説明

クローラ式車両

【課題】連結リンクに沿う配管を保護する保護カバーを備えたクローラ式車両であっても、保護カバーを外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行えるようにする。
【解決手段】連結リンク20にクローラ幅拡張位置で連結ピン22が挿入される拡張位置用ピン孔と、クローラ幅縮小位置で連結ピン22が挿入される縮小位置用ピン孔とを設ける。トラックフレーム7に拡張位置で拡張位置用ピン孔と合致する第1ピン孔と、縮小位置で縮小位置用ピン孔と合致する第2ピン孔と、第1ピン孔周縁から上方に延びる第1連結ピン係止部材28と、第2ピン孔周縁から上方に延びる第2連結ピン係止部材29とを設ける。連結リンク20の外周を覆って配管を保護する保護カバーに、連結ピン22を上方から抜き差しするための第1及び第2ピン用開閉蓋を設ける。連結ピン22の上側に第1及び第2連結ピン係止部材28,29に係止可能な被係止部材40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のクローラ間隔が拡縮可能に構成されたクローラ式車両に関し、特にそのサイドフレームとトラックフレームとを連結する連結ピンの係止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業時には安定度を高めるためにクローラ幅を拡張し、輸送時には輸送制限に適応するためにクローラ幅を縮小するようにした、油圧ショベル、クローラクレーン等のクローラ式車両は知られている。このようなクローラ式車両では、トラックフレームの左右両側に、外周にクローラが装着されるサイドフレームが、左右のクローラ間隔が最大となるクローラ幅拡張位置とクローラ間隔が最小となるクローラ幅縮小位置との間で左右移動可能に設けられ、両サイドフレームがトラックフレームに対し、上記クローラ幅拡張位置及びクローラ幅縮小位置でそれぞれ連結リンクによって連結されることは知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、連結リンクに、クローラ幅拡張位置で連結ピンが挿入される拡張位置用ピン孔と、クローラ幅縮小位置で連結ピンが挿入される縮小位置用ピン孔とを設け、トラックフレームに、クローラ幅拡張位置で拡張位置用ピン孔と合致する第1ピン孔と、クローラ幅縮小位置で縮小位置用ピン孔と合致する第2ピン孔とを設けている。このような構成により、連結ピンを、クローラ幅縮小時には、トラックフレームの第1ピン孔から第2ピン孔に、クローラ幅拡張時には、トラックフレームの第2ピン孔から第1ピン孔に、それぞれ入れ換えた状態でサイドフレームを移動させると、連結ピンが連結リンクの上面に接しつつ連結リンクに対して相対的に移動して連結リンクの縮小位置用又は拡張位置用ピン孔に自動的に落とし込まれるようにして、クローラ幅拡縮操作時のピン操作を第1ピン孔と第2ピン孔との間でのピン入れ換え操作の一度だけで済むようにしている。
【特許文献1】実公平02−63284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クローラ式車両では、油圧源を有する上部旋回体と、走行用の油圧モータを有するサイドフレームとの間で作動油を行き来させなければならず、油圧源とトラックフレームに設けたスイベルジョイント及びこのスイベルジョイントと油圧モータとは油圧配管で接続されている。
【0005】
特に、解体や掘削等の不整地の作業に用いられるクローラ式車両では、クローラで走行中に、上記油圧配管を上からの破砕片等の落下や、下からの堆積物の突き上げ等から保護するために、油圧配管の上下面と側面とを覆う保護カバーで覆う必要がある。
【0006】
トラックフレームの構成上、油圧配管は、連結リンクに沿って配管され、保護カバーは、連結リンク及び連結ピンも覆う構成となっている。この保護カバーは、ある程度衝撃に強いものとするために質量が大きいものとなっている。
【0007】
また、不整地等の作業では、振動や衝撃による連結ピンの脱落を防止するために、抜け止め手段を設けることが必要となっている。
【0008】
