説明

クロマトグラフィカラムのためのシール組立体

本願発明は、クロマトグラフィカラムで使用されるシール組立体およびそのようなカラムでのシール形成方法に関連している。シール組立体は、低摩擦係数の材料からなるシール要素それと協働する個別の弾力部材からなる。提供されるシールは、+2℃から+30の温度範囲にわたって安定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、クロマトグラフィカラムのためのシールに関するものである。特に、本願発明は、アダプタが静止状態かあるいは動いている状態のときに、アダプタとカラム内壁の間の改善されたシール状態を提供する。また本願発明は、カラム壁の側面からの粒子状媒体の除去を可能にする。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィカラムは、化学あるいは生化学化合物を分離(separating)し、精製(purifying)し、単離(isolating)するための手段を提供する。これらの作業の中で使用されるカラムの大きさおよび形式は、一般的に対象となるプロセスの大きさに依存し、研究目的には小さなガラスあるいはプラスチックの壁からなるカラムが使用され、一方、工業プロセスのためにはより大きな金属カラムが使用される。例えば、クロマトグラフィカラムは、プロセス液体を精製するため、あるいはそのような液体から対象物質を分離するための製造工程の中で使用され、その典型的な例としては、精製化学物質や医薬品、更には生物化学製品の大規模な予備精製を含んでいる。
【0003】
本願発明は、ガラス/プラスチック壁を有するクロマトグラフィカラム、およびより大きな金属壁を有するクロマトグラフィカラムの両方に関連するが、それは生産および工業規模のクロマトグラフィカラムに特に有益である。
【0004】
工業規模のクロマトグラフィカラムは、一般的には中空で軸方向が鉛直の管状ハウジングを備え、上端部に液体注入口を有し、それを通して緩衝材および分離されるべき物質が管の空間内に配置された媒体ベッド(床)供給され、カラムは更に物質と緩衝材を収集するために液体収集システムを下端部に備えている。粒子状のクロマトグラフィ媒体あるいは緩衝液および/または分離され精製された物質が浸透するベッドが、液体注入口と液体収集システムの間に位置している。
【0005】
アダプタ組立体は、一般的に管状のハウジングの上端に取り付けられ、ベース組立体はその下端に取り付けられ、それは底部フランジにボルト止めされる。これらの組立体の各々は、一般的には強い裏板およびベッド支持体を支持する分配板(distributer plate)も備えており、ベッド支持体はメッシュ、スクリーン、フィルター、焼結(sinter)あるいはその他の流体透過性媒体非透過性の材料(fluid-permeable media-retaining material)の層であり、それはプロセス液体の流れをクロマトグラフィベッド空間あるいは空洞の中へ入れまたは中から出し、且つ粒子状媒体のベッドを保持できる材料である。ベッド高さおよびベッド圧縮の順応性および制御性を提供するために、アダプタ組立体はカラムチューブ内部において、典型的にはピストンあるいは滑動アダプタの形で作られる。一般的にはバルブかノズルを通してカラムがベッド媒体で満たされた後、アダプタは媒体ベッドを圧縮あるいは加圧するために管の底へ向けて力が掛けられる。一般に、ベース組立体は、カラム管の底部フランジに対してボルト止めされた固定構造であるが、いくつかの例では、さらに可動で滑動できるピストンあるいはアダプタの形をしていてもよい。
【0006】
ベース組立体の裏板は、一般にカラムのための支持体の役割をし、その支持体はそれ自身、ベース組立体の下に突き出る出口配管のための隙間を与える脚あるいは他の起立構造によって支持されている。
【0007】
研究および工業規模のクロマトグラフィカラムの両方の使用でしばしば直面する問題は、アダプタあるいはピストンが過ぎたベッド空間からの、緩衝材や移動相のような液体、あるいは微粒子の媒体材料の漏れである。Oリングのようなシールはそのような漏れを防ぐために一般に使用されるが、これらは、摩滅および不適当な密閉に起因する作動条件下で性能が貧弱になる傾向がある。そのような漏れの結果は、液体の損失やOリングとアダプタ壁の間のデッドスペースに集まる液体の細菌汚染に起因し、貧弱なクロマトグラフィ性能に結びつく場合がある。
【0008】
