説明

グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1及びその遺伝子

腎性糖尿病に関与する新規グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ、その遺伝子、及びそれらの変異体、及び、それらの利用を提供するものである。本発明のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ及びその遺伝子は、腎性糖尿病に関与するグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ及びその遺伝子であり、該タンパク質及び遺伝子は、腎臓で高発現し、腎でのグルコース再吸収において、より大きな寄与を果たす新規タンパク質及びその遺伝子からなる。本発明は、該タンパク質及び遺伝子の変異体、及び該タンパク質に特異的に結合する抗体を包含する。更に、本発明は、本発明の遺伝子を染色体上で欠損させたモデル非ヒト動物、腎性糖尿病の予防・治療薬のスクリーニング方法、該遺伝子や抗体を用いたグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能や腎疾患の診断方法や本発明の遺伝子を組織細胞に導入して該組織細胞のトランスポータ機能を調節する方法も包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ、その遺伝子、その変異体、及びそれらの利用に関する。
【背景技術】
ヒトの腎臓は2つ合わせても体重のわずか0.5%に過ぎないが、心拍出量の約20%、即ち毎分1〜1.2Lもの血液が流れ込んでいる。その血漿流量の約20%、即ち毎分120mL(1日200L)が糸球体で濾過され原尿となるが、その99%は尿細管で再吸収され、残りの1.5〜2Lが1日の尿量となる。腎臓は機能単位であるネフロンとそれを取りまく血管系から構成されている。ネフロンは糸球体に始まり、近位尿細管、中間部尿細管(ヘンレループ細脚)、遠位尿細管を経て集合管系に至る。それぞれの分節は異なった機能と形態を有し、協同的に尿の濃縮・生成に関与している。特に、近位尿細管を構成する細胞では管腔側刷子縁膜の発達により表面積が大きいため、原尿中の水や電解質の他低分子性の栄養物質を再吸収したり、血液中の薬物や異物を分泌する際に効率的な形態となっている(月刊薬事 Vol.43,No.3,pp29−34,2001、月刊薬事 Vol.42,No.4,pp113−120,2000)。
近位尿細管上皮細胞の血液側側底膜と管腔側刷子縁膜には、このように多様な物質の再吸収と分泌を媒介するトランスポータ(輸送体)が局在し、方向選択的な物質輸送を可能とするネットワークが形成されている(BIO Clinica,11,22−25,1996、生体の科学、50,268−273,1999)。この数年間に、グルコースの腎排泄調節を司るグルコーストランスポータの遺伝子のクローニングと、構造・機能解析が著しく進展し、腎臓において、糸球体で尿中へ移行したグルコースが、再吸収されて血液中へ戻される機構が分子レベルで明らかにされつつある。
即ち、血中グルコースは腎糸球体で濾過され、尿細管で再吸収を受ける。この機構により正常血糖時には、グルコースは100%再吸収され循環血中に戻る。
そこで、グルコースやアミノ酸等の水溶性分子やイオンは、リン脂質二重層からなる生体膜を速やかに通過することができないために、一般的には、細胞膜や膜小器官にはこれらの分子を特異的に輸送するための輸送タンパク質が存在する。このような細胞内外の物質輸送を行う膜タンパク質が、トランスポータであるが、トランスポータは、体内に取りこまれた薬物、栄養物等が各組織に移動する過程や、各組織に蓄積した老廃物の排出に関与している(特開2002−171980号公報)。腎臓においては、近位尿細管上皮細胞の血液側側底膜と管腔側刷子縁膜に、多様な物質の再吸収と分泌を媒介するトランスポータ(輸送タンパク質)が局在し、細胞内外に形成された膜電位差やPH勾配等の環境特性を巧みに利用した方向選択的な物質輸送を可能とするネットワークが形成されている(BIO Clinica,11,22−25,1996、生体の科学,50,268−273,1999)。
脊椎動物のグルコーストランスポータは、大きく2種類に分けられる。1つは促進グルコーストランスポータ(facilitated glucose transporter:GLUT)とよばれるもので、細胞内外のグルコース濃度勾配にしたがって輸送を行う促進拡散型の輸送担体である。このタンパク質はさらに8つのアイソフォームが存在し、分子量約50,000の12回膜貫通型タンパク質である(Annu.Rev.Physiol.55,591−608,1993、TIBS 23,476−481,1998、特開2002−218981号公報)。基本的に、すべての細胞は少なくとも1つのタイプのGLUTを発現させ、それによって必要なグルコースを細胞外から得ている。もう1つは、Na/グルコーストランスポータ(Na−glucose cotransporter:SGLT)で、Naイオンと共役することでグルコースを濃度勾配に逆らって輸送する能動輸送担体であり、分子量約75,000の14回膜貫通型タンパク質である。
このタンパク質は小腸と腎臓の管腔(lumen)側に面した上皮細胞の頂端側細胞膜(apical membrane)に存在し、細胞内外のNaの電気化学ポテンシャルの勾配を利用してグルコースを細胞内へ取り込む能動輸送を行っている(Physiol.Rev.74,993−1026,1994、Am.J.Physiol.276,(5Pt1),G1251−1259,1999、特開2002−218981号公報)。SGLTによって上皮細胞内に取り込まれたグルコースとNaは、側底膜(baso−lateral membrane)に存在するGLUT−2とNa−Kポンプの働きで血中へ放出される。
哺乳類のSGLTは、輸送特性によって更に、SGLT−1とSGLT−2の二つのタイプに分類される。SGLT−1は、糖1分子あたり2個のNaイオンを輸送し、グルコースとガラクトースに対して高い親和性を持ち、小腸と腎臓で発現している。一方、SGLT−2は糖1分子あたり1個のNaイオンを輸送し、グルコースに対する親和性は低く、ガラクトースは運ばない。このタンパク質は腎臓で発現しているが、小腸での発現は確認されていない。更に、SGLT−1とSGLT−2は腎臓の異なる場所で機能している。糸球体で尿中へ移行したグルコースは、その多くが、まず近位尿細管のSGLT−2で再吸収され、更に遠位尿細管のSGLT−1で完全に再吸収され血液中へ戻される。これに対して、食物中のグルコースは総て、小腸のSGLT−1で体内へ吸収されている。
このように、腎臓にはグルコーストランスポータSGLT1及びSGLT2が発現しており、糸球体で濾過されたグルコースの尿細管上皮細胞内への再吸収過程は、これら2種類のトランスポータによって媒介されると考えられている。
一方で、腎性糖尿病とされる、血漿中のグルコースの濃度が正常域(170mg/dL以下)であるのに、明らかな糖尿の見られる状態がある。糸球体を通過したグルコースが尿細管で再吸収され得る最大速度(TmGで表す)は正常人では毎分350mgであるが、これが異常に低い場合が最も多い。その結果、血漿中のグルコース濃度の高低に関係なく尿中のグルコース濃度が異常に高くなる。この現象は、近位尿細管の異常、即ち先天的あるいは後天的ファコンニ症候群のときやフロリジン注射の後などにも見られる。もう一つの腎性糖尿病の原因としては、グルコースのみかけ上の閾値が低下しているが閾値の平均値とTmGとの両者がまったく正常という場合もある。この場合に見られるグルコースの尿中への異常な排泄増加は、グルコースの血漿濃度が低いときのみに存在する。そして、最大閾値を越えた血漿レベルでのグルコースの排泄はかえって正常である(医学大辞典 第18版,pp1059〜1060,南山堂,1998年、生化学辞典 第2版,pp673,東京化学同人,1990年)。
腎性糖尿病は、腎臓におけるグルコース再吸収不全によると考えられており、かかるグルコース再吸収不全は、腎臓において糸球体で濾過されたグルコースの尿細管上皮細胞内への再吸収過程を媒介していると考えられている既知の2種類のトランスポータ、即ち、SGLT1及びSGLT2の先天性或いは後天性の欠損に起因すると考えられている。しかしながら、未だ原因遺伝子については同定されておらず、該既知のSGLT1及びSGLT2遺伝子とそれ以外の未知のトランスポータ遺伝子の先天的或いは後天的欠損によって引き起こされると考えられてきた。
