える。
【0005】
ナノ薬物は、疾患の診断および処置を容易にするためにナノ粒子を用いる新生の分野である。臨床における著しい初期の成功は、MRIおよびナノ粒子を基礎にする処置システム(Desai 2006;Weissleder 1995)における造影剤としての超常磁性ナノ粒子の使用を含む。腫瘍処置で用いられる第一世代のナノ粒子は、腫瘍における優先的蓄積のための腫瘍血管の「漏出性(leakiness)」に依存する;しかし、この増大した透過性および保持(EPR)は、腫瘍血管の一定の特徴ではなく(Sinek 2004)、そして存在するときでさえ、なおナノ粒子を、腫瘍中の高い間質液圧を切り抜けるようにする(Sinek 2004;Boucher 1990)。魅力的な代替物は、ナノ粒子が血管中の特定の分子レセプターを標的にすることである。なぜなら、それらは血流からの結合のために容易に利用可能であるからであり、そして腫瘍血管は、正常組織の血管では有意に発現されない豊富な分子を発現するからである(Hoffman 2003;Oh2004;Ruoslahti 2002)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノ粒子の腫瘍への特異的標的化は、種々の実験系で達成されている(DeNardo 2005;Akerman 2002;Cai 2006)が、送達の効率は、一般に低い。現実には、増幅されたホーミングは、血管損傷の部位で十分な血小板蓄積を確実にする重要な機構である。それは、標的結合、活性化、血小板−血小板結合、およびクロットの形成を含む。当該技術分野で必要なのは、ナノ粒子がそれら自体のホーミングを増幅するナノ粒子送達システムである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の簡単な要旨)
本明細書に開示されるのは、表面分子および複数のクロット結合化合物を含む結合体である。このクロット結合化合物は、凝固した血漿タンパク質に選択的に結合し得る。上記結合体は、凝固を引き起こし、そして腫瘍において上記結合体の蓄積を増幅し得る。1つの実施形態では、上記結合体は、この結合体が、凝固を引き起こし、そして腫瘍中のこの結合体の蓄積を増幅するように、十分な数および組成のクロット結合化合物を含み得る。
【0008】
クロット結合化合物の数および組成の十分さは、非ヒト動物における腫瘍中の凝固および上記結合体の蓄積の増幅を評価することによって決定され得る。
【0009】
上記結合体は、上記結合体が腫瘍において凝固を引き起こし、そして上記結合体の蓄積を増幅するように十分な密度および組成のクロット結合化合物を含み得る。クロット結合化合物の密度および組成の十分さは、非ヒト動物における腫瘍中の凝固および上記結合体の蓄積の増幅を評価することによって決定され得る。
【0010】
複数のクロット結合化合物は、各々、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメント、フィブリン結合ペプチド、クロット結合抗体、およびクロット結合小有機分子から独立に選択され得る。複数のクロット結合化合物は、各々、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメントを独立に含み得る。
【0011】
このアミノ酸セグメントは、各々、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメントまたはその保存的改変体、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメント、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなるアミノ酸セグメント、およびアミノ酸配列REKからなるアミノ酸セグメントから独立に選択され得る。上記アミノ酸セグメントは、各々、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメントまたはその保存的改変体を含み得る。
【0012】
上記アミノ酸セグメントはまた、各々、独立にアミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含み得る。上記アミノ酸セグメントはまた、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなり得る。上記アミノ酸セグメントは、アミノ酸配列REKからなり得る。
【0013】
複数のクロット結合化合物は、各々、フィブリン結合ペプチドを含み得る。このフィブリン結合ペプチドは、フィブリン結合タンパク質およびそのフィブリン結合誘導体からなる群から独立に選択され得る。別の例では、複数のクロット結合化合物は、各々、クロット結合抗体を含み得る。さらに、複数のクロット結合化合物は、各々、クロット結合小有機分子を含み得る。
【0014】
上記表面分子は、酸化鉄ナノ粒子またはアルブミンナノ粒子のようなナノ粒子であり得る。上記表面分子はまた、リポソーム、ミクロ粒子、またはフッ化炭化水素のミクロバブルであり得る。1つの例では、上記表面分子は検出可能であり得る。別の例では、上記表面分子は治療剤であり得る。治療剤の例は、アブラキサンである。
【0015】
上記結合体はさらに、1つ以上の成分を含み得る。例えば、これら成分は、抗血管新生剤、プロ血管新生剤、癌化学療法剤、細胞障害性剤、抗炎症剤、抗関節炎剤、ポリペプチド、核酸分子、小分子、フルオロフォア、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム−111、テクネチウム−99、カーボン−11、およびカーボン−13からなる群から独立に選択され得る。これら成分の少なくとも1つは治療剤であり得る。治療剤の例は、パクリタキセルおよびタキソールである。上記成分の少なくとも1つは、検出可能な作用物質であり得る。
【0016】
上記結合体は、凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングし得る。上記結合体は、腫瘍脈管構造、創傷部位、またはその両方に選択的にホーミングし得る。
【0017】
本明細書に開示されるのは、本明細書中に開示される結合体を被験体に投与する工程を包含する方法であり、ここで、この結合体は凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングし、ここで、この結合体は凝固を引き起こし、そして凝固した血漿タンパク質の部位でこの結合体の蓄積を増幅する。この結合体は、腫瘍脈管構造、創傷部位、またはその両方に選択的にホーミングし得る。
【0018】
1つの例では、上記結合体は治療効果を有し得る。これは、この結合体のために起こる増加したクロット形成によって達成され得る。この効果は、治療剤の腫瘍の部位または創傷部位への送達によって増大され得る。
【0019】
この治療効果は、腫瘍負荷の増加または腫瘍負荷の減少における遅延であり得る。この治療効果はまた、腫瘍における血液循環の減少または阻止であり得る。この治療効果はまた、創傷部位における出血の減少または停止であり得る。この治療効果はまた、創傷部位における出血を止めるための時間の減少であり得る。この治療効果はまた、炎症の減少、創傷治癒の速度の増加、瘢痕組織の量の減少、痛みの減少、腫れの減少、壊死の減少、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0020】
さらに、凝固自体は、本明細書中のいずれかで開示されるような治療効果を有し得る。被験体は、標的にされ得る1つ以上の部位を有し得、ここで、上記結合体は、標的にされる1つ以上の部位までホーミングする。例えば、被験体は、複数の腫瘍または損傷の部位を有し得る。
【0021】
開示される方法および組成物のさらなる利点は、以下の明細書に一部が呈示され、、そして一部は、本明細書から理解され得るか、または開示される方法および組成物の実施により学ばれ得る。開示される方法および組成物の利点は、添付の請求項で詳細に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成される。前述の一般的説明および以下の詳細な記載の両方は例示であり、そして説明に過ぎず、そして請求項に記載の本発明の制限ではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書中に援用され、そしてその一部を構成する添付の図面は、開示される方法および組成物のいくつかの実施形態を示し、そして本明細書とともに開示される方法および組成物の原理を説明するために供される。
【図1】図1は、CREKAペンタペプチドの腫瘍ホーミングを示す。フルオレセイン−結合CREKAペプチド(200μg/マウス)を同系B16メラノーマ腫瘍をもつマウス中に注入した。代表的な顕微鏡視野が、野生型マウスにおける腫瘍中のフィブリン様構造へのフルオレセイン−CREKAのホーミング(A、矢印)、およびフィブリノゲンのないマウスにおけるホーミングの欠如(B)を示すために示される。(C)CREKAファージは、チューブ中の凝固した血漿タンパク質に結合し、その一方、非組み換えコントロールファージは、結合をほとんど示さない。(D)フルオレセイン−CREKAと結合されたデキストラン被覆酸化鉄ナノ粒子は、凝固した血漿タンパク質に結合し、そしてこの結合は、遊離のCREKAペプチドによって阻害される。(D)中の挿入画は、クロットが結合したCREKA−SPIOの顕微鏡外観を示す。倍率:A−B、200×;D、600×。
【図2】図2は、CREKA結合酸化鉄粒子の腫瘍ホーミングを示す。CREKA−SPIO粒子を、直径が1〜1.5cmの寸法のMDA−MB−435ヒト乳癌異種移植片腫瘍をもつBalb/cヌードマウス中に静脈注入(4mg Fe/kg)した。これらマウスを、5〜6時間後に灌流によって犠牲にし、そして組織をCREKA−SPIO蛍光(緑色)について調べた。核をDAPIで染色した(青色)。(A)2時間より早く、PBS(A、上のパネル)または200μlのPBS中に0.2μmolのNiを含むNi/DSPC/CHOLリポソーム(Ni−リポソーム)(A、下のパネル)の注入を受けたMDA−MB−435腫瘍マウスからの組織中のCREKA−SPIOの分布。(B)異なる処置後のCREKA−SPIOの血漿循環半減期。少なくとも4つの時点で集めた。データは、Prizmソフトウェア(GraphPad、San Diego、CA)を用いる単指数関数的減衰に適合させ、そして半減期値を、不対t−試験(***p<0.0001、n=10)で比較した。(C)腫瘍血管中のCREKA−SPIOナノ粒子の蓄積。マウスに注入し、そして組織をパネルAにおけるように集めた。蛍光血管内CREKA−SPIO粒子は、透過光で見える酸化鉄と重複する。倍率:600×。(D)Ni−リポソーム/CREKA−SPIO注入マウスのコントロール器官。時々の蛍光のスポットが腎臓および肺で観察される。心臓で見られる蛍光は、注入されないコントロールと異ならず、それは自己蛍光であることを示す。少なくとも3つの独立の実験からの代表的な結果が示される。倍率AおよびD、200×;C、600×。
【図3】図3は、腫瘍血管におけるCREKA−SPIOナノ粒子の蓄積を示す。MDA−MB−435異種移植片をもつマウスに、図2の解説に記載されたようにNi−リポソームおよびCREKA−SPIOナノ粒子を注入した。これらマウスを、ナノ粒子注入後6時間灌流し、そして組織を集めた。(A)上のパネル;血管中のナノ粒子蛍光のCD31染色との同時局在化;中央のパネル:腫瘍血管中のナノ粒子蛍光と抗フィブリン(フィブリノゲン(ogen))染色との同時局在化。挿入図−腫瘍血管中のフィブリルに沿って分布するCREKA−SPIOを示す画像;下のパネル:血小板に対する抗−CD41染色とのナノ粒子蛍光の同時局在化の欠如。(B)血流のマーカーとしてDiI染色されたて赤血球細胞を用いる腫瘍の生体共焦点顕微鏡法。矢印は、静止赤血球が血流の妨害を示す血管を示す。上の血管中の血流は妨害されていない。1分の動画(補足材料中の動画2)からの6つの連続するフレームが示される。(C)CREKA被覆リポソームは、腫瘍血管中でフィブリンと同時局在化する。結果は、3つの独立の実験の代表である。倍率:AおよびC、600×、B、200×。
【図4】図4は、腫瘍におけるナノ粒子蓄積に対する血液凝固の効果を示す。MDA−MB−435ヒト乳癌異種移植片をもつマウスに、PBS、または800U/kgのヘパリンのボーラス次いで120分後にNi−リポソーム(またはPBS)およびCREKA−SPIO(またはコントロールナノ粒子)を静脈内注入した。これらマウスは、実験全体で、腹腔内注入によりさらなるヘパリン(合計1000U/kg)またはPBSを受けた。(A)腫瘍をナノ粒子注入後6時間で取り出し、そして異なる処置後の腫瘍中の磁性信号をSQUIDで決定した。アミネート化デキストランSPIOを粒子コントロールとして供した(コントロールSPIO)。組織中のSPIOナノ粒子濃度は、ブランク組織の反磁性および常磁性バックグラウンドの減算の後、1T磁場における組織の飽和磁性値(電磁単位、emu)によって表される。この磁化値は、組織の乾燥重量に正規化した。3つの実験からの結果が示される。(B)血管中の凝固に対するヘパリンの効果の定量化。マウスを、上記のようにPBS(白棒)またはヘパリン(黒棒)で、次にNiリポソーム/CREKA−SPIOナノ粒子で前処理した。各処置を代表する2の腫瘍から3つのセクションを血管について抗−CD31で染色し、そして蛍光および蛍光クロットについて陽性の血管の%を決定した。ヘパリンは粒子を含む血管の%を有意には変なかったが、蛍光で満たされる管腔の率を劇的に低減したことに注目のこと。(C)ヘパリンで処置されたマウスの腫瘍血管中のCREKA−SPIO粒子の外観の代表的な例。(D)ヘパリン前処理ありまたはなしの、Ni−リポソーム次いでCy7−標識されたCREKA−SPIOを受けたマウスの近赤外画像。画像は、Odyssey 2 NIRスキャナー(Li−COR Biosciences、Lincoln、NE)を用いてCREKA−SPIO粒子の注入後8時間で得た。示される画像は、2色のコンポジット、赤(700nmチャネル、本体およびチャウ(chow)自己蛍光)および緑(800nmチャネル、Cy7)である。矢印は腫瘍を示し、矢印頭は肝臓を示す。ヘパリン前処理マウス中の腫瘍からの信号における強い減少に注目のこと。3のうちの代表的な実験が示される。
【図5】図5は、CREKAペプチドの腫瘍ホーミングを示す。(A)MDA−MB−435ヒト乳癌異種移植片腫瘍をもつBalb/cヌードマウスまたは乳房腫瘍をもつMMTVPyMTトランスジェニックマウスに、0.1mgのフルオレセイン−CREKAを静脈内注入した。これら動物を、注入後、灌流24時間により犠牲にし、そして組織セクションを蛍光顕微鏡法によって調べた。右のパネル、MDA−MB−435腫瘍マウスのコントロール器官、倍率200×。(B)6時間先に30μgのAlexa Fluor647−標識CREKAを注入したMDA−MB−435腫瘍マウスの全体動物の画像。Maestro造影システム(Cambridge Research Inc.、Woburn、MA)を用いて画像を獲得および処理した。矢印は腫瘍を示し、そして矢印頭は膀胱を示す。ペプチドは尿中に分泌され、そして肝臓中には蓄積しないことに注目のこと。
【図6】図6は、フルオレセイン−標識CREKAペプチドでの置換の種々のレベルと結合された酸化鉄ナノ粒子(CREKA−SPIO)の蛍光強度を示す。結合された粒子によって発せられる蛍光は、置換のレベルに直線的に関係している。A.U.=任意単位。
【図7】図7は、非−RES正常組織中にではなく、腫瘍組織中にCREKA−SPIOナノ粒子の蓄積を示す。低倍率(40×)をこれら画像を生成するために用いた。なぜなら、この倍率では、凝固がCREKA−SPIO蛍光を濃縮している血管のみが見えるからである。非−RES正常組織中にではなく、腫瘍組織中のクロット中にナノ粒子の閉じ込め(矢印)を注目のこと。これらの注入は、図2におけるように実施され、そして分析のために組織が調製された。10のうち代表的な実験例の一つを示している。
【図8】図8は、肝臓におけるフィブリン(フィブリノゲン)染色およびCREKA−SPIOの同時局在化の欠如を示す。フィブリン(フィブリノゲン)陽性構造は、肝臓によるフィブリノゲン産生からのバックグラウンドであり得る。なぜなら、それは、ナノ粒子と同時局在化せず(A)、そして非注入マウスからの肝臓は、類似のフィブリン(フィブリノゲン)染色を示した(B)からである。倍率:600X。
【図9】図9は、ナノ粒子ホーミングにおける血小板の役割を示す。(A)血液を、マウス中への4mg/kgのCREKA−SPIOの注入後5分で抜きとり、そして50μlのアリコートを、磁性カラムに通した。結合したCREKA−SPIO粒子をこのカラムから溶出し、スライド上に濃縮し、そして抗−CD41抗体で染色した。粒子のいくつかは、血小板と会合しているように見える。(B)血小板枯渇マウスからの腫瘍におけるCREKA−SPIOホーミングおよびクロット形成を示す低倍率画像(40×)。血小板枯渇は、記載のように(Van der HeydeおよびGramaglia(2005))マウスを0.1mgの抗−CD41モノクローナル抗体で処理することによって達成した。マウスは、引き続き、図2の凡例に記載のように、Ni−リポソーム/CREKA−SPIOを受けた。この抗−血小板処置は、(図7中の腫瘍のパネルと比較して)蛍光クロットの率を減少させなかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
開示される方法および組成物は、以下の詳細な実施形態の詳細な記載および本明細書に含まれる実施例、ならびに図面およびそれらの先および後の記載を参照してより容易に理解され得る。
【0024】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法が開示および記載される前に、それらは、他であることが特定されなければ特定の合成方法または特定の組み換えバイオテクノロジー方法に、または他であることが特定されなければ特定の試薬に制限されないこと、従って、勿論、変動し得ること、が理解されるべきである。本明細書中で用いられる用語が特定の実施形態を記載する目的のためのみに用いられ。そして制限的であることは意図されないこともまた理解されるべきである。
【0025】
(定義)
本明細書および添付の請求項で用いられるとき、単数形態は、文脈が他であることを明りょうに指示するのでなければ複数対象を含む。それ故、例えば、「薬学的担体」への参照は、2つ以上のこのような担体の混合物などを含む。
【0026】
範囲は、本明細書中では「約」の1つの特定の値から、そして/または「約」の別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から、そして/またはその他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として先行詞「約」の使用によって表されるとき、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。これら範囲の各々の終点は、その他の終点に関連し、かつその他の終点とは独立であることの両方で重要であることがさらに理解される。本明細書中で開示される多くの値があり、しかも、各値がまた、本明細書では、この値自体に加え、「約」のその特定の値として開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、そのときは「約10」がまた開示される。値が、特定の値に「より小さいまたは等しい」、「特定の値より大きいかまたは等しい」と開示されるとき、当業者によって適切に理解されるとしてまた理解される。例えば、値「10」が開示されるとき、「10より小さいかまたは等しい」ならびに「10より大きいかまたは等しい」がまた開示されている。本出願全体で、データは多くの異なるフォーマットで提供され、しかもこのデータは、終点および開始点を表し、そしてこれらデータ点の任意の組み合わせの範囲であることもまた理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点15が開示されるとき、10および15より大きい、大きいかまたは等しい、未満、より少ないかまたは等しい、および等しい、ならびに10と15との間が開示されると考えられることが理解される。2つの特定の単位間の各単位がまた開示されることが理解される。例えば、10と15とが開示されるとき、そのときは11、12、13、および14もまた開示されている。
【0027】
以下の本明細書および請求項において、多くの用語への参照がなされ、これらは、以下の意味を有するとして規定される:
「随意」または「必要に応じて」は、引き続き記載される事象または状況が、生じてもよく、または生じなくてもよいこと、しかもこの記載は、上記事象または状況が生じる事例およびそれが生じない事例を含むことが意味される。
【0028】
本出願全体で、種々の刊行物が参照される。これら刊行物の開示は、それらの全体が、本出願が関係する技術分野の状態をより完全に説明するために、本明細書によって本出願中に参考として援用される。開示される参考文献はまた、その参照が依存する文で論じられているそれら参考文献に含まれる素材について個々にそして詳細に参考として本明細書に援用される。
【0029】
開示される方法および組成物は、他であることが特定されなければ、特定の合成方法、特定の分析技法に、または特定の試薬に制限されず、そしてそれ故、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書中で用いられる用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、そして制限的であることは意図しないこともまた理解されるべきである。
【0030】
(材料)
