説明

グルコアミラーゼ変異体

触媒ドメインと澱粉結合ドメイン(SBD)とを含む単離されたグルコアミラーゼ変異体であって、SBDがSEQIDNO:2の493,494,495,501,502,503,508,511,517,518,519,520,525,527,531,533,535,536,537,538,539,540,545,546,547,549,551,561,563,567,569,577,579,または583の位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置に相当する位置に、少なくとも1のアミノ酸置換を有する、熱安定性及び比活性度が改善されたグルコアミラーゼ変異体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願とのクロスリファレンス>
本願は、2006年10月10日出願の米国仮出願60/850,431に基づく優先権を主張して2007年10月9日に出願した国際出願PCT/US07/21683に基づく優先権を主張し、両出願は本願に参照として組み込まれる。
【0002】
本願発明はグルコアミラーゼ変異体に関する。特に、本願発明はグルコアミラーゼの澱粉結合ドメイン (SBD)変異体に関する。また本願発明は、親グルコアミラーゼと比較して改変された性質(例えば熱安定性の向上や非活性度の向上)を有する変異体に関する。本願発明により、グルコアミラーゼ変異体から成る酵素組成物、この変異体をコードするポリヌクレオチドから成るDNA構造体、及び宿主細胞中でグルコアミラーゼ変異体を産出する方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
グルコアミラーゼ酵素(グルカン1,4-α-グルコヒドロラーゼ,EC 3.2.1.3)は澱粉を加水分解するエクソ活性カルボヒドラーゼであり、澱粉の非還元末端、または関連するオリゴ及びポリサッカライド分子からのグルコースユニットの除去反応の触媒となる。グルコアミラーゼは、澱粉の直鎖及び分岐結合の両者を加水分解することができる。
【0004】
グルコアミラーゼは、様々な種類のバクテリア、菌類、イースト及び植物から産出される。商業的に重要で、また興味のあるグルコアミラーゼは、菌類に由来し、細胞外で産出される酵素である。このような菌類は例えばアスペルギルス属(Svensson et al. (1983) Carlsberg Res. Commun. 48:529 - 544; Boel et al., (1984) EMBO J. 3: 1097 - 1 102; Hayashida et al., (1989) Agric. Biol. Chem. 53:923 - 929; USP 5,024,941 ; USP 4,794,175 及びWO 88/09795); タラロマイセス属(USP 4,247,637; USP 6,255,084 及びUSP 6,620,924); リゾプス属(Ashikari et al., (1986) Agric. Biol. Chem. 50:957 - 964; Ashikari et al., (1989) App. Microbiol, and Biotech. 32: 129 - 133 及びUSP 4,863,864); Humicola (WO 05/052148 及びUSP 4,618,579) 及びムコール属 (Houghton-Larsen et al., (2003) Appl. Microbiol. Biotechnol.62:210 - 217)等である。
このような酵素をコードする遺伝子がクローンされ、イースト、菌類あるいはバクテリアの細胞中で発現されている。
【0005】
グルコアミラーゼは商業的に重要な酵素であり、澱粉の加水分解が要求される様々な用途で用いられている(例えば澱粉からグルコースや他のモノサッカライドを製造する場合等)。グルコアミラーゼは、アメリカのシロップ市場の50%以上を占めるコーンシロップの製造に用いられている。
一般に、澱粉をデキストリンにしてさらにグルコースへ加水分解する加水分解プロセスにおいて、グルコアミラーゼはアルファアミラーゼと組み合わせて広く用いられている。グルコースは他の酵素(例えばグルコースイソメラーゼ)によりフラクトースに転換され;結晶化され;あるいは発酵されて様々な最終製品(例えばエタノール、クエン酸、乳酸、コハク酸塩、アスコルビン酸中間体、グルタミン酸、グリセロール、及び1,3-プロパンジオール)にされる。澱粉またはセルロースを含む物質をグルコアミラーゼを用いて発酵させることにより製造されたエタノールは、アルコール飲料または燃料の原料として用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グルコアミラーゼは様々な用途に長年用いられているが、性質が改善されたグルコアミラーゼ、例えば熱安定性及び非活性度が改善されたグルコアミラーゼに対する要求が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面では、この発明は触媒ドメインと澱粉結合ドメイン(SBD)とを有する単離されたグルコアミラーゼ変異体に関し、このSBDはSEQ ID NO:2の493, 494, 495, 501, 502, 503, 508, 511, 517, 518, 519, 520, 525, 527, 531, 533, 535, 536, 537, 538, 539, 540, 545, 546, 547, 549, 551, 561, 563, 567, 569, 577, 579, 及び583位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置に相当する位置に、1以上のアミノ酸置換を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼの同等の位置は配列同一性に基づいて決められ、この親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対し少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、100%未満のアミノ酸配列同一性を有する。別の実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対し少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。
また別の実施形態では、同等の位置はSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:11に対する構造の同一性に基づいて決められる。いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO: 11, SEQ ID NO:385, SEQ ID NO:386, SEQ ID NO:387, SEQ ID NO:388, またはSEQ ID NO:389から選択されたSBDに対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するSBDを備える。
別の実施形態では、触媒ドメインはSEQ ID NO:3の配列に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。また別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:2の520, 535または539の位置に相当する。また別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:2の519および/または563の位置に相当する。
また別の実施形態では、単離されたグルコアミラーゼ変異体はさらに、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の残基位置10, 14, 15, 23, 42, 45, 46, 59, 60, 61, 67, 68, 72, 73, 97, 98, 99, 102, 108, 1 10, 113, 114, 122, 124, 125, 133, 140, 144, 145, 147, 152, 153, 164, 175, 182, 204, 205, 214, 216, 219, 228, 229, 230, 231, 236, 239, 240, 241, 242, 244, 263, 264, 265, 268, 269, 276, 284, 291, 300, 301, 303, 310, 311, 313, 316, 338, 342, 344, 346, 349, 359, 361, 364, 379, 382, 390, 391, 393, 394, 408, 410, 415, 417, 418, 430, 431, 433, 436, 442, 443, 444, 448及び451に相当する位置に、1以上のアミノ酸置換を有する。
【0008】
別の側面では、本願は触媒ドメインとSBDとから成る単離されたグルコアミラーゼ変異体に関し、SBDはSEQ ID NO: 2の493, 494, 495, 502, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 539, 563, 及び577位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼにおける同等の位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2の配列に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:2 のT493C, T493M, T493N, T493Q, T493Y, P494H, P494I, P494M, P494N, P494Q, P494W, T495M, T495P, T495R, H502A, H502M, H502S, H502V, E503C, E503D, E503H, E503S, E503W, Q508N, Q508P, Q508Y, Q511C, Q511G, Q511H, Q511I, Q511K, Q511T, Q511V, N518P, N518T, A519I, A520C, A520E, A520L, A520P, A520Q, A520R, A520W, V531A, V531L, V531N, V531R, V531S, V531T, A535E, A535F, A535G, A535K, A535L, A535N, A535P, A535R, A535S, A535T, A535V, A535W, A535Y, V536C, V536E, V536I V536L, V536M, V536Q, V536S, A539E, A539M, A539R, A539S,及びA539Wに対応し、または親グルコアミラーゼにおける同等の位置に対応する。
別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:2のT495R, E5O3C, E503S, Q511H, V531L,またはV536Iの位置に対応する。また別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:2の494, 511, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 563及び577の位置に対応する。
【0009】
別の側面では、本願は触媒ドメインとSBDとから成る単離されたグルコアミラーゼ変異体に関し、SBDはSEQ ID NO:2のT493I, T495K, T495R, T495S, E503A, E5O3C, E5O3S, E503T, E503V, Q508H, Q508R, Q508S, Q508T, Q511A, Q511D, Q511H, Q511N, Q511S, N518S, A519E, A519K, A519R, A519T, A519V, A519Y, A520C, A520L, A520P, T527A, T527V, V531L, A535D, A535K, A535N, A535P, A535R, V536I, V536R, N537W, A539E, A539H, A539M, A539R, A539S, N563A, N563C, N563E, N563I, N563K, N563L, N563Q, N563T, N563V, N577A, N577K, N577P, N577R,及びN577V位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼにおける同等の位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2の配列に対し少なくとも90%のアミノ酸配列を有する。
【0010】
また別の側面では、本願は触媒ドメインとSBDとから成る単離されたグルコアミラーゼ変異体に関し、SBDはSEQ ID NO:2の503, 511, 519, 531, 535, 539, 563,及び577位置に対応する。
いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:2のE503A, E503C, E503V, Q511H, A519K, A519R, A519Y, V531L, A535K, A535N, A535P, A535R, A539E, A539R, A539S, N563C, N563E, N563I, N563K, N563L, N563Q, N563T, N563V, N577K, N577P,及びN577Rから選択される。
【0011】
別の側面では、本願は触媒ドメインと澱粉結合ドメイン(SBD)とから成る単離されたグルコアミラーゼ変異体に関し、a)触媒ドメインはSEQ ID NO:3のアミノ酸配列に対し少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を備え、b)SBDはSEQ ID NO: 11の3, 4, 5, 11, 12, 13, 18, 21, 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41, 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61, 71, 73, 77, 79, 87, 89,及び93位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有するか、または、SBDは親グルコアミラーゼSBDのSEQ ID NO:11の同等の位置に1以上のアミノ酸置換を有する。
いくつかの実施形態では、触媒ドメインはSEQ ID NO:3に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を備える。また別の実施形態では、触媒ドメインはSEQ ID NO:3のアミノ酸配列に対し少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を備える。
また別の実施形態では、SBDはSEQ ID NO:11の3, 4, 5, 11, 12, 13, 18, 21, 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41, 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61, 71, 73, 77, 79, 87, 89,及び93に相当する位置に、1以上のアミノ酸置換を備える。
別の実施形態では、SEQ ID NO:11の3, 4, 5, 12, 13, 18, 21, 28, 29, 30, 37, 41, 45, 46, 47, 49, 73,及び87位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼのSBDの同等の位置に1以上のアミノ酸置換を有する。また別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:11の3, 5, 13, 18, 21, 28, 29, 30, 37, 41, 45, 46, 47, 49, 73,及び87位置に対応する。また別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換はSEQ ID NO:11の5, 13, 21, 30, 41, 45, 46,及び49位置に対応する。
【0012】
また別の側面では、本願のグルコアミラーゼ変異体はその親グルコアミラーゼと比較して少なくとも1の改変された性質を有する。いくつかの実施形態では、改変された性質は非活性度の向上である。また別の実施形態では、改変された性質は熱安定性の向上である。
【0013】
また別の側面では、親グルコアミラーゼは、トリコデルマ属、アスペルギルス属、フミコーラ属、ペニシリウム属、タラロマイセス属、シゾサッカロミセス属に由来するグルコアミラーゼから選択される。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2, 3, 4, 5, 6, 7, 8,または9の配列を備える。
【0014】
この発明の別の側面には、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドと、このポリヌクレオチドを備える宿主細胞が含まれる。
【0015】
またこの発明の別の側面には、本願のグルコアミラーゼ変異体を含む酵素組成物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】632のアミノ酸残基(SEQ ID NO: 1)を有するトリコデルマ・リーゼイ・グルコアミラーゼ(TrGA)を表す。シグナルペプチドに下線を付して図示した。アミノ酸残基SVDDFI (SEQ ID NO: 12)から始まり453アミノ酸残基を有する触媒領域(SEQ ID NO:3)は太字で図示した。リンカー領域はイタリックで図示し、澱粉結合ドメイン(SBD)は下線を付してイタリックで示した。触媒ドメイン(SEQ ID NO:3)、リンカー領域(SEQ ID NO: 10)、澱粉結合ドメイン(SEQ ID NO:11)を含む成熟タンパクをSEQ ID NO:2に示す。この発明のTrGAグルコアミラーゼ分子のSBD番号付与については、成熟TrGAの単離されたSBD配列を表す a)成熟TrGAのSEQ ID NO:2中の491から599位置、および/または、SEQ ID NO:11中の1から109位置が参照される。TrGA分子の触媒ドメインの番号付与についてはSEQ ID NO:2 及びSEQ ID NO:3が参照される。
【図1B】TrGAをコードするcDNA (SEQ ID NO:4)を表す。
【図1C】成熟タンパクTrGAドメインとTrGA前駆体を表す。
【図2】TrGAのcDNA (SEQ ID NO:4)を含む目的プラスミドpDONR-TrGAを表す。
【図3】プラスミドpTTT-Destを表す。
【図4】最終発現ベクターpTTT-TrGAを表す。
【図5A】アスペルギルス・アワモリ(AaGA) (SEQ ID NO:5); アスペルギルス・ニガー(AnGA) (SEQ ID NO:6); アスペルギルス・オリザエ(AoGA) (SEQ ID NO.7); トリコデルマ・リーゼイ(TrGA) (SEQ ID NO:3); フミコーラ・グリセア(HgGA) (SEQ ID NO:8); 及びヒポルレア・ビノサ(HvGA)(SEQ ID NO:9)に由来するグルコアミラーゼを含む親グルコアミラーゼの触媒ドメインの配列比較を表す。
【図5B】アスペルギルス・アワモリ(AaGA) (SEQ ID NO:5); アスペルギルス・ニガー(AnGA) (SEQ ID NO:6); アスペルギルス・オリザエ(AoGA) (SEQ ID NO.7); トリコデルマ・リーゼイ(TrGA) (SEQ ID NO:3); フミコーラ・グリセア(HgGA) (SEQ ID NO:8); 及びヒポルレア・ビノサ(HvGA)(SEQ ID NO:9)に由来するグルコアミラーゼを含む親グルコアミラーゼの触媒ドメインの配列比較を表す。同じアミノ酸にアスタリスク(*)を付して図示した。
【図5C】タラロマイセスのグルコアミラーゼ(TeGA)成熟タンパク配列(SEQ ID NO:384)を表す。
【図5D】トリコデルマ・リーゼイ(SEQ ID NO:11), フミコーラ・グリセア(HgGA) (SEQ ID NO:385), サーモミセス・ラヌギノサス(ThGA) (SEQ ID NO:386), サーモミセス・エマーソニー(TeGA) (SEQ ID NO:387), アスペルギルス・ニガー(AnGA) (SEQ ID NO:388); 及びアスペルギルス・アワモリ(AaGA) (SEQ ID NO:389)の親グルコアミラーゼの澱粉結合ドメイン(SBD)の配列比較を表す。
【図5E】トリコデルマ・リーゼイ(SEQ ID NO: 11), フミコーラ・グリセア(HgGA) (SEQ ID NO:385), サーモミセス・ラヌギノサス(ThGA) (SEQ ID NO:386), サーモミセス・エマーソニー(TeGA) (SEQ ID NO:387), アスペルギルス・ニガー(AnGA) (SEQ ID NO:388); 及びアスペルギルス・アワモリ(AaGA) (SEQ ID NO:389)の親グルコアミラーゼの澱粉結合ドメイン(SBD)の配列比較を表す。
【図6】トリコデルマのグルコアミラーゼ(黒)(SEQ ID NO:2)と、アスペルギルス・アワモリのグルコアミラーゼ(グレー)の側面から見た三次元構造を比較して表す図である。側面は活性サイトに対する位置である。例えば図6〜8では活性サイトの入口を、その分子の「上面」としている。
【図7】トリコデルマのグルコアミラーゼ(黒)と、アスペルギルス・アワモリのグルコアミラーゼ(グレー)の上面から見た三次元構造を比較して表す図である。
【図8】結合サイト1と2が見える側面から見てTrGA(黒)と、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ(A. niger GA)(グレー)の三次元構造を比較した図である。
【図9】図6に示したTrGAの結晶構造部へのアカルボース(acarbose)の結合を模式的に表す図である。
【0017】
<定義>
特に断りのない限り、全ての科学及び技術用語は、この発明が属する技術分野において当業者が理解している通常の意味で用いられる。本願で用いられる用語の一般的意義はSingleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED., John Wiley and Sons, New York (1994)、及びHale & Markham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, N. Y. (1991) に準拠する。本願の内容を明確にし、理解を容易にするために以下の用語について定義する。
【0018】
本願では「グルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3)」とは、澱粉の非還元末端、及び関連するオリゴ及びポリサッカライド分子からのD-グルコース放出の触媒となる酵素を意味する。
【0019】
「親」または「親配列」とは、自然または天然配列、またはTrGA(SEQ ID NO: 1及び2)と配列同一性または構造同一性を有する参照配列を意味する。
【0020】
「TrGA」とは、SEQ ID NO:2に示す成熟タンパク配列を有する親トリコデルマ・リーゼイグルコアミラーゼ配列を意味する。SEQ ID NO:2に示す成熟タンパク配列には、SEQ ID NO:3に示す配列を有する触媒ドメインが含まれる。TrGAの単離、クローン化及び発現は、本願に参照として組み込まれるWO 2006/060062及び2006年5月4日公開のU.S. Pat. Pub. No. 2006/0094080に開示されている。また、TrGAも親グルコアミラーゼ配列であると考え得る。いくつかの実施形態では、親配列とはタンパク質工学の出発点であるTrGAを意味する。
【0021】
「タンパクまたはポリペプチドの成熟形態」と言うときは、タンパクまたはポリペプチドが最終的に機能を発揮する形態を意味する。例えば、TrGAの成熟形態には、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する触媒ドメイン、リンカー領域、及び澱粉結合ドメインが含まれる。
【0022】
「トリコデルマグルコアミラーゼ相同体」とは、TrGA配列(SEQ ID NO:2)に対し少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性を有する親グルコアミラーゼであって、グルコアミラーゼの特異的機能を保持しているグルコアミラーゼを意味する。
【0023】
「相同配列」とは、配列を比較する目的で核酸配列またはポリペプチド配列に対し適切にアライメントさせたとき、少なくとも100%、少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも、93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも88%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、または少なくとも45%の配列同一性を有する核酸配列またはポリペプチド配列を意味し、このとき、候補の核酸配列またはポリペプチド配列の機能が、その候補の相同配列の比較対象の核酸配列またはポリペプチド配列と実質的に同等であることを意味する。
いくつかの実施形態では、相同配列は85%から100%の配列同一性を有し、別の実施形態では90%から100%の配列同一性を有し、別の実施形態では95%から100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、候補の相同配(例えば参照配列)または親配列は、TrGA核酸配列または成熟タンパク配列と比較される。配列同一性は親配列または相同配列の全長について評価することができる。
【0024】
「グルコアミラーゼ変異体」、「SBD変異体」及び「TrGA変異体」とは、親グルコアミラーゼ配列または参照グルコアミラーゼ配列(例えばTrGA又はトリコデルマグルコアミラーゼ相同体)に類似するが、SBDのアミノ酸配列中に少なくとも1の置換、欠失、又は挿入を有することにより、親グルコアミラーゼまたは参照グルコアミラーゼとは異なる配列となるグルコアミラーゼを意味する。
【0025】
本願では、「触媒ドメイン」とは、基質を加水分解する活性部位を含むポリペプチドの構造領域を意味する。
【0026】
「リンカー」とは、デンプン結合ドメインを含むアミノ酸配列と、触媒ドメインを含むアミノ酸配列とを共有結合により結合する、3から40アミノ酸残基で構成される短いアミノ酸配列を意味する。
【0027】
「デンプン結合ドメイン(SBD)」とは、デンプン基質に選択的に結合するアミノ酸配列を意味する。
【0028】
本願では、「変異体配列」及び「変異体遺伝子」は同義で用い、宿主細胞の親配列の中で発生する少なくとも1つの変化したコドンを有するポリヌクレオチド配列を意味する。変異体配列の発現生成物は、親タンパクとは異なるアミノ酸配列を有する。この発現生成物は改変された機能を有する(例えば、改善された酵素活性)。
【0029】
ポリペプチドについて用いる「性質」又はこの同義語は、選択又は検出されるポリペプチドの任意の性質又は特性を意味する。このような性質には酸化安定性、基質特異性、触媒活性、熱安定性、pH活性プロファイル、タンパク分解に対する耐性、KM、KCAT、KCAT/KM比、タンパクの折り畳み構造、基質結合能、及び分泌能が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本願で核酸について用いる「性質」又はこれと同義語は、選択又は検出される核酸の任意の性質又は特性を意味する。このような性質には、遺伝子転写に影響する性質(例えば、プロモーター強度、又はプロモーター認識)、RNAプロセッシングに影響する性質(例えば、RNAスプライシング及びRNA安定性)、翻訳に影響する性質(例えば、調節、mRNAのリボソームタンパクへの結合)が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
「比活性度」は、活性なグルコアミラーゼ1mg当りの活性と定義される。活性は本願に開示するエタノールアッセイにより求められる。親TrGA PIと比較したとき、パフォーマンス・インデックス(PI)>1.0となる変異体は、改善された比活性度を有するといえる。PIは親(WT)とグルコアミラーゼ変異体の比活性度(活性/mg酵素)から計算により求められる。PIは(変異体比活性度)/(WT比活性度)の商である。
【0032】
「熱に安定な」及び「熱安定性」とは、デンプン基質の加水分解中に一般的な条件下で、特定の温度、例えば変更された温度に所与の時間曝された後に、特定の酵素活性の量を保持し得る本願のグルコアミラーゼ変異体を意味する。
【0033】
熱安定性等の性質について「改善された安定性」というときは、他の参照グルコアミラーゼ(例えば親グルコアミラーゼ)と比較して、より高いデンプン加水分解活性を所定の時間保持することを意味する。
【0034】
熱安定性等の性質について「減少した安定性」というときは、他のグルコアミラーゼ変異体及び/又は野生型グルコアミラーゼと比較してより低いデンプン加水分解活性を所定の時間保持することを意味する。
【0035】
「活性」及び「生物学的に活性」とは、特定のタンパク質に対する生物学的活性を意味する。また、あるタンパクの生物学的活性とは、当業者がそのタンパクに起因すると考えている生物学的活性を意味する。
例えばグルコアミラーゼが関与する酵素活性は加水分解性であり、従って活性なグルコアミラーゼは加水分解活性を有している。
【0036】
「ポリヌクレオチド」と「核酸」は本願において同義で用いられ、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を意味する。これらの用語には、一本鎖、又は二本鎖、又は三本鎖のDNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいはプリン及びピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の核酸塩基、化学的または生物学的に修飾された非天然または誘導された核酸塩基を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本願では「DNA構築体」、「形質転換DNA」、及び「発現ベクター」は同義で用いられ、宿主細胞又は有機体に配列を導入するために用いられるDNAを意味する。このDNAはin vitroにおいて、PCRで生成されるか、又は当分野で公知の任意の技術を用いて生成することができる。このDNA構築体、形質転換DNA、又は組換え発現カセットは、プラスミド、クロモソーム、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、ウイルス、又は核酸フラグメントに組み込まれる。
通常、発現ベクター、DNA構築体、又は形質転換DNAの組換え発現カセット部位は、配列の中に、転写される核酸配列及びプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、宿主細胞中に異種DNAフラグメントを導入し、発現する能力を有している。
【0038】
本願では、「ベクター」とは1つ以上の細胞タイプへ核酸を導入するためにデザインされたポリヌクレオチド構築体を意味する。ベクターにはクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、カセット等が含まれる。
【0039】
本願で細胞内への核酸配列の導入に関し「導入された」というときは、細胞へ核酸配列を導入するのに適した任意の方法によることを意味する。核酸配列の導入の方法としてプロトプラスト融合、トランスフェクション、トランスフォーメーション、コンジュゲンチオビオース-ション、及びトランスダクション等があるが、これらに限定されない。
【0040】
本願で「形質転換された」及び「安定な形質転換された」というときは、そのゲノム又は少なくとも2世代にわたり維持されるエピソームプラスミドとして組み込まれた非天然(異種)ポリヌクレオチド配列を有する細胞を意味する。
【0041】
本願で「選択可能マーカー」及び「選択マーカー」というときは、ベクターを含む宿主細胞の選択を容易にするために、宿主細胞中で発現することができる核酸(例えば、遺伝子)を意味する。通常、選択可能マーカーは、宿主に抗生物質耐性又は代謝利益を付与する遺伝子であり、形質転換の間に任意の外来性配列を受け取っていない細胞から、この外来性DNAを有する細胞を区別する。
【0042】
本願で「プロモーター」というときは、下流遺伝子の転写に直接影響する核酸配列を意味する。他の転写及び翻訳調節核酸配列(「調節接配列」と呼ぶ)と、プロモーターは所与の遺伝子の発現に必須である。通常、転写及び翻訳調節領域には、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、及びエンマンサー、又はアクティベーター配列が含まれる。しかし、これらに限定されない。
【0043】
ある核酸が他の核酸配列に対し機能を発揮する位置に配置されたとき、この核酸は「作動可能に結合している」と言う。例えば、分泌リーダーをコードしているDNA(即ち、シグナルペプチド)が、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質として発現されたとき、そのポリペプチドに関し作動可能に結合しているという。通常、「作動可能に結合」の語は、結合されているDNA配列が繋がっており、分泌リーダーの場合連続していて、リーディングフェーズ中にあることを意味する。
【0044】
本願で「遺伝子」というときは、ポリヌクレオチドをコードし、個々のコード配列(エキソン)の間の介在配列(イントロン)だけでなく、コード領域の前後に続く領域を含むポリヌクレオチド(例えば、DNAフラグメント)を意味する。
【0045】
本願で「相同遺伝子」というときは、相違点は有るが、関連性を有する一組の遺伝子を意味する。これらは互いに対応し、互いに同一であるか非常に似ている。この用語には、遺伝子複製により分離された遺伝子(パラロガス遺伝子)だけでなく、スペーシエーションにより分離された遺伝子(即ち、新たな種の開発)(例えば、オーソロガス遺伝子)により分離された遺伝子も含む。
