説明

グリーンハニカム成形体の乾燥装置及び乾燥方法、並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法

【課題】乾燥時のグリーンハニカム成形体の変形や割れを抑制できるグリーンハニカム成形体の乾燥装置及び乾燥方法並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔70aを有する複数のグリーンハニカム成形体70の乾燥方法であって、複数のグリーンハニカム成形体70の周りに水蒸気が存在する雰囲気下で、各のグリーンハニカム成形体70の各貫通孔70aに加熱気体を供給すると同時に、各グリーンハニカム成形体70にマイクロ波を照射する工程を備える。そして、この工程では、隣接する2つのグリーンハニカム成形体70間の距離Dを、すべてマイクロ波の波長の1/2を超える距離とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンハニカム成形体の乾燥装置及びグリーンハニカム成形体の乾燥方法、並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の貫通孔を有するセラミクスハニカム構造体は、セラミクス原料粉及び溶媒を含むグリーンハニカム成形体を成形し、乾燥し、焼成することにより製造される。
【0003】
そして、グリーンハニカム成形体の乾燥方法として、マイクロ波及び加熱気体を用いる方法が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−503136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の乾燥方法では、乾燥時にグリーンハニカム成形体が変形したり割れたりすることがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、乾燥時のグリーンハニカム成形体の変形や割れを抑制できるグリーンハニカム成形体の乾燥装置及び乾燥方法、並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる乾燥方法は、複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体の乾燥方法である。この乾燥方法は、複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下で、各グリーンハニカム成形体の各貫通孔に気体を供給すると共に各グリーンハニカム成形体にマイクロ波を照射する工程を備えている。マイクロ波を照射する工程では、隣接する2つのグリーンハニカム成形体間の距離を、すべてマイクロ波の波長の1/2を超える距離とする。
【0008】
本発明にかかる乾燥装置は、複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体の乾燥装置である。この乾燥装置は、容器と、容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、容器内に気体を供給する気体源と、容器内に蒸気を供給する蒸気供給口と、容器内において、複数のグリーンハニカム成形体の複数の貫通孔の開口が設けられた各端面に対して、気体源から供給される気体を供給する、複数の気体出口と、を備えている。複数の気体出口は、隣接する2つのグリーンハニカム成形体間の距離が、すべてマイクロ波の波長の1/2を超えるように配置されている。
【0009】
本発明にかかるセラミクスハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体を乾燥させてセラミクスハニカム構造体を製造する製造方法である。この製造方法は、セラミクス原料である無機化合物、有機バインダ及び溶媒を少なくとも混合して原料混合物を用意する工程と、原料混合物を隔壁の断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出すと共に所定の長さに切断して複数のグリーンハニカム成形体を取得する工程と、複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下で、各グリーンハニカム成形体の各貫通孔に気体を供給すると共に各グリーンハニカム成形体にマイクロ波を照射する工程と、を備えている。マイクロ波を照射する工程では、隣接する2つのグリーンハニカム成形体間の距離を、すべてマイクロ波の波長の1/2を超える距離とする。
【0010】
本発明によれば、グリーンハニカム成形体70の間隔がマイクロ波の波長の1/2超とされているので、マイクロ波が十分にグリーンハニカム成形体70間に回り込むことができる。また、加熱気体の供給及びマイクロ波の照射中にグリーンハニカム成形体の周りが水蒸気などの蒸気雰囲気とされることにより、グリーンハニカム成形体の外面が中央部よりも先に過度に乾燥することが抑制される。これらにより、複数のグリーンハニカム成形体の乾燥速度のムラを低減でき、従って、乾燥に伴うグリーンハニカム成形体の変形や、外周壁の割れを抑制し、歩留まりを向上できる。
