説明

グラフト化ポリオレフィンを修飾する方法、かかる修飾されたポリオレフィンを含む組成物及び物品

【課題】グラフト化ポリオレフィンを修飾するための方法、こうして修飾されたポリオレフィンを含む組成物及び物品
【解決手段】酸又は酸無水物基をグラフトされたポリオレフィンを修飾する方法であって、これらの基を、中和の際に有機酸(I)を放出する有機塩で少なくとも部分的に中和すると共に、前記グラフト化されたポリオレフィンの中和により誘導される有機酸(I)を、少なくとも一つの無機塩(2)と反応させることにより、前記グラフト化ポリオレフィンを修飾するための方法。上記方法により得られた(得ることができる)修飾されたポリオレフィン。(A)少なくとも一つのポリマーと、(B)上記方法により得られた(得ることができる)少なくとも一つの修飾されたポリオレフィンとを含有するポリマー組成物。上記修飾されたポリオレフィン又は組成物を含んでなる物品。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、グラクト化ポリオレフィンを修飾する方法に関し、また得られたポリオレフィンにも関する。
一般に、ポリマーによって、特にポリオレフィンによって屡々提示される問題は、その押出しによる加工の際の不充分な溶融強度である。
高い伸長粘度によって定義されるポリオレフィン(PE)、特にポピプロピレン(PP)の溶融強度は、押出し発泡、押出しブロー成形、熱成形及びブロー成形(特に3Dブロー成形)のような一定のタイプの加工には不充分であることが周知である。加えて、例えば発泡及び接着のような一定の用途については、粘度が時間の関数として増大する(特に指数関数的に)のが有利であることが立証され得る。この現象は、伸長硬化(EH)と称される。
この問題を解決するために提案された解決策は、PE又はPPの高分子構造を、これら高分子間に共有結合を形成することによって分岐させることからなっている。しかし、実際には、共有結合させることによって製造された分岐樹脂は、全て、加工に固有の剪断の影響下で分岐が劣化され易い。加えて、実質的に不可逆的な共有結合性の分岐(又は架橋)は、流れの分断をもたらし、最終製品の生産性及び/又は品質を制限する。
架橋による制限を伴うことなく高分子間の結合密度を増大させ得るために、分岐の実質的な部分を可逆的なイオン結合を介して導入することが可能である。これは、熱可塑性の維持を同時に達成しながら、溶融強度を増大することを可能にし、また正しく選ばれた条件下においてEHを得ることをも可能にする。
【0002】
こうして、Solvay名義の出願WO 00/66641は、「遊離の」(グラフト化されていない)グラフトモノマーが予め除去された、カルボニル及び/又は酸無水物を使用してグラフト化されたポリオレフィンが、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン及び遷移金属陽イオンを含む少なくとも一つの化合物で中和される方法を記載している。この方法は、高レベルのEHを有する非架橋樹脂(典型的には11%未満の、130℃でキシレンに不溶性の生成物含量を有する)を与える利点を有している。しかし、それは流動性を最適化するのが困難な樹脂を与える欠点、即ち、一定の用途については溶融強度が不充分な比較的流動性の(比較的高いMFIをもった)樹脂、又はMFIが小さ過ぎるか実質的にゼロの、もはや溶融加工できない樹脂を生じる欠点を有している。
加えて、この発明の好ましい変形例に従えば、中和反応の平衡を移動させるために、中和反応の生成物(中和剤として有機塩を使用する場合には有機酸)は、ストリップ又は脱ガスすることにより生成物から除去される。しかし、出願人は、中和副生成物の除去が困難であり、例えば酢酸のような有機酸の場合には不完全であることを認めた。次に、中和剤としての有機金属塩の使用は、伸長硬化の点で良好な結果を与える。また、一定の有機酸(例えば酢酸及び乳酸)は、不快な臭い、及び感覚刺激的な問題をもった最終生成物を導く可能性があることに留意すべきである。最後に、有機金属塩の使用は、一定の場合、美的観点から望ましくない黄色化を誘導し、この黄色化はその後の加工の際に強調される。
【発明の開示】
【0003】
従って、本発明の目的は、特に溶融強度、なかでも溶融粘度に関して改善された特性を示す、グラフト化ポリオレフィンを修飾する方法を提案することであり、一定の場合には、これらポリオレフィンの感覚刺激的特性、着色及び臭いの改善を可能にすることである。
この趣旨において、本発明は、酸又は酸無水物の基でグラフト化されたポリオレフィンを修飾する方法であって、これらの基を、中和の際に有機酸(I)を放出する有機塩で少なくとも部分的に中和すると共に、前記グラフト化されたポリオレフィンの中和により誘導される有機酸(I)を、少なくとも一つの無機塩(2)と反応させる方法[方法(P)]に関する。
【0004】
本発明に従う方法(P)によって得られた修飾ポリオレフィン[修飾ポリオレフィン(B1)]は、無機塩(2)の使用によって改善された特性を示す。事実、何よりも先ず、この無機塩(2)の使用は、上記で述べた黄色化の問題を是正することを可能にする。次に、無機塩(2)の有機酸(I)との反応は、第一に、ストリッピング又は脱ガスにより部分的に除去され得る無機塩(II)を形成し、第二に、当該方法の適正な機能を乱さず、しかも一定の場合には(反応体の選択に従って;下記参照)、その改善を可能にする有機塩(3)を形成する。前記有機酸が系から除去されるという事実は、同時に、感覚的刺激の問題を排除することを可能にする。加えて、この酸が除去されるという事実は、酸もしくは酸無水物官能基を中和させるように当該反応の平衡を移動させ、従ってこの中和反応を促進する。この利点(平衡反応の移動)は、(沈殿又は反応媒質中に存在する一定の化合物との化学反応によって)反応媒質から除去される有機塩(3)を生じるための反応体(有機塩(1)及び無機塩(2))の選択においても強調することができる。従って、幾つかの反応体の調節によって、中和反応を容易に促進することを可能にする。最後に、出願人は、有機塩の後に、又はこれと同時に無機塩を添加することが、無機塩の残留凝集物のサイズを小さくすることを可能にし、そうすることにおいて、得られた修飾ポリオレフィンの機械的特性を改善することを可能にすることを認めた。実際のところ、これら凝集体のサイズは、一般に500nm未満、又は300nm未満、更には100nm未満であり、これは前記塩が中和剤として単独で使用されるときに得られる無機塩の凝集体よりも明らかに微細である。
【0005】
本発明に従う方法において使用できるポリオレフィンは、2〜8の炭素原子を含む線型オレフィンのポリマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンであり、それらは、例えば遊離ラジカル法によって、酸もしくは酸無水物官能基をグラフトされる。これらのオレフィンは、好ましくは2〜6の炭素原子、特に2〜4の炭素原子を含む。それらは、上記オレフィンのホモポリマー、及びこれらオレフィンのコポリマー、特に、エチレン又はプロピレンと一以上のコモノマーとのコポリマー、及びこのようなポリマーのブレンドから選択することができる。該コモノマーは、上記で述べたオレフィン、4〜18の炭素原子を含むジオレフィン、例えば4-ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、及びエチリデンノルボルネン、1,3-ブタジエン、イソプレン、又は1,3-ペンタジエンから、及びスチレンモノマー、例えば スチレン及びα-メチルスチレンから有利に選択される。該コモノマーから形成された単位のポリオレフィン中における質量比は、有利には50質量%未満、好ましくは30質量%未満、特に好ましくは10質量%未満である。「ポリオレフィン」の用語は、単独での上記ポリマー及びそれらのブレンドを等しく意味するものであることが理解される。
好ましくは、ポリオレフィンは、エチレンのポリマー及び/又はプロピレンのポリマーから選択される(即ち、該ポリオレフィンは、エチレン及び/又はプロピレンから誘導された繰り返し単位を含んでいる)。特に好ましくは、該ポリオレフィンは、(i)エチレンホモポリマー、(ii)プロピレンホモポリマー、(iii)エチレン及びプロピレンから誘導された反復単位で構成されるコポリマー 、(iv)エチレン、プロピレン、及び4〜18の炭素原子を含むジオレフィンから誘導された反復単位で構成される、EPDMゴムとして共通に称されるターポリマー、及び(V)上記ポリオレフィン相互のブレンドから選択される。プロピレンホモポリマー、及びプロピレンから誘導された反復単位で主に構成(質量で)され且つエチレンから誘導された反復単位で副次的に構成(質量で)されるコポリマーが最も好ましい。
