説明

グルカゴン様ペプチド(GLP)−1化合物またはメラノコルチン4受容体(MC4)アゴニストペプチドの経口デリバリーのための化合物、方法および製剤

本発明は、GLP−1化合物またはMC4アゴニストペプチドの経口デリバリーに有用な新規化合物、方法および製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
活性物質デリバリーのための従来の手段は、多くの場合、生物学的、化学的、および物理的な制約により極度に制限されている。通常、これらの制約はデリバリーが起こる環境、デリバリーの標的の環境、または標的自身によって課される。生物学的または化学的な活性物質は、特にこれらの制約に対し脆弱である。生物学的に活性または化学的に活性の薬剤および治療薬の動物へのデリバリーにおいて、物理的および化学的な制約は身体により課される。物理的制約の例は、標的に到達する前に通過する必要のある皮膚および様々な内臓膜であり、化学的制約の例は、pH値の違い、脂質二重層および分解酵素を含むが、これに限定されるものではない。
【0002】
これらの制約は、経口デリバリーシステムの設計において特に重要である。多くの生物学的または化学的活性物質の経口デリバリーは、胃腸(GI)管における様々なpH値、強力な消化酵素、活性物質不浸透性の胃腸膜など、生物学的、化学的および物理的制約がなければ、動物への投与の選択経路になるであろう。多数の物質のうち、一般的に経口投与に適していないのは、例えばカルシトニンおよびインスリン、多糖類、および特にヘパリン、ヘパリノイド、抗生物質およびその他有機物質を含むがこれらに限定されないムコ多糖類のような生物学的または化学的に活性のペプチドである。これらの物質は胃腸管内において酸加水分解、酵素などによって、急速に効力を失うか、あるいは破壊される。
【背景技術】
【0003】
脆弱な薬剤を経口投与するための従来の方法は、人為的に腸壁の浸透性を高める賦形剤またはエンハンサー(例えばレゾルシールおよびポリオキシエチレンオレイルエーテルやn−ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン界面活性剤)の同時投与、ならびに酵素分解を抑制する酵素阻害剤(例えば膵臓トリプシン阻害剤、フルオロリン酸ジイソプロピル)の同時投与に依存してきた。
【0004】
リポソームもまたインスリンおよびヘパリンのための薬物デリバリーシステムであると説明されてきた。例えば、米国特許番号4239754、パテル(Patel)他(1976年)、FEBSレター(FEBS Letters)、62巻、60ページ、およびハシモト(Hashimoto)他(1970年)、日本内分泌学誌(Endocrinology Japan)、26巻、337ページを参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような薬物デリバリーシステムの広範囲での利用は、次のような理由により妨げられる。(1)当該システムが有毒な量の賦形剤、エンハンサーまたは阻害剤を必要とする。(2)適合する低分子量負荷、すなわち活性物質の入手が困難である。(3)活性物質が安定性の乏しさと不十分な保存寿命を示す。(4)当該システムが製造に困難である。(5)当該システムが活性物質(負荷)の保護をしない。(6)当該システムが活性物質を不利に作り変える。または(7)当該システムが活性物質の吸収を許可または促進しない。
【0006】
最近になり、混合アミノ酸(プロテイノイド)の人工ポリマーのミクロスフィアが薬物をデリバリーするために使用されるようになった。例えば、米国特許番号4,925,673は薬物含有プロテイノイドミクロスフィア担体ならびにその調整と使用の方法について記載する。これらのプロテイノイドミクロスフィアは多くの活性物質のデリバリーに有用である。
【0007】
デリバリー物質分子は、米国特許番号5541155、5693338、5976569、5643957、5955503、6100298、5650386、5866536、5965121、5989539、6001347、6071510、5820881および6242495においても開示されている。また、WO02/02509、WO01/51454、WO01/44199、WO01/32130、WO00/59863、WO00/50386、WO00/47188およびWO00/40203を参照のこと。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は式I:
【化1】