しかしながら、従来のクローラ式車両では、連結ピンは、トラックフレームの上方から第1又は第2ピン孔に挿入され、その先端に下方から抜け止めピンを係止させて抜け止め手段を構成していた。このため、クローラ幅拡縮操作時には、質量の重い保護カバーを外した上で下方から抜け止めピンを外し、上方から連結ピンを抜き出さなければならず、多くの工数を必要とし、作業者の負担が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、連結リンクに沿う配管を保護する保護カバーを備えたクローラ式車両であっても、保護カバーを外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、保護カバーに連結ピンを上方から挿入するためのピン用開閉蓋を設け、連結ピンの上側において抜け止めを行うようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、トラックフレームの左右両側に、外周にクローラが装着されるサイドフレームが、左右のクローラ間隔が最大となるクローラ幅拡張位置とクローラ間隔が最小となるクローラ幅縮小位置との間で左右移動可能に設けられ、両サイドフレームがトラックフレームに対し、上記クローラ幅拡張位置及びクローラ幅縮小位置でそれぞれ連結リンクによって連結される、クローラ式車両を前提とする。
【0012】
上記連結リンクには、
上記クローラ幅拡張位置で上記トラックフレームと連結するための連結ピンが挿入される拡張位置用ピン孔と、
上記クローラ幅縮小位置で上記連結ピンが挿入される縮小位置用ピン孔とが設けられ、
上記トラックフレームは、
上記クローラ幅拡張位置で上記拡張位置用ピン孔と合致する第1ピン孔と、
上記クローラ幅縮小位置で上記縮小位置用ピン孔と合致する第2ピン孔と、
上記第1ピン孔周縁から上方に延びる第1連結ピン係止部材と、
上記第2ピン孔周縁から上方に延びる第2連結ピン係止部材と、
を有し、
上記連結リンクの外周は、該連結リンクに沿う配管を保護し、上記連結ピンを上方から抜き差しするためのピン用開閉蓋を有する保護カバーで覆われ、
上記連結ピンの上側には、上記第1及び第2連結ピン係止部材に係止可能な被係止部材が設けられている。
【0013】
上記の構成によると、連結リンクの外周を保護カバーで覆うことにより、連結リンクに沿う配管が保護される。一方、クローラ幅拡縮操作時には、保護カバーのピン用開閉蓋のみを開けばよいので、質量の大きい保護カバー全体を取り外す必要はない。ピン用開閉蓋を開くことで、連結ピンにアクセス可能となり、連結ピンの上側の被係止部材と第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材との係合を解除した後に、連結ピンが、第1ピン孔又は第2ピン孔から抜き出される。クローラ幅拡縮操作後に再び連結ピンを挿入するときも、ピン用開閉蓋を開いた状態で上方から第1ピン孔及び拡張位置用ピン孔又は第2ピン孔及び縮小位置用ピン孔に連結ピンを挿入し、第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材に被係止部材を係止させる。このように、保護カバーを外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作が行われる。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第1連結ピン係止部材には第1係止用切欠が、上記第2連結ピン係止部材には第2係止用切欠が、それぞれ上方が開口するように形成され、
上記被係止部材は、上記第1及び第2係止用切欠に上方から嵌め込み可能に構成されている。
【0015】
上記の構成によると、連結ピンの被係止部材を第1連結ピン係止部材の第1係止用切欠又は第2連結ピン係止部材の第2係止用切欠に上方から嵌め込むことで、連結ピンが容易にトラックフレームに係止される。
【0016】
第3の発明では、第2の発明において、
上記連結ピンは、上記第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材に作業者が手で係脱可能な抜け止めピンで抜け止めされている。
【0017】