【0006】
本発明による方法の特定の実施形態に従えば、ポリオレフィンはブロックコポリマー、好ましくはエチレン及び/又はプロピレンから誘導された反復単位を含んでなるブロックコポリマーである。ブロックコポリマーの例としては、ABジブロックコポリマー及びABAトリブロックコポリマーが挙げられ、ここでのAブロックはポリスチレンホモポリマーのブロックであり、Bブロックは、第一にエチレンから誘導された反復単位で構成され、第二にプロピレン及び/又は4〜18の炭素原子を含んでなるジオレフィン(例えばブタジエン)から誘導された反復単位で構成されるコポリマーのブロックであり、該ジオレフィンブロックは任意に水素化される(例えば、ブタジエンから誘導された反復単位はブチレン反復単位に水素化されてよい)。本発明による方法を実施するこの特定の方法に従えば、特に、エチレン及びプロピレン以外のコモノマーから形成された単位の質量比は、有利には少なくとも10質量%、好ましくは、少なくとも20質量%であり;更に、それは75%未満、好ましくは50質量%未満である。
本発明に従えば、当該グラフト化されたポリオレフィンは、好ましくは半結晶性である。即ち、それは少なくとも一つの融点を有する。
【0007】
これらポリオレフィンにグラフトされる酸又は酸無水物の基は、一般には不飽和のモノもしくはジカルボン酸及びその誘導体、並びに不飽和のモノもしくはジカルボン酸無水物及びその誘導体から選択される。これらの基は、好ましくは3〜20の炭素原子を含んでいる。典型的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロトン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。無水マレイン酸が最も好ましい。特に、それはエチレン及び/又はプロピレンのポリマーの場合に良好な結果をもたらす。
グラフトされる酸又は酸無水物の基の量は、一般的には、グラフト化ポリオレフィンの特性(溶融強度及びEH)における改良を可能にするのに十分な量である;それは、一般的にはポリオレフィンに対して0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、更に良好には0.03質量%以上である。しかし、実際には、この量は一般的に2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、更に良好には1.0質量%以下である。事実、この酸又は酸無水物基のグラフト化は、一般にラジカル発生剤によって開始され、その量は、プロピレンポリマーの場合には過剰に流動性の樹脂を扱わなければならないのを回避するように制限され、又はエチレンンポリマーの場合には充分に流動的でない樹脂を扱わなければならないのを回避するように制限される。通常使用されるラジカル発生剤としては、t−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t−ブチル)ペルオキシド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンが挙げられる。2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン(DHBP)は、本発明による方法において良好な結果を与えるグラフト化ポリオレフィンを生じる。
【0008】
本発明に従う方法において使用できるグラフト化ポリマーは、通常は、エチレン及び/又はプロピレンのホモポリマー及びコポリマーから選択することができ、その溶融流動指数(MFI)は1以上、好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。しかし、これら樹脂のMFIは、一般には5000dg/分以下、好ましくは4000dg/分以下、特に好ましくは3000dg/分以下である。ポリオレフィンのMFIは、プロピレンポリマーについてはASTM規格D1238(1986)に従って、2.16kgの加重下に230℃で測定され、またエチレンポリマーについてはISO規格1133(1991)に従って、5kgの加重下に190℃で測定される。
本発明に従うグラフト化ポリオレフィンは、好ましくは、例えば500ppm以下、更に400ppm以下、更に好適には200ppm以下の、僅かな遊離モノマーしか含まない。
【0009】
本発明によれば、酸又は酸無水物基の中和は、有機塩を含む少なくとも一つの中和剤を用いて行われる。好ましくは、この有機塩は、加工温度において液状の塩である。出願人は実際に、このような塩が、反応性においてより良好な結果を生じることを認めた。通常の加工温度で液状である塩の例は、酢酸Li、蟻酸Li(融点(Tm)はそれぞれ53〜56℃及び94℃)、酢酸Mg(Tm=72〜75℃)、蟻酸K(Tm=165〜168℃)、酢酸Zn及びステアリン酸Zn(Tm=237℃及び128〜130℃)、酢酸Cu(Tm=115℃)、乳酸Na及び蟻酸Na(Tmは、それぞれ周囲温度未満及び261℃)、酢酸アンモニウム及び蟻酸アンモニウム(Tm=112〜114℃及び119〜121℃)である。酢酸Zn及び乳酸Naは、特に、それぞれエチレン及び/又はプロピレンのポリマーについて良好な結果を与える。
本発明に従う方法において、有機塩及び無機塩は、同時法又は遅延法で導入することができる。有機塩が乳酸Naのときは同時導入が好ましいが、酢酸Znの場合は遅延導入(有機塩の次に無機塩)が好ましい。これは、後者の場合、pHが4を越える水溶液中では不安定であり(Zn(OH)2の沈殿)、従って、塩基性溶液ではなく酸性溶液中に導入するのが好ましいからである。
【0010】
添加される有機塩の量は、その性質、グラフト化ポリオレフィンの性質、及び修飾ポリオレフィンの想定される用途(従って、その望ましい特性)に依存する。当業者は、これらのパラメータに従って、塩の量を実験により容易に最適化することができる。しかし、有機塩は一般に、酸又は酸無水物基に対するほぼ化学量論値の量で使用される。プロピレンポリマー類の場合、添加される有機塩の量は、一般には酸もしくは酸無水物官能基の数に対して0.5モル当量(mol.eq.)以上、更に0.75モル当量以上であり、また一定の場合には1モル当量以上であろう。エチレンポリマー類の場合、この量は、一般には3モル当量以下、又は2モル当量以下、好ましくは1.5モル当量以下であろう。
有機塩は、一般に水溶液の形態で、グラフト化されたポリオレフィンの中に導入されるが、これは酸無水物官能基をグラフトされたポリオレフィンの場合に特に有利である。その理由は、該溶液中に含まれる水が、酸無水物を、実際に有機塩と反応して対応する有機酸を放出する形態である二酸へと加水分解するために使用されるからである。
【0011】
本発明による方法において、有機酸(I)を捕捉するように働く無機塩(2)は、好ましくは、先に説明した通り反応媒質から容易に除去される無機酸(II)及び有機塩(3)を生じるように、有機塩(1)及び有機酸(I)の性質に従って選択される。従って、好ましくは、無機酸(II)が非常に揮発性及び/又は加工温度で分解する不安定な酸であり、少なくとも一つのガス(例えば炭酸)を放出し、それによって有機酸(I)と無機塩(2)との間の反応の平衡を移動させることを保証するように留意されるであろう。同様に、好ましくは、何等かの手段によって、有機塩(3)が反応媒質から除去されるのを保証するように留意されるであろう(例えば、それは加工温度で不溶性であってよく、又は有機塩(1)と同一であってよく、その場合、それはグラフト化ポリオレフィン上の未だ中和されていない酸もしくは酸無水物官能基と反応するであろう)。
無機塩(2)は、加工温度において液状であってよい;しかし、固体塩を用いて良好な結果が得られている。本発明による方法のために適切な無機塩は、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、及び炭酸希土類金属、特に、炭酸Na及び炭酸Kである。特に使用する有機塩が酢酸Zn又は乳酸Naであるときには、炭酸Naが良好な結果を与える。それは、特に効果的な方法で、感覚刺激の問題を是正することが可能であり、また黄色化を低下させることが可能である。
【0012】
添加される無機塩(2)の量は、放出される有機酸を中和するために充分であるべきである。従って、グラフト化ポリオレフィンの酸もしくは酸無水物官能基の数に対して、5モル当量以下、更には4モル当量以下、好ましくは3モル当量以下の量が、好ましく添加されるであろう。