開示されるのは、開示される組成物を調製する調製するために用いられる成分、および本明細書中に開示される方法内で用いられるべき組成物自体である。これらの材料およびその他の材料は本明細書中に開示され、そしてこれら材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるとき、これら化合物の各々の種々の個々のかつ集合的な組み合わせおよび順列の特定の参照は明りょうに開示され得ないが、各々が詳細に企図され、そして本明細書中に記載されていることが理解される。例えば、特定のペプチドが開示かつ論じ、そしてこのペプチドを含む多くの分子になされ得る多くの改変が論じられるとき、特定して企図されるのは、それらのペプチドの各々およびすべての組み合わせおよび順列およびそうでないと特別に示されない限り可能であるその改変である。それ故、分子A、B、およびCのクラスが開示され、ならびに分子D、E、およびF、そして組み合わせ分子A−Dの例が開示されるとき、そのときは、たとえ各々が個々に各々復唱されていなくても、各々は、個々にそして集合的に企図される意味の組み合わせ、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが開示されるとみなされる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせがまた開示されている。それ故、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブグループが開示されているとみなす。この概念は、本出願のすべての局面に適用され、制限されないで、開示される組成物を作製および用いる方法の工程を含む。それ故、実施され得る種々のさらなる工程があるとき、これらさらなる工程の各々は、開示される方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施され得ることが理解される。
【0031】
本明細書に開示されるのは、表面分子および複数のクロット結合化合物を含む結合体である。このクロット結合化合物は、凝固した血漿タンパク質に選択的に結合し得る。この結合体は、凝固を引き起こし、そして腫瘍中にこの結合体の蓄積を増幅し得る。この結合体のいくつかの形態は、表面分子および複数のクロット結合化合物を含み、このクロット結合化合物は凝固した血漿タンパク質に選択的に結合し、そしてこの結合体は凝固を引き起こし、そして腫瘍中にこの結合体の蓄積を増幅する。さらに開示されるのは、腫瘍にホーミングするのみならず、それら自体のホーミングを増幅する結合体である。このシステムは、凝固した血漿タンパク質を認識し、そして腫瘍に選択的にホーミングするクロット結合化合物に基づき、ここで、それは、血管壁および腫瘍間質に結合する。クロット結合化合物と結合される表面分子は、腫瘍血管中または創傷部位に蓄積し得、そこでそれらはさらなる局所的凝固を誘導し、それによってより多くの粒子のための新たな結合部位を生成する。このシステムは、これもまた自由に循環するが、疾患部位て蓄積し、そしてその部位でそれら自体の蓄積を増幅する血小板を模倣する。この凝固を基礎にした増幅は、腫瘍造影を多いに増大し、そして薬物担体機能もまた想定される。
【0032】
固形腫瘍を処置するために新たな戦略を開発することで、腫瘍細胞自体よりも腫瘍の脈管構造を標的にすることを含む方法は、別個の利点を提供する。腫瘍を通る血流の詰まりを誘導することは、例えば、腫瘍脈管構造特異的なフィブリン形成により、腫瘍部位における流入プロセスおよび流出プロセスを妨害し、それ故、抗腫瘍効果を生じる。腫瘍への血液供給を制止することは、凝固剤への特異的曝露により、凝固(coagulating)(凝固(clotting))プロセスに有利に腫瘍関連血管における凝血促進性−線維素溶解性バランスをシフトすることにより達成され得る。
【0033】
クロット結合化合物を含む結合体は、腫瘍細胞自体に向けられる。そこで、それらは蓄積し、そしてさらなる凝固を誘導する。細胞上で、または腫瘍脈管構造および/もしくは間質の環境中で、特異的または優勢的に発現し、局在化し、吸着し、または誘導可能である、多くの適切なクロット結合化合物が同定された。以下により詳細に論じる。
【0034】
(A.クロット結合化合物)
上記クロット結合化合物は、凝固した血漿タンパク質のようなクロットおよび/またはクロットの成分と相互作用する能力をもつ任意の化合物であり得る。上記結合体は、この結合体が凝固を引き起こし、そして腫瘍中および損傷の部位でこの結合体の蓄積を増幅するように十分な数および組成のクロット結合化合物を含み得る。1つの例では、クロット結合化合物の数および組成の十分さは、凝固および非ヒト動物中の腫瘍におけるこの結合体の蓄積の増幅を評価することにより決定され得る。このような方法は、以下により詳細に論じる。
【0035】
複数のクロット結合化合物は、各々独立に、例えば、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメント、フィブリン結合ペプチド、クロットを結合しフィブリンは結合しないペプチド(例えばCGLIIQKNEC(CLT1、配列番号2)およびCNAGESSKNC(CLT2、配列番号3))、クロット結合抗体、およびクロット結合小有機分子から選択される。複数のクロット結合化合物は、各々独立に、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメントを含み得る。
【0036】
この結合体は、任意の数のクロット結合化合物を含み得る。例により、この結合体は、少なくも1、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、625、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、75,000、または100,000、またはそれ以上のクロット結合化合物を含み得る。この結合体はまた、上記で列挙されたような数の間の任意の数を含み得る。
【0037】
本明細書で用いられるとき、用語「ホーミング分子」は、正常組織よりも優先して特定の標的部位または組織にインビボで選択的にホーミングする任意の分子を意味する。同様に、用語「ホーミングペプチド」または「ホーミングペプチド模倣物」は、正常組織よりも優先して特定の標的部位または組織にインビボで選択的にホーミングするペプチドを意味する。例えば、腫瘍にインビボで選択的にホーミングするホーミング分子は、すべての腫瘍にホーミングし得るか、または1つまたはサブセットの腫瘍タイプへの優先的ホーミングを示し得ることが理解される。
【0038】
「選択的にホーミングする」により、インビボで、ホーミング分子が、非標的に比較したとき標的に優先的に結合することが意味される。例えば、このホーミング分子は、非腫瘍組織または非創傷組織に比較したとき、1つ以上の腫瘍、創傷組織、または血餅の凝固した血漿に優先的に結合し得る。このようなホーミング分子は、例えば、腫瘍に選択的にホーミングし得る。例えば、腫瘍への選択的ホーミングは、一般に、非腫瘍組織のいくつかの組織タイプに比較したとき、腫瘍(またはその他の標的)内で少なくとも2倍のより大きい局在化によって特徴付けられる。ホーミング分子は、非腫瘍組織のいくつかまたは多くの組織タイプと比較したとき、または大部分のまたはすべての非腫瘍組織と比較したとき、腫瘍(またはその他の標的)への5倍、10倍、20倍またはそれ以上の優先的局在化によって特徴付けられ得る。それ故、いくつかの事例では、ホーミング分子は、標的組織へのホーミングに加え、一部、1つ以上の正常器官へホーミングする。選択的ホーミングはまた、標的化とも称され得る。
【0039】
(1.ペプチド)
1つの例では、上記クロット結合化合物は、ペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。開示されるペプチドは単離れさた形態であり得る。開示されたペプチドを参照して本明細書中で用いられるとき、用語「単離された」は、夾雑ポリペプチド、脂質、核酸および細胞中でこのペプチドと通常会合するか、ライブラリー中または粗製調製物中でこのペプチドと会合するその他の細胞物質などの物質を相対的に含まない形態にあるペプチドを意味する。
【0040】
開示されるペプチドは、任意の適切な長さを有し得る。この開示されるペプチドは、例えば、相対的に短い長さ、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35または40未満の残基を有し得る。開示されるペプチドはまた、有意により長い配列の文脈において有用であり得る。それ故、このペプチドは、例えば、50、100、150、200、250、300、400、500、1000または2000残基までの長さを有し得る。特定の実施形態では、ペプチドは、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100または200残基の長さを有し得る。さらなる実施形態では、ペプチドは、5〜200残基、5〜100残基、5〜90残基、5〜80残基、5〜70残基、5〜60残基、5〜50残基、5〜40残基、5〜30残基、5〜20残基、5〜15残基、5〜10残基、10〜200残基、10〜100残基、10〜90残基、10〜80残基、10〜70残基、10〜60残基、10〜50残基、10〜40残基、。10〜30残基、10〜20残基、20〜200残基、20〜100残基、20〜90残基、20〜80残基、20〜70残基、20〜60残基、20〜50残基、20〜40残基または20〜30残基の長さを有し得る。本明細書で用いられるとき、用語「残基」は、アミノ酸またはアミノ酸アナログをいう。
【0041】
本明細書が種々のタンパク質およびタンパク質配列を論じるとき、これらタンパク質配列をコードし得る核酸もまた開示されていることが理解される。これは、特定タンパク質配列に関連するすべての縮重配列、すなわち、1つの特定タンパク質配列コードする配列を有するすべての核酸、ならびにこのタンパク質配列の開示される改変体および誘導体をコードする縮重核酸を含む全ての核酸を含む。それ故、各々の特定の核酸配列は、本明細書中ではすべて書き出されないかも知れないが、各々およびすべての配列が開示されるタンパク質配列により本明細書中に実際開示され、かつ記載されていることが理解される。
【0042】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合(linkage)を経由して連結されない分子が生成され得る。例えば、アミノ酸またはアミノ酸アナログのための結合は、CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および−−CHHSO−−を含み得る(これらおよびその他は、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids、Peptide、and Proteins、B.Weinstein編、Marcel Dekker、New York、267頁(1983)中のSpatola、A.F.;Spatola、A.F.、Vega Data(1983年3月、Vol.1、Isssue 3、Peptide Backbone Modifications(一般総説);Morley、Trends Pharm Sci(1980)463〜468頁;Hudson、Dら、Int J Pept Prot Res 14:177〜185(1979)(−−CHNH−−、CHCH);Spatolaら、Life Sci 38:1243〜1249(1986)(−−CH H−−S);Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I 307〜314(1982)(−−CH−CH−−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392〜1398(1980)(−−COCH−−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(−−COCH−−);Szelkeら、欧州出願第EP45665CA(1982):97:39405(1982)(−−CH(OH)CH−−);Holladayら、Tetrahedron.Lett 24:4401〜4404(1983)(−−C(OH)CH−−);およびHruby Life Sci 31:189〜199(1982)(−−CH−−S−−)に見出され得;これらの各々は、本明細書中に参考として援用される。特に好ましい非ペプチド結合は、−−CHNH−−である。ペプチドアナログは、β−アラニン、γ−アミノ酪酸などのように、結合原子間に1を超える原子を有し得る。
【0043】
また開示されるのは二官能性ペプチドであり、これは、別個の機能を有する第2のペプチドに融合されたクロット結合ペプチドを含む。このような二官能性ペプチドは、全長分子の異なる部分によって与えられる少なくとも2つの機能を有し、そして例えば、凝固を増大する能力に加え、抗血管新生活性またはプロアポトーシス活性を示し得る。
【0044】
また開示されるのは、各々が独立にペプチド(例えば、アミノ酸配列配列番号1、またはその保存的改変体またはペプチド模倣物)を含む少なくとも2つのサブ配列を含む単離された多価ペプチドである。この多価ペプチドは、例えば、少なくとも3、少なくとも5または少なくとも10の、各々がペプチドを独立に含むそのようなサブ配列を有し得る。特定の実施形態では、この多価ペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20の同一または非同一のサブ配列を有し得る。これは、複数のクロット結合化合物に加え、上記結合体を含み得る。さらなる実施形態では、この多価ペプチドは、配列番号1の繰り返しのような同じサブ配列を含み得る。さらなる実施形態では、この多価ペプチドは、任意の介在するアミノ酸によって分離されない、隣接する同一または非同一サブ配列を含む。
【0045】
本明細書で用いられるとき、用語「ペプチド」は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメントなどを意味するために広く用いられる。用語「ペプチド模倣物」は、本明細書で用いられるとき、それが構造的に基礎にするペプチドの活性を有するペプチド様分子を意味する。このようなペプチド模倣物は、化学的に改変されたペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、およびペプトイドを含み、そしてこのペプチド模倣物が由来するペプチドの標的との選択的相互作用のような活性を有する(例えば、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」、Vol.1(M.E.Wolff編;John Wiley&Sons 1995)、803〜861頁中のGoodman and Ro、Peptidomimetics for Drug Designを参照のこと)。
【0046】
種々のペプチド模倣物が当該技術分野で公知であり、例えば、制限されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド成分、またはアミド結合同配体を含むペプチド様分子を含む。制限された天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド模倣物は、例えば、α−メチル化アミノ酸;α、α−ジアルキルグリシンまたはα−アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα−−Cα環化アミノ酸;Nα.−メチル化アミノ酸;β−またはγ−アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β−不飽和アミノ酸;β,β−ジメチルまたはβ−メチルアミノ酸;β−置換−2,3−メタノアミノ酸;N−−CεまたはCα−−CΔ環化アミノ酸;置換プロリンまたは別のアミノ酸模倣物を含み得る。ペプチド二次構造を模倣するペプチド模倣物は、例えば、非ペプチド(non−peptidic)β−ターン模倣物;γ−ターン模倣物;β−シート構造;またはらせん構造の模倣物を含み得、これらの各々は当該技術分野で周知である。ペプチド模倣物はまた、例えば、レトロ−インバーソ(retro−inverso)改変;還元アミド結合;メチレンチオエーテルまたは−メチレン−スルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランス−オレフィンまたはフルオロオレフィン結合;1,5−二置換テトラゾール環;ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合のようなアミド結合同配体、または別のアミド同配体を含むペプチド様分子であり得る。当業者は、これらおよびその他のペプチド模倣物が、本明細書で用いられるとき、用語「ペプチド模倣物」の意味内に包含されることを理解する。
【0047】
ペプチド模倣物を同定するための方法は当該技術分野で周知であり、そして例えば、可能なペプチド模倣物のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例として、Cambridge Structural Databaseは、既知の結晶構造を有する300,000を超えるコレクションを含む(Allenら、Acta Crystalloqr.Section B、35:2331(1979))。この構造物寄託は、新規な結晶構造が決定されるとき継続してアップデートされ、そして適切な形状、例えば、開示されるペプチドと同じ形状、ならびに標的分子に可能な幾何学的および化学的相補性を有する化合物についてスクリーニングされ得る。ペプチドまたはペプチドに結合する標的分子の結晶構造が入手可能でない場合、構造は、例えば、プログラムCONCORD(Rusinkoら、J.Chem.Inf.Comput.Sci.29:251(1989))を用いて生成され得る。別のデータベース、Available Chemicals Directory(Molecular Design Limited、Information Systems;San Leandro Calif.)は、市販され入手可能な約100,000の化合物を含み、そしてまた、例えば、癌細胞と選択的に相互作用することで活性をもつペプチドの可能なペプチド模倣物を同定するためにサーチされ得る。
【0048】
(i.ホーミングペプチド)
凝固した血漿タンパク質にホーミングするペプチドの技術分野でいくつかの例がある。例は、REK、REKを含むペプチド、CREKA(配列番号1)、およびCREKA(配列番号1)を含むペプチドを含む。アミノ酸セグメントがまた、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)またはその保存的改変体、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメント、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなるアミノ酸セグメント、およびアミノ酸配列REKからなるアミノ酸セグメントを含むアミノ酸セグメントから独立に選択され得る。これらアミノ酸セグメントは、各々独立にアミノ酸配列CREKA(配列番号1)またはその保存的改変体を含み得る。
【0049】
これらアミノ酸セグメントはまた、各々独立に、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含み得る。アミノ酸セグメントはまた、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなり得る。アミノ酸セグメントは、アミノ酸配列REKからなり得る。
【0050】
(ii.フィブリン結合ペプチド)
クロット結合化合物はまた、フィブリン結合ペプチド(FBP)を含み得る。フィブリン結合ペプチドの例は、当該技術分野で公知である(Van Rooijen N、Sanders A(1994)J Immunol Methods 174:83〜93;Moghimi SM、Hunter AC、Murray JC(2001)Pharmacol Rev 53:286〜318;米国特許第5,792,742号、すべて、フィブリン結合ペプチドに関するそれらの教示についてそれらの全体が参考として本明細書中に援用される。)
(iii.その他のクロット結合ペプチド)
クロット結合ペプチドはまた、フィブリン以外のタンパク質に結合し得る。例は、クロット中に取り込まれるようになったフィブロネクチンに結合するペプチドを含む(Pilchら、(2006)PNAS、103:2800〜2804、クロット結合ペプチドに関するその教示についてその全体が本明細書によって援用される)。クロット結合ペプチドの例は、制限されないで、CGLIIQKNEC(CLT1、配列番号2)およびCNAGESSKNC(CLT2、配列番号3)を含む。これらアミノ酸セグメントはまた、アミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)またはその保存的改変体、アミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)を含むアミノ酸セグメント、またはアミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)からなるアミノ酸セグメントを含むアミノ酸セグメントから独立に選択され得る。これらアミノ酸セグメントは、各々独立に、アミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)またはその保存的改変体を含み得る。
【0051】
これらアミノ酸セグメントはまた、各々独立に、アミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)を含み得る。アミノ酸セグメントはまた、アミノ酸配列CLT1またはCLT2(配列番号2または3)からなり得る。
【0052】
(2.クロット結合抗体)
上記クロット結合化合物は、クロット結合抗体を含み得る。クロット結合抗体の例は、当該技術分野で公知である(Holvoetら、Circulation、Vol 87、1007〜1016、1993;Bodeら、J.Biol.Chem.、Vol.264、Issue 2、944〜948、Jan、1989;Huangら、Science 1997:Vol.275.no.5299、547〜550頁、これらすべては、クロット結合抗体に関するそれらの教示についてそれらの全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0053】