米国特許5,671,928は、小さなガラスまたはプラスチック壁を有するカラムのためのシールについて開示しており、それは良い取外し性および密閉性能を提供するように主張されており、視覚による検査を可能にするようシールが作られ、クロマトグラフィの効率を高め、細菌増殖の大幅な低減を可能にしている。しかしながら、米国特許5,671,928に開示されたシールは、ゴムのような弾力のあるシール材料から作られるが、ゴムは摩滅を低減するためにポリテトラフルオロエチレンのような摩擦を低減するするポリマーを伴う被覆を必要とする。そのような被覆は施すのが困難であり、また本来永久的なものを目指してもいない。更に、この文章に記載されたシールは、圧力上昇が密閉シール力を増加させる範囲内で自己補正する。そのような設計は、増加した摩擦および摩滅により問題を引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうして、通常の充填状態および動作圧力下で、高い水準のクロマトグラフィ性能を維持するために、クロマトグラフィカラムで使用される改善されたシールを提供する必要がある。シールは、内部カラム壁を製造する際の高い水準の公差の必要性を避けるために、カラムでの範囲の使用に対して十分柔軟であることが望ましい。アダプタあるいはピストンが通過したベッド空間からの緩衝液すなわち液体の漏れを防ぐこと、およびこれによる微生物汚染を低減することに加え、そのようなシールは、充填工程を助け、かつ漏れの危険を低減するために、カラムの内部壁からの微粒子の媒体を洗浄し、除去しそして圧縮することができるのが望ましい。更に、シールは、クロマトグラフィのカラムが動作するのに必要な温度範囲にわたって安定している必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の第1の特徴において、クロマトグラフィカラム内のアダプタと筒状ハウジングの内部円筒状面の間のシールを、それらの間に配置されるシール組立体によって形成する方法を提供し、
そのシール組立体は、低摩擦係数を有する材料から構成されかつそれらと協働するための別個の弾力部材からなるシール要素を備え、
シール要素は、反対の第1面および第2面を有し、第1面はシール面を構成し、第2面は圧縮面を構成し、
弾力部材はシール面と円筒状面の間のシールを形成するために、シール要素の圧縮面に対して力を働かせる。
【0011】
シール要素は、0.5〜2.0の範囲の摩擦係数を有する材料からなることが望ましい。特定の形態のABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)およびゴムのような材料は、この範囲の値を有している。シール要素の材料は、0.2〜0.5の範囲の摩擦係数を有していることがより望ましい。特定の形態のABS、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)、PA(ポリアミド)およびPC(ポリカーボネート)のような多くのプラスチック材料は、この範囲の値を持っている。最も好ましくは、シール要素は、0.001〜0.2の範囲の摩擦係数を有する材料からできていることである。UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)は、0.13〜0.2の範囲の摩擦係数を有しており、(www.lehhighvalleyplastics.com)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は0.05〜0.13の範囲の摩擦係数を有している(www.dotmar.com.au; www.torayfluorofibers.com)。
【0012】
シール要素は、第1脚部および第2脚部を有し、第1脚部は反対の第1面と第2面とを有し、第1面は隆起した前縁と隆起した後縁を備えるシール面を有し、第2面は圧縮面を備え、第2脚部は圧縮面を備え、隆起した前縁と隆起した後縁と筒状面との間のシールを形成するために弾力部材がシール要素の圧縮面に対して力を加えることが望ましい。この配置は、この技術分野における従来のシールと比較して優れたシールを達成し、また改善された媒体清浄特性を提供する。
【0013】
また、シール組立体は、円筒状面の軸方向の軸線に沿って移動可能で、このように動的シールを形成することが望ましい。
シール要素はL字形であることが適切である。さらに、U字形のような他の形も可能である。
【0014】
シール要素の第1および第2脚部の圧縮面は、円筒状面上の隆起した前縁と後縁に及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるため、その交差部において湾入(indented)されていることが適切である。これは、各縁部と表面との間で得られるシール強度を高める。
【0015】
シール要素の第1および第2脚部の圧縮面は、円筒状面上の隆起した前縁と後縁上の弾力部材によって及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、湾入部に対して角度がつけられていることが望ましい。これは、各縁部と表面との間で得られる密封強度を高める。
【0016】
シール要素は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から構成されることが望ましい。
弾力部材はOリングであることが望ましい。弾力部材は、フルオロエラストマーあるいはEPDM(エチレンプロピレンゴム)からなるOリングであることがより望ましい。
【0017】
シール面と円筒状面との間に形成されるシールの強度は、アダプタに印加される圧力に依存するのが適切である。