また、腎疾患を、標的或いは回避することを目的とした医薬品の開発は、腎疾患時における薬物療法をより有効かつ安全に実施するために重要であるが、今までの腎疾患の原因の解明に対する技術的な研究基盤が乏しいために、有効な成功例がないのが現状である。
本発明の課題は、腎において発現し、腎でのグルコース再吸収に関与する新規グルコーストランスポータ、その遺伝子、及びそれらの変異体、更にはそれらの利用を提供することにある。
腎性糖尿病は、腎臓におけるグルコース再吸収不全によるものであり、かかる不全は既知のグルコーストランスポータ遺伝子SGLT1及びSGLT2の先天性或いは後天性の欠損に起因すると考えられていたが、その原因遺伝子については、同定されないできた。本発明者は、この未同定の遺伝子について、鋭意探索の結果、既知のSGLT1及びSGLT2グルコーストランスポータ遺伝子とは別の腎臓で高発現する遺伝子を見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明のグルコーストランスポータは、既知のSGLT1及びSGLT2よりも高い発現量を有し、腎でのグルコース再吸収において、より大きな寄与を果たすとともに、グルコースを特異的に認識するという特性を有する。本発明のグルコーストランスポータを、「グルコーストランスポータNaGLT1」と命名した。更に、検討した結果、本発明のNaGLT1は、Na依存的なフルクトーストランスポータ機能を有することを見い出した。
本発明は、また、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1及びその遺伝子の変異体、及び該グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1に特異的に結合する抗体を包含する。更に本発明は、本発明のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子機能を染色体上で欠損させた腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物及び該モデル非ヒト動物を用いた腎性糖尿病の予防・治療薬のスクリーニング、更には、本発明の遺伝子や抗体を用いたグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能や腎疾患の診断方法やそのための診断薬を包含するものである。また、本発明は、アンチセンス鎖DNA等を用いて、本発明の遺伝子の発現を制御し、動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を調節する方法も包含するものである。
【発明の開示】
すなわち具体的には本発明は、配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA(請求項1)や、請求項1記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドをコードすることを特徴とするDNA(請求項2)や、以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA;(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチド(請求項3)や、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド(請求項4)や、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチド(請求項5)や、請求項1〜3記載のDNAを、発現ベクターに組込み、該組換え発現ベクターを宿主細胞に導入して発現することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドの製造法(請求項6)や、請求項4又は5記載のポリペプチドを用いて誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする抗体(請求項7)や、抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項7記載の抗体(請求項8)や、抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項7記載の抗体(請求項9)からなる。
また本発明は、請求項1〜3のいずれか記載のDNAを動物組織細胞に導入することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法(請求項10)や、物組織細胞が、ラット腎臓の組織細胞、ブタ腎臓由来上皮細胞、イヌ腎臓由来上皮細胞、又はフクロネズミ腎臓由来上皮細胞であることを特徴とする請求項10記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法(請求項11)や、動物組織細胞が、ヒト胎児腎臓の形質転換細胞株HEK293であることを特徴とする請求項10記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法(請求項12)や、請求項10〜12のいずれか記載の方法により製造されたことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞(請求項13)や、請求項13記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞を用いて、被研物質のグルコース輸送機能への影響を測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能調節活性を有する物質のスクリーニング方法(請求項14)や、配列表の配列番号2に示されるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子機能を染色体上で欠損させたことを特徴とする腎におけるグルコース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物(請求項15)や、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子機能の欠損が、配列表の配列番号1に示されるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子の機能の欠損であることを特徴とする請求項15記載の腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物(請求項16)や、請求項15又は16記載の腎におけるグルコース及び/又はフルクトース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物に、被検物質を投与し、該モデル非ヒト動物、或いは該モデル非ヒト動物の細胞、組織又は器官におけるグルコース再吸収能を測定・評価することを特徴とするグルコース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病予防・治療薬のスクリーニング方法(請求項17)や、請求項1記載の塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部からなるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用プローブ(請求項18)や、請求項1〜3のいずれか記載のDNAの少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用マイクロアレイ又はDNAチップ(請求項19)からなる。