無機塩(2)もまた、好ましくは、適切な場合にはやはり酸無水物官能基に対する水の加水分解作用の利益を受けられるように、水溶液の形態でグラフト化ポリオレフィンの中に導入される。
有機酸及び無機塩の水溶液の濃度を最適化して、これら溶液をグラフト化ポリオレフィン中に導入する装置内での固体粒子の沈殿を防止すると同時に、水の量を可能な限り抑制する(後者はあとで除去されなければならないから)ために、注意が払われるであろう。
【0013】
本発明に従う方法を実施するために、この目的について既知の全ての装置(「リアクタ」)を使用することができる。従って、外部ミキサー、内部ミキサー又は静的ミキサーを用いて、区別なく作業することが可能である。内部ミキサー、中でもブラベンダー(Brabender;登録商標)バッチミキサー、及び押出し機のような連続ミキサーが最も適しており、これらは主として、バレル内で回転する少なくとも一つのスクリューからなっている。本発明に従う方法において使用できる押出し機は、自己洗浄型の単一スクリュー押出し機、又は対向回転式もしくは並向回転式のツインスクリュー型押出し機であってよい。自己洗浄型のツインスクリュー型押出し機が良好な結果を与える。
本発明のこの変形例の意味における押出し機は、少なくとも、以下の部品をその順序で含んでいる:供給ゾーン、溶融ゾーン、反応体注入ゾーン、均質化/反応ゾーン、脱ガスゾーン、及び溶融物を抽出するためのゾーン。好ましくは、脱ガスゾーンは二つの通気孔を備えている:即ち、第一は大気圧下での脱ガス用であり、第二は、減圧下でのより強い脱ガス用である。好ましくは、後者の脱ガスは高真空下で行われ、例えば10mbar未満、更には5mbar未満、最大値で2mbarが良好な結果を与える。有機塩は、一般には注入ゾーンに導入されるが、無機塩の遅延導入の場合には、後者は二つの脱ガス孔の間に導入されるのが有利である。抽出ゾーンの後には、顆粒機又は押出された材料に形態(例えばフィルム)を与える装置が続いてもよい。
本発明による方法を実施するために特に好ましい押出し機は、耐蝕性合金製である。特に好ましい合金は、主にニッケル又はコバルトからなる合金である。
【0014】
本発明による方法において、有機塩及び無機塩は、何れか既知の装置によって注入ゾーンの中に導入される。それらは、好ましくは上記で述べた耐蝕合金に基づく高圧注入機を使用して導入されるのが好ましい。
本発明による方法において、グラフト化ポリオレフィンは、何れか既知の手段によって、選択されたリアクタの中に供給される。押出し機場合、それは秤量供給機によって供給ゾーンの中に供給されてよい。或いは、もう一つの押出し機(例えば、その中で反応性押出しによりグラフトが行われるもの)を介して、溶融形態で供給されてよい。最後に、反応性押出しによるグラフト化及び該グラフト化されたポリオレフィンの修飾を、この同じ押出し機の中で生じさせることができる。しかし、後者の二つの変形例は、適切な場合には、グラフト化されたポリオレフィンから遊離のモノマーをオンラインで除去しなければならないので、製造速度が低下する欠点を有している。
本発明による方法が行われる温度は、一般には、グラフト化されたポリオレフィンの融点よりも高く、且つその分解温度よりも低い。好ましくは、グラフト化されたポリオレフィンが有機塩と反応されるゾーンでの該有機塩の融点よりも高い。この温度は、一般には少なくとも180℃、最も普通には少なくとも190℃、特に、少なくとも200℃である。一般に、該方法は400℃を越えない温度で行われ、最も普通には300℃を越えない温度、特に250℃を越えない温度で行われる。
本発明によるプロセスを実行するために必要な時間は、一般には10秒〜10分、更には30秒〜5分である。
【0015】
前記酸もしくは酸無水物基の中和を妨げない範囲で、当該プロセスの際に、何れかの時点で、一以上の通常のポリオレフィン添加剤、例えば安定剤、抗酸化剤、有機色素もしくは鉱物顔料及び充填材等を組み込んでよい。好ましくは、且つ正確には、該プロセスが押出し機の中で行われるときには、中和の妨害を回避するために、可能な添加剤は第二の脱ガスの後で且つ出口の直前において添加されるであろう。
本発明による方法を実施する好ましい方法においては、少なくとも一つの安定剤が当該プロセスの際に添加される。好ましくは、本発明による方法のこの変形例で使用される安定剤は、立体障害を受けたフェノール基を含む化合物、燐化合物及びそれらの混合物から選択される。これらは、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトール テトラキス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)、もしくはトリス−(2,4ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、又はペンタエリスリチル テトラキス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)及びトリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの好ましくは等量混合物である。好ましい安定剤は、1,3,5トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンである。
【0016】
本発明はまた、本発明による方法がその製造に特に適している、修飾されたポリオレフィン(PO)にも関する。出願人は実際に、本発明による方法が、伸長粘度(伸長硬化又はEH)及び理想的なMFI(与えられた値より低い)を特徴とする特に改善された溶融強度を示す一方、架橋が少ししかなく或いは架橋がなく(即ち、130℃のキシレン中に不溶性の生成物含量が1%未満)、中和度の高い、酸もしくは酸無水物基を含む修飾されたポリオレフィンを得ることを可能にすることを認めた。本発明のこの変形例に従えば、「伸長硬化」の用語は、溶融状態(特にPE樹脂については190℃、PP樹脂については230℃)で測定された、時間(秒で表された)の関数としての、また伸長速度(秒-1で表される)1についての、伸長粘度(kPaで表される)の指数関数的増加を意味する。一般に、本発明に従って修飾されたポリオレフィンの伸長粘度は、2〜3秒後に、20未満から数百、更には1000kPaにまで変化する。
この性質の組合せは異例であるが、これは第一に、高い添加量で可塑剤の役割を果たす有機酸(I)が、無機塩(2)との反応によって除去される事実に関連しており、また第二には、増大したイオン性凝集物の含量に関連している。
【0017】
従って、本発明はまた、上記で述べた方法によって得ることができる修飾されたポリオレフィンであって、金属イオンによって少なくとも部分的に中和される酸もしくは酸無水物基を含み、且つ
・130℃のキシレン中に不溶性の生成物含量が1%未満、
・時間の関数としての伸長粘度の指数関数的増加、
・6dg/分以下のMFI
を示す修飾されたポリオレフィン[修飾されたポリオレフィン(B2)]に関する。
130℃のキシレン中に不溶性の生成物含量は、何れか既知の方法によって決定することができる。適切な方法は、顆粒形態のポリオレフィン10gをキシレン300mL中に溶解し、全体を2時間還流させることからなっている。得られた溶液が完全に透明である(即ち、曇ったゾーンがない)とき、不溶性生成物の含量は1%未満である。
本発明による修飾されたポリオレフィンは、6dg/分以下、更には5dg/分のMFIを有する。しかし、それが加工可能なまま残るためには、それらのMFIは一般に、0.01dg/分以上、更には0.1dg/分以上であろう。
また、それらは一般に、40%以上、更には50%以上、一定の場合には70%以上の、酸もしくは酸無水物官能基の中和度を有する。しかし、この中和度は100%以下、一般には90%以下である。この中和度は、何れか既知の方法によって測定することができる。良好な結果を与える方法は、グラフト化された無水マレイン酸が、その加水分解されていない形態では約1790cm-1の吸収帯を示し、その加水分解形態では約1725cm-1の吸収帯を有し、その中和された形態では約1580cm-1の吸収帯を有するとの知識の下に、中和の前後において、IRによってサンプルを分析することからなっている。
【0018】
これらの樹脂は高い中和度を示すが、それらの陽イオン含量は低い。従って、所定の性質の陽イオンについては、それは1質量%以下であり、更には0.8質量%以下である(修飾されたポリオレフィンの全質量に対して)。この含量は更に、一定の場合、Na+イオンの場合は0.7%以下、またZn++イオンの場合は0.5%以下であってよい。