シールは、+2℃から+36℃の温度範囲にわたって安定していることが望ましい。シールは、+4℃から+30℃の温度範囲にわたって安定していることがより望ましい。シールは、−0.8バールから+20.0バールの圧力範囲にわたって安定していることが望ましい。シールは、−0.5バールから+5.7バールの圧力範囲にわたって安定していることがより望ましい。
【0018】
本願発明の第2の特徴によれば、アダプタと円筒状のハウジングの内部円筒状面の間をシールするために、クロマトグラフィカラムのためのシール組立体が設けられ、
そのシール組立体は、低摩擦係数の材料からなるシール要素と、それと協働する別個の弾力部材とを備えており、
シール要素は第1および第2の脚部を備え、第1の脚部は第1面と第2面とからなり、第1面は隆起した前縁と隆起した後縁を有するシール面であり、第2面は圧縮面を構成し、そして第2の脚部は圧縮面を備え、
弾力部材は隆起した前縁と隆起した後縁と円筒状面との間にシールを形成するために、シール要素の圧縮面に対して力を及ぼす。
【0019】
シール要素は、0.5〜2.0の範囲の摩擦係数を持っている材料からできていることが望ましい。特定の形態のABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)およびゴムのような材料は、この範囲の値を有している。シール要素は、0.2〜0.5の範囲の摩擦係数を持っている材料からできていることがより望ましい。特定の形態のABS、PEEK(ポリエーテル・エーテルケトン)、PA(ポリアミド)およびPC(ポリカーボネート)のような多くのプラスチック材料は、この範囲の値を持っている。シール要素は、0.0001〜0.2の範囲の摩擦係数を持っている材料からできていることが最も望ましい。UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)は、0.13〜0.2の範囲の摩擦係数を持っており(www.lehhighvalleyplastics.com)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は0.05〜0.13の範囲の摩擦係数を持っている(www.dotmar.com.au; www.torayfluorofibers.com)。
【0020】
シール組立体は、円筒状面の軸方向の軸線に沿って移動可能で、こうして動的シールを形成することが望ましい。
シール要素はL字形であることが望ましい。さらに、U字形のような他の形も可能である。
【0021】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、円筒状面上の隆起した前縁と後縁に及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、その交差部において湾入されている。これは、各縁部と表面との間で得られるシールの強度を高める。
【0022】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、円筒状面上の隆起した前縁および後縁へ弾力部材によって及ぼされる力を最大限にしおよび/または集中させるために、湾入部に対して角度を有していることが望ましい。これは、各縁部と表面との間で得られるシール強度を高める。
【0023】
シール要素は、超高分子量ポリエチレン(UHMWP)からできていることが望ましい。
弾力部材はOリングであることが望ましい。弾力部材は、フルオロエラストマーあるいはEPDMゴムからなるOリングであることがより望ましい。
【0024】
隆起した前縁と後縁と円筒状面との間で形成されるシールの強度は、アダプタに加えられる圧力に依存しないことが望ましい。
そのように形成されたシールは、+2℃から+36℃の温度範囲にわたって安定していることが望ましい。シールは、+4℃から+30℃の温度範囲にわたって安定していることがより望ましい。
【0025】
シールは、−0.8バールから+20.0バールの圧力範囲にわたって安定していることが望ましい。シールは、−0.5バールから+5.7バールの圧力範囲にわたって安定していることがより望ましい。
【0026】
本願発明の第3の特徴によれば、内部円筒状面を有する円筒状のハウジング、ハウジング内のアダプタ、アダプタと内部円筒状面との間のシールを形成するためのシール組立体を備え、そのシール組立体が低摩擦係数の材料から構成されたシール要素とこれと協働する弾力部材を備える、クロマトグラフィカラムが提供され、
シール要素は反対の第1および第2の面を備え、第1面はシール面を構成し、第2面は圧縮面を構成し、
弾力部材は、シール面と円筒状面との間にシールを形成するために、シール要素の圧縮面に対して力を及ぼす。
【0027】
カラムは、上記したシール組立体を備えることが望ましい。
本願発明の第4の特徴において、クロマトグラフィカラムを清潔にする方法が提供され、その方法は、上記したシール組立体と殺菌物質とを備えるカラムを処理するものであり、その後殺菌物質を中和するものである。適切な殺菌物質の例としては、酸、塩基(bases)や抗菌性化学薬品などである。水酸化ナトリウムのような塩基は、適切な濃度(例えば1M)で、殺菌物質として特に適切である。適切な中和剤は水、酸および塩基などである。