【0011】
ここで、上記乾燥方法又は製造方法は、各グリーンハニカム成形体の複数の貫通孔の開口が設けられた端面に対して気体分散板を接触させる工程を備え、マイクロ波を照射する工程では、気体分散板を介して各貫通孔に気体を供給することが好ましい。
【0012】
また、上記乾燥装置では、各気体出口は、グリーンハニカム成形体の端面をそれぞれ載置可能な面を有する気体分散板であることが好ましい。
【0013】
これらによれば、気体分散板を介して加熱気体などの気体をグリーンハニカム成形体の各貫通孔に供給しているので、各貫通孔に流れる気体の量の不均一性を抑制できる。これにより、より一層、グリーンハニカム成形体の変形や、外周壁の割れを抑制することができ、歩留まりを向上できる。
【0014】
上記の乾燥方法又は製造方法は、複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下となるように、複数のグリーンハニカム成形体の周りに水蒸気を連続的に供給する工程を更に備えるようにしてもよい。
【0015】
上記の乾燥方法又は製造方法では、マイクロ波を照射する工程において、複数のグリーンハニカム成形体の乾燥時間の進行に応じて、照射するマイクロ波の出力を下げるようにしてもよい。
【0016】
上記の乾燥方法又は製造方法では、マイクロ波を照射する工程において、所定の乾燥時間が経過した後、マイクロ波の照射を停止すると共に複数の貫通孔への気体の供給を継続するようにしてもよい。
【0017】
上記の製造方法は、マイクロ波を照射する工程で乾燥が行われた複数のグリーンハニカム成形体の端部を封口する工程を更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥時のグリーンハニカム成形体の変形や割れを抑制できるグリーンハニカム成形体の乾燥装置及び乾燥方法並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、第1実施形態にかかる乾燥装置の概略断面図である。
【図2】図2は、図1の乾燥装置の載置台40の上面図である。
【図3】図3の(a)および(b)は、それぞれ、他の実施形態にかかる乾燥装置の載置台40の上面図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例の乾燥速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
グリーンハニカム成形体の乾燥装置及びその乾燥方法、並びにセラミクスハニカム構造体の製造方法の好適な実施形態について、図1を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
(グリーンハニカム成形体)
まず、乾燥対象となるグリーンハニカム成形体70について説明する。本実施形態に係るグリーンハニカム成形体70は、図1に示すように、それぞれ、Z軸方向に延びる多数の貫通孔70aを有する柱体である。グリーンハニカム成形体70の外形形状は特に限定されないが、例えば、円柱、楕円柱、角柱(例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等)等である。また、各貫通孔70aの断面形状も特に限定されず、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形等の多角形等が挙げられる。貫通孔70aには、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。
【0022】
グリーンハニカム成形体70のZ軸方向の端面から見た場合の、貫通孔70aの配置の形態も特に限定されず、たとえば、貫通孔70aの中心軸が正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている正方形配置、貫通孔70aの中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置等が挙げられる。貫通孔70aの径も特に限定されず、例えば、断面が正方形の場合、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。貫通孔70a同士を隔てる隔壁の厚みは、例えば、0.15〜0.76mmとすることができる。
【0023】
また、グリーンハニカム成形体70の貫通孔70aが延びる方向の長さ(Z方向の全長)は特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーンハニカム成形体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0024】
グリーンハニカム成形体70は、後で焼成することによりセラミクスとなるグリーン(未焼成体)であり、特に、多孔性セラミクスとなるグリーンであることが好ましい。具体的には、グリーンハニカム成形体70は、セラミクス原料を含む。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0025】