上記の構成によると、作業者が、連結ピンを上方から第1又は第2ピン孔に挿入後、工具を使わずに手で抜け止めピンを第1又は第2連結ピン係止部材に係止するだけで、連結ピンが抜け止めされる。逆に、作業者が工具を使わずに手で抜け止めピンを取り外し、連結ピンを上方に引き抜いて第1又は第2係止用切欠から被係止部材を引き出すことで、連結ピンが抜き出される。
【0018】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
クローラ式車両は、破砕用アタッチメントを備えた解体機である。
【0019】
上記の構成によると、解体機は、破砕用アタッチメントでビルなどを解体する際に、地面に破砕片が散乱するので、連結リンクに沿う配管を保護する保護カバーは必須であるが、ピン用開閉蓋を開くことで、容易に連結ピンにアクセスして連結ピンが抜き差しされる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、連結リンクの外周を保護カバーで覆い、連結リンクに沿う配管を保護する一方、クローラ幅拡縮操作時には、保護カバーのピン用開閉蓋のみを開くことで、連結ピンにアクセス可能としている。また、連結ピンの上側の被係止部材と第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材との係合を解除した後に、第1ピン孔又は第2ピン孔から連結ピンを抜き出すようにしている。このため、連結リンクに沿う配管を保護する保護カバーを備えたクローラ式車両であっても、保護カバーを外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行うことができるので、作業時間を大幅に短縮できると共に、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0021】
上記第2の発明によれば、第1連結ピン係止部材に第1係止用切欠を、第2連結ピン係止部材に第2係止用切欠をそれぞれ上方が開口するように形成し、被係止部材を、第1及び第2係止用切欠に上方から嵌め込み可能に構成したことにより、連結ピンを容易に上方からトラックフレームに係脱させてクローラ幅拡縮操作を行うことができるので、作業時間を大幅に短縮できると共に、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0022】
上記第3の発明によれば、連結ピンを第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材に作業者が手で係脱可能な抜け止めピンで抜け止めしている。このため、工具を使わずに連結ピンの抜き差しが行えるので、クローラ幅拡縮操作における工数及び負担をさらに削減することができる。
【0023】
上記第4の発明によれば、クローラ式車両を破砕用アタッチメントを有する解体機としたことにより、保護カバーで連結リンクに沿う配管が確実に保護される。一方、ピン用開閉蓋を開くことで、容易に連結ピンにアクセスして連結ピンが抜き差しできるようにしているので、連結リンクに沿う配管を保護する保護カバーを必須とする解体機であっても、保護カバーを外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図2は本発明の実施形態のクローラ式車両としての解体機1を示し、この解体機1は、下部走行体2と、この下部走行体2に旋回自在に連結される上部本体3と、この上部本体3に起伏自在に連結されるブーム4と、このブーム4の先端に連結される破砕用アタッチメント5とを備えている。図示しないが、上部本体3には、油圧源が設けられている。
【0026】
図3に示すように、下部走行体2は、トラックフレーム7を備え、このトラックフレーム7の中心上面には、旋回ベアリング(図示せず)が締結されるベアリング台8が設けられている。この旋回ベアリング上に上部本体3が載置されている。トラックフレーム7の前側と後側とにアクスル9が左右に延び、このアクスル9が左右のサイドフレーム10のアクスル嵌入孔11に挿入されている。両サイドフレーム10の外周には、クローラ12(図2にのみ示す)が装着され、このクローラ12は、サイドフレーム10に設けた油圧モータ14(図4に示す)により、駆動されるようになっている。この油圧モータ14には、旋回ベアリングの中心に設けたスイベルジョイント15からトラックフレーム7及び後述する連結リンク20に沿って油圧配管16が配管されている。スイベルジョイント15には、上部本体3の油圧源からの作動油が供給されるようになっている。なお、図4においては、簡略化のために一方の油圧モータ14に接続される油圧配管16のみを図示しているが、他方の油圧配管16も同様に接続されている。
