説明

グラフィンロールトロールコーティング装置及びこれを用いたグラフィンロールトロールコーティング方法

【課題】熱伝達効率が高く、信頼度の高い伝熱管をより安価で製造する装置を提供する。
【解決手段】ロール・ツ・ロール方式により第1のローラ250から金属部材を前処理部400に供給し、金属部材をプラズマ410で表面処理し、前処理した金属部材をグラフィン合成部500に移動させて、金属部材表面にグラフィンを合成すると共にコーティングし、コーティングされた金属部材を第2ローラ300に巻いて回収するグラフィンロール・ツ・ロールコーティング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィンロールトロールコーティング装置及びこれを用いたグラフィンロールトロールコーティング方法、並びにグラフィンがコーティングされた金属部材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属管または金属板は、産業的に多様な用途で用いられている。特に、金属管または金属板は、伝熱管または伝熱板として用いることができる。伝熱管(heat−pipe)と、熱を効率的に伝えるためのパイプであって、本体の材料として、銅、ステンレス鋼、セラミックス、タングステンなどが用いられ、内壁は多空質のファイバなどが用いられる。また、内部の揮発性の物質として、メタノール、アセトン、水、水銀などが用いられる。
【0003】
前記伝熱管は、廃熱回収装置、空気調和及び冷凍システム、電子部品及び装置の冷却、太陽熱集熱機、電動機の冷却、局部的な暖房及び熱制御、除氷及び除雪、原子炉の冷却系統、人工衛星及び飛行体の熱制御などに用いられている。
【0004】
このように、伝熱管は、高密度の熱を効果的に移送させながら、運転所要動力を節減すると共に、装置の重量と体積を大幅に減少させるような利点を有する。
【0005】
最近、省エネルギー、代替エネルギーの開発及び活用、電子製品と電気装置の冷却及び小型化などを中心に、伝熱管に対する国内需要が増加している。
【0006】
これによって、金属管または金属板などの金属部材の表面処理を通じて、伝熱管または伝熱板として使用する場合、熱伝達の効率が優れており、信頼度の高い伝熱管をより安価で製造する方法が求められている。しかし、グラフィンのような物質を金属管または金属板などの金属部材の表面にコーティングすることで熱伝達の効率及び信頼度を向上させることについての報告はまだなく、さらに、グラフィンのような物質を金属管または金属板などの金属部材の表面にコーティングする連続的な工程及びこのための装置についての報告もまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題点を解決するために、本願は連続工程であるロールトロールコーティング方式に基づいたグラフィンロールトロールコーティング装置、及びこれを用いたロールトロールコーティング方法を提供する。しかし、本願が解決しようとする課題は前述の課題に限らず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するために、本願の一側面は、金属部材をロールトロール方式で供給するための第1のローラと;前記第1のローラを通じて供給された金属部材の表面処理のための前処理部と;前記前処理された金属部材の表面にグラフィンを合成すると共に、コーティングするためのグラフィン合成部と;前記グラフィン合成部を介する前記グラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で回収するための第2のローラと;を含む、グラフィンロールトロールコーティング装置を提供する。
【0009】
本願の別の側面は、前記装置を用いたグラフィンロールトロールコーティング方法であって、ロールトロール方式により第1のローラから金属部材を前処理部に供給し;前記第1のローラを通じて供給された金属部材を前処理部で表面処理し;前記前処理された金属部材をグラフィン合成部に移動させて、前記金属部材の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングし;前記グラフィン合成部を介する前記グラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で第2のローラに巻いて回収すること、を含む、グラフィンロールトロールコーティング方法を提供する。
【0010】
また、本願の別の側面は、前記グラフィンをロールトロールコーティングする方法を用いて、表面にグラフィンがコーティングされた金属部材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願のグラフィンロールトロールコーティング装置は、チャンバ状またはチューブ状をしながら前記チャンバまたはチューブが各々順次に連通されて、安定的な連続工程を提供することができ、金属部材のある一面または両面に良質のグラフィンを大量かつ低コストでコーティングすることができる。
【0012】
また、前記の本願のグラフィンロールトロールコーティング装置を用いて製造された、表面にグラフィンコーティングされた金属部材は、耐化学/耐腐食性が優れており、流体抵抗を改善することができ、熱伝達効率の向上、高効率の発熱(防熱)、及び電気伝導の改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願の一具現例に係る水平配列されたチャンバ状のグラフィンロールトロールコーティング装置を示す断面図である。
【図2】本願の一具現例に係る垂直配列されたチャンバ状のグラフィンロールトロールコーティング装置を示す断面図である。
【図3】本願の一具現例に係るチューブ状のグラフィンロールトロールコーティング装置の概略図である。
【図4】本願の一実施例に係る垂直配列されたチューブ状のグラフィンロールトロールコーティング装置を示す概略図である。
【図5】本願の一実施例に係る水平配列されたチューブ状のグラフィンロールトロールコーティング装置を示す図面である。
【図6】本願の一実施例に係るグラフィンがコーティングされた金属部材を示す図面及び、前記金属部材上にグラフィンコーティング有無を示すラマンスペクトラムを用いた分析結果である。
【図7】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管内を流れる流体抵抗を評価するための流体の接触角(contact angle)を分析した結果である。
【図8】本願の一実施例及び比較例に係る流体及び大気雰囲気下でグラフィンフィルムがコーティングされた金属層の表面の耐化学/耐腐食性を評価した結果である。
【図9A】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【図9B】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【図9C】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【図9D】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【図9E】本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【図10】本願の一実施例に係る伝熱管または伝熱板の応用例を示す写真である。