本発明に従って修飾されたポリオレフィンは、基本のポリオレフィンに類似した特性を有しており(それらがグラフト化されてもされていなくても)、特に、非常に類似した温度抵抗性及び結晶特性(10K/分の走査速度での第二の通過におけるISO・FDIS規格11357−3(1999)に従ったDSC(走査型示差熱分析)技術により測定された融点(Tm)及び結晶化温度)を有している。これは、グラフト化された樹脂のTmと、その非グラフト化同族体のそれとの間の差が、一般的に5℃以下、更には3℃以下であることを示唆している。エチレン及び/又はプロピレンのポリマーを出発点に取ると、これは一般に、100℃よりも高いTmを示唆している。
加えて、本発明による修飾されたポリオレフィンは、基本のポリオレフィンと比較して改善された機械的特性を示す。従って、PPホモポリマーに基づく修飾されたポリオレフィンの場合、それらの張力係数E(ISO527−1に従って23℃で測定)は、一般には2000MPa以上であり、またHDPE(高密度ポリエチレン)に基づく修飾樹脂の場合、前記係数は1000MPa以上である。加えて、PPホモポリマーに基づく修飾ポリオレフィンの場合、機械的強度の明瞭な改善が観察され、これは0.45MPaの負荷において120℃以上、及び1.8MPaの負荷において60℃以上のDTUL(ISO規格75−2(9/1993)に従って測定された負荷下での偏向温度)をもたらす。最後に、修飾されたポリオレフィンのクリープ抵抗性は、基本樹脂のそれと比較して実質的に改善される。従って、例えば、80℃及び5MPaの負荷で測定が行われるとき、本発明による修飾されたポリオレフィンは、基本のポリオレフィンと比較して、一般に少なくとも15%、又は少なくとも20%、更には少なくとも25%小さい100時間後の変形を示す。
【0019】
本発明による修飾されたポリオレフィンはまた、異常な酸化耐性(PIO2試験に従って測定)を示す。酸化耐性のためのこのPIO2試験は、
・ペレットの形態の樹脂20mgをとることと;
・窒素流下に、望ましい温度(特に、プロピレンに基づくポリオレフィンについては190℃、またエチレンに基づくポリオレフィンについては210℃)で、該ペレットを熱調節することと;
・酸素流下に、時間t0において測定を開始することと;
・樹脂が分解(酸化)を始めるために必要な時間(分)、即ち、発熱の出現に必要な時間を測定することと;
からなっている。
先行技術に従ったPPに基づく修飾されたポリオレフィンは、60分未満のPIO2を有するのに対して、本発明によるPPに基づく修飾されたポリオレフィンは60分以上、一定の場合には更に70分以上、或いは、更に80分以上のPIO2を有することができる。本発明によるPEに基づく修飾されたポリオレフィンの場合、それらは、一般には50分以上、又は60分以上、更に75分以上のPIO2を有する。
【0020】
最後に、上記で既に述べたように、本発明による修飾されたポリオレフィンは、先行技術の修飾されたポリオレフィンに比較して、感覚刺激的特性及び黄色化の点での改善を示す。例えば、この黄色化に関して、本発明によるポリオレフィンのYI(ASTM規格D−1925、及びASTM規格E−313に従って測定された黄色指数)は、一般には40以下、更には30以下である。
本発明による修飾されたポリオレフィンは、発泡体、特に発泡押出しによって製造される高密度ポリプロピレン発泡体及び高密度ポリエチレン発泡体の調製において、有利な用途を見出す。特に、当該修飾されたポリオレフィンは、発泡押出し、熱成型又はブロー成型、特に3D発泡押出しによって作製されるオブジェクトの製造において、有利な用途を見出す。もう一つの応用分野は、適合化塗布、多層塗布、及びシール塗布における接着性を改善する分野である。
更に、本発明に従う修飾されたポリオレフィンはまた、一定の場合に、非修飾グラフト化ポリオレフィンよりも優れた接着特性を示す。従って、例えば、それらは油及び脂肪の存在下での多くの基材に対して、より良好な接着性を示す。これらポリオレフィン及び油性基材(例えば鋼板シート)を用いて、接着試験(NFT規格76−107に従う試験)で測定された最大応力は、実際に、一般に少なくとも8MPa以下であり、また観察された破壊は、一般に接着剤型(NFT規格76−107の定義に従って)のものであった。結局、これらポリオレフィンは、特に脂肪製品(食品、化粧品など)用の包装、炭化水素(石油)用のタンク及びパイプにおける接着剤として適している。また、PPに基づく修飾されたポリオレフィンの場合、A1基剤(任意に表面処理されたもの)に対する接着剤は、非修飾グラフトPPの接着剤に比較して改善される(即ち、接着試験における最大応力は少なくとも8MPaであり、破損は接着剤型である)。
【0021】
また、本発明の一つの主題は、先行技術のポリマー組成物と比較して多くの利点を有し、且つその欠点をもたないポリマー組成物である。
この趣旨において、本発明は下記を含有するポリマー組成物に関する:
(A)少なくとも一つのポリマー;及び
(B)上記で説明した本発明に従う方法[方法(P)]により得られた修飾されたポリオレフィン[修飾されたポリオレフィン(B1)、及び上記で述べたように、前記方法によって得ることができる修飾されたポリオレフィン[修飾されたポリオレフィン(B2)]から選択される、少なくとも一つの修飾されたポリオレフィン。
【0022】
従って、本発明は、下記を含有するポリマー組成物に関する:
(A)少なくとも一つのポリマー;及び
(B)下記から選ばれる少なくとも一つの修飾されたポリオレフィン
・修飾されたポリオレフィン(B1)、即ち、酸もしくは酸無水物基をグラフト化されたポリオレフィンであって、これら基が、中和の際に有機酸(I)を放出する有機塩(1)を含む少なくとも一つの中和剤で少なくとも部分的に中和され、前記グラフト化されたポリオレフィンの中和から誘導された有機酸(I)が少なくとも一つの無機塩(2)と反応される方法[方法(P)]によって修飾されたポリオレフィン、及び
・修飾されたポリオレフィン(B2)、即ち、方法(P)によって得ることができる修飾されたポリオレフィンであって、金属イオンによって少なくとも部分的に中和される酸又は酸無水物基を含み、且つ130℃でキシレン中に不溶な生成物の1%未満の含量、時間の関数としての伸長粘度における指数関数的増加、及び6dg/分以下のMFIを示す修飾されたポリオレフィン。
【0023】
本発明に従う組成物の修飾されたポリオレフィン(B1)を合成するために使用される方法(P)は、好ましさのレベルが如何なるものであっても、「この趣旨において、本発明は…グラフト化ポリオレフィンを修飾するための方法に関する」で始まる段落から、「好ましい安定剤は、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンである」で終わる段落までに記載した、本発明に従う方法(P)と同じ特徴及び好ましさに対応する。
同様に、本発明に従う組成物の修飾されたポリオレフィン(B2)は、好ましさのレベルが如何なるものであっても、「結局、本発明はまた、上記で述べた方法によって得ることができる修飾されたポリオレフィンに関する」で始まる段落から、「接着試験における最大応力は少なくとも8MPaであり、破損は接着剤型である」で終わる段落までに記載した、本発明に従う修飾されたポリオレフィン(B2)と同じ特徴及び好ましさに対応する。
当該修飾されたポリオレフィンは、好ましくは、修飾されたポリオレフィン(B1)から選択される。
【0024】
(A)は特に、
・芳香族ポリ縮合物、例えばポリフタルアミド、メタキシリレンジアミンと少なくとも一つの二酸との縮合によって得られるポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエステル(例えば液晶ポリエステル)、ポリスルホン、ポリアクリルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド;
・ハロゲン化ポリマー、例えばPVC、PVDC、PVDF及びPTFEのようなポリアダクト、ポリビニルエステル、アクリルポリマー、ポリスチレンのようなスチレンのポリマー、ポリブタジエンのようなアルカジエンのポリマー、SBSゴムのようなスチレンとアルカジエンのポリマー、スチレンホモポリマー、又は非官能化ポリオレフィン
である。
(A)は、好ましくは非官能化ポリオレフィン、即ち、非官能化オレフィンポリマー、特に好ましくは、非官能化線形オレフィンポリマーである。