グリーンハニカム成形体70は、好ましくは、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0026】
例えば、セラミクスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末、及び/又は、チタン酸アルミニウム粉末を含む。無機化合物源粉末は、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0027】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。有機バインダの量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部である。また、有機バインダの下限量は、0.1重量部であることが好ましく、より好ましくは3重量部である。
【0028】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0029】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜25重量部である。
【0030】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0031】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8重量部である。
【0032】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、10重量部〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは20重量部〜80重量部である。また、成形体全体の重量に対する溶媒の重量は特に限定されないが、10〜30重量%が好ましく、15〜20重量%がより好ましい。
【0033】
このようなグリーンハニカム成形体70は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0034】
まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、所望の長さに切ることにより、グリーンハニカム成形体70を得ることができる。
【0035】
(乾燥装置)
次に、グリーンハニカム成形体70を乾燥させる乾燥装置100について説明する。本実施形態にかかるグリーンハニカム成形体の乾燥装置100は、複数のグリーンハニカム成形体70を乾燥させるものであり、主として、容器10と、容器10内にマイクロ波を供給するマイクロ波源20と、容器10内に配置された載置台40と、載置台40の各気体分散板42を介して容器10内に加熱気体を供給する加熱気体源30と、を備える。気体分散板(気体出口)42は、複数のグリーンハニカム成形体70の複数の貫通孔70aの開口が設けられた各端面(下端面)70dに対して、加熱気体源30から供給される加熱気体を供給する。以下、各部材を詳細に説明する。
【0036】
(容器)
容器10は、グリーンハニカム成形体70、載置台40、及び、管路36の出口部36aを収容可能である。容器10は、マイクロ波を遮蔽する観点から、金属製が好ましい。容器10には、容器10内の気体を外部に排出する排出口10bが設けられている。また、容器10は、マイクロ波源20から供給されるマイクロ波を受け入れる導波管10aを有する。
【0037】
(マイクロ波源)
マイクロ波源20は、グリーンハニカム成形体70中を加熱するためのマイクロ波を発生する。マイクロ波の波長は、グリーンハニカム成形体70を加熱できるものであれば特に限定されない。マイクロ波の好ましい波長は、895〜940MHz、又は、2400〜2500MHzである。マイクロ波源20は、マイクロ波の出力を、乾燥にしたがって低下させることができるものであることが好ましい。マイクロ波の出力は特に限定されないが、グリーンハニカム成形体1個あたり、例えば、1〜10kWとすることができる。
【0038】
(載置台)
載置台40は、容器10内に配置され、その上面にグリーンハニカム成形体70を載せ置く台である。載置台40は、2つの気体分散板(気体出口)42と、2つの気体分散板42の側面を取り囲む通気性のないリング部材44とを備え、外形形状は円板状である。2つのグリーンハニカム成形体70は、その複数の貫通孔70aの開口が設けられた一端面(下面)70dが、各気体分散板42の上面と接触するように気体分散板42上に載置される。各気体分散板42の上面の大きさは、グリーンハニカム成形体70の端面70dの大きさと同等とされている。2つの気体分散板42は、これらの気体分散板42上に載置されたグリーンハニカム成形体70間の距離Dが、マイクロ波源20が供給するマイクロ波の波長をλとしたときに、1/2λ(0.5λ)を超えるように載置台40において配置されている。なお、距離Dの上限は特にはないが、500mm以下であることが好ましい。
【0039】
気体分散板42は、表裏に連通する複数の孔を有する板であり、下方から供給される気体を、上方に通過させる際に、面内方向における気体の流れを均一にさせる。
