説明

グリコールアルデヒドの調製方法

本発明は、ホルムアルデヒドを、a)ロジウム源、およびb)一般式RP−R(I)の配位子(式中、Rは二価の基であり、結合しているリン原子と一緒になって、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(この基中で、1〜5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を表しており、Rは一価の基であり、これは場合によって置換された、1〜40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)に基づく触媒組成物の存在の下、ホルムアルデヒドを水素および一酸化炭素と反応させることによるグリコールアルデヒドの調製方法、前記方法で使用する触媒組成物、およびこのようにして調製したグリコールアルデヒドからエチレングリコールを調製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコールアルデヒドの調製方法、およびこれによって調製したグリコールアルデヒドからエチレングリコールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和基材と、一酸化炭素および水素との反応は、ヒドロホルミル化として知られている。過去において、エチレングリコールを調製するための有用な中間物質であるグリコールアルデヒドが、ロジウム触媒を使用したホルムアルデヒドのヒドロホルミル化反応によって調製できることが開示された。しかしながら、この方法によるグリコールアルデヒドの調製は、ロジウム触媒がホルムアルデヒドのメタノールへの水素化をも促進し、グリコールアルデヒドの収率を低下させることが欠点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
メタノールの生成を抑制して、グリコールアルデヒド生産の選択性を高める試みがなされ、これに伴ってトリフェニルホスフィンなどのアリール置換ホスフィン配位子を含むロジウム触媒を、場合によってはプロトン酸と組み合わせて使用することによって、グリコールアルデヒドの良好な収率が実現できることが発見された(例えば、Pure&App1.Chem 第62巻、No.4、661〜669頁、1990年を参照されたい)。しかしながら、このようなアリール置換配位子は、反応条件下で不安定であるため、有効性が低下する欠点がある。
【0004】
グリコールアルデヒドを精製するこの方法の更なる欠点は、特にこれをエチレングリコール調製の中間体として使用する場合、非水溶液状態のパラ−ホルムアルデヒドを使用したときにしか良好な結果が得られず、廉価なホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)を使用すると、グリコールアルデヒドへの転換選択性が低いことである。これは、触媒の水溶液状態における不安定性が原因であると考えられる。実際、ホルムアルデヒド水溶液でのヒドロホルミル化が難しいことが、この手法をエチレングリコール生産用に商業化する際の主要な障害となっている。
【0005】
欧州特許出願公開第0331512号は、ホスフィン配位子がトリオルガノホスフィンであるロジウム−ホスフィン配位子錯体の、次にエチレングリコールを調製するのに使用できるホルムアルデヒド水溶液のグリコールアルデヒドへのヒドロホルミル化での使用について概観している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このたび、ロジウム触媒と特定の形態のホスフィン配位子の使用に基づく、ホルムアルデヒドをヒドロホルミル化する方法が開発された。この方法は、アリール置換ホスフィン配位子を有する、既知のロジウム触媒と比較した場合、性能上の利点を有する。更に本発明の方法の触媒は、アリール置換ホスフィン配位子を含む触媒よりも水溶液状態においてより安定であり、ホルムアルデヒド水溶液をグリコールアルデヒドへ転換するのに容易に使用することができる。
【0007】
本発明は、以下のa)およびb)に基づく触媒の存在下で、ホルムアルデヒドを水素および一酸化炭素と反応させることを含むグリコールアルデヒドの調製方法を提供する。
【0008】
a)ロジウム源、および
b)下記一般式の配位子
P−R (I)
(式中、Rは二価の基であり、結合しているリン原子と一緒になって、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(この基中で、1〜5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を表しており、Rは一価の基であり、これは場合によって置換された、1〜40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の触媒組成物は、ロジウム源を必要とする。好都合なロジウム源には、硫酸、硝酸、リン酸のなどの鉱酸のロジウム塩;メタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸の塩;および特に6個までの炭素原子を有する、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酸などのカルボン酸の塩が含まれる。あるいは、このロジウム源は、一酸化炭素、アセチルアセトナート、ホスフィンなどの配位子と配位結合した、ゼロ価の形のロジウムを含んでいてもよい。ロジウム金属源は、例えば、Rh.Cl(CO)またはRh(acac)(CO)におけるような、アニオンとおよび非電荷配位子の混合物を含んでいてもよい。
【0010】