線形オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンが挙げられる。
線形オレフィンは、好ましくは2〜8の炭素原子、特に好ましくは2〜6の炭素原子、最も好ましくは2〜4の炭素原子を含む。線形オレフィンがエチレン及び/又はプロピレンのときに、優れた結果が得られている。
【0025】
非官能化ポリオレフィンは、特に、上記で述べたオレフィンのホモポリマー、又は上記で述べたオレフィンと1以上のコモノマーとのコポリマーであってよい。
該コモノマーは、有利には、上記で述べたオレフィン、4−ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン及びエチリデンノルボルネン、1,3−ブタジエン、イソプレン及び1,3−ペンタジエンのような4〜18の炭素原子を含むジオレフィン、並びにスチレン及びα−メチルスチレンのようなスチレンモノマー類から選択される。好ましくは、それらは上記の線形オレフィンから選択される。
本発明に従う組成物において、上記非官能化ポリオレフィン中のコモノマー単位の質量比は、有利には50質量%未満、好ましくは30質量%未満、特に好ましくは10質量%未満である。
非官能化オレフィンコポリマーの例としては、プロピレン(>90質量%)及びエチレン(<10質量%)のランダムコポリマー、例えば、コポリマーELTEX(登録商標)KSが挙げられる。
非官能化ポリオレフィンは、特に好ましくは、上記で述べたオレフィンのホモポリマーから選択され、更に好ましくは、エチレンホモポリマー及びプロピレンホモポリマーから選択され、最も好ましくは、ポリプロピレンELTEX(登録商標)HLのようなプロピレンホモポリマーから選択される。
【0026】
本発明に従う特定の組成物は、ポリマー(A)として、ブロックコポリマー、好ましくはエチレン及び/又はプロピレンから誘導された反復単位を含んでなるブロックコポリマーである非官能化ポリオレフィンを含有する。ブロックコポリマーの例としては、ABジブロックコポリマー及びABAトリブロックコポリマーが挙げられ、ここでのAブロックはポリスチレンホモポリマーであり、Bブロックは、第一にエチレンから誘導された反復単位、及び第二には、プロピレン及び/又は4〜18の炭素原子を含むジオレフィン(例えばブタジエン)から誘導された反復単位で構成されたコポリマーのブロックであり、これは任意に水素化される(例えば、ブタジエンから誘導された反復単位はブチレン反復単位に水素化されてよい)。本発明に従うこの特定の組成物に関しては、とりわけ、非官能化ポリオレフィンブロックコポリマーにおけるエチレン及びプロピレン以外のコモノマーから形成される単位の質量比は、有利には少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%であり;加えて、有利には75質量%未満、好ましくは50質量%未満である。本発明に従うこの特定の組成物の一例は、ポリマー(A)として、ポリプロピレンホモポリマー、及び約30質量%のスチレンを含有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー(通常はSEBSゴムと呼ばれる)を含み、また修飾されたポリオレフィン(B)としては、両者共に本発明による方法に従って修飾されたマレイン酸無水物をグラフトされたポリプロピレンホモポリマー、及びマレイン酸無水物をグラフとされたSEBSゴムを含むものである。
【0027】
組成物の全質量に対する(A)の質量は、有利には50%よりも大きく、好ましくは75%よりも大きく、特に好ましくは85%よりも大きい。
組成物の全質量に対する(B)の質量は、有利には0.5%よりも大きく、好ましくは1%よりも大きく、特に好ましくは2%よりも大きい。
組成物の全質量に対する(B)の質量は、有利には40%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは10%未満、最も好ましくは6%未満である。
本発明による組成物は、何れか既知の方法、特に溶液中の方法、ミキサー(例えばBrabender(登録商標)ミキサー)中で行われる方法、押出し機(例えばPrism(登録商標)押出し機)中で行われる方法により調製することができる。本発明による組成物が押出し機の中で実施される方法によって調製されれば、通常は良好な結果が得られる。
本発明による組成物は、ポリマー組成物で普通に用いられる添加剤、特に、ポリオレフィン組成物中において通常用いられる添加剤を、好ましくは当該組成物の全質量に対して10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下の量で任意に含有することができる。
このような通常の添加剤の例として、立体障害を受けたフェノールのような抗酸化剤、潤滑剤、充填材、色素、含量、核形成剤、UV安定剤、ステアリン酸カルシウムのような制酸剤、エチレン及びアクリル酸n−ブチルもしくはアクリル酸エチルのコポリマーのような結晶性を改変するための物質、金属不活性化剤、及び静電気防止剤が挙げられる。
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の全質量に対して0.1〜0.5質量%の立体障害性フェノール、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びペンタエリスリトール テトラキス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)を含んでいる。
【0028】
本発明による組成物は、先行技術の組成物と比較して、明らかに改善されたレベルの全体的な特性を示す。この明らかな改善は、本発明に従う方法によって得られ、又は得ることができる修飾されたポリオレフィンを、ポリマー組成物、特に非官能化ポリオレフィンを含む組成物に添加することから生じるものである。この改善された特性は、特に、溶融強度(伸長粘度の指数関数的増大及び改善された低いMFIと同時に、架橋ポリマーの低含量を維持すること)、また張力係数のような機械低特性である。加えて、少ないパーセント(例えば5質量%)のPPホモピリマーに基づく修飾ポリオレフィンが添加されたPPホモポリマーの組成物の場合、機械的強度における明確な改善が観察されており、これは負荷の下での偏向温度における10℃近い増大によって反映される;また、VICAT試験における挙動、衝撃強度、及びクリープ耐性自体も実質的に改善される。最後に、本発明による組成物はまた、一定の場合には、修飾されたポリオレフィンを含まない非官能化ポリオレフィンに基づく組成物よりも優れた接着特性を示す。従って、例えば、それらは、オイル又は脂肪の存在下で、多くの基材に対する良好な接着性を示す。非官能化PP及び本発明によるグラフト化されたPPを含む組成物の場合、アルミニウム支持体に対する接着性もまた、グラフト化されたPPを含まない組成物と比較して改善される。
【0029】
また、本発明の主題は、ポリマー又はポリマー組成物から製造された物品であって、先行技術の物品に比較して多くの利点を示し、且つその欠点を示さない物品である。
この趣旨において、本発明は、上記で説明した本発明に従う組成物、又は上記で説明した、本発に従う方法[方法(P)]によって得られた修飾されたポリオレフィン[修飾ポリオレフィン(B1)]、もしくは上記で説明した前記方法によって得ることができる修飾ポリオレフィン[修飾ポリオレフィン(B2)]から選択される、修飾されたポリオレフィンを含んでなる物品に関する。
本発明による物品についての第一の好ましい選択は、当該組成物又は修飾されたポリオレフィンの層をサイズ塗布された修飾されたガラス繊維、天然繊維及び金属ワイヤ、或いは当該組成物又は修飾されたポリオレフィンの層でコーティングされた金属表面及び非金属表面から行われる。
非金属表面の例としては、セメント表面、ガラス表面、石表面、及びポリマー表面が挙げられる。
本発明による物品についての第二の好ましい選択は、当該組成物又は修飾されたポリオレフィンで作製された、管、フィルム、シート、ファイバー、発泡体、及びブロー成型された中空体から行われる。
ブロー成型された中空体の例としては、ボトルが挙げられる。
管は、有利には、石油工業用、建設工業用、又は自動車工業用が意図される。
フィルムは、特に、脂肪性媒質中でシール可能な食品関連フィルム、又は水性インクで印刷できるフィルムであってよい。
本発明による物品についての第三の好ましい選択は、燃料タンク、燃料パイプ、バンパー及びダッシュボードから選択される自動車用部品である。