【0046】
本願で「オーソログ」及び「オーソロガス遺伝子」というときは、スペーシエーションにより共通の遺伝子の祖先から進化した遺伝子を意味する(即ち、相同遺伝子)。通常、オーソログは進化の過程において同じ機能を保持している。オーソログの同定は、新たに配列決定されたゲノムの遺伝子の機能を予測する上で有用である。
【0047】
本願で「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」というときは、ゲノム内での複製により関連している遺伝子を意味する。オーソログは進化の過程で同じ機能を保持しているのに対し、パラログの場合は、いくつかの機能はオリジナルの遺伝子に関連しているが、更に新たな機能を獲得している。パラロガス遺伝子の例としては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びトロンビンをコードしている遺伝子等があるが、これらに限定されない。これらは全てセリンプロテアーゼであり、同じ種を起源とする。
【0048】
本願で「相同性」というときは、類似又は同一な配列を意味し、好ましくは同一である。この相同性は当業者において標準的な方法で測定することができる(例えば、Smith And Waterman,Adv. Appl. Math.,2:482 [1981]; Needleman And Wunsch,J. MoI. Biol.,48:443 [1970]; Pearson And Lipman,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 [1988];ウィスコンシンジェネチックソフトウェアパッケージのGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTA等のプログラム(Genetics Computer Group、Madison,WI);及びDevereux et al,Nucl. Acid Res.,12:387-395 [1984]参照)。
【0049】
「核酸配列相同性のパーセンテージ(%)」又は「アミノ酸配列相同性のパーセンテージ(%)」とは、開始配列(即ち、TrGA)の核酸残基又はアミノ酸残基と同一な、候補配列中の核酸残基又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。
【0050】
相同配列は公知の配列アライメント法で決定することができる。通常用いられているアライメント方法はAltschulら (Altschul et al., (1990) J. MoI. Biol., 215:403-410,;及び Karlin et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787) が開示したBLASTである。特に有用なBLASTプログラムはWU-BLAST-2プログラムである(Altschul et al., (1996) Meth. Enzymol., 266:460- 480参照)。WU-BLAST-2プログラムは幾つかのサーチパラメータを用いるがその大部分は既定値である。調節可能なパラメーターは以下の値のセットである:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワードスレッシュホールド(T)=11。HSP S及びHSP S2パラメーターは動的値であり、特定の配列の組成、及び所望の配列を検索するための特定のデータベースの構成に依存し、プログラム自体により確立される。しかし、この値は精度を高めるために調節される。アミノ酸配列相同性のパーセンテージの値は、同一で一致した残基の数を、配列された領域内の「より長い」残基の全ての残基数で割って決定される。この「長い」配列はアライメントされた領域内の実際の残基の大部分を有するものである(アライメントスコアを最大化するためのWU-Blast-2により導入されたギャップは無視する)。
【0051】
他の方法も配列のアライメントに用いることができる。有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、累進的で対合的な配列法を用いて、関係する配列の群から多重配列アライメントを作り出す。アライメントを作るための関係性の集積を示す系統樹(tree)もプロットすることができる。PILEUPは、Feng 及びDoolittleの累進的アライメント方法を簡素化したものである(Feng and Doolittle, J.Mol.Evol.,35:351-360[1987])。この方法は、Higgins及びSharpによって述べられた方法と同じである(Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153[1989])。有用なPILEUPパラメーターは、3.00のデフォルトギャップウエイト、0.10のデフォルトギャップレングスと、ウエイト及びギャップ(weighted end gaps)を含んでいる。
【0052】
「最適アライメント」とは、最も高い同一スコアパーセントを与えるアライメントを意味する。
【0053】
「等価な位置」とは、2つの配列のアライメントであって、アライメントが最適であることを意味する。例えば図5Dと5Eに示す配列の場合、TrGA (SEQ ID NO:2)の位置491はC491であるが、アスペルギラス・ニガーの等価な位置は位置C509であり、アスペルギラス・アワモリの等価な位置は位置Q538である。三次元配列のアライメントの例は、図8を参照されたい。
【0054】
「ハイブリダイゼーション」とは、公知のように塩基のペアリングを通じて核酸のストランドが相補的なストランドと結合するプロセスを意味する。
【0055】
2つの配列が中程度から高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、及び洗浄条件下で特異的にハイブリダイズする場合、核酸配列が参照配列に対し「選択的にハイブリダイズすることができる」と言う。
ハイブリダイゼーション条件は核酸結合複合体、または核酸結合プローブの融点(Tm)に依存する。例えば、「最大ストリンジェンシー」は通常約Tm−5℃(プローブのTmより5℃低い温度)で生じ、「高ストリンジェンシー」はTmより約5℃から10℃低い温度で生じる。「中ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10℃から20℃低い温度で生じ、「低ストリンジェンシー」はプローブのTmより約20℃から25℃低い温度で生じる。
機能的には、最大ストリンジェンシー条件は、ハイブリダーゼーションプローブに対し厳密に一致又は準厳密に一致する配列を同定するために用いられる。中又は低ストロンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、相同なポリヌクレオチド配列を同定又は検出するために用いられる。
【0056】
中及び高ストリンジェンシー条件は公知である。高ストリンジェンシー条件の例としては、約42℃、50%ホルムアミド、5X SSC、5Xデンハード溶液、0.5%SDS、100μg/mlで変性されたキャリアーDNA中でハイブリダイズを行い、その後、室温で2X SSC及び0.5%SDSを用いて2回洗浄し、さらに42℃で、0.1X SSC及び0.5%SDSを用いて2回洗浄する。中ストリンジェンシー条件は20%ホルムアミド、5 x SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード溶液、10% 硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性されたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩ハイブリダイズを行い、その後37℃から50℃で1x SSCを用いてフィルターを洗浄する。当業者であれば、温度、イオン強度等を適宜調整して、プローブ長さ等の因子を最適化することができる。
【0057】
「組換え」とは、異種又は相同な核酸の導入により修飾された細胞又はベクター、あるいはそのように修飾された細胞に由来する細胞又はベクターについて述べるものである。従って組換え細胞は、その細胞の天然形態(非組換体)の遺伝子とは異なる遺伝子を発現するか、あるいは人工的な技術を介して過剰に発現するか、十分発現しないか、又は全く発現しない遺伝子を発現する。
【0058】
いくつかの実施形態では、変異DNA配列は少なくとも1つのコドンにおける部位飽和変異誘発を用いて生成される。別の実施形態では、部位飽和変異誘発は2つ以上のコドンに対して行われる。また別の実施形態では、変異体DNA配列は親配列に対して、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上相同である。
別の実施形態では、変異体DNAは例えば放射、ニトロソグアニジン等の既知の変異方法を用いてin vivoで生成される。その後、所望のDNA配列を単離し本願発明の方法に用いる。
【0059】
「異種タンパク質」とは、天然では宿主中に生じ得ないタンパク質又はポリペプチドを意味する。
【0060】
「相同タンパク質」とは、天然又は自然の細胞中に発生するタンパク質又はポリペプチドを意味し、組換DNA技術により、又は自然に細胞内で過剰発現された天然タンパク質を含む。
【0061】
対応する野生型細胞において発現される量よりも多い量の酵素が細胞内で発現しているとき、その酵素が「過剰発現された」と言う。
【0062】
本願では「タンパク質」と「ポリペプチド」を同義で用いることがある。本願では、アミノ酸残基について通常用いられている1文字コード及び3文字コードを用いる。アミノ酸の3文字コードは、生化学命名法に関しIUPAC-IUB合同委員会(JCBN)で定義されているアミノ酸の3文字コードに従う。遺伝子コードの退縮により1つのポリヌクレオチドは1つ以上の核酸配列によりコードされることは知られている。
【0063】
本発明の変異体は以下のように命名する:[オリジナルアミノ酸残基/位置/置換アミノ酸残基]。
例えば、76位のアルギニンがロイシンで置換された場合、R/76/Lとあらわす。1つ以上のアミノ酸が所与の位置で置換された場合、この置換を1)Q172C、Q172D、又はQ172R;2)Q172C、D、又はR、あるいはc)Q172C/D/Rと表す。好適な置換位置が特定のアミノ酸を指定せずに同定される場合、任意のアミノ酸残基でその位置に存在するアミノ酸残基を置換することを意味する。
グルコアミラーゼ変異体が他のグルコアミラーゼとの比較において欠失を含んでいるとき、この欠失を“*”で表す。例えば、R76が欠失している場合、R76*と表す。2つ以上の保存アミノ酸の欠失は、例えば、(76-78)*と表す。
【0064】
「プロ配列」はシグナル配列と、タンパクの分泌に必要とされる成熟タンパク質との間のアミノ酸配列である。このプロ配列が切断すると成熟活性タンパク質となる。
【0065】
「シグナル配列」または「シグナルペプチド」とは、核酸及び/又はアミノ酸の任意の配列を意味する。この核酸および/またはアミノ酸配列は、成熟又は前駆体タンパクの分泌に関与する。
このシグナル配列の定義は機能面に関するものであり、タンパク質の分泌に関与するタンパク質遺伝子のN末端部分によりコードされるアミノ酸配列を全て含む。これらはタンパク質のN末部分、又は前駆体タンパク質のN末部分に結合しているが、常に結合しているわけではない。
シグナル配列は内性又は外性のものでよい。通常、シグナル配列はそのタンパク質(例えば、グルコアミラーゼ)に関連するものであるが、他の分泌されたタンパク質をコードしている遺伝子由来でもよい。
【0066】
タンパク質又はペプチドの「前駆体」形態とは、アミノ酸又はタンパク質のカルボキシ末端に作動可能に結合しているプロ配列を有するタンパク質の成熟形体を意味する。前駆体はプロ配列のアミノ末端に作動可能に結合している「シグナル」配列も有している。前駆体は翻訳後の活性に関係する追加的なポリヌクレオチド(例えば、タンパク質又はポリペプチドの成熟形態から切断されて除去されるポリヌクレオチド)も有している。
【0067】
「宿主株」又は「宿主細胞」の語は、本発明のDNAを含む発現ベクターに適した宿主を意味する。
【0068】
「に由来」及び「から得られた」とは、意図する有機体の株から生成された又は生成可能なグルコアミラーゼだけでなく、そのような株から単離された、またはそのようなDNA配列を含む宿主有機体から生成されるDNAによりコードされるグルコアミラーゼも意味する。さらにこの用語は、合成および/またはcDNA起源のDNA配列によりコードされ、意図するグルコアミラーゼの性質を同定するグルコアミラーゼも意味する。
【0069】
本願の用語の定義において「誘導体」は、野生型、天然、親タンパクにおいて見られる加水分解活性を保持しており、野生型、天然、親タンパクと同じ目的に使用可能であることを意味する。
グルコアミラーゼの機能的な誘導体は、自然発生、合成、又は組み替えにより生成され、本発明のグルコアミラーゼの一般的な特徴を有するペプチドまたはペプチドフラグメントを包含する。
【0070】
「単離された」または「精製された」とは、本来の環境から切り離された状態にある物質を意味する(例えば、もしその物質が自然発生したものであるならば、自然環境から切り離されることを意味する。)
いくつかの実施形態では、SDS-PAGEで評価したとき純度が10%以上であり、好ましくは純度が20%以上であり、より好ましくは純度が30%以上である。この発明の更なる側面には、SDS-PAGEで評価したとき高度に精製されている。(すなわち、純度が40%以上、60%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、あるいは99%以上である。)
【0071】
「組換変異誘発」とは、開始配列の変異体のライブラリーを生成する方法を意味する。これらのライブラリーにおいて、変異体は変異の予め同定されたセットから選択される1つ以上の変異を有している。更にこの方法は変異の予め決められたセットのメンバーではないランダム変異を導入する手段も提供する。
幾つかの実施形態では、この方法には参照として本明細書に組み込まれる、米国特許No.6,582,914に開示された方法が含まれる。別の実施形態では、組合せ変異誘発方法は市販のキットも含まれる。(例えば、QuikChange(商標) Multisite、Stratagene, San Diego, CA)
【0072】
「変異体のライブラリー」とは、大部分のゲノムは同等であるが、1つ以上の遺伝子の異なる相同体を含む細胞の集団を意味する。このようなライブラリーは、例えば、改善された性質を有する遺伝子又はオペロンを同定するために用いることができる。
【0073】
「乾燥固形含量(DS又はds)」とは、乾燥重量を基準にしたスラリー中の総固形分のパーセンテージ(%)を意味する。
【0074】
「目標特性」とは、開始遺伝子の変更される性質を意味する。本発明を特定の目標特性に限定することは意図しない。しかし、幾つかの実施形態では、目標特性は遺伝子生産物の安定性である。(例えば、変性、タンパク質分解、又は他の分解因子に対する安定性)
別の実施形態では、宿主細胞の生産における生産物のレベルが変更される。すなわち、任意の開始遺伝子の任意の特性を、本願発明において利用することを意図している。
【0075】
本願発明について実施形態を例に詳細に説明するが、本願発明は特定の実施形態に限定されず、種々変更可能である。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に基づいて定められる。明細書で用いる技術用語は特定の態様を説明するために用いており、本発明を限定するものではない。
【0076】
数値範囲が記載されている場合、特に断りのない限り、上限値及び下限値の間にある数値も、下限値の10分の1の単位で開示されていると理解されたい。記載された数値範囲、またはその間のより狭い範囲、及びこの範囲内の他の値または中間の値も本発明に包含される。これらのより狭い範囲の上限値及び下限値の双方またはいずれかが、数値範囲に包含され又は排除される。より狭い範囲に含まれるそれぞれの範囲のいずれか、又はどちらでもない、又は両方に相当するそれぞれの範囲は本発明に含まれる。言及された範囲が上限値と下限値の片方または両方を含む場合、これらに含まれる上・下限値のいずれか1つ又は両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0077】
本願の方法及び物質に類似または均等な方法及び物質を本願発明の実施又は試験に用いることができる。本明細書には、好適な方法及び物質を開示している。本明細書に記載した全ての文献は参照として本願に組み込まれ、これらの文献に記載された方法および/または物質が本願に組み込まれる。
【0078】
本願で用いる「1つの」及び「この」等の単数形には、特に断りのない限り、複数形も含まれる。従って、例えば「1つの遺伝子」には複数の遺伝子が含まれ、「この細胞」には1つ以上の細胞及び当業者が等価と認識する細胞も含まれる。
【0079】
本願で言及する刊行物は、本願の出願日前に開示されていることを示すために記載した。このような刊行物に記載された従前の発明があることにより本願発明が特許を受けることができないと解釈するべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0080】
<親グルコアミラーゼ>
いくつかの実施形態では、本発明により親グルコアミラーゼのグルコアミラーゼ変異体が提供される。親グルコアミラーゼには触媒ドメインと澱粉結合ドメインが含まれる。親グルコアミラーゼにはTrGA (SEQ ID NO:2)の配列、および/またはTrGA (SEQ ID NO:2)に対し構造同一性を有する配列が含まれる。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼにはSEQ ID NO:1, 2, 5, 6, 7, 8, 9 または38に示すアミノ酸配列のいずれかを備える。いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは相同体である。いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2のTrGAアミノ酸配列に対し配列同一性を少なくとも50%有し、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼにはSEQ ID NO:1, 2, 3, 5, 6, 7, 8 または384に示すアミノ酸配列の1以上に対し少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む触媒ドメインが含まれる。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:3のTrGAアミノ酸配列の触媒ドメインに対し配列同一性を少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼには、SEQ ID NO:11に対し構造同一性を有する澱粉結合ドメインが含まれる。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼには、SEQ ID NO:11のTrGAアミノ酸配列のSBD対し少なくとも30%の構造同一性、少なくとも40%の構造同一性、少なくとも50%の構造同一性、少なくとも60%の構造同一性、少なくとも70%の構造同一性、少なくとも80%の構造同一性、少なくとも85%の構造同一性、少なくとも90%の構造同一性、少なくとも95%の構造同一性、少なくとも97%の構造同一性、少なくとも98%の構造同一性、または少なくとも99%の構造同一性を有する澱粉結合ドメインが含まれる。
【0083】
親グルコアミラーゼは、中程度から高度にストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:1, 2,および/または11のアミノ酸配列のいずれか1を含むグルコアミラーゼをコードするDNAとハイブリダイズしたDNA配列によりコードされる。
いくつかの実施形態では、コードされたグルコアミラーゼはSEQ ID NO:1, 2、および/または11のアミノ酸配列に対し少なくとも50%の配列同一性を有し、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは宿主細胞中の自然または天然由来の配列である。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは天然由来の変異体である。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは遺伝子組換された配列である変異体の参照配列、またはハイブリッドグルコアミラーゼの参照配列である。
【0084】
グルコアミラーゼの予測される構造、及び既知の配列は菌株の間で保存されている(Coutinho et al.,1994 Protein Eng.,7:393-400 及びCoutinho et al.,1994、Protein Eng.,7: 749-760)。
幾つかの実施形態では、親グルコアミラーゼは糸状菌株のグルコアミラーゼである。
幾つかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマ(Trichoderma)株(例えば、T.reesei,T.longibrachiatum, T.strictipilis, T.asperellum,T.konilangbra及びT.hazianum)、アスペルギウス(Aspergillus)株(例えば、A.niger、A.nidulans、A.kawachi、A.awamori 及びA.orzyae)、タラロマイセス(Taralomyces)株(例えば、T.emersonii、T.thermophilus、及びT.duponti)、ヒポクレア(Hypocrea)株 (例えば、H.gelatinosa 、H.orientalis、H.vinosa、及びH.citrina)、フサリウム(Fusarium)株(例えば、F.oxysporum、F.roseum、及びF.venenatum)、 ニューロスポラ(Neurospora) 株(例えば、 N.crassa)及びフミコーラ(Humicola)株 (例えば、H.grisea、H.insolens及びH.lanuginose)、ペニシリウム(Penicillium)株(例えば、P.notatum 又はP.chrysogenum)又はストレプトマイセス(Streptmyces)株(例えば、S.fibuligera)から得られる。
幾つかの実施形態では、親グルコアミラーゼには図5A〜Eに示すアミノ酸配列が含まれる。
【0085】
幾つかの態様において、親グルコアミラーゼはバクテリアのグルコアミラーゼである。このポリペプチドは例えばバシラス属(Bacillus)(例えば、B.alkalophilus、B.amyloliquefaciens、B.lentus、B.licheniformis,B.stearothermophilus、B.subtilis及びB.thuringiensis)、またはストレプトマイセス属(Streptmyces)(例えば、S.lividans)等のグラム陽性バクテリア株から得られる。
【0086】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2のTrGAアミノ酸配列に対し少なくとも50%の配列同一性を有し、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも88%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも93%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対する配列同一性も有する。
【0087】
また別の実施形態では、トリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼ相同体はトリコデルマ(Trichoderma)又はヒポクレア(Hypocrea)株から得られる。いくつかの好適なトリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼ相同体は米国特許公開公報No.2006/0094080に開示されており、この文献の配列番号17から22、及び43から47の配列が参照される。
【0088】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ IDNO:2のアミノ酸配列から成るTrGA、またはこのTrGA配列に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有するトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはTrGA配列(SEQ ID NO:2)に対し構造同一性を有し、TrGA SBD (SEQ ID NO:11 )に対する構造同一性を有するSBDを含む.
【0089】
親グルコアミラーゼは、公知の組換えDNA技術を用いて単離および/または同定することができる。当業者にとって公知の標準的技術を用いることができる。
例えば、グルコアミラーゼの保存された領域に特異的なプローブおよび/またはプライマーを用いて、バクテリアまたは菌細胞中の相同体を同定することができる(触媒ドメイン、活性サイト等)。あるいは、縮重PCRを用いてバクテリアまたは菌細胞中の相同体を同定することもできる。また、データベース中の公知の配列等について、SEQ ID NO:2を含む公知のグルコアミラーゼ、またはSEQ ID NO:11を含む澱粉結合ドメインに対する配列および/または構造同一性を分析することもできる。機能の分析によって、バクテリアまたは菌細胞中のグルコアミラーゼ活性を同定することもできる。グルコアミラーゼ活性を有するタンパク質を単離して配列を読み取り、対応するDNA配列を単離することもできる。このような方法は公知である。
【0090】
<グルコアミラーゼの構造の相同性>
分子生物学のセントラルドグマは、特定の酵素に対する遺伝子をコードするDNAの配列がタンパク質のアミノ酸配列を決定し、この配列によって酵素の3次元の折り畳み構造が決定される点にある。この折り畳み構造によって異なる残基が結合され、触媒中心及び基質結合表面が形成される結果、酵素の高い特異性及び活性が生じる。
【0091】
グルコアミラーゼは3つの異なる構造ドメインから成る。触媒ドメインは約450残基であり、グルコアミラーゼ中で構造的に保存されている。通常、触媒ドメインの次に約30から80残基のリンカー領域があり、このリンカー領域は約100残基のデンプン結合ドメインに結合している。これらの3つの領域が含まれるトリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼは1.8オングストロームであると測定された(表8及び実施例11参照)。
座標を用いて(表8参照)、この触媒構造をすでに解明されているアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)株X100の触媒ドメイン(Aleshin, A. E., Hoffman, C, Firsov, L.M., Honzatko, R.B. 1994 Refined crystal structures of glucoamylase from Aspergillus awamori var. X100. J MoI Biol 238: 575-591)の座標にアライメントさせた。
このアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)の結晶構造には触媒ドメインのみが含まれていた。図6及び7に示すように、触媒ドメインの構造は非常によく重なり合っており、構造的な重ね合わせに基づいて等価な残基を同定することが可能である。本願発明者らは、全てのグルコアミラーゼは、図6と7に示す基本構造を共有していると考えている。
【0092】
図6と7はそれぞれ、SEQ ID NO:1(図1のアミノ酸配列参照)のトリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼ(黒)と、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)(グレイ)の3次元構造を、側面及び上面から見て比較した図である。側面は、「上面」に位置する活性サイトとの関係において決められる。側面から見ると、触媒ドメインとリンカー領域とデンプン結合ドメインとの間の関係がわかる。
ここに示したグルコアミラーゼや、公知のグルコアミラーゼはこのような構造相同性を共有し、特に触媒ドメインが共有されている。グルコアミラーゼの構造が保存されていることは、全てのグルコアミラーゼの活性の保存、及び作用機構の保存と関係がある。
このように高い相同性を有することにより、改善された機能を有する複数のトリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼの部位特異変異体はいずれも同様の構造を有し、他のグルコアミラーゼと同様の機能を有することになる。従って、所望の効果を生じる変異体に関する知見を、他のグルコアミラーゼにも応用することができる。
【0093】
表8の澱粉結合ドメインの座標を用いて、別の結晶構造が得られた。TrGAのSBDをアスペルギルス・ニガー(A. niger)のSBDにアライメントさせた。図8に示すように、A. niger及びTrGAのSBDの構造は非常によく重なり合う。
本願発明者は、全ての澱粉結合ドメインは図8に示す基本構造を少なくともある程度共有し、いくつかのSBD同士は他のSBDよりも、より構造が似通っていると考える。例えばTrGAのSBDはCAZYデータベース(cazy.org)の炭水化物結合ドメインモジュール20のファミリーに分類される。CAZYデータベースでは、このファミリーは構造的に関連性があり、触媒性で、グリコシド結合を分解、修飾、または生成する酵素の炭水化物結合モジュール(または機能性ドメイン)とされている。
構造上の相同性が高いことにより、改変された機能を有するTrGAのSBDの部位特異的変異体も同様の構造を有し、従ってTrGAのSBD、特に炭水化物結合ドメインモジュール20のファミリーに分類されるSBDと同様の構造のSBDを有する他のグルコアミラーゼも同様の機能を備えることとなる。
すなわち、所望の効果を有する変異体に関する知見を、構造が類似する他のSBDにも応用することができる。
【0094】
構造同一性は、アミノ酸残基が等しいかどうかで決定される。構造同一性は2つの構造(三次元構造及びアミノ酸構造)をアライメントさせたときの相互の位相的な等しさである。
アミノ酸残基が、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ(同一または類似の結合能力、反応能力、又は化学的相互作用する能力を有する)と相同(すなわち、1次または3次構造の位置が対応している)または類似であるならば、グルコアミラーゼの(アミノ酸)残基位置は、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの残基と等価である。
【0095】
1次構造の同一性を評価するために、グルコアミラーゼのアミノ酸配列を、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)の1次配列、特に配列が分かっているグルコアミラーゼにおいて不変であることが知られている一組の残基と直接比較することができる。
一例として、図5A及び図5Bに複数のグルコアミラーゼの触媒ドメインにおいて保存されている残基を示す。図5D及び図5Eに、アライメントさせたこれらのグルコアミラーゼの澱粉結合ドメインを示す。
保存された残基をアライメントさせた後、アライメントを維持することが可能で、かつ必要な挿入及び欠失を行うことにより(すなわち、任意の欠失及び挿入により保存残基がなくならないようにしながら)、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの1次配列における特定のアミノ酸と等価な残基が同定される。保存残基のアライメントは、このような残基を100%保存することができる。しかし、保存残基の75%以上、または40%以上のアライメントでも、等価な残基の同定を行うことができる。さらに、構造同一性を配列同一性と組み合わせることによって等価な残基の同定を行うこともできる。
【0096】
例えば、図5Aと5Bにおいて、6つの有機体に由来するグルコアミラーゼを互いにアライメントさせ、アミノ酸配列間の相同性が最大になるようにする。これらの配列の比較により、アスタリスクで示したように、各配列には多くの保存残基が含まれていることが分かる。
従ってこれらの保存残基は、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来グルコアミラーゼ等の他のグルコアミラーゼにおいて、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼのアミノ酸残基に対し等価なアミノ酸残基を同定に用いることができる。図5Dと5Eに、6つの有機体に由来するSBDを示す。図5Dと5Eでは、これらのSBD間の等価な残基を同定するためにアライメントさせて示す。
【0097】
構造的な同一性には、2つの構造の間の等価な残基の同定が含まれる。「等価な残基」はNMR法および/またはX線結晶法により三次元構造が同定されている酵素について、三次元構造(構造同一性)の相同性を評価することによって求められる。
X線結晶法における等価な残基とは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼにアライメントさせたとき、特定のアミノ酸残基の主鎖上の2以上の原子の原子座標(NとN、CAとCA、CとC、及びOとO)が0.13nm以内、好ましくは0.1nm以内にある残基と定義される。
アライメントは、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼに対し、等価性を評価しようとするグルコアミラーゼの非水素タンパク質原子の原子座標のオーバーラップが最大になるようようにしてベストモデルを配置することによって行う。
このベストモデルは、最も高い解像度が得られる回折実験データについても最も低いR値を与えるX線結晶法モデルである。
【数1】