【図11】本願の一実施例及び比較例に係るCu/Niワイヤーの表面及び直径の変化を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図12】本願の一実施例及び比較例に係る金属ワイヤーの比抵抗を測定する方法及びその測定機構を示す図面である。
【図13】本願の一実施例及び比較例に係るCu/Niワイヤーの直径による比抵抗を示すグラフである。
【図14】本願の一実施例及び比較例に係るCuワイヤーの表面及び直径の変化を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図15】本願の一実施例及び比較例に係るCuワイヤーの直径による比抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本願が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本願の具現例及び実施例を詳述する。
【0015】
しかし、本願は様々な相違した形態で具現される可能性があり、ここで説明する具現例及び実施例に限られない。そして、図面で本願を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略しており、明細書の全体を通じて類似している部分に対しては同様な図面符号を付している。
【0016】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする場合、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
この明細書で使われている程度の用語の「約」、「実質的に」などは、言及されている意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される時、その数値から、またはその数値に近い意味として使われており、本願の理解のため、的確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0018】
この明細書で使われている「グラフィン」という用語は、複数の炭素原子が共有結合で繋がり合ってポリシクリック芳香族分子を形成するグラフィンが、層またはシート状を成したものであって、前記共有結合で繋がり合った炭素原子は基本繰り返し単位として6サイクルを形成するが、5サイクル及び/または7サイクルをさらに含むこともできる。よって、前記グラフィンは、互いに共有結合した炭素原子(通常sp結合)の単一層に示される。前記グラフィンは、様々な構造を有することができ、このような構造はグラフィン内に含まれることができる5サイクル及び/または7サイクルの含量によって異なる。前記グラフィンは、前述のようなグラフィンの単一層からなり得るが、これらが多数積層し合って複数層を成すことも可能であり、通常前記グラフィンの側面の末端部が水素原子に飽和されることができる。
【0019】
この明細書で使われている用語の「金属部材」は、当業界で通常的に使われている金属素材の部材を意味する。例えば、金属管、金属板、金属シート、金属ワイヤー、または金属フォイルなどを含むことができ、前記金属部材の形状及び/または構造として当業界で公知されているものを別に制限なしで使用することができる。
【0020】
本願の一側面に係るグラフィンロールトロールコーティング装置は、金属部材をロールトロール方式で供給するための第1のローラと;前記第1のローラを通じて供給された金属部材の表面処理のための前処理部と;前記前処理された金属部材の表面にグラフィンを合成すると共に、コーティングするためのグラフィン合成部と;前記グラフィン合成部を介するグラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で回収するための第2のローラと;を含むことができる。前記グラフィンロールトロールコーティング装置は、金属部材の加工法である圧出、引抜及び圧延工程の後続工程で行うことができ、前記装置を用いて前記金属部材の表面にグラフィンコーティング工程を行うことができる。
【0021】
例示的な具現例において、前記前処理部は、前記第1のローラを介して供給される金属部材の表面上に、プラズマ、レーザー、予熱及びこれらの組み合わせからなる群から選択される工程を行うためのものであることができるが、これに限るものではない。
【0022】
例示的な具現例において、前記金属部材は、金属管、金属板、金属シート、金属ワイヤー、または金属フォイルを含むことができるが、これに限るものではない。
【0023】
例示的な具現例において、前記前処理部及び前記グラフィン合成部は、各々チャンバ状のものを含むことができるが、これに限るものではない。
【0024】
例示的な具現例において、前記チャンバ状の前処理部及び前記チャンバ状のグラフィン合成部は隔壁をさらに含むことができるが、これに限るものではない。
【0025】
例示的な具現例において、前記チャンバ状の前処理部及び/または前記チャンバ状のグラフィン合成部の入口及び/または出口にローラをさらに含むことができるが、これに限るものではない。一具現例において、前記ローラは冷却ローラであることができる。
【0026】
例示的な具現例において、前記チャンバ状のグラフィン合成部は、一つまたは複数のガスノズルを含むことができるが、これに限るものではない。例示的な具現例において、前記チャンバ状のグラフィン合成部は、温度調節が可能な熱原を含むことができる。
【0027】
例示的な具現例において、前記グラフィンがコーティングされた金属部材を前記第2のローラに回収する前に冷却するための冷却部をさらに含むことができるが、これに限るものではない
【0028】
一具現例において、前記第1のローラ、前記前処理部、前記グラフィン合成部、前記冷却部及び前記第2のローラは垂直または水平に配置されるものであることができるが、これに限るものではない。
【0029】
例示的な具現例において、前記前処理部、前記グラフィン合成部及び前記冷却部は、各々チューブ状のものであって、互いに連通するように配置されるものであることができるが、これに限るものではない。
【0030】
例示的な具現例において、前記第1のローラと前記前処理部の間に形成された第1のガス導入部と、前記前処理部と前記グラフィン合成部の間に形成された第2のガス導入部と、前記グラフィン合成部と前記冷却部の間に形成された第3のガス導入部と、前記冷却部と前記第2のローラの間に形成された第1のガス排出部と、をさらに含むことができるが、これに限るものではない。
【0031】
例示的な具現例において、前記第1のローラは前記金属部材の内部にガスを供給するための第4のガス導入部が備えられており、前記第2のローラは前記金属部材の内部からガスを除去するための第2のガス排出部が備えられていることができるが、これに限るものではない。
【0032】
例示的な具現例において、前記前処理部及び前記グラフィン合成部には温度調節が可能な加熱ジャケットが各々備えられており、前記冷却部には温度調節が可能な冷却ジャケットが備えられていることができるが、これに限るものではない。
【0033】
以下、本願のグラフィンロールトロールコーティング装置、グラフィンロールトロールコーティング方法、及びグラフィンがコーティングされた金属部材に対する具現例及び実施例について、図面を用いて詳述する。しかし、本願はこれに限るものではない。
【0034】