本発明に従う物品は多くの利点を有する。それは通常、同じ性質の先行技術の物品よりも小さい厚さを有し、又はそれよりも軽い。それは、汚れ、引掻き、磨耗及び落書きに対する抵抗性を示す。本発明による物品がフィルムのとき、これは高い引裂き抵抗性を示し、また汚れた環境においても接合することができる。
【0030】
最後に、本発明の最後の側面は、ポリオレフィンとの適合性のないポリマー又は充填材に対するポリオレフィンの適合化剤及び/又は分散剤としての、本発明に従う組成物、或いは本発明に従う方法[方法(P)]により得られた上記で述べた修飾されたポリオレフィン[修飾ポリオレフィン(B1)]、及び上記で述べた前記方法により得ることができる修飾されたポリオレフィン[修飾ポリオレフィン(B2)]から選択された修飾ポリオレフィンの、何れかの使用を想定している。
当該ポリオレフィンと適合しないポリマー類の例としては、エポキシ樹脂、フッ素化樹脂、特にポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアミド類及びポリエステル類が挙げられる。
好ましくは、本発明による組成物又は上記で述べたように選択されたポリオレフィンは、エポキシ樹脂中でのポリオレフィンの適合化剤及び/又は分散剤として使用される。
不適合成の充填材は、例えば、亜麻、麻、黄麻及びセルロースのような天然繊維、更にまた、ガラス繊維、ガラス、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、及びカーボンブラックである。金属基材は、例えば、鋼又はアルミニウムである。
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるが、その範囲を制限するものではない。
【0031】
参考例1(本発明に従わない)及び実施例2(本発明に従う): 酢酸Znで中和されたプロピレン(PP)に基づくグラフト化ポリオレフィン
以下のものを使用した。
・ Priex(登録商標)20070樹脂、Solvayにより化学的に修飾されたポリプロピレン。それは0.1質量%の比率でマレイン酸無水物をグラフとしたPPであり、64g/分のMFI2.16kg,230°Cを有する。
・ 酢酸亜鉛(Zn(Ac)2)及びNa2CO3の200g/Lの溶液、それぞれ、Zn(Ac)2については3モルeq(樹脂のカルボン酸官能基の数に対するモル当量)、Na2CO3については0モルeq(比較例1)及び2モルeq(実施例2)の量。
・ Clextral model BC 21押出し機、これは並向回転式ツインスクリュー型押出し機、直径25mm、及び長さ1000mm(L/D=40)である。バレルは、10の独立ゾーン(Z1〜Z10)からなり、また収斂する流れ領域及びダイからなっている。
・ スクリュー速度200rpm、処理量10kg/時、及び以下の温度プロファイル:Z1(樹脂供給):70℃; Z2:170℃; Z3(溶融)及びZ4(注入Zn(Ac)2):200℃; Z5〜Z8(大気圧での反応、脱ガス、2mbarの設定圧力での減圧下の反応、脱ガス):240℃; Z9:230℃; Z10:220℃; 収斂する流れ領域及びダイ:220℃;
・ Z4においてZn(Ac)2を注入するため、適切な場合(実施例2)には、Z7においてNa2CO3を注入するための高圧注入機。
得られた修飾された樹脂の伸長粘度は、RME(溶融物のためのレオロジー伸長レオメータ)の名称でレオメトリックス社(Rheometrics)が販売するレオメータ使用して決定された。サンプル(55×9×2mm)は押出しよって得られ、弛緩手順を受け、続いて伸長速度1(秒-1で表される)についての時間の関数として、190℃での伸長溶融粘度(kPaで表される)の変動測定を受けた。
二つの場合(比較例1及び実施例2)において、伸長硬化(2〜3秒後に2から1000kPaの範囲の伸長粘度)を示す樹脂が得られた。
加えて、これら二つの樹脂について、130℃でキシレンに不溶性の生成物の含量(上記で述べた方法により決定された)が測定され、1パーセント未満であった。
MFI(2.16kg,230℃)は、比較例1から誘導された樹脂については8.6dg/分であり、実施例2から誘導された樹脂については 0.5dg/分である。加えて、前者に比較して、後者は白色の外観を有し、酢酸臭がない。
Zn(Ac)2の量をそれぞれ4モル当量及び5モル当量の値に増大させて、参考例1を繰り返したが、MFIの値は実質的に同じままであった。
【0032】
参考例3、並びに実施例4及び5(本発明に従う): 乳酸Na(NaLac)で中和されたプロピレン(PP)に基づくグラフト化ポリオレフィン
先の参考例及び実施例と同じ出発樹脂及び同じ実験パラメータを使用した。しかし、今回の中和剤は、5モル当量の比率で使用された、NaLac(乳酸ナトリウム:Acros社からのD異性体及びL異性体の混合物:水溶液1リットル当り60質量%の溶液256.4mL)であった。Na2CO3は、0モル当量(比較例3)、1モル当量(実施例4)、及び2モル当量(実施例5)の比率で使用した。得られた修飾樹脂のMFI(2.16kg,230℃)は、それぞれ、23.2dg/分、5dg/分及び0.5dg/分であった。これらの樹脂は全て伸長硬化を示し、また130℃でキシレン中に不溶性の生成物含量1%未満を有する。
【0033】
参考例6、並びに実施例7及び8(本発明に従う): 酢酸Znで中和されたプロピレン(PP)に基づくグラフト化ポリオレフィン
これらの例は、例1及び2と同じ反応物及び操作条件を採用した。
使用した反応体の量及び得られた結果が、下記の表に見られる。







【表1】

この表において:
Zn(Ac)2は、モル当量で表したZn(Ac)2の使用量である;
Na2CO3についても同じ;
Znは、X線蛍光法で測定され、g/kgで表された修飾樹脂中のZn含量である;
Nは、IR分光分析で測定された、中和されたMA官能基のパーセンテージである;
MFIは、2.16kgの加重下に230℃で測定され、dg/分で表される;
m及びTcは、それぞれDSCで測定された融点及び結晶化温度である;
PIO2は、上記で定義した酸化耐性である;
臭い:0=臭いなし、1=僅かな臭い、2=顕著な臭い
である。
これらの例から誘導された樹脂は全て伸長硬化を示し、また130℃でキシレン中に不溶性の1%未満の生成物含量を有する
例7から誘導された樹脂は、追加の測定を受けた:その弾性係数Eは2206MPaであり、そのYIは29.4であり、そのDTULは、0.45MPaの加重下で125℃、1.8MPaの下で64℃であり(上記の定義及びこれらパラメータを測定する方法を参照のこと)、また好意的な感覚評価を有する(ゼロ又は僅かな味覚に対応した好適な等級の基準水との比較による、修飾ポリオレフィンに基づく容器中での水の浸出後の味覚試験)。
【0034】
参考例9、並びに実施例10〜15: NaLacで中和されたエチレン(PE)に基づくグラフト化ポリオレフィン
これらの例では、実施例3〜5と同じ反応体及び操作条件を用いたが、出発樹脂としてはSolvayからのPriex(登録商標)12030を用いた。それは0.14質量%の比率でマレイン酸無水物をグラフトされたHDPEであり、30g/10分のMFI5kg,8/2,190℃を示す。
使用した反応物の量及び得られた結果が下記の表に見られる。
【表2】

この表において:
NaLacは、モル当量で表したNaLacの使用量である;
Na2CO3についても同じ;
Naは、X線蛍光法で測定され、g/kgで表された修飾樹脂中のNa含量である;
Nは、IR分光分析で測定された、中和されたMA官能基のパーセンテージである;
MFIは、5kgの下に230℃で測定され、dg/分で表される;
m及びTcは、それぞれDSCで測定された融点及び結晶化温度である;
PIO2は、上記で定義した酸化耐性である;
臭い:0=臭いなし、1=僅かな臭い、2=顕著な臭い
である。
例14及び例15から誘導された樹脂は追加の測定を受け、これによって以下のことが示された:
・それらは両者共に伸長硬化を示し、また130℃でキシレン中に不溶性の1%未満の生成物含量を有し、好意的な感覚刺激評価を有する。
・それらは、1009及び1033MPaの弾性係数Eを有し、27及び22.9のYIを有する。
【0035】
実施例16(本発明に従う): 乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたプロピレン(PP)に基づくグラフト化ポリオレフィン
出発樹脂として、Solvayによって化学的に修飾されたポリプロピレンホモポリマーであるPriex(登録商標)20015樹脂を用いた。それは0.5質量%の比率でマレイン酸無水物をグラフトされたHDPEであり、15g/10分のMFI2.16kg,230°Cを示す。