【0040】
気体分散板42としては、表裏を直線的に貫く孔が多数形成されたいわゆる多孔板(例えばグリーンハニカム成形体と同様のハニカム格子形状)がよいが、表裏を連通しかつ屈曲した細孔を多数有するいわゆる多孔質板でも実施可能である。
【0041】
気体分散板42の材質も特に限定されないが、アルミナ、コージェライト等のセラミクスが挙げられる。気体分散板42の厚みは、たとえば、10〜100mmとすることができる。
【0042】
気体分散板42が多孔板の場合の孔の平面形状も限定されず、例えば、正方形、円形、六角形、八角形とすることができる。孔の径は、例えば、形状が正方形の場合、例えば、一辺の長さ0.7〜10mmとすることができる。また、孔間の壁の厚みは、例えば、0.03〜3.0mmとすることができる。一方、気体分散板42が多孔質板の場合の平均細孔径は特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましい。平均細孔径は、水銀圧入法により測定できる。また、気孔率は、10〜90%が好ましい。なお、多孔質板から構成された多孔板でもよい。
【0043】
リング部材44は、各気体分散板42の側面を取り囲んでおり、各気体分散板42の側面からの気体の漏れを防いでいる。
【0044】
載置台40の中央下面には鉛直軸52が設けられ、鉛直軸52はモータ50によって回転可能とされている。これにより、容器10内で、載置台40を鉛直軸周りに回転させることができる。回転数は特に限定されないが、1〜60rpmとすることができる。
【0045】
(加熱気体源)
加熱気体源30は、容器10の外に配置されたブロア32と、ブロア32からの気体を気体分散板42の下面に導く管路36と、管路36に設けられて管路36を流れる気体を加熱するヒータ34とを備える。気体の加熱温度は特に限定されないが、50〜200℃が好ましく、70〜120℃がより好ましい。気体も特に限定されないが、経済的観点から、空気が好ましい。気体の供給量も特に限定されないが、気体分散板42直上での気体分散板の面積平均の気体の風速が0.1〜10m/秒であることが好ましく、0.5〜5m/秒であることがより好ましい。
【0046】
管路36の出口部36aには、図1及び図2に示すように、上方に面し、上から見てリング状となる開口36abが設けられている。出口部36aの先端36aeは、図1に示すようにリング部材44の下面と接触している。出口部36aが、このような上方に面したリング状の開口36abを有することにより、回転運動する載置台40がどの回転位置にあっても、加熱気体を、気体出口となる気体分散板42を介してグリーンハニカム成形体70の各貫通孔70aに供給可能となっている。出口部36aの先端36aeはリング部材44の下面と摺動しつつ接触することができるようにされており、気体のシールが可能である。
【0047】
(水蒸気供給口)
容器10の壁には、水蒸気供給口10cが形成されている。水蒸気供給口10cには、水蒸気供給ラインL1を介して水蒸気供給源STMが接続されており、容器10内に水蒸気を供給し、各グリーンハニカム成形体の周りを水蒸気が存在する雰囲気下に維持することができる。水蒸気の供給条件も特に限定されないが、例えば、温度は100〜200℃、供給量は0.1〜5.0kg/分とすることが好ましい。
【0048】
(乾燥方法)
続いて、本実施形態にかかるグリーンハニカム成形体の乾燥方法について説明する。
【0049】
まず、容器10の各気体分散板42の上面に、端面70dが接触するように2つのグリーンハニカム成形体70をそれぞれ載せる。
【0050】
続いて、ブロア32を起動するとともに、ヒータ34を起動する。さらに、マイクロ波源20からマイクロ波を容器10内に供給する。また、水蒸気供給口10cから容器10内に水蒸気を連続的に供給し、各グリーンハニカム成形体70の周りを水蒸気が存在する雰囲気とする。さらに、モータ50を駆動して載置台40を回転させる。これにより、載置台40上で、グリーンハニカム成形体70が回転する。
【0051】
そうすると、各グリーンハニカム成形体70の周りが水蒸気存在雰囲気とされた状態で、加熱された気体が、管路36を通って各気体分散板42の下面に供給され、さらに、各気体分散板42を通過して、グリーンハニカム成形体70の各貫通孔70aを通過して各グリーンハニカム成形体70の上端面70uから排出される。その後、排出された気体は、容器10の排出口10bから排出される。また、各グリーンハニカム成形体70にマイクロ波が照射される。
【0052】
このような加熱及び気体の供給により、各グリーンハニカム成形体70の溶媒成分が除去され、乾燥が進む。ここで、乾燥が進むにつれて、マイクロ波源20から供給するマイクロ波の出力を下げることが好ましい。これにより、過乾燥による局所的な温度上昇による暴走(発火)を抑制するという効果がある。
【0053】
水蒸気雰囲気下での加熱気体及びマイクロ波の供給による乾燥により到達する、成形体の最終的な乾燥の程度は特に限定されないが、マイクロ波及び水蒸気の供給を止める時点で、成形体の乾燥率、すなわち、成形体の乾燥前の溶媒質量に対する乾燥により除去された溶媒質量の比を80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることがさらに好ましい。なお、マイクロ波及び水蒸気の供給を止めた後に、加熱気体のみを流すことによって、より乾燥をすすめることも好ましい。
