説明

グレートーンのパターン膜欠陥修正方法

【課題】グレートーンのパターン膜の欠陥領域を確実に修正して所定の光透過率にする。
【解決手段】 FIB-CVD膜を形成する前に、欠陥の一部でパターン膜が正常な厚さでないながら残っている領域8bに集束イオンビームを照射して除去して、欠陥領域にはパターン膜が除去された状態にする前工程を設け、前工程後の欠陥領域の境界から前記集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域をFIB-CVD膜形成のための集束イオンビーム照射領域10eとし、有機化合物蒸気吹付けと共に前記集束イオンビームを所定回数照射して、前記パターン膜と重ならない領域に所定の光透過率を持つFIB-CVD膜を形成した。また前工程とFIB-CVD膜を形成する工程の途中に同一の参照パターンの位置確認を行なって欠陥に照射する集束イオンビームの照射位置のドリフト補正を行った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPDパネル製造や半導体製造の露光工程で使用されるフォトマスクの欠陥を集束イオンビームを使用して修正する方法に関し、特に転写に使われる露光光透過率が中間量であるパターン膜が形成されたグレートーンマスクの欠陥を修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶などフラットパネルディスプレイ(FPDと呼ぶ)の基板や半導体基板製造の露光工程では、写真技術を応用してフォトマスク(単にマスクと呼ぶ)を原版としてパターンの転写がおこなわれる。マスクは石英ガラス上にクロムやモリブデンシリサイドなどのような光を遮蔽するパターン膜が形成されている。マスクは原版であるため、欠陥があると転写されるもの全てに欠陥が作り込まれてしまうことになるため、無欠陥であることが求められている。しかしマスク製造プロセス上どうしても欠陥が発生してしまうため、欠陥を修正する必要がある。欠陥には、有ってはならない所にパターン膜が存在する黒欠陥と、必要な所にパターン膜が存在しない白欠陥がある。従来欠陥の修正は、レーザーを用いておこなわれてきた。しかしパターンが微細化されると修正しなければならない欠陥も小さくなり、レーザーではこのような微細欠陥に修正が難しいものが増えてきた。そこで集束イオンビーム(FIBと呼ぶ)を用いた修正が使用されるようになってきている。FIBによる欠陥修正は半導体用のマスクに対して普及してきたが、FPD用のマスクに対しても使われはじめている。
【0003】
FIBを用いたマスクの欠陥修正技術は、例えば特許文献1に開示されている。以下にFIBを用いたマスクの欠陥修正装置について、図を用いて説明する。図3はFIBを用いたマスクの欠陥修正装置の構成図である。図3において、1はイオン光学系、2は集束イオンビーム、3はマスク、4は2次荷電粒子検出器、5は画像処理装置、6は化合物蒸気吹きつけ装置である。イオン光学系1には、図示していないイオンを発生するイオン源、イオンを細いビームに絞るレンズ、イオンを走査するディフレクターを含み、集束イオンビーム2を発生する。集束イオンビーム2はビーム径0.05μmから1μm程度に絞られて、マスク3に照射される。マスク3からは、集束イオンビーム2の照射により、2次イオンや2次電子といった2次荷電粒子が発生する。2次荷電粒子は2次荷電粒子検出器4で検出される。マスク3に描かれたパターン像は、SEMと類似した原理で得られる。すなわち、画像処理装置5の制御のよりマスク3上で集束イオンビーム2の走査と2次荷電粒子検出器の信号を同期させて像を得る。画像処理装置5はまた、得られたパターン像を表示したり、パターン像から欠陥の位置や形状を記憶したり、欠陥を修正するために集束イオンビーム2を走査照射するための条件を制御する働きも持っている。なおこの条件とは、集束イオンビーム2を走査照射する位置や走査速度、走査回数などである。白欠陥を修正するときには、白欠陥位置に集束イオンビーム2を照射すると同時に、FIB-CVD膜を形成するための有機化合物蒸気を吹き付ける必要がある。有機化合物蒸気は、化合物蒸気吹きつけ装置6から供給される。化合物蒸気吹きつけ装置6は、ピレン、ナフタレン、フェナントレンなどの有機化合物を加熱し、昇華した有機化合物蒸気をFIB照射位置に吹きつける働きをしている。なお有機化合物蒸気吹きつけは、白欠陥修正時以外は吹きつけを停止する。
【0004】