I;
[式中、
1およびR2はそれぞれ独立してH、OH、シアノ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、CF3、ハロまたはNR44'であり、
3はH、C1−C6アルキルであり、
Xは、適宜C1−C4アルキルで置換される五員芳香族複素環であり、ここで前記複素環はN、SおよびOから選択された少なくとも2つまたは3つのヘテロ原子を含み、ここで少なくともひとつのヘテロ原子はNでなくてはならず、
YはS、CR5=NまたはN=CR5であり、
nは2、3、4、5、6または7であり、
4はH、COR6、SO27またはC1−C6アルキルであり、
4'はHまたはC1−C6アルキルであり、
5はHであるか、またはXとの結合を形成し、
6はHまたはC1−C6アルキルであり、
7はHまたはC1−C6アルキルである]
で示される化合物、またはその医薬的な塩に関する。
【0009】
本発明はさらに式Iの化合物に関し、ここでR3はHである。当該化合物については式IIの化合物として後に記述する。
【0010】
本発明は式IIの化合物またはその医薬的な塩、および医薬的な担体を含む医薬組成物にも関する。
【0011】
本発明は式IIの化合物またはその医薬的な塩、およびGLP−1化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0012】
本発明は式IIの化合物またはその医薬的な塩、およびMC4アゴニストペプチドを含む医薬組成物にも関する。
【0013】
発明の詳述
以下、「式Iの化合物」または「式IIの化合物」とは、その医薬的な塩を含む。
【0014】
本発明の目的のために、ここで開示および請求するとおり、次の用語を以下のように定義する。
【0015】
「ハロ」という用語はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを示す。「C1−C6アルキル」という用語は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等、1つから6つの炭素原子を持つ直鎖型、分岐型または環状型炭化水素部分を意味する。シクロブチルメチレンのような部分はC1−C6アルキルグループの範囲にも含まれる。「C1−C4アルキル」という用語は、具体的にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルおよびシクロブチルを示す。「C1−C6アルコキシ」グループは、オキシ連結基によって結合したC1−C6アルキル部分である。
【0016】
「医薬/医薬的な」という用語は、形容詞として使用される場合、被治療患者に対し実質的に有害ではないことを意味する。
【0017】
「患者」という用語は、ヒトおよびコンパニオンアニマル(イヌ、ネコ、ウマ等)のようなヒト以外の動物を含む。治療における好適な患者はヒトである。
【0018】
「GLP−1化合物」という用語は、ここで使用される場合、1つ以上の天然GLP−1ポリペプチド(GLP−1(7−37)OHおよびGLP−1(7−36)NH2)、GLP−1断片、GLP−1アナログ、天然GLP−1ポリペプチド、GLP−1断片またはGLP−1アナログのGLP−1誘導体、およびGLP−1受容体と結合して信号変換経路を開始し、引用により本出願に含まれるPCT公開番号WO03/072195(出願番号PCT/US03/03111)に記載のインスリン分泌促進作用を示す能力を有するエキセンディン−3とエキセンディン−4を示す。
【0019】
「MC4アゴニストペプチド」という用語は、ここで使用される場合、PCT特許出願番号PCT/US04/16625(2004年6月17日出願)において開示されている医薬的に有用なペプチド(そこで開示されている式I、IIおよびIIIのペプチド)を示す。
【0020】
式IIの化合物は、前記化合物が活性物質と混合され複合組成物を形成する場合、活性物質、すなわちGLP−1化合物またはMC4アゴニストペプチドの経口バイオアベイラビリティ上昇に有用である。前記複合は本発明の具体的態様である。本発明の組成物は式IIの化合物、すなわちデリバリー物質(式II化合物)およびGLP−1化合物またはMC4アゴニストペプチドを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明は特に、そうしなければ活性物質が目標ゾーン(すなわちデリバリー組成物の活性物質が開放される領域)に到達する前に遭遇する状況により、およびそれが投与される動物の体内において、破壊されるかまたは効果を下げられるGLP−1化合物またはMC4アゴニストペプチド(活性物質)のデリバリーに好都合である。当該組成物は式IIの化合物を1つ以上含み(1つが好ましく、また最も一般的である)、活性物質は選択された生体系への前記活性物質のデリバリーにおいて、またデリバリー物質を用いない活性物質投与と比較して上昇または改良された活性物質のバイオアベイラビリティにおいて、有用性を有する。ある期間にわたって多くの活性物質をデリバリーすることにより、または特定期間(例えばより迅速もしくは遅延デリバリーのため)あるいはある期間(例えば持続性デリバリー)における活性物質のデリバリーにおいて、デリバリーは改良されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい化合物(具体的態様)
本発明のある一部の化合物は特に興味深く好ましい。以下の一覧は好ましい化合物のいくつかのグループを示したものである。一覧の各記載物は、好ましい化合物の追加グループを作成するために他の一覧掲載物と組み合わせ可能であることがわかるであろう。
nが2、3、4または5であり、
1およびR2がそれぞれ独立にH、OH、OCH3、CH3、CF3、ClまたはBrであり、
1およびR2がそれぞれ独立にH、OH、OCH3、CH3またはCF3であり、
1およびR2がそれぞれ独立にH、OH、OCH3またはNH2であり、
1がH、R2がOHであり、
1およびR2がともにHであり、
3がHであり、
4がHであり、
4がCOR6であり、R6がCH3であり、
4がSO27であり、R7がCH3であり、
4'がHであり、
7がC1−C6アルキルであり、
Xが式:
【化2】