【0027】
図5〜図7に示すように、左右のサイドフレーム10は、左右のクローラ間隔が最大(2×LA)となるクローラ幅拡張位置Aとクローラ間隔が最小(2×LB)となるクローラ幅縮小位置Bとの間で左右移動可能に設けられている(LA>LB)。なお、図7では、左側がクローラ幅拡張位置Aを示し、右側がクローラ幅縮小位置Bを示す。両サイドフレーム10は、トラックフレーム7に対し、クローラ幅拡張位置A及びクローラ幅縮小位置Bでそれぞれ連結リンク20によって連結されるようになっている。例えば、左右のサイドフレーム10は、下部走行体2に設けた油圧シリンダによって伸縮させてもよいし、クレーンに吊って伸縮させてもよい。
【0028】
上記連結リンク20は、左右に延びる鋼板よりなり、前後に一対、合計4本あり、それぞれの一端側がサイドフレーム10に固定ピン21により連結されている。連結リンク20の他端側には、クローラ幅拡張位置Aでトラックフレーム7と連結するための連結ピン22が挿入される拡張位置用ピン孔23が設けられ、中間部には、クローラ幅縮小位置Bで連結ピン22が挿入される縮小位置用ピン孔24が設けられている。
【0029】
一方、トラックフレーム7のアクスル9には、上記連結リンク20を上下から挟み込み、その自由端側を連結するリンク連結部材25が突設されている。このリンク連結部材25は、先端側の角部が面取りされた略矩形状の上下一対の連結部材本体25aと、これら一対の連結部材本体25aを接続すると共に、連結リンク20の側面に当接し、連結リンク20が固定ピン21を中心にトラックフレーム7側に回動するのを規制する接続部材25bとを有している。リンク連結部材25には、クローラ幅拡張位置Aで上記拡張位置用ピン孔23と合致する第1ピン孔26と、クローラ幅縮小位置Bで上記縮小位置用ピン孔24と合致する第2ピン孔27とが形成されている。連結部材本体25a上面における第1ピン孔26の周縁には、円筒状の第1連結ピン係止部材28が設けられている。同様に連結部材本体25a上面における第2ピン孔27の周縁にも円筒状の第2連結ピン係止部材29が設けられている。リンク連結部材25における第1及び第2ピン孔26,27よりも先端側(アクスル9と反対側)には、第1及び第2ピン孔26,27よりも小径の第3ピン孔31が上下に貫通形成されている。この第3ピン孔31には、リンク抜け出し防止用ピン32が挿通され、下側で割りピン33により抜け止めされている。リンク抜け出し防止用ピン32により、一端側がクローラ12に軸支された連結リンク20が固定ピン21を中心に回動してリンク連結部材25から抜け出すのが防止されている。
【0030】
連結リンク20の先端側の上下面には、クローラ幅拡張位置Aでリンク連結部材25の内側側面が当接する第1ストッパー部材20aが溶接されている。このことで、クローラ幅がそれ以上大きくならないように規制されている。連結リンク20の中間部の上下面には、クローラ幅縮小位置Bでリンク連結部材25の外側側面が当接する第2ストッパー部材20bが溶接されている。このことで、クローラ幅がそれ以上小さくならないように規制されている。
【0031】
図3に示すように、油圧モータ14のある側の左右一対の連結リンク20の外周は、保護カバー35で上下面及びアクスル9と反対側側面が覆われている。保護カバー35は、トラックフレーム7に取り付けられる中間カバー35aと、左右のサイドフレーム10にそれぞれ取り付けられる一対の外側カバー35bとを備えている。このことで、クローラ幅の拡縮操作に伴って、中間カバー35aが左右の外側カバー35b内に挿入可能となっている。この保護カバー35の内部にスイベルジョイント15と油圧モータ14とを接続する油圧配管16(簡略化のために図4にのみ示す)が収納されている。図7に示すように、中間カバー35aには、連結ピン22を上方から抜き差しするための第1ピン用開口36が形成され、この第1ピン用開口36が第1ピン用開閉蓋37で開閉可能に覆われている。