本願のグラフィンロールトロールコーティング装置700は、金属部材150をロールトロール方式で供給するための第1のローラ250と;前記第1のローラを通じて供給された金属部材の表面処理のための前処理部400と;前記前処理された金属部材の表面にグラフィンを合成すると共に、コーティングするためのグラフィン合成部500と;前記グラフィン合成部を介するグラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式に回収するための第2のローラ300と;を含むことができる(図1〜図5を参照)。一具現例に、前記グラフィンロールトロールコーティング装置は、前記グラフィンがコーティングされた金属部材を前記第2のローラに回収する前に冷却するための冷却部600をさらに含むことができる。前記金属部材150は、前記第1のローラ250と前記第2のローラ300の駆動により、前記第1のローラ250から前記前処理部、前記グラフィン合成部及び必要に応じて前記冷却部を順次に介してグラフィンがコーティングされて、前記第2のローラ300により回収される。
【0035】
本願のロールトロールコーティング装置は、垂直または水平に配置することができる(図1〜図5を参照)。前記金属部材が高温で変形及び/または曲げ現像を最小化するか防止し、熱の勾配を安定的に維持させるために、前記装置を垂直(図2〜図4を参照)に配置するのが効果的である。また、前記垂直に配置されたロールトロールコーティング装置は、金属部材上にグラフィン成長用の金属触媒を蒸着してグラフィンをコーティングする場合、前記触媒層の大面積結晶化が可能であり、より容易に前記金属部材上にグラフィンをコーティングすることができる。さらに、前記装置を水平(図1、図5を参照)に配置する場合、特別な治具を製作することで安定的な移送が可能になり、これによって前記グラフィンロールトロールコーティング装置を作動させることができる。
【0036】
前処理部400では、前記第1のローラを介して供給される金属部材の表面上に、プラズマ、レーザー、予熱及びこれらの組み合わせからなる群から選択される工程が行われることができる。例えば、必要に応じて、プラズマ工程、レーザー工程、または予熱工程を順次に進行させることができる。
【0037】
前記プラズマ工程及び前記レーザー工程は、グラフィンが合成される金属部材または金属触媒上の不純物を除去するために使うことができる。この場合、前記プラズマ工程及び/または前記レーザー工程により除去された不純物の移動を防ぐために、前記前処理部内のプラズマ工程とレーザー工程との間に隔壁430を設けることができる。また、前記前処理部の入口及び/または出口に、外部の空気の輸出入を遮るために、隔壁がさらに形成されることができる。
【0038】
前記予熱工程は、前記グラフィン合成部でグラフィンの合成及び/またはコーティングの前に、化学気象蒸着が容易に発生できる温度で予め金属部材を加熱する工程をいう。前記予熱工程は、より好適には、前記グラフィン合成部で高温化学気象蒸着法を用いる時に使えられるが、これに限るものではない。前記予熱工程により、前記金属部材は前記グラフィン合成部で化学気象蒸着が容易に発生できる温度と同一に、またはそれより低い温度で予熱されることができる。前記温度は、例えば約300℃〜約2000℃、または約300℃〜約1000℃、または約300℃〜約500℃を含む。
【0039】
図1、図2を参照すると、本願の一具現例に係るロールトロールコーティング装置において、前記前処理部400、前記グラフィン合成部500は各々チャンバ状を有するものであることができる。前記チャンバ状のロールトロールコーティング装置は、金属部材150、より好適には、金属板、金属シート、または金属フォイルなどの表面上にグラフィンをコーティングする場合に使われることもあるが、これに限るものではない。
【0040】
また、本願のグラフィンロールトロールコーティング装置は、安定的な連続工程を行うために、コーティング工程の間に低圧または真空雰囲気を維持することができる。このために、前処理部400、グラフィン合成部500は各々順次に連通されるチャンバ状を成すことができる。
【0041】
グラフィン合成部500は、前記前処理された金属部材の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングさせる。前記グラフィンの合成は、当業界で通常使われる化学気象蒸着法(chemical vapor deposition)であれば制限なしで使えるし。例えば、熱化学気象蒸着法(thermal chemical vapor deposition;T−CVD)、急速熱処理化学気象蒸着法(rapid thermal chemical vapor deposition;RTCVD)、プラズマ化学気象蒸着法(plasma Enhanced chemical vapor deposition;PECVD)、誘導電流プラズマ化学気象蒸着法(inductively coupled enhanced chemical vapor deposition;ICPCVD)、有機金属化学気象蒸着法(metal organic chemical vapor deposition;MOCVD)、低圧化学蒸気蒸着(low pressure chemical vapor deposition;LPCVD)、常圧化学蒸気蒸着(atmospheric pressure chemical vapor deposition;APCVD)、またはLaser Heatingなどを使うことができるが、これに限るものではない。
【0042】
例示的な具現例において、前記グラフィンの合成とコーティングは、グラフィン合成部内のガスノズル510を通じて炭素ソースを含む反応ガスが注入され、前記グラフィン合成部で前記金属部材150の表面に化学気象蒸着法によりグラフィンが合成されてコーティングされるものであることができる。前記炭素ソースを含む反応ガスは、前記炭素ソースのみが存在するか、またはヘリウム、アルゴンなどのような不活性ガスと共に存在することもできる。また、前記炭素ソースを含む反応ガスは、前記炭素ソースと共に水素を含むことができる。水素は前記の表面を綺麗に維持して、気象反応を制御するために使えられる。容器全体の体積の1〜40vol%に使用可能であり、好適には10〜30vol%、より好ましくは15〜25vol%である。
【0043】
前記炭素ソースは、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、ブタン、ブタヂエン、ペンタン、ペンテン、サイクロペンタヂエン、ヘキサン、サイクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ポリマーなどのような炭素ソースを含むことができるが、これに限るものではない。
【0044】
前記炭素ソースを含む反応ガスを気象で前記グラフィン合成部に供給しながら温度を制御することができる熱原520により熱処理すると、前記炭素ソースに存在する炭素成分が結合して、前記金属部材150の表面で6角形の板状構造を形成しつつグラフィンが合成される。前記熱処理により、反応温度は約300℃〜約2000℃に維持される。前記のような方法により製造されるグラフィンは、単層または多層のものであることができる。
【0045】