さらに本発明は、請求項7〜9のいずれか記載の抗体及び/又は請求項18記載の診断用プローブを用意することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用薬剤(請求項20)や、被検組織から試料を得、該試料における請求項1記載の遺伝子の発現を測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法(請求項21)や、請求項21記載の遺伝子の発現の測定を、請求項18記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用プローブ、或いは請求項19記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用マイクロアレイ又はDNAチップを用いて行うことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法(請求項22)や、被検組織から試料を取得、培養し、該試料における遺伝子の発現により生成される請求項4記載のポリペプチドを測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法(請求項23)や、請求項23記載のポリペプチドの測定を、請求項7〜9のいずれか記載の抗体を用いて行うことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法(請求項24)や、請求項21〜24のいずれか記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断が、腎疾患におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の測定であることを特徴とする腎疾患の診断方法(請求項25)や、動物組織細胞に、請求項1〜3のいずれか記載のDNAを導入することを特徴とする動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法(請求項26)や、動物組織細胞における請求項1記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法(請求項27)や、動物組織細胞における請求項1記載のDNAの発現の抑制が、請求項1記載のDNA塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部を動物組織細胞に導入することにより行われることを特徴とする動物組織細胞グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法(請求項28)や、動物組織細胞が、動物腎細胞であることを特徴とする請求項26〜28のいずれか記載の動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法(請求項29)からなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例において、Aは本発明のNaGLT1の塩基配列及びアミノ酸配列を、Bは本発明のNaGLT1のアミノ酸配列のハイドロパシープロット(疎水性分析)を示す図である。
第2図は、本発明の実施例において、Aは本発明のラット細胞におけるNaGLT1 mRNAのノーザンブロット分析を、Bは本発明のラット細胞におけるNaGLT1 mRNAをPCRにより検出したことを示す写真である。
第3図は、本発明の実施例における、本発明のNaGLT1、SGLT1、SGLT2及びGAPDHのmRNAをPCRにより検出し、それぞれのmRNAについて腎臓内での発現分布を示す写真である。なお、図中の+は逆転写酵素を含む条件で、−は逆転写酵素を含まない条件でRT−PCRを行ったものをそれぞれ示す。
第4図は、本発明の実施例における、本発明のNaGLT1、SGLT1及びSGLT2 mRNAの発現量をリアルタイムPCRによって定量解析したことを示す図である。
第5図は、本発明の実施例における、本発明のNaGLT1 mRNAをインビトロ合成し、注入した卵母細胞と、水注入卵母細胞における各種糖類蓄積を示す図である。
第6図は、本発明の実施例において、Aは本発明のNaGLT1発現卵母細胞における[14C]αMeGlc蓄積量とαMeGlc自身の依存関係を、BはAのデータを用いたHillプロットを、Cは[14C]αMeGlc蓄積量と細胞外Naイオン濃度の依存関係を、DはCのデータを用いたHillプロットを示す図である。
第7図は、本発明の実施例における、本発明のNaGLT1発現卵母細胞及び水注入卵母細胞における、[14C]αMeGlc蓄積に対する各種糖類の影響を示す図である。
第8図は、本発明の実施例における、ラット腎臓膜部位(腎粗膜、刷子縁膜、及び側底膜)におけるNaGLT1タンパク質の細胞内局在を、イムノブロットにより解析した結果を示す写真である。
第9図は、本発明の実施例におけるNaGLT1が媒介するHEK293細胞によるフルクトースの取込みについて、(A)は、糖類似体を含む緩衝液とともに15分間、37℃でインキュベーションしたHEK293細胞について、(B)は、NaGLT1 cDNAでトランスフェクトしたHEK293細胞による[14C]フルクトースの取込みについて、示したグラフである。
第10図は、本発明の実施例における腎臓刷子縁膜小胞によるフルクトースの取込みについて、(A)は、マンニトール及びHEPESに懸濁した膜小胞を、マンニトール及びHEPESを含む基質混合液とともに、25℃でインキュベーションした取込みについて、(B)は、フルクトースのNa依存性の取込みを、インキュベーション緩衝液中、各種濃度における取込みについて、示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
(本発明の遺伝子、該遺伝子によってコードされるポリペプチド及びその抗体)
本発明は、腎性糖尿病の原因に関与するグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1及びその原因遺伝子、更にはそれらの変異体からなる。
本発明の腎性糖尿病の原因に関与するグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1cDNAは、配列表の配列番号1に示される塩基配列を有する。また、該cDNAによって、コードされるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1タンパク質は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドからなる。本発明において取得された新規遺伝子であるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1のcDNAは、2,173の塩基対からなり、その翻訳領域(111〜1562番目)には、484個のアミノ酸残基からなるポリペプチドがコードされている。
本発明のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1は、疎水性解析の結果からは、11回膜貫通型の糖タンパク質であることが確認された。本発明の該グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1は、腎臓において高発現するグルコース及び/又はフルクトーストランスポータであり、他の単糖類は認識せずグルコース及び/又はフルクトースを特異的に認識する。腎臓におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1の発現量は、既知のグルコーストランスポータSGLT1やSGLT2よりも高く、腎性糖尿病の原因と考えられている腎臓でのグルコースの再吸収に大きな寄与を果たしているものである。
本発明の遺伝子としては、前記配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列、更には、該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドをコードするDNA配列、及び、次の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA;
(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを有するポリペプチド、を含むものである。
本発明において、種々のDNA配列の変異は、周知の遺伝子工学的遺伝子変異手段によって、行うことができる。
なお、上記本発明の塩基配列において、「塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
更に、本発明は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、該配列表の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを含むものである。本発明のポリペプチドを取得するには、公知の遺伝子工学の技術を用いて取得することができる。即ち、本発明の遺伝子を適宜公知の発現ベクターに組込み、該組換えベクターを宿主細胞に導入し、発現することによって取得することができる。