一般式(I)の配位子において、Rは二価の基を表し、これは結合しているリン原子と一緒になって、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(この基中で1〜5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を表している。
【0011】
トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンは、アダマンタンとしてより広く知られている化合物の系統名である。したがって、参照が容易なように、本明細書の記述では、2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはこの誘導体は、“2−PA”基(2−ホスファアダマンチル基など)と呼ぶこともある。
【0012】
本発明で使用する配位子では、“2−PA”基中の1〜5個の炭素原子がヘテロ原子によって置換される。好都合に使用できるヘテロ原子の例には、酸素および硫黄原子があり、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子によって置換される1〜5個の炭素原子は、“2−PA”基の、4、6、8、9、または10位にある炭素原子であることが好ましい。“2−PA”基の3個の炭素原子、好ましくは6、9および10位の炭素原子が、ヘテロ原子によって置換されるのが最も好ましい。
【0013】
“2−PA”基が、1、3、5または7の位置の1つ以上において、原子20個までの好ましくは1〜10個の、より好ましくは1〜6個の炭素原子を含む一価の基で置換されることが好ましい。適切な一価の基には、メチル、エチル、プロピル、フェニル、および4−ドデシルフェニル基が含まれ、メチルおよびエチル基が好ましい。“2−PA”基が、1、3、5および7位のそれぞれで置換されることがより好ましい。1、3、5および7の位置のそれぞれにおける置換基が同一であることが最も好ましい。
【0014】
本発明において、最も良好な結果が得られる配位子は、下記図1で表されるような、二価の基Rが、結合しているリン原子と一緒になって2−ホスファ−1,3,5,7−テトラアルキル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基を表す配位子である。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(I)の配位子において、Rは、1〜40個の炭素原子を有する場合によって置換されたヒドロカルビル基である一価の基である。このヒドロカルビル基は、置換されていても未置換でも、直鎖でも分鎖でも、飽和でも不飽和でもよい。このようなヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールおよびアラルキル基であることが好ましい。ヒドロカルビル基が置換されている場合、ヒドロカルビル基が好都合に置換される置換基は、1つ以上のハロゲン原子(例えば、フッ素または塩素)、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ジアルキルアミド、ジアリールアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルコキシカルボニル、ジアルキルアミノおよびジアリールアミノ基からそれぞれ独立に選択したものである。ここで、適切な置換基としては、アルキル部分(moiety)は1〜4個の炭素原子を有し、アルケニル部分は2〜4個の炭素原子を有し、およびアリール基は6〜12個の炭素原子を有する、特にフェニル基である。好ましい置換基は、ジアルキルアミドおよびジアリールアミド基である。
【0017】
第一の好ましい実施形態において、本発明の方法は、一価の基Rが4〜34個の範囲の炭素原子を有するアルキル基である配位子を使用する。この実施形態のアルキル基Rは、好ましくは少なくとも6個の、最も好ましくは少なくとも10個の、とりわけ好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み、好ましくは最大で28個までの、より好ましくは最大で22個までの炭素原子を含んでいる。アルキル基は、直鎖でも分鎖でもよいが、直鎖であることが好ましい。この実施形態の配位子が、グリコールアルデヒドへの高い転換を示し、触媒の安定性を高める可能性があるので好ましい。この配位子は、非水溶液状態におけるホルムアルデヒドのヒドロホルミル化に特に良好な性能を示す。
【0018】
第一の好ましい実施形態に従って、本発明に好都合に使用することのできる配位子には、2−ホスファ−2−ヘキシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン、2−ホスファ−2−オクチル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7)]−デカン、2−ホスファ−2−ドデシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン、および2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンが含まれる。
【0019】
第二の好ましい実施形態において、本発明の方法は、一価の基Rが、下記の一般式である配位子を使用する。
【0020】
−R−C(O)NR (II)