【0028】
ここに記述される動的シールは、多目的用途の(例えば、固定した)装置や使い捨て式の装置並びのこれら2つの装置の間の接続部の両方を含む、種々様々の用途において有用である。可能性のある用途としては、クロマトグラフィ、遠心分離、ろ過、堆積、電気泳動および単なる巨大分子および他のナノメーター規模コロイドの処理のための他の調製的・分析的規模の装置だけでなく、廃棄物処理、生物薬剤の生産、細胞銀行業務(cell banking)、細胞療法および研究に関連した応用における細菌性細胞、ウィルス粒子および真核細胞のような、マイクロメートル規模のコロイドも含まれる。
【0029】
本願発明のシール組立体の他の変形例が可能であり、それはOリングがシール要素と協働するのを可能にする異なる形状を有するものを含むことは理解されるであろう。そのような1つの例は、Oリングを挿入することができる3つの脚部を有するU字型のシール要素であり、組立体全体がアダプタおよび円筒状のカラム壁に隣接する適切なパッキン押え(gland)が凹部に取り付けられ、この配置では、Oリングは、シール要素の少なくとも2つの脚部を凹部内の所定位置に固定するよう圧縮し、シール要素のシール面をカラム壁に対して押しつけてそれらの間にシール状態を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】カラム内の漏れを低減するために、先行技術で使用されるOリングを示すクロマトグラフィカラムの内壁に隣接しているアダプタの断面図である。
【図2】本願発明によるシール組立体の一実施形態を装備した研究規模のカラムの図であり、図2aにはカラムの基本的構成が示されており、図2bの差し込み図Cにシール組立体の詳細が示されている。
【図3a】工業規模のクロマトグラフィカラムで一般的に使用される本願発明の異なる実施形態を示し、シール組立体が停止状態である場合を示す。
【図3b】工業規模のクロマトグラフィカラムで一般的に使用される本願発明の異なる実施形態を示し、シール組立体が作動(圧縮された)状態である場合を示す。
【図4】作動(圧縮された)状態である場合に、図3のシール組立体のシール要素の低い応力領域から高い応力領域を示す応力図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願発明は、以下の図を参照して更に例示される。
Oリングは、クロマトグラフィカラム内のシールとして一般に使用されている。図1の断面図では、アダプタ2とクロマトグラフィカラム10の内面4を有する円筒状壁3の間にOリングがシールを形成するのが示されている。Oリングの芯5はシリコーンからできているが、ヴァイトン(登録商標)(www.dupontelastomers.com)のような他の適切な弾力エラストマー材料で作られてもよく、またテフロンFEP(www.dupont.com)のような適切な摩擦を低減するポリマーの被覆6で密封されてもよい。カラム10の壁3は、ガラス、プラスチックあるいはステンレス鋼のような適切な金属で作られる。
【0032】
テフロンFEP(登録商標)被覆6の中に密封されたシリコーン芯5を有するOリング1での試験では、標準のカラム作動条件下で高い水準の圧力降下が現れ、いくつかの例において2時間にわたって最高15%の圧力低下が観察された。それに比べて、本願発明のシール組立体は、同じ作動条件および時間の下で、0.25〜1%の範囲の圧力低下を伴うはるかにきついシールを形成した。
【0033】
テフロンFEP(登録商標)で密封されたOリングで観測された著しい圧力低下は、容易にすり減るフッ素化(fluorinated)エチレンプロピレン樹脂の摩耗特性によるものであり、カラム内でのFEPの蓄積に結びつく。ポリマーはさらに、プラスチック/アクリルのカラム壁を摩耗させ、傷を付け、その密閉特性を低下させる。更に、テフロンFEP(登録商標)で密封されたOリングで得られる密封性は温度によって変化し、恐らくそれがその環境にそれ自体を適合させようとする際に設定された圧縮にシールが感応するからである。さらに、Oリングのその形は、カラム壁から媒体粒子を取り除くことに適さないことが分かり、それ自身は壁の表面に対して摩耗性を示す。
【0034】
図2は、研究室規模のクロマトグラフィカラムの断面図であり(図2a)、本願発明のシール組立体の位置及び構成を示している(図2bの差し込み図C)。本願発明は小さなカラムに関して説明されているが、当業者であれば同じ原理をより大きな工業規模のカラムで使用することができることを理解するであろう。
【0035】