(本発明のポリペプチドによって誘導される抗体の利用)
更に、本発明は、本発明のポリペプチドによって誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。該抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を挙げることができる。該抗体の作製は、本発明のポリペプチドを抗原として、常法により作製することができる。本発明の抗体は、本発明のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドとの抗原抗体反応により、本発明遺伝子の腎組織細胞等における発現の有無の検出に利用することができ、該遺伝子に関わる腎疾患の診断に利用することができる。本発明の抗体を用いた免疫学的測定には、例えばRIA法、ELISA法、蛍光抗体法等公知の免疫学的測定法を用いることができる。
(本発明のDNAを導入したヒト組織細胞の利用)
本発明のDNAを、ヒト組織細胞に導入して、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現するヒト組織細胞を製造することができる。該ヒト組織細胞としては、本来NaGlT1が強く発現している腎臓の組織細胞を用いることが好ましく、該腎臓の組織細胞の具体例としては、ヒト胎児腎臓の形質転換細胞株HEK293を挙げることができる。また、本発明の遺伝子を導入する動物組織細胞としては、ラットの腎臓の組織細胞や、ブタ腎臓由来上皮細胞 LLC−PK、イヌ腎臓由来上皮細胞 MDCK、フクロネズミ腎臓由来上皮細胞 OKのいずれかの細胞を用いることもできる。本発明のDNAをヒト組織細胞に導入するには、トランスフェクション法等、適宜の遺伝子導入法を用いることができる。
(本発明の遺伝子及び該遺伝子によってコードされるポリペプチドの利用)
本発明において、ヒト腎細胞からクローニングしたNaGlT1の新規遺伝子は、該塩基配列のアンチセンス鎖を用いることにより、診断用プローブとして、腎組織細胞のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断に用いることができる。また、該診断用プローブや前記本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断薬として、及び該診断薬を装備した診断用キットとして利用することができる。
更に、本発明のDNAを、少なくとも1つ以上デバイス上に固定して、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断用マイクロアレイ又はDNAチップとして利用することができる。該マイクロアレイ及びDNAチップには、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータの他の遺伝子等を合わせて固定し、診断に用いることができる。また、腎組織細胞における本発明の遺伝子の発現の状態を測定するには、RT−PCR法やノーザンブロッティング法等、公知の遺伝子の測定法を適宜用いることができる。本発明の診断法を用いて、腎組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1の遺伝子の発現の有無や発現の強度を測定することにより、ヒト腎臓における遺伝子疾患を検出することができる。
(本発明の遺伝子を用いたグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節)
ヒト組織細胞における本発明の遺伝子の発現の制御により、ヒト組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節を行うことができる。ヒト組織細胞における遺伝子の発現の制御は、ヒト組織細胞への本発明遺伝子の導入や、本発明遺伝子に対するアンチセンス鎖の導入による本発明遺伝子の発現抑制によって行うことができる。ヒト組織細胞への本発明遺伝子の導入方法としては、トランスフェクション法等の公知の遺伝子導入法を用いることができる。アンチセンス鎖のヒト組織細胞への導入には、この分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、腎組織等のヒト組織細胞へ直接投与することができる。また、必要に応じて薬学的に許容される細胞内導入試薬、例えば、リポフェクチン試薬、リポフェクトアミン試薬、DOTAP試薬、Tfx試薬、リポソーム及び高分子担体等と共に投与することができる。
腎臓等のヒト組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節により、腎臓等における遺伝子疾患の予防・治療が可能となる。
(本発明の遺伝子欠損モデル非ヒト動物及びその利用)
本発明の、腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物とは、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損することにより、腎臓におけるグルコース及び/又はフルクトース再吸収不全のような腎性糖尿病を発症する非ヒト動物をいう。本発明における非ヒト動物としては、ラット、マウス、モルモット等の齧歯目動物を具体的に挙げることができ、本発明の腎性糖尿病の予防・治療薬のスクリーニングに用いるモデル非ヒト動物としては、マウス、ラットが特に有利に利用することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のNaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損したモデル非ヒト動物の作製は、公知の遺伝子欠損モデル非ヒト動物の作製方法を用いて作製することができる。以下に、NaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損したモデル非ヒト動物の作製方法を、NaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損したマウスを例にとって説明する。
NaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちホモ接合体変異マウス(−/−)は、例えば、ラット腎臓から構築したラット遺伝子ライブラリーより得られた遺伝子断片を用いて、NaGLT1遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたNaGLT1遺伝子の一部又は全部を、例えばlac−Z遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等のマーカー遺伝子で置換し、必要に応じて、5′末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT−A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子等の遺伝子を導入してターゲッティングベクターを作製し、この作製されたターゲッティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、X−galによる染色あるいはG418やガンシクロビル(GANC)等の抗生物質に抵抗性を示すES細胞を選択する。この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。
上記組換えES細胞をマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体変異マウス(+/−)を得ることができ、また、このヘテロ接合体変異マウスをインタークロスさせることによって、ホモ接合体変異マウス(−/−)を得ることができる。そして、かかるホモ接合体変異マウスにNaGLT1遺伝子が欠損しているかどうかを確認する方法としては、例えば、このマウスのNaGLT1遺伝子の発現をウエスタンブロット法等により調べる方法がある。