【0054】
そして、本実施形態によれば、グリーンハニカム成形体70の間隔Dがマイクロ波の波長λの1/2超とされているので、マイクロ波が十分にグリーンハニカム成形体70間に回り込むことができる。また、加熱気体の供給及びマイクロ波の照射中に各グリーンハニカム成形体70の周りが水蒸気雰囲気とされることにより、各グリーンハニカム成形体70の外面近傍が中央部よりも先に過度に乾燥することが抑制される。これらにより、各グリーンハニカム成形体の乾燥速度のムラを低減でき、従って、乾燥に伴うグリーンハニカム成形体70の変形や、外周壁の割れを抑制し、歩留まりを向上できる。なお、乾燥の抑制のために水蒸気を用いることが好ましい態様のひとつであるが、グリーンハニカム成形体70の乾燥を抑制できるのであれば、水蒸気に代えて、その他の蒸気を用いて、グリーンハニカム成形体70の周りをその蒸気雰囲気として、上述した乾燥を行ってもよい。また、乾燥に用いる気体は、加熱気体が好ましい態様のひとつではあるが、加熱気体に限定されるわけではなく、常温の気体をそのまま用いてもよい。
【0055】
また、気体分散板42を介して加熱気体をグリーンハニカム成形体70の各貫通孔70aに供給しているので、各貫通孔70aに流れる気体の量の不均一性を抑制できる。これにより、よりいっそうグリーンハニカム成形体70の変形や、外周壁の割れを抑制することができ、歩留まりを向上できる。
【0056】
さらに、このような乾燥装置において複数のグリーンハニカム成形体70を一度に乾燥する場合、マイクロ波を効率よく利用できることから、グリーンハニカム成形体70一つあたりのマイクロ波の出力や加熱気体の供給量を同じとした場合、単独で乾燥する場合に比して乾燥時間を短縮することも可能である。
【0057】
このようにして乾燥したグリーンハニカム成形体70の貫通孔70aの端部を必要に応じて封口し、その後、焼成することにより、セラミクスハニカム構造体が得られる。このようなセラミクスハニカム構造体は、ディーゼルパティキュレートフィルタや、排ガス処理装置の触媒担体として利用可能である。
【0058】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。たとえば、上記実施形態では、載置台40上に気体分散板42を2つ設け、これらの気体分散板42上に2つのグリーンハニカム成形体70を載置し、これらの成形体を一度に乾燥しているが、3つ以上のグリーンハニカム成形体70を一度に乾燥するようにしてもよい。たとえば、図3の(a)のように、各グリーンハニカム成形体70の中心軸が正三角形の頂点に配置されるように3つの気体分散板42を載置台40の配置することにより、3つのグリーンハニカム成形体70を互いに距離D離間させて配置することができる。
【0059】
また、たとえば、図3の(b)のように、各グリーンハニカム成形体70の中心軸が正方形の頂点に配置されるように4つの気体分散板42を配置することにより、4つのグリーンハニカム成形体70を互いに距離D離間させて配置することができる。3つ以上のグリーンハニカム成形体70を一度に乾燥させる場合には、すべてのグリーンハニカム成形体70間の距離Dを上述のように設定する必要がある。
【0060】
また、気体分散板42の配置方法も上記には特に限定されず、隣接する2つのグリーンハニカム成形体70間の距離Dが、すべてマイクロ波の波長の1/2を超える距離離間するように配置できるものであればよい。
【0061】
また、上記実施形態では、気体分散板42の表面が水平に配置されており、気体分散板42の上面にグリーンハニカム成形体70を載せることでグリーンハニカム成形体70が保持されるがこれには限定されない。たとえば、気体分散板42の表面を垂直に配置し、グリーンハニカム成形体70の端面70dがこの垂直表面に接触するように、他の保持部材によりグリーンハニカム成形体70を保持してもよい。
【0062】
また、気体分散板42上にトチと呼ばれる、グリーンハニカム成形体70と同一の組成および貫通孔構造を有する焼成台を設け、その上にグリーンハニカム成形体70を載せてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、複数のグリーンハニカム成形体70の各端面70dに対して加熱気体を供給する複数の気体出口として、気体分散板42を用いているが、貫通孔70aの径が大きい場合等には、気体分散板42を設けずに、管路36の出口部36aの開口から直接2つの端面70dに加熱気体を供給してもよい。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
(ハニカム成形体の製造方法)