用語「抗体」は、本明細書では広い意味で用いられ、そしてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加え、用語「抗体」にまた含まれるのは、それらがクロットに結合またはそうでなければクロットと相互作用するそれらの能力のために選択される限り、これら免疫グロブリン分子のフラグメントまたはポリマー、および免疫グロブリンまたはそのフラグメントのヒトまたはヒト化バージョンがある。これら抗体は、本明細書中に記載されるインビトロアッセイを用い、または類似の方法により、それらの所望の活性について試験され得、その後、それらのインビボ治療活性および/または予防活性が、公知の臨床試験方法に従って試験される。
【0054】
本明細書で用いられるとき、用語「モノクローナル抗体」は、抗体の実質的に均一な、すなわち、この集団内の個々の抗体は、抗体分子の小サブセット中に存在し得る可能な自然に起こる変異を除き同一である集団から得られる抗体をいう。本明細書において、モノクローナル抗体は、詳細には、その重および/または軽鎖の一部分が特定の種由来の抗体中または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、その一方、その鎖(単数または複数)の残りが別の種由来の抗体中または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中、ならびにこのような抗体のフラグメント中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体を、それらが所望のアンタゴニスト活性を示す限り含む(米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984)を参照のこと)。
【0055】
開示されるモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を用いて作製され得る。例えば、開示されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495(1975)によって記載される方法のようなハイブリドーマ法を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法では、マウスまたはその他の適切な宿主動物が、代表的には免疫化剤で免疫され、この免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生し得るリンパ球を惹起する。あるいは、リンパ球が、インビトロで、例えば、本明細書中に記載されるHIV Env−CD4−コ−レセプター複合体を用いて免疫化され得る。
【0056】
これらモノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)に記載されるような組み換えDNA法によっても作製され得る。開示されるモノクローナル抗体をコードするDNAは容易に単離され、そして従来手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)配列決定され得る。抗体または活性抗体フラグメントのライブラリーはまた、例えば、Burtonらへの米国特許第5,804,440号およびBarbsらへの米国特許第6,096,441号に記載のように、ファージディスプレイ技法を用いて生成され、そしてスクリーニングされ得る。
【0057】
インビトロ法もまた、一価抗体を調製するために適切である。そのフラグメント、特にFabフラグメントを生成するための抗体の消化は、当該技術分野で慣用の技法を用いて達成され得る。例えば、消化はパパインを用いて実施され得る。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開されたWO94/29348および米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、代表的には、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同じ抗原結合フラグメントを生成し、各々は単一の抗原結合部位、および残りのFcフラグメントを備える。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、そしてなお抗原を交差連結し得るフラグメントを生じる。
【0058】
これらフラグメントはまた、その他の配列に結合してしているか否かにかかわらず、抗体または抗体フラグメントの活性が非改変抗体または抗体フラグメントに比較して有意に変化または損なわれないことを条件に、挿入、欠失、置換、または特定領域もしくは特定のアミノ酸残基のその他の選択された改変を含み得る。これらの改変は、ジスルフィド結合し得るアミノ酸を除去/付加すること、その生体−寿命を増加すること、その分泌特性を変えることなどのような、いくつかのさらなる性質を提供し得る。いずれの場合においても、この抗体または抗体フラグメントは、その同起源抗原への特異的結合のような、生物活性特性を所有しなければならない。抗体または抗体フラグメントの機能的または活性領域は、タンパク質の特定領域変異誘発、次いで発現および発現されたポリペプチドの試験により同定され得る。このような方法は、当業者に容易に明らかであり、そして抗体または抗体フラグメントをコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る(Zoller、M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348〜354、1992)。
【0059】
本明細書で用いられるとき、用語「抗体(単数)」または「抗体(複数)」はまた、ヒト抗体および/またはヒト化抗体をいい得る。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、またはウサギ由来の抗体)は、ヒトにおいては元来抗原性であり、そしてそれ故、ヒトに投与されるとき、所望されない免疫応答を生じ得る。従って、上記方法におけるヒトまたはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が所望されない免疫応答を起こす機会を少なくするために供される。
【0060】
ヒト抗体は、任意の技法を用いて調製され得る。ヒトモノクローナル抗体産生のための技法の例は、Coleら(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁、1985)により、およびBoernerら(J.Immunol.、147(1):86〜95、1991)により記載される方法を含む。ヒト抗体(およびそのフラグメント)はまた、ファージディスプレイライブラリーを用いて産生され得る(Hoogenboomら、J.Mol.Biol.、227:381、1991;Marksら、J.Mol.Biol.、222:581、1991)。
【0061】
ヒト抗体はまた、トランスジェニック動物から得られ得る。例えば、免疫化に応答してヒト抗体の完全レパートリーを産生し得るトランスジェニック変異体マウスが記載されている(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551〜255(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258(1993);Bruggermannら、Year in Immunol.、7:33(1993)を参照のこと)。特に、これらのキメラおよび生殖細胞系変異体マウス中の抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を生じ、そしてヒト生殖細胞系遺伝子アレイのこのような生殖細胞系変異体マウス中への成功した移入は、抗原投与に際し、ヒト抗体の産生を生じる。所望の活性を有する抗体は、本明細書中に記載のようなEnv−CD4−コ−レセプター複合体を用いて選択される。
【0062】
抗体ヒト化技法は、一般に、組み換えDNA技術の使用を含み、抗体分子の1つ以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作する。従って、非ヒト抗体(またはそのフラグメント)のヒト化形態は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワーク中に組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体からの抗原結合部位の部分を含むキメラ抗体または抗体鎖(または、Fv、Fab、Fab’、もしくは抗体のその他の抗原結合部分のようなそのフラグメント)である。
【0063】
ヒト化抗体を生成するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つ以上の相補性決定領域(CDR)からの残基は、所望の抗原結合特徴(例えば、標的抗原に対する特定レベルの特異性および親和性)を有することが知られるドナー(非ヒト)抗体分子の1つ以上のCDRからの残基によって置き換えられる。いくつかの例では、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体中にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。実際、ヒト化抗体は、代表的には、いくつかのCDR残基および可能にはいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似の部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。ヒト化抗体は、一般に、抗体定常領域(Fc)、代表的にはヒト抗体の抗体定常領域の少なくとも一部分を含む(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986)、Reichmannら、Nature、332:323〜327(1988)、およびPresta、Curr.Opin.Struct.Biol.、2:593〜596(1992))。
【0064】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、ヒト化抗体は、Winterおよび共同研究者(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986)、Riechmannら、Nature、332:323〜327(1988)、Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536(1988))の方法に従って、齧歯類CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置き換えることにより生成され得る。ヒト化抗体を産生するために用いられ得る方法はまた、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、米国特許第5,721,367号(Kayら)、米国特許第5,837,243号(Deoら)、米国特許第5,939,598号(Kucherlapatiら)、米国特許第6,130,364号(Jakobovitsら)、および米国特許第6,180,377号(Morganら)に記載されている。
【0065】
(3.小有機分子)
クロット結合化合物はまた、小有機分子であり得る。クロットと相互作用、またはクロットに結合し得る小有機分子は、当該技術分野で公知である。これら分子はまた、コンビナトリアル化学のような当該技術分野で公知の方法によって同定され得る。小有機分子のいくつかの形態は、1000ダルトン未満の分子量を有する有機分子であり得る。
【0066】
コンビナトリアル化学は、制限されないで、例えば、クロットと相互作用し得る小分子、フィブリンもしくはフィブロネクチン、または凝固した血漿タンパク質のようなクロットと会合する分子を単離するすべての方法を含む。分子の大きなプールを合成し、そしてその複合混合物を、クロットとの相互作用の検出のような特定の選択および富化プロセスに供する。
【0067】
種々のコンビナトリアルライブラリーと組み合わせ、当業者に周知の方法を用い、所望の標的に結合または相互作用するような小分子を単離および特徴付け得る。これら化合物の相対的結合親和性は、当業者に周知である競争結合研究を用いて比較され、そして最適化合物が同定され得る。例えば、CREKA(配列番号1)を用いる競争結合研究が、用いられ得る。
【0068】
所望の標的を結合する分子を単離するためにコンビナトリアルライブラリーを作製し、そしてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための技法は、当業者に周知である。代表的な技法および方法は、制限されないで、以下の米国特許に見出され得る。第5,084,824号、第5,288,514号、第5,449,754号、第5,506,337号、第5,539,083号、第5,545,568号、第5,556,762号、第5,565,324号、第5,565,332号、第5,573,905号、第5,168,825号、第5,619,680号、第5,627,210号、第5,646,285号、第5,663,046号、第5,670,326号、第5,677,195号、第5,683,899号、第5,688,696号、第5,688,997号、第5,698,685号、第5,712,146号、第5,721,099号、第5,723,598号、第5,741,713号、第5,792,431号、第5,807,683号、第5,807,754号、第5,821,130号、第5,831,014号、第5,834,195号、第5,834,318号、第5,834,588号、第5,840,500号、第5,847,150号、第5,856,107号、第5,856,496号、第5,859,190号、第5,864,010号、第5,874,443号、第5,877,214号、第5,880,972号、第5,886,126号、第5,886,127号、第5,891,737号、第5,916,899号、第5,919,955号、第5,925,527号、第5,939,268号、第5,942,387号、第5,945,070号、第5,948,696号、第5,958,702号、第5,958,792号、第5,962,337号、第5,965,719号、第5,972,719号、第5,976,894号、第5,980,704号、第5,980,704号、第5,985,356号、第5,999,086号、第6,001,579号、第6,004,617号、第6,008,321号、第6,017,768号、第6,025,371号、第6,030,917号、第6,040,193号、第6,045,671号、第6,045,755号、第6,060,596号、および第6,061,636号。
【0069】
コンビナトリアルライブラリーは、多くの異なる合成技法を用いて分子の広範なアレイから作製され得る。例えば、縮合2,4−ピリミジンジオン(米国特許第6,025,371号)ジヒドロベンゾピラン(米国特許第6,017,768号および同第5,821,130号)、アミドアルコール(米国特許第5,976,894号)、ヒドロキシ−アミノ酸アミド(米国特許第5,972,719号)、炭水化物(米国特許第5,965,719号)、1,4−ベンゾジアゼピン−2,5−ジオン(米国特許第5,962,337号)、環状物(cyclic)(米国特許第5,958,792号)、ビアリールアミノ酸アミド(米国特許第5,948,696号)、チオフェン(米国特許第5,942,387号)、三環テトラヒドロキノリン(米国特許第5,925,527号)、ベンゾフラン(米国特許第5,919,955号)、イソキノリン(米国特許第5,916,899号)、ヒダントインおよびチオヒダントイン(米国特許第5,859,190号)、インドール(米国特許第5,856,496号)、イミダゾール−ピリド−インドールおよびイミダゾール−ピリド−ベンゾチオフェン(米国特許第5,856,107号)、置換2−メチレン−2,3−ジヒドロチアゾール(米国特許第5,847,150号)、キノリン(米国特許第5,840,500号)、PNA(米国特許第5,831,014号)、含有タグ(米国特許第5,721,099号)、ポリケチド(米国特許第5,712,146号)、モルホリノ−サブユニット(米国特許第5,698,685号および同第5,506,337号)、スルフアミド(米国特許第5,618,825号)、およびベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)を含む。
【0070】
本明細書で用いられるとき、含められるコンビナトリアル方法およびライブラリーは、伝統的なスクリーニング方法およびライブラリー、ならびに反復プロセスで用いられる方法およびライブラリーである。
【0071】
小有機分子のライブラリーは、一般に少なくとも2の有機化合物、しばしば少なくとも約25、100、500の異なる有機化合物、より普通には少なくとも約1000の異なる有機化合物、好ましくは少なくとも約2500の異なる有機化合物、より好ましくは少なくとも約5000の異なる有機化合物、そして最も好ましくは少なくとも約10,000以上の異なる有機化合物を含む。ライブラリーは、ライブラリーの各々の個々の分子がライブラリーのその他の分子から空間的に分離され得るか(例えば、ライブラリーの各々のメンバーは、別個のマイクロタイターウェルに存在する)、またはライブラリーの2つ以上のメンバーは、デコンボルーションのための方法が容易に利用可能である場合、組み合わせられ得るように選択または構築され得る。有機化合物のライブラリーが調製される方法は、本発明にとって重要ではない。
【0072】
(B.表面分子)
本明細書中に開示される、代わりに表面粒子とも称される表面分子は、その結合体がクロットに送達されるような様式でクロット結合化合物と結合し得、そこでそれは蓄積し得、そしてさらに凝固を引き起こす。この表面分子は、クロット結合化合物とともに用いられ得る任意の物質であり得、そしてサイズまたは物質によって制限されない。例は、制限されないで、(酸化鉄ナノ粒子またはアルブミンナノ粒子のような)ナノ粒子、リポソーム、小有機分子、ミクロ粒子、フルオロカーボンミクロバブルのようなミクロバブルを含む。表面分子という用語は、開示される結合体の成分を識別するために用いられるが、制限的であることは意図されない。特に、開示される表面分子は、単一分子から構成される物質、化合物、組成物、粒子またはその他の材料に制限されない。むしろ、開示される表面分子は、少なくともいくつかのクロット結合化合物が表面分子の表面上で表現され、そして/または接近可能であるように、複数のクロット結合化合物と結合体化され得る、任意の物質、化合物、組成物、粒子および/またはその他の材料である。適切な表面分子の種々の例は、本明細書中に記載され、そして開示されている。
【0073】
この表面分子は検出可能であり得るか、またはAbraxaneTMのような治療剤であり得る。検出可能または治療的であり得る成分を論じる以下のセクションもまた、この表面分子に適用される。
【0074】
(1.ナノ粒子、ミクロ粒子、およびミクロバブル)
用語「ナノ粒子」は、ナノメートルで測定されるサイズをもつナノ粒子、例えば、約100nmより小さい少なくとも1つの寸法を有するナノ範囲(nanoscopic)の粒子をいう。ナノ粒子の例は、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子、フラーレン様物質、無機ナノチューブ、(共有結合した金属キレートをもつような)デンドリマー、ナノファイバー、ナノホム(nanohom)、ナノ−オニオン(nano−onion)、ナノロッド、ナノロープおよび量子ドットを含む。ナノ粒子は、例えば、(高周波および可視光子を含む)光子の吸収および/または放射およびプラズモン共鳴により、検出可能な信号を生成し得る。
【0075】
ミクロスフェア(またはミクロバブル)がまた、本明細書中に開示される方法とともに用いられ得る。発色団を含むミクロスフェアは、フォトニック結晶、生物学的ラベリング、およびマイクロ流体チャネル中の流れ可視化を含む広範な種類の用途で利用されてきた。例えば、Y.Linら、Appl.Phys Lett.2002、81、3134;D.Wangら、Chem.Mater.2003、15、2724;X.Gaoら、J.Biomed.Opt.2002、7、532;M.Hanら、Nature Biotechnology.2001、19、631;V.M.Paiら、Mag.&Magnetic Mater.1999、194、262(これらの各々は、それらの全体が参考として援用される)を参照のこと。発色団の光安定性およびミクロスフェアの単分散性は重要であり得る。
【0076】
例えば、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、または半導体ナノ結晶のようなナノ粒子は、ミクロスフェア中に取り込まれ得る。これらナノ粒子の光学的性質、磁気的性質、および電子的性質は、それらが、ミクロスフェアと会合している間観察されることを可能にし、そしてこれらミクロスフェアが識別され、そして空間的にモニターされることを可能にし得る。例えば、コロイド状に合成された半導体ナノ結晶の高い光安定性、良好な蛍光効率および広い放射調整可能性は、それらを発色団の優れた選択にし得る。有機色素とは異なり、異なる色(すなわち異なる波長)を発するナノ結晶は、単一光源で同時に励起され得る。(例えば、コア−シェルCdSe/ZnSおよびCdS/ZnSナノ結晶のような)コロイド状に合成された半導体ナノ結晶は、ミクロスフェア中に取り込まれ得る。これらミクロスフェアは、単分散シリカミクロスフェアであり得る。
【0077】