グラフィン合成部内のガスノズル510は、一つまたは複数である可能性があり、必要に応じて前記グラフィン合成部内に前記ガスノズルを複数設けて、グラフィンの合成の程度を調節することができる。また、前記ガスノズルがチャンバ内の一側面、例えば前記チャンバ内の上面または下面のみに存在する場合、前記ガスノズルが形成されている一側面のみにグラフィンが合成及びコーティングされることができるが、前記ガスノズルを両側面に設けて、前記金属部材の両側面にグラフィンを合成及びコーティングすることができる。
【0046】
前記チャンバ状の前処理部400及び前記チャンバ状のグラフィン合成部500の入口及び/または出口にローラ220をさらに含むことができる。前記ローラは前記金属部材が高温で変形及び/または曲げ現象を最小化するか防止し、熱の勾配を安定的に維持する機能をすることができる。また、前記ローラは、前記金属部材を冷却させる冷却ローラであることができる。この場合、前記各々のチャンバの出口部に冷却ローラを位置させることで、さらに冷却部を設けず、前記金属部材を希望する温度まで冷却させることができる。
【0047】
図3〜図5は、本願の他の具現例に係るロールトロールコーティング装置であって、前記ロールトロールコーティング装置は、一つのチューブ状であることができる。前記チューブ状のロールトロールコーティング装置は、金属部材、より好ましくは、金属管、金属ワイヤーのグラフィンコーティングに使えられるが、これに限るものではない。
【0048】
前記ロールトロールコーティング装置は、各々のチューブ状のチャンバとして順次に連通される前処理部400、グラフィン合成部500及び冷却部600を備えることができ、前記前処理部、グラフィン合成部及び冷却部は、各々その外面に加熱ジャケット100または冷却ジャケット200を備えることで温度を制御することができる。また、前記ロールトロールコーティング装置は、金属管の内壁の表面にもグラフィンを合成すると共にコーティングし、金属管が巻かれているローラの駆動方向とは関係なくガスを安定的に供給することができるガス導入部を備えるローラを含むことができる。
【0049】
例示的な具現例において、前記チューブ状のロールトロールコーティング装置は、前記第1のローラ250と前記前処理部400との間に形成された第1のガス導入部10と、前記前処理部と前記グラフィン合成部との間に形成された第2のガス導入部20と、前記グラフィン合成部と前記冷却部との間に形成された第3のガス導入部30と、前記冷却部と前記第2のローラ300との間に形成された第1のガス排出部40と、をさらに含むことができる。ここで、前記第1のガス導入部10ないし第3のガス導入部30、及び第1のガス排出部40は、金属部材150の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングする工程に必要な各種ガスを導入するか排出する。
【0050】
前記チューブ状のロールトロールコーティング装置は、チャンバ状のロールトロールコーティング装置と同様に、垂直または水平に配置することができる。例えば、前記第1のローラ250、前記前処理部、前記グラフィン合成部、前記冷却部及び前記第2のローラ300は、垂直または水平に配置されるものであることができる(図4、図5を参照)。前記第1のローラ250、前記前処理部、前記グラフィン合成部及び前記第2のローラ300を垂直に配置する場合、高温で変形及び曲げ現象を防止し、熱の勾配を安定的に維持させることができる。前記装置を水平に配置する場合に、曲げ現象や高温で変形される現象を最小化するために、特別な治具の製作を通じて前記金属部材150を安定的に移送することができる。
【0051】
前記本願に係るグラフィンロールトロールコーティング装置700において、前記グラフィン合成部の内部または前記装置の内部は真空及び常圧基盤で稼動が可能であり、前記グラフィンロールトロールコーティング装置700が大型化する場合、金属部材の外部は常圧基盤で工程が行われ、金属部材の内部、例えば、金属管の内部は真空雰囲気でグラフィンが合成できるようにシステムを形成することができるが、本願はこれに限るものではない。
【0052】
例示的な具現例において、金属部材150を前記グラフィンロールトロールコーティング装置700内に導入するために、前処理部側の末端に備えられた閉塞部(図示せず)は、耐熱性が優れている高分子、例えば、PTFE(Polytetrafluoroethylene)系のゴムを用いて製造されたものを使用することができ、これを通じて、前記金属部材150の表面にコーティングされたグラフィンがスクラッチされること、またはガスが漏れることを防ぐことができる。
【0053】
例示的な具現例において、前記金属部材が内部に空いている空間を有する形態、例えば、金属管である場合、前記第1のローラ250は前記金属管の内部にガスを供給するための第4のガス導入部50が備えられており、前記第2のローラ300は前記金属管の内部からガスを除去するための第2のガス排出部60が備えられているものであることができる。前記第4のガス導入部50及び第2のガス排出部60は、前記金属管の内部の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングさせる工程のために使用されるものであって、前記第4のガス導入部50を通じて金属管が巻かれている第1のローラ250及び第2のローラ300の駆動方向とは関係なく注入されるガスを安定的に供給することができる。これと関連して、例えば、第4のガス導入部50の一末端部は、第1のローラ250に巻かれている金属管の一末端と、第1のローラ250の内部で柔軟性連結部材により連通するように設計されることができる。また、第2のガス排出部60の一末端部も第2のローラ300により巻かれる金属管の一末端と第2のローラ300内部で柔軟性連結部材により連通するように設計されることができる。
【0054】
本願の別の側面において、前記装置を用いた金属部材150にグラフィンをロールトロールコーティングする方法であって、ロールトロール方式により第1のローラから金属部材を前処理部に供給し;前記供給された金属部材を前処理部で表面処理し;前記前処理された金属部材をグラフィン合成部で移動させて前記金属部材の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングし;前記グラフィン合成部を介する前記グラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で第2のローラに巻いて回収すること;を含む、グラフィンロールトロールコーティング方法を提供することができる。
【0055】
例示的な具現例において、前記金属部材の表面上にグラフィンの合成とコーティングは、チャンバ状の前記グラフィン合成部内のガスノズルを通じて炭素ソースを含む反応ガスを注入して、前記金属部材の表面に化学気象蒸着法によりグラフィンが合成されてコーティングされるものであることができるが、これに限るものではない。
【0056】
例示的な具現例において、前記金属部材150は、その表面に形成されたグラフィン成長用金属触媒層を含むことができるが、これに限るものではない。
【0057】
例示的な具現例において、 前記グラフィン成長用金属触媒層は、Ni、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Si、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅(brass)、青銅(bronze)、白銅(white brass)、ステンレス鋼(stainless steel)、Ge及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものであることができるが、これに限られない。 一具現例において、前記金属部材150がCuを含み、前記グラフィン成長用金属触媒層はがNiまたはFeを含むことができるが、これに限るものではない。