カラム110は、内部円筒状面104を有する円筒状のハウジング(あるいは壁あるいはチューブ)103と、アダプタ102と底板113に取り付けられた2つのベッド支持体112を形成するために保持リング(例えば、107)に固定された)ネット108を備えている。このネット108は、クロマトグラフィ媒体のベッド(床)のための媒体室あるいは空洞を区切る。ハウジング103はガラスあるいはアクリル酸塩をベースにした(acrylate-based)ポリマーのような適切なプラスチックで作られ、上部フランジ115と底部フランジ116と拡張ロッド118によって支持されている。ステンレス鋼のような金属のハウジング103を有するカラムを使用してもよい(特に、工業規模のカラムのような、より大きなカラムのために)。クロマトグラフィ媒体のベッドは、液圧チャンバ120によって駆動される、移動可能なアダプタ102によって充填される。弁122と124は、カラムへの液体/媒体および空気の入出を制御する。クロマトグラフィで分離される試料を含んでいる緩衝液すなわち液体は、ポート126からカラムへ加えられ、管128を通って流れて媒体チャンバ114に入り、それらがクロマトグラフィの分離にさらされ、収集ポート129でカラムを出る。当業者であれば、さらに、反対方向でクロマトグラフィの分離を実施することが可能であると理解するであろう。すなわち、試料はポート129でチャンバ114に加えられ、そこで分離が行われ、そして試料は管128を通ってポート126で収集される。
【0036】
本願発明のシール組立体の構成は、差し込み図C(図2b)に詳細に示されている。組立体は、アダプタの裏板102に隣接配置されたOリング101と、ベッド保持リング107(それはネット108に固定されている)と、シール要素130を備えている。ファスナー109は、アダプタ裏板102をベッドリング107とネット108に固定する。Oリング101が圧縮された場合、それは、シール要素130の圧縮面に対して力を及ぼし、これによりシール要素130のシール面(縁部137/138)を、円筒状のハウジング103の内面104に押しつけて、シールを形成する。
【0037】
本願発明のものに関連するシール要素が、Repack−S社(Zl du Bois Bernoux-F71290 CUISERY France(www.repack-s.com)から市販されている。本願発明のシールの実施形態は、Repack−S社から商業的に市販されているそれらとはいくつかの点で異なっており、例えば、前縁137はハウジングの内面とのシールを向上させるために、とても平滑に作られており、また縁部137’は媒体をこそぎ落とす(scraping)特性を高め且つ媒体漏洩を回避するために、鋭くなっている。
【0038】
本願発明のシール組立体の別の実施形態が、図3aと3bに示されている。図3aにおいてはシール組立体が停止位置にある状態が示されており、図3bにおいてはそれが壁の内部に対するシール面となる動作位置にある状態が示されている。
【0039】
シール組立体は、Oリング201およびシール要素230からなり、アダプタ分配機(adapter distributer)202とハウジング203の内壁204およびアダプタのベッド保持リング207(ここではネット208に溶接されている)との間の凹部に位置している。図3aでは、シール要素230はカラムの内壁204に接していないので、シール組立体は緩んだ状態である。Oリング201は、フッ素化エラストマー(例えばFKMゴム)やEPDMゴムのような弾力のある材料で作られ、また、シール要素は、低摩擦係数の材料から構成され、そしてそれはUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)のように非常に耐久性を有するものである。耐久性は、カラムの摩滅やシール要素の摩耗を回避するために重要である。
【0040】
シール要素230はL字形に作られ、2本の脚部あるいは腕部232/234からなり、各脚部はOリング201に隣接する圧縮面235/236を有し、一方の脚部232は隆起した前縁237と隆起した後縁238を支持する反対のシール面233を有している。シールは、Oリング201とシール要素230の圧縮面235および236の間、およびOリング201と溝240に隣接しているベッド保持リング207との間で形成される。隆起した前縁と後縁237/238の間のシール面233の領域は、シール面が公差に対して柔軟で且つ対応するよう、凹み231となっている。脚部232/234の交差部は湾入部239となっており、その一方で各脚部の圧縮面は湾入部に対して角度が付けられている。湾入部239および各圧縮面235/236の角度を付けた面の目的は、弾力部材(Oリング)201によって円筒面204上の前縁237および後縁238に及ぼす力を集中しかつ/または最大にし、これにより強力なシールを提供することである。休止位置にある場合、Oリング201は、シール要素230の脚部234を分配機202に対して押し、これによりそれを所定位置に固定する。これは、約−0.5バールの負圧(例えば、カラムの底から媒体を吸引すること)によってカラムを満たすことを可能にする。シールは、およそ−0.8バールから+20.0バールの圧力の間、および+2℃から+36℃の温度で動作するように設計されている。シールは、−0.5バールから+5.7バールの間の圧力および+4℃から+30℃の温度で使用されることが望ましい。
【0041】