ところで欠陥の修正位置は正確であらねばならない。しかし集束イオンビーム2は様々な原因により、照射位置が経時的に変化(ドリフト)する危険がある。そこで通常欠陥の修正は、修正位置のドリフトを補正しながら行われる。特許文献1には、ドリフト補正の方法についても開示されている。以下にドリフト補正について、図を用いて説明する。図4は、ドリフト補正に関して説明するためのマスクパターン平面図である。図4において、7はマスク基板、8はパターン膜、9は参照パターン、10は白欠陥、11は修正領域、12は基準点である。先ずマスク基板7上のパターン膜8の一部に、FIBを用いたエッチングにより、参照パターン9としてのピンホールを形成する。次に参照パターン9を含む領域にFIBを走査しながら照射し、画像処理装置5により参照パターン9の位置を記憶する。このとき、白欠陥10を含む修正領域11を設定し、修正領域11の領域および基準点12も画像処理装置5に記憶する。次に参照パターン9の位置と修正領域11の基準点12の相対的な位置関係を算出する。そして有機化合物蒸気を吹きつけながら、再び参照パターン9の位置を確認した後、参照パターン9の算出した相対位置にある修正領域11にFIBを所定回数照射する。その後、参照パターン9への走査照射した位置確認と、相対位置にある修正領域11へのFIBを所定回数照射とを交互に行なう。この間、参照パターン9の位置ズレを算出し、修正領域11の位置を参照パターン9の位置ズレ分、照射位置の補正を行う。
【特許文献1】特公平5−4660号公報 (第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では白欠陥修正のFIB-CVD膜はパターン膜の上にも形成されていた。この様子を図5を用いて説明する。図5の(a)および(b)は、白欠陥部分の断面図である。白欠陥の領域10bには、マスク基板であるガラスがむき出した領域ばかりでなく、正常な厚さでないパターン膜の領域8bが存在する事がしばしばある。なお正常な厚さでないパターン膜の領域8bは、正常な厚さのパターン膜の領域8aとの境界も必ずしも明瞭ではではない。そこで白欠陥修正部の光透過率を充分に下げるために、白欠陥10を修正した後のFIB-CVD膜13の領域は、マスク基板であるガラスがむき出した領域ばかりでなく、パターン膜9上にもまたがっていた。
【0006】
さらにFIB-CVD膜の形成領域を示した図6のように、FIB-CVD膜形成領域14は、画像処理装置5(図示せず)が指定したFIB-CVD膜形成のためのFIB照射設定領域15よりもFIBのビーム半径に依存した寸法だけ範囲が広がる。この広がった範囲は、従来の技術ではFIB-CVD膜14がパターン膜8にまたがる領域に形成されていた。このようにして、白欠陥10を修正した後のFIB-CVD膜13の領域は、マスク基板であるガラスがむき出した領域ばかりでなく、パターン膜8上にもまたがっていた。
【0007】
従来のマスクでは露光時に光を通すか通さないかの2種類であったため、パターン膜8にFIB-CVD膜13が重なった領域の存在は、大きな問題ではなかった。しかし近年、特にFPD製造で使われるマスクにはグレートーンマスクと呼ばれるものが登場してきた。グレートーンマスクには、光を通す(すなわちパターン膜が無い)部分と、パターン膜で光を1%程度以下にしか通さない部分の他に、光を30%から70%程度透過するグレートーンのパターン膜が存在する。グレートーンのパターン膜の白欠陥修正では、FIB-CVD膜13がパターン膜8上にまたがっていると、その部分の光透過率が下がってしまい、正常な白欠陥修正ではなくなるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、グレートーンのパターン膜の欠陥領域を確実に修正して所定の光透過率にしたことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグレートーンのパターン膜欠陥修正方法は、
光透過率が中間量であるパターン膜が形成されたマスクの欠陥を修正するために、集束イオンビームを発生するイオン光学系と、前記集束イオンビームを前記マスクに照射して生じる2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出器と、前記イオン光学系と前記2次荷電粒子検出器の情報を得て前記マスクのパターン情報を処理する画像処理装置と、前記画像処理装置の情報から得られた前記マスクの欠陥位置にFIB-CVD膜を形成して修正するために有機化合物蒸気を前記欠陥に吹きつける化合物蒸気吹きつけ装置を有するパターン膜修正装置を用いたグレートーンのパターン膜の欠陥修正方法において、
前記FIB-CVD膜を形成する前に、前記欠陥の一部でパターン膜が正常な厚さでないながら残っている部分に前記集束イオンビームを照射して除去して、前記欠陥領域をパターン膜が形成されていない状態にする前工程を設け、