同様に外側カバー35bには、クローラ幅縮小位置Bで連結ピン22を上方から抜き差しするための第2ピン用開口38が形成され、この第2ピン用開口38が第2ピン用開閉蓋39で開閉可能に覆われている。第1ピン用開閉蓋37は、保護カバー35に対し、工具を必要としない蝶ネジ50で取り付けられ、この蝶ネジ50を外して第1ピン用開閉蓋37を取り外すことで第1ピン用開口36が現れるようになっている。第2ピン用開閉蓋39は、保護カバー35に対し、一方が蝶ネジ50で取り付けられ、他方がボルト51で締結されている。このことで、蝶ネジ50を外し、ボルト51を中心に回転させることで、第2ピン用開口38が現れるようになっている。
【0032】
図1,図8及び図9に示すように、上記連結ピン22の上側には、上記第1及び第2連結ピン係止部材28,29に係止可能な被係止部材40が設けられている。具体的には、被係止部材40は、U字状に折り曲げられた丸鋼の一方側の直線部分が連結ピン22上面の直線溝22aに嵌め込んで溶接されたものよりなる。
【0033】
上記第1連結ピン係止部材28には、対向する位置に一対の第1係止用切欠28aが、上記第2連結ピン係止部材29には、対向する位置に一対の第2係止用切欠29aが、それぞれ上方が開口するように形成されている。このことで、連結ピン22を第1ピン孔26に挿入したときには、被係止部材40が第1係止用切欠28aに上方から嵌め込まれ、連結ピン22を第2ピン孔27に挿入したときには、被係止部材40が第2係止用切欠29aに上方から嵌め込まれるように構成されている。このことで、連結ピン22は、第1ピン孔26及び第2ピン孔27の下方から抜け落ちるのが防止されている。なお、第1係止用切欠28a又は第2係止用切欠29aと被係止部材40とを堅固に係止させることで、連結ピン22の回り止め効果を与えることもできる。
【0034】
上記連結ピン22は、第1連結ピン係止部材28又は第2連結ピン係止部材29に作業者が手で係脱可能な、ロックスプリング式抜け止めピン41で抜け止めされている。つまり、第1連結ピン係止部材28の第1係止用切欠28aのない上端近傍には、対向する位置に貫通孔28bが形成されている。同様に、第2連結ピン係止部材29の第2係止用切欠29aのない上端近傍には、対向する位置に貫通孔29bが形成されている。この貫通孔28b,29bに抜け止めピン41の直線部41aを挿通し、この直線部41aの先端に他端側の引っ掛け部41bを引っ掛けることで、抜け止めピン41が貫通孔28b,29bから抜け止めされるようになっている。すなわち、直線部41aと引っ掛け部41bとは、コイル部41cで連結され、抜け止めピン41は、ねじりコイルバネのような形状をしている。このため、直線部41aに引っ掛け部41bを引っ掛けるには、コイル部41cの付勢力に抗して直線部41aと引っ掛け部41bとを近付ける必要がある。この抜け止めピン41の直線部41aが連結ピン22の上面に位置することにより、連結ピン22が上方から抜け出すのを防止している。
【0035】
−作動−
次に、本実施形態にかかる解体機1の作動について説明する。
【0036】
解体機1は、ブーム4を操作して破砕用アタッチメント5でビルなどを解体する。このとき、解体機1の安定度を確保するために、左右のサイドフレーム10は、クローラ幅拡張位置Aにある。解体作業中に地面に破砕片が散乱するが、クローラ12を駆動して解体機1を移動させても、保護カバー35により、破砕片等から連結リンク20の外周の油圧配管16が保護される。
【0037】
解体作業後に解体機1を輸送するときには、トレーラーの車幅制限内に納めるために、クローラ幅が縮小される。
【0038】
まず、図7に示すように、作業者が工具を使わずに、第1ピン用開閉蓋37及び第2ピン用開閉蓋39の蝶ネジ50を弛めて第1ピン用開閉蓋37を取り外すと共に、第2ピン用開閉蓋39をずらして、第1ピン用開口36及び第2ピン用開口38を露出させる。
【0039】
次いで、コイル部41cの付勢力に抗して、手で引っ掛け部41bを直線部41aから外して抜け止めピン41を取り外し、第1連結ピン係止部材28の貫通孔28bから抜き出す。このことで、連結ピン22の抜け止めが解除される。
【0040】