【0098】
トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの特定の残基に機能的に類似している等価な残基とは、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの特定の残基に起因すると考えられているように、タンパクの構造、基質結合性、又は触媒作用を変更、修飾、またはこれらに貢献するようなタンパクの高次構造をもたらす酵素のアミノ酸であると定義される。
等価な残基とはさらに、その残基の主鎖上の原子は相同位置を占めるとされる等価性の基準を満たさないけれども、その残基の側鎖原子の少なくとも2つの原子座標がトリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの対応する側鎖原子に対し0.13nm以内にある酵素の残基(三次元構造がx線結晶法により得られている)である。
トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの三次元構造の座標を表8に示す。この三次元構造の座標は、前述の三次元構造レベルでの等価な残基の決定に用いることができる。
【0099】
<SBD変異体>
この発明の変異体は、親グルコアミラーゼのSBDのアミノ酸配列中に少なくとも1の置換、欠失、または挿入が含まれている。いくつかの実施形態では、この発明のSBD変異体は、同一条件で比較したときTrGA ( SEQ ID NO:2)のグルコアミラーゼ活性に対し少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%少なくとも97%、または少なくとも100%のグルコアミラーゼ活性を有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、この発明のSBD変異体は、親TrGA (SEQ ID NO:2)のSBDの少なくとも1のアミノ酸位置に置換、欠失または挿入を有する。または、別の親グルコアミラーゼの配列中の同等の位置に、少なくとも1のアミノ酸位置に置換、欠失または挿入を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはTrGA配列に対し少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の配列同一性を有する。これには、TrGA の触媒ドメイン(SEQ ID NO:3)に対し少なくとも93%の配列同一性、少なくとも95%、少なくとも97%、及び少なくとも99%の配列同一性を有することが含まれるが、これに限定されない。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはTrGA配列に対し少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の配列同一性を有する。これには、TrGAの成熟タンパク(SEQ ID NO:2)に対し少なくとも93%の配列同一性、少なくとも95%、少なくとも97%、及び少なくとも99%の配列同一性を有するが含まれるが、これに限定されない。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは、TrGA配列に対し構造同一性を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、SBD変異体はSEQ ID NO:2に対応する配列中のループ1(aa 560-570)領域、および/または、ループ2(aa 523-527)領域に置換、欠失または挿入、好ましくは置換を有する。
特に、アミノ酸残基558-562の領域、および/または、アミノ酸残基570-578 の領域に置換を有する。
【0102】
別の実施形態では、この発明の変異体は親TrGAのSBDのフラグメント中の少なくとも1のアミノ酸位置に置換、欠失または挿入を有し、このフラグメントには触媒ドメインと、TrGA配列のSBDの少なくとも一部(SEQ ID NO:3)が含まれ、または親グルコアミラーゼの触媒ドメインを含むフラグメント中の同等の位置に置換、欠失または挿入を有し、触媒ドメインはTrGA配列のフラグメントに対し、配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%有する。
いくつかの実施形態では、SBDフラグメントにはSBD (SEQ ID NO:11)のアミノ酸残基が少なくとも40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, および/または109含まれる。いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼに触媒ドメインと、リンカー領域と、澱粉結合ドメインとが含まれるとき、前記フラグメントにはリンカー領域の一部が含まれる。いくつかの実施形態では、変異体は、TrGA配列(SEQ ID NO: 2)のフラグメントのアミノ酸配列中に置換、欠失または挿入を有する。いくつかの実施形態では、変異体は、TrGA配列(SEQ ID NO: 2)に対し構造同一性を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼ変異体は、親グルコアミラーゼのSBDのアミノ酸配列中に少なくとも1の置換を有する。また別の実施形態では、グルコアミラーゼ変異体は、1以上の置換を有する(例えば2,3,または4置換)。
【0104】
変異体は成熟タンパク配列(SEQ ID NO:2)中の澱粉結合ドメインのどの位置にあってもよいが、いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列中の次の位置に1以上の置換を有する。493, 494, 495, 501, 502, 503, 508, 511, 517, 518, 519, 520, 525, 527, 531, 533, 535, 536, 537, 538, 539, 540, 545, 546, 547, 549, 551, 561, 563, 567, 569, 577, 579, または583、および/または、親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:2の493, 494, 495, 502, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 539, 563, または577に相当する位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置にアミノ酸置換を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、変異体はSEQ ID NO:2に示す位置と同等の位置に少なくとも1の置換を有し、特にSEQ ID NO:2のT493, P494, T495, H502, E503, Q508, Q511, N518, A519, A520, T527, V531 , A535, V536, N537, A539, N563, またはN577と同等の位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置にアミノ酸置換を有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。
【0107】
また別の実施形態では、親グルコアミラーゼのSBD変異体はSEQ ID NO:2に示すアミノ酸中の次の位置に、次に示す置換を有する:T493C/M/N/Q/Y; P494H/I/M/N/Q/W; T495M/P/R; H502A/M/S/V; E5O3C/D/H/S/W; Q508N/P/Y; Q511C/G/H/I/K/T/V; N518S/P/T; A519E/I/K/R/T/V/Y; A520C/E/L/P/Q/R/W; T527A/V;
V531A/L/N/R/S/T; A535E/F/G/KL/N/P/R/S/T/V/W/Y; V536C/E/I/L/M/Q/R/S; A539E/H/M/R/S/W; N563A/C/E/I/K/L/Q/T/V; N577A/K/P/R/V、および/または親グルコアミラーゼ相同体の同等の位置における置換。
【0108】
いくつかの実施形態では、単離されたグルコアミラーゼ変異体には、SEQ ID NO:3に対しアミノ酸配列同一性を少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%有する触媒ドメインと、SEQ ID NO:11の位置3, 4, 5, 11, 12, 13, 18, 21, 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41, 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61, 71, 73, 77, 79, 87, 89,または93に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有するSBD、または親グルコアミラーゼSBDのSEQ DD NO:11の同等の位置に1以上のアミノ酸置換を有するSBDとが含まれる。
【0109】
<さらに触媒ドメイン中に置換、欠失または挿入を有するSBD変異体>
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼ変異体はSBD中に加え、触媒ドメイン中にも置換、欠失または挿入を有する。いくつかの実施形態では、触媒ドメインはSEQ ID NO:3の配列に示すアミノ酸残基のいずれか1に、置換、欠失または挿入を有する。いくつかの実施形態では、変異体には本願に開示する触媒ドメイン変異体の一つが含まれる。別の実施形態では、変異体には2007年10月9日出願のPCT出願PCT/US07/21683(参照として本願に組み込む)に記載された触媒ドメイン変異体が含まれる。いくつかの実施形態では、触媒ドメイン変異体には、対応する親グルコアミラーゼの触媒ドメインと比較して、触媒ドメイン中に1以上の置換(例えば2,3,または4置換)が含まれている。
【0110】
いくつかの実施形態では、SBD中に少なくとも1の変異を有するグルコアミラーゼ変異体はさらに、図5Aと5Bに示す触媒ドメインの非保存アミノ酸領域に相当する位置のアミノ酸位置(例えば図5Aと5Bにおいて"*"が付されていない位置に対応するアミノ酸位置)の少なくとも1に、置換、欠失または挿入を有する。
いくつかの実施形態では、SBD変異体には、図5Aと5Bに示す非保存アミノ酸領域に相当する位置のアミノ酸位置の少なくとも1に置換を有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、本願のSBD変異体には、SEQ ID NO:2または3のアミノ酸配列の次の位置に1以上の置換を有する:10, 14, 15, 23, 42, 45, 46, 59, 60, 61, 67, 68, 72, 73, 97, 98, 99, 102, 108, 110, 113, 114, 122, 124, 125, 133, 140, 144, 145, 147, 152, 153, 164, 175, 182, 204, 205, 214, 216, 219, 228, 229, 230, 231, 236, 239, 240, 241, 242, 244, 263, 264, 265, 268, 269, 276, 284, 291, 300, 301, 303, 310, 311, 313, 316, 338, 342, 344, 346, 349, 359, 361, 364, 375, 379, 382, 390, 391, 393, 394, 408, 410, 415, 417, 418, 430, 431, 433, 436, 442, 443, 444, 448または451,および/または,親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2または3に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有する。
別の実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼ相同体である。いくつかの実施形態では、変異体は親グルコアミラーゼとの比較において改変された性質を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2または3のグルコアミラーゼに対し構造同一性を有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、SBDグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2または3に示すアミノ酸配列中の触媒ドメインの次の位置に1以上の置換を有する:TlO, L14, N15, P23, T42, P45, D46, F59, K60, N61, T67, E68, A72, G73, S97, L98, A99, S102, K108, E110, L113, K114, R122, Q124, R125, I133, Kl40, N144, N145, Y147, S152, N153, N164, F175, N182, A204, T205, S214, V216, Q219, W228, V229, S230, S231, D236, 1239, N240, T241, N242, G244, N263, L264, G265, A268, G269, D276, V284, S291, P300, A301, A303, Y310, A311, D313, Y316, V338, T342, S344, T346, A349, V359, G361, A364, T375, N379, S382, S390, E391, A393, K394, R408, S410, S415, L417, H418, T430, A431 , R433, I436, A442, N443, S444, T448またはS451、および/または、親グルコアミラーゼの同等の位置。
【0113】
別の実施形態では、本願のSBD変異体は、SEQ ID NO:2または3に示すアミノ酸配列中の触媒ドメインの次の位置に1以上の置換を有する: 10, 14, 15, 23, 59, 60, 61, 65, 67, 68, 72, 73, 97, 98, 99, 102, 110, 113, 133, 140, 144, 145, 147, 152, 153, 164, 182, 204, 205, 214, 216, 219, 228, 229, 230, 231, 236, 239, 241, 242, 263, 264, 265, 268, 269, 276, 284, 291, 300, 301, 303, 311, 338, 342, 344, 346, 349, 359, 361, 364, 375, 379, 382, 390, 391, 393, 394, 410, 417, 418, 430, 431, 433, 442, 444, 448,または451、または親グルコアミラーゼの同等の位置。
別の実施形態では、SBD変異体は次のいずれかの位置に1以上の置換を有する: SEQ ID NO:2および/または3の61, 67, 72, 97, 102, 133, 205, 219, 228, 230, 231, 239, 263, 268, 291, 342, 394, 430, 431または451。
いくつかの実施形態では、これらの位置における置換はSEQ ID NO:2および/または3の N61I, T67M, A72Y, S97N, S102M, I133T, T205Q, Q219S, W228H, W228M, S230F, S230G, S230N, S230R, S231L, I239V, I239Y, N263P, A268C, A268G, A268K, S291A, T342V, K394S, T430K, A431Q,またはS451Kから選択される。
いくつかの実施形態では、SBD変異体は次のいずれかの位置に1以上の置換を有する:SEQ ID NO:2および/または3の72, 133, 219, 228, 230, 231, 239, 263, 268,または451。
いくつかの実施形態では、これらの位置における置換は、SEQ ID NO:2および/または3のA72Y, I133T, Q219S, W228H, W228M, S230R, S230F, S230G, S231L, I239V, N263P, A268C, A268G, またはS451Kから選択される。
【0114】
また別の実施形態では、親グルコアミラーゼのSBD変異体は、SEQ ID NO:2または3に示すアミノ酸配列中の触媒ドメインの次の位置に1以上の置換を有する: T10D/F/G/K/L/M/P/R/S; L14E/H; N15D/N; P23A/G; F59A/G; K60F/H; N61D/I/L/Q/V/W; R65A/C/G/I/K/M/S/V/Y; T67C/I/K/M/T; E68I/M/W; A72E/G/L/M/Q/R/W/Y;
G73C/L/W; S97F/M/N/P/R/S/V/W/Y; L98H/M; A99C/L/M/N/P; S102A/C/I/L/M/N/R/V/W/Y;
E110Q/S/W; L113E/N; K114C/D/E/L/M/Q/S/T/V; I133K/R/S/T;
K140A/E/F/H/K/L/M/N/Q/R/SA/ΛV/Y; N144C/D/E/I/K; NMSA/C/E/I/K/L/M/Q/R/V/W/Y;
Y147A/M/R; S152H/M; N153C/D/K/L/W/Y ; N164A/G; N182C/E/K/P/R; A204C/D/G/I/M/Q/T;
T205A/D/H/I/K/M/N/P/Q/S/V/W/Y; S214P/T; V216C/G/H/K/N/Y; Q219D/G/H/N/P/S;
W228A/F/G/H/I/L/M/Q/S/T/V/Y; V229E/I/M/N/Q; S230C/D/E/F/G/H/I/K/L/N/P/Q/R/T/V/Y;
S231C/D/F/L/M/N/Q/R/S/V/Y; D236F/G/L/M/N/P/S/T/V; I239M/Q/S/V/W/Y;
T241C/E/H/L/M/P/S/T/V; N242C/F/H/M/T/V/W; N263H/K/P; L264A/C/E/F/L/S; G265E/G/H/I/K/R/T; A268C/D/E/F/G/I/K/L/P/R/T/W; G269E; D276S; V284R/T/V/Y/A/E/F/H/K/N/P/W; P300K/R;
A301E/K/L/P/S/W; ASOSC/D/F/H/I/K/L/N/R/T/V/W/Y; A311N/P/Q/S/Y; V338P/Q/S/Y; T342N/V;
S344A/T; T346G/H/M/N/P/Q/Y; A349L/I/K/M/N/Q/R/W; G361H/L/R; A364M/W;
T375C/D/E/H/VΛV/Y; N379A/C/D/G/I/M/P/S; S382A/N/P/V/W; S390A/Y;
E391A/E/I/K/L/M/Q/R/V/W/Y; A393E/G/H/I/K/L/M/N/Q/R/S/T/V/W/Y;
K394A/H/K/L/M/Q/R/S/T/V/W; S410E/H/N; L417A/D/E/F/G/I/K/Q/R/S/T/V/W/Y; H418E/M;
T430A/E/F/G/H/I/K/M/N/Q/R/V; A431C/E/H/I/L/M/Q/R/S/W/Y; R433A/C/E/F/G/K/I7M/N/S/V/W/Y;
I436E/F/G/H/K/P/R/S/T/V/Y; S444M/N/P/Q/R/T/VΛV; T448F/G/I/P/Q/T/V; またはS451 E/H/K/L/Q/T
および/または、親グルコアミラーゼ同等の位置における置換。
【0115】
別の実施形態では、親グルコアミラーゼのSBD変異体は、SEQ ID NO:2または3に示すアミノ酸配列中の触媒ドメインの次の位置に1以上の置換を有する: 10, 15, 23, 42, 59, 60, 61, 68, 72, 73, 97, 98, 99, 102, 114, 133, 140, 144, 147, 152, 153, 164, 182, 204, 205, 214, 216, 228, 229, 230, 231, 236, 241, 242, 263, 264, 265, 268, 269, 276, 284, 291, 300, 301, 303, 311, 338, 342, 344, 346, 349, 359, 361, 364, 375, 379, 382, 390, 391, 393, 394, 410, 417, 430, 431, 433, 436, 442, 443, 444, 448, または451、または親グルコアミラーゼ同等の位置における置換。
いくつかの実施形態では、SBD変異体は次の位置に1以上の置換を有する: SEQ ID NO:2または3の10, 42, 68, 73, 97, 114, 153, 229, 231, 236, 264, 291, 301, 344, 361, 364, 375, 417,または433。
いくつかの実施形態では、これらの位置における置換は、SEQ ID NO:2または3の T1OS, T42V, E68C, E68M, G73F, G73W, K114M, K114T, N153A, N153S, N153V, W228V, D236R, G361D, G361E, G361P, G361Y, A364D, A364E, A364F, A364G, A364K, A365L, A365R, R433C, R433G, R433L, R433N, R433S, R433VまたはI436Hから選択される。
いくつかの実施形態では、SBD変異体は、次に示すいずれかの位置に1以上の置換を有する:SEQ ID NO:2または3の42, 68, 73, 114, 153, 236, 361または364。
いくつかの実施形態では、これらの位置における置換は、SEQ ID NO:2または3のT42V, E68M, G73F, G73W, K114T, N153S, Nl53V, D236R, G361D, A364F,またはA364Lから選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、SBD変異体は、次に示すいずれかの位置に1以上の置換を有する:SEQ ID NO:2または3の228, 230, 231, 268, 291, 417, 433,または451。
いくつかの実施形態では、これらの位置における置換は、SEQ ID NO:2および/または3のW228H, W228M, S230F, S230G, S230R, S231L, A268C, A268G, S291A, L417R, R433Y,またはS451Kから選択される。
【0117】
<キメラまたはハイブリッドSBDグルコアミラーゼ変異体>
この発明のグルコアミラーゼ変異体には、例えば1のグルコアミラーゼに由来する澱粉結合ドメイン(SBD)と、別のグルコアミラーゼに由来する触媒ドメインとリンカーを備える、キメラまたはハイブリッドグルコアミラーゼが含まれる。
例えば、ハイブリッドグルコアミラーゼは、AnGA由来のSBDをTrGA由来のSBDと交換し、AnGA SBDと、TrGAの触媒ドメイン及びリンカーとから成るハイブリッドとすることによって作ることができる。あるいは、AnGA由来のSBD及びリンカーをTrGA由来のSBD及びリンカーと交換することもできる。
ひとつの実施形態では、この発明のSBDグルコアミラーゼ変異体には、アスペルギルスグルコアミラーゼ由来、フミコーラグルコアミラーゼ由来、サーモミセスグルコアミラーゼ由来、またはタラロマイセス由来の触媒ドメインと、SEQ ID NO:11の3, 4, 5, 1 1 , 12, 13, 18, 21 , 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41 , 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61 , 71, 73, 77, 79, 87, 89, または93位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有するSBDとが含まれる。
いくつかの実施形態では、触媒ドメインには、次の配列のいずれか1が含まれる:SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9。
【0118】
<改変された性質>
この発明のグルコアミラーゼ変異体は、親グルコアミラーゼ、特にTrGAと比較したとき、少なくとも1の改変された性質(例えば改善された性質)を有する。
いくつかの実施形態では、改変された性質の少なくとも1は、改善されたpH安定性、改善された熱安定性、および/または改善された比活性度から選択される。
いくつかの実施形態では、pH 7.0〜8.5のpHにおいて安定性が改善される。また別の実施形態では、pH7.0未満、pH6.5未満、pH6.0未満(例えばpHが6.5から6.0、6.0から5.5, 6.0から5.0、または6.0から4.5)のとき、安定性が改善される。
【0119】
この発明のグルコアミラーゼ変異体は、親グルコアミラーゼと比較したとき、低基質濃度において、より高い澱粉加水分解速度を示す。この発明のグルコアミラーゼ変異体は、同一条件で比較したとき、親グルコアミラーゼよりも高いVmaxまたは低いKmを示す。例えば、この発明のグルコアミラーゼ変異体は25℃から70℃の温度範囲 (例えば25℃から35℃; 30℃から35℃; 40℃から50℃; 50℃から55℃、または55℃から62℃)において、より高いVmaxを示す。ミカエリス・メンテン定数やKm及びVmax値は、公知の方法によって求めることができる。
【0120】
<熱安定性が改善されたSBD変異体>
いくつかの実施形態では、この発明のグルコアミラーゼ変異体は、親グルコアミラーゼ(野生型)と比較したとき改変された熱安定性を有する。熱安定性は、pH 4.5のNaAc緩衝液中、64℃で1時間インキュベーションした後の残留活性の%で評価する。
このような条件化では、TrGAはインキュベーション前の当初活性が日々変化するため、TrGAの残留活性は約15%から44%の範囲である。従って、いくつかの実施形態では、熱安定性が改善されたグルコアミラーゼ変異体は、親グルコアミラーゼよりも少なくとも1%から50%高い残留活性(pH 4.5のNaAc緩衝液中、64℃で1時間インキュベーションした後)を示し、グルコアミラーゼ変異体の残留活性が、インキュベーション前の当初活性に対し、2%, 3%, 4%, 5%, 6%, 7%, 8%, 9%, 10%, 11%, 12%, 13%, 14%, 15%, 16%, 17%, 18%, 19%, 20%, 21%, 22%, 23%, 24%, 25%, 26%, 27%, 28%, 29%, 30%, 31%, 32%, 33%, 34%, 35%, 36%, 37%, 38%, 39%, 40%, 41%, 42%, 43%, 44%, 45%, 46%, 47%,48%, 49%, または50% となる場合が含まれる。
例えば、親グルコアミラーゼの残留活性が15%のとき、熱安定性が改善されたグルコアミラーゼ変異体の残留活性は約15%から約75%となる。いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼ変異体は、異なる温度に所定時間、例えば少なくとも60分、120分、180分、240分、300分等の時間曝された後、少なくとも50%, 60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 92%, 95%, 96%, 97%, 98% または99%の酵素活性を保持可能な、改善された熱安定性を有する。
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼ変異体は、約40から約90℃、約40から約85℃、約45から約80℃、約50から約75℃、約60から約75℃、または約60から約70℃の温度範囲において、親グルコアミラーゼに対し改善された熱安定性を有する。
いくつかの実施形態では、SBD変異体は、温度が70℃以上、75℃以上、80℃以上、または85℃以上で、pHが4.0から6.0の範囲において、親グルコアミラーゼに対し改善された熱安定性を示す。
いくつかの実施形態では、熱安定性は実施例に開示した方法で求めることができる。いくつかの実施形態では、本願の変異体は低温下、例えば35℃から45℃または30℃から40℃を含め、20から50℃の低温下で親グルコアミラーゼに対し改善された熱安定性を示す。
【0121】
いくつかの実施形態では、この発明の改善された熱安定性を有するグルコアミラーゼ変異体には、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸中の次の位置に1以上の置換を有するグルコアミラーゼ変異体が含まれる:493, 495, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 539, 563,または577、または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。別の実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対し配列同一性を少なくとも 90%、少なくとも95%、または少なくとも98%有する。
いくつかの実施形態では、置換はT493I, T495K/R/S, E503A/C/S/T/V, Q508H/R/S/T, Q511A/D/H/N/S, N518S, A519E/K/R/T/V/Y, A520C/L/P, T527A/V, V531L, A535D/K/N/P/R, V536I/R, N537W, A539E/H/M/R/S, N563A/C/E/I/K/L/Q/T/V, またはN577A/K/P/R/Vから選択される。
【0122】