【0058】
例示的な具現例において、前記グラフィンがコーティングされた金属部材を前記第2のローラに巻いて回収する前に冷却部に移動して冷却させることをさらに含むことができるが、これに限るものではない。
【0059】
例示的な具現例において、前記第1のローラ250と前記前処理部の間に形成された第1のガス導入部10を通じて還元ガスが注入されることができる。前記還元ガスは、例えば、水素ガスであることができるが、これに限るものではない。前記前処理部で予熱工程が行われる場合、前記グラフィン合成部の温度と同一にまたはそれより低い温度で予熱されることができる。
【0060】
例示的な具現例において、前記前処理部と前記グラフィン合成部の間に形成された第2のガス導入部20を通じて、グラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガスが注入され、前記グラフィン合成部で前記金属部材150の表面に化学気象蒸着法によりグラフィンが合成されてコーティングされるものであることができる。前記グラフィン合成部でのグラフィン合成とコーティング工程は、前記ロールトロールコーティング装置についての記載内容を全て含むことができ、便利のために重複記載は省略する。
【0061】
例示的な具現例において、前記第1のローラに備えられている第4のガス導入部を通じてグラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガスが前記金属部材、例えば、金属管の内部に注入され、前記グラフィン合成部を通過する時にさらに前記金属管の内部の表面にグラフィンが合成されてコーティングされるものであることができる。
【0062】
前記ガス注入部及びガス排出部は、前記グラフィンロールトロールコーティング装置700において、前記第1のローラ及び第2のローラが順方向/逆方向に回転しても、各種ガス供給ラインが独立的に動くように設計されることができる。
【0063】
例示的な具現例において、前記グラフィン合成部と前記冷却部の間に形成された第3のガス導入部30を通じてパージ用ガスが注入されるものであることができる。前記パージ用ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウムガスを使うことができるが、これに限るものではない。
【0064】
例示的な具現例において、前記冷却部と前記第2のローラ300の間に形成された第1のガス排出部40を通じて、前記前処理部、前記グラフィン合成部及び前記冷却部を介するガスが排出されるものであることができる。
【0065】
例示的な具現例において、前記第2のローラにより回収された前記金属部材150にコーティングされたグラフィンの表面に、グラフィン成長用の金属触媒層を形成し;前記グラフィン成長用の金属触媒層が形成された、グラフィンがコーティングされた金属部材150に対して、前記グラフィンロールトロールコーティング装置を用いてさらにグラフィンを合成及びコーティングすること;を含む工程を1回以上行って、前記グラフィンがコーティングされた金属部材にグラフィンをさらにコーティングして、多層グラフィンをコーティングすることができる。これを通じて、10層以上のグラフィンを金属部材上に保護膜として形成することができる。
【0066】
例えば、銅管を用いてその表面に単層グラフィンフィルムを合成及びコーティングした後、比較的に厚いグラフィン層を合成することができるニッケル金属などのようなグラフィン成長用の金属触媒層を電解めっきなどの方法で、前記銅管の表面にコーティングされたグラフィンフィルム上に蒸着した後、前記グラフィンロールトロールコーティング装置内に通過させて、10層以上のグラフィンを含むグラフィンフィルムを前記銅管の外壁にさらにコーティングすることでグラフィン保護膜を形成することができる。
【0067】
例示的な具現例において、前記金属部材150は、Ni、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Si、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅(brass)、青銅(bronze)、白銅(white brass)、ステンレス鋼(stainless steel)、Ge及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものであることができるが、これに限られない。
【0068】
例示的な具現例において、前記グラフィン成長用の金属触媒層は、Ni、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Si、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅(brass)、青銅(bronze)、白銅(white brass)、ステンレス鋼(stainless steel)、Ge及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものであることができるが、これに限られない。
【0069】
例示的な具現例において、前記グラフィン成長用の金属触媒層は、薄膜または厚膜であることができるが、これに限るものではない。前記グラフィン成長用の金属触媒層が薄膜である場合、その厚さは1NM〜1000NMであるものを含むことができるが、これに限るものではない。また、前記グラフィン成長用の金属触媒層が厚膜である場合、その厚さは0.01MM〜5MMであるものを含むことができるが、これに限るものではない。
【0070】
本願の別の側面において、グラフィンがコーティングされた金属部材150を提供することができる(図6を参照)。前記グラフィンがコーティングされた金属部材150は、そのある一面または両面のいずれも単層または多層のグラフィンでコーティングされたものであることができる。前記グラフィンがコーティングされた金属部材150は、前記のようなグラフィンロールトロール工程によりグラフィンがコーティングされたものであって、ロール状で提供されることができる。
【0071】
例示的な具現例において、前記金属部材150のうち、金属管または金属板は伝熱管または伝熱板であることができるが、これに限るものではない。このような伝熱管または伝熱板は、電気、空調、機械及び宇宙工学分野で広く使われている熱伝達システムとして使用されるものであることができる。本願によりその表面にグラフィンがコーティングされた伝熱管または伝熱板を用いて前記のような熱伝達システムを製造すると、熱伝達効率を向上させることができる。
【0072】
図7は、本願の一実施例及び比較例に係る銅伝熱管内に流れる流体抵抗を評価するための流体の接触角(contact angle)に対する分析の結果であって、銅伝熱管試片それぞれの表面に対する写真である。
【0073】