であり、アリール(ピリジンまたはチオフェン)置換基が4位の炭素原子にて付加しており、アルカン酸鎖が2位の炭素原子にて付加しており、
Xが式:
【化3】

であり、アリール置換基が3位の炭素原子にて付加しており、アルカン酸が5位の炭素原子にて付加している。
【実施例】
【0023】
調製および実施例
すべての非水系反応は、別段の定めのない限り、窒素の乾燥雰囲気下で実施される。商用の試薬および無水溶媒は業者から配送後直ちに使用され、これらの成分をさらに精製または乾燥させる試みは実施されない。減圧下における溶媒の除去は、テフロン加工のKNF製真空ポンプを使用し、およそ28mmHgの圧力で、ブッチ(Buchi)製ロータリーエバポレータを用いて実現される。薄層クロマトグラフィーは1”×3”アナルテック(Analtech)製02521番、ワットマン(Whatman)製MK6F番、またはEMサイエンス(EM Science)(メルク(Merck))製5719−2番蛍光指示薬付シリカゲルプレートを用いて実行される。TLCプレートの可視化は短波紫外線またはエタノールまたはヨウ素蒸気内での10%リンモリブデン酸を用いた観察により行われる。フラッシュカラムクロマトグラフィーはキーゼルゲル(Kieselgel)シリカゲル60を使用して行われる。プロトンNMRスペクトルはブルカー(Bruker)製AC300MHz核磁気共鳴装置で得られ、テトラメチルシランを内部基準として使用したppmδ値で報告される。融点はエレクトロサーマル(Electrothermal)融点観測装置を使用して得られ、訂正されない。CI質量分光分析は直接噴射による島津製QP−5000GC/質量分析計(メタン)で実行される。API質量分光分析は電子スプレーイオン化(ESI)法または大気圧化学イオン化(APCI)法を使用して、フィネガン(Finnegan)製LCQデュオイオントラップ(DuoIonTrap)またはPESciexAPI150EX質量分析計で実行される。HPLC分析はウォーターズ(Waters)製シンメトリー(Symmetry)C18、5um、WAT046980、3.9×150mmカラムを使用して行われる。溶出系は、20分で90:10(H2O中に0.1%TFA)/(CH3CN中に0.1%TFA)から10:90(H2O中に0.1%TFA)/(CH3CN中に0.1%TFA)になる勾配溶離、続いて10分間の10:90(H2O中に0.1%TFA)/(CH3CN中に0.1%TFA)定組成溶離、続いて10分間の90:10(H2O中に0.1%TFA)/(CH3CN中に0.1%TFA)の定組成溶離から構成される。流量は1ml/分である。紫外検出は214nmと254nmの両方で実施される。
【0024】
調製1
6−オキソ−6−[N’−(ピリジン−2−カルボニル)ヒドラジノ]ヘキサン酸メチルエステル
【化4】