ナノ粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、または半導体ナノ結晶であり得る。金属ナノ粒子または金属酸化物ナノ粒子の金属は、チタン、ジルコニウム、ハウニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロミウム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、スカンジウム、イッテリウム、ランタン、ランタニドシリーズまたはアクチニドシリーズ元素(例えば、セリウム、プラセオジニウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガトリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホロミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、トリウム、プロタクチニウム、およびウラニウム)、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、ポロニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムを含む。特定の実施形態では、上記金属は、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銀、金、セシウムまたはサマリウムであり得る。上記金属酸化物は、これら材料または材料の組み合わせのいずれかの酸化物であり得る。例えば、上記金属は金であり得るか、または上記金属酸化物は酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化セリウム、または酸化チタンであり得る。金属ナノ粒子および金属酸化物ナノ粒子の調製は、例えば、米国特許第5,897,945号6および米国特許第6,759,199号に記載され、これらの各々は、その全体が参考として援用される。
【0078】
(2.リポソーム)
「リポソーム」は、この用語が本明細書中で用いられるとき、内側の水性スペースを取り囲む外側の脂質二重層または複数層の膜を含む構造をいう。リポソームは、細胞への送達のために任意の生物学的に活性な薬剤をパッケージするために用いられ得る。
【0079】
リポソームを形成するための材料および手順は、当業者に周知である。適切な媒体中での分散に際し、広範な種類のリン脂質は膨潤し、水和し、そして脂質二重層を分離する水性媒体の層をもつ多層同心性二重層(multilamellar concentric bilayer)ベシクルを形成する。これらのシステムは、マルチラメラリポソームまたはマルチラメラ脂質ベシクル(「MLV」)と称され、そして10nm〜100nmの範囲内の直径を有する。これらのMLVは、最初、Banghamら、J Mol.Biol.13:238〜252(1965)によって記載された。一般に、脂質または親油性物質は、有機溶媒中に溶解される。減圧下での回転蒸発のように、この溶媒が除去されるとき、脂質残渣は、コンテナの壁上に膜を形成する。代表的には電解質または親水性の生物学的に活性な材料を含む水性溶液が、次にこの膜に添加される。大きなMLVが撹拌の際に生成される。より小さなMLVが所望されるとき、より大きなベシクルは、音波処理、減少するポアサイズをもつフィルターでの逐次的濾過またはその他の形態の機械的剪断により低減される。ラメラのサイズおよび数における両方でMLVが低減され得る技法がまたあり、例えば、加圧押し出し(Barenholzら、FEBS Lett.99:210〜214(1979))による。
【0080】
リポソームはまた、単一ラメラベシクルの形態をとり得、これはMLVのより大規模な音波処理によって調製され、そして水性溶液を取り囲む単一の球形脂質二重層からなる。単一ラメラベシクル(「ULV」)は20〜200nmの範囲内の直径を有して小さくあり得、その一方、より大きなULVは、200nm〜2μmの範囲内の直径を有し得る。単一ラメラベシクルを作製するためのいくつかの周知の技法がある。Papahadjopoulosら、Biochim et Biophys Acta 135:624〜238(1968)では、リン脂質の水性分散物の音波処理は、水性溶液を取り囲む脂質二重層を有する小ULVを生成する。Schneider、米国特許第4,089,801号は、超音波処理によるリポソーム前駆体の形成、次いで両親媒性化合物を含む水性媒体の添加、および生体分子脂質層システムを形成するための遠心分離を記載している。
【0081】
小ULVはまた、Batzriら、Biochim et Biophys Acta 298:1015〜1019(1973)により記載されるエタノール注入技法、およびDeamerら、Biochim et Biophys Acta 443:629〜634(1976)のエーテル注入技法により調製され得る。これらの方法は、脂質の有機溶液の緩衝液溶液中への急速注入を含み、これは、単一ラメラリポソームの迅速形成を生じる。ULVを作製するための別の技法は、Wederらにより、「Liposome Technology」G.Gregoriadis編、CRC Press Inc.Boca Raton、Fla、Vol.I、7章、79〜107頁(1984)中に教示されている。この溶剤除去方法は、撹拌または音波処理による溶剤での脂質および添加物の可溶化を含み、所望のベシクルを生成する。
【0082】
Papahadjopoulosら、米国特許第4,235,871号は、逆相蒸発技法による大ULVの調製を記載し、これは、有機溶媒中の脂質および水性緩衝液溶液中の被包化されるべき薬物の油中水エマルジョンの形成を含む。有機溶媒は圧力下で除去され、水性媒体中の撹拌または分散に際し大ULVに変換される混合物を生じる。Suzukiら、米国特許第4,016,100号は、単一ラメラベシクル中に薬剤を被包化する別の方法を記載し、それは薬剤および脂質の水性リン脂質分散物を凍結/融解することによる。
【0083】
MLVおよびULVに加え、リポソームはまた、複数ベシクルであり得る。Kimら、Biochim et Biophys Acta 728:339〜348(1983)に記載され、これら複数ベシクルリポソームは球形であり、そして内部顆粒構造を含む。外側膜は脂質二重層であり、そして内部領域は、二重層隔壁によって分離された小区画を含む。さらになお別のタイプのリポソームは、オリゴラメラベシクル(「OLV」)であり、これは、いくつかの周縁脂質層によって取り囲まれた大きな中心区画を有する。これらのベシクルは、2〜15μmの直径を有し、Calloら、Cryobiology 22(3):251〜267(1985)に記載されている。
【0084】
Mezeiら、米国特許第4,485,054号および米国特許第4,761,288号はまた、脂質ベシクルを調製する方法を記載している。より最近、Hsu、米国特許第5,653,996号は、エアロゾル化を利用してリポソームを調製する方法を記載し、そしてYiournasら、米国特許第5,013,497号は、高速度−剪断混合チャンバーを利用してリポソームを調製する方法を記載している。ULV(Wallachら、米国特許第4,853,228号)またはOLV(Wallachら、米国特許第5,474,848号および米国特許第5,628,936号)を生成するために特定の出発材料を用いる方法もまた記載されている。
【0085】
すべての前述の脂質ベシクルの総合的総説およびそれらの調製のための方法は、「Liposome Technolgy」、G.Gregoriadis、CRC Press Inc.、Boca Raton、Fla.、Vol.I、II&III(1984)に記載される。本発明における使用のために適切な種々の脂質ベシクルを記載するこの参考文献および前述の参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【0086】
(C.成分)
本明細書中に開示される結合体はさらに、1つ以上の成分を含み得る。例えば、これら成分は、抗血管新生剤、プロ血管新生剤、癌化学療法剤、細胞障害性剤、抗炎症剤、抗関節炎剤、ポリペプチド、核酸分子、小分子、フルオロフォア、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム−111、テクネチウム−99、カーボン−11、およびカーボン−13からなる群から独立に選択され得る。これら成分の少なくとも1つは治療剤であり得る。治療剤の例は、パクリタキセルおよびタキソールである。上記成分の少なくとも1つは、検出可能な作用物質であり得る。
【0087】
本明細書中で用いられるとき、用語「成分」は、連結または結合された分子に生物学的に有用な機能を一般に与える物理的、化学的、または生物学的物質を意味するために広く用いられる。本明細書で開示されるように、この成分の性質はまた、表面分子中で見出され得るか、またはこの表面分子および成分の両方は、本明細書中に開示される特徴の1つを共有し得る。例えば、表面分子は検出可能な作用物質を含み得、その一方上記成分は治療剤を含み得る。これはまた、クロット結合化合物について適用され、これもまた本明細書中に開示されるような成分の性質の1つ以上を含み得る。以下の治療剤および検出可能な作用物質の記載は、成分、表面分子、またはクロット結合化合物のいずれにも適用することが意図される。それ故、例えば、成分は、開示される表面分子、クロット結合化合物、または表面分子とクロット結合化合物の結合体に結合(conjugated)、結合(coupled)、またはその一部であり得る。
【0088】
成分は、任意の天然または非天然材料であり得、制限なくして、細胞、ファージまたはその他のウイルスのような生物学的材料;小分子のような有機化学品;放射性核種;核酸分子またはオリゴヌクレオチド;ポリペプチド;またはペプチドを含む。有用な成分は、制限されないで、癌化学療法剤のような治療剤、細胞障害性剤、プロアポトーシス剤、および抗血管新生剤;検出可能な標識および造影剤;およびタグまたはその他の不溶性支持体を含む。有用な成分はさらに、制限なくして、ファージおよびその他のウイルス、細胞、リポソーム、ポリマーマトリックス、非ポリマーマトリックス、または金粒子のような粒子、マイクロデバイス、ナノデバイス、およびナノスケール半導体材料を含む。当該技術分野で公知のこれらおよびその他の成分は、結合体の成分であり得る。
【0089】
(1.治療剤)
上記成分は治療剤であり得る。本明細書で用いられるとき、用語「治療剤」は、正常または病態組織中で1つ以上の生物学的活性を有する分子を意味する。種々の治療剤が成分として用いられ得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、治療剤は、癌化学療法剤であり得る。本明細書で用いられるとき、「癌化学療法剤」は、癌細胞の増殖、成長、寿命または転移活性を阻害する化学的作用物質である。このような癌化学療法剤は、制限なくして、ドセタキセルのようなタキサン;ドキソルビシンのようなアントラサイクリン;アルキル化剤;ビンカアルカロイド;抗−代謝産物;シスプラチンまたはカルボプラチンのようなプラチナ薬剤;メトトレキセートのようなステロイド;アドリアマイシンのような抗生物質;イソファミド;または選択的エストロゲンレセプターモジュレーター;トラスツマブのような抗体であり得る。
【0091】
タキサンは、本明細書中に開示される結合体とともに有用な化学療法剤である。有用なタキサンは、制限なくして、ドセタキセル(Taxotere;Aventis Pharmaceuticals,Inc.;Parsippany,N.J.)およびパクリタキセル(Taxol;Bristol−Myers Squibb;Princeton、N.J.)を含む。例えば、Chanら、J.Clin.Oncol.17:2341〜2354(1999)およびParidaensら、J.Clin.Oncol.18:724(2000)を参照のこと。
【0092】
本明細書中に開示される結合体とともに有用な癌化学療法剤はまた、ドキソルビシン、イダルビシンまたはダウノルビシンのようなアントラサイクリンであり得る。ドキソルビシンは、一般に用いられる癌化学療法剤であり、そして例えば、乳癌を処置するために有用であり得る(StewartおよびRatain、「Cancer:Principles and practice of oncology」、第5版、19章(DeVita、Jr.ら、編;J.P.Lippincott 1997);Harrisら、「Cancer:Principles and practice of oncology」前述、1997)。さらに、ドキソルビシンは、抗−血管新生活性を有する(Folkman、Nature Biotechnolgy 15:510(1997);Steiner、「Angiogenesis:Key principles−Science、technology and medicine」、449〜454頁(Steinerら編;Birkhauser Verlag、1992))、これは、癌を処置することにおいてその有効性に寄与し得る。
【0093】
メルファランまたはクロラムブシルのようなアルキル化剤もまた、有用な化学療法剤であり得る。同様に、ビンデシン、ビンブラスチンまたはビノレルビンのようなビンカアルカロイド;または5−フルオロウラシル、5−フルオロウリジンまたはその誘導体のような抗代謝産物はまた、有用な癌化学療法剤であり得る。
【0094】
プラチナ剤もまた、有用な癌化学療法剤であり得る。このようなプラチナ剤は、例えば、Crown、Seminars in Oncol.28:28〜37(2001)に記載されるようなシスプラチンまたはカルボプラチンであり得る。その他の有用な学化学療法剤は、制限なくして、メトトレキセート、マイトマイシン−C、アドリアマイシン、イホファミドおよびアンサマイシンを含む。
【0095】
乳癌およびその他のホルモン依存性癌の処置のために有用な癌化学療法剤はまた、選択的エストロゲンレセプターモジュレーターまたは抗エストロゲンのようなエストロゲンの効果をアンタゴナイズする薬剤であり得る。この選択的エストロゲンレセプターモジュレーターである、タモキシフェンは、乳癌の処置のために結合体中で用いられ得る癌化学療法剤である(Fisherら、J.Natl.Cancer Instit.90:1371〜1388(1998))。
【0096】
上記治療剤は、ヒト化モノクローナル抗体のような抗体であり得る。例として、抗上皮成長因子レセプター2(HER2)抗体、トラスツマブ(Herceptin;Genentech、South San Francisco、Calif.)は、HER2/neu過剰発現乳癌を処置するために有用な治療剤であり得る(Whiteら、Annu.Rev.Med.52:125−141(2001))。
【0097】
有用な治療剤はまた、細胞障害性剤であり得、これは、本明細書中で用いられるとき、細胞死滅を直接または間接的に促進する任意の分子であり得る。有用な細胞障害性剤は、制限なくして、小分子、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸−分子、細胞およびウイルスを含む。非制限的な例として、有用な細胞障害性剤は、ドキソルビシン、ドセタキセルまたはトラスツズマブ(trastuzumab)のような細胞障害性小分子;さらに以下に記載されるような抗微生物ペプチド;カスパーゼのようなプロ−アポトーシスポリペプチド、およびトキシン、例えば、カスパーゼ−8;ジフテリアトキシンA鎖、PseudomonasエキソトキシンA、コレラトキシン、DAB389EGFのようなリガンド融合トキシン、ricinus communisトキシン(リシン);および細胞障害性T細胞のような細胞障害性細胞を含む。例えば、Martinら、Cancer Res.60:3218〜3224(2000);KreitmanおよびPastan、Blood 90:252〜259(1997);Allamら、Cancer Res.57:2615〜2618(1997);およびOsborneおよびCoronado−Heinsohn、Cancer J.Sci.Am.2:175(1996)を参照のこと。当業者は、本明細書中に記載されるか、または当該分野で公知のこれらおよびさらなる細胞障害性剤が、開示される結合体および方法で有用であり得ることを理解する。
【0098】
1つの実施形態では、治療剤は治療ポリペプチドであり得る。本明細書で用いられるとき、治療ポリペプチドは、生物学的に有用な機能をともなう任意のポリペプチドであり得る。有用な治療ポリペプチドは、制限なくして、サイトカイン、抗体、細胞障害性ポリペプチド;プロ−アポトーシスポリペプチド;および抗−血管新生ポリペプチドを包含する。非制限的な例として、有用な治療ポリペプチドは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、腫瘍壊死因子−β(TNF−β)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン.α(IFN−α);インターフェロン.γ(IFN−γ);インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、
インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、リンホタクチン(LTN)または樹状細胞ケモカイン1(DC−CK1)のようなサイトカイン;抗−HER2抗体またはそのフラグメント;トキシンまたはカスパーゼを含む細胞障害性ポリペプチド、例えば、ジフテリアトキシンA鎖、PseudomonasエキソトキシンA、コレラトキシン、DAB389EGFのようなリガンド融合トキシンまたはリシン;またはアンギオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、血小板因子4のような抗−血管新生ポリペプチド;アナステリン;または本明細書中にさらに記載されるものまたは当該技術分野で公知のようなものの1つであり得る(下記参照)。生物学的活性をともなうこれらおよびその他のポリペプチドが「治療ポリペプチド」であり得ることが理解される。
【0099】
治療剤はまた、抗−血管新生剤であり得る。本明細書中で用いられるとき、用語「抗−血管新生剤」は血管の成長および発達である血管新生を減少または防ぐ分子を意味する。種々の抗−血管新生剤は、慣用の方法によって調製され得る。このような抗−血管新生剤は、制限なくして、小分子;血管新生因子のドミナントネガティブ形態のようなタンパク質、転写因子および抗体のようなタンパク質;ペプチド;およびリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および、例えば、血管新生因子のドミナントネガティブ形態をコードする核酸を含む核酸分子およびレセプター、転写因子、ならびに抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。例えば、HagedornおよびBikfalvi、Crit.Rev.Oncol.Hematol.34:89〜110(2000)、およびKirschら、J.Neurooncol.50:149〜163(2000)を参照のこと。
【0100】
血管内皮成長因子(VEGF)は、インビボでの乳癌血管新生を含む、多くのタイプの癌における血管新生のために重要であることが示されている(Borgstromら、Anticancer Res.19:4213〜4214(1999))。VEGFの生物学的効果は、内皮細胞増殖、生存、遊走および管形成の刺激、および血管透過性の調節を含む。抗−血管新生剤は、例えば、VEGFまたは別の血管新生因子の発現またはシグナル伝達を低減するインヒビターまたは中和抗体、例えば、抗−VEGF中和モノクローナル抗体(Borgstromら、前述、1999)、であり得る。抗−血管新生剤はまた、FGF−1(酸性)、FGF−2(塩基性)、FGF−4またはFGF−5のような線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバーのような別の血管新生因子(Slavinら、Cell Biol.Int.19:431〜444(1995);FolkmanおよびShing、J.Biol.Chem.267;10931〜10934(1992))、または内皮細胞−特異的Tie2レセプターチロシンキナーゼを通じてシグナル伝達する因子であるアンギオポエチン−1のような血管新生因子(Davisら、Cell 87:1161〜1169(1996);およびSuriら、Cell 87:1171〜1180(1996))、またはこれら血管新生因子の1つのレセプターを阻害し得る。種々の機構が、血管新生因子の活性を阻害するために作用し得ることが理解され、それらは、制限なくして、レセプター結合の直接阻害、血管新生因子の細胞外スペース中への分泌を低減することによる間接的阻害、または血管新生因子の発現、機能またはシグナル伝達の阻害を含む。
【0101】
種々のその他の分子もまた、抗−血管新生剤として機能し得、制限なくして、アンギオスタチン;アンギオスタチンのクリングルペプチド;エンドスタチン;アナステリン、フィブロネクチンのヘパリン−結合フラグメント;アンチトロンビンの改変形態;コラゲナーゼインヒビター;基底膜代謝回転インヒビター;血管新生抑制(angiostatic)ステロイド;血小板因子4およびそれらのフラグメントおよびペプチド;トロンボスポンディンおよびそのフラグメントおよびペプチド;およびドキソルビシンを含む(O’Reillyら、Cell 79:315〜328(1994));O’Reillyら、Cell 88:277〜285(1997);Homandbergら、Am.J.Path.120:327〜332(1985);Homandbergら、Biochim.Biophys.Acta 874:61〜71(1986);およびO’Reillyら、Science 285:1926〜1928(1999)。市販され入手可能な抗−血管新生剤は、例えば、アンギオスタチン;エンドスタチン;メタスタチンおよび2ME2(EntreMed;Rockville、Md.);Avastinのような抗−VEGF抗体(Genentech;South San Francisco、Calif.);およびSU5416のようなVEGFR−2インヒビター、VEGFR−2の小分子インヒビター(SUGEN;South San Francisco、Calif.)およびSU6668(SUGEN)、VEGFR−2の小分子インヒビター、血小板由来成長因子および線維芽細胞成長因子Iレセプターを含む。これらおよびその他の抗−血管新生剤が慣用の方法によって調製され得、そして本明細書で用いられるような用語「抗−血管新生剤」に包含されることが理解される。
【0102】