また別の実施形態では、改善された熱安定性を有し上記に開示したSBD変異体を含むこの発明のグルコアミラーゼ変異体には、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列中の次の位置に、1以上の欠失、置換、または挿入、好ましくは置換を有する: T10, N15, P23, T42, F59, K60, N61, E68, A72, G73, S97, L98, A99, S102, K114, I133, K140, N144, Y147, S152, N153, N164, N182, A204, T205, S214, V216, W228, V229, S230, S231, D236, T241, N242, N263, L264, G265, A268, G269, D276, V284, S291, P300, A301, A303, A311, V338, T342, S344, T346, A349, V359, G361, A364, T375, N379, S382, S390, E391, A393, K394, S410, L417, T430, A431, R433, I436, A442, N443, S444, T448またはS451、および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。別の実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも 90%、少なくとも95%、または少なくとも98%有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に対し構造同一性を有する。
いくつかの実施形態では、改善された熱安定性を有する本願の変異体は、次に示す位置の少なくとも1に置換を有する:SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の10, 42, 68, 73, 97, 153, 229, 231, 236, 264, 291, 301, 344, 361, 364, 375, および/または417。
いくつかの実施形態では、改善された熱安定性を有する本願の変異体は、次に示す位置の少なくとも1に置換を有する:SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の2, 68, 73, 153, 236, 344, 361 , 364,および/または365。
【0123】
<比活性度が改善されたSBD変異体>
いくつかの実施形態では、この発明のグルコアミラーゼ変異体は、親または野生型グルコアミラーゼとの比較において改変された比活性度を有する。いくつかの実施形態では、改変された比活性度は、改善された比活性度である。改善された比活性度とは、約1.0かこれより大きい性能指数(PI)の増加と定義され、性能指数の増加が1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5, 1.6, 1.7, 1.8, 1.9, 2, 2.3, 2.5, 3.0, 3.3, 3.5, 4.0, 4.3, 4.5あるいは5.0以上である場合が含まれる。
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼ変異体は親グルコアミラーゼより少なくとも1倍高い比活性度を有し、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.2倍、2.5倍、2.7倍、2.9倍、3倍、4倍、または5倍高い比活性度を有する。
【0124】
いくつかの実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列中の次の位置に1以上の置換を有するグルコアミラーゼ変異体である:493, 494, 495, 502, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 531 , 535, 536,または539および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼ変異体はSBD中に1以上の置換を有する。
いくつかの実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2の495, 519, 520, 535または539位置に相当する位置に置換を有する。
いくつかの実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、T493C, T493M, T493N, T493Q, T493Y, P494H, P494I, P494M, P494N, P494Q, P494W, T495M, T495P, T495R, H502A, H502M, H502S, H502V, E503C, E503D, E503H, E5O3S, E503W, Q508N, Q508P, Q508Y, Q511C, Q511G, Q511H, Q511I, Q511K, Q511T, Q511V, N518P, N518T, A519I, A520C, A520E, A520L, A520P, A520Q, A520R, A520W, V531A, V5311L, V531N, V531R, V531S, V531T, A535E, A535F, A535G, A535K, A535L, A535N, A535P, A535R, A535S, A535T, A535V, A535W, A535Y, V536C, V536E, V536I V536L, V536M, V536Q, V536S, A539E, A539M, A539R, A539S,またはA539Wおよび/または親グルコアミラーゼの同等の位置から選択される置換を有する。
いくつかの実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、T495M, A519I, A520C/L/P, A535RまたはA539Rに相当する位置に置換を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは、SEQ ID NO:2の配列に対する配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または97%の配列を有する。
【0125】
また別の実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、上記のSBD変異体に加え、SEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列中の次の位置に1以上の欠失、置換、または挿入、好ましくは置換を有する: T10, L14, N15, P23, F59, K60, N61, T67, E68, A72, G73, S97, L98, A99, S102, E110, L113, I133, K140, N144, N145, Y147, S152, N153, N164, N182, A204, T205, S214, V216, Q219, W228, V229, S230, S231, D236, 1239, T241, N242, N263, L264, G265, A268, G269, D276, V284, S291, P300, A301, A311, V338, T342, S344, T346, A349, V359, G361, A364, T375, N379, S382, S390, E391, A393, K394, S410, S415, L417, H418, T430, A431, R433, A442, S444, T448および/またはS451、および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、この発明の改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、上記のSBD変異体に加え、SEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列中の次の位置に置換を有する:61, 67, 72, 97, 102, 133, 205, 219, 228, 230, 231, 239, 263, 268, 291, 342, 394, 430, 431または451、 および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の配列に対する配列同一性が少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列を有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に対し構造同一性も有する。
いくつかの実施形態では、改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3の72, 133, 219, 228, 230, 231, 239, 263, 268,または451位置の少なくともいずれか1に置換を有する。
【0126】
<改善された熱安定性と改善された比活性度の両者を有するSBD変異体>
いくつかの側面では、この発明は、親または野生型グルコアミラーゼと比較して、改変された熱安定性と改変された比活性度の両者を有するグルコアミラーゼ変異体に関する。いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼとの比較において、改変された比活性度は改善された比活性度で、改変された熱安定性は改善された熱安定性である。
【0127】
いくつかの実施形態では、この発明の改善された熱安定性と改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列の次の位置に1以上の欠失、置換、または挿入、好ましくは置換を有する:493, 495, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 527, 531, 535, 536,537, 539, 563または577、および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
【0128】
いくつかの実施形態では、この発明の改善された熱安定性と改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列の次の位置に1以上の欠失、置換、または挿入、好ましくは置換を有する:495, 503, 511, 520, 531, 535, 536または539、および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
また別の実施形態では、この発明の改善された熱安定性と改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、次の置換を有する:T495R, E503C/S, Q511H, A520C/L/P, V531L, A535K/N/P/R, V536IまたはA539E/M/R/S。
【0129】
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。また別の実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2に対し配列同一性を少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%有する。
いくつかの実施形態では、改善された熱安定性と改善された比活性度を有するグルコアミラーゼ変異体は、503, 511, 519, 531, 535, 539, 563,または577位置のいずれか1に置換を有する。
いくつかの実施形態では、置換は SEQ ID NO:2のT493I, T495K, T495R, T495S, E503A, E503C, E503S, E503T, E503V, Q508H, Q508R, Q508S, Q508T, Q511A, Q511D, Q511H, Q511N, Q511S, N518S, A519E, A519K, A519R, A519T, A519V, A519Y, A520C, A520L, A520P, T527A, T527V, V531L, A535D, A535K, A535N, A535P, A535R, V536I, V536R, N537W, A539E, A539H, A539M, A539R, A539S, N563A, N563C, N563E, N563I, N563K, N563L, N563Q, N563T, N563V, N577A, N577K, N577P, N577R, またはN577Vの中から選択される:。
【0130】
また別の実施形態では、この発明の改善された比活性度と改善された熱安定性を有するグルコアミラーゼ変異体は、上記のSBD変異体に加え、SEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列中の次の位置に1以上の欠失、置換、挿入、好ましくは置換を有する: T10, N15, F59, N61, E68, A72, G73, S97, A99, S102, I133, K140, N153, N182, A204, T205, S214, W228, V229, S230, S231, D236, T241, N242, L264, G265, A268, D276, V284, S291, P300, A301, A303, A311, V338, S344, T346, V359, G361, A364, T375, N379, S382, E391, A393, K394, S410, L417, T430, A431, R433, S444, T448および/またはS451、および/または親グルコアミラーゼの同等の位置。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはトリコデルマグルコアミラーゼ相同体である。
また別の実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%有する。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3に対し構造同一性
も有する。
いくつかの実施形態では、改善された比活性度と改善された熱安定性を有するグルコアミラーゼ変異体は、SEQ ID NO:2および/またはSEQ ID NO:3の228, 230, 231, 268, 291, 417, 433,または451位置のいずれか1に置換を有する。
【0131】
<ポリヌクレオチド>
本発明は、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。
ポリヌクレオチドは公知の方法で調製することができる。このポリヌクレオチドは自動DNA合成装置等により合成することができる。このDNA配列は、混合ゲノム(またはcDNA)、またはフラグメントを互いに結合して調製した合成物でもよい。このポリヌクレオチドは特定のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応方法(PCR)により調製することもできる。この方法については、Minshull J., et al., (2004), Methods 32(4):416 - 427)が参照される。また、合成DNAはGeneart AG, Regensburg, Germany等、多くの会社から入手可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:4に対し少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)中程度から高度にストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:4に示すヌクレオチド配列に由来するプローブとハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列、または(iii)SEQ ID NO:4に示す配列に対し少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列から成る。
この発明で用いられるプローブには、SEQ ID NO:4の隣接ヌクレオチドが少なくとも0, 100, 150, 200, 250, 300またはそれ以上含まれる。
【0133】
またこの発明により、SEQ ID NO:11の3, 4, 5, 12, 13, 18, 21, 28, 29, 30, 37, 41, 45, 46, 47, 49, 73, または87位置、または親グルコアミラーゼのSBDの同等の位置に、1以上のアミノ酸置換を有するグルコアミラーゼ変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
いくつかの実施形態では、親グルコアミラーゼはSEQ ID NO:11に対し配列同一性を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%有する。
【0134】
また、この発明により、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードするDNAのフラグメント(すなわち一部)が提供される。このようなフラグメントには、糸状菌細胞(例えばトリコデルマ, アスペルギルス, フザリウム, ペニシリウム, またはフミコーラ)に由来する本願の成熟グルコアミラーゼ酵素、またはその一部のグルコアミラーゼ活性を有するセグメントをコードするポリヌクレオチドの単離または同定に使用可能な、DNAフラグメントを用いることができる。
いくつかの実施形態では、DNAのフラグメントには、隣接ヌクレオチドが少なくとも0, 100, 150, 200, 250, 300またはそれ以上含まれる。
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:11に示すDNAの一部を、親グルコアミラーゼを得るために用いることができ、特に、グルコアミラーゼをコードする糸状菌等の別の種に由来するトリコデルマグルコアミラーゼ相同体を得るために用いることができる。
【0135】
<DNA構築体とベクター>
いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードし、プロモーター配列に作動可能に結合される前述のポリヌクレオチドを含むDNA構築体を構築して、宿主細胞内へ形質転換する。
【0136】
このDNA構築体を、ベクターを用いて宿主細胞内へ導入する。このベクターは宿主細胞内に導入されたとき宿主細胞のゲノムに取り込まれ、複製され得る任意のベクターでよい。
いくつかの実施形態では、ベクターは宿主細胞中に安定的に形質転換され、および/または組み込まれる。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセット等が含まれる。いくつかの実施形態では、このベクターは、グルコアミラーゼコード配列に作動可能に結合した調節配列を含む発現ベクターである。
【0137】
好適な発現ベクター及び/又は融合ベクターの例は、上記のSambrook et al., (1989)、上記のAusubel (1987)、及びvan den Hondel et al. (1991) in Bennett and Lasure (Eds.) MORE GENE MANIPULATIONS IN FUNGI, Academic Press pp. 396-428とU.S. Patent No. 5,874,276に開示されている。
ベクターのリストについては、Fungal Genetics Stock Center Catalogue of Strains (FGSC, < www.fgsc.net>)を参照することができる。有用なベクターはInvitrogen社及びPromega社から入手可能である。
【0138】
バクテリア細胞での使用に適したプラスミドは、E.coli中で複製可能なpBR322とpUC19、あるいは例えばバシラス中で複製可能なpE194等がある。E. coli宿主細胞での使用に適したベクターの例は、pFB6、pBR322、pUC18、pUC100、pDONR201(商標)、pDONR221(商標)、pENTR(商標)、pGEM3Z(商標)、及び pGEM4Z(商標)等である。
【0139】
糸状菌細胞での使用に適したベクターにはpRAX、アスペルギルスでの汎用発現ベクターであるag/aAプロモーターとpRAX、ヒポクレア/トリコデルマ用のcbh1プロモーターとpTrex3g等が有る。
【0140】
いくつかの実施形態では、プロモーターはバクテリアまたは糸状菌宿主細胞中で転写活性を示し、宿主細胞と相同または非相同のタンパクをコードする遺伝子から派生する。プロモーターは、変異、欠失および/またはハイブリッド等である。このようなプロモーターは公知である。
菌類、特にトリコデルマまたはアスペルギルス等の糸状菌細胞に適したプロモーターの例は、T.reeseiプロモーターである、cbh1、cbh2、elg1、elg2、elg5、xln1、及びxln2等である。他のプロモーターの例としては、A.awamori及びA.nigerグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)(例えば、Nunberg et al,(1984) MoICell Biol.4:2306-2315及びBoel et al,(1984) EMBO J.3:1581-1585参照)、A.oryzaeTAKAアミラーゼプロモーター、S.cerevisiae由来のTPI(トリオースリン酸イソメラーゼ)プロモーター、アスペルギルス・ニデュランスアセトアミダーゼ遺伝子由来のプロモーター、及びリゾムコア・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ遺伝子等がある。
バクテリア細胞に適したプロモーターの例としては、E.coliのlacオペロン;バシラス・リケニフォルミス(Bacillus lichniformis)アルファアミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)アミラーゼ遺伝子(amyM);バシラス・スブチリス(Bacillus subtilis)xylA及びxylB遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子から得られるプロモーター、及びtacプロモーター等である。
いくつかの実施形態では、プロモーターは天然の宿主細胞のものである。例えば、トリコデルマ・リ−ゼイ(T.Reesei)が宿主の場合、このプロモーターは天然のトリコデルマ・リ−ゼイ(T.Reesei)プロモーターである。別の実施形態では、このプロモーターは菌類宿主細胞に対して異種のものである。いくつかの実施形態では、このプロモーターはTrGAプロモーターのような、親グルコアミラーゼのプロモーターである。
【0141】
幾つかの態様において、このDNA構築体には、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に向かわせるポリペプチドのアミノ末端に作動可能に結合したアミノ酸配列であるシグナル配列をコードする核酸が含まれる。
この核酸配列のコード配列の5’末端には、天然ではシグナルペプチドコード領域が含まれ、このコード配列は、分泌物のグルコアミラーゼをコードするグルコアミラーゼコード配列セグメントの翻訳領域に結合している。このグルコアミラーゼコード領域は分泌されるしている。あるいは、この核酸配列のコード配列の5’末端はコード配列にとって外来のシグナルペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、このDNA構築体には、グルコアミラーゼ変異体が得られた親グルコアミラーゼが本来有するシグナル配列が含まれる。
いくつかの実施形態では、このシグナル配列は、SEQ ID NO: 1に示す配列か、または、この配列に対し配列同一性を少なくとも90%、少なくとも94%、及び少なくとも98%有する配列である。
有用なシグナル配列は、トリコデルマ(Trichoderma)(トリコデルマ・リ−ゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼ)、フミコーラ(Humicola)(フミコーラ・インソレンス(H.insolens)セルラーゼ又はフミコーラ・グリセア(H.grisea)グルコアミラーゼ)、アスペルギルス(Aspergillus)(アスペルギルス・ニガー(A.niger)グルコアミラーゼ及びアスペルギルス・オリザエ(A.oryzae)TAKAアミラーゼ)、及びリゾプス(Rhizopus)等の、他の糸状菌酵素から得られたシグナル配列である。
【0142】
また別の実施形態では、宿主細胞に導入されるシグナル配列及びプロモーターを含むDNA構築体又はベクターの起源は、同一であっても良い。いくつかの実施形態では、ヒポクレア(Hypocrea)株由来のシグナル配列等の、トリコデルマ(Trichoderma)グルコアミラーゼ相同体の天然グルコアミラーゼシグナル配列を用いることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、発現ベクターには終止配列も含まれる。本願では、宿主細胞の中で機能する任意の終止配列を用いることができる。いくつかの実施形態では、この終止配列及びプロモーター配列は同一源由でもよい。別の実施形態では、終止配列は宿主細胞と相同である。
有用な終止配列には、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)cbh1;アスペルギルス・ニガー(A.Niger)又はアスペルギルス・アワモリ(A.Awamori)グルコアミラーゼ(Nunberg et al.1984)、及びBoel et al.(1984)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、又はアスペルギルス・ニデュランス(A.Nidulans)trpC(Punt et al.(1987) Gene 56:117-124)の遺伝子から得られる終止配列が含まれる。
【0144】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは選択マーカーを含有する。選択マーカーの例には、抗生物質耐性(例えば、ハイグロマイシン及びフレオマイシン)の付与が挙げられる。栄養選択マーカーも本発明に用いることができ、これらにはamdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチン・カルバモイル・トランスフェラーゼ)、及びpyrG(オロチジン-5’フォスフェートカルボキシラーゼ)等の公知のマーカーが含まれる。
トリコデルマ(Trichoderma)の形質転換のためのベクターシステムに有用なマーカーは公知である。(例えば、Finkelstein et al. Eds. Butterworth-Heinemann, Boston, MA (1992); Kinghorn et al. (1992) APPLIED MOLECULAR GENETICS OF FILAMENTOUS FUNGI, Blackie Academic and Professional, Chapman and Hall, London; Berges and Barreau (1991) Curr. Genet. 19:359 - 365; 及びvan Hartingsveldt et al., (1987) MoI. Gen. Genet. 206:71 - 75)
いくつかの実施形態では、選択マーカーはアセトアミダーゼ酵素をコードするamdS遺伝子であり、アセトアミドを窒素源として利用して形質転換した細胞を育成させることができる。選択マーカーとしてアスペルギルス・ニデュランス(A.Nidulans)amdS遺伝子を使用した例は、Kelley et al., (1985) EMBO J. 4:475 - 479 及び Penttila et al., (1987) Gene 61:155-164に記載されている。
【0145】
グルコアミラーゼ変異体、プロモーター、ターミネーター、及び他の配列をコードする核酸配列を含むDNA構築体を結合する方法と、これらを適切なベクターに挿入する方法は公知である。結合は、適した制限部位において結合することにより行うことができる。このような制限部位が存在しないときは、公知の技術に従って合成オリグヌクレオチドリンカーを用いることができる。(例えば、上記のSambrook (1989) supra、及びBennett and Lasure, MORE GENE MANIPULATIONS IN FUNGI, Academic Press, San Diego (1991) pp 70 − 76参照)
更に、ベクターは従来技術を用いて構築することができる(例えば、Invitrogen Life Technologies, Gateway Technology)。
【0146】
<宿主細胞>
いくつかの実施形態は、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。いくつかの実施形態では、宿主細胞はバクテリア、菌類、植物、及び酵母細胞から選択される。宿主細胞というときは、この発明のグルコアミラーゼ変異体を産出するために用いられる細胞、この細胞の子孫、及びこの細胞から生成されたプロトプラストを含む意味で用いる。
【0147】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は菌類の細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は糸状菌の細胞である。「糸状菌」の語はユーミコチナ(Eumycotina)亜門の全ての糸状菌を意味する(Alexopoulos, C. J. (1962), INTRODUCTORY MYCOLOGY, Wiley, New York参照)。
これらの糸状菌は、キチン、セルロース、及び他の複合ポリサッカライドからなる細胞壁を有する栄養菌糸体であることにより特徴付けられる。