2−ピコリニルヒドラジド溶媒(8.05g、58.8mmol)とアシビン酸モチノメル塩化物(10.5g、58.8mmol)をDMF(117ml)で溶解し窒素下、室温で12時間攪拌する。減圧下において溶媒を除去する。ジチエルエーテル(300ml)で残留物を粉砕し、濾過により固形物を収集し、水(200ml)で溶解し、酢酸エチル(200ml)で洗浄する。飽和NaHCO3溶媒を用いてpH値を8に調整し、酢酸エチル(2x200ml)で抽出する。結合した有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去すると、6−オキソ−6−[N’−(ピリジン−2−カルボニル)ヒドラジノ]ヘキサン酸メチルエステル(3.85g、59%)が得られる。
【0025】
実施例1
5−(5−ピリジン−2−イル[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)ペンタン酸メチルエステル
【化5】

トリエルアミン(14.4ml、104mmol)をアセトニトリル(35ml)中の6−オキソ−6−[N’−(ピリジン−2−カルボニル)ヒドラジノ]ヘキサン酸メチルエステル(9.63g、34mmol)、四塩化炭素(26.6g、172mmol)およびトリフェルホスフィン(20.3g、78mmol)の混合物に加え、窒素下、室温で30分間撹拌する。濾過により固形物を除去し、減圧下で濾過液を除去する。水(500ml)で残留物を希釈し、酢酸エチル(3x500ml)で抽出する。結合した有機抽出物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。酢酸エチルで残留物を粉砕し、濾過によって収集すると、5−(5−ピリジン−2−イル[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)ペンタン酸メチルエステル(8.15g、91%)が得られる。
【0026】
実施例2
5−(5−ピリジン−2−イル[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)ペンタン酸
2N水酸化ナトリウム(20ml)をTHF(60ml)およびメタノール(20ml)中の5−(5−ピリジン−2−イル[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)ペンタン酸メチルエステル(8.16g、31mmol)溶液に窒素下、室温で加え、混合物を12時間加熱還流する。減圧下で溶媒を除去し、残留物を水(500ml)で希釈し、酢酸エチル(200ml)で洗浄する。濃縮HClを用いて水層のpH値を3に調整し、酢酸エチル(3x200ml)で抽出する。結合した有機抽出物を塩水(200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去すると、5−(5−ピリジン−2−イル[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)ペンタン酸(2.05g、27%)が得られる。APCIマススペクトルm/z246[C121333+H]+
【0027】
実施例3
8−(3−ピリジン−2−イル[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)オクタン酸
【化6】

2N水酸化ナトリウム(20ml)をメタノール(100ml)中のエチル8−(3−ピリジン−2−イル[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)オクタン酸塩に窒素下、室温で加え、混合物を3時間攪拌する。減圧下で溶媒を除去し、残留物を水で希釈し、ジエチルエーテルで洗浄する。2N Hclを用いて水層のpH値を1に調整し、真空濾過によって固形物を収集すると、表題の化合物が得られる。APCIマススペクトル m/z288[C151933−H]
【0028】
調製2
メチル2−オキソ−2−チノフェン−3−イルヘキサンジオアート
【化7】

水中の重炭酸ナトリウム溶液をメタノール(50ml)中のスベリン酸モノメチルエステルに室温で加え、30分間攪拌する。減圧下で溶媒を除去し、残留物をアセトン中の2−ブロモ−1−チオフェン−3−イルエタノン溶液に窒素下、室温で加える。混合物を10時間加熱還流後、減圧下で溶媒を除去する。残留物をジエチルエーテルで希釈し、20分間攪拌し、シリカゲルショートカラムで濾過し、ジエチルエーテルで2回洗浄する。減圧下で溶媒を除去すると、表題の化合物が得られる。
【0029】
実施例4
メチル5−(4−チオフェン−3−イルオキサゾール−2−イル)ペンタン酸
【化8】

メチル2−オキソ−2−チオフェン−3−イルヘキサンジオアート、アセトアミドおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテルの混合物を135−140℃、窒素下で4時間加熱する。混合物を冷却し、飽和NaHCO3溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を飽和水酸化ナトリウム塩化物(塩水)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。減圧下で溶媒を除去し、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーを行いヘキサン/酢酸エチルで溶出し、残留物を精製すると表題の化合物が得られる。APCIマススペクトル m/z266[C1315NO3S+H]+
【0030】
実施例5
5−(4−チオフェン−3−イル−オキサゾール−2−イル)ペンタン酸
【化9】