式中、Rはアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表し、あるいはRおよびRが一緒になって二価の橋かけ基を表す。Rのアルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基であることが好都合であり、エチレン基であることが最も好都合である。RおよびRが、それぞれ独立に、例えばフェニルなどのアリ−ル基、または1〜22個の炭素原子を有しているアルキル基を表すことが好ましい。好都合に使用することのできるアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチル基が含まれる。Rが一般式(II)であるリガンドが好ましい。というのは、これらはグリコールアルデヒドへの優れた転換を示し、ホルムアルデヒド水溶液との間で行われるヒドロホルミル化反応に関して特に有利だからである。
【0021】
第二の好ましい実施形態に従って、本発明において好都合に使用することができる配位子には、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジエチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジフェニルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ](3.3.1.1{3,7}]−デカン、および2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンが含まれる。
【0022】
一般式(I)の配位子は、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1(3,7}]−デカン(ここにおいて、1〜5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を、適切なR基前駆物質とカップリングさせることで調製することができる。2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンは、米国特許第3,050,531号に記載されているのと類似の化学反応によって好都合に調製することができる。ここでは、例えば、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンが、塩酸の存在下、2,4−ペンタジエンをホスフィンと反応させることによって調製されている。類似の化学反応は、Joanne H Down氏による“PRECIOUS METAL COMPLEXES OF SOME NOVEL FUNCTIONALISED SECONDARY AND TERTIARY PHOSPHINES”(1992年11月にBristol大学宛に提出された論文)の第3章においても論じられている。
【0023】
基前駆物質の例には、一般式R−Xの化合物(式中、Xは、例えば塩化物基または臭化物基などのハロゲン化物基である)が含まれ、これは、一般式(I)(式中、Rはアルキル基である)の配位子を調製する場合に、例えば、R−X化合物を2−ホスファ1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンまたはそれのボラン付加物と反応させることによって、好都合に使用することもできる。あるいは、Rが一般式−R−C(O)NR(II)の場合、R基の前駆物質はN、N−ジ置換アルケニルアミドであると好都合である。例えば、Rがエチレン基で、RおよびRがアルキル基である配位子は、例えば酢酸などの酸の存在下で、ジアルキル−アクリルアミドを“2−PA”基と反応させることによって調製することができる。本発明による他の配位子は、当事業者によって理解されるように、類似の反応式によって調製することもできる。
【0024】
本発明で使用する触媒組成物は、場合によっては、更なる触媒成分としてアニオン源c)を含むこともできる。(水中18℃で測定して)6未満、好ましくは4未満のpKaを有するプロトン酸のアニオンが好ましい。これらの酸から誘導されるアニオンは、ロジウムと配位結合しないかまたは弱い配位結合しかせず、これはアニオンとロジウムの間に、共有性相互作用が起こらないかまたはほとんど起こらないことを意味する。このようなアニオンを含む触媒は、良好な活性を示す。
【0025】
適切なアニオンには、リン酸や硫酸などのブレーンステッド酸から誘導されるアニオン、ならびに、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸から誘導されるアニオン、および例えば2,4,6−トリメチル安息香酸、2,4,6トリイソプロピル安息香酸、9−アントラセンカルボン酸などのカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸2,6−ジクロロ安息香酸、2,6ビス(トリフルオロメチル)安息香酸などのハロゲン化カルボン酸から誘導されるアニオンが含まれる。特に良好な結果が、アルキル置換安息香酸、特にC〜Cのアルキル置換安息香酸をアニオン源として使用して得られている。
【0026】
また、例えばBF、B(C、AlC1、SnF、Sn(CFSO、SnC1またはGeClなどのルイス酸と、好ましくは5未満のpKaを有する、例えばCFSOHまたはCHSOHのスルホン酸などのプロトン酸と、あるいはHFまたはHC1などのヒドロハロゲン化物との組合せによって生成されるアニオン、あるいはルイス酸とアルコールとの組合せによって生成されるアニオンなどの錯体アニオンも適している。このような錯体アニオンの例には、BF−、SnC13−、[SnC1.CFSO]−およびPF−がある。
【0027】
本発明のプロセスに供給される、一酸化炭素と水素のモル比は決定的に重要ではないので、例えば5:95〜95:5、好ましくは30:70〜80:20の広範囲にわたって変えてもよい。しかしながら、一般的には、CO:H比が少なくとも1:1であるガス流を使用することが好ましい。というのは、これがメタノールの生成を最小限に抑えるからである。この方法は、5〜200バール(0.5〜20MPa)の圧力下で行うのが好都合であり、10〜50バール(1〜5MPa)の範囲で行うことが好ましい。もっと高い圧力も使用することできるが、これは一般的に非経済的であると考えられる。ガス流中に不活性ガスが存在してもよいが、これは全圧力を増加させるので一般的に望ましくない。