本発明の糸状菌は形態学的、生理的、及び遺伝的に酵母とは区別される。糸状菌による栄養増殖は菌糸の伸長によるものであり、ほとんどの糸状菌の炭水化物異化は絶対好気性である。
本発明において、糸状菌親細胞はトリコデルマ(Trichoderma)、(例えば、トリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)、依然はトリコデルマ・ロンギブラキアタム(T. longibrachiatum)として分類されていたヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)の無性形態、トリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ハルジアウム(Trichoderma harzianum)(Sheir-Neirs et al.,(1984)Appl.Microbiol.Biotechnol 20:46-53;ATCC No.56765 And ATCC No.26921);ペニシリウム種(Penicillium sp.)、フミコーラ種(Humicola sp.)(例えば、フミコーラ・インソレンス(H.insolens)、フミコーラ・ラングイノサ(H.lanuginosa)及びフミコーラ・グリセア(H.grisea));クリソスポリウム種(Chrysosporium sp.)(例えば、クリソスポルクノエンス(C.lucknowense))、グリオクラジウム種(Gliocladium sp.)、アスペルギルス種(Aspergillus sp.)(例えば、アスペルギルス・オリザエ(A.oryzae)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・ソジアエ(A.sojae)、アスペルギルス・ジャポニカス(A.japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)、及びアスペルギルス・アワモリ(A.awamori))(Ward et al.、(1993)Appl.Microbiol.Biotechnol.39:738-743及びGoedegebuur et al.,(2002)Genet 41:89-98)、フサリウム種(Fusarium sp.)(例えば、フサリウム・ロセウム(F.roseum)、フサリウム・グラミナス(F.graminum)、フサリウム・クレアリス(F.cerealis)、フサリウム・オキシスポリウム(F.oxysporuim)及びフサリウム・ベネナタム(F.venenatum))、ニューロスポラ種(Neurospora sp.)、(ニューロスポラ・クラッサ(N.crassa))、ヒポクレア種(Hypocrea sp.)、ムコール種(Mucor sp.)(ムコール・ミエヘイ(M.miehei))、リゾプス(Rhizopus sp).及びエメリセラ種(Emericella sp.)(Innis et al、(1985)Sci.228:21-26参照)の細胞であるがこれらに限定されない。
「トリコデルマ(Trichoderma)」又は「トリコデルマ(Trichoderma)株」、又は「トリコデルマ(Trichoderma)種の語は、従来又は近年トリコデルマ(Trichoderma)に分類された任意の糸状菌を意味する。
【0148】
いくつかの実施形態では、宿主細胞はグラム陽性バクテリア細胞である。非限定的な例として、ストレプトマイセス(Streptomyces)、(例えば、ストレプトマイセスリビダンス(S.lividans)、ストレプトマイセスコエリコロラ(S.coelicolor)及びストレプトマイセスグリセウス(S.griseus))及びバシラス(Bacillus)が含まれる。
本願では「バシラス属」には、バシラス・スブチリス(B.subtilis)、バシラス・リケニフォルミスス(B.licheniformis)、バシラス・レンタス(B.lentus)、バチスル・ブレビス(B.brevis)、バシラス・ステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)、バシラス・アルカロフィリス(B.alkalophilu)、バシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バシラス・クラウシ(B.clausii)、バシラス・ハロデュランス(B.halodurans)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・コアギュランス(B.coagulans)、バシラス・ダーキュランス(B.circulans)、バシラス・ラウタス(B.lautus)、及びバシラス・ツリンギエンシス(B.thuringiensis)等が含まれるが、これらに限定されず、当業者にバシラスであると認識されている全てのバシラスが含まれる。バシラスは分類学上の再編成を受け続けている。従って、現在ゲオバシラスステアロセレモフィリス(Geobacillus stearothermophilus)と命名されているバシラス・ステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)も含まれる。
【0149】
いくつかの実施形態では、宿主細胞はE.coli又はシュードモナス(Pseudomonas)種等のグラム陰性バクテリア株である。別の実施形態では、宿主細胞はサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロミセス種(Schizosaccharomyces sp.)、ピチア種(Pichia sp.)、又はカンジダ種(Candida sp)等の酵母細胞である。
【0150】
別の実施形態では、宿主細胞は遺伝子操作された天然の遺伝子であって、例えばバクテリア又は糸状菌細胞を欠失させることによって不活性化した宿主細胞である。
1以上の失活した遺伝子を有する糸状菌宿主細胞を得るには、既知の方法を用いることができる(例えば、U.S. Patent No. 5,246,853, U.S. Patent No. 5,475,101及びWO 92/06209に開示された方法を参照)。遺伝子の失活は、完全又は部分的な欠失、挿入による失活、またはその目的とする遺伝子を機能させないようにする他の任意の手段(遺伝子が機能的なタンパク質を発現させないようにする)により達成することができる。
いくつかの実施形態では、宿主細胞がトリコデルマ(Trichoderma)細胞、特にトリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)宿主細胞である場合、cbh1、cbh2、egl1、及びegl2遺伝子を失活させ、欠失させることができる。
いくつかの実施形態では、USP 5,847,276及びWO 05/001036に開示されているように、4個一組の欠失を有するトリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei)宿主細胞がタンパク質をコードする。別の実施形態では、この宿主細胞はプロテアーゼ欠失又はプロテアーゼマイナス株である。
【0151】
<宿主細胞の形質転換>
宿主細胞へのDNA構築体又はベクターの導入方法として、形質転換、エレクトロポレーション、核酸のマイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えばリポフェクチョン仲介、またはDEAE−デキストリン仲介トランスフェクション)、リン酸カルシウムDNA沈殿によるインキュベーション、DNAコートのマイクロプロジェクタイルを用いた高速遺伝子銃、及びプロトプラスト融合が挙げられる。
一般的な形質転換技術は公知である。(上記のAusubel et al., (1987), chapter 9、上記のSambrook (1989)、及び上記のCampbell et al., (1989) Curr. Genet. 16:53-56参照)
【0152】
バシラス(Bacillus)の形質転換方法はAnagnostopoulos C and J. Spizizen (1961) J. Bacteriol. 81 :741 - 746 やWO 02/14490等、多くの文献に記載されている。
【0153】
アスペルギルス(Aspergillus)の形質転換方法は、Yelton et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 : 1470 - 1474; Berka et al., (1991) in Applications of Enzyme Biotechnology, Eds. Kelly and Baldwin, Plenum Press (NY); Cao et al., (2000) Sci. 9:991 - 1001 ; Campbell et al., (1989) Curr. Genet. 16:53-56及びEP 238 023に開示されている。
トリコデルマ(Trichoderma)における異種タンパク質の発現は、USP 6,022,725; USP 6,268,328; Harkki et al. (1991); Enzyme Microb. Technol. 13:227-233; Harkki et al., (1989) Bio Technol. 7:596-603; EP 244,234; EP 215,594; 及びNevalainen et al., "The Molecular Biology of Trichoderma and its Application to the Expression of Both Homologous and Heterologous Genes", in MOLECULAR INDUSTRIAL MYCOLOGY, Eds. Leong and Berka, Marcel Dekker Inc., NY (1992) pp. 129 - 148) を参照することができる。
フザリウム株の形質転換については、WO96/00787及びBajar et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8202-28212を参照することができる。
【0154】
1つの実施形態では、形質転換用のトリコデルマ種(Trichodermasp.)の調製には、糸状菌菌糸からプロトプラストを調製することが含まれる(Campbell et al., (1989) Curr. Genet. 16:53-56; Pentilla et al., (1987) Gene 61 : 155 - 164参照)。
アグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を媒体とした糸状菌の形質転換方法が知られている(de Groot et al., (1998) Nat. Biotechnol. 16:839 - 842参照)。糸状菌を宿主に用いた形質転換方法については、USP 6,022,725及びUSP 6,268,328を参照することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、遺伝的に安定な形質転換体がベクターシステムを用いて構築され、このとき、グルコアミラーゼ変異体をコードする核酸が安定に宿主細胞染色体に取り込まれる。形質転換体はその後、公知の方法で精製される。
【0156】
また別の実施形態では、宿主細胞は単子葉植物(例えば、コーン、コムギ、及びソルガム)、又は双子葉植物(例えば、ダイズ)由来の植物細胞である。植物の形質転換に有用なDNA構築体を調製する方法、及び植物の形質転換方法は公知である。
これらの方法には、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒体遺伝子輸送、マイクロプロジェクタイル・ボンバーメント(microprojectile bomardment)、プロトプラストのPEG媒体形質転換;エレクトロポレーション等が含まれる。参考文献として、USP 6,803,499, USP 6,777,589; Fromm et al (1990) Biotechnol. 8:833-839; 及びPotrykus et al (1985) Mol.Gen. Genet. 199: 169 - 177が挙げられる。
【0157】
<タンパク質の生産>
いくつかの実施形態では、本願は宿主細胞中でグルコアミラーゼを産出させる方法に関する。
いくつかの実施形態では、この方法には、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで宿主細胞を形質転換させる工程が含まれ、任意にグルコアミラーゼ変異体の生産に適した条件下で宿主細胞を培養する工程、及び、任意にグルコアミラーゼ変異体を回収する工程が含まれる。
適切な培養条件として、生理食塩水と栄養源とを含む培地を用いた振とうフラスコによる培養、小スケール又は大スケール(連続、バッチ、及びフェドバッチを含む)での発酵、実験室規模又は工業的規模での発酵等が挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、Pourquie, J. et al., BIOCHEMISTRY AND GENETICS OF CELLULOSE DEGRADATION, eds. Aubert, J. P. et al., Academic Press, pp. 71-86, 1988 and Ilmen, M. et al., (1991) Appl. Environ. Microbiol. 63: 1298-1306参照)
本願では、一般的な市販の調製培地(例えば、Yeast Malt Extract酵母モルト抽出物(YM)培地、Luria Bertani (LB) 培地、及びSabouraud Dextrose (SD)培地)を用いることができる。
バクテリア及び糸状菌細胞に好適な培養条件は公知であり、科学技術文献及び/又はAmerican Type Culture CollectionやFungal Genetics Stock Center等の、菌類の供給者により開示されている。
グルコアミラーゼコード配列が誘発プロモーターの制御下にある場合、誘発剤(例えば、糖、金属塩、または抗生物質)をグルコアミラーゼ発現を誘発するために効果的な濃度で添加する。
【0158】
いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞株によるグルコアミラーゼ変異体の発現の評価を行う。
この評価は、タンパク質のレベル、RNAレベル、及び/又は、機能の生物学的評価、特にグルコアミラーゼ活性及び/又は産出について行う。
いくつかの評価には、ノーザンブロッティング(Northern blotting)、ドットブロッティング(dot blotting)(DNA又はRNAアッセイ)、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応方法)、又は適切なラベルプローブを用いたin situハイブリダーゼーション(核酸コード配列に基づく)、及び従来のサザンブロッティング(Southern blotting)及びオートラジオグラフィー(autoradiography)が含まれる。
【0159】
更に、本願のグルコアミラーゼ変異体の生産及び/又は発現は、サンプルについて直接培地中のグルコース等の還元糖の減少を測定すること、あるいは、サンプルについて直接グルコアミラーゼの活性、発現、及び/又は生産を評価することによって評価することができる。特に、グルコアアミラーゼ活性は3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)法で評価することができる。(例えばGoto et al., (1994) Biosci. Biotechnol. Biochem. 58:49 - 54参照)
また別の実施形態では、タンパク質発現は細胞、組織断片の免疫学的染色又は組織培養培地のイムノアッセイ(例えば、ブロット又はELISAによる)により評価することができる。これら方法の詳細は公知であり、これらの方法に用いる試薬は市場で入手可能である。
【0160】
本発明のグルコアミラーゼSBD変異体は、遠心、ろ過、抽出、沈殿等を含む当業者に知られている方法を用いて培地から回収され精製することができる。
【0161】
<組成物>
グルコアミラーゼ変異体は、デンプンの加水分解または糖化用酵素組成物、洗浄及び洗剤用酵素組成物(例えば、洗濯用洗剤、食器用洗剤、及び硬質表面洗浄組成物)、アルコール発酵用酵素組成物、及び動物飼料用酵素組成物等に用いることができるが、これらに限定されない。更に、グルコアミラーゼ変異体はパン及びケーキ等のベーキング製品、醸造、ヘルスケア、再生可能資源転換工程、バイオパルプ処理工程、及びバイオマス転換用途に用いることができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼSBD変異体を含む酵素組成物は、培養培地から得られ、あるいは培養培地から回収され精製される。
いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼSBD変異体は次の酵素のいずれかと組み合わせて用いられる:アルファアミラーゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、シクロデキストリングルコトランスフェラーゼ、リパーゼ、フィターゼ、ラッカーゼ、オキシダーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、キシラナーゼ、顆粒デンプン加水分解酵素、及び他のグルコアミラーゼ。
【0163】
いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼSBD変異体は、アルファアミラーゼと組み合わせて用いられる。このようなアルファアミラーゼの例は、糸状菌アルファアミラーゼ(例えば、Aspergillus sp.)又はバクテリアアルファアミラーゼ(例えば、バシラス・ステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)、バシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)及びバシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)等のバシラス種(Bacillus sp.))またはこれらの変異体、またはハイブリッド等である。
いくつかの実施形態では、このアルファアミラーゼは酸安定性アルファアミラーゼである。いくつかの実施形態では、このアルファアミラーゼは顆粒デンプン加水分解酵素(GSHE)である。いくつかの実施形態では、このアルファアミラーゼはアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)アルファアミラーゼ(AKAA)(US 7,037,704参照)である。
本願の組成物には、GZYME G997, SPEZYME FRED, SPEZYME XTRA, STARGEN (Danisco US, Inc社, Genencor Division), TERMAMYL 120-L 及びSUPRA (Novozymes, Biotech.社) 及びVIRIDIUM (Diversa社)等の、既知の市販のアルファアミラーゼを用いることができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは酸性糸状菌プロテアーゼである。また別の実施形態では、この酸性糸状菌プロテアーゼはトリコデルマ(Trichoderma)である(例えば、NSP-24、2006年7月13日公開のUS 2006/015342の配列10参照。該文献を参照として本願に組み込む)。
【0165】
別の実施形態では、本願のグルコアミラーゼ変異体は、他のグルコアミラーゼと組み合わせて用いられる。
いくつかの実施形態では、本願のグルコアミラーゼはアスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・カワチ(A. kawachi)、及びアスペルギルス・アワモリ(A. awamori)等のアスペルギルス(Aspergillus)、またはこれらの変異体由来のグルコアミラーゼ、フミコーラ(Humicola)株由来、またはこれらの変異体由来、好ましくはフミコーラ・グリセア(H.grisea)由来のグルコアミラーゼ(このようなグルコアミラーゼはWO05/052148に記載のSEQ ID NO: 3に対して90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性有する)、タラロマイセス(Taralomyces)又はそれらの変異体の株由来のグルコアミラーゼ(特にタラロマイセス・エメソニ(T.emersonii))、アセリア(Athelia)及び特にアセリアロルフシ(A.rolfsii)由来のグルコアミラーゼ、ペニシリウム(Penicillium)、特にペニシリウム・クリヨロゲウム(P.chrysogenum)由来のグルコアミラーゼの内のいずれか1以上と組み合わせて用いられる。
【0166】
<使用>
グルコアミラーゼSBD変異体は特に、デンプンの転換工程、及び特にフルクトースシロップ用のデキストロース生産工程に用いられ、特にデンプン含有基質を発酵させて糖、アルコール、及び他の最終生成物(例えば、有機酸、アスコルビン酸、及びアミノ酸)を生産する工程に用いられる。(G.M.A van Beynum et al., Eds. (1985) STARCH CONVERSION TECHNOLOGY, Marcel Dekker Inc. NY参照)
本発明のグルコアミラーゼ変異体組成物を用いて生成されたデキストリンのグルコース収率は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%である。
本願のグルコアミラーゼを用いたデンプン基質の発酵によるアルコール製造方法には、燃料アルコール又は飲用アルコールの製造方法が含まれる。
いくつかの実施形態では、同一条件でアルコール生産量を比較したとき、本願のグルコアミラーゼ変異体を用いたときの方が、親グルコアミラーゼを用いたときよりも大きい。いくつかの実施形態では、同一条件でアルコール生産量を比較したとき、本願のグルコアミラーゼ変異体を用いたときの方が、親グルコアミラーゼを用いたときよりも約0.5%から2.5%高く、0.6%, 0.7%, 0.8%, 0.9%, 1.0%, 1.1%, 1.2%, 1.3%, 1.4%, 1.5%, 1.6%. 1.7%, 1.8%, 1.9%, 2.0%, 2.1%, 2.2%, 2.3%, または2.4%高い。
【0167】
いくつかの実施形態では、本願の発明のグルコアミラーゼSBD変異体は、アルコール生産に用いられる各種植物ベースの基質由来のデンプンの加水分解に用いることができる。いくつかの実施形態では、この植物ベースの基質には、コーン、コムギ、オオムギ、ライムギ、マイロ、コメ、トウキビ、ジャガイモ、及びこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、この植物ベースの基質には繊維、顆粒、タンパク質、及びデンプン(胚乳)等の分別された植物物質、例えば、コーン等の穀物顆粒である(USP 6,254,914及びUSP 6,899,910)。
アルコール発酵の方法はTHE ALCOHOL TEXTBOOK, A REFERENCE FOR THE BEVERAGE, FUEL AND INDUSTRIAL ALCOHOL INDUSTRIES, 3rd Ed., Eds K.A. Jacques et al., 1999, Nottingham University Press, UKに記載されている。
ある実施形態では、得られるアルコールはエタノールである。特に、アルコール発酵工程は湿式製粉工程又は乾燥製粉工程により特徴付けられる。幾つかの態様において、このグルコアミラーゼ変異体は湿式製粉発酵工程に用いられ、他の態様において、このグルコアミラーゼ変異体は乾燥製粉工程に用いられる。
【0168】
乾燥顆粒製粉には多くの基本的な工程が含まれる。
通常、粉砕、焼成、液化、糖化、発酵、及び液体と固体の分離を行ない、アルコールと他の副生成物とを分離する。植物物質、特にコーン、コムギ、又はライムギ等の穀物顆粒全体を粉砕する。
いくつかのケースでは、穀物顆粒を最初に成分ごとに分類する。地下植物は粗い、または細かい粒子にするために製粉される。
地下植物物質はスラリータンク内で液体と混合される(例えば、水及び/又は薄いスティレッジ(stillage))。このスラリーを、液化酵素(例えばアルファアミラーゼ)を含むジェットクッカー中で高温にし(例えば、90℃から105℃又はより高温)、顆粒状のデンプンを可溶化及び加水分解してデキストリンにする。この混合物を冷却して、更に本発明のグルコアミラーゼのような糖化酵素を用いて、グルコースを生成させる。その後、グルコースを含むマッシュをエタノール生成微生物等の発酵微生物、特にイースト(Saccharomyces spp.)の存在下で、約24時間から120時間発酵させる。マッシュ中の固形物を液相から分離して、エタノール等のアルコール及び醸造穀物等の有用な副生成物が得られる。
【0169】
いくつかの実施形態では、糖化工程と発酵工程を組み合わせて行う。このプロセスは糖化発酵同時工程、または同時糖化、酵母プロパゲーション発酵工程等と呼ばれる。
【0170】
別の実施形態では、グルコアミラーゼSBD変異体はデンプン加水分解プロセスに用いられる。このプロセスは30℃から75℃の間の温度、または40℃から65℃の間の温度であり、pHは3.0から6.5の間である。
いくつかの実施形態での発酵工程は、穀物顆粒の粉砕又は穀物の分別を行い、次にこの粉砕された穀物顆粒を液体と混合してスラリーを形成し、その後、単一の容器の中で本発明のグルコアミラーゼ変異体と混合し、任意にアルファアミラーゼ、他のグルコアミラーゼ、フィターゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、あるいはその他の顆粒デンプン加水分解活性を有する酵素、及び酵母を含むがこれらに限定されない他の酵素と混合して、エタノール及び他の副生成物を生成する(例えばUSP 4,514,496, WO 04/081 193 及び WO 04/080923参照)。
【0171】
いくつかの実施形態では、本願は、本発明のグルコアミラーゼ変異体を用いた酵素糖化工程を含むデンプン溶液を糖化する方法に関する。
【0172】
本発明は、本発明のグルコアミラーゼ変異体の少なくとも1を含む動物飼料も提供する。デンプンを含む飼料の生産にグルコアミラーゼ酵素を用いる方法は2002年12月13日出願のWO03/049550に開示されている(この文献を参照として本願の組み込む)。グルコアミラーゼは、動物の体内では利用されにくいデンプンを分解することができる。
【実施例】
【0173】
以下の実施例では、以下の略語を用いる:GA(グルコアミラーゼ)、GAU(グルコアミラーゼ単位)、wt%(重量パーセント)、℃(摂氏)、rpm(1分間当たりの回転数)、H2O(水)、dH2O(脱イオン水)、dIH2O(脱イオン水、ミリQろ過)、aa又はAA(アミノ酸)、bp(ベースペア)、kb(キロベースペア)、kD(キロダルトン)、g又はgm(グラム)、μg(マイクログラム)、mg(ミリグラム)、μL(マイクロリットル)、ml及びmL (ミリリットル)、mm (ミリメートル)、μm (マイクロメータ)、M (モル)、mM (ミリモル)、μM(マイクロモル)、U(単位)、V(ボルト)、MW(分子量)、sec又はs(秒)、min又はm(分)、hr又はh(時間)、DO(溶存酸素)、ABS(吸光度)、EtOH (エタノール)、PSS (生理食塩水)、m/v(質量/容積); MTP (マイクロタイタープレート)、N(ノーマル)、DP1(モノサッカライド)、DP2(ジサッカライド)、DP>3(オリゴサッカライド、重合度が3以上の糖)、ppm(100万分の1)。
【0174】
本願に開示する実施例では、次に示す評価及び方法を用いた。しかし、これらとは異なる方法で親グルコアミラーゼの変異体を調製することも可能である。本願発明は実施例に開示する方法に限定されない。他の適切なグルコアミラーゼ変異体を調製し分泌させる方法を用いることができる。
【0175】
<96ウェルマイクロタイタープレートによるpNGグルコアミラーゼ活性の評価>
用いた試薬溶液を次に示す:NaAc緩衝液(200mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5);基質(NaAc緩衝液(0.3g/20ml)中に50mMのp-ニトロフェニル-α-Dグルコピラノシド(Sigma N-1377));及び停止液(800mMグリシン-NaOH緩衝液(pH10))。ろ過した上清30μLを、新しい平底MTPの96ウェルに入れた。各ウェルに50μLのNaAc緩衝液及び120μLの基質を添加して50℃で30分間インキュベートした(Thermolab systems iEMS Incubator/shaker HT)。100μLの停止溶液を入れて反応を終らせた。405nmの吸光度をMTPリーダー(Molecular Deviec Spectramax 384 plus)で測定し、0.0011μM/cmのモル吸光係数を用いて活性を測定した。
【0176】
<熱安定性の評価>
粗上清(8μl)を、280μLの50mMNaAc緩衝液pH4.5に添加した。この希釈したサンプルを、2つのMTPに等分した。1つのMTP(初期プレート)を4℃で1時間インキュベーションし、他のMTP(加熱プレート)を64℃で1時間インキュベーションした(Thermolab systems iEMS Incubator/Shaker HT)。加熱プレートを氷上で10分間冷却した。以下説明するエタノールスクリーニング評価法を用いて、両方のプレートについて活性を測定した。初期プレート、または加熱プレートから60μl採取し、4%溶解性コーンスターチ120μlに添加し、32℃、 900 rpmで2時間インキュベーションした(Thermolab systems iEMS Incubator/Shaker HT)。
【0177】
熱安定性は、以下のように残留活性のパーセンテージ(%)として計算した。
【数2】