本発明における、腎臓におけるグルコース再吸収不全に起因する腎性糖尿病の予防・治療薬のスクリーニングは、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1遺伝子機能の染色体上での欠損により、腎臓におけるグルコース及び/又はフルクトース再吸収不全のような腎性糖尿病を発症する非ヒト動物に、被検物質を投与し、該モデル非ヒト動物、或いは該モデル非ヒト動物の細胞、組織又は器官における及び/又はフルクトースグルコース再吸収能を測定・評価することにより行う。
上記のように、腎臓におけるグルコース及び/又はフルクトース再吸収不全に起因する腎性糖尿病の予防・治療薬のスクリーニングをする際、野生型非ヒト動物及び/又はNaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を用いて、グルコース及び/又はフルクトース再吸収不全に起因する腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物の場合と比較・評価することが好ましく、野生型非ヒト動物としては、上記NaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損したモデル非ヒト動物と同種の動物を意味し、中でも同腹の動物を好適に例示することができ、NaGLT1遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物は、文献(Proc.Natl.Acad.Sci.USA97,6132−6137,2000)記載の方法等によって作製することができる。NaGLT1遺伝子機能欠損型と、それらの同腹の野生型は、個体レベルで正確な比較実験・評価(解析)等を行うことができる点で同時に用いることが好ましい。
(本発明の遺伝子を用いたグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節)
動物組織細胞、特に腎臓における組織細胞における本発明の遺伝子の発現の制御により、動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節を行うことができる。動物組織細胞における遺伝子の発現の制御は、動物組織細胞への本発明遺伝子の導入や、本発明遺伝子に対するアンチセンス鎖並びにsiRNAの導入による本発明遺伝子の発現抑制によって行うことができる。動物組織細胞への本発明遺伝子の導入方法としては、トランスフェクション法等の公知の遺伝子導入法を用いることができる。アンチセンス鎖の動物組織細胞への導入には、この分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、腎組織等の動物組織細胞へ直接投与することができる。また、必要に応じて薬学的に許容される細胞内導入試薬、例えば、リポフェクチン試薬、リポフェクトアミン試薬、DOTAP試薬、Tfx試薬、リポソーム及び高分子担体等と共に投与することができる。
腎臓等の動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節により、腎性糖尿病等における遺伝子疾患の予防・治療が可能となる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
(グルコース及び/又はフルクトーストランスポータNaGLT1のcDNAクローニング)
ラット腎臓より、塩化セシウム密度勾配遠心法により全RNAを抽出し、この全RNAからオリゴdTセルロース(Stratagene社製)を用いてポリA+RNA(mRNA)を精製した。精製したmRNAは、cDNAライブラリー作製キット(Stratagene社製)を用いてラット腎cDNAライブラリーを作製した。このcDNAライブラリーから、無作為に1,000遺伝子を取り出し、ベクタープライマー(T3プライマー;5’−AATTAACCCTCACTAAAGGG−3’)を用いてシークエンスを行った。なお、NaGLT1の全長シークエンスについては、下記の表1に記載のとおりプライマー(配列表の配列番号3〜12)を設計し(Proligo社に合成依頼)、RISA−384(島津社製)を用いたチェーンターミネーター法により解読を行い、GENETYX−MAC Version 10(SOFTWARE DEVELOPMENT社製、東京)を用いて配列表を作成した。実際のシークエンスは、RISA−384システムにより行った(島津ジェノミックリサーチ(株)に委託解析)。

得られた遺伝子配列情報について、GanBank、EMBL、DDBJ及びPDBの各データベースに登録されている遺伝子配列との相同性解析をBLASTにより行い既知群と未知群に分けた。未知遺伝子約200種は、mRNAをmCap RNA Capping kit(Stratagene社製)を用いてインビトロ合成し、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた輸送実験を行った。その結果、代謝抵抗性のα−メチル−D−グルコピラノシド(αMeGlc)を特異的に輸送するクローン(NaGLT1)を同定した(GeneBankアクセッションナンバー:AB089802)。単離されたNaGLT1 cDNAは2,173塩基対からなり(配列番号1)、その翻訳領域(111〜1562番目)には484個のアミノ酸残基からなるタンパク質(配列番号2)がコードされていた(第1図A)。疎水性解析の結果から、NaGLT1は11回膜貫通型の糖タンパク質であることが推測された(第1図B)。
(ノーザンブロット法及びRT−PCRによるNaGLT1の発現分布の解析)
ストリンジェントな条件下[50%のホルムアミド、5×SSPE(1×SSPEの組成:0.15M NaCl、10mM NaHPO、及び1mM EDTA;pH7.4)、5×デンハルト溶液、0.2%のSDS及び10μg/mLのニシン精子由来のDNA、42℃]において[α−32P]dCTP(Amersham社製)でNaGLT1のcDNA(全長)をPrime−a−Gene Labeling System(Promega社製)を用いて標識し、ラット各臓器からRNeasy mini RNA extraction kit(QIAGEN社製)を用いて全RNAを抽出し、をブロットしたナイロン膜(Hybond N+membrane:Amersham社製)とハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションを行った後、2×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム、pH7.0)/0.1%のSDSで10分間室温でブロットメンブレンを2度洗浄し、さらに0.5×SSC/0.1%SDSで30分間42℃で1度洗浄した。洗浄したブロットメンブレンをイメージングプレートに3〜6時間露出し、可視化されたバンドをイメージングプレートリーダで読みとった後、Image Analyze II(富士フイルム社製)で画像処理を行った(BIO−imaging Analyzer BAS−2000IIシステム、富士写真フィルム株式会社)。それぞれのバンドに相当する放射線強度は、Image Analyze II上で数値定量化した。その結果、NaGLT1 mRNAは、腎臓の皮質部及び髄質部に多く発現することが認められた(第2図A)。
次に、RT−PCR法で調べるため、ラット各組織(脳、心臓、肺、肝臓、小腸、脾臓、腎臓の皮質部、腎臓の髄質部)からRNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いて1μgの全RNAを得た後、SuperScript II reverse transcriptase(インビトロジェン社製)を用いて逆転写反応を行った。反応終了後残存RNAをRNase H(インビトロジェン社製)で分解した。得られた1本鎖DNAを鋳型として、NaGLT1、SGLT1、SGLT2及びGAPDHに特異的なプライマー(下記の表2及び配列表の配列番号13〜20参照)とTaq DNA polymerase(Takara社製)を使用し、95℃で3分間熱変性させた後、以下のサイクルを35回繰り返し増幅させた。サイクル:94℃で1分間の熱変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間の伸長反応により得られたRT−PCR産物を1.5%のアガロースゲル上で分離した後、エチジウムブロマイドで染色、紫外線下で可視化した。その結果、腎臓(皮質部、髄質部)でNaGLT1が高発現しており、腎臓以外にも、脳、肺及び肝臓でも検出限界以上の発現が認められた(第2図B)。