水中の水酸化ナトリウム溶液を、エタノール中のメチル5−(4−チオフェン−3−イルオキサゾール−2−イル)吉草酸溶液に室温で加え、混合物を40℃で2時間加熱する。1N HClで混合物のpH値を2に調整し、酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去する。残留物をヘキサン/酢酸エチルで粉砕し、濾過により固形物を収集すると表題の化合物が得られる。APCIマススペクトル m/z252[C1213NO3S+H]
【0031】
実施例6の化合物の調整における説明と同様の処理過程で、下記の表1に記載された化学式II(a)の化合物、実施例6−11の調整を行う。
【化10】

II(a)
表1: 化学式II(a)の化合物
【表1】

【0032】
調製3
2−ブロモ−1−(3−メトキシ−ピリジン−2−イル)エタノン
【化11】

水素化ナトリウム(5.91g、147.8mmol)をDMF(無水、200ml)中の急速に攪拌した2−ブロモ−3−ピリジノール溶液に加える。30分後、ヨードメタン(9.2ml、147.8mmol)を加え、窒素ガス(N2)下で2.5時間攪拌する。水でクエンチし、濃縮する。残留物をEt2Oと水に分配し、層を分離させる。Et2O(x2)で水層から抽出し、結合層をMgSO4で乾燥させ濃縮する。シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを行い0−25%Et2O/ヘキサンで溶出し、残留物を精製すると2−ブロモ−3−メトキシ−ピリジン(21.0g、83%)が得られる。
【0033】
銅(I)ヨウ化物(38mg、0.2mmol)を密閉した試験管内の2−ブロモ−3−メトキシ−ピリジン(188mg、1.0mmol)、トリブチル(1−エキトシビニル)スズ(0.68ml、2.0mmol)およびDMF(無水、4ml)の混合物に加える。N2を注入し、密閉し、80℃で30時間加熱する。シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを行い0−30%EtOAc/ヘキサンで溶出し、残留物を精製すると2−(1−エトキシ−ビニル)−3−メトキシ−ピリジン(151mg、84%)が得られる。
【0034】
N−ブロモ−スクシニミド(306mg、1.7mmol)をTHF(30ml)および水(2ml)中で攪拌した2−(1−エトキシ−ビニル)−3−メトキシ−ピリジン(305mg、1.7mg)溶液に加える。窒素ガス(N2)下、RTで15分間攪拌する。SiO2に吸着させ、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを行い0−40%EtOAc/ヘキサンで溶出し、残留物を精製すると表題の化合物(211mg、54%)が得られる。
【0035】
実施例12
5−[4−(3−メキトシ−ピリジン−2−イル)オキサゾール−2−イル]ペンタン酸メチルエステル
【化12】