【0178】
粗上清について、培養後の培養液中の残留グルコースを分析した。培地中に残留グルコースがあった場合、熱安定性の計算は行わなかった。
野生型と変異体の残留活性に基づいて、熱安定性の性能指数(PI)を計算した。変異体のPIは、「変異体残留活性/野生型残留活性」の商である。野生型のPIは1.0であり、PI>1.0の変異体は野生型より高い比活性度を有する。
【0179】
<エタノールアッセイの性能指数のデータ解析と計算>
タンパク濃度を、マイクロ流量電気泳動装置(Caliper Life Sciences社, Hopkinton, MA, USA)を用いて測定した。マイクロ流量チップとタンパク質のサンプルは、取扱説明書(LabChipTM HT Protein Express, P/N 760301)に従って準備した。
培養液の上清を96ウェルマイクロタイタープレートに入れ、測定するまで-20℃において保管し、37℃のインキュベータで30分間暖めて完全に融解させた。軽く振り混ぜた後、7 μl サンプル緩衝液(Caliper社)の入った96ウェルPCRプレート(Bio-Rad, Hercules社, CA,USA)に各培養液2 μlを入れ、次に温度制御されたプレートヒーターを用いてこのプレートを90℃で5分間加熱した。このプレートを放冷した後、各サンプルに水40μlを添加した。
このプレートを、製造者によって予め較正された標準タンパクとともに、電気泳動装置にセットした。タンパクがチップの焦点(focal point)を通過したときの蛍光シグナルを記録し、このシグナル強度を、複数の較正された標準タンパクのシグナル強度と対比して定量することによってタンパク濃度を求めた。
【0180】
タンパクを測定した後、データ処理を以下のようにして行った。ピークパターンの妥当性について較正ラダーをチェックした。測定時の較正ラダーが十分でないときは、直前の測定時の較正ラダーを用いた。ピークの検出には、キャリパー(Caliper)ソフトウエアのオプションに含まれている全ピークの初期設定を用いた。測定対照のピークとして75 kDA +/-10%を選択した。
【0181】
測定結果を表計算プログラムに入力し、ピーク面積を、対応するエタノールアッセイの活性(ABS340-ブランク測定)に関連付けた。このピーク面積と12の野生型サンプルの活性値を基に、非線形フィッティング機能を有するGrafit Version 5 (Erithacus Software社, Horley, UK)プログラムの"Enzyme Kinetics"を用いて較正曲線を作成した。Km及びVmax値を計算するための初期設定を用いた。Km及びVmax値から、ミカエリス・メンテン較正曲線を求め、この較正曲線から各変異体の比活性度を求めた。
【0182】
野生型と変異体の比活性度から、比活性度の性能指数(PI)を計算した。変異体のPIは、「変異体残留活性/野生型残留活性」の商として計算した。野生型のPIは1.0であり、PI>1.0の変異体は野生型より高い比活性度を有する。
【0183】
<ヘキソキナーゼ活性評価>
ヘキソキナーゼ混合物:使用する10〜15分前に、水90mlを BoatILコンテナー・グルコースHK Rl (EL グルコース試験 (HK)キット, Instrument Laboratory社 # 182507-40)に添加し、穏やかに混合した。ヘキソキナーゼ混合物100μlを、dH2O85μlに添加した。この混合物にサンプル15μlを添加し室温下の暗所で10分間インキュベートした。MTP-readerで340nmの吸光度を測定した。グルコース標準カーブ(0-2 mg/ml)からグルコース濃度を求めた。
【0184】
<エタノールスクリーニングアッセイの評価条件>
8%溶解性コーンスターチ原液:8gの溶解性コーンスターチ(Sigma社 #S4180)を室温下で40 mlのdH2Oに溶解させた。250mlのフラスコ中で、このスラリーに50 mlの沸騰dH2Oを添加し、5分間加熱した。コーンスターチ溶液を25℃まで冷却し、dH2Oを添加して容積を100mlに調整した。
【0185】
平底96-ウェルMTP中で、175μlの50mM NaAc緩衝液pH4.5を用いて、粗上清5μlを希釈した。この希釈液60μlを、120μlの4%溶解性コーンスターチ溶液に添加し、32℃、900rpmで2時間インキュベートした(Thermolabsystems iEMS Incubator/Shaker HT)。
4℃の停止溶液90μlを添加することにより、反応を停止させた。サンプルを氷冷した。コーンスターチを15℃、1118xgで5分間遠心分離した(SIGMA 6K15)。上清15μlを用いて上記のヘキソキナーゼ活性評価を行い、グルコース濃度を求めた。
停止溶液の組成:(800mM グリシン-NaOH緩衝液、pH10)。
4% (m/v)溶解性スターチ溶液の組成 : 8%原液を100 mM酢酸アトリウム緩衝液pH 3.7で希釈(1:1)。
【0186】
粗上清について、培養後の培養液中の残留グルコースの有無を評価した。培養液中に残留グルコースが検出された場合、グルコアミラーゼによって産出されたグルコースの量は計算しなかった。
【0187】
以下の実施例は本願発明の実施形態を例示するものであり、本願発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0188】
<トリコデルマ・リーゼイで発現させるためのpTTTベクターにおけるTrGAサイト評価用ライブラリー(SEL)の構築>
トリコデルマ・リーゼイのcDNA配列(SEQ ID NO:4)を、GatewayTM BP組み換え反応(Invitrogen社, Carlsbad, CA, USA)によりpDONRTM201にクローン化し、エントリーベクターpDONR-TrGA (図2)を得た。
cDNA配列(SEQ ID NO:4)は、TrGAシグナルペプチドと、プロ配列と、触媒ドメイン、リンカー領域、及び澱粉結合ドメイン(SEQ ID NO:1)を含む成熟タンパクとをコードする。
SEQ ID NO:4とSEQ ID NO:1を、図1Bと図1Aに示す。図1Cに前駆体と成熟タンパクのTrGAドメインを示す。
【0189】
トリコデルマ・リーゼイ中にTrGAタンパクを発現させるために、GatewayTM LR組み換え反応によりTrGAコード配列(SEQ ID NO:4)をGateway互換性目的ベクターpTTT-Dest (図3)中にクローン化した。
この発現ベクターには、目的とする遺伝子を強力に誘導発現可能なT. reesei cbh1由来のプロモーター及びターミネーター領域が含まれている。またこのベクターには、形質転換体がアセトアミドを唯一の窒素源として成長することを可能にする、アスペルギルス・ニデュランスamdS選択マーカーも含まれている。
この発現ベクターには、菌細胞中で非染色体プラスミドの保持を可能にするT. reeseiのテロメア領域も含まれている。
目的pTTT- Destプラスミドでは、cbh1プロモーター及びターミネーター領域は、クロラムフェニコール耐性遺伝子CmR、バクテリオファージラムダベースの特異的組み換えサイトattRl, attR2に隣接する致死E. coli遺伝子ccdBによって隔てられている。
このコンフィギュレーションにより、TrGA遺伝子を含む組換体を、GatewayTM LR組み換え反応により正方向のcbh1調節エレメントの制御下で、直接選択することができる。
最終的な発現ベクターpTTT-TrGAを図4に示す。
【0190】
TrGA SELを、pDONR-TrGAエントリーベクター(図2)をテンプレートに用い、また表1に示すプライマーを用いて構築した。
突然変異生成に用いた全てのプライマーには、突然変異するように設計されたTrGA配列(SEQ ID NO: 1 )のコドンとアライメントする位置にトリプレットNNS (N= A,C,T,G、及びS=CまたはG)が含まれ、予め選択された位置にヌクレオチドがランダムに導入される。
各SELの構築は、2つの独立した方法によるpDONR-TrGAエントリーベクターの増幅から開始した。1の方法ではGateway F (pDONR201 - FW)と特異的変異生成プライマーR(表2)を用い、別の方法ではGateway プライマーR (pDONR201 - RV)と特異的変異生成プライマーF(表2)を用いた。
0.2μMのプライマーを含むPCR増幅反応において、高忠実度PHUSION DNAポリメラーゼ(Finnzymes OY社, Espoo, Finland)を用いた。Finnzymesの取扱い説明書に従い、増幅反応を25回繰り返した。
得られたPCRフラグメントから l μlを採取し、Gateway FW及びGateway RVプライマー(Invitrogen社)とともに、次の融合PCR反応においてテンプレートとして使用した。
PCR増幅反応を22回繰り返し、特定のコドン位置においてランダムに当然変異生成した、完全長の直鎖TrGA DNAフラグメントのコロニーを得た。このフラグメントの両端に、Gateway-specific attLl , attL2組変え部位が隣接していた。このDNAフラグメントをCHARGESWITCHTM PCRクリーンアップキット(Invitrogen, Carlsbad USA)で精製し、次にInvitrogen社の取扱説明書に従ってLR CLONASETMII酵素混合物を用いて、100 ngのpTTT-目的ベクター(図3)と組み換えた。
生成した遺伝子組み換え製品を、製造元(Invitrogen社)の取扱説明諸に従ってE.coli Max Efficiency DH5α中に形質転換した。バクテリアを100μg/mlのアンピシリンを含む2xYTアガロースプレート(16 g/L Bacto Tryptone (Difco社), 10 g/L Bacto Yeast Extract (Difco社), 5 g/L NaCl, 16 g/L Bacto Agar (Difco社))に塗布することにより、所望の位置に変異を有する最終発現構築体pTTT-TrGAを選択した。
【0191】
各ライブラリーからの96の単独コロニーを、100μg/mlのアンピシリンを含む2xYT培地が200 μL入れられたMTP中で、37℃で24時間培養した。特異的変異が導入された領域を含むPCRフラグメントを増幅するために培地を直接用いた。得られた特異的PCR製品の配列を、ABD 100シーケンスアナライザー(Applied Biosystems社) を用いて決定した。
各ライブラリーは、最終発現ベクター中に15種から19種の異なるTrGA変異体を含んでいた。これらの変異体のそれぞれを、下記のようにしてT. reesei中に形質転換した。ランダムに変異されたTrGA配列中の特異的アミノ酸残基に注目して、各ライブラリーに1から182の番号をつけた。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【実施例2】
【0192】
<TrGA SELのトリコデルマ・リーゼイ中への形質転換>
PEG-プロトプラスト法(例えばPentilla et al. (1987) Gene 61 : 155-164参照)を用いて、SELをトリコデルマ・リーゼイ中へ形質転換した。
配列分析によりSMMのE.coliクローンであることを確認したE.coliクローンを、アンピシリン(100 μg/ml)及びカナマイシン(50 μg/ml)を含有する1.200μlの2xYT培地1.200 μlを含むディープウェルマイクロタイタープレート(Greiner Art. No. 780271 )に入れ、37℃で一晩培養した。
CHEMAGICTM Plasmid Mini Kit (Chemagen - Biopolymer Technologie AG社, Baesweiler, Germany)を用いて、各培地からプラスミドDNAを単離した。単離した各プラスミドDNAを個別に、4つの欠失(Δcbh1, Δcbh2, Δeg11, Δeg12, すなわち"4欠失"; USP 5,847,276, WO 92/06184及びWO 05/001036参照)を有するRL- P37由来のトリコデルマ・リーゼイ宿主株中に形質転換した。形質転換は、PEG-プロトプラスト法を以下説明するように改良した方法を用いて行った。
【0193】
プロトプラストを調製するため、胞子をトリコデルマ・ミニマル・メディアム(Trichoderma Minimal Medium) (MM)中、24℃において150 rpmで撹拌しながら16〜24時間培養した。
Trichoderma Minimal Mediumの組成: 20g/Lグルコース, 15g/L KH2PO4, pH 4.5, 5g/L (NH4) 2SO4, 0.6g/L MgSO4 x 7H2O, 0.6 g/L CaCl2 x 2H2O, 1 mlの1000X トリコデルマ・リーゼイ・トレースエレメント溶液(Trace elements solution) (5 g/L FeSO4x7H2O, 1.4 g/L ZnSO4 x 7H2O, 1.6 g/L MnSO4 x H2O, 3.7 g/L CoCl2 x 6H2O)
発芽胞子を遠心分離により回収し、15mg/mlのβ-D-グルカナーゼ-G (Interspex社 - Art.No. 0439-1)溶液で処理して菌の細胞壁を溶解させた。
さらなるプロトプラストの調製は、上記のPenttilaら(1987)が開示した標準的方法に従って行った。
2) 形質転換方法を十分の一にスケールダウンした。一般に、総容積25 μl中に最大600 ngのDNA及び1〜5 x 105のプロトプラストを含む形質転換混合物を、200 ml の25%PEGで処理し、2倍容量の1.2Mソルビトール溶液で希釈し、アセトアミド((NH4) 2SO4を20 mMアセトアミドに変更した点を除き上記のミニマル・メディアムと同じ)を含む選択性トップアガロースと混合し、24ウェルマイクロタイタープレート中、または48ウェルに分割された20x20 cm Q-トレイ中の、アセトアミドを含む2%選択性アガロース上に注いだ。
プレートを28℃で5から8日間インキュベートした。各ウェルにおいて生成した形質転換体の集団の胞子を、0.85%のNaClと、0.015%のTween 80とを含む溶液を用いてプレートから回収した。
胞子懸濁液を、96ウェルMTPでの植菌発酵に用いた。24ウェルMTPの場合、胞子の数を増やすため、選択性アセトアミドMMを新しい24ウェルMTPに塗布する工程を追加した。
【実施例3】
【0194】
<MTPフォーマットによるTrGA変異体を発現するトリコデルマ・リーゼイ形質転換体の発酵>
形質転換体をマイクロタイターフィルタープレート中で発酵させ、これにより得られたTrGA変異体タンパクを含む培養液上清をアッセイに用いた。簡単にいうと、200μlのLD-GSM medium96を入れたウェルフィルタープレート(Corning Art.No. 3505)に、TrGA変異体を発現するトリコデルマ・リーゼイ形質転換体の胞子懸濁液を4回植えつけた(ウェル1つに付き胞子104個以上)。
LD-GSM medium96の組成:5.0 g/L (NH4)2SO4、33g/L 1,4-ピペラジンビス(プロパンスルホン酸)、pH5.5、9.0g/L カザミノ酸、1.0g/L KH2PO4、1.0g/L CaCl2x2H2O、1.0g/L MgSO4x7H2O、2.5ml/Lの1000X トリコデルマ・リーゼイ・トレースエレメント溶液、20 g/L グルコース、10 g/L ソホロース。
これらのプレートを温度28℃、湿度80%で6日間、230rpmで撹拌しながらインキュベートした。
培養液の上清を真空濾過により回収した。この上清を、改善された性質のスクリーニングに供試した。
【実施例4】
【0195】
<GA-産出形質転換体からの全培養液サンプルの調製>
GA-産出形質転換体を先ず30mlのProflo培養液が入れられた250 ml振蕩フラスコ中で予備培養した。
Proflo培養液の組成は、30 g/L α-ラクトース、6.5 g/L (NH4)2SO4、 2g/L KH2PO4、0.3g/L MgSO4x7H2O、 0.2g/L CaCl2 x2H2O, 1ml/L 1000X トレースエレメント溶液(上記のもの)、 2ml/L 10% Tween 80、 22.5 g/L ProFlo 綿実粉(Traders protein社, Memphis, TN)、 0.72g/L CaCO3であった。
28℃、140rpmで2日間培養した後、Proflo培養液の10%を、30mlのLactose Defined Mediumが入れられた250ml振蕩フラスコへ移した。
Lactose Defined Mediumの組成は次の通りである:5g/L (NH4)2SO4、33 g/L 1,4-ピペラジンビス(プロパンスルホン酸)緩衝液、pH5.5, 9g/Lカザミノ酸、4.5g/L KH2PO4、1.0g/L MgSO4 x7H2O, 5ml/L Mazu DF60-P消泡剤 (Mazur Chemicals社, IL)、l ml/Lの1000X トレースエレメント溶液。
滅菌後、この培養液に40ml/Lの40%(w/v)ラクトース溶液を添加した。Lactose Defined Mediumが入れられた振蕩フラスコを28℃、10rpmで4から5日間インキュベートした。
【0196】
遠心分離により菌糸体を培養液から除去し、上清について上記の方法により、総タンパク含有量(BCA Protein Assay Kit, Pierce Cat. No.23225)及びGA活性を分析した。
【0197】
SDS PAGE電気泳動により、全培養液サンプルのサンプルのタンパクプロファイルを求めた。培養液上清のサンプルを、還元剤を含み同体積の2Xサンプルローディング緩衝液と混合し、MES SDSランニング緩衝液(Invitrogen社, Carlsbad, CA, USA)を用いてNUPAGETM Novex 10% Bis-Trisゲル上で分離した。
SIMPLYBLUE SafeStain (Invitrogen社, Carlsbad, CA, USA)を用いてSDSゲル上のポリペプチドのバンドを染色した。
【0198】
実施例5〜7は改善された性質を有する触媒ドメイン変異体に関する。実施例8〜10は改善された性質を有する澱粉結合ドメイン変異体に関する。
【実施例5】
【0199】
<改善された熱安定性を有する触媒ドメイン変異体>
親TrGA分子は、本願に記載した条件化で15から44%の残留活性を有する(日々変動)。性能指数は同一バッチの野生型TrGAの熱安定性に基づき計算した。
性能指数は、PI=(変異体残留活性)/(野生型残留活性)の商である。この商によれば、性能指数>1のとき安定性が改善されていることを意味する。1より大きい性能指数を示した変異体を、以下のTable 2に示す。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