(マイクロダイセクション法によるラット腎尿細管分節の単離)
Wistar系雄性ラット(7週齢)をネンブタール麻酔下正中開腹し、左腎臓を露出させる。下大動脈の左腎動脈分岐点直前頭部側にて結紮する。下大動静脈を左右分岐点直前頭部側にて結紮し、左腎動脈直下尾部側において血管に小孔を開ける。続いてその小孔よりポリエチレン医療用チューブ(PE−50,Becton Dickinson社製)を挿入し、10ml容量のシリンジを用いて過加圧にならないようにA液(130mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのNaHPO、1mMの硫酸マグネシウム、1mMの乳酸カルシウム、2mMの酢酸ナトリウム、5.5mMD−glucose、10mMのHEPES、pH7.4)10mlで左腎を前灌流する。灌流腎に鬱血等がないことを確認した後、B液(1mg/mlのcollagenage(type I,Sigma社製)、1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma社製)、10mMのバナジル酸リボヌクレオシドコンプレックス(インビトロジェン社製)含有A液)10mlで灌流し、すばやく摘出する。
腎皮質から髄質にわたる角度で切断して厚さ1〜1.5mmの腎切片を作る。得られた腎切片を100%Oを用いて酸素化しながらB液中で37℃、30分間の振盪後、氷冷A液で腎切片を洗浄し、シリコナイズした鋭利な針を用いて以下の尿細管各分節をそれぞれの構造的特徴を基に顕微鏡で観察しながら分離する。単離した各ネフロン分節(糸球体、近位曲尿細管、近位直尿細管、髄質ヘンレ太い上行脚、皮質ヘンレ太い上行脚、皮質集合管、髄質外層集合管、髄質内層集合管)を糸球体は20個、その他の分節は8mmを1サンプルとして、それぞれの分節サンプルからRNeasy RNA mini kit(QIAGEN社製)を用いて全RNAを抽出した。得られた全RNAと下記の表3のプライマーセット(配列番号21〜29)を用いてRT−PCRを行った(第3図)。その結果、NaGLT1 mRNAは他のSGLTと同様、近位曲尿細管及び近位直尿細管で高発現することが明らかになった(第3図)。

(NaGLT1 mRNA発現レベルの定量的解析)
Wistar系雄性ラット(7週齢)の腎臓由来全RNAを逆転写し(方法2参照)、得られた1本鎖DNAを鋳型として、NaGLT1、SGLT1、SGLT2及びGAPDHに特異的なプライマー及びTaqManプローブ(表3参照)とUniversal master mix(Applied Biosystems社製)を使用し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection Systemを用いてNaGLT1、SGLT1、SGLT2及びGAPDH mRNA発現量を定量した。なお、標準曲線を求めるため、リアルタイムPCRで増幅したPCR産物をpGEM−T Easy vector(Promega社製)に挿入し、大腸菌(DH−5α)に形質転換した。形質転換した大腸菌を一晩LB培地(1L中に10gのバクトトリプトン、5gのイーストエクストラクト及び10gのNaCl、pH7.2)で振盪培養し、NaGLT1、SGLT1、SGLT2及びGAPDHそれぞれの増幅産物(表2のプライマーセットで増幅したPCR断片)をコードしているプラスミドDNAの精製を行った。
それぞれの濃度をUV1200分光光度計(島津社製)で測定し、既知濃度の対照遺伝子として使用した。PRISM 7700で得られた結果は、標準曲線を用いて数値化した。なお、内部標準として用いたGAPDH発現量をリアルタイムPCR各反応内における鋳型RNA量の補正に用いた。その結果、NaGLT1 mRNA発現量は、腎皮質及び髄質のいずれにおいても、他のSGLTと比較して高発現することが示された(第4図)。
(NaGLT1の輸送基質)
アフリカツメガエル卵母細胞(以下卵母細胞と略す)発現系を用いて、NaGLT1の輸送活性について調べた。先ず、種々の糖類の選択性について調べるためインビトロ合成NaGLT1 RNAを卵母細胞に注入し、2日間18℃でインキュベートした後実験に供した。放射性標識した単糖類(α−メチル−D−グルコピラノシド(αMeGlc:代謝抵抗性グルコース)、ガラクトース、フルクトース、マンノース、マンニトール及び2−デオキシグルコース)並びに2糖類(スクロース)を基質として調べた結果、αMeGlc取り込みのみが、陰性対照として同時に調べた水注入卵母細胞と比較して有意に高かった(第5図)。従って、NaGLT1の輸送基質がグルコースであることが明らかになった。
(NaGLT1を介したαMeGlc輸送特性)
NaGLT1 cRNA注入細胞及び水注入卵母細胞の[U−14C]−α−メチル−D−グルコピラノシド(αMeGlc)、D−[1−14C]ガラクトース、D−[U−14C]マンノース、D−[U−14C]フルクトース、[1,2−H]−2−デオキシ−グルコース、D−[1−H]マンニトール、[U−14C]スクロースの取り込み活性を測定した。その際、96mMのNaCl、2mMのKCl、1.8mMのCaCl、1mMのMgCl、5mMのHEPES(pH7.4)からなる緩衝液中でインキュベートした。また、細胞外Na濃度依存性を行う場合は、NaClの濃度を9.6〜96mMの間に調製し、96mMに不足する分を塩化コリンで補うこととし、最終的な浸透圧を一定にした(第6図、第7図)。
次に、NaGLT1発現卵母細胞を用いて、αMeGlc取り込みの濃度依存性について調べた結果、Km値は3.71±0.09mMを示した(第6図A)。また、NaGLT1を介したαMeGlc取り込みに対する細胞外Naイオン濃度の影響について解析した。はじめに、rNaGLT1のαMeGlc取り込みに対する細胞外Naの影響は、7μMのvalinomycin添加により膜電位差を無くした状態で、細胞外Naの濃度を0〜96mMまで変化させ検討した。インビトロ合成rNaGLT1 RNAを注入した細胞では細胞外Na濃度依存的にαMeGlc取り込みは増大した。また、rNaGLT1のαMeGlc取り込みに対する用量依存性、あるいは細胞外Na依存性の検討(第6図A、第6図C)より、各々のVmax値(最大輸送速度)、Km値を算出した。それらの値をもとにヒルプロット(横軸に変化させた基質またはイオンの濃度、縦軸にはそれぞれの基質(またはイオン)濃度の時の輸送速度VでVmaxを徐したものの対数値をとる。)を行い(第6図B、第6図D)、ヒル係数を算出した。その結果、αMeGlc、Naのヒル係数はそれぞれ1.06、1.00であり、αMeGlcとNaとのカップリング比は1:1であることが示された(第6図)。従ってNaGLT1は、細胞外Naイオン濃度依存的に機能するグルコーストランスポータであることが示唆された。
さらに、NaGLT1発現卵母細胞を介する[14C]標識αMeGlc取り込みに対する種々阻害剤の影響について調べた結果、非標識αMeGlc、D−グルコース、2−デオキシグルコース及びフロリジンは極めて強い阻害効果を有していた。フルクトースやフロレチンは弱い阻害効果を有していた。一方、L−グルコース、3−O−メチルグルコース、ガラクトース及びマンノースはNaGLT1を介したαMeGlc取り込みに対して影響を示さなかった(第7図)。
(抗NaGLT1抗体の作製)
NaGLT1のアミノ酸配列を基に、c末端側のペプチド(HN−LPLDRKQEKSINSEGQ−COOH)(配列番号30)をN末端側をシステインとして作製した(サワディー・テクノロジー社に合成依頼)。高速液体クロマトグラフィー(HPCL)による分析の結果、合成されたペプチドの純度は92%であった。続いてヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin(Calbiochem−Behring社製))を用い、このペプチドとのコンジュゲートを作製した。コンジュゲートは1mlずつ10本に分注し凍結保存した。
コンジュゲートはFreund完全アジュバント(Difco社製)を用いて均一なエマルジョンを作った。雄性日本白色家兎(2kg)の前免疫血清を採取後、0.2mg/羽の割合で2週間間隔で免疫した。各免疫時に採血し、ELISA法により抗体価の解析を行った。最終的に充分な抗体価が得られた後、全採血して抗血清として凍結保存した。
(イムノブロットによるNaGLT1の局在解析)