前記前工程後の前記欠陥領域の境界から前記集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域をFIB-CVD膜形成のための集束イオンビーム照射領域とし、有機化合物蒸気吹付けと共に前記集束イオンビームを所定回数照射して、前記パターン膜と重ならない領域に所定の光透過率を持つFIB-CVD膜を形成したことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法である。
【0010】
さらにグレートーンのパターン膜欠陥修正方法において、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の加工位置を正確に合わせるために、
前記欠陥の近傍の前記パターン膜の一部に集束イオンビームを照射して前記パターンにイオンエッチを行なって点状の参照パターンを形成し、前記画像処理装置に前記参照パターンと前記欠陥の位置を記憶し、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の途中に同一の前記参照パターンの位置確認を行なって前記欠陥に照射する前記集束イオンビームの照射位置のドリフト補正を行ったことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法である。
【0011】
さらにグレートーンのパターン膜欠陥修正方法において、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の加工位置を正確に合わせるために、
FIB-CVD膜を形成する工程で使用する前記前工程後の前記欠陥領域の境界の全部または一部を、パターン膜が正常でないながら残っている部分に前記集束イオンビームを照射する領域の境界の全部または一部で代用して、囲まれた領域から前記集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域をFIB-CVD膜を形成するための前記集束イオンビーム照射領域にしたことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、前工程によりパターン膜が正常な厚さでないながら残っている部分を除去すると共に欠陥領域の境界を明瞭にし、かつFIBのビーム径を考慮してFIB-CVD膜の位置を設定することにより、パターン膜とFIB-CVD膜が重ならないようにして、欠陥修正部分を確実に所定の光透過率にした。
また前工程とFIB-CVD膜を形成する工程の途中に同一の参照パターンの位置確認を行なって欠陥に照射する集束イオンビームの照射位置のドリフト補正を行ったことにより、欠陥修正の位置合わせをより確実にして、欠陥修正部分を確実に所定の光透過率にした。
さらにFIB-CVD膜を形成する前工程後の欠陥領域の境界の全部または一部を、前工程で使用した除去するパターン膜に集束イオンビーム照射をする領域の境界の全部または一部で代用したことにより、FIB-CVD膜を形成する領域を指定する際の位置指定誤差を最小にし、欠陥修正部分を確実に所定の光透過率にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用するFIBを用いたマスク修正装置は、イオン光学系1、2次荷電粒子検出器4、画像処理装置5、化合物蒸気吹きつけ装置6を有しており、背景技術で説明した図3の構成に準じている。なお画像処理装置5は本発明のグレートーンのパターン膜欠陥修正方法を行なうために、新規の動作が付加される。
【0014】
次に本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法の実施形態を、図1を使用して説明する。図1の(a)は白欠陥の詳細断面図である。図1の(a)において、7はマスク基板、8はパターン膜、8aは正常な厚さのパターン膜、8bは正常な厚さでないパターン膜の領域、8cは白欠陥の境界、8dはマスク基板がむき出した領域、8eはマスク基板がむき出した領域の境界である。マスク基板7の材質は、石英ガラスや低膨張ガラスなどのガラスである。パターン膜7は、材質は例えばクロムやモリブデンシリサイドなどの金属含有膜で、光透過率は水銀のi線(波長365nm)やg線(波長436nm)に対して30%から70%の間程度の中間量となるように形成されている。白欠陥の領域には、正常な厚さでないパターン膜の領域8bとマスク基板がむき出した領域8dが含まれる。ただし白欠陥によっては、白欠陥の境界8cやマスク基板がむき出した領域の境界8eは角がなだらかに傾斜していて明瞭でない場合も有るし、マスク基板がむき出した領域8dが存在せずに正常な厚さでないパターン膜の領域8bのみである場合もある。
【0015】