本明細書に開示される結合体はまた、炎症または損傷の部位で用いられ得る。この目的のために有用な成分は、いくつかの基礎的グループに属する治療剤を含み得、炎症を防ぐ抗−炎症剤、組織成長を防ぐ再狭窄予防薬物、血栓の形成を阻害または制御する抗−トロンボゲン形成薬物または血栓崩壊剤、および組織成長を調節し、そして組織の治癒を増大する生物活性剤を含む。有用な治療剤の例は、制限されないで、ステロイド、フィブロネクチン、抗−凝固薬物、抗−血小板機能薬物、血管の内表面壁上で平滑筋細胞成長を防ぐ薬物、ヘパリン、ヘパリンフラグメント、アスピリン、クマジン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、ストレプトキナーゼ、抗増殖剤(メトトレキセート、シスプラチン、フロオロウラシル、アドリアマイシン)、抗酸化剤(アスコルビン酸、βカロテン、ビタミンE)、代謝拮抗物質、トロンボキサンインヒビター、非ステロイド性およびステロイド性抗−炎症薬物、βおよびカルシウムチャネルブロッカー、DNAおよびRNAフラグメントを含む遺伝材料、完全発現遺伝子、抗体、リンホカイン、成長因子、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ラミニン、エラスチン、コラーゲンおよびインテグリンを含む。
【0103】
有用な治療剤はまた、抗微生物ペプチドであり得る。これは、創傷またはその他の感染部位を標的にするために特に有用であり得る。それ故、例えば、また開示されるのは、抗微生物ペプチドを含む成分であり、ここで、この結合体は、選択的に内在化し、そして標的にされた領域に高い毒性を示す。有用な抗微生物ペプチドは、結合体中に取り込まれないとき、低い哺乳動物細胞障害性を有し得る。本明細書で用いられるとき、用語「抗微生物ペプチド」は、1つ以上の微生物を殺傷するか、またはその成長を遅延する能力である抗微生物活性を有する、天然に存在するか、または合成ペプチドを意味する。抗微生物ペプチドは、例えば、グラム陽性または、グラム陰性細菌を含む細菌株、または真菌もしくは原生動物の1つ以上を殺傷するか、またはその成長を遅延し得る。それ故、例えば抗微生物ペプチドは、例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosaまたはStaphylococcus aureusの1つ以上の株に対する静細菌または殺細菌活性を有し得る。以下に束縛されることは望まないが、抗微生物ペプチドは、自己凝集の結果として、膜の二重層を通るイオンチャネルを形成する能力に起因する生物学的活性を有し得る。
【0104】
抗微生物ペプチドは、代表的には、高度に塩基性であり、そして直線状または環状構造を有し得る。以下にさらに論じられるように、抗微生物ペプチドは、両親媒性の.α.−らせん構造を有し得る(米国特許第5,789,542号;Javadpourら、J.Med.Chem.39:3107〜3113(1996);およびBlondelleおよびHoughten、Biochem.31:12688〜12694(1992)を参照のこと)。抗微生物ペプチドはまた、例えば、Manchenoら、J.Peptide Res.51:142〜148(1998)に記載されるようなβ−ストランド/シート形成ペプチドであり得る。
【0105】
抗微生物ペプチドはまた、天然に存在するか、または合成ペプチドであり得る。天然に存在する抗微生物ペプチドは、細菌、昆虫、両生類、および哺乳動物のような生物学的供給源から単離されており、そして細菌感染から宿主生物を保護し得る誘導性防御タンパク質を代表すると考えられる。天然に存在する抗微生物ペプチドは、グラミシジン、マガイニン、メリチン、デフェンシンおよびセクロピンを含む(例えば、MaloyおよびKari、Biopolymers 37:105〜122(1995);Alvarez−Bravoら、Biochem.J.302:535〜538(1994);Bessalleら、FEBS 274:151〜155(1990);およびBristol(編)におけるBlondelleおよびHoughten、Annual Reports in Medicinal Chemistry 159〜168頁 Academic Press、San Diegoを参照のこと)。抗微生物ペプチドはまた、天然ペプチドのアナログ、特に両親媒性を保持または増大するアナログであり得る(下記参照)。
【0106】
本明細書中に開示される結合体中に取り込まれた抗微生物ペプチドは、この結合体に連結されるとき、低い哺乳動物細胞障害性を有し得る。哺乳動物細胞障害性は、慣用のアッセイを用いて容易に評価され得る。例として、哺乳動物細胞障害性は、Javadpourら、前述、1996に記載のようにインビトロでヒト赤血球の溶解によりアッセイされ得る。低い哺乳動物細胞障害性を有する抗微生物ペプチドは、ヒト赤血球に対して溶解性でないか、または溶解活性のために100μMより大きい濃度、好ましくは200、300、500または1000μMより大きい濃度を必要とする。
【0107】
1つの実施形態では、開示されるのは、抗微生物ペプチド部分が、真核生物細胞によって内在化されるとき、ミトコンドリア膜の破壊を促進する結合体である。特に、このような抗微生物ペプチドは、真核生物膜と比較したとき、ミトコンドリア膜を優先的に破壊する。ミトコンドリア膜は、細菌膜のように、しかし、真核生物原形質膜とは対照的に、高い含量の負に荷電したリン脂質を有する。抗微生物ペプチドは、例えば、ミトコンドリア膨潤のためのアッセイまたは当該技術分野で周知の別のアッセイを用いてミトコンドリア膜を破壊することにおける活性についてアッセイされ得る。
【0108】
例えば、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM以下で顕著なミトコンドリア膨潤を誘導する抗微生物ペプチドは、ミトコンドリア膜の破壊を促進するペプチドであるとみなす。
【0109】
抗微生物ペプチドは、一般に、希釈水性溶液中でランダムコイルコンフォーメーションを有し、なお高いレベルのらせん度が、ミセル、合成の二重層または細胞膜のようならせん−促進溶媒および両親媒性媒体によって誘導され得る。α−らせん構造は当該技術分野で周知であり、理想的なα−らせんは、ターンあたり3.6残基を有すること、および残基あたり1.5Åの並進(translation)によって特徴付けられる(ターンあたり5.4Å;Creighton、Protein:Structures and Molecular Properties W.H Freeman、New York(1984)を参照のこと)。両親媒性α−らせん構造では、極性および非極性アミノ酸残基が、両親媒性らせんに整列され、これは、ペチドがらせん軸に沿って観察されるとき、疎水性アミノ酸残基が1つの面に優勢に存在し、親水性残基が対向する面に優勢に存在するα−らせんである。
【0110】
広範に変動する配列の抗微生物ペプチドが単離されており、共通特徴として両親媒性α−らせん構造を共有している(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109〜131(1994))。両親媒性およびらせん度を増大することが予測されるアミノ酸置換をもつ天然ペプチドのアナログは、代表的には、増加した抗微生物活性を有する。一般に、増加した抗微生物活性をもつアナログはまた、哺乳動物細胞に対して増加した細胞障害性を有する(Maloyら、Biopolymers 37:105〜122(1995))。
【0111】
抗微生物ペプチドを参照して本明細書中で用いられるとき、用語「両親媒性α−らせん構造」は、生理学的pHでいくつかの極性残基を含む親水性面、および非極性残基を含む疎水性面をもつα−らせんを意味する。極性残基は、例えば、リジンまたはアルギニン残基であり、その一方、非極性残基は、例えば、ロイシンまたはアラニン残基であり得る。両親媒性.α.−らせん構造を有する抗微生物ペプチドは、一般に、両親媒性ドメイン内に等価な数の極性残基および非極性残基、および中性pHで全体の正の荷電をこのペプチドに与えるに十分な数の塩基性残基を有する(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109〜131(1994))。当業者は、ロイシンおよびアラニンのようならせん−促進アミノ酸が、抗微生物ペプチド中で有利に含まれ得ることを理解する(例えば、Creighton、前述、前述、1984を参照のこと)。両親媒性α−らせん構造を有する合成の抗微生物ペプチドが、例えば、McLaughlinおよびBeckerによる米国特許第5,789,542号中に記載されるように、当該技術分野で公知である。
【0112】
医薬腫瘍学の当業者によって、これらおよびその他の薬剤が有用な治療剤であり、これらは開示される組成物および方法で別個または一緒に用いられ得ることが理解される。それ故、本明細書中に開示される結合体が、このような治療剤の1つ以上を含み得、しかも所望であれば、さらなる成分が組成物の一部分として含められ得ることが理解される。非制限的な例として、いくつかの事例では、クロット結合化合物と治療剤との間でオリゴペプチドスペーサーを利用することが所望され得る(FitzpatrickおよびGarnett、Anticacer Drug Des.10:1〜9(1995))。
【0113】
その他の有用な薬剤は、血栓崩壊剤、アスピリン、抗凝固剤、鎮痛剤およびトランキライザー、β−ブロッカー、ace−インヒビター、硝酸塩、律動−安定化薬物、および利尿薬を含む。心臓麻痺の2〜3時間内で与えられる場合、心臓への損傷を制限する薬剤が最良に作用する。血餅を破壊し、そして酸素が豊富な血液がブロックされた動脈を通って流れることを可能にする血栓崩壊剤は、心臓発作後、可能な限り速く与えられるとき、患者の生存の機会を増加する。心臓発作の2〜3時間内で与えられる血栓崩壊剤は、最も有効である。静脈内に注入されて、これらは、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼアクティベーター複合体(APSAC)またはアニストレプラーゼ、組み換え組織型プラスミノーゲンアクティベーター(r−tPA)、およびストレプトキナーゼを含む。開示される化合物は、これらの任意または類似の薬剤を使用し得る。
【0114】
(2.検出可能な作用物質)
本開示される結合体中の成分はまた、検出可能な作用物質であり得る。種々の検出可能な作用物質が本開示される方法で有用である。本明細書で用いられるとき、用語「検出可能な作用物質」は、検出され得る任意の分子をいう。有用な検出可能な作用物質は、インビボで投与され、そして引き続き検出され得る化合物および分子を含む。開示される組成物および方法で有用な検出可能な作用物質はなお、制限されないで放射線標識および蛍光分子を含む。この検出可能な作用物質は、例えば、直接または間接的いずれかで、好ましくは非侵襲的および/またはインビボ可視化技法によって検出を容易にする任意の分子であり得る。例えば、検出可能な作用物質は、例えば、放射線学的技法、磁気共鳴技法、または超音波技法を含む任意の公知の造影技法によって検出可能であり得る。検出可能な作用物質は、例えば造影剤を含み得、そこで例えばその造影剤がイオン性または非イオン性である。いくつかの実施形態では、例えば、この検出可能な作用物質は、タンタル化合物および/またはバリウム化合物、例えば、硫酸バリウムを含む。いくつかの実施形態では、この検出可能な作用物質は、放射活性ヨウ素のようなヨウ素を含む。いくつかの実施形態では、例えば、検出可能な作用物質は、ヨードカルボン酸、トリヨードフェノール、ヨードホルムおよび/またはテトラヨードエチレンのような有機ヨード酸を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な作用物質は、非放射活性検出可能な作用物質、例えば、非放射活性アイソトープを含む。例えば、Gdが、特定の実施形態で非放射活性検出可能な作用物質として用いられ得る。
【0115】
検出可能な作用物質のその他の例は、検出可能な照射を発するか、または発することを起こし得る分子(例えば、蛍光励起、放射活性崩壊、スピン共鳴励起など)、局所電磁場に影響する分子(例えば、磁性、強磁性、強磁性、常磁性、および/または超常磁性種)、放射エネルギーを吸収または散乱する分子(例えば、発色団および/または蛍光発色団)、量子ドット、重元素および/またはその化合物を含む。例えば、米国特許出願公開番号2004/0009122号に記載される検出可能な作用物質を参照のこと。検出可能な作用物質のその他の例は、プロトン放射分子、放射線不透過性分子、および/またはTc−99mおよび/またはXe−13のような放射性核種などの放射活性分子を含む。このような分子は、放射性医薬品として用いられ得る。なおその他の実施形態では、開示される組成物は、本明細書中に開示される検出可能な作用物質の任意の組み合わせを含む1つ以上の異なるタイプの検出可能な作用物質を含み得る。
【0116】
有用な蛍光成分は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロライド、ローダミン、アミノ−メチルクマリン(AMCA)、エオシン、エリスロシン、BODIPY(登録商標)、Cascade Blue(登録商標)、Oregon Green(登録商標)、ピレン、リサミン、キサンテン、アクリジン、オキサジン、フィコエリスリン、quantum dyeTMのようなランタニドイオンのマクロサイクリックキレート、チアゾールオレンジ−エチジウムヘテロダイマーのような蛍光エネルギー転移色素、およびシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7を含む。その他の特定の蛍光標識の例は、3−ヒドロキシピレン5,8,10−トリスルホン酸、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、Acid Fuchsin、Alizarin Complexon、Alizarin Red、アロフェニコシアニン(Allophycocyanin)、アミノコウマリン(Aminocoumarin)、アンスロイルステアレート(Anthroyl Stearate)、Astrazon、Brilliant Red 4G、Astrazon Orange R、Astrazon Red 6B、Astrason Yellow 7 GLL、Atabrine、Auramine、Aurophosphine、Aurophosphine G、BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール)、BCECF、Berberine Sulphate、ビスベンズアミド(Bisbenzamide)、Blancophor FFG溶液、Blancophor SV、Bodipy F1、Brilliant Sulphoflavin FF、Calcien Blue、Calcium Green、Calcofluor RW溶液、Calcofluor White、Calcophor White ABT溶液、Calcophor White標準溶液、Carbostyryl、Cascade Yellow、Catecholamine、Chinacrine、Coriphosphine O、Coumarin−Phalloidin、CY3.18、CY5.18、CY7、Dans(1−ジメチルアミノナフタリン5 スルホン酸)、Dansa(ジアミノナフチルスルホン酸)、Dansyl NH−CH3、ジアミノフェニルオキシジアゾール(DAO)、ジメチルアミノ−5−スルホン酸、ジピロメタンボロンジフルオリド(Dipyrrometheneboron Difluoride)、Diphenyl Brilliant Flavin 7GFF、ドーパミン(Dopamine)、エリスロシン(Erythrosin) ITC、Euchrysin、FIF(Formaldehyde Induced Fluorescence)、Flazo Orange、Fluo 3、Fluorescamine、Fura−2、Genacryl Brilliant Red B、Genacryl Brilliant Yellow 10GF、Genacryl Pink 3G、Genacyrl Yellow 5GF、Gloxalic Acid、Granular Blue、Haematoporphyrin、Indo−1、Intrawhite Cf Liquid、Leucophor PAF、Leucophor SF、Leucophor WS、Lissamine Rhodamine B200(RD200)、Lucifer Yellow CH、Lucifer Yellow VS、Magdala Red、Marina Blue、Maxilon Brilliant Flavin 10 GFF、Maxilon Brilliant Flavin 8 GFF、MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン(Methyl Green Pyronine Stilbene))、Mithramycin、NBD Amine、ニトロベンゾオキサジドール(Nitrobenzoxadidole)、ノルアドレナリン(Noradrenaline)、Nuclear Fast Red、Nuclear Yellow、Nylosan Brilliant Flavin E8G、Oxadiazole、Pacific Blue、Pararosaniline(Feulgen)、Phorwite AR Solution、Phorwite BKL、Phorwite Rev、Phorwite RPA、Phosphine 3R、Phthalocyanine、Phycoerythrin R、Polyazaindacene Pontochrome Blue Black、Porphyrin、Primuline、Procion Yellow、Pyronine、Pyronine B、Pyrozal Brilliant Flavin 7GF、Quinacrine Mustard、Rhodamine 123、Rhodamine 5 GLD、Rhodamine 6G、Rhodamine B、Rhodamine B200、Rhodamine B Extra、Rhodamine BB、Rhodamine BG、Rhodamine WT、Serotonin、Sevron Brilliant Red 2B、Sevron Brilliant Red 4G、Sevron Brilliant Red B、Sevron Orange、Sevron Yellow L、SITS(Primuline)、SITS(スチルベンイソチオスルホン酸(Stilbene Isothiosulphonic acid))、スチルベン(Stilbene)、Snarf1、sulpho Rhodamine B Can C、Sulpho Rhodamine G Extra、テトラサイクリン(Tetracycline)、Thiazine Red R、Thioflavin S、Thioflavin TCN、Thioflavin 5、Thiolyte、Thiozol Orange、Tinopol CBS、True Blue、Ultralite、Uranine B、Uvitex SFC、キシレン(Xylene) Orange、およびXRITCを含む。
【0117】
特に有用な蛍光標識は、フルオレセイン(5−カルボキシフルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6−テトラメチルローダミン)、およびシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7を含む。これら蛍光物について吸収および放射最大は:FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)およびCy7(755nm;778nm)であり、それ故、それらの同時検出を可能にする。蛍光色素のその他の例は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM),2’,4’,1,4,−テトラクロロフルオレセイン(TET)2’,4’,5’,7’,1,4,−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE),2’−クロロ−5’−フルオロ−7’,8’−縮合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED),および2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(VIC)を含む。蛍光標識は、種々の商業的供給源から得られ得、Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ;Molecular Probes、Eugene、OR;およびResearch Organics、Cleveland、Ohioを含む。蛍光プローブおよびそれらの使用はまた、Richard P.HauglandによるHandbook of Fluorescent Probes and Research Productsに記載されている。
【0118】
放射活性検出可能な作用物質のさらなる例は、γエミッタ、例えば、γエミッタIn−111、I−125およびI−131、レニウム−186および188、ならびにBr−77を含む(例えば、Thakur、M.L.ら、Throm Res.Vol.9、345頁(1976);Powersら、Neurology Vol.32、938頁(1982);および米国特許第5,011,686号を参照);Cu−64、C−11、およびO−15、ならびにCo−57、Cu−67、Ga−67、Ga−68、Ru−97、Tc−99m、In−113m、Hg−197、Au−198、およびPb−203のようなポジトロンエミッタを含む。その他の放射活性検出可能な作用物質は、例えば、トリチウム、C−14および/またはタリウム、ならびにRh−105、I−123、Nd−147、Pm−151、Sm−153、Gd−159、Tb−161、Er−171および/またはTl−201を含み得る。
【0119】