ペントバルビタール麻酔下Wistar系雄性ラット(220〜230g)から各組織を取り出し、ホモジネートバッファー(230mMのスクロース、5mMのトリス/塩酸(pH7.5)、2mのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.1mM フッ化フェニルメチルスルフォニル(PMSF))でホモジナイズした後、15分間の3000gでの遠心分離を行った。上清を取り分け、さらに30分間の24500gでの遠心分離を行い、沈殿物(粗膜画分)を回収した。ラット腎刷子縁膜及び側底膜の調製はパーコール密度勾配遠心法(Biochim Biophys Acta 773,113−124,1984)に従い同時調製した。膜サンプルはSDSサンプルバッファー(2%のSDS、125mMのトリス、20%グルセロール)に可溶化しポリアクリルアミド電気泳動(Nature227,680−685,1970)を行った。
分子量マーカーには、RainbowTM colored protein molecular weight markers[myosin(220,000),phosphorylase beta(97,400),BSA(66,000),ovalbumin(46,000),carbonic anhydrase(30,000),trypsin inhibitor(21,500),lysozyme(14,300)](Amersham社製)を使用した。泳動の後、PVDF膜(ImmobironP、ミリポア社製)にタンパク質をトランスファー後、TBS−T(Tris buffered saline;20mMのTris/HCl(pH7.5)、137mMのNaCl、0.1%のTween20)でリンスした。次に5%のBSA含有TBS−Tで室温2時間ブロッキングした後、5%BSA含有TBS−Tで希釈した抗血清(1:2000)と4℃、一晩反応させ、その後TBS−Tで15分、3回膜を洗浄した。そしてECL化学発光キット(Amersham社製)を用いてX線フィルム(富士フイルム社製)に感光させた。その結果、NaGLT1タンパク質は腎臓刷子縁膜に局在することが明らかになった(第8図)。なお、第8図中の左側は、抗NaGLT1抗体のみと反応させた場合、右側は予め抗原ペプチドで処理した抗NaGLT1抗体で反応させた結果をそれぞれ示す。
(NaGLT1が媒介するHEK293細胞によるフルクトースの取込み)
糖類似体を含む緩衝液(0.1mM、37kBq/ml)とともに15分間、37℃でインキュベーションしたHEK293細胞について、ベクター(白のカラム、0.8μg/ウェル)又はrNaGLT1 cDNA(黒のカラム、0.8μg/ウェル)のトランスフェクションから2日後に、取込み分析を行った。結果を、第9図(A)に示す。各カラムは3つの単層から得られた平均値±S.E.M.を表す。P<0.05という値は、ベクターでトランスフェクトしたHEK293細胞とは有意に異なっていた(Student’s unpaired t−test)。
また、rNaGLT1 cDNA(0.8μg/ウェル)でトランスフェクトしたHEK293細胞による[14C]フルクトースの取込みを、インキュベーション緩衝液中、各種濃度(0.1〜20mM)について、15分間、37℃で分析し、ベクターでトランスフェクトしたHEK293細胞にて測定された取込み量を差し引いた。結果を、第9図(B)に示す。差込み図は、取り込みのEadie−Hofstee plotを示す。各ポイントは、3つの単層の平均値±S.E.M.を表す。見かけ上のK値及びVmax値は、3回の個別実験により得られたものである。
(腎臓刷子縁膜小胞によるフルクトースの取込み)
100mMのマンニトール及び10mMのHEPES(pH7.5)に懸濁した膜小胞(20μl)を、100mMのマンニトール、200mMのNaCl(黒の丸:●)又はKCl(白の丸:○)、4mMの[C]フルクトース及び10mMのHEPES(pH7.5)を含む基質混合液(20μl)とともに、25℃でインキュベーションした。結果を、第10図(A)に示す。それぞれの値は、3回の個別実験の平均値±S.E.M.を表す。各実験は、5匹のラットから単離した刷子縁膜小胞を用いて行われた。
腎臓刷子縁膜小胞によるフルクトースのNa依存性の取り込みを、NaClの存在下において、各種濃度(0.1〜20mM)のインキュベーション緩衝液中で15秒間、25℃で分析し、NaClをKClで置換する場合の取込み量を差し引いた。結果を、第10図(B)に示す。差込み図は、取り込みのEadie−Hofstee plotを示す。各ポイントは、3回の測定の平均値±S.E.M.を表す。見かけ上のK値及びVmax値は、3回の個別実験により得られたものである。
(rNaGLT1でトランスフェクトしたHEK293細胞又は腎臓刷子縁膜小胞による[14C]フルクトースの取込みに対する、糖類似体フロリジン及びフロレチンの作用)
糖類似体(30mM)であるフロリジン(50μM)又はフロレチン(50μM)のいずれかの存在下及び非存在下で、rNaGLT1でトランスフェクトしたHEK293細胞による[14C]フルクトース(0.1mM、37kBq/ml)の取込みを、15分間、37℃で測定し、ベクターでトランスフェクトしたHEK293細胞にて測定された取込み量を差し引いた。糖類似体(30mM)であるフロリジン(50μM)又はフロレチン(50μM)のいずれかの存在下及び非存在下で、100mMのマンニトール及び10mMのHEPES(pH7.5)に懸濁した膜小胞(20μl)を、[14C]フルクトース(最終的に2mM、74kBq/ml)含む基質混合液(20μl)とともに、15秒間、25℃でインキュベーションし、NaClをKClで置換する場合の取込み量を差し引いた。Naの非存在とは、NaClを塩化コリンで置換するという条件で測定した取り込み量である。結果を、表4に示す。それぞれの値は、3回の個別実験の平均値±S.E.M.を表す。P<0.05という値は、コントロールの値とは有意に異なっていた(Fisher’s t−test)。

【産業上の利用可能性】
腎性糖尿病は、腎臓におけるグルコース再吸収不全によるものであり、該グルコース再吸収不全はグルコーストランスポータ遺伝子の欠損によると考えられていた。本発明により、従来不明であった遺伝子が取得されたことにより、該遺伝子及び該遺伝子の発現産物であるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータタンパク質を用いて、腎性糖尿病の解明、診断、予防・治療そのための薬剤の開発が可能となった。
例えば、本発明の遺伝子及びペプチド、更には該ペプチドに特異的に結合する抗体を用いて、例えば、ヒト腎におけるような新たなグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ遺伝子の単離を行うことや、ヒトやラット組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータの発現を測定することが、新規遺伝子の単離やグルコース及び/又はフルクトーストランスポータの機能の診断、腎臓における遺伝子疾患の検出が可能となる。
また、腎組織細胞のような組織細胞への本発明の遺伝子の導入や、本発明の遺伝子のアンチセンス鎖の導入による該遺伝子の発現抑制により、組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を調節することにより、腎遺伝子疾患の予防・治療を行うことも可能となる。更に、本発明の遺伝子の染色体上での欠損動物を作製することにより、グルコース及び/又はフルクトーストランスポータに着目した腎性糖尿病非ヒトモデル動物を作製することが可能である。該非ヒトモデル動物を用いることにより、腎性糖尿病の予防及び治療のための新規薬剤の開発が可能となる。
【配列表】


























【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



【図7】

【図8】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA。
【請求項2】
請求項1記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドをコードすることを特徴とするDNA。
【請求項3】
以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA;