【0028】
本発明のヒドロホルミル化反応は、あまり高くない温度、好ましくは22〜180℃、より好ましくは50〜130℃で、好都合に行うことができる。温度が高くなると、例えばアルドール縮合反応などの副反応が起こりやすくなるため、望ましい反応速度と釣り合ったできるだけ低い温度を使用することが好ましい。
【0029】
本発明の方法の反応時間は、使用する温度および圧力条件に当然依存する。反応時間は、一般的に、1〜10時間の範囲でよく、1〜6時間が好ましく、2〜5時間が特に好ましいことが判明した。
【0030】
本発明で使用する触媒系の量は決定的に重要ではないので、広範囲に変えることもできる。しかしながら、ホルムアルデヒドの1モル当たりのロジウム金属の原子モル量は、1:1〜1:10であることが好ましく、1:10〜1:10であることがより好ましく、1:100〜1:10であることが一層好ましい。
【0031】
本発明に使用する触媒システムの調製に関して、一般式(I)の配位子の量は、ロジウムのモル原子当たりの配位子のモル数として表現されるロジウムの量に対して、一般的に過剰に使用される。一般的に、ロジウムの1モル原子当たり配位子が1〜20モル存在するように配位子の量を選択する。しかしながら、好ましい触媒システムに関しては、ロジウムのモル当たりの配位子が2〜10の範囲であることが好ましく、2〜5の範囲であることがより好ましい。アニオン源c)が存在する場合、この量は、決定的に重要ではないが、ロジウムの1モル原子当たり1〜500モルの範囲であることができ、1〜150のモル範囲であることが好ましく、1〜20モルの範囲であることがより好ましい。
【0032】
本発明の方法は、溶媒の存在下で実施することができる。好都合に使用できる溶媒の例には、ニトリル、ピリジン、例えばN,N,N’,N’−テトラ置換尿素などの置換または非置換尿素、および例えばN,N−ジ置換アミドなどの置換または非置換アミドなどがある。
【0033】
ホルムアルデヒドは、どのような適切な形態でも反応システムに導入してもよく、あるいはインシチュ(in situ)で生成してもよい。好都合なホルムアルデヒド発生源は、パラホルムアルデヒドである。更に、ホルムアルデヒド水溶液をホルムアルデヒド発生源として使用した場合に良好な結果が実現するのが、本発明の有利な特徴である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ホルムアルデヒド源はホルムアルデヒド水溶液である。
【0034】
ホルムアルデヒド源がホルムアルデヒド水溶液の場合、水相と有機相を含み、22℃において水相と有機相が混合しない反応媒体中で反応が行われることが更に好ましい。疑念を避けるために言えば、「混合しない」とは、22℃において、水相と有機相が2つの明確な相に分離していることを意味する。水相と有機相とで構成される反応媒体が好ましい、というのは、反応の完了時に触媒が有機相に残存し、一方グリコールアルデヒド生成物は水相中に残存し、したがって相分離によって生成物が触媒から容易に分離できるからである。このような手法が、本発明の方法において可能である。というのは、本発明の触媒組成物は、既知のアリール置換ホスフィン配位子をベースとする触媒よりも水相条件でより安定しているからである。
【0035】
この方法が、水相と有機相とで構成される反応媒体中で行われる場合、有機相の溶媒が、非水溶性のアミド溶媒であると好都合である。本発明の方法において使用することのできる非水溶性のアミド溶媒の例は、長鎖のアルキル部分を備えた溶媒であって、アルキル基が少なくとも7個の炭素原子、好ましくは8〜20個の範囲の炭素原子を含むN−アルキル−2−ピロリドリン、各アルキル基が1〜10個の範囲の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含むN,N−ジアルキルアセトアミド、および好ましくはN,N−ジフェニルアセトアミドであるN,N−ジアリールアセトアミドが含まれる。本発明に使用した場合に、特に良好な結果が得られる水に不溶性のアミド溶媒の例には、N−オクチル−ピロリドンおよびN,N−ジブチル−アセドアミドが含まれる。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態は、水相と水に不溶性のアミド溶媒を含む有機相を含む反応媒体中でプロセスが行われ、一般式RP−R(I)の配位子中で、一価の基Rが一般式−R−C(O)NR(II)であるものである。
【0037】
本明細書で前述したロジウム含有触媒組成物は、本発明の方法において使用するために特に開発されたものである。
【0038】
このタイプの触媒組成物は、α−オレフィン、内部オレフィン、内部分岐オレフィンなどのヒドロホルミル化に関する米国特許出願公開2003/0092935号に記載されている金属−配位子錯体の広範囲な定義に含まれる。本発明の方法で使用するための好ましい触媒組成物は、米国特許出願公開2003/0092935号の好ましい金属−配位子錯体とは相違しているものであり、ホルムアルデヒドのヒドロホルミル化において、様々な基材に対して、非水溶液および水溶液の両方において優れた活性を示す。一般式(I)の配位子中で、一価の基Rが一般式−R−C(O)NR(II)である触媒組成物は、例えばホルマリンが基材として使用される場合、または反応媒体中に水が存在する場合などの水溶液状態において、特に良好に働く。したがって、本発明の方法は、a)ロジウム源、b)下記一般式の配位子