本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法では、先ず前工程として正常な厚さでないパターン膜の領域8bを画像処理装置5(図示せず)で指定し、集束イオンビーム2(図示せず)を走査照射して除去(すなわちパターン膜が形成されていない状態に)する。パターン膜の除去は、FIBを照射したときに起こるスパッタリング現象を利用してエッチングを行なう。本発明の前工程の目的は、第一に正常でない厚さのパターン膜部分をなくすことであり、第二に欠陥領域の境界を明瞭にすることである。従ってFIBを照射する領域は、白欠陥の境界8cが明瞭でない場合には正常なパターン膜8にかぶって設定しても良い。またFIBの径には0.05μmから1μm程度の広がりがあるので、FIBを照射する領域を白欠陥の境界8cより少し内側に設定しても、白欠陥の境界8cが明瞭である場合には、正常でない厚さのパターン膜の領域8bをなくすことが可能である。さらにマスク基板がむき出した領域の境界8eが明瞭でない場合など、FIBを照射する領域をマスク基板がむき出した領域8dにかぶって設定しても良い。さらに本発明の前工程の目的が正常でない厚さのパターン膜部分をなくすことであるため、エッチングはマスク基板を掘り込む深さに達していても問題ない。
なおパターン膜の除去は、エッチングの速度やエッチング後の光透過率を確保する目的でアシストガスを使用することもある。この場合、ヨウ素や水含有ヨウ素などのアシストガスをFIB-CVD膜形成用とは別に設置した化合物蒸気吹きつけ装置からFIB照射位置に向けて吹きつけながら、集束イオンビーム2(図示せず)を走査照射してエッチングを行なう。
【0016】
図1の(b)は本発明の前行程を行なった後の白欠陥の断面図である。図1の(b)において、10cは前工程後の白欠陥領域、10dは前工程後の白欠陥領域の境界である。前工程のエッチングにより、前工程後の白欠陥領域10cにはパターン膜が除去されている。そして前工程後の白欠陥領域の境界10dは明瞭になる。
【0017】
図1の(c)は本発明によるFIB-CVD膜を形成する工程を示した図である。図1の(c)において、6は化合物蒸気吹きつけ装置、10cは前工程後の白欠陥領域、10dは前工程後の白欠陥領域の境界、10eはFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域、16は有機化合物蒸気、17はFIB-CVD膜である。FIB-CVD膜を形成するときには、有機化合物蒸気吹きつけ装置6から有機化合物蒸気16を吹きつけながら集束イオンビーム2(図示せず)を画像処理装置5(図示せず)に制御されて走査照射する。FIB-CVD膜が形成される領域は、画像処理装置5が指定したFIB照射設定領域よりもFIBの半径に依存した寸法だけ、範囲が広がる。そこでFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eは画像処理装置5で、前工程後の白欠陥領域の境界10dからFIBの半径に依存した寸法だけ内側の領域に設定して、前工程後の白欠陥領域10cにFIB-CVD膜17を形成する。FIB-CVD膜17の膜厚は、FIBの電流や走査速度および有機化合物蒸気16の供給速度を考慮に入れて、FIBを走査する回数を指定することにより制御できる。
【0018】
このようにして図1の(d)のように、FIB-CVD膜17は、パターン膜8と重なることなく、形成することができる。FIB-CVD膜17は有機化合物蒸気16がピレンの場合、厚さが15nmから70nmのときにi線透過率が70%から30%程度になる。またFIB-CVD膜の厚さが18nmから85nmのときにg線透過率が70%から30%程度になる。
【0019】
パターン膜とFIB-CVD膜の重なりは、光を通さない膜の修正では許されていたが、グレートーンのパターン膜修正では許されない。また当然、パターン膜とFIB-CVD膜との隙間も生じてはならない。従って欠陥修正の位置合わせは以前にも増して重要となる。そこで次に、本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法で、欠陥修正の位置合わせを行う実施形態を、図2を用いて説明する。図2は本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法を説明する平面図である。図2の(a)、(c)、(e)は白欠陥がパターン膜に囲まれたピンホール欠陥の場合で、図2の(b)、(d)、(f)は白欠陥がパターン膜に囲まれていない凹欠陥の場合である。図2において、7はマスク基板、8はパターン膜、9は参照パターン、10は白欠陥、12は基準点、18の斜線で示した領域が前工程で行なうFIBの照射領域である。先ずマスク基板7上のパターン膜8の一部に、集束イオンビーム(図示せず)を用いたエッチングにより、参照パターン9としての微小なピンホールを形成する。