中和剤は、5モル当量の比率で使用されるNaLac(乳酸ナトリウム:Acros社からのD異性体及びL異性体の混合物:水溶液1リットル当り60質量%の溶液256.4mL)であった。
Na2CO3は、2モル当量の比率で使用された。
適用された実験パラメータは、先の参考例及び実施例で適用されたものと同じであった(詳細については参考例例1及び実施例2参照)。
こうして得られた修飾された樹脂のMFI(2.16kg,230℃)は、1g/10分であり、また0.88g/kgのナトリウム含量を有していた。その融点は167℃であった。
【0036】
参考例17(本発明に従わないもの)、及び実施例18(本発明に従うもの):それぞれ乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたポリオレフィン(PP)に基づくグラフト化されたポリオレフィンからなる追加の添加剤を伴わない/伴った、非官能化ポリプロピレンを含有する組成物
ポリプロピレンホモポリマーEltex(登録商標)P HL及び立体障害を受けたフェノール安定剤で構成された顆粒形態の組成物(BPによって販売される組成物)を、基準組成物として使用した。該組成物を、以下では組成物(CR17)と称する。この組成物は、2.5g/分のMFI(2.16kg,230℃)、161℃の融点、及び900kg/m3の密度を有していた。
95質量%の組成物(CR18)、及び5質量%の実施例16で合成されたNaLacで中和されたPPに基づくグラフト化ポリオレフィンで構成される、本発明による組成物が調製された。該組成物を、以下では組成物(CI18)と称する。この趣旨において、Prism(登録商標)並向回転式ツインスクリュー型押出し機、直径15mm及び長さ24cm(即ち、長さと直径の比16)、二つの独立ゾーン(Z1及びZ2)及び収斂する流れ領域及び孔ダイからなるバレルを使用した。200rpmのスクリュー速度及び2kg/時の処理量を適用し、温度プロファイルは次の通りであった:Z1(供給ゾーン):230℃; Z2:230℃; 収斂する流れ領域及びダイ:230℃。
<230℃での張力試験>
この試験は、ISO規格527−1及び2に従って実行した;モジュラス速度は1mm/分であった;試験速度は50mm/分であった;ツール間の距離は115mmであった;標準ゲージ長さは50mmであった;試験片のタイプはISO1B(115)型であった;負荷セルは、「1kN張力−オーブンなし」型であった;伸び計は、Zwick Multisens and Traverseセンサであった;温度は23℃であった。
下記の表に示す結果が得られた。
【表3】

<負荷の下での偏向温度の決定(DTUL)>
この決定は、0.45MPa又は1.8MPaの何れかの負荷の下で、ISO規格75−2(9/1993)に従って行った。120℃/時の温度の増大が生じた;前負荷は50gであった;使用した熱移動流体はシリコーン油であった;射出成型し、トリミングし、120±10mmの長さに切断された試験片を使用した;該試験変は、側方に配置した;支持体の間の距離は100±2mmであった。
下記の表に示した結果が得られた:
【表4】

<VICAT試験>
VICAT試験は、ISO規格306(1987)に従って行った。10 N VICAT測定及び50 N VICAT測定の両者について、貫入は1mmであった。
下記の表に示した結果が得られた:
【表5】

<衝撃強度の決定−機器に装着された落下質量(IFW)試験>
IFW試験は、ISO規格7765−2に従って行った。温度は23℃であった;打撃機の理論エネルギー及び速度は、それぞれ247.5J及び4.43m/sであった;打撃機の質量は25.24kgであった;落下高さは1mであった;打撃機及び支持体の直径は、それぞれ20mm及び40mmであった。
下記の表に示した結果が得られた:








【表6】

<クリープ試験>
この試験は、ISOIA試験片に対する10MPaの応力の下で、及び23℃の温度で行われた。
下記の表に示した結果が得られた:
【表7】

【0037】
実施例19(本発明に従うもの): 乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたプロピレンに基づくグラフト化ポリオレフィン
出発樹脂として、Solvayによって化学的に修飾されたポリプロピレンホモポリマーであるPriex(登録商標)20093樹脂を用いた。それは0.26質量%の比率でマレイン酸無水物をグラフトされたPPであり、75000の質量平均分子量を有する。
NaLac中和剤及びNa2CO3を、実施例16の場合と同じ量及び同じ方法で使用した。
適用された実験パラメータもまた、先の実施例で適用されたものと同じであった。
こうして得られた修飾樹脂のMIF(2.16kg,230℃)は1.4g/10分であり、また、それは6.6g/kgのナトリウム含量を有していた。その融点は135℃であった。
【0038】
参考例20(本発明に従わないもの)、及び実施例21(本発明に従うもの): それぞれ、乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたポリオレフィン(PP)に基づくグラフト化されたポリオレフィンからなる追加の添加剤を伴った/伴わない、非官能化ポリプロピレンを含有する組成物
全ての点で組成物(CR17)と同一の組成物(CR20)を、基準組成物として使用した。
95質量%の組成物(CR20)と、5質量%の実施例19で合成されたNaLacで中和されたPPに基づくグラフト化ポリオレフィンとで構成される、本発明に従う組成物を調製した(以下では組成物(CR21)と称する)。
<種々の基材に対する粘着性及び接着性を評価するための試験>
これらの試験は、NF規格T76−104に従って行った。
剪断試験片を、230℃の温度及び20barの圧力での圧縮モールドにより調製した:
・スルホクロム酸浴中に予め10分間浸漬させた二つのアルミニウムプレートの間で;
・アルカリ浴中に予め10分間浸漬させた二つのアルミニウムプレートの間で;
・スルホクロム酸浴中に予め10分間浸漬させた二つの鋼プレートの間で。
上記の剪断試験片の引張り強度を、50kNセンサを装備したMTS50LP機械を使用した剪断試験において決定した。
下記の結果が得られた:
【表8】

【0039】
実施例22〜24(本発明に従うもの): 乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたグラフト化されたブロックコポリマー ポリオレフィン
下記のものを使用した:
・Kraton Polymersが販売する、マレイン酸無水物をグラフトされた30質量%のポリスチレンブロックを含有するKraton(登録商標)FG1901X スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン ブロックコポリマー 樹脂。我々が行った測定によれば、使用した樹脂は、約1.1質量%のマレイン酸無水物グラフト度及び6.2g/分のMFI2.16kg,230°Cを有していた。
・200g/Lの乳酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムの溶液。第一に乳酸ナトリウムについて、それぞれ0.129(実施例22)、0.258(実施例23)、及び0.323(実施例24)の理論モル当量(樹脂のカルボン酸官能基の数に対するモル当量)、第二に、Na2CO3について、0.258(実施例22)、0.517(実施例23)及び0.647(実施例24)の理論モル当量(樹脂のカルボン酸官能基の数に対するモル当量)。
・Clextral model BC 21押出し機。これは並向回転式ツインスクリュー型押出し機であり、直径25mm、及び長さ1200mm(L/D=40)、バレルは12の独立ゾーン(Z1〜Z12)と、収斂する流れ領域及びダイからなる。
・300rpmのスクリュー速度、3kg/時の処理量、及び下記の温度プロファイル:Z1(樹脂供給):100℃; Z2〜Z4(溶融):Z2:200℃; Z3:220℃; Z4:230℃; Z5(NaLac+Na2CO3の同時注入):220℃; Z6〜Z10(大気圧での反応、脱ガス、2mbarの設定温度での減圧下の反応、脱ガス): Z10を除き240; Z11及びZ12:220℃; 収斂する流れ領域及びダイ:220℃。
・NaLac+Na2CO3のためのZ5における高圧注入装置。