P−R (I)
(式中、Rは二価の基で、結合しているリン原子と一緒に、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基であり、ここにおいて1〜5個の炭素原子がヘテロ原子によって置換されており、Rは一価の基であり、10〜40個の炭素原子を有する場合によって置換されたアルキル基であるか、あるいは好ましくは、一般式−R−C(O)NRであって、ここにおいて、Rはアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表し、あるいはRおよびRは、共に二価の架橋基を表す)および場合によっては、c)アニオン源、を結合することで入手可能な触媒組成物を更に提供する。Rのこれら定義の範囲内で、本発明の方法に関して本明細書で前述した好ましい触媒組成物は、本発明の触媒組成物としても同様に好ましい。
【0039】
グリコールアルデヒドの重要な用途は、それをエチレングリコールへ転換することであり、本発明は本明細書で前述したヒドロホルミル化によって調製したグリコールアルデヒドの水素添加によるエチレングリコールへの調製方法を更に提供する。
【0040】
グリコールアルデヒドのエチレングリコールへの転換で使用する水素添加触媒は、当業者によく知られており、例えばパラジウム、白金またはニッケル触媒であって、しばしば不均一形態である。グリコールアルデヒドを、非水溶液状態で調製する場合、選択した水素添加触媒は、ワークアップ手順無しで、グリコールアルデヒドの調製の結果得られた反応混合物に直接添加し、次に水素ガスを導入することもできる。あるいは、グリコールアルデヒドに水素添加する前に、例えば、水またはエチレングリコール自体などの適切な溶媒で抽出してワークアップし、この結果得られた溶液に、次に通常の方法で水素添加してもよい。この手法は、グリコールアルデヒドを、本発明によって可能となった水相を備えた反応媒体中のホルムアルデヒドから調製する場合特に好都合である。
【0041】
本発明は、以下の例示的実施例によって、更に理解されるであろう。
(配位子の合成)
精製アルゴン雰囲気中で、標準的シュレンク技法を使用して行った下記の実施例は、本発明の配位子の典型的な調製について例示するものである。この配位子において、(i)Rはアルキル基(2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチルl−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン)であり、(ii)Rは、一般式(II)(2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンである。
【0042】
(i)2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンの合成
BH−THF(1MTHF溶液70ml)を、0℃で2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン(60mmol)のTHF溶液に添加することによって、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンのボラン付加物を調製した。この反応混合物を室温に加温して2時間攪拌し、次いで後真空中で溶媒を除去してボラン付加物を得た。
【0043】
この付加物の溶液(16mmol、THF中)に、−70℃でヘキシル−リチウム溶液(2.5Mヘキサン溶液6.4ml)を添加し、1時間かけて−20℃へとゆっくり加温した。−70℃に再冷却した後、1−ブロモ−イコサン(16mmol、THF中)を添加した。次に反応混合物を周囲温度に加温し、2時間攪拌してからジエチルアミン(3ml)を添加し、次に反応混合物を12時間還流した。反応終了後、真空中で溶媒を除去した。次に生成物を、ジクロロメタン−トルエンおよび水中で溶媒抽出によって分離し、トルエン部分を蒸発させて残った固体残留物をメタノールで洗浄して、2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンを得た(収率96%)。
【0044】
(ii)2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンの合成
2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン(40mmol)およびN,Nジメチルアクリルアミド(100mmol)を、トルエンと酢酸の混合物が入っているシュレンク管に加え、115℃に加熱した。18時間後に反応混合物を80℃に冷却し、真空中で溶媒を蒸発させた。次に、残留物をトリエチルアミン中に溶解し、100℃で2.5時間加熱し、次いで残存している均一な混合物を周囲温度に冷却した。次に生成物を、トルエンおよび水を使用して溶媒抽出によって分離し、トルエン分画を蒸発させて2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカンを得た(収率79%)。
【0045】
(ホルムアルデヒドのヒドロホルミル化)
以下の実施例は、250mlのオートクレーブ中で電磁的に攪拌しながら行った。反応物と溶媒をオートクレーブに充填し、次いで空気を除去し、オートクレーブを一酸化炭素および水素で、それぞれの分圧が30バール(3MPa)になるまで加圧した。次に、オートクレーブの内容物を反応温度に加熱した。反応終了後、この内容物を冷却し、ホルムアルデヒドの転換率およびグリコールアルデヒドの収率を、内部基準に従いジエチレングリコールジメチルエーテルを使用したガス−液体クロマトグラフィによって測定した。全ての配位子は、上記(i)および(ii)の配位子に関して記載したのと類似の化学反応を使用して調製した。