次に参照パターン9を含む領域にFIBを走査しながら照射し、画像処理装置5(図示せず)に参照パターン9の位置を記憶する。このとき白欠陥10の正常な厚さでないパターン膜の領域を含む前工程で行なうFIBの照射領域18を設定し、前工程で行なうFIBの照射領域18および基準点12も画像処理装置5に記憶する。次に参照パターン9の位置と前工程で行なうFIBの照射領域18の基準点12の相対的な位置関係を算出する。そして再度参照パターン9の位置を確認した後、参照パターン9の算出した相対位置にある前工程で行なうFIBの照射領域18にFIBを所定回数照射する。その後、参照パターン9にFIBを走査照射した位置確認と、相対位置にある前工程で行なうFIBの照射領域18にFIBの所定回数照射とを交互に行なう。この間、参照パターン9の位置ズレを算出し、前工程で行なうFIBの照射領域18の位置を参照パターン9の位置ズレ分、FIB照射位置の補正を行ってドリフト補正とする。
【0020】
なお図2の(a)および(b)において、18aは前工程で行なうFIB照射領域の外側の境界、18bは前工程で行なうFIB照射領域の内側の境界、19はパターン膜ラインの延長線である。前工程で行なうFIB照射領域の外側の境界18aはパターン膜8との境界、前工程で行なうFIB照射領域の内側の境界18bは白欠陥内のマスク基板がむき出した部分との境界、と表現できる。なお前工程で行なうFIB照射領域の内側の境界18bは存在せず、前工程で行なうFIB照射領域18の境界の全てが前工程で行なうFIB照射領域の外側の境界18aの場合もある。パターン膜ラインの延長線19は、パターン膜8と白欠陥10の像を得たときに、画像処理装置でパターン膜8のラインを延長して設定する事ができる。
図2の(a)では内側の境界18bが存在しているが、内側の境界18bが存在しないときもある。例えば欠陥の全面に薄くパターン膜が残っている場合や内側の境界が不明瞭な場合などである。この場合、前工程で行なうFIB照射領域18の境界は外側の境界のみである。
【0021】
図2の(c)および(d)は、前記前工程後の白欠陥およびFIB-CVD膜を形成するためのFIB照射領域を示す図である。図2の(c)ではピンホール欠陥であるため、FIB-CVD膜を形成する白欠陥の領域は、前工程後の白欠陥領域の境界10dに囲まれた領域となる。また図2の(d)では凹欠陥であるため、FIB-CVD膜を形成する白欠陥の領域は、前工程後の白欠陥領域の境界10dとパターン膜ラインの延長線19に囲まれた領域となる。そしてFIB-CVD膜を形成するためのFIB照射領域10eは、FIB-CVD膜を形成する領域から集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域に設定する。
【0022】
ところでFIB-CVD膜を形成する領域は、前工程の後に像を取って、その像に基づいて設定することができる。しかし像に基づいて領域を設定する方法は、像の取得や画像処理を行なって境界などを算出する過程で誤差が生じる。本発明では前工程後の領域の境界を、前工程で行うFIB領域外側の領域の境界18aで代用し、パターン膜ラインの延長線19は前工程でFIB照射領域18を設定するときに使用した像から算出して、誤差の原因となる前工程後の像の取得や画像処理を省いた。代用して囲まれた領域は、前工程後の白欠陥領域の境界10dとは異なる。両者の境界位置の違い量は、前工程でエッチングしたときの集束イオンビームの径に依存した量である。従ってFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eは、前工程で行なうFIB照射領域18と集束イオンビームの径とパターン膜ラインの延長線19を使って導き出すことができる。なお前工程で行うFIB領域外側の領域の境界18aからFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eまでの距離と、パターン膜ラインの延長線19からFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eまでの距離は、個別に設定する。このようにしてFIB-CVD膜を形成する領域を指定する際の位置指定誤差を最小にできる。
【0023】
次にFIB-CVD膜の形成について説明する。FIB-CVD膜はドリフト補正を行いながら形成する。そのために有機化合物蒸気の吹きつけ開始後、参照パターン9の位置を確認する。そして参照パターン9の相対位置にあるFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eにFIBを所定回数照射する。その後、参照パターン9にFIBを走査照射した位置確認と、相対位置にあるFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eへのFIBの所定回数照射とを交互に行なう。この間、参照パターン9の位置ズレを算出し、FIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eの位置を参照パターン9の位置ズレ分、照射位置の補正を行ってドリフト補正とする。