テクネチウム−99m(Tc−99m)の使用が好ましく、そしてその他の出願に記載されており、例えば、米国特許第4,418,052号および米国特許第5,024,829号を参照のこと。Tc−99mは、γエミッタであり、140keVの単一光子エネルギーおよび約6時間の半減期を有し、そしてMo−99/Tc−99発生器から容易に得られ得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、放射活性検出可能な作用物質を含む組成物は、標的化成分を、検出に適切な放射性同位体と結合することにより調製され得る。結合は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N−,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)および/またはメタロチオネインのようなキレート剤を経由して起こり得、これらのいずれかは、標的化成分に共有結合され得る。いくつかの実施形態では、テクネチウム−99m、還元剤、および水溶性リガンドの水性混合物が調製され得、そしてそれから開示される標的化成分と反応される。このような方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、国際公開第WO99/64446号を参照のこと。いくつかの実施形態では、放射活性ヨウ素を含む組成物は、交換反応を用いて調製され得る。例えば、冷ヨウ素を熱ヨウ素で交換することは当該技術分野で周知である。あるいは、放射性−ヨウ素で標識された化合物が、トリブチルスタンニル(tributylstannyl)中間体を経由して対応する臭素化合物から調製され得る。
【0121】
磁性検出可能な作用物質は、常磁性造影剤、例えば、ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸を含み、例えば、磁気共鳴造影(MRI)とともに用いられる(例えば、De Roos、A.ら、Int.J.Card.Imaging Vol.7、133頁(1991)を参照のこと)。いくつかの好ましい実施形態は、検出可能な作用物質として、原子番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、42、44、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70をもつ元素の二価または三価イオンである常磁性原子を用いる。適切なイオンは、制限されないで、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)およびイッテルビウム(III)、ならびにガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ディソプロシウム(dysoprosium)(III)、ハロミウム(III)、およびエルビウム(III)を含む。いくつかの好ましい実施形態は、強力な磁性モーメントをもつ原子、例えば、ガドリニウム(III)を用いる。
【0122】
いくつかの実施形態では、磁性検出可能な作用物質をふくむ組成物は、標的化成分を常磁性原子と結合する(coupling)ことによって調製され得る。例えば、適切な常磁性原子の、硝酸塩、塩化物または硫酸塩のような金属酸化物または金属塩が、メチル、エチル、および/またはイソプロピルアルコールのような、水/アルコール媒体中に溶解または懸濁され得る。この混合物は、類似の水/アルコール媒体中の等モル量の標的化成分の溶液に添加され、そして撹拌され得る。この混合物は、反応が終了またはほぼ終了するまで適度に加熱され得る。形成された不溶性組成物は濾過することにより得られ得、その一方、可溶性組成物は、溶媒を蒸発することにより得られ得る。キレート成分上の酸基が、開示される組成物中に残る場合、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウムおよび/またはリチウムの水酸化物、炭酸塩および/または重炭酸塩)、有機塩基、および/または塩基性アミノ酸が、酸性基を中和するために用いられ得、例えば、組成物の単離または精製を容易にする。
【0123】
好ましい実施形態では、検出可能な作用物質は、結合体に、クロット結合化合物が凝固部位と相互作用する能力を妨害しないような様式で結合し得る。いくつかの実施形態では、検出可能な作用物質は、クロット化合物に化学的に結合し得る。いくつかの実施形態では、検出可能な作用物質は、クロット結合化合物にそれ自体化学的に結合される成分に化学的に結合され得、造影および標的化成分を間接的に連結する。
【0124】
(D.薬学的組成物および担体)
開示される組成物は、単独または薬学的に受容可能な担体中いずれかで、インビトロ投与され得る。「薬学的に受容可能な」により、生物学的またはその他で所望されないのではない材料、すなわち、この材料は、任意の所望されない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれが含まれる薬学的組成物のその他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、本明細書中に開示される結合体とともに被験体に投与され得る。担体は、当業者に周知であるように、もちろん、活性成分の任意の分解を最小にし、そして被験体における任意の有害な副作用を最小にするように選択される。これら材料は、溶液中、懸濁物(例えば、ミクロ粒子、リポソーム、または細胞中に取り込まれる)であり得る。
【0125】
(1.薬学的に受容可能な担体)
本明細書中に開示される結合体は、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて治療的に用いられ得る。
【0126】
適切な担体およびそれらの処方は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)A.R.Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995に記載されている。代表的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩が処方物中で用いられ、この処方物を等張にする。薬学的に受容可能な担体の例は、制限されずに、生理食塩水、Ringer溶液およびデキストロース溶液を含む。この溶液のpHは、好ましくは、約5〜約8、そしてより好ましは約7〜約7.5である。さらに、担体は、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスのような徐放性調製物を含み、このマトリックスは、形状のある物品の形態、例えば、フィルム、リポソームまたはミクロ粒子である。当業者にとって、特定の担体が、例えば、投与の経路および投与される組成物の濃度に依存してより好ましいことは明りょうである。
【0127】
薬学的担体は、当業者に公知である。これらは、最も代表的には、ヒトへの薬物の投与のための標準的な担体であり得、滅菌水、生理食塩水、および生理学的pHにある緩衝化溶液のような溶液を含む。これら組成物は、筋肉内または皮下に投与され得る。その他の化合物は、当業者によって用いられる標準的な手順に従って投与される。
【0128】
薬学的組成物は、選択の分子に加え、担体、濃化剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤などを含み得る。薬学的組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1つ以上の活性成分を含み得る。
【0129】
薬学的組成物は、局所または全身処置が所望されるか否か、そして処置される領域に依存して多くの様式で投与され得る。投与は、局所的(眼科学的、膣、直腸、鼻腔内を含む)、口腔、吸入により、または非経口的、例えば、静脈内ドリップ、皮下、腹腔内または筋肉内注入であり得る。開示される抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、また経皮的に投与され得る。
【0130】
非経口的投与のための調製物は、滅菌水性または非水性溶液、懸濁物、およびエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびエチルオレエートのような注入可能な有機エステルである。水性担体は、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩水および緩衝化媒体を含むエマルジョンまたは懸濁物を含む。非経口的ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、Ringerのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化Ringer、または不揮発性油を含む。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補給剤、電解質補給剤(Ringerのデキストロースに基づくもののような)などを含む。保存剤、および、例えば、抗微生物剤、抗−酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような、その他の添加剤がまた、存在し得る。
【0131】
局所投与のための処方物は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座剤、スプレー、液体および粉末を含み得る。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性ベース、濃化剤などが必要または所望され得る。
【0132】
口腔投与のための組成物は、粉末または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁物または溶液、カプセル、サシュ(sachet)、または錠剤を含む。濃化剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散補助物またはバインダーが所望され得る。
【0133】
組成物のいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸のような無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸のような有機酸との反応により、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムのような無機塩基、およびモノ−、ジ−、トリアルキルおよびアリールアミンおよび置換エタノールアミンのような有機塩基との反応により形成される、薬学的に受容可能な酸付加塩または塩基付加塩として投与され得る。
【0134】
(E.コンピューター支援薬物設計)
開示される組成物は、開示される組成物と所望の様式で相互作用する、開示される組成物の構造を識別するためか、または小分子のような可能なまたは実際の分子を識別するためかのいずれかのため、任意の分子モデリング技法の標的として用いられ得る。
【0135】
モデリング技法において開示される組成物を用いるとき、阻害または刺激または標的分子の機能のような所望の特定の性質を有する、高分子の分子のような分子が同定されることが理解される。開示される結合体、ペプチドなどを用いるとき、同定および単離される分子がまた開示される。それ故、開示される結合体を含む分子モデリングアプローチを用いて生成された産物がまた、本明細書中に開示されるとみなされる。
【0136】
それ故、選択の分子を結合する分子を単離するための1つの方法は、合理的な設計による。これは、構造情報およびコンピューターモデリングにより達成され得る。コンピューターモデリング技術は、選択された分子の三次元原子構造の可視化、および上記分子と相互作用する新規化合物の合理的設計を可能にする。三次元構築物は、代表的には、選択された分子のX線結晶学分析またはNMR造影からのデータに依存する。分子動力学は、力場データを必要とする。コンピューターグラフィックシステムは、新規化合物が標的分子にどのように結合する(link)かの予測を可能にし、そして結合特異性を完全にするために上記化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能にする。1つまたは両方に小さな変化が作製されるとき分子−化合物相互作用が何であるかの予測は、分子力学ソフトウェアおよびコンピューター的に集約的なコンピューターを必要とし、通常、分子設計プログラムとユーザーとの間のユーザーフレンドリーなメニューで駆動されるインターフェースと結合される。
【0137】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation、Waltham、MAである。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学機能を実施する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび分析を実施する。QUANTAは、双方向性構築、改変、可視化、および分子の互いの挙動の分析を可能にする。
【0138】
多くの論文が、特定タンパク質と相互に影響する薬物のコンピューターモデリングを総説し、例えば、Rotivinenら、1988 Acta Pharmaceutica Fennica 97、159〜166;Ripka、New Scientist 54〜57(1988年6月16日);McKinalyおよびRossmann、1989 Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.29、111〜122;PerryおよびDavis、QSAR:Quantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design 189〜193頁(Alan R.Liss、Inc.1989);LewisおよびDean、1989 Proc.R.Soc.Lond.236、125〜140および141〜162;そして核酸成分についてモデル酵素に関して、Askewら、1989 J.Am.Chem.Soc.111、1082〜1090がある。化学薬品をスクリーニングし、そしてグラフィクにより描写するその他のコンピュータープログラムは、BioDesign、Inc.、Pasadena、CA.、Allelix、Inc.Mississauga、Ontario、Canada、およびHypercube、Inc.、Cambridge、Ontarioのような会社から入手可能である。これらは、主に特定タンパク質に特異的な薬物への適用のために設計されたが、それらは、一旦DNAまたはRNAの特定領域が同定されると、DNAまたはRNAの特定領域と特異的に相互作用する分子の設計に応用され得る。
【0139】
結合を変え得る化合物の設計および生成を参照して上記に記載されたが、基質結合または酵素活性を変える化合物のために、天然産物または合成化学薬品、およびタンパク質を含む生物学的活性を含む既知化合物のライブラリーをまたスクリーニングし得る。
【0140】
(F.類似の機能をもつ組成物)
本明細書中に開示される組成物は、クロットに結合すること、またはクロット形成を増大することのような特定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されるのは、開示される機能を実施するための特定の構造的要求であり、そして開示される構造に関連するのと同じ機能を実施し得る種々の構造が存在し、しかもこれらの構造は、最終的には、同じ結果、例えば、刺激または阻害を達成することが理解される。
【0141】
(G.キット)
本明細書中に開示されるのはキットであり、このものは、本明細書中に開示される方法を実施することで用いられ得る試薬を引き込む。これらキットは、本明細書中で論じるか、または開示される方法の実施に必要もしくは有利な任意の試薬または試薬の組み合わせを含み得る。例えば、これらキットは、本明細書中に開示される結合体を含み得る。
【0142】
(H.混合物)
上記方法が、混合すること、または組成物もしくは成分もしくは試薬を接触することを含むときはいつも、上記方法を実施することは、多くの異なる混合物を生成する。例えば、上記方法が、3つの混合ステップを含む場合、これらステップの各々の1つの後、これらステップが別個に実施される場合、特有の混合物が形成される。さらに、どのようにこれらステップが実施されたかにかかわらず、すべてのステップの終了のとき混合物が形成される。本開示は、開示される方法の実施により得られるこれらの混合物、ならびに、例えば、本明細書中に開示される任意の開示される試薬、組成物、または成分を含む混合物を企図する。
【0143】
(I.システム)
開示されるのは、開示される方法の実施するため、またはその実施を支援するために有用なシステムである。システムは、一般に、構造物、機械、デバイスなどのような製造の物品の組み合わせ、ならびに組成物、化合物、材料などを含む。開示されるか、または本開示から明らかであるこのような組み合わせが企図される。
【0144】
(J.コンピューター読み取り可能な媒体)
開示される核酸およびタンパク質は、アミノ酸のヌクレオチドからなる配列として表され得ることが理解される。これら配列を表示する種々の様式があり、例えば、ヌクレオチドグアノシンは、Gまたはgによって表され得る。同様に、アミノ酸バリンは、ValまたはVによって表され得る。当業者は、存在する種々の様式のいずれかで任意の核酸またはタンパク質配列を示し、そして表す方法を理解し、その各々は、開示される本明細書中で考慮されている。本明細書中で詳細に企図されるのは、市販され、入手可能なフロッピー(登録商標)ディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスク、およびビテオディスク、またはその他のコンピューター読み取り可能な媒体のような、コンピューター読み取り可能な媒体上のこれら配列の表示である。また開示されるのは、開示される配列のバイナリーコード表示である。当業者は、コンピューター読み取り可能な媒体が何であるかを理解する。それ故、コンピューター読み取り可能な媒体上に、核酸またはタンパク質配列が記録され、保存されるか、または貯蔵される。
【0145】
(K.ペプチド合成)
本明細書中に開示される組成物および開示される方法を実施するために必要な組成物は、そうでないことが特定して注記されなければ、その特定の試薬または化合物についての当業者に公知の任意の方法を用いて作製され得る。
【0146】
配列番号1のような、開示されるタンパク質を生成する1つの方法は、タンパク質化学技法により、2つ以上のペプチドまたはポリペフチドを一緒に連結することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを用いる現在利用可能な実験室設備(Applied Biosystems、Inc.、Foster City、CA)を用いて化学的に合成され得る。当業者は、開示されるタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応によって合成され得ることを容易に認識し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは合成され得、そしてその合成樹脂から切断されず、その一方、ペプチドまたはタンパク質のその他のフラグメントは合成され得、そして引き続きその樹脂から切断され、それによってその他のフラグメント上で機能的にブロックされている末端基を露出する。ペプチド縮合反応により、これら2つのフラグメントは、それらのカルボキシ末端およびアミノ末端でそれぞれペプチド結合を経由して共有結合され得、抗体、またはそのフラグメントを形成する。(Grant GA(1992)Synthetic Peptides;A User Guide.W.H.FreemanおよびCo.、N.Y.(1992);Bodansky MおよびTrost B.編(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.、NY(これは、少なくともペプチド合成に関連する材料について参考として本明細書中に援用される)。あるいは、上記ペプチドまたはポリペプチドは、本明細書中に記載のようにインビボで独立に合成される。一旦、単離されると、これらの独立のペプチドまたはポリペプチドは連結され得、類似のペプチド縮合反応を経由してペプチドまたはそのフラグメントを形成する。
【0147】
例えば、クローン化または合成ペプチドセグメントの酵素的連結は、比較的短いペプチドフラグメントが接続されて、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチドまたは全体のタンパク質ドメインを生成することを可能にする(Abrahmsen Lら、Biochemistry、30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドの自然の化学的連結が、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成により構築するために利用され得る。この方法は、2ステップの化学反応からなる(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation. Science、266:776〜779(1994))。第1のステップは、非保護合成ペプチド−−チオエステルの、アミノ末端Cys残基を含む別の非保護ペプチドセグメントとの化学選択的反応であり、初期共有結合産物としてチオエステル−連結中間体を得る。反応条件における変更なくして、この中間体は、自然の迅速な分子内反応を行い、連結部位で自然なペプチド結合を形成する(Baggiolini Mら(1992)FEBS Lett.307:97〜101;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.、269:16075(1994);Clark−Lewis Iら、Biochemistry、30:3128(1991);Rajarathnam Kら、Biochemistry 33:6623〜30(1994))。
【0148】