【実施例1】
【0046】
(非水溶液状態における“2−PA”−C20配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、N−メチル−ピロリドリン62ml(0.58mol)、ロジウムジカルボニルアセトニルアセトン(Rh(acac)(CO))0.25mmol、2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.50mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolを、オートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を110℃に加熱して、この温度で2時間保持した。
【0047】
ホルムアルデヒドの転換率は100%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算したグリコールアルデヒドの収率は76%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、595molCO/molRh.hであった。
【実施例2】
【0048】
(水溶液状態における“2−PA”−C20配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、ジブチルアセトアミド35ml(0.22mol)、脱塩水25ml、Rh(acac)(CO)0.25mmol、2−ホスファ−2−イコシル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.53mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolを、オートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を110℃に加熱し、この温度で5時間保持した。
【0049】
ホルムアルデヒドの転換率は64%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は45%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、115molCO/molRh.hであった。
【実施例3】
【0050】
(非水溶液状態における“2−PA”−CHCHC(O)NMe配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.18mol、ジ−sec−ブチルアセトアミド23ml(0.15mol)、Rh(acac)(CO)0.25mmol、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.49mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolを、オートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を100℃に加熱して、この温度で3時間保持した。
【0051】
ホルムアルデヒドの転換率は72%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した単一相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は69%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、275molCO/molRh.hであった。
【実施例4】
【0052】
(非水溶液状態における“2−PA”−CHCHC(O)NMe配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.25mol、N,N’−ジメチルプロピレン尿素35ml(0.26mol)、Rh(acac)(CO)0.10mmol、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.20mmol、およびトリメチル安息香酸3.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を90℃に加熱して、この温度で5時間保持した。
【0053】
ホルムアルデヒドの転換率は73%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した単一相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は71%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、595molCO/molRh.hであった。
【実施例5】
【0054】
(非水溶液状態における“2−PA”−CHCH18配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.25mol、N,N’−ジメチルプロピレン尿素35ml(0.26mol)、Rh(acac)(CO)0.10mmol、2−ホスファ−2−オクチル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.20mmol、およびトリメチル安息香酸3.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を90℃に加熱して、この温度で5時間保持した。
【0055】