【表2−6】

【実施例6】
【0200】
<エタノールスクリーニングアッセイで改善された比活性度(SA)を示す触媒ドメイン変異体>
上記の方法を用いて、変異体のエタノールスクリーニングアッセイを行った。Table 3に、エタノールスクリーニングアッセイの結果、親TrGAのPIとの比較において性能指数(PI) >1.0であった変異体を示す。比活性度のPIは「変異体比活性度/野生型比活性度」の商である。この商によれば、野生型TrGAの比活性度のPIは1.0であり、PI>1.0の変異体は親TrGAより高い比活性度を有する。
この実施例では、比活性度は、エタノールスクリーニングアッセイで測定した活性を、上記のCaliperアッセイで得られた結果で割り算して求めた。
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【実施例7】
【0201】
<比活性度と熱安定性が組み合わされた触媒ドメイン変異体>
Table 4に、比活性度と熱安定性が親TrGAとの比較において性能指数(PI)が1.0以上の変異体を示す。これらには、次のサイトの変異体が含まれる:10, 15, 59, 61, 68, 72, 73, 97, 99, 102, 133, 140, 153, 182, 204, 205, 214, 228, 229, 230, 231, 236, 241 , 242, 264, 265, 268, 275, 284, 291, 300, 301, 303, 311, 338, 344, 346, 359, 361, 364, 375, 370, 382, 391, 393, 394, 410, 417, 430, 431, 433, 444, 448または451。最も高い比活性度と熱安定性の組み合わせを示すサイトには、228, 230, 231, 268, 291, 417, 433または451が含まれる。
【表4A】

【表4B】

【表4C】

【実施例8】
【0202】
<改善された熱安定性を示す澱粉結合ドメイン変異体>
親TrGA分子は、本願に記載した条件化で15から44%の残留活性を有する(日々変動)。性能指数は、同一バッチの野生型TrGAの熱安定性に基づき計算した。
性能指数は、PI=(変異体残留活性)/(TrGA野生型残留活性)の商である。この商によれば、性能指数>1のとき安定性が改善されていることを意味する。1より大きい熱安定性の性能指数を示した変異体を、以下のTable 5に示す。
【表5】

【実施例9】
【0203】
<エタノールスクリーニングアッセイで改善された比活性度(SA)を示す澱粉結合ドメイン変異体>
上記の方法を用いて、変異体のエタノールスクリーニングアッセイを行った。Table 6に、エタノールスクリーニングアッセイの結果、親TrGAのPIとの比較において性能指数(PI) >1.0であった変異体を示す。
野生型TrGAの比活性度の性能指数は1.0であり、表に示す様々な位置のサイトに置換を有する変異体は改善された熱安定性を示した。このようなサイトには、539が含まれる。
【表6】

【実施例10】
【0204】
<改善されたSAと熱安定性を有するグルコアミラーゼ変異体>
実施例8及び9の変異体について、比活性度と熱安定性の両者の改善を分析した。Table 7に、親TrGAのPIとの比較において、比活性度と熱安定性の両者が性能指数(PI) >1.0となる変異体を示す。
【表7】