接触角の分析のために、試片は3種類としており、図7において、(a)前記グラフィンロールトロールコーティング装置700によりグラフィンがコーティングされた銅伝熱管、(b)高温水素アニーリング(annealing)処理された銅伝熱管(還元処理)及び(c)銅伝熱管(多量の表面酸化層が形成されている)を示し、流体として水を使用している。前記グラフィンがコーティングされた銅伝熱管は、前記グラフィンロールトロールコーティング装置700を用いて製造された。具体的に、銅伝熱管をロールトロール方式により第1のローラ250から前記前処理部(約800℃)に供給し;第1のガス導入部10を通じて常圧で、または約180mTorrで約10sccm Hを流しながら、前記供給された銅伝熱管を前処理部(約800℃)で予熱させて;前記予熱された銅伝熱管を約1000℃で加熱されたグラフィン合成部に移動させて、前記銅伝熱管の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングし;前記グラフィンがコーティングされた銅伝熱管を冷却部に移動させて冷却し;前記冷却部を通過したグラフィンがコーティングされた銅伝熱管をロールトロール方式で第2のローラ300に巻いて回収することで、グラフィンがコーティングされた銅伝熱管を得た。前記グラフィンを合成すると共にコーティングする過程は、第2のガス導入部20を通じてグラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガス(CH = 30:10sccm)を約1.6Torrで約30分間供給してグラフィンを前記銅伝熱管の表面に合成すると共にコーティングした。その後、前記グラフィン合成部と前記冷却部との間に形成された第3のガス導入部30を通じてパージ用ガスでArガスを注入して、前記グラフィンがコーティングされた銅伝熱管を冷却した。必要に応じて、前記第1のローラ250に備えられた第4のガス導入部50を通じて、グラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガスが前記銅伝熱管の内部にさらに注入され、前記グラフィン合成部を介する時に前記銅伝熱管の外部及び内部の表面にグラフィンが合成されてコーティングされることができる。
【0074】
ここで、(a)と(c)の場合、純粋銅表面(b)に比べて表面の接触角(contact angle:C.A.)が約5度以上高くなっており、これは同一な流体が前記銅伝熱管内を移動する時に発生する抵抗の差異が存在することができることを示す。また、前記銅伝熱管の表面にグラフィンをコーティングした後、金属表面の熱処理を通じて表面の照度を改善することで、グラフィンフィルムがコーティングされた伝熱管内の流体抵抗を一層向上させることができる。
【0075】
図8は、本願の一実施例及び比較例に係る流体及び大気雰囲気下でグラフィンフィルムがコーティングされた銅伝熱管表面の耐化学/耐腐食性を評価した結果である。図7と同一な試片を使っており、光学顕微鏡の分析を通じて試片それぞれの表面の状態を比較した。実験条件は各試片を水に一日間浸けた後、大気雰囲気(常圧)で約10時間乾燥させた後、そのサンプルの表面を観察した。試片(a)の場合、酸化テストの前、後の表面に殆ど変化がなかった。試片(b)の場合、3つの試片のうち、酸化の程度が最も大きかった。特に、銅伝熱管の表面に雪花のような金属酸化浮遊物が多く観察された。一方、試片(c)の場合、その前に長時間に亘って銅伝熱管の表面に酸化層が自然に形成されていたため、(b)のような急速酸化反応は起こらなかった。これを通じて、金属部材150の製造工程と共に保管状態及び運転環境(温度、湿度など)が前記金属部材150の性能及び寿命に大きな影響を及ぼすことが確認できる。
【0076】
よって、本願は、酸化膜が金属部材150の表面上に生成される前に、前記金属部材150の表面にグラフィンをコーティングする方法、またはこのための装置を用いてグラフィンがコーティングされた金属部材150を提供することができる。前記グラフィンがコーティングされた金属部材150は、前記グラフィンが金属表面を保護することで、耐化学/耐腐食性を改善すると共に、流体と伝熱管内の表面抵抗を最小化することができる。
【0077】
図9A〜図9Eは、本願の一実施例及び比較例に係る伝熱管に対する高温流体(気体含み)の熱伝導の評価結果及びこのための実験装置である。
【0078】
図9A〜図9Eで使われた試片も図7で使われた試片と同一なものを使用しており、図9Aは(a)グラフィンがコーティングされた銅伝熱管及び(c)銅伝熱管(大量の表面酸化層が形成されている)に関するものであり、図9Bは、(b)高温水素処理を通じた銅伝熱管(還元処理されている)に関するものである。
【0079】
図9Aを参照すると、初期に水の供給温度は約100℃に固定させたが、前記銅伝熱管まで至る過程で、その温度が約41℃減少した。しかし、伝熱管の入口の温度が(a)と(c)が同一に約59℃を維持しているため、熱伝達特性の評価結果に及ぼす影響は少ないと判断される。
【0080】
熱画像カメラ(thermal image camera)を通じた熱伝達実験のために、流体を前記銅伝熱管に約60秒間供給した。温度分布を比較するために、流体供給後、約20、約40、約60秒で各々に対する温度差をTesto IRsoftプログラムを用いて分析した。これを通じて、全時間領域帯で互いに異なる二つの伝熱管の温度差が約5℃で一定な差が発生していることが確認できた。よって、この実験結果を通じて、グラフィンがコーティングされた伝熱管の場合、グラフィンがコーティングされていない伝熱管に比べて熱伝達効率が大きく向上していることが確認できた。さらに、高温領域(約300℃以内)の流体熱伝達の側面ではその偏差がさらに大きくなると予想される。
【0081】
図9Bを参照すると、初期の水の供給温度は約100℃に固定させたが、前記銅伝熱管まで至る過程で、前述の通り、温度が約41℃減少した。よって、伝熱管の入口の温度が(a)、(b)、(c)が同一に約59℃を維持した。そして、各々の伝熱管に対する瞬間的な温度変化を確認するために、伝熱管に約60秒間水を供給した後、水の供給を中止させた。温度分布を比較するために、流体を供給した後、約30秒、約60秒、そして水の供給を中止した後、約60秒が経った以後に、各々に対する温度差をTesto IRsoftプログラムを用いて分析した。熱画像カメラで分析した結果を通じて、全時間領域帯でグラフィンがコーティングされた伝熱管のみに対して熱伝達特性が大きいという差異が発生していることが確認できる。
【0082】
本願によるグラフィンがコーティングされた伝熱管は、従来の伝熱管より約8%以上熱伝達効率が向上することと予想される。
【0083】
このような解釈技法に基づいて、図9C及び図9Dは、高温の気体を伝熱管内に流しながら伝熱管内外部の特定の部位に対する温度変化を測定するために設けた実験装置を示している。前述の方法より詳細な解釈をするために、伝熱管の入口と出口及び中心部の2つの部位に熱伝帯を設け、リアルタイムでデータを取得できるようにシステムを構成した。さらに、熱画像カメラを用いて同時に温度分布を観測した。
【0084】
熱伝帯を用いたリアルタイム温度データの取得結果、グラフィンコーティング前/後の伝熱管表面の温度変化をみると、ラフィンをコーティングした伝熱管がグラフィンをコーティングしていない伝熱管に比べて熱伝達効率が最大約8.6%増加したことが図9Eの(B)グラフから確認できる。さらに、回収される熱温度の分布を分析した結果、図9Eの(D)グラフに示すように、グラフィンをコーティングした伝熱管で、そうでない伝熱管に比べて約7.6%回収熱効率が増加したことが確認できた。