三フッ化ホウ素エーテル(0.30ml、1.00mmol)を、2−ブロモ−1−(3−メトキシ−ピリジン−2−イル)エタノン(231mg、1.00mmol)、5−カルバモイル−ペンタン酸メチルエステル(222mg、1.39mmol)およびTHF(無水、3ml)を入れて密閉した試験管に加える。N2を注入し、密閉し、80℃で一晩加熱する。NaHCO3水溶液と20%i−PrOH/CHCl3に分配し、層を分離させる。20%i−PrOH/CHCl3(x3)で水層から抽出し、結合層をMgSO4で乾燥させ濃縮する。SiO2に吸着させ、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを行い1−3%、メタノール/CHCl3で溶出し、残留物を精製すると表題の化合物(97mg、33%)が得られる。MS(IS)291(M+1)+
【0036】
実施例13
5−[4−(3−ヒドロキシ−ピリジン−2−イル)オキサゾール−2−イル]ペンタン酸
5−[4−(3−メトキシ−ピリジン−2−イル)オキサゾール−2−イル]ペンタン酸メチルエステルを三フッ化ホウ素で処理し、続いて標準的な加水分解を行うと、表題の化合物が得られる。
【0037】
製剤
式IIの化合物は塩基性および/または酸性部分(すなわちアミノおよび/またはカルボン酸)を含むことができるため、前記化合物は、医薬的な塩、例えばナトリウム塩または塩酸塩または「医薬的な塩のハンドブック:特性、選択および使用(Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use)」ワインハイム(Weinheim)、ニューヨーク:VHCA;ワイリーVCH(Wiley−VCH)、2002年に記載の塩として製剤されることができる。式IIの化合物は、被治療患者に投与される前に、好ましくは容量単位の形態で、すなわち個別のデリバリー媒体、例えばタブレットやカプセルの形で製剤される。従って、本発明のさらにもう1つの具体的態様は、化学式IIの化合物またはその医薬的な塩、活性物質、および医薬的な担体を含む医薬組成物である。
【0038】
本医薬組成物は、周知であり容易に入手できる材料を用い、既知の手法により調製される。本発明の製剤の製造において、デリバリー物質(式II化合物)は活性物質と混合され、通常は担体と混合され、または担体により希釈されるか、カプセル、小袋、紙または他の容器の形態をとる可能性のある担体内に包括される。担体が希釈剤として機能する場合、担体は固体、半固体、または活性材料の媒体、賦形剤、媒介物として作用する液状物質でありうる。
【0039】
バイオアッセイ手法
デリバリー物質製剤開発
GLP−1化合物の経口服用を行うには、一般にそれぞれの製剤はpH範囲を7.4から8.4に設定され、一方でMC4アゴニストペプチドを製剤とするためのpH範囲は一般的に6.8から7.2(最も一般的には7.0)が利用される。両方の場合において、標的デリバリー物質濃度は150mg/mlが代表的である。初期フィージビリティスタディが担体製剤の最終決定のために行われる。
【0040】
つまり、デリバリー物質200mgをタイプIガラスバイアルで計量し、ミリキュー(MilliQ)水1mlを加える。それぞれの混合物の溶解度を視覚的に調べ、続いて溶解度を上げるためにNaOHを追加、またはpH値を経口服用範囲まで下げるためにHClを追加する。製剤はその後ミリキュー(MilliQ)水で150mg/mlに希釈される。このアプローチを用いて、製剤は一般に3つの範疇に分類される。水溶性、ほとんど完全な可溶性(例えば残留している少数の非溶解粒子、大変純度の高い水性懸濁液または曇った懸濁液)および非水溶性(例えば重懸濁液)である。非水溶性を示すデリバリー物質は、必要に応じ4%w/v(水性)ヒドロキシプロピルセルロース(クルーセル(登録商標)LF、ヘラクレス、ウィルミントン、DE)中で製剤される。これらの場合、50〜100mgの物質をタイプIガラスバイアル内のクルーセル(登録商標)LF中で懸濁し、濃度を200mg/mlとする。重水およびクルーセル(登録商標)LF懸濁液を使用するには、調合液を3分間氷で冷却し、続いてミゾニックス ソニケーター(登録商標)(Misonix Sonicator(登録商標))(ウルトラソニック プロセッサ XL(3/16インチ マイクロチップ)を用い、氷上で30分間超音波処理を行って、粒径を小さくする。NaOHまたはHClでpH調整後、製剤はミリキュー(MilliQ)水またはクルーセル(登録商標)LFで150mg/mlに希釈される。
【0041】
貯蔵用活性物質溶液の製剤
ここで使用されるGLP−1化合物(例えばVal8−Glu22−GLP−1(7−37)OHおよびVal8−Glu22−I33−GLP−1(7−37)OH)およびMC4アゴニストペプチド(例えばAc−Arg−シクロ[Cys−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Cys]−NH2、Ac−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−Cys]−NH2、Ac−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−ペニシラミン]−NH2およびN−シクロヘキサンカルボニル−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−ペニシラミン]−NH2)は、PCT特許公開番号WO03/072195およびPCT特許出願番号PCT/US04/16625(6月17日出願)にそれぞれ記載されている。
【0042】