ホルムアルデヒドの転換率は69%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した単一相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は66%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、518molCO/molRh.hであった。
【実施例6】
【0056】
(水溶液状態における“2−PA”−CHCHC(O)NMe配位子)
ホルマリン溶液(37%ホルマリン水溶液)の形のホルムアルデヒド0.15mol、ジブチルアセドアミド37ml(0.22mol)、脱塩水7.5ml、Rh(acac)(CO)0.49mmol、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.96mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を90℃に加熱して、この温度で5時間保持した。
【0057】
ホルムアルデヒドの転換率は90%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は90%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、170molCO/molRh.hであった。
【実施例7】
【0058】
(水溶液状態における“2−PA”−CHCHC(O)NPh配位子)
ホルマリン溶液(37%ホルムアルデヒド)の形のホルムアルデヒド0.15mol、ジブチルアセドアミド37ml(0.22mol)、脱塩水7.5ml、Rh(acac)(CO)0.44mmol、2−ホスファ−2−(エチル−N,N−ジメチルアミド)−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デカン0.89mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を110℃に加熱して、この温度で3時間保持した。
【0059】
ホルムアルデヒドの転換率は100%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は52%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、180molCO/molRh.hであった。
【0060】
(比較例A)
(非水溶液状態におけるPPh配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、ジブチルアセトアミド37ml(0.24mol)、Rh(acac)(CO)0.25mmol、トリフェニルホスフィン0.52mmol、およびトリメチル安息香酸9.3mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を90℃に加熱して、この温度で10時間保持した。
【0061】
ホルムアルデヒドの転換率は61%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した単一相の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は40%であった。圧力降下の測定によって計算した初期反応速度は、75molCO/molRh.hであった。
【0062】
(比較例B)
(水溶液状態におけるPPh配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、ジブチルアセドアミド37ml(0.22mol)、脱塩水12.5ml、Rh.(acac)(CO)0.25mmol、トリフェニルホスフィン0.52mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を90℃に加熱して、この温度で10時間保持した。
【0063】
ホルムアルデヒドの転換率は54%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相中の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は25%であった。圧力降下の測定によって計算した反応速度は、51molCO/molRh.hであった。
【0064】
(比較例C)
(水溶液状態における9−イコシル−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、N−オクチル−ピロリドリン37ml(0.19mol)、脱塩水25ml、Rh.(acac)(CO)0.25mmol、9−イコシル−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン0.52mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を110℃に加熱して、この温度で5時間保持した。
【0065】
ホルムアルデヒドの転換率は17%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相中の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は6%であった。
【0066】
(比較例D)
(水溶液状態における9−CHCHC(O)NMe−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン配位子)
パラホルムアルデヒドの形のホルムアルデヒド0.17mol、ジブチル−アセドアミド37ml(0.22mol)、脱塩水25ml、Rh.(acac)(CO)0.25mmol、9−ホスファ−9−(エチル−N,N−ジメチルアミド−ビシクロ[3.3.1]ノナン0.50mmol、およびトリメチル安息香酸9.1mmolをオートクレーブに充填した。オートクレーブ中の内容物を110℃に加熱して、この温度で5時間保持した。