【0085】
よって、グラフィンがコーティングされた伝熱管の場合、熱拡散が速いため、急速加熱及び急速冷却システムに広く活用することができる。図10は、本願の一実施例に係る伝熱管または伝熱板を示している。
【0086】
図11は、本願の一実施例及び比較例に係るCu/Niワイヤーの表面及び直径の変化を電子顕微鏡で観察した写真である。より具体的には、図11の(a)は比較例であって、Cu/Niワイヤーを、図11の(b)は高温水素アニーリング(annealing)処理を通じたCu/Niワイヤーを、図11の(c)は本願の一実施例に係るグラフィンがコーティングされたCu/Niワイヤーを、電子顕微鏡で観察した写真である。前記各々の処理によるCu/Niワイヤーの直径の変化を以下の図1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
前述のそれぞれ異なるように処理された3つのCu/Niワイヤーを4プローブ法(4-point probe; 図12の(a)を参照)により、各々のワイヤーの抵抗を測定した。図12の(b)は、本願で用いる4プローブ機器の写真である。図13に示すように、(a)一般的なCu/Niワイヤーを基準にして、同一の直径を有するCu/Niワイヤーに対して、(b)高温水素アニーリング(annealing)処理、または(c)グラフィンをコーティングした場合、前記ワイヤーに対する抵抗の変化(variation)を測定した。その結果、(b)高温水素アニーリング(annealing)処理されたCu/Niワイヤーは、(a)一般的なCu/Niワイヤーより比抵抗が多少高くなっており、(c)グラフィンがコーティングされたCu/Niワイヤーの比抵抗は、(a)一般的なCu/Niワイヤーより比抵抗が低くなっていることが分かりました。また、前記Cu/Niワイヤーの直径が大きいほど、前記グラフィンがコーティングされたCu/Niワイヤーの比抵抗が低くなり、その結果、電気的な特性が最大47%まで向上したことが分かりました。
【0089】
図14は、 本願の一実施例及び比較例に係るCuワイヤーの表面及び直径の変化を電子顕微鏡で観察した写真である。より具体的に、図14の(a)は比較例であって、何の処理もしていないCuワイヤーを、図14の(b)は高温水素アニーリング(annealing)処理を通じたCuワイヤーを、図14の(c)は本願の一実施例に係るグラフィンがコーティングされたCuワイヤーを、電子顕微鏡で観察した写真である。前記それぞれの処理によるCuワイヤーの直径の変化を以下の表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
図15は、前述のそれぞれ異なるように処理された3つのCuワイヤーの比抵抗を示すグラフである。図15に示すように、(b)高温水素アニーリング(annealing)処理されたCuワイヤーは、前記高温水素アニーリング(annealing)処理されたCu/Niワイヤーとは異なって、(a)一般的なCuワイヤーより比抵抗が多少低くなっており、(c)グラフィンがコーティングされたCuワイヤーの比抵抗は、前記(a)と(b)の中で最も低くなっていることが分かりました。また、前記Cuワイヤーの直径が小さいほど、前記グラフィンがコーティングされたCuワイヤーの比抵抗が小さくなり、その結果、 電気的な特性が最大32%まで向上したことが分かりました。
【0092】
本願による前記グラフィンにコーティングされた金属部材は、伝熱管または伝熱板として広範囲な産業領域の伝熱管システムに適用することができる。例えば、大きくは電気、電子、空調、機械、宇宙工学、油空圧金属基盤のパイプシステム及び建築冷・暖房などであり、より詳細には、電力管、電子回路、発電気、変圧器などの冷却用途、電子部品及び装置の冷却用途、廃熱回収装置、金属切断機などの冷却用途、電動機の冷却用途、空気調和及び冷凍システム、太陽熱集熱機、局部的な暖房及び熱制御、除氷及び除雪、原子炉の冷却系統、宇宙船搭載機、宇宙服の温度制御、人工衛星及び熱制御分野など、多様な分野に広く使うことができる。
【0093】
以上、実施例を通じて詳細に説明したが、本願は前記実施例に限らず、様々な形態に変形することができ、本願の技術的思想の範囲内で、当分野において通常の知識を有する者が多様な変形をすることができるのは明らかである。
【符号の説明】
【0094】
10 第1のガス導入部
20 第2のガス導入部
30 第3のガス導入部
40 第1のガス排出部
50 第4のガス導入部
60 第2のガス排出部
100 加熱ジャケット
150 金属部材
200 冷却ジャケット
220 ローラ
250 第1のローラ
300 第2のローラ
400 前処理部
410 プラズマ
420 レーザー
430 隔壁
500 グラフィン合成部
510 ガスノズル
520 熱原
600 冷却部
700 グラフィンロールトロールコーティング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材をロールトロール方式で供給するための第1のローラと;
前記第1のローラを通じて供給された金属部材の表面処理のための前処理部と;
前記前処理された金属部材の表面にグラフィンを合成すると共に、コーティングするためのグラフィン合成部と;
前記グラフィン合成部を介するグラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で回収するための第2のローラと:
を含む、グラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項2】
前記グラフィンがコーティングされた金属部材を前記第2のローラに回収する前に冷却するための冷却部をさらに含む、請求項1に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項3】
前記第1のローラ、前記前処理部、前記グラフィン合成部、前記冷却部及び前記第2のローラは、垂直または水平に配置されるものである、請求項2に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項4】
前記前処理部は、前記第1のローラを介して供給される金属部材の表面上に、プラズマ、レーザー、予熱及びこれらの組み合わせからなる群から選択される工程が行われるものである、請求項1から3の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項5】
前記金属部材は、金属管、金属板、金属シート、金属ワイヤー、または金属フォイルを含むものである、請求項1から4の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項6】
前記前処理部及び前記グラフィン合成部は、各々チャンバ状を有するものである、請求項1から5の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項7】
前記チャンバ状の前処理部及び前記チャンバ状のグラフィン合成部の少なくとも一方は隔壁をさらに含むものである、請求項6に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項8】
前記チャンバ状の前処理部及び前記チャンバ状のグラフィン合成部の少なくとも一方の入口及び出口の少なくとも一方にローラをさらに含む、請求項6または7に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項9】