あるいは、非保護ペプチドセグメントは、化学的に連結され、ここで、化学的連結の結果としてのペプチドセグメント間に形成される結合が非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer、Mら、Science、256:221(1992))。この技法は、タンパク質ドメインのアナログおよび完全な生物学的活性をもつ大量の比較的純粋なタンパク質を合成するために用いられている(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press、New York、257〜267頁(1992))。
【0149】
(方法)
本明細書中に開示されるのは、被験体に本明細書中に開示される結合体を投与する工程を包含する方法である。この結合体は、凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングし得る。この結合体は、凝固を引き起こし、そして凝固した血漿タンパク質の部位でこの結合体の蓄積を増幅し得る。本発明のいくつかの形態は、被験体に、本明細書中に開示される結合体を投与する工程を包含し、ここで、この結合体は凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングし、ここで、この結合体は凝固を引き起こし、そして凝固した血漿タンパク質の部位でこの結合体の蓄積を増幅する。この結合体は、腫瘍脈管構造、創傷部位、または両方に選択的にホーミングし得る。
【0150】
1つの例では、この結合体は治療効果を有し得る。これは、この結合体のために起こる増加したクロット形成により達成され得る。この効果は、腫瘍または創傷の部位への治療剤の送達により増大され得る。
【0151】
この治療効果は、腫瘍負荷の増加またはその減少における遅延であり得る。この腫瘍負荷の増加またはその減少における遅延は、非処置腫瘍、または異なる方法により処置された腫瘍と比較して、その腫瘍負荷の増加、または減少における1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%以上の改善であり得る。
【0152】
上記治療効果はまた、腫瘍における血液循環の減少または阻止であり得る。この腫瘍における血液循環の減少または阻止は、非処置腫瘍、または異なる方法により処置された腫瘍と比較して、腫瘍中の血液循環の有効な阻止における1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%以上の改善であり得る。
【0153】
上記治療効果はまた、創傷部位における出血の減少または停止であり得る。この創傷部位における出血の減少または停止は、非処置創傷、または異なる方法により処置された創傷と比較して、創傷部位における出血の1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%以上の減少または停止であり得る。
【0154】
上記治療効果はまた、創傷部位における出血が停止する時間における減少であり得る。この創傷部位における出血の減少または停止は、非処置創傷、または異なる方法により処置された創傷と比較して、創傷部位で出血が停止する時間における1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%以上の減少または停止であり得る。
【0155】
上記治療効果はまた、炎症における減少、創傷治癒の速度における増加、瘢痕組織の量における減少、痛みにおける減少、腫れにおける減少、壊死における減少、またはそれらの組み合わせを含み得る。この効果は、非処置被験体、または異なる方法で処置された被験体と比較して、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%以上の改善であり得る。
【0156】
さらに、凝固自体が、本明細書中のいずれかに開示されているように、治療効果を有し得る。被験体は、標的にされるべき1つ以上の部位を有し得、ここで、上記結合体は、標的にされるべき部位の1つ以上にホーミングする。例えば、被験体は、複数の腫瘍または損傷の部位を有し得る。
【0157】
開示される結合体は、癌のような制御されない細胞増殖が起こる任意の疾患を処置するために用いられ得る。癌の異なるタイプの非制限的なリストは以下のようである:リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、癌腫、固形組織の癌腫、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高度神経膠腫、芽球腫、神経芽腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素性腫瘍(hypoxic tumor)、骨髄腫、AIDS関連リンパ種または肉腫、転移性癌、または癌一般。
【0158】
開示される組成物が処置するために用いられ得る癌の代表的ではあるが非制限的なリストは以下である:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳の癌、神経系癌、頭部および頚部癌、頭部および頚部の扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌のような肺癌、神経芽細胞腫/グリア芽細胞腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口、咽喉、喉頭および肺の扁平上皮癌、結腸癌、頚部癌、頚部癌腫、乳癌、および上皮癌、腎臓癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌腫、頭部および頚部癌腫、大腸癌、造血癌;精巣癌;結腸および直腸癌、前立腺癌、または膵臓癌。
【0159】
開示される結合体はまた、デコイ粒子前処理後投与され得、細網内皮系(RES)組織による結合体の取込みを低減し得る。このようなデコイ粒子前処理は、これら粒子の血液半減期を延長し得、そして腫瘍標的化を増加する。
【実施例】
【0160】
(A.実施例)
以下の実施例は、本明細書中請求項に記載される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法がどのように作製および評価されるのかの完全な開示および記載を当業者に提供するように呈示され、そして純粋に例示であり、そして本開示を制限することは意図されないことが意図される。数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にする努力がなされたが、いくつかの誤りおよび偏差が考慮されるべきである。他であることが示されなければ、部は重量部であり、温度は℃であるかまたは周辺温度であり、そして圧力は大気圧または大気圧近傍である。
【0161】
(1.実施例1:腫瘍へのナノ粒子ホーミングの生物模倣増幅)
ナノ粒子を基礎にした診断および治療は有用である。なぜなら、複数の機能がこれら粒子中に構築され得るからである。1つのこのような機能は、身体中の特定部位にホーミングする能力である。本明細書中に記載されるのは、腫瘍にホーミングするのみならず、それら自体のホーミングを増幅する生物模倣粒子である。このシステムは、凝固した血漿タンパク質を認識し、そして腫瘍に選択的にホーミングするペプチドに基づき、ここで、それは、血管壁および腫瘍間質に結合する。この腫瘍ホーミングペプチドで被覆された酸化鉄ナノ粒子およびリポソームは、腫瘍血管に蓄積し、そこで、それらは、さらなる局所的凝固を誘導し、それによって、より多くの粒子のために新たな結合部位を生成する。このシステムは、これもまた自由に循環するが、疾患部位で蓄積し、そしてその部位でそれら自体の蓄積を増幅する血小板を模倣する。凝固を基礎にした増幅は、腫瘍造影を大いに増大し、そしてこれら粒子への薬物担体機能の付加がまた用いられ得る。
【0162】
(i.結果)
(CREKAペプチド) 腫瘍ホーミングペプチドを、目標とされたナノ粒子を構築するために用いた。このペプチドは、腫瘍保持MMTV−PyMTトランスジェニック乳癌マウス(Hutchinson 2000)における腫瘍ホーミングについて、ファージディスプレイされたペプチドライブラリー(Hoffman 2003;Pasqualini 1996)のインビボスクリーニングにより同定された。選択されたファージ調製物中で最も頻繁に表現されたペプチド配列は、CREKA(cys−arg−glu−lys−ala;配列番号1)であった。このCREKAペプチドを、N−末端に結合された蛍光色素とともに合成し、そしてこのペプチドのインビボ分布を腫瘍保持マウス中で研究した。静脈内に注入されたCREKAペプチドは、PyMT腫瘍、MDA−MB−435ヒト乳癌異種移植片中で、注入後数分〜数時間で容易に検出可能であった。このペプチドは、腫瘍間質中で明りょうな網(meshwork)を形成し(図5)、そしてまた腫瘍中の血管をはっきりさせた。このCREKAペプチドは、正常組織中では本質的に検出不能であった。顕微鏡結果と一致して、蛍光色素Alexa647で標識したCREKAペプチドを用いる身体造影は、乳癌異種移植片中、および膀胱中でのペプチド蓄積を示し、過剰のペプチドの尿中への排泄を反映した(図5B)。
【0163】
腫瘍は、腫瘍間質および血管の壁中に凝固した血漿タンパク質の網を含むが、このような網は正常組織中では検出可能ではない(Dvorak 1985;Abe 1999;Pilch 2006)。腫瘍中のCREKAペプチドにより生成されるこの網様パターンは、凝固した血漿タンパク質がこのペプチドの標的である得るかどうかの研究を促進した。このペプチドを、それらの腫瘍におけるフィブリン網を欠く、フィブリノゲンノックアウトマウス中で試験した。先に同定されたクロット結合ペプチド(Pilch 2006)のように、静脈内に注入されたCREKAペプチドは、このフィブリノゲンヌル(null)マウス中で成長したB16F1黒色腫中では蓄積せず、このヌルマウスの正常同腹仔中で成長したB16F1腫瘍中で明るい蛍光の網を形成した(図1AおよびB)。この結果と一致して、CREKAファージは、インビトロで凝固した血漿タンパク質に結合したが、コントロールの挿入のないファージは結合しなかった(図1C)。これらの結果は、クロット結合ペプチドとしてのCREKAを確立する。その構造は、それを、ナノ粒子標的化で用いるために魅力的なペプチドにする。なぜなら、環状の10アミノ酸ペプチドであるその他のクロット結合ペプチド(Pilch 2006)とは異なり、CREKAは線状であり、そして5アミノ酸を含むに過ぎないからである。さらに、単一のシステイン残基のスルフヒドリル基は結合活性を提供するために要求されず、そしてこのペプチドをその他の成分に結合するために用いられ得る。
【0164】
(ペプチドで被覆されたナノ粒子) フルオレセイン−標識CREKAまたはフルオレセインを、50nmの超常磁性のアミノデキストランで被覆された酸化鉄(SPIO)ナノ粒子の表面上に結合した。このような粒子は、それらの化学、薬物動力学、および毒物学に関して広範に特徴付けられており、そしてMRI造影剤として用いられている(Jung 1995;Jung 1995;Weissleder 1989)。フルオレセイン−標識ペプチドのSPIOへの結合は、強い蛍光の粒子を生成した。これら粒子からのこのペプチドの加水分解による放出は、約3倍だけさらに蛍光を増加した。これらの結果は、粒子表面における蛍光分子の近接が、蛍光のある程度のクエンチングを引き起こすことを示す。これにもかかわらず、結合されたフロオレセインペプチドからの蛍光が、粒子上のペプチド分子の数にほぼ直線状に関係し(図6)、粒子蛍光を測定することにより粒子上のペプチド成分の数の追跡、およびサンプル中の粒子の濃度の尺度として蛍光強度の使用を可能にした。CREKA−SPIOは、インビボ実験において粒子あたり少なくとも8,000のペプチド分子とともに用いた。このCREKA−SPIOナノ粒子は、インビトロでマウスおよびヒト血漿クロットに結合し、そしてこの結合は、遊離のペプチドによって阻害された(図1D)。ナノ粒子は、クロット中の細繊維網に沿って分布した(図1D中の挿入)。これらの結果は、粒子結合ペプチドが、凝固した血漿タンパク質に向かうその結合活性を保持することを示す。
【0165】
(CREKA−SPIOの腫瘍ホーミング 対 肝臓クリアランス) 初期実験は、静脈内に注入されたCREKA−SPIOナノ粒子が、MDA−MB−435乳癌異種移植片中で効率的に蓄積しなかったことを示した。対照的に、高濃度の粒子が、細網内皮系(RES)組織中で観察された(図2A、上のパネル)。遊離のCREKAペプチドは、これらの腫瘍に効率的にホーミングするので(図5)、RES摂取がナノ粒子のホーミングの主要な障害であったと仮定した。CREKA−SPIOのクリアリンスにおけるRESの役割は、リポソームクロドロネートで肝臓中のRESマクロファージを枯渇すること(Van Rooijen 1994)により確認された。この処置は、粒子半減期における約5倍の延長を引き起こした(図2B)。粒子状物質は循環からなくされた。なぜなら、特定の血漿タンパク質が粒子に結合し、そしてRESによるそれらの摂取を仲介するからである(オプソニン作用;Moghimi 2001;Moore 1997)。血漿オプソニンをなくするデコイ粒子を注入することは、RES摂取をブロックする別の一般に用いられる方法である(Souhami 1981;Fernandez−Urrusuno 1996)。キレートされたNi2+で被覆されたリポソームを可能なデコイ粒子として試験した。なぜなら、酸化鉄およびNi2+が、類似の血漿オプソニンを誘引し、そしてNi−リポソームが、それ故、それらを全身循環から枯渇し得るからである。実際、SDS−PAGE分析は、有意により少ない血漿タンパク質が、Ni−リポソームで前処理されたマウスの血液中でSPIOに結合したことを示した。
【0166】
静脈内に注入されたNi−リポソームは、血液中のSPIOおよびCREKA−SPIOの半減期を、約5倍延長した(図2B)。このNi−リポソーム前処理は、CREKA−SPIOの注入前5分または48時間いずれでなされても、ナノ粒子の腫瘍ホーミングを大いに増加し、これは主に腫瘍血管中に局在化した(図2Aの下の腫瘍パネルおよび図2D)。粒子の局所濃度は非常に高く、酸化鉄の褐色の色が光学顕微鏡で見え(図2C、右パネル)、腫瘍血管中で観察された蛍光信号が、インタクトなCREKA−SPIOからであったことを示した。Ni−リポソーム前処理後、より少ない粒子が肝臓で観察されたが、脾臓における蓄積は、変わらないか、またはなお増加した(図2A)。その他の器官は、Ni−リポソームを用いたか否かにかかわらず、少量のCREKA−SPIO粒子を含むか、または粒子はまったく含まなかった(図1D)。単純リポソームをデコイ粒子として試験した。これらリポソームは、引き続き注入されたCREKA−SPIOの血液半減期および腫瘍ホーミングを延長し(図2B)、リポソームとSPIOに対する共通クリアランス機構の存在を示した。
【0167】
(腫瘍血管におけるナノ粒子−誘導血液凝固) リポソーム前処理後投与されたCREKA−SPIO粒子は、主に腫瘍血管と同時局在化し、幾分かの粒子は、周囲組織中に溢出したように見えた(図3A、上のパネル)。有意に、20%までの腫瘍血管管腔が、蛍光の塊で満たされた。これらの構造は、フィブリンに対して染色され(図3A、中央のパネル)、それらは、ナノ粒子で含漬された血餅であることを示した。いくつかの血管では、このCREKA−SPIOナノ粒子は、おそらくはフィブリンから形成され、そしてタンパク質と会合している網に沿って分布し(挿入図)、、そして図1Dの挿入図中に示されるパターンに類似していた。
【0168】
非RES組織の中で、腎臓および肺は、少量の特異的CREKA−SPIO蛍光を含んでいた(図2D)。しかし、低倍率画像は、それらの中にクロットをもつ僅かな血管を示し、これら組織中では、腎臓中の非常に希なクロットを除いて凝固はなかったことを示した(図7)。肝臓中のナノ粒子の大量の蓄積にかかわらず、肝臓血管における(図8)フィブリン(フィブリノゲン)染色とCREKA−SPIO蛍光との間の同時局在化は観察されなかった。さらに、非注入マウスからの肝臓組織はまた、フィブリン(フィブリノゲン)について染色され(図8B)、おそらくは肝細胞によるフィブリノゲン産生を反映していた。それ故、CREKA−SPIOナノ粒子により誘導される凝固は、腫瘍血管に本質的に制限される。
【0169】
ナノ粒子は、血小板活性化を引き起こし、そしてトロンボゲン形成を増大し得る(Radomski 2005;Khandoga 2004)。血液から回収されたいくらかのCREKA−SPIOナノ粒子(<1%)は、血小板と会合したが(図9A)、血小板マーカーに対する染色は、腫瘍血管における血小板とCREKA−SPIOナノ粒子との間で同時局在化はなかったことを示した(図3A、下のパネル)。血小板減少症がまた、抗−CD41モノクローナル抗体をマウスに注入することにより誘導され(Van der Heyde 2005)、そしてMDA−MB−435腫瘍へのCREKA−SPIOホーミングに対する認知し得る効果は見出されなかった(図9B)。これらの結果は、血小板が、CREKA−SPIOのホーミングパターンに関与していないことを示す。
【0170】
ナノ粒子によるクロットの深い浸潤は、これらクロットが、注入の前よりはむしろ、粒子が血液中で循環していたときに形成されなければならなかったことを示す。これは、流れマーカーとしてDiI−標識された赤血球を用い、生体共焦点顕微鏡法で試験した。形成するクロットにおいて、平行するCREKA−SPIOの閉じ込めを有する、腫瘍血管における時間依存性のクロット形成および血流の妨害があった(図3B)。
【0171】
凝固−誘導効果がSPIO粒子に特異的であったか、異なるCREKA被覆粒子で誘導され得たか否かを次に試験した。尾部が脂質であるポリエチレングリコール(PEG)に結合されたフルオレセイン−CREKAペプチドが取り込まれたリポソームを用いた。CREKA−SPIOのように、このCREKA−リポソームは、腫瘍に選択的にホーミングし、そして腫瘍血管内でフィブリンと同時局在化し(図3C)、CREKAリポソームがまた腫瘍血管中で凝固を引き起こし得ることを示した。コントロールSPIOまたはコントロールリポソームを腫瘍マウスに注入したとき、凝固は観察されなかった。
【0172】
(凝固で増幅される腫瘍標的化) 腫瘍血管中のCREKA−SPIO蓄積に対する凝固の寄与を調べた。Superconducting Quantum Interference Device(SQUID)での腫瘍磁化の定量的分析(図4A)および蛍光信号の測定は、PBS前処理マウスと比較して、Ni−リポソーム−前処理マウスで約6倍より大きいCREKA−SPIOの蓄積を示した。アミノ化(aminated)SPIOコントロール粒子は、腫瘍中に有意に蓄積しなかった(図4A)。
【0173】
SQUID測定は、CREKA−SPIOの注入前に、強力な凝固インヒビターであるヘパリンを注入することが、ナノ粒子の腫瘍蓄積を50%より多く低減したことを示した(図4A)。顕微鏡法は、ヘパリンが腫瘍血管内のフィブリン陽性/CREKA−SPIO陽性構造を低減したが、これら粒子が、血管の壁に沿って、多分予め存在するフィブリン沈着物になお結合したことを示した(代表的な画像は図4B中に示される)。ホーミングパターンの別個の定量化は、ヘパリンが血管壁に結合したナノ粒子をもつ血管の数を有意には減少しないが、本質的に血管内凝固をなくしたことを示した(図4C)。それ故、CREKA−SPIOの腫瘍血管への結合は、これら粒子に付随する凝固活性を必要としないが、凝固が腫瘍ホーミングの効率を改善する。
【0174】
CREKA−SPIOによって誘導された凝固は、全身走査における腫瘍信号の特に強い増大を引き起こした。近赤外蛍光化合物であるCy7で標識されたCREKA−SPIOナノ粒子は、同様に肝臓からの有意な信号(矢頭)とともに、腫瘍中に効率的に蓄積した(図4D、左の画像)。ヘパリンで得られた腫瘍信号における減少(図4D、右の画像)は、蛍光測定において、SQUIDによって決定された50%値よりも明らかに大きく、おそらくは、クロットからの濃縮された信号が蛍光の光学的検出を増大したためである。これらの結果は、CREKA−SPIOによって誘導された凝固が、腫瘍造影で特定の利点を提供することを示す。
【0175】
(ii)考察
この実施例は、腫瘍中の粒子の有効な蓄積を提供するナノ粒子システムの例を記載する。このシステムは、4つの要素に基づく;第1は、凝固した血漿タンパク質に結合する腫瘍ホーミングペプチドでのナノ粒子の被覆が、これら粒子に腫瘍血管(および腫瘍間質)に対する特異的親和性を与える。第2は、デコイ粒子前処理が、上記粒子の血液半減期を延長し、そして腫瘍標的化を増加する。第3は、これら腫瘍を標的にするナノ粒子か、腫瘍血管における血管内凝固を引き起こす。第4に、この血管内クロットが、より多くのナノ粒子を腫瘍中に誘引し、標的化を増幅する。
【0176】
凝固した血漿タンパク質に特異的親和性をもつペプチドは、ナノ粒子のための標的化要素として選択された。腫瘍の間質スペースは、フィブリン、およびフィブロネクチンのような血液凝固においてフィブリンに架橋するようになるタンパク質を含む(Dvorak 1985;Pilch 2006)。正常組織中ではなく、腫瘍におけるこれら産物の存在は、腫瘍血管の漏れの結果であり得、これは、血漿タンパク質が血液から腫瘍組織中に入ることを可能にし、ここで漏れたフィブリノゲンが、組織プロ凝固因子によりフィブリンに変換される(Dvorak 1985;Abe 1999)。凝固は、合成ペプチドで識別および接近され得る新たな結合部位を生成する(Pilch 2006)。現在の結果は、CREKAで改変されたナノ粒子が血液および血漿クロットに結合するのみならず、局在化された腫瘍凝固を誘導し得ることを示す。粒子の性質はこの活性に制限されない。なぜなら、CREKA−被覆された酸化鉄およびミクロンサイズのCREKA−被覆されたリポソームの両方が腫瘍血管において凝固を引き起こすことが見出されたからである。CREKA改変された粒子による1つ以上の凝固産物の結合は、クロット形成の方向における凝固とクロット分解とのバランスをシフトし得、そして粒子の表面におけるこの活性の存在は、接触−依存性凝固を容易にし得る。
【0177】
あるナノ粒子は、全身性血栓症を誘因し得るが(Gorbet 2004)、ここでCREKA粒子によって誘導された血栓症は、腫瘍血管に制限された。腫瘍血管中の高濃度の標的化粒子は、腫瘍血管への血栓症の選択的局在化を説明し得る。しかし、ナノ粒子がまた高濃度で蓄積する肝臓中には検出可能な凝固は観察されなかったので、その他の因子が重要であるに違いない。腫瘍中で共通のプロ凝固環境は、凝固の腫瘍特異性に寄与する主要な因子であり得る(Boccaccio 2005)。