GLP−1化合物活性物質の原液は以下のように調整される。つまり、既知の量の凍結乾燥した活性物質をタイプIガラスバイアルで計量する。その後、ミリキュー(MilliQ)水を加え、最初の濃度をおよそ7〜10mg/mlとする。1N NaOHと5N NaOHで媒介物のpH値をゆっくり10.5まで上昇させることによってペプチドを完全に溶解させ、続いて室温で30分間培養する。pH8.0の1M トリス緩衝液を大量に加え、20mM トリス最終緩衝剤で処理し、1N HClと5N HClでpH値を7.8に調整する。続いて溶媒を低タンパク結合0.22μMのシリンジフィルター(マイレクス−GV、ミリポア(Millipore)製)により濾過する。ペプチド濾過液の濃度は紫外線分光器(λmax=280nm)により測定される。その後溶媒を20mMトリス緩衝液pH7.8を使用して、およそ5.0mg/mlのストック濃度まで希釈する。活性物質溶液は、使用するまで1.0mlに等分して−70℃で保存する。
【0043】
MC4Rアゴニストペプチドの貯蔵用溶液は、以下のように調整する。つまり、既知の量の冷凍乾燥したMC4RアゴニストペプチドをタイプIガラスバイアルで計量する。その後、ミリキュー(MilliQ)水を加え、最初の濃度をおよそ19〜21mg/mlとする。1N NaOHと5N NaOHでpH値を6.0まで上昇させ、続いて室温で30分間培養する。ペプチド溶液の濃度は、紫外線分光器(max=280nm、散乱光補正250nm〜410nm適用)により測定される。溶液はその後、濃度およそ20.0mg/mlのストックとして保存される。ペプチド溶液は、使用するまで4〜8℃で冷凍保存する。
【0044】
ラット経口デリバリー方法
これらの調査には、雄のスプレーグ−ドウリィ(Sprague−Dawley)(大腿部動脈にカニューレを挿入、チャールズ・リバー(Charles River)、ウィルミントン、MA)250〜300gのラットを用いる。ラットはひとつのステンレス鋼ケージに収容し、イーライリリーアンドカンパニー(Eli Lilly and Company)アニマルケア・アンド・ユース・ポリシーズ・アンド・プロシージャーズ(Animal Care and Use Policies & Procedures)に従って飼育する。ラットは薬剤投与前最低12時間絶食させておく(水は自由に摂取させる)。それぞれの実験(デリバリー物質+活性物質)は4個体のラットを1グループとして行う。それぞれのデリバリー物質の最終製剤は生体内投与のおよそ5〜10分前に新たに調整する。
【0045】
具体的には、デリバリー物質製剤(〜165mg/ml貯蔵物)およびGLP−1化合物活性物質溶液(〜5.0mg/ml貯蔵物)を同時に加え、デリバリー物質+活性物質の混合物を生成する。前述の各製剤の最終的な濃度は、それぞれ150mg/mlおよび0.5mg/mlである。製剤は経口胃管栄養法(PO)によって、300mg/kgの最後のデリバリー物質および1.0mg/kgの活性物質が投薬される。全身(大腿部動脈)カニューレを用い、5分、10分、20分時点の血液サンプルを各ラットから(各時点ごとに1サンプル)EDTA試験管内に1ml採集する。試験管は採集後すぐに氷上で冷却し、およそ5℃/3000rpmで15分間遠心分離機にかける。血漿を除去し、12×75mmのスナップキャップ付のポリプロピレン試験管内へ移し、直ちに−70℃にして放射線免疫アッセイ検査による分析を行うまで保存する。
【0046】
MC4アゴニストペプチド活性物質の場合は、デリバリー物質製剤(〜165mg/ml貯蔵物)およびペプチド溶液(〜20mg/ml貯蔵物)を同時に加え、デリバリー物質+活性物質の混合物を生成する。前述の各製剤の最終濃度は、それぞれ150mg/mlおよび5.0mg/mlである。製剤は経口胃管栄養法(PO)によって、300mg/kgの最後のデリバリー物質および10.0mg/kgの活性物質が投薬される。全身(大腿部動脈)カニューレを用い、5分、15分、30分、60分、90分、120分時点の血液サンプルを各ラットから(各時点ごとに1サンプル)ヘパリン試験管内に0.40ml採集する。試験管は採集後すぐに氷上で冷却し、およそ5℃/3000rpmで15分間遠心分離機にかける。血漿を除去し、96ウェルプレートに移し、直ちに−70℃にしてLC/MS/MSによる分析を行うまで保存する。
【0047】
放射線免疫アッセイ検査および薬物動態解析
ラット血漿中の免疫反応性活性物質の濃度をネイティブな(native)ペプチドおよび代謝産物を非特異的に検出する放射線免疫アッセイ検査により分析する。これらの濃度はその後、報告された薬物動態パラメータを測定するために使用される。血漿サンプルを、放射性同位元素により識別した活性物質およびウサギ多クローン性抗血清と混合し、その後4℃で一晩培養する。結合および遊離形状の免疫反応性活性物質は、ポリエチレングリコール処理した第二次抗体沈殿を使用して結合画分を沈殿することによって分離される。遠心分離により結合画分を収集後、ガンマ線測定装置にて放射能を測定する。データを加重4/5パラメータの論理的アルゴリズムで分析する。GLP−1化合物の場合、標準曲線は9.8pg/mlから10000pg/mlの範囲をとり、数量化の上限および下限はそれぞれ150pg/mlおよび4000pg/mlである。MC4アゴニストペプチドの場合、標準曲線は5.0ng/mlから5000ng/mlの範囲をとり、数量化の上限および下限はそれぞれ10ngおよび5000ng/mlである。薬物動態解析はウィンノンリン(商標)(WinNonlinTM)バージョン3.0(ファーサイトコーポレーション(Pharsight Corporation)、マウンテンビュー、CA)を用いて行われる。血漿濃度の時間データは平均±標準偏差(SD)で報告される。デリバリー物質の効率は、0分から20分で測定される血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)として明示される。式IIの代表的な化合物(デリバリー物質)はラット経口デリバリーアッセイにて分析され、デリバリー物質の存在下における活性物質のAUCは、活性物質の非存在下における活性物質のAUCより大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