次いで、被係止部材40に手を掛けて連結ピン22を上方に引き抜き、第1係止用切欠28aから被係止部材40を引き出す。さらに上方に引き出すことで、連結ピン22が第1ピン孔26から抜き出される。
【0041】
次いで、図8に二点鎖線で示すように、連結ピン22を上側の第2ピン孔27に入れ換えた状態でサイドフレーム10を内側に移動させる。すると、連結ピン22が連結リンク20の上面に接しつつ連結リンク20に対して相対的に移動して連結リンク20の縮小位置用ピン孔24及び下側の第2ピン孔27に自動的に落とし込まれる。そして、被係止部材40が第2係止用切欠29aに上方から嵌め込まれる。
【0042】
次いで、抜け止めピン41の直線部41aを貫通孔29bに挿通し、コイル部41cの付勢力に抗して引っ掛け部41bを直線部41aに引っ掛ける。
【0043】
最後に第1ピン用開閉蓋37で第1ピン用開口36を覆って、蝶ネジ50を手で締め、第2ピン用開閉蓋39を回動させて第2ピン用開口38を覆い、蝶ネジ50を手で締める。これにより、左右のサイドフレーム10は、クローラ幅縮小位置Bとなる。
【0044】
逆に、クローラ幅拡張時には、上記と逆の作業が行われる。連結ピン22を、トラックフレーム7の第2ピン孔27から上側の第1ピン孔26に入れ換えた状態でサイドフレーム10を外側へ移動させると、連結ピン22が連結リンク20の上面に接しつつ連結リンク20に対して相対的に移動して連結リンク20の拡張位置用ピン孔23及び下側の第1ピン孔26に自動的に落とし込まれる。
【0045】
このようにして、クローラ幅拡縮操作時のピン操作を第1ピン孔26と第2ピン孔27との間でのピン入れ換え操作の一度だけで済むようにしている。
【0046】
また、クローラ幅拡縮操作時には、保護カバー35の第1及び第2ピン用開閉蓋37,39のみを開けばよいので、質量の大きい保護カバー35全体を取り外す必要はない。
【0047】
また、作業者は、一切工具を使わずにクローラ幅拡縮操作時のピン操作を行える。
【0048】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる解体機1によると、連結リンク20の外周を保護カバー35で覆い、連結リンク20に沿う油圧配管16を保護する一方、クローラ幅拡縮操作時には、保護カバー35の第1及び第2ピン用開閉蓋37,39のみを開くことで、連結ピン22にアクセス可能としている。また、連結ピン22の上側の被係止部材40と第1連結ピン係止部材28又は第2連結ピン係止部材29との係合を解除した後に、第1ピン孔26又は第2ピン孔27から連結ピン22を抜き出すようにしている。このため、連結リンク20に沿う油圧配管16を保護する保護カバー35を備えた解体機1であっても、保護カバー35を外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行うことができるので、作業時間を大幅に短縮できると共に、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0049】
上記実施形態によれば、第1連結ピン係止部材28に第1係止用切欠28aを、第2連結ピン係止部材29に第2係止用切欠29aをそれぞれ上方が開口するように形成し、被係止部材40を、第1及び第2係止用切欠28a,29aに上方から嵌め込み可能に構成したことにより、連結ピン22を容易に上方からトラックフレーム7に係脱させてクローラ幅拡縮操作を行うことができる。
【0050】
上記実施形態によれば、連結ピン22を第1連結ピン係止部材28又は第2連結ピン係止部材29に作業者が手で係脱可能な抜け止めピン41で抜け止めしている。このため、工具を使わずに連結ピン22の抜き差しが行えるので、クローラ幅拡縮操作における工数及び負担をさらに削減することができる。
【0051】
上記実施形態によれば、クローラ式車両を破砕用アタッチメント5を有する解体機1としたことにより、保護カバー35で連結リンク20に沿う油圧配管16が確実に保護される。一方、第1及び第2ピン用開閉蓋37,39を開くことで、容易に連結ピン22にアクセスして連結ピン22が抜き差しできるようにしているので、連結リンク20に沿う油圧配管16を保護する保護カバー35を必須とする解体機1であっても、保護カバー35を外すことなく、容易にクローラ幅拡縮操作を行うことができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0053】