【0067】
ホルムアルデヒドの転換率は3%であり、ホルムアルデヒドの張込量を基に計算した2相中の反応生成物におけるグリコールアルデヒドの収率は0%であった。
【0068】
上記実施例は、本発明の触媒組成物が、水溶液および非水溶液いずれの状態の下でも、トリフェニルホスフィン配位子を含む比較触媒組成物より優れた性能を示し(例えば、実施例1および3を比較例Aと、実施例2および4を比較例Bと比較されたい)、また二環式ホスフィンを含む他の形の配位子をベースとする触媒より優れた性能を示すこと(比較例CおよびDを参照)を実証している。更に、実施例4および5から、一般式(I)(式中、Rは一般式−R−C(O)NRである)の触媒組成物が、水溶液状態の下でも、良好な性能水準を示し続けることが理解される。
【0069】
(エチレングリコールへの水素添加)
本発明に従って調製したグリコールアルデヒドが、エチレングリコールへ容易に転換できることを実証するために、実施例2(水溶液状態の“2−PA”−C20配位子)と同様の条件の下で行われたヒドロホルミル化反応から分離した水相を、ラネーニッケルスラリーで処理した。水相(9.5重量%グリコールアルデヒド25ml)をラネーニッケル触媒のスラリー(2ml)と混合して、40℃で15時間攪拌し、次に圧力50バール(5Mpa)において水素処理した。グリコールアルデヒドからエチレングリコールへの転換率は、90%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ロジウム源、および
b)下記一般式の配位子
P−R (I)
(式中、Rは二価の基であり、結合しているリン原子と一緒になって、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(この基中で、1から5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を表しており、Rは一価の基であり、場合によって置換された、1から40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)
に基づく触媒組成物の存在下で、ホルムアルデヒドを水素および一酸化炭素と反応させることを含むグリコールアルデヒドの調製方法。
【請求項2】
触媒組成物が、c)アニオン源を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二価のR基が、結合しているリン原子と一緒になって、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラアルキル−6,9,10−トリオキサ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基となっている請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一価のR基が、4から34個の炭素原子を有するアルキル基である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一価のR基が、一般式
−R−C(O)NR (II)
(式中、Rはアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表し、あるいはRおよびRが一緒になって二価の架橋基を表す)
である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ホルムアルデヒド源が、ホルムアルデヒド水溶液であり、反応が水相および有機相を含む反応媒体で行われ、前記有機相と水相が22℃において混じり合わない請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機相が水と混じり合わないアミド溶媒を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)ロジウム源、b)下記一般式の配位子
P−R (I)
(式中、Rは二価の基であり、結合しているリン原子と一緒になって、場合によって置換された2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基(この基中で、1から5個の炭素原子がヘテロ原子で置換されている)を表しており、Rは一価の基であり、これは場合によって置換された、10から40個の炭素原子を有するアルキル基であり、または一価のR基が、一般式
−R−C(O)NR (II)
で表され、式中、Rはアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表し、あるいはRおよびRが一緒になって二価の橋かけ基を表す)、および場合によってc)アニオン源を組合せることによって得られる触媒組成物。
【請求項9】
配位子b)におけるRが一般式IIである、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によってグリコールアルデヒドを調製し、次いで前記グリコールアルデヒドを水素化することを含むエチレングリコールの調製方法。

【公表番号】特表2007−516976(P2007−516976A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544436(P2006−544436)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053492
【国際公開番号】WO2005/058788
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】