前記チャンバ状のグラフィン合成部は、一つまたは複数のガスノズルを含むものである、 請求項6から8何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項10】
前記チャンバ状のグラフィン合成部は、温度調節が可能な熱原をさらに含むものである、請求項6から9の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項11】
前記前処理部、前記グラフィン合成部及び前記冷却部は、各々チューブ状を有するものであって、互いに連通するように配置されるものである、請求項2に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項12】
前記第1のローラと前記前処理部の間に形成された第1のガス導入部と、前記前処理部と前記グラフィン合成部の間に形成された第2のガス導入部と、前記グラフィン合成部と前記冷却部の間に形成された第3のガス導入部と、前記冷却部と前記第2のローラの間に形成された第1のガス排出部と、をさらに含む、請求項11に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項13】
前記第1のローラは、前記金属部材の内部にガスを供給するための第4のガス導入部が備えられており、前記第2のローラは、前記金属部材の内部からガスを除去するための第2のガス排出部が備えられている、請求項11または12に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項14】
前記前処理部及び前記グラフィン合成部には、温度調節が可能な加熱ジャケットが各々備えられており、前記冷却部には温度調節が可能な冷却ジャケットが備えられている、請求項11から13の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載のグラフィンロールトロールコーティング装置を用いるグラフィンロールトロールコーティング方法であって、
ロールトロール方式により第1のローラから金属部材を前処理部に供給し;
前記第1のローラを通じて供給された金属部材を前処理部で表面処理し;
前記前処理された金属部材をグラフィン合成部に移動させて、前記金属部材の表面にグラフィンを合成すると共にコーティングし;
前記グラフィン合成部を介する前記グラフィンがコーティングされた金属部材をロールトロール方式で第2のローラに巻いて回収すること、を含む、
グラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項16】
前記グラフィンがコーティングされた金属部材を前記第2のローラに巻いて回収する前に、冷却部に移動して冷却させるものをさらに含む、請求項15に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項17】
前記金属部材は、その表面に形成されたグラフィン成長用金属触媒層を含むものである、請求項15または16に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項18】
前記金属部材及び前記グラフィン成長用金属触媒層の各々は、独立的にNi、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Si、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅(brass)、青銅(bronze)、白銅(white brass)、ステンレス鋼(stainless steel)、Ge及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものである、請求項17に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項19】
チャンバ状の前記グラフィン合成部内のガスノズルを通じて炭素ソースを含む反応ガスを注入して、前記金属部材の表面に化学気象蒸着法によりグラフィンが合成されて同時にコーティングされるものである、請求項15から18の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項20】
前記第1のローラと前記前処理部の間に形成された第1のガス導入部を介して還元ガスが注入される、請求項15から19の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項21】
前記前処理部と前記グラフィン合成部の間に形成された第2のガス導入部を通じて、グラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガスを注入し、前記グラフィン合成部で前記金属部材の表面に化学気象蒸着法によりグラフィンが合成されてコーティングされるものである、請求項15から20の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項22】
前記第1のローラに備えられている第4のガス導入部を通じてグラフィン合成のための炭素ソースを含む反応ガスが前記金属部材の内部に注入され、前記グラフィン合成部を通過する時にさらに前記金属部材の内部の表面にグラフィンが合成されてコーティングされるものである、請求項15から21の何れか1項に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項23】
前記グラフィン合成部と前記冷却部の間に形成された第3のガス導入部を通じてパージ用のガスが注入される、請求項16に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項24】
前記冷却部と前記第2のローラの間に形成された第1のガス排出部を通じて、前記前処理部、前記グラフィン合成部及び前記冷却部を介するガスが排出されるものである、請求項16に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項25】
前記第2のローラにより回収されたグラフィンがコーティングされた金属部材の表面に、グラフィン成長用の金属触媒層を形成し;前記グラフィン成長用の金属触媒層が形成された、グラフィンがコーティングされた金属部材に、前記グラフィンロールトロールコーティング装置を用いてさらにグラフィンを合成及びコーティングすること;を含む工程を1回以上行って、前記金属部材に多層グラフィンをコーティングするものを含む、請求項16に記載のグラフィンロールトロールコーティング方法。
【請求項26】
請求項15から25の何れか1項による方法で形成される、グラフィンがコーティングされた金属部材。
【請求項27】
前記金属部材は、伝熱管または伝熱板として使われるものである、請求項26に記載のグラフィンがコーティングされた金属部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−162877(P2011−162877A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237656(P2010−237656)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】