無機化合物源粉末として以下のものを用いて、グリーンハニカム成形体を得た。無機化合物源粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al〕、チタニア〔TiO〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO〕換算のモル百分率で、〔Al〕/〔TiO〕/〔MgO〕/〔SiO〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。
【0066】
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量中のケイ素源粉末の含有率は、4.0重量%であった。
(1)アルミニウム源粉末
表1に示される平均粒子径を有するα−アルミナ粉末 24.6重量部
(2)チタニウム源粉末
表1に示される平均粒子径を有するルチル型チタニア粉末 42.0重量部
(3)マグネシウム源粉末
表1に示される平均粒子径を有するマグネシアスピネル粉末 15.7重量部
(4)ケイ素源粉末
表1に示される平均粒子径を有するガラスフリット(タカラスタンダード社製「CK0832」) 3.4重量部
【0067】
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末からなる混合物に、造孔剤として表1に示される平均粒子径を有するコーンスターチを14.3重量部、有機バインダとしてメチルセルロース(商品名:メトローズ 90SH−30000)5.5重量部、可塑剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(商品名:ユニルーブ50MB−72、20℃における粘度が1020mPa・s)4.6重量部、ならびに、潤滑剤としてグリセリン0.3重量部を加え、さらに、分散媒(溶媒)として水27重量部を加えた後、混練機を用いて25℃で混練することにより、坏土(成形用原料混合物)を調製した。
【0068】
ついで、この坏土を押出成形することにより、グリーンハニカム成形体を5本作製した。グリーンハニカム成形体70は円柱状であり、直径は163mm、長さは240mmとした。貫通孔70aの断面形状は一辺1.43mmの正方形であり、隔壁の厚みが0.32mmとなるようにマトリクス状に正方形配置した。
【0069】
【表1】

【0070】
これらのグリーンハニカム成形体を、上述の図1及び図2の乾燥装置で乾燥させた。
【0071】
乾燥条件は以下のようにした。
2つの気体分散板42のスペック:材料:アルミナ、厚み:40mm、孔の平面形状は1辺5.2mmの正方形、壁の厚み1.1mm
グリーンハニカム成形体間の距離D:65mm
マイクロ波の周波数は、2.45GHz、成形体1個あたりのマイクロ波の出力は、乾燥時間0〜7.5分まで5kW、7.5〜10.5分まで3kW、10.5〜13.0分まで1.5kWとし、13分以降は0kWとした。なお、乾燥率は、重量基準の値である。
【0072】
供給気体は空気、供給気体の加熱温度は90℃とした。気体の供給量は、気体分散板42直上での気体分散板の面積平均の気体の風速が1m/秒となるように設定した。水蒸気の温度は120℃、供給量は0.5kg/分とした。マイクロ波の照射時間は時刻0〜13分まで、水蒸気の供給時間は時刻0〜13分まで、加熱気体の供給は時刻0〜25分まで行った。
【0073】
(比較例)
一方の気体分散板42のみの上にグリーンハニカム成形体70を全部で一本のみ載置した以外は実施例と同様にした。なお、一方の気体分散板42の上面は板でふさいで気体が出ないようにした。なお、マイクロ波の出力及び加熱気体の供給は、グリーンハニカム成形体一本あたりのワット数及び供給量が同じとなるように調節した。
【0074】
実施例の乾燥速度を図4のAに白丸及び黒丸で、比較例の乾燥速度を図4のBに白三角で示す。ここで、相対水分とは、乾燥時間0秒におけるグリーンハニカム成形体70の水分の重量を1とした場合の残存水分重量割合のことである。実施例のグリーンハニカム成形体に変形や割れは見られなかった。比較例のグリーンハニカム成形体にも変形や割れが見られなかった。乾燥速度は、実施例の方が大きかった。つまり、比較例よりも実施例の方が乾燥速度は速かった。具体的には、120〜360秒までの乾燥速度は、実施例が−0.342重量%/秒、比較例が−0.269重量%/秒であった。
【符号の説明】
【0075】
10…容器、10c…水蒸気供給口、20…マイクロ波源、30…加熱気体源、42…気体分散板(気体出口)、70…グリーンハニカム成形体、70a…貫通孔、70d…端面、100…乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体の乾燥方法であって、
前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下で、前記各グリーンハニカム成形体の各貫通孔に気体を供給すると共に前記各グリーンハニカム成形体にマイクロ波を照射する工程を備え、
前記マイクロ波を照射する工程では、隣接する2つの前記グリーンハニカム成形体間の距離を、すべて前記マイクロ波の波長の1/2を超える距離とする乾燥方法。
【請求項2】
前記各グリーンハニカム成形体の前記複数の貫通孔の開口が設けられた端面に対して気体分散板を接触させる工程を更に備え、