アダプタがカラム内を下方に移動するときに、シール要素230はカラムの円筒状壁204と接触する(図3b)。これは、本来弾力のあるOリング201がシール要素230の圧縮面235/236に対して力を及ぼして圧縮状態を生む。シール要素230の圧縮面235/236および湾入部239は、及ぼされる力を隆起した前縁237と後縁238上に集中させ、これによってカラムハウジング203の円筒状面204ときついシールを形成するように設計されている。アダプタのベッド保持リング207の下面上の溝240は、Oリング201とベッド保持リング207の間のシールを増強する。
【0042】
図4は、図3bのシール組立体のシール要素330の低い応力から高い応力への領域を例示する応力図を示す(つまり、それが作動中すなわち圧縮された状態である)。応力の領域は、ANSYS分析プログラム(アンシス社;www.ansys.com)を使用して決定される。最大応力(図で最も暗い色彩の領域として示されている)は、シール面333の隆起した前縁337と後縁338で生じ、これによりハウジング303の円筒状面304ときついシールを形成する。シール要素330は、湾入部339と、湾入部339に対する圧縮面335/336の傾斜によって、Oリング301によって及ぼされる力を各縁部337/338に集中させるように設計されている。
【0043】
クロマトグラフィカラム内の微生物の成長は、クロマトグラフィの性能および汚染の点から問題に結びつく場合があり、極端な場合では高価値の分析の損失に結びつく。貧弱なシールはカラムの動作中に開閉する「ポケット」の形成を許してしまい、開状態はシールの後ろに微生物(microbes)が入って成長するのを許してしまうが、閉状態ではカラムを清潔にするために使用される化学殺菌剤が到達して微生物を殺すのを阻害してしまう。したがって、テストは本願発明のシール組立体が、その後、増殖することができ、滅菌剤での滅菌を阻害できるバクテリアを封入することができるかどうかを決定するために行なわれる。コロニーを形成する微生物は、行われた2つのテストのどんなサンプリング位置でも見つからなかった。したがって、本願発明のシール組立体は、水酸化ナトリウムおよび他の適切な抗菌剤および化学薬品のような滅菌剤によって殺菌が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィカラム内における、アダプタと円筒状ハウジングの内部円筒状面との間のシールを、それらの間に配置したシール組立体によって形成する方法であって、
シール組立体は、低摩擦係数を有する材料から構成されたシール要素およびシール要素と協働する個別の弾力部材とを備え、
シール要素は、反対の第1および第2面を備え、第1面はシール面を構成し、第2面は圧縮面を構成し、
弾力部材は、シール面と内部円筒状面との間にシールを形成するために、シール要素の圧縮面に対して力を働かせる、シール形成方法。
【請求項2】
シール要素は第1と第2の脚部を備え
第1の脚部は反対の第1および第2面とを備え、第1面は隆起した前縁と隆起した後縁とを備えるシール面であり、第2面は圧縮面を構成し、
第2脚部は圧縮面を構成し、
弾力部材は、隆起した前縁および後縁と内部円筒状面との間にシールを形成するシール要素の圧縮面に対して力を働かせる、請求項1に記載のシール形成方法。
【請求項3】
シール組立体は、内部円筒状面の軸線方向の軸線に沿って移動可能である、請求項1または2に記載のシール形成方法。
【請求項4】
シール要素はL字形である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項5】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、内部円筒状面上での隆起した前縁と後縁に及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、その交差部で湾入されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項6】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、内部円筒状面上での隆起した前縁および後縁に弾力部材によって及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、湾入部に対して角度を付けている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項7】
シール要素は、超高分子量ポリエチレンからできている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項8】
弾力部材は、Oリングである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項9】
弾力部材は、フルオロエラストマーあるいはEPDMゴムからなるOリングである、請求項8に記載のシール形成方法。
【請求項10】
シール面と内部円筒状面との間で形成されるシールの強度は、アダプタに加えられる圧力に依存しない、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項11】