【0178】
ナノ粒子の主要な利点は、複数の機能が単一の実体に取り込まれ得ることである。本明細書に記載されるのは、ナノ粒子についてのインビボ機能;腫瘍血管中でナノ粒子で誘導された凝固によって可能にされる自己増幅する腫瘍ホーミングおよびクロットへのさらなるナノ粒子の結合である。このナノ粒子システムは、1つの粒子にいくつかのその他の機能:特異的腫瘍ホーミング、RESの回避、および有効な腫瘍造影を組み合わせる。光学的造影をこの研究で用いたが、IOプラットホームがまた、MRI造影を可能にする。腫瘍血管中のCREKA−SPIOナノ粒子によって引き起こされる凝固は、顕微鏡的および全身造影技法による腫瘍検出を明らかに改善する様式でこれら粒子を病巣に濃縮するために供される。
【0179】
標的化粒子の別の機能は、それらが局所的塞栓症による腫瘍血管の物理的遮断を引き起こすことである。塞栓症または凝固による血管閉塞は、腫瘍増殖を低減し得る(Huang 1997;El−Sheikh 2005)。現在まで、腫瘍血管における20%の閉塞率が達成された。ナノ粒子設計のモジュール性質に起因して、本明細書中に記載される機能は、さらなる活性をもつ粒子に取り込まれ得る。血管を同時に閉塞しながら腫瘍血管中に蓄積し、そして薬物荷重をゆっくり放出する薬物保持ナノ粒子は、本明細書中に開示される方法および組成物とともに用いられ得る。
【0180】
(iii.材料および方法)
(ファージスクリーニング、腫瘍およびペプチド) CXC(配列番号4)の一般構造、ここでCはシステインであり、そしてXは任意のアミノ酸である、をもつペプチドライブラリーのインビボスクリーニングを、65−〜75−日齢のトランスジェニックMMTV PyMTマウス(Hutchinson 2000)を用いて記載のように(Oh 2004)実施した。これらマウスは、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)の転写制御下ポリオーマウイルス中央T抗原(MT)を発現し、キャリアの100%で多病巣性乳腺癌の誘導に至る。ヌードマウス中のMDA−MB−435腫瘍およびペプチド合成が記載されている(Laakkonen 2002;Laakkonen 2004)。B16F1マウス黒色腫腫瘍は、フィブリノゲンヌルマウスおよびそれらの正常同腹仔で増殖され(Suh 1995)、そしてそれらが0.5〜1cmサイズに到達したとき用いられた(Pilch 2006)。
【0181】
(ナノ粒子およびリポソーム) アミノ基−機能化デキストラン被覆超常磁性酸化鉄ナノ粒子(50nm ナノマグ−D−SPIO;Micromod Partikeltechnologie GmbH、Rostock、Germany)を、架橋剤を用いてCREKAペプチドと結合した。最終結合比は、酸化鉄mg当たり30nmolのフルオレセイン標識ペプチド分子、または8,000ペプチド/粒子であった。Cy7での近赤外標識化のために、約20%のアミンをCy7−NHSエステル(GE Healthcare Bio−Science、Piscataway、NJ)で誘導体化し、そして残りのアミンを、これらペプチドを結合体化するために用いた。SPIOおよびリポソームの調製に関する詳細は、以下に記載される。クロドロネートはSigmaから購入し、そして記載のように(Van RooijenおよびSander(1994))リポソーム中に取り込んだ。
【0182】
(ナノ粒子注入) 静脈内注入には、動物を、腹腔内Avertinで麻酔し、そしてリポソーム(2μmol DSPC)および/またはナノ粒子(1〜4mgFe/kg体重)を尾静脈内に注入した。動物を、麻酔下、PBSを用い心臓灌流により注入後5〜24時間で犠牲にし、そして器官を離断し、そして粒子ホーミングについて分析した。肝臓マクロファージを抑制するために、マウスにリポソームクロドロネート懸濁物(マウスあたり100μl)を静脈内注入し、そしてマウスを24時間後の実験のために用いた。
【0183】
(クロットへのファージおよびナノ粒子の結合) 凝固した血漿タンパク質へのファージ結合を記載(Pilch 2006)のように決定した。CREKA−SPIOおよびコントロールSPIOを、遊離のCREKAペプチドの存在下または不在下で新鮮に形成された血漿クロットに添加した。10分のインキュベーションの後、クロットを4回PBS中で洗浄し、新たなチューブに移し、そして100μlの濃硝酸中で消化した。消化した材料を2mlの蒸留水に希釈し、そして鉄濃度を誘導的に結合した血漿−光学発光分光法(ICP−OES、PerkinElmer、Norwalk、CT)を用いて決定した。
【0184】
(ナノ粒子調製) 高ペプチド結合密度の達成が必要なとき、さらなるアミノ基を、以下のように、商業的に得られたSPIOに添加した:最初に、アミノ化ステップの前に粒子を架橋するために、3mlのコロイド(約10mgFe/2回蒸留水ml)を、5mlの5M NaOHおよび2mlのエピクロロヒドリン(Sigma、St.Louis、MO)に添加した。この混合物を室温で24時間撹拌し、有機相(エピクロロヒドリン)と水相(デキストラン−被覆粒子コロイド)との間の相互作用を促進した。過剰のエピクロロヒドリンを除去するために、反応した混合物を、透析カセット(10,000Daカットオフ、Pierce、Rockford IL)を用い、2回蒸留した水に対して24時間透析した。アミノ基を以下のように粒子の表面に付加した:0.02mlの濃水酸化アンモニウム(30%)を1mlのコロイド(約10mgFe/ml)に添加した。この混合物を室温で24時間撹拌した。反応した混合物を、2回蒸留した水に対して24時間透析した。粒子をさらにすすぐため、コロイドを、MACS(登録商標)Midi磁性分離カラム(Miltenyi Biotec、Auburn CA)上に捕捉し、PBSで3回すすぎ、そしてこのカラムから1mlのPBSで溶出した。
【0185】
CREKAペプチドをSPIOに結合するため、上記粒子を1mg Fe/mlの濃度で再懸濁し、そしてヘテロ二官能性リンカーN−[a−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル(AMAS;Pierce)を、ボルテックスしながら添加した(2.5mgリンカー/2mgFe)。室温で40分間のインキュベーションの後、粒子をMACSカラム上で3回10mlのPBSで洗浄した。遊離の末端システインをもつペプチドを、次いで添加した(100μgペプチド/2mgFe)。4℃で一晩のインキュベーションの後、粒子を再び洗浄し、そして0.35mg/mlのFeの濃度)でPBS中に再懸濁した。粒子に結合したペプチド分子の数を定量するために、既知量のストックまたはAMAS−活性化粒子を変化する量のペプチドとインキュベートした。インキュベーションの終了後、粒子を、Beckman TLA 100.3超遠心分離ローターを用いて100.000Gでペレット化し(30分)、そして非結合ペプチドの量を蛍光によって定量化した。粒子から結合ペプチドを切断するために、粒子をpH10で一晩37℃でインキュベートした。上清中の遊離ペプチドの濃度は、蛍光を読み取ることにより、そしてサンプルペプチドについて得られた較正曲線を用いることにより決定した。既知量の粒子の蛍光強度を、ペプチド結合密度の関数としてプロットし、そして傾斜等式を、異なるバッチにおける結合体密度を決定するために用いた。
【0186】
(リポソーム調製) リポソームを調製するために、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−{[N(5−アミノ−1−カルボキシペンチル)イミノ二酢酸]サクシニル}(ニッケル塩)(すべてはAvanti Polar Lipids、Alabaster ALから)を、クロロホルム中、57:37:10のモル比で混合し、そして乾燥までロータリーエバポレーター中で蒸発させた。脂質をPBS中で最終DSPC濃度10mMまで水和した。この脂質混合物を、55℃で10分間徹底的に浴で音波処理し、リポソーム形成を促進した。単純リポソームには、DSPCおよびコレステロールのみを、57:37のモル比で用いた。
【0187】
CREKA−装飾リポソームを、PEG−DSPE−マレイミド(Avanti)を2倍モル過剰のCREKAと反応することにより調製した。反応は、室温でPBS緩衝液pH7.4中窒素下で実施した。反応が2時間で終了した後、生成物(黄色沈殿物)を遠心分離により洗浄し、そしてエタノール中に溶解した。このエタノール溶液を−20℃で貯蔵した。CREKA−PEGを、リポソーム懸濁物をCREKA−PEG−DSPEの乾燥フィルムに添加すること、1時間ボルテックスしながら55℃まで加熱することにより取り込んだ。コントロールリポソームは、上記のように、しかし代わりにFITC−PEG−DSPEを用いて調製した。リポソーム調製物は、用いられるまで4℃で維持した。
【0188】
(ナノ粒子によるタンパク質結合の分析) 可溶性血漿タンパク質のSPIOナノ粒子への結合を試験するために、粒子をクエン酸添加マウス血漿と1〜2mg鉄/ml血漿の濃度でインキュベートした。あるいは、粒子を動物中に注入し、そして血漿を注入後5〜10分で集めた。粒子を磁性カラム上で洗浄し、非結合タンパク質を除去し、そして粒子を10%SDS中で20分間煮沸した。酸化鉄を超遠心分離(100.000g、10分)によってペレット化し、そして上清中に溶出したタンパク質を、アセトンで一晩−20℃で沈殿させた。タンパク質ペレットを、SDS−PAGEにより分析し、そしてゲルを銀染色した(SilverQuest、Invitrogen、Carlsbad、CA)。質量分光測定による分析には、粒子から抽出されたタンパク質を水中に再構築し;タンパク質のアリコートをトリプシンで消化し、そしてApplied Biosystems PE SCIEX QSTARR、液体クロマトグラフQ−TOF質量分析計、Foster City、CAを用いて分析した。データは、Mascot search engine(Matrix Science、Boston、MA)を用いて分析した。
【0189】
(ナノ粒子クリアランス) ヘパリン処理キャピラリーを用いて、ナノ粒子注入後、異なる時間に眼窩周囲叢から50μlの血液を引き抜き、血液を300gで2分間遠心分離し、そして多血小板血漿の10μlのアリコートを、600μlの1M Tris溶液pH8.4中に希釈した。蛍光を、PerkinElmer(Norwalk、CT)LS50B蛍光分光光度計上で測定し、そして粒子が循環した時間の関数としてプロットした。
【0190】
(生体内顕微鏡法) MDA−MB435異種移植片をもつマウス中の腫瘍血流を、生体内顕微鏡法によって観察した。マウスにNi−リポソームおよび5×10のDiI−標識赤血球を前注入した。皮膚弁を横に移動し、腫瘍を露出させ、そしてマウスに、4mg/kgのフルオレセイン−CREKA−SPIOを静脈内注入した(時間「0」)。腫瘍を、IV−OB35F22W29 MicroProbe対物レンズ(Olympus Corp.、Tokyo、Japan)を用いてIV−100生体内レーザー走査顕微鏡(Olympus Corp.、Tokyo、Japan)で走査した。動画を10分間隔で、注入後120分まで記録した。
【0191】
(Superconducting Quantum Interference Device(SQUID)磁気計を用いる組織サンプルの磁気測定) 組織サンプルを、収集して直ぐに凍結し、凍結乾燥し、秤量し、そしてゼラチンカプセル中に置いた。これらカプセルを、150Kで作動するQuantum Design MPMS2 SQUID磁気計(San Diego、CA)を用いてなされる磁気測定のために透明のプラスチックストローの中央に挿入した。サンプルを、1Teslaまで段階的増分で直流磁場に曝した。矯正を、組織、カプセルおよびストローの反磁性寄与について行った。
【0192】
【表1】

【0193】
【表2】

(配列)
配列番号1
CREKA
配列番号2
CGLIIQKNEC
配列番号3
CNAGESSKNC
配列番号4
CXXXXXXXC ここで、Cはシステインであり、そしてXは任意のアミノ酸である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面分子および複数のクロット結合化合物を含む結合体であって、該クロット結合化合物が凝固した血漿タンパク質に選択的に結合し、該結合体が凝固を引き起こし、そして腫瘍における該結合体の蓄積を増幅する、結合体。
【請求項2】
前記結合体が、凝固を引き起こし、そして腫瘍における該結合体の蓄積を増幅するように、該結合体が十分な数および組成のクロット結合化合物を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記クロット結合化合物の数および組成の十分性が、非ヒト動物中の腫瘍における凝固および前記結合体の蓄積の増幅を評価することにより決定される、請求項2に記載の結合体。
【請求項4】
前記結合体が、該結合体が凝固を引き起こし、そして腫瘍における該結合体の蓄積を増幅するように十分な密度および組成のクロット結合化合物を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
前記クロット結合化合物の密度および組成の十分性が、非ヒト動物中の腫瘍における凝固および前記結合体の蓄積の増幅を評価することにより決定される、請求項4に記載の結合体。
【請求項6】
複数の前記クロット結合化合物が、各々独立して、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメント、フィブリン結合ペプチド、クロット結合抗体、およびクロット結合小有機分子から選択される、請求項1に記載の結合体。
【請求項7】
複数の前記クロット結合化合物が、各々独立して、アミノ酸配列REKを含むアミノ酸セグメントを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項8】
前記アミノ酸セグメントが、各々独立して、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメントまたはその保存的改変体、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメント、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなるアミノ酸セグメント、およびアミノ酸配列REKからなるアミノ酸セグメントから選択される、請求項7に記載の結合体。
【請求項9】
前記アミノ酸セグメントが、各々独立して、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含むアミノ酸セグメントまたはその保存的改変体を含む、請求項7に記載の結合体。
【請求項10】
前記アミノ酸セグメントが、各々独立して、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)を含む、請求項7に記載の結合体。
【請求項11】
前記アミノ酸セグメントが、アミノ酸配列CREKA(配列番号1)からなる、請求項7に記載の結合体。
【請求項12】
前記アミノ酸セグメントが、アミノ酸配列REKからなる、請求項7に記載の結合体。
【請求項13】
複数の前記クロット結合化合物が各々、フィブリン結合ペプチドを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項14】
前記フィブリン結合ペプチドが独立して、フィブリン結合ペプチド、およびそのフィブリン結合誘導体からなる群から選択される、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
複数の前記クロット結合化合物が各々、クロット結合抗体を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項16】
複数の前記クロット結合化合物が各々、クロット結合小有機分子を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項17】
前記表面分子が、ナノ粒子である、請求項1に記載の結合体。
【請求項18】
前記表面分子が、酸化鉄ナノ粒子である、請求項1に記載の結合体。
【請求項19】
前記表面分子が、アルブミンナノ粒子である、請求項1に記載の結合体。
【請求項20】
前記表面分子が、リポソームを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項21】
前記表面分子が、ミクロ粒子を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項22】
前記表面分子が、フルオロカーボンミクロバブルを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項23】
前記結合体が、少なくとも100のクロット結合化合物を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項24】
前記結合体が、少なくとも1000のクロット結合化合物を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項25】
前記結合体が、少なくとも10,000のクロット結合化合物を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項26】
前記表面分子が、検出可能である、請求項1に記載の結合体。
【請求項27】
前記表面分子が、治療剤である、請求項1に記載の結合体。
【請求項28】
前記治療剤が、Abraxaneである、請求項27に記載の結合体。
【請求項29】
前記結合体が、1つ以上の成分をさらに含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項30】
前記成分が、抗−血管新生剤、プロ−血管新生剤、癌化学療法剤、細胞障害剤、抗炎症剤、抗関節炎剤、ポリペプチド、核酸分子、小分子、フルオロフォア、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム−111、テクネチウム−99、カーボン−11、およびカーボン−13からなる群から独立して選択される、請求項29に記載の結合体。
【請求項31】
前記成分の少なくとも1つが、治療剤である、請求項29に記載の結合体。
【請求項32】
前記治療剤が、パクリタキセルである、請求項31に記載の結合体。
【請求項33】
前記治療剤が、タキソールである、請求項31に記載の結合体。
【請求項34】
前記少なくとも1つの成分が、検出可能な作用物質である、請求項29に記載の結合体。
【請求項35】
前記結合体が、凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングする、請求項1に記載の結合体。
【請求項36】
前記結合体が、腫瘍脈管構造、創傷部位、または両方に選択的にホーミングする、請求項1に記載の結合体。
【請求項37】
被検体に請求項1に記載の結合体を投与する工程を包含する方法であって、該結合体が凝固した血漿タンパク質に選択的にホーミングし、該結合体が凝固を引き起こし、そして該凝固した血漿タンパク質の部位で該結合体の蓄積を増幅する、方法。
【請求項38】
前記結合体が、腫瘍脈管構造、創傷部位、または両方に選択的にホーミングする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記結合体が、治療効果を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記治療効果が、腫瘍負荷の増加または腫瘍負荷の減少である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記治療効果が、腫瘍サイズの増加または腫瘍サイズの減少である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記治療効果が、腫瘍における血液循環の減少または阻止である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記治療効果が、創傷部位における出血の減少または停止である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記治療効果が、創傷部位における出血が停止する時間における減少である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記治療効果が、炎症における減少、創傷治癒における速度の増加、瘢痕組織の量における減少、痛みにおける減少、腫れにおける減少、壊死における減少またはそれらの組み合わせである、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記凝固が、治療効果である、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が標的とされる1つ以上の部位を有し、前記結合体が該標的とされる1つ以上の部位にホーミングする、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記被験体が腫瘍を有し、前記結合体が該腫瘍に対する治療効果を有する、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−514839(P2010−514839A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544907(P2009−544907)
【出願日】平成19年12月31日(2007.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/089202
【国際公開番号】WO2008/085794
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508236848)バーナム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (9)
【Fターム(参考)】