前記マイクロ波を照射する工程では、前記気体分散板を介して前記各貫通孔に気体を供給する、請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項3】
前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下となるように、前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに水蒸気を連続的に供給する工程を更に備える、請求項1又は2に記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記マイクロ波を照射する工程において、前記複数のグリーンハニカム成形体の乾燥時間の進行に応じて、前記照射するマイクロ波の出力を下げる、請求項1〜3の何れか一項に記載の乾燥方法。
【請求項5】
前記マイクロ波を照射する工程において、所定の乾燥時間が経過した後、前記マイクロ波の照射を停止すると共に前記複数の貫通孔への気体の供給を継続する、請求項1〜4の何れか一項に記載の乾燥方法。
【請求項6】
複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体の乾燥装置であって、
容器と、
前記容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記容器内に気体を供給する気体源と、
前記容器内に蒸気を供給する蒸気供給口と、
前記容器内において、前記複数のグリーンハニカム成形体の前記複数の貫通孔の開口が設けられた各端面に対して、前記気体源から供給される気体を供給する、複数の気体出口と、を備え、
前記複数の気体出口は、隣接する2つの前記グリーンハニカム成形体間の距離が、すべて前記マイクロ波の波長の1/2を超えるように配置された乾燥装置。
【請求項7】
前記各気体出口は、前記グリーンハニカム成形体の前記端面をそれぞれ載置可能な面を有する気体分散板である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
複数の貫通孔を有する複数のグリーンハニカム成形体を乾燥させてセラミクスハニカム構造体を製造する製造方法であって、
セラミクス原料である無機化合物、有機バインダ及び溶媒を少なくとも混合して原料混合物を用意する工程と、
前記原料混合物を隔壁の断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出すと共に所定の長さに切断して前記複数のグリーンハニカム成形体を取得する工程と、
前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下で、前記各グリーンハニカム成形体の各貫通孔に気体を供給すると共に前記各グリーンハニカム成形体にマイクロ波を照射する工程と、を備え、
前記マイクロ波を照射する工程では、隣接する2つの前記グリーンハニカム成形体間の距離を、すべて前記マイクロ波の波長の1/2を超える距離とする、セラミクスハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記各グリーンハニカム成形体の前記複数の貫通孔の開口が設けられた端面に対して気体分散板を接触させる工程を更に備え、
前記マイクロ波を照射する工程では、前記気体分散板を介して前記各貫通孔に気体を供給する、請求項8に記載のセラミクスハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに蒸気が存在する雰囲気下となるように、前記複数のグリーンハニカム成形体の周りに水蒸気を連続的に供給する工程を更に備える、請求項8又は9に記載のセラミクスハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記マイクロ波を照射する工程において、前記複数のグリーンハニカム成形体の乾燥時間の進行に応じて、前記照射するマイクロ波の出力を下げる、請求項8〜10の何れか一項に記載のセラミクスハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記マイクロ波を照射する工程において、所定の乾燥時間が経過した後、前記マイクロ波の照射を停止すると共に前記複数の貫通孔への気体の供給を継続する、請求項8〜11の何れか一項に記載のセラミクスハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記マイクロ波を照射する工程で乾燥が行われた前記複数のグリーンハニカム成形体の端部を封口する工程を更に備える、請求項8〜12の何れか一項に記載のセラミクスハニカム構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−86558(P2012−86558A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203366(P2011−203366)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】