【実施例11】
【0205】
<TrGAの結晶構造>
トリコデルマ・リーゼイ(ヒポクレア・ジェコリナ:Hypocrea jecorina)グルコアミラーゼ(TrGA)の全三次元構造を、分解能1.9Åで分析した。Table 8に、トリコデルマグルコアミラーゼ結晶構造の座標を示す。TrGAの結晶化は、599の残基を含み、天然宿主中で通常生じる翻訳後の修飾を有する、無傷の形態において行った。結晶構造物は以下のようにして調製し、分析した。
【0206】
<タンパクの発現と精製>
ヒポクレア・ジェコリナGAをコードする遺伝子を、米国出願公開番号US 2006/0094080 Al, Dunn-Coleman et al. May 4, 2006に開示された方法に従ってクローン化し、発現させた。
【0207】
結晶化実験に用いたTrGAタンパクを、先ずアニオン交換クロマトグラフィーを用いて次のようにして精製した。
180mg/mlのタンパク質を含む発現されたTrGAの濃縮培養液上清を、5mM Tris-HCl, pH 8.0緩衝液で1 : 10に希釈した。HIPREP 16/10 Q Sepharose FFカラム(GE Helthcare社)を用いて、アニオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。HIPREPカラムを4カラム容積(CV)の開始緩衝液(25 mM Tris-HCl, pH 8.0)で平衡化し、次に希釈したタンパクのサンプル10 mlをカラムに注入した。
0から140mMの直線勾配濃度のNaClを含むランニング緩衝液(25 mM Tris-HCl, pH 8.0) を8 CV注入し、吸着していたタンパクを溶出させた。吸着していたTrGAは、塩濃度が約80 mM NaClのとき、HTPREP Qカラムから溶出した。純粋なTrGAタンパクを含む分画を貯留し、分子量カットオフ(MWCO)が10kDの25ml VrVASPIN遠心分離濃縮管 (Viva Science社)を用いて50 mg/mlに濃縮した。
50 mM酢酸ナトリウム緩衝液pH 4.3で平衡化されたDG-10脱塩カラム(Bio-Rad社)を用いて、濃縮精製したTrGAの緩衝液交換を行った。タンパク濃度は、280nmの吸光度を測定して求めた。
濃縮精製したTrGAタンパクのストック溶液を-20℃で貯蔵した。
【0208】
TrGAタンパクを結晶化し易くするため、さらに2回の精製工程と、追加のアニオン交換精製と、サイズ排除精製とを行った。
2回の精製工程は、次のようにして行った。最初のアニオン交換精製工程では、10mlのMONOQカラム(GE Helthcare社)を用いた。最初に精製し凍結したサンプル1mlを解凍し、緩衝液を20 mM Tris-HCl, pH 8.0に変え、この新しい緩衝液でサンプルを6mlに希釈し、次に6 ml 5kD MWCO濃縮管を用いて再度0.5mlまで濃縮した。この濃縮したTrGAサンプルを、スタート緩衝液と同じ電導度になるまで、すなわち25 mM Tris-HCl, pH 8.0と同じ電導度になるまで蒸留水で希釈した。
先ず、MONOQカラムを4カラム容積(CV)の開始緩衝液で平衡化し、次に希釈したタンパクのサンプルをカラムに注入した。MONOQカラムから吸着したタンパクを2種の勾配溶液で溶出させた。最初に、4 CV のpH直線勾配溶液をもちいた。このpH直線勾配溶液は、pHが8.0から6.0に減少するスタート緩衝液であった。2番目の勾配溶液に、ランニング緩衝液(25 mM Tris-HCl, pH 6.0)中の塩濃度が0から350 mM NaCl まで増加する塩勾配溶液を、8 CV用いた。
吸着したTrGAは、2番目の塩勾配溶液のNaCl濃度が約150mMになったときカラムから溶出することが確認された。TrGAを含む分画を貯留し、6 mlの5kD MWCO VIVASPIN濃縮管を用いて2mlまで濃縮した。
次に、濃縮したTrGAサンプルを、pH 8.0の20mM Tris-Cl、及び50 mM NaClSuperdexで平衡化した 200 16/60サイズ排除カラム(GE Helthcare社)に注入した。20mM Tris-Cl、及び50 mM NaClSuperdexは、ランニング緩衝液としても用いた。サイズ排除精製後のメイン溶出ピークの分画を貯留し、6 mlの5kD MWCO VIVASPIN濃縮管を用いてタンパク濃度が約7.5mg/mlになるまで濃縮した。
【0209】
<タンパクの結晶化>
初期TrGA結晶化条件を検討するために用いたタンパクのサンプルは、アニオン交換で一回精製した後、-20℃で貯蔵したTrGA物質のサンプルである。このTrGAタンパクのサンプルを初期結晶化試験の前に解凍し、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4.3で約12mg/mlに希釈した。斜方晶系x線データセットを分子置換(MR)によるTrGAの構造解析に用い、高解像度斜方晶系データセットを最終的斜方晶系空間群TrGA構造モデルに用いた。
20℃において、ハンギングドロップ(McPherson 1982)蒸気拡散方法を用いたとき、25% PEG3350, 0.20M酢酸アンモニウム, 0.10M Bis-Tris pH 5.5 (貯蔵液)からなる溶液中で斜方晶系TrGA結晶が成長することが観察された。
等量のタンパク質溶液(12mg/ml)と貯蔵液とを最終容量が10μlになるよう混合して、結晶化ドロップを調製した。このTrGA結晶は、a=52.2Å、b=99.2Å、c=121.2Åのセルサイズを有するP212121の斜方晶系空間群に属し、2.3のVm(Matthews 1968)を有する非対称単位の1分子であることがわかった。
【0210】
<X線データ収集>
キャピラリーチューブ内に封止した単結晶を用い、室温で2つの斜方晶系TrGAデータセットを収集した。分子置換法(MR)による構造解析に用いた初期の低解像度斜方晶系TrGAのx線データセットを、home X線源、Riaku RU200回転アノードX線源からのCuKα照射を用い、収束ミラーを備えたMSC/Rigaku (Molecular Structures Corp.社, The Woodlands, Texas)Raxis IV++イメージプレート検出器で収集した。このデータセットをMSC/Rigakuのd*trekソフトウェアを用いて処理、計測し、平均化した。
C中心単斜晶データセットを、25% PEG3350、15%グリセロール、50mM CaCl2、及び0.1M Bis-Tris pH5.5からなる凍結保護剤で平衡化され、レーヨン繊維ループ中にマウントされ、シンクロトロンに移す前に液化窒素中に急冷された凍結TrGA単結晶から、100Kにおいて収集した。
高解像度斜方晶系(1.9Å)データセット及びC中心単斜晶データセット(1.8Å)を、SwedenのLundにあるMAX LABのシンクロトロン、911:5ビームラインを用いて収集した。シンクロトロンで収集した2つのデータセットを、MOSFLMで処理し、CCP4プログラムパッケージ(Collaborative Computational Project Number 4 1994)に含まれているSCALAプログラムで計測した。特に断りのない限り、以下のデータ処理はCCP4プログラムパッケージ(Collaborative Computational Project Number 4 1994)を用いて行った。各データセットからの反射の5%のセットを取り除き、R-free (Bruger et al. (1992) 355: 472-475)モニタリングに用いた。
【0211】
<構造解析>
先ず、TrGAの構造を、初期低解析度斜方晶系データセット及びサーチモデルとしてアスペルギルス・アワモリGA(AsGA)変異体X100(pdbエントリーlGLM)(Aleshin et al. (1994) JMol Biol 238: 575-591)の座標を用いてCCCP4プログラムパッケージに含まれている自動置換プログラムMOLREP (Collaborative Computational Project Number 4 1994)を用いたMRにより解析した。
MR実験を行う前に、このアスペルギルス・アワモリGAサーチモデルから、N-及びO-グリコシル化としてタンパク質に結合している全てのグリコシル部分、及び全ての溶媒分子を除去した。
MR構造解析には、初期の低解像度TrGAデータセットの、36.8から2.8Å解像度の間の全ての反射を用いた。このMRプログラムはバックグラウンドに対し最大11.1σで単一回転関数解を見つけ、次の最大はバックグラウンドに対し 3.8σである。この翻訳関数解は48.7%のR因子を与え、17.4のコントラスト因子を有していた。
MR構造解析は、プログラムRefmac 5.0 (Murshudov et al. (1997) Acta Crystallogr., D53: 240-255) を用いた抑制最小二乗精密化を10下記繰り返すことで精密化した。これにより、結晶学的R因子は31.1%まで低下し、R-free値は42.2%から41.1%に低下した。
【0212】
<モデルフィッティング及び精密化>
精密化されたMR構造解析モデルを用いて、低解像度TrGAデータセットから初期密度マップを計算した。TrGAの残基19と26の間のジスルフィド結合の電子密度(ジスルフィド結合はA.Awamori変異体x100構造モデルには存在しない)は、この電子密度マップ中で容易に同定できる。このことは、電子密度マップはTrGAのアミノ酸配列からTrGAの構造モデルを構築する上で有用であることを示している。
低解像度データセットに基づく初期TrGA構造モデルを、Coot (Emsley, et al. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr (2004)60:2126- 2132) を用いたモデル構築と、Refmac5.0を用いた最大可能性精密化(maximum likelihood refinement)の交互サイクルにより精密化した。
【0213】
初期TrGA構造モデルの解像を、プログラムRefmac5.0を用いた10サイクルの抑制精密化に対して初期TrGA構造モデルを精密化することにより、高解像度斜方晶系データセット(1.9Å)の解像に適用した。構造モデルの中の大部分の水分子を、精密化プログラムの水選択プロトコルにより自動的に位置を同定し、次いで、手動で選択するか、または目視により排除した。
全ての構造比較は、Coot (上記のEmsley et al)又はO (Jones et al, (1991) Acta Crystallogr.A47:110-119)のいずれかにより行い、図はPyMOL (DeLano et al. (2002) The PyMOL Molecular Graphics system. Palo Alto, CA USA: DeLano Scientific)により作成した。
【0214】
これらの結果から、TRGA触媒コアセグメントは、AaGAについてAleshinら(上記)が開示した(α/α)6-バレルトポロジーと同じく、内部へリックスのN末端へ入るC末端の外部へリックスを有する、アルファへリックスのダブルバレルからなることがわかる。残基19及び26の間のジスルフィド結合、及びAaGaに対する挿入(残基257-260)のような、電子密度における重要な違いを特定することが可能であった。80-100を含むセグメントも大幅にモデル再構築された。
1つの主要なグリコシル化サイトは、最大4つのグリコサイド部分を有するAsn171であると同定された。同様のグリコシル化サイトはAaGAにおいて同定された。更に、残基22-23、44-45 及び122-123の間の3つのシスペプチドを含む触媒コアは、TrGAとAaGAの間で保存されていた。全体に、TRGAとAaGAの触媒コアの座標を比較したときに、453個のCα原子の内の409個の間に0.535Åのrms変異があった。
【実施例12】
【0215】
<TRGAとAspergillus awamoriGAとの相同性>
実施例11で同定されたTRGAの結晶構造を、すでに同定されているAspergillus awamori GA (AaGA)の結晶構造に重ね合わせた。このAaGA結晶構造はタンパク質データベース(PDB)から得られ、結晶化されたAaGAの形態には触媒ドメインのみが含まれる。
3つの領域を有するインタクトなトリコデルマ・リーゼイグルコアミラーゼの構造を、1.8Åの解像度で同定した(Table 8及び実施例11参照)。座標を用いて(Table 8参照)、予め構造が決定されているAspergillus awamori変異体x100(Aleshin,A.E.,Hoffman,C,Firsov,L.M.,and Honzatko, R.B.1994 Refined crystal structures of glucoamylase from Aspergillus awamori var.Xl00.J.MoI.Biol.238:575-591 and The PDB)の触媒ドメインに、この構造をアライメントさせた。図6及び7に示すように、触媒ドメインの構造は非常に類似しており、この構造の重ね合わせの結果に基づいて同等の残基の同定を行うことができた。
【0216】
<TrGAの触媒ドメイン>
これらの解析に基づいて、TRGAの触媒ドメインにおいて変異させることができ、この変異の結果安定性および/または非活性度が改善されるサイトが特定された。これらのサイトには、活性サイトにおける108, 124, 175 及び316が含まれる。また、特定の2部位変異体、Y47W/Y315F及びY47F/Y315Wも特定された。特定された他のサイトは、143, D44, P45, D46, R122, R125, V181, E242, Y310, D313, V314, N317, R408,及びN409であった。構造同一性が高いことから、トリコデルマ・リーゼイGAのサイトにおいて発見された変異体は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)及び他の相同のグルコアミラーゼにおいても同様の効果を生じると予測された。
【0217】
<TrGA澱粉結合ドメイン及びリンカー領域>
残基454〜490のTrGAリンカーは、残基222と453のジスルフィド結合、及び残基491と587のジスルフィド結合の、2つのジスルフィド結合の間にわたる領域と定義される。リンカー中の9つの残基はプロリンである。結晶構造から、リンカーは分子の後ろ側から大きな弧を描いて延び出し、基質結合表面の近傍の表面にあるレジン残基477の後で急に折れ曲がっている。リンカーは、Tyr 452, Pro 465, Phe 470, GIn 474, Pro 475, Lys 477, Val 480及びTyr 486 側鎖の相互作用により触媒ドメインの表面に固定されたランダムコイルとして延び出す。
【0218】
澱粉結合ドメインは2つの捩れたベータシートから成るベータ−サンドイッチで構成され、一端がCys 491とCys 587の間のジスルフィド結合で繋がれ、澱粉の結合サイトを構成する複数のループを備える他端は長いループで結合されている。TrGAのSBDの構造は、NMR (Sorimachi, K., et al., Structure (1997) 5(5): p. 647-661 )で求められたAnGA SBDの平均的構造、及びバシラス・セレウス(Bacillus cereus)(Mikami, B., et al. Biochemistry (1999) 38(22): p. 7050-61)のSBDに類似している。
図8に、SBDを含むTrGAの結晶構造とA. nigerとのアライメントを示す。これらのSBDのひとつまたは両方にアライメントさせたとき、残基537〜543に対応する1のループが高度に可変性なものとして際立っている(A. nigerでは554〜560のループでB. cereusでは462〜465のループ)。
糖の類似体であるベータ−シクロデキストリンとA.niger GA (上記のSorimachi, et al 1997)のSBDとの複合体のNMR構造解析結果では、シクロデキストリンと結合したときループが実質的にシフトする。従って、このループはフレキシブルなループと位置づけられる。このフレキシブルなループは、「結合サイト2」(TrGA中のこのサイトについは図8参照)の一部を構成する。AnGAの第2の結合サイトも同定され(結合サイト1)、他の炭水化物結合タンパクに類似する一次サイトである。
一般に、これらのSBDの結合サイト1における残基と側鎖構造の保存性は高い。各図に、澱粉結合に寄与する触媒ドメイン及びSBDの結合サイト間の相互作用を示す。
【0219】
これらによれば、触媒ドメインとリンカー及びSBDとの間の相互作用には共通のパターンがあると考えられる。この相互作用は、隣接するドメインの表面付近に作用してアンカーリングする側鎖の形態である。一般に、アンカー残基はリンカーセグメントにある。触媒ドメインとSBDの相互作用の場合、SBDに由来する残基592または触媒ドメインに由来する残基Ile 43及びPhe 29の場合のように、アンカー残基はいずれかのドメインに由来する。
【実施例13】
【0220】
<TrGAへのアカルボース結合モデル>
アカルボース阻害剤と複合化したTrGAの結晶構造を測定した。この複合体の結晶は、予備培養した天然TrGA結晶をアカルボースに浸漬して調製した。3日間浸漬した後、結晶をガラス製キャピラリーチューブ内に封止し、解像度2.0ÅのRigaku Raxis IV++イメージプレート検出器でx-線回折データを採取した。座標を電子密度差マップに当てはめた。このモデルを、解像度27から2.0Åの間で収集された全データである全41276の反射について精密化し、R-因子を0.154、R-freeを0.201とした。精密化された構造のモデルを図9に示す。
【0221】
SBDの存在が不溶性澱粉の加水分解に影響することが知られていることから、SBDと大きな澱粉分子の間に相互作用があると考えられる。このため、TrGAの構造を、構造が分かっているアカルボースが結合したAaGA触媒ドメイン、及びベータシクロデキストリンと複合化したA.niger由来のSBDと比較した。これにより、A. awamori触媒ドメインに結合したアカルボース位置により示されるように、結合サイト2に結合したベータシクロデキストリンは、基質位置に近いことが示された。
これに鑑み、AaGA の構造モデル(pdb entylGAI, Aleshin, et al. 1994 supra)中のアカルボースの座標を、TrGA活性サイトにアライメントさせた。さらに、シクロデキストリンに結合したAnGAのSBD構造(上記のpdb entry IACO: Sorimachi, et al 1997)をアライメントさせた。これに基づき、TrGAに結合したアカルボースのモデルを作成した(図9参照)。このモデルにより、SBDはTrGA触媒ドメインを分解された澱粉の近くに位置させ、加水分解後に活性サイトから産物を放出している間、酵素が基質から拡散してしまうことを妨げていることが示された。TrGAのSBDは澱粉に対しサイト1に沿って結合し、触媒サイト(触媒ドメインの活性サイト)方向に向かうルーズな端部内にあるサイト2に分解された断片が結合し易い位置となる。
このモデルは、酵素活性にSDBとリンカーがどのように寄与するかを示している。触媒ドメイン、リンカー、及びSBDの間の特異的相互作用に含まれるアミノ酸側鎖はトリコデルマ・リーゼイGAに特有のものである。しかし、他のグルコアミラーゼにおいても、補完的配列変換により同様の全体的相互作用と、ドメイン並列構成が可能になり得る。
【0222】
このモデルに基づき、置換によりTrGA SBDの安定性と比活性度を改善することができるサイトを特定した。
すなわち、結合サイト1の一部である2つのループが、大きな澱粉分子に対する結合を増減させるための候補である。これらは、ループ1(aa 560〜570)とループ2(aa 523〜527)である。アミノ酸525と572の2つのTip (トリプトファン)残基は澱粉結合に直接関与していると考えられるため、この2つの残基は変えることはできない。
しかし、516〜518の残基は置換可能であり、558〜562の残基も同様に置換可能である。570〜578の残基のループも、置換を行うための有力な候補である。534〜541の残基は、触媒ドメイン上の活性サイトと相互作用する結合サイト2の一部である。従って、これらの残基は非活性度を増減させる置換を行うための有力な候補である。
【0223】
構造同一性が高いことから、トリコデルマ・リーゼイGAのサイトにおいて発見された変異体は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)及び他の相同のグルコアミラーゼにおいても同様の効果を生じると予測された。従って、TrGAのSBDの構造により、この酵素や関連する酵素を、親グルコアミラーゼと比較して改善された性質を有するように遺伝子組み換えを行うためのベースが提供される。このような改善された性質は、澱粉供給原料から燃料を生成するプロセスにおいて有用である。
【0224】
本発明の範囲及び要旨を逸脱しない範囲内で、本発明の方法及びシステムを種々変更して実施できることは当業者に明らかであろう。本発明を特定の実施形態に基づき説明したが、特許請求の範囲の発明をこれらに限定することを意図するものではない。すなわち、本発明を実施するための各種変更は当業者に明らかであり、これらの変更も本発明の範囲内である。
【表8−1】

【表8−2】

【表8−3】

【表8−4】

【表8−5】

【表8−6】

【表8−7】

【表8−8】

【表8−9】

【表8−10】

【表8−11】

【表8−12】

【表8−13】

【表8−14】

【表8−15】

【表8−16】

【表8−17】

【表8−18】

【表8−19】

【表8−20】

【表8−21】

【表8−22】

【表8−23】

【表8−24】

【表8−25】

【表8−26】

【表8−27】

【表8−28】

【表8−29】

【表8−30】

【表8−31】

【表8−32】

【表8−33】

【表8−34】

【表8−35】

【表8−36】

【表8−37】

【表8−38】

【表8−39】

【表8−40】

【表8−41】

【表8−42】

【表8−43】

【表8−44】

【表8−45】

【表8−46】

【表8−47】

【表8−48】

【表8−49】

【表8−50】

【表8−51】

【表8−52】

【表8−53】

【表8−54】

【表8−55】

【表8−56】

【表8−57】

【表8−58】

【表8−59】

【表8−60】

【表8−61】

【表8−62】

【表8−63】

【表8−64】

【表8−65】

【表8−66】

【表8−67】

【表8−68】

【表8−69】

【表8−70】

【表8−71】

【表8−72】

【表8−73】

【表8−74】

【表8−75】

【表8−76】

【表8−77】

【表8−78】

【表8−79】

【表8−80】

【表8−81】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒ドメインと澱粉結合ドメイン(SBD)とを含む単離されたグルコアミラーゼ変異体であって、前記SBDが、SEQ ID NO:2の493, 494, 495, 501 , 502, 503, 508, 511, 517, 518, 519, 520, 525, 527, 531, 533, 535, 536, 537, 538, 539, 540, 545, 546, 547, 549, 551, 561, 563, 567, 569, 577, 579,または583の位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置に相当する位置に、少なくとも1のアミノ酸置換を有するグルコアミラーゼ変異体。
【請求項2】
前記親グルコアミラーゼの同等の位置が配列同一性により決められ、前記親グルコアミラーゼがSEQ ID NO:2に対し少なくとも80%のアミノ酸配列同一性で、100%未満のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項3】
前記親グルコアミラーゼがSEQ ID NO:2に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項2に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項4】
前記親グルコアミラーゼがSEQ ID NO:2に対し少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項3に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項5】
前記同等の位置がSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:11に対する構造同一性により決められる、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項6】
前記親グルコアミラーゼがSEQ ID NO:2に対し少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項5に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項7】
前記親グルコアミラーゼが、SEQ ID NO:11, SEQ ID NO:385, SEQ ID NO:386, SEQ ID NO:387, SEQ ID NO:388, またはSEQ ID NO:389から選択されるSBDに対し、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するSBDから成る、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項8】
前記触媒ドメインがSEQ ID NO:3の配列に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項9】
前記1以上のアミノ酸置換が、SEQ ID NO: 2の493, 494, 495, 502, 503, 508, 511, 518, 519, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 539, 563, 及び577から選択される位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼの同等の位置に相当する位置にある、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項10】
前記親グルコアミラーゼがSEQ ID NO: 2に対し少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項9に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項11】
前記1以上のアミノ酸置換がT493C, T493M, T493N, T493Q, T493Y, P494H, P494I, P494M, P494N, P494Q, P494W, T495M, T495P, T495R, H502A, H502M, H502S, H502V, E503C, E503D, E503H, E503S, E503W, Q508N, Q508P, Q508Y, Q511C, Q511G, Q511H, Q511I, Q511K, Q511T, Q511V, N518P, N518T, A519I, A520C, A520E, A520L, A520P, A520Q, A520R, A520W, V531A, V5311L, V531N, V531R, V531S, V531T, A535E, A535F, A535G, A535K, A535L, A535N, A535P, A535R, A535S, A535T, A535V, A535W, A535Y, V536C, V536E, V536I, V536L, V536M, V536Q, V536S, A539E, A539M, A539R, A539S, 及びA539Wから成る群から選択される、請求項9または10に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項12】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO: 2の494, 511, 520, 527, 531, 535, 536, 537, 563及び577から選択される位置に相当する位置にある、請求項9または10に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項13】
前記グルコアミラーゼ変異体が、対応する親グルコアミラーゼと比較して少なくとも1の改変された性質を有する、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項14】
前記改変された性質が、改善された比活性度、改善された熱安定性のいずれか、または両者である、請求項13に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項15】
前記改変された性質が改善された比活性度である、請求項14に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項16】
前記改変された性質が改善された熱安定性である、請求項14に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項17】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:2のT493I, T495K, T495R, T495S, E503A, E503C, E503S, E503T, E503V, Q508H, Q508R, Q508S, Q508T, Q511A, Q511D, Q511H, Q511N, Q511S, N518S, A519E, A519K, A519R, A519T, A519V, A519Y, A520C, A520L, A520P, T527A, T527V, V531L, A535D, A535K, A535N, A535P, A535R, V536I, V536R, N537W, A539E, A539H, A539M, A539R, A539S, N563A, N563C, N563E, N563I, N563K, N563L, N563Q, N563T, N563V, N577A, N577K, N577P, N577R, 及びN577Vから成る群、または親グルコアミラーゼの同等の位置から選択される、請求項9に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項18】
前記1以上のアミノ酸位置が、SEQ ID NO:2の503, 511, 519, 531, 535, 539, 563, 及び577から成る群から選択される、請求項9に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項19】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:2のE503A, E503C, E503V, Q511H, A519K, A519R, A519Y, V531L, A535K, A535N, A535P, A535R, A539E, A539R, A539S, N563C, N563E, N563I, N563K, N563L, N563Q, N563T, N563V, N577K, N577P, 及びN577Rから成る群から選択される、請求項18に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項20】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:2の520, 535または539の位置に相当する、請求項9に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項21】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:2のT495R, E503C, E503S, Q511H, V531L, 及びV536Iから成る群から選択される、請求項9に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項22】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:2の519及び563の位置に相当する位置から選択される、請求項1に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項23】
触媒ドメインと澱粉結合ドメイン(SBD)とを含む単離されたグルコアミラーゼ変異体であって、
a)前記触媒ドメインがSEQ ID NO:3のアミノ酸配列に対し少なくとも85% の配列同一性を有し、
b)前記SBDがSEQ ID NO: 11の3, 4, 5, 11, 12, 13, 18, 21, 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41, 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61, 71, 73, 77, 79, 87, 89, または93の位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有するか、または前記SBDが親グルコアミラーゼのSBDのSEQ ID NO: 11の同等の位置に1以上のアミノ酸置換を有する、単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項24】
前記触媒ドメインがSEQ ID NO:3に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項25】
前記触媒ドメインがSEQ ID NO:3に対し少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項26】
前記SBDがSEQ ID NO:11の3, 4, 5, 11, 12, 13, 18, 21, 27, 28, 29, 30, 35, 37, 41, 43, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 55, 56, 57, 59, 61, 71, 73, 77, 79, 87, 89, または93の位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項27】
前記SBDがSEQ ID NO:11の3, 4, 5, 12, 13, 18, 21, 28, 29, 30, 37, 41, 45, 46, 47, 49, 73,または87の位置に相当する位置、または親グルコアミラーゼのSBDの同等の位置に1以上のアミノ酸置換を有する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項28】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:11の3, 5, 13, 18, 21, 28, 29, 30, 37, 41, 45, 46, 47, 49, 73, 及び87の位置から選択される位置に相当する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項29】
前記1以上のアミノ酸置換がSEQ ID NO:11の5, 13, 21, 30, 41, 45, 46, 及び49の位置から選択される位置に相当する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項30】
前記グルコアミラーゼ変異体が、対応する親グルコアミラーゼと比較して少なくとも1の改変された性質を有する、請求項23に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項31】
前記改変された性質が、改善された比活性度、改善された熱安定性のいずれか、または両者である、請求項30に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項32】
さらに、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO: 3の10, 14, 15, 23, 42, 45, 46, 59, 60, 61, 67, 68, 72, 73, 97, 98, 99, 102, 108, 110, 113, 114, 122, 124, 125, 133, 140, 144, 145, 147, 152, 153, 164, 175, 182, 204, 205, 214, 216, 219, 228, 229, 230, 231, 236, 239, 240, 241, 242, 244, 263, 264, 265, 268, 269, 276, 284, 291, 300, 301, 303, 310, 311, 313, 316, 338, 342, 344, 346, 349, 359, 361, 364, 379, 382, 390, 391, 393, 394, 408, 410, 415, 417, 418, 430, 431, 433, 436, 442, 443, 444, 448または451残基位置に相当する位置に1以上のアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の単離されたグルコアミラーゼ変異体。
【請求項33】
前記親グルコアミラーゼが、トリコデルマ種(Trichoderma spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、フミコーラ種(Humicola spp.)、ペニシリウム種(Penicillium spp.)、タラロマイセス種(Talaromyces spp)、またはシゾサッカロミセス種(Schizosaccharmyces spp)から得られたグルコアミラーゼから選択される、請求項1、請求項23、または請求項32に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項34】
前記親グルコアミラーゼが、SEQ ID NO:2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, または9の配列を有する、請求項32に記載のグルコアミラーゼ変異体。
【請求項35】
請求項1、請求項23、または請求項32に記載のグルコアミラーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項35に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項37】
請求項1、請求項23、または請求項32に記載のグルコアミラーゼ変異体を含む酵素組成物。
【請求項38】
澱粉転換プロセスに用いられる、請求項37に記載の酵素組成物。
【請求項39】
さらにアルファアミラーゼを含む、請求項38に記載の酵素組成物。
【請求項40】
動物配合飼料に用いられる、請求項37に記載の酵素組成物。
【請求項41】
アルコール発酵プロセスに用いられる、請求項37に記載の酵素組成物。
【請求項42】
宿主細胞中でグルコアミラーゼ変異体を産出する方法であって、請求項35に記載のポリヌクレオチドを含むDNA構築体で前記宿主細胞を形質転換する工程と、前記宿主細胞を前記グルコアミラーゼ変異体を発現させ産出させるために適した条件化で培養する工程と、前記グルコアミラーゼ変異体を産出させる工程とを含む方法。
【請求項43】
さらに、前記培地から前記グルコアミラーゼ変異体を回収する工程を含む、請求項42に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2011−500019(P2011−500019A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528856(P2010−528856)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/004556
【国際公開番号】WO2009/048487
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】