シールは、+2℃から+36℃の温度範囲にわたって安定している、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項12】
シールは、−0.8バールから+20.0バールの圧力範囲にわたって安定している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシール形成方法。
【請求項13】
アダプタと円筒状ハウジングの内部円筒状面との間をシールするための、クロマトグラフィカラムのためのシール組立体であって、
シール組立体は、低摩擦係数を有する材料から構成されたシール要素、およびそれと協働する個別の弾力部材とを備え、
シール要素は第1と第2の脚部を備え、
第1の脚部は反対の第1および第2面とを備え、第1面は隆起した前縁と隆起した後縁とを備えるシール面であり、第2面は圧縮面を構成し、
第2脚部は圧縮面を構成し、
弾力部材は、隆起した前縁および後縁と内部円筒状面との間にシールを形成するシール要素の圧縮面に対して力を働かせる、シール組立体。
【請求項14】
シール組立体は、内部円筒状面の軸線方向の軸線に沿って移動可能である、請求項13に記載のシール組立体。
【請求項15】
シール要素はL字形である、請求項13または14に記載のシール組立体。
【請求項16】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、内部円筒状面上での隆起した前縁と後縁に及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、その交差部で湾入されている、請求項13〜15のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項17】
シール要素の第1と第2の脚部の圧縮面は、内部円筒状面上での隆起した前縁および後縁に弾力部材によって及ぼされる力を最大限にしかつ/または集中させるために、湾入部に対して角度を付けている、請求項13〜16のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項18】
シール要素は、超高分子量ポリエチレンからできている、請求項13〜17のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項19】
弾力部材は、Oリングである、請求項13〜18のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項20】
弾力部材は、フルオロエラストマーあるいはEPDMゴムからなるOリングである、請求項13〜19に記載のシール組立体。
【請求項21】
シール面と内部円筒状面との間で形成されるシールの強度は、アダプタに加えられる圧力に依存しない、請求項13〜20のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項22】
シールは、+2℃から+36℃の温度範囲にわたって安定している、請求項13〜21のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項23】
シールは、−0.8バールから+20.0バールの圧力範囲にわたって安定している、請求項13〜22のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項24】
内部円筒状面を有する円筒状ハウジングと、ハウジング内のアダプタと、アダプタと内部円筒状面との間のシールを形成するためのシール組立体とを備えるクロマトグラフィカラムであって、
シール組立体は低摩擦係数を有する材料からできているシール要素とこれと協働する弾力部材とを備え、
シール要素は、反対の第1および第2面を備え、第1面はシール面を構成し、第2面は圧縮面を構成し、
弾力部材は、シール面と内部円筒状面との間にシールを形成するために、シール要素の圧縮面に対して力を働かせる、クロマトグラフィカラム。
【請求項25】
請求項13〜23のいずれか一項に記載のシール組立体を備える、請求項24に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項26】
クロマトグラフィカラムを清潔にする方法であって、
請求項13〜23のいずれか一項に記載されたシール組立体を備えるクロマトグラフィカラムを殺菌剤で処理し、その後殺菌剤を中和する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−540926(P2010−540926A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526845(P2010−526845)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000532
【国際公開番号】WO2009/041877
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(509088240)ジーイー・ヘルスケア・バイオ−サイエンシズ・アーベー (22)
【Fターム(参考)】