実施例22については31g/10分、実施例23については7.7g/10分、実施例24については3.2g/10分のMFI21.6kg,230°Cを有する、修飾された樹脂が得られた。
なお、NaLac+Na2CO3の量の増大が大きいほど、得られたポリマーの黄色指数の減少が大きいことが認められた(ASTM規格D−1925及びASTM規格E−313に従う顆粒の黄色指数は、実施例22について38、実施例23について28、実施例24について27であった)。
Na含量(FXによる測定)は、それぞれ、実施例22については2.0g/kg、実施例23については3.9g/kgk、実施例24については4.6g/kgであった。
【0040】
実施例25〜27(本発明に従うもの): 乳酸ナトリウム(NaLac)で中和されたグラフト化されたブックコポリマーポリオレフィンを含む組成物
以下では(CI22〜CI24)と称する本発明に従う組成物を調製した。これら組成物は下記で構成される:
・立体障害を受けたフェノール(BPにより販売される)で安定化された、57質量%のポリプロピレンホモポリマー Eltex(登録商標)P HL;2.5g/10分のMFI2.16kg,230°C、161℃の融点、及び900kg/m3の密度を有する;
・3質量%の、実施例16の化学的に修飾されたグラフト化ポリプロピレンホモポリマー;
・3質量%の、実施例22(CI22)、実施例23(CI23)又は実施例24 (CI24)で合成されたポリマー;及び
・37質量のポリマーKraton(登録商標)G 1652;これは Kraton Polymersが販売する、約30質量%のポリスチレンブロックを含んだスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン非官能化ブロックコポリマーである。
こうして調製された組成物は、有利な組合せの特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸又は無水物基でグラフトポリオレフィンの変性方法であって、中和の間、有機酸(I)を放出する有機塩(1)を含む少なくとも1種の中和剤でこれらの基の少なくとも部分的中和により、グラフトポリオレフィンの中和から由来する有機酸(I)が、少なくとも1種の無機塩(2)と反応していることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記グラフトポリオレフィンが、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン及び/又はプロピレンのポリマーから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グラフトポリオレフィンが、グラフトブロックコポリマーである請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記有機塩(1)が、加工温度で液体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機塩(1)が、Znアセテート又はNaラクテートから選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機塩(1)及び前記無機塩(2)が、グラフトポリオレフィンに導入され、
(1)同時に、前記有機塩(1)が、Naラクテートであり、
(2)繰り延べられた方法で、前記有機塩(1)が、Znアセテートである
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機塩(1)が、水溶液の形態で、グラフトポリオレフィンに導入される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機塩(2)が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩及び希土類金属炭酸塩から選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記無機塩(2)が、水溶液の形態で、グラフトポリオレフィンに導入された請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られ得る変性ポリオレフィンであって、少なくとも一部が金属イオンによって中和された酸又は無水物基を含み、
(1)130℃で、1%未満のキシレンに不溶性の生成物の含有量、
(2)時間の関数として、延び粘度の指数増加、及び
(3)6dg/分以下のMFI
を示すポリオレフィン。
【請求項11】
標準ASTM D-1925及びASTM E-313によって測定された黄色度指数が、40未満である請求項10に記載の変性ポリオレフィン。
【請求項12】
無臭の請求項10又は11に記載の変性ポリオレフィン。
【請求項13】
有利な官能評価から得られ、前記変性ポリオレフィンで作られた容器の水に浸漬後、味試験によって決定された請求項10〜12のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン。
【請求項14】
(A)少なくとも1種のポリマー、及び
(B)請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られた変性ポリオレフィン及び請求項10〜13のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種の変性ポリオレフィン、
を含むポリマー組成物。
【請求項15】
変性ポリオレフィンが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られた変性ポリオレフィンから選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマーが、エチレン及び/又はプロピレンの非官能性ポリマーから選択される請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物の全質量に比例して(A)の質量が、75%より大きい請求項14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の全質量に比例して(B)の質量が、10%未満である請求項14〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項に記載の組成物を含む物品。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法及び請求項10〜13のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィンによって得られる変性ポリオレフィンから選択される変性ポリオレフィンを含む物品。
【請求項21】
組成物又は変性ポリオレフィンの層を有する径のガラス繊維、天然繊維及び金属ワイヤーから選択され、さらに前記組成物又は前記変性ポリオレフィンの層で被覆された金属表面及び非金属表面から選択される請求項19又は20に記載の物品。
【請求項22】
本発明の組成物又は変性ポリオレフィン
から作られる管、フィルム及びシート、繊維、フォーム及びブロー成形中空体から選択される請求項19又は20から選択される物品。
【請求項23】
燃料タンク、燃料パイプ、バンパー及び仕切板から選択される自動車部品である請求項19又は20に記載の物品。
【請求項24】
ポリマー又はポリオレフィンと非相溶性の充填剤を有するポリオレフィンの相溶化及び/又は分散用薬剤としての請求項14〜18のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られる変性ポリオレフィン及び請求項10〜13のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィンから選択される変性ポリオレフィンの、ポリマー又はポリオレフィンと非相溶性の充填剤を有するポリオレフィンの分散に対する薬剤としての使用。

【公表番号】特表2006−521424(P2006−521424A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501981(P2006−501981)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002082
【国際公開番号】WO2004/076501
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ (252)
【Fターム(参考)】