すなわち、上記実施形態では、クローラ式車両を解体機1としたが、油圧ショベルや、クローラクレーンとしてもよい。
【0054】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】クローラ幅拡張位置にあるときの連結ピン及びその周辺を示す斜視図である。
【図2】解体機の全体を示す側面図である。
【図3】保護カバー及びその周辺を示す斜視図である。
【図4】油圧モータとスイベルジョイントの間の油圧配管を示す斜視図である。
【図5】クローラ幅拡張位置にあるときのトラックフレーム及びサイドフレームの正面図である。
【図6】クローラ幅縮小位置にあるときのトラックフレーム及びサイドフレームの正面図である。
【図7】ピン用開閉蓋を開いて連結ピンを露出させた様子を示す平面図である。
【図8】図5のVIII部拡大側面図である。
【図9】図7のIX部拡大平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 解体機(クローラ式車両)
5 破砕用アタッチメント
7 トラックフレーム
10 サイドフレーム
12 クローラ
16 油圧配管
20 連結リンク
22 連結ピン
23 拡張位置用ピン孔
24 縮小位置用ピン孔
26 第1ピン孔
27 第2ピン孔
28 第1連結ピン係止部材
28a 第1係止用切欠
29 第2連結ピン係止部材
29a 第2係止用切欠
35 保護カバー
37 第1ピン用開閉蓋
39 第2ピン用開閉蓋
40 被係止部材
41 抜け止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックフレームの左右両側に、外周にクローラが装着されるサイドフレームが、左右のクローラ間隔が最大となるクローラ幅拡張位置とクローラ間隔が最小となるクローラ幅縮小位置との間で左右移動可能に設けられ、両サイドフレームがトラックフレームに対し、上記クローラ幅拡張位置及びクローラ幅縮小位置でそれぞれ連結リンクによって連結される、クローラ式車両において、
上記連結リンクには、
上記クローラ幅拡張位置で上記トラックフレームと連結するための連結ピンが挿入される拡張位置用ピン孔と、
上記クローラ幅縮小位置で上記連結ピンが挿入される縮小位置用ピン孔とが設けられ、
上記トラックフレームは、
上記クローラ幅拡張位置で上記拡張位置用ピン孔と合致する第1ピン孔と、
上記クローラ幅縮小位置で上記縮小位置用ピン孔と合致する第2ピン孔と、
上記第1ピン孔周縁から上方に延びる第1連結ピン係止部材と、
上記第2ピン孔周縁から上方に延びる第2連結ピン係止部材と、
を有し、
上記連結リンクの外周は、該連結リンクに沿う配管を保護し、上記連結ピンを上方から抜き差しするためのピン用開閉蓋を有する保護カバーで覆われ、
上記連結ピンの上側には、上記第1及び第2連結ピン係止部材に係止可能な被係止部材が設けられている
ことを特徴とするクローラ式車両。
【請求項2】
請求項1に記載のクローラ式車両において、
上記第1連結ピン係止部材には第1係止用切欠が、上記第2連結ピン係止部材には第2係止用切欠が、それぞれ上方が開口するように形成され、
上記被係止部材は、上記第1及び第2係止用切欠に上方から嵌め込み可能に構成されている
ことを特徴とするクローラ式車両。
【請求項3】
請求項2に記載のクローラ式車両において、
上記連結ピンは、上記第1連結ピン係止部材又は第2連結ピン係止部材に作業者が手で係脱可能な抜け止めピンで抜け止めされている
ことを特徴とするクローラ式車両。
【請求項4】
破砕用アタッチメントを備えた解体機である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のクローラ式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−284988(P2008−284988A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131445(P2007−131445)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】