I;
[式中、
1およびR2はそれぞれ独立してH、OH、シアノ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、CF3、ハロまたはNR44'であり、
3はH、C1−C6アルキルであり、
Xは、適宜C1−C4アルキルで置換される五員芳香族複素環であり、ここで前記複素環はN、SおよびOから選択された少なくとも2つまたは3つのヘテロ原子を含み、ここで少なくともひとつのヘテロ原子はNでなくてはならず、
YはS、CR5=NまたはN=CR5であり、
nは2、3、4、5、6または7であり、
4はH、COR6、SO27またはC1−C6アルキルであり、
4'はHまたはC1−C6アルキルであり、
5はHであるか、またはXとの結合を形成し、
6はHまたはC1−C6アルキルであり、
7はHまたはC1−C6アルキルであり、ここで前記式Iの化合物は式:
【化2】

ではない]
で示される化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項2】
1およびR2がそれぞれ独立してH、OH、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、CF3、ハロまたはNR44'であり、XがC1−C4アルキルで置換されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
3がHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが式:
【化3】

であり、R3がHであり、(CH2nCO23部分が2の位置にて付加している、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項5】
Xが式:
【化4】

であり、R3がHであり、(CH2nCO23部分が5の位置にて付加している、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項6】
式:
【化5】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項7】
式:
【化6】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項8】
式:
【化7】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項9】
式:
【化8】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項10】
式:
【化9】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項11】
式:
【化10】

の化合物、またはその医薬的な塩。
【請求項12】
a)請求項3から11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的な塩、およびb)GLP−1化合物を含む、医薬組成物。
【請求項13】
GLP−1化合物がVal8−Glu22−GLP−1(7−37)OHである、請求項14に記載の組成物。
【請求項14】
a)請求項3から11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的な塩、およびb)MC4アゴニストペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項15】
MC4アゴニストペプチドが、
Ac−Arg−シクロ[Cys−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Cys]−NH2と、
Ac−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−Cys]−NH2と、
Ac−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−ペニシラミン]−NH2と、
N−シクロヘキサンカルボニル−シクロ[hCys−His−D−Phe−Arg−Trp−ペニシラミン]−NH2と、
からなるグループより選択される、請求項16に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−502817(P2007−502817A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523866(P2006−523866)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/024387
【国際公開番号】WO2005/019212
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】