(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b))配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチド
【請求項4】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項5】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチド。
【請求項6】
請求項1〜3記載のDNAを、発現ベクターに組込み、該組換え発現ベクターを宿主細胞に導入して発現することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドの製造法。
【請求項7】
請求項4又は5記載のポリペプチドを用いて誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする抗体。
【請求項8】
抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項7記載の抗体。
【請求項9】
抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項7記載の抗体。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか記載のDNAを動物組織細胞に導入することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法。
【請求項11】
物組織細胞が、ラット腎臓の組織細胞、ブタ腎臓由来上皮細胞、イヌ腎臓由来上皮細胞、又はフクロネズミ腎臓由来上皮細胞であることを特徴とする請求項10記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法。
【請求項12】
動物組織細胞が、ヒト胎児腎臓の形質転換細胞株HEK293であることを特徴とする請求項10記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞の製造法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか記載の方法により製造されたことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞。
【請求項14】
請求項13記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する動物組織細胞を用いて、被研物質のグルコース輸送機能への影響を測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能調節活性を有する物質のスクリーニング方法。
【請求項15】
配列表の配列番号2に示されるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子機能を染色体上で欠損させたことを特徴とする腎におけるグルコース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物。
【請求項16】
グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子機能の欠損が、配列表の配列番号1に示されるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能を有するポリペプチドを発現する遺伝子の機能の欠損であることを特徴とする請求項15記載の腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物。
【請求項17】
請求項15又は16記載の腎におけるグルコース及び/又はフルクトース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病を発症するモデル非ヒト動物に、被検物質を投与し、該モデル非ヒト動物、或いは該モデル非ヒト動物の細胞、組織又は器官におけるグルコース再吸収能を測定・評価することを特徴とするグルコース再吸収能不全に起因する腎性糖尿病予防・治療薬のスクリーニング方法。
【請求項18】
請求項1記載の塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部からなるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用プローブ。
【請求項19】
請求項1〜3のいずれか記載のDNAの少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用マイクロアレイ又はDNAチップ。
【請求項20】
請求項7〜9のいずれか記載の抗体及び/又は請求項18記載の診断用プローブを用意することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用薬剤。
【請求項21】
被検組織から試料を得、該試料における請求項1記載の遺伝子の発現を測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法。
【請求項22】
請求項21記載の遺伝子の発現の測定を、請求項18記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用プローブ、或いは請求項19記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能診断用マイクロアレイ又はDNAチップを用いて行うことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法。
【請求項23】
被検組織から試料を取得、培養し、該試料における遺伝子の発現により生成される請求項4記載のポリペプチドを、測定することを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法。
【請求項24】
請求項23記載のポリペプチドの測定を、請求項7〜9のいずれか記載の抗体を用いて行うことを特徴とするグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断方法。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか記載のグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の診断が、腎疾患におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の測定であることを特徴とする腎疾患の診断方法。
【請求項26】
動物組織細胞に、請求項1〜3のいずれか記載のDNAを導入することを特徴とする動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法。
【請求項27】
動物組織細胞における請求項1記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法。
【請求項28】
動物組織細胞における請求項1記載のDNAの発現の抑制が、請求項1記載のDNA塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部を動物組織細胞に導入することにより行われることを特徴とする動物組織細胞グルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法。
【請求項29】
動物組織細胞が、動物腎細胞であることを特徴とする請求項26〜28のいずれか記載の動物組織細胞におけるグルコース及び/又はフルクトーストランスポータ機能の調節方法。

【国際公開番号】WO2004/055184
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560603(P2004−560603)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015418
【国際出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年7月10日Federation of European Biochemical Societies 発行の「FEBS Letters」に発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】