【0024】
ここで参照パターン9は図2の(a)または(b)を用いて説明した、前工程でのドリフト補正で使用した参照パターン9と同一のものとする。なぜならば図2の(a)または(b)の像に基づいて参照パターン9と前工程で行なうFIBの照射領域18の位置関係は既に確定しており、従って参照パターン9とFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eも画像処理装置での再計算で確定できるからである。もし新たに参照パターンのピンホールを加工するなど、前工程でのドリフト補正で使用した参照パターン9と同一でないと、像の取得や画像処理を行なってFIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域10eとの相対位置を算出する過程で誤差が生じてしまう。
【0025】
上記の結果、図2の(e)および(f)のように白欠陥はFIB-CVD膜17でパターン膜8との重なることなく埋められ、一定の光透過率となる。ここで参照パターン9は微小なピンホールであるため露光時に問題となるような欠陥とはならないので、この時点で白欠陥終了として良い。もちろん参照パターン部分に薄いFIB-CVD膜を形成して、その部分をより所定の光透過率に近づけても良い。また図2を用いて説明した白欠陥修正の実施形態は、ピンホール欠陥と凹欠陥に対するものであった。白欠陥にはその他にパターン膜が断線した欠陥や孤立したパターン膜が消失した欠陥がある。これらについても本特許の実施形態を応用してパターン膜とFIB-CVD膜が重ならない、確実に所定の光透過率にしたグレートーンのパターン膜修正が可能である。
【0026】
これまではグレートーンのパターン膜の白欠陥修正について述べてきたが、本発明は一部の黒欠陥修正に対しても応用できる。図7はグレートーンのパターン膜黒欠陥の断面図である。図7において20は黒欠陥で、光透過率が中間量のパターン膜8上に付着物が乗っている。黒欠陥8は、マスクの光を通さない領域(図示せず)の材質が光透過率中間量のパターン膜8上に乗ったものであったり、或いはレーザー欠陥修正装置で黒欠陥を除去したときに発生する飛び散り物が再付着したものであったりする。この黒欠陥20の領域に前工程でFIBを走査照射する。そして図1の(b)を用いて説明したように、正常でない厚さのパターン膜部分を除去すると共に、FIB-CVD膜を形成する領域の境界を明瞭にする。その後は図1の(c)および(d)を用いて説明した工程を経て、黒欠陥修正部分を確実に所定の光透過率にする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法を説明する断面図
【図2】本発明によるグレートーンのパターン膜欠陥修正方法を説明する平面図
【図3】FIBを用いたマスク修正装置の構成図
【図4】ドリフト補正に関して説明するためのマスクパターン平面図
【図5】白欠陥部分の断面図
【図6】FIB-CVD膜の形成領域を示した図
【図7】グレートーンのパターン膜黒欠陥の断面図
【符号の説明】
【0028】
1 イオン光学系
2 集束イオンビーム(FIB)
3 マスク
4 2次荷電粒子検出器
5 画像処理装置
6 化合物蒸気吹きつけ装置
7 マスク基板
8 パターン膜
8a 正常な厚さのパターン膜の領域
8b 正常な厚さでないパターン膜の領域
8c 白欠陥の境界
8d マスク基板がむき出した領域
8e マスク基板がむき出した領域の境界
9 参照パターン
10 白欠陥
10b 白欠陥の領域
10c 前工程後の白欠陥領域
10d 前工程後の白欠陥領域の境界
10e FIB-CVD膜形成のためのFIB照射領域
11 修正領域
12 基準点
13 FIB-CVD膜
14 FIB-CVD膜形成領域
15 FIB-CVD膜形成のためのFIB照射設定領域
16 有機化合物蒸気
17 FIB-CVD膜
18 前工程で行なうFIB照射領域
18a 前工程で行なうFIB照射領域の外側の境界
18b 前工程で行なうFIB照射領域の内側の境界
19 パターン膜ラインの延長線
20 黒欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過率が中間量であるパターン膜が形成されたグレートーンのマスクの欠陥を修正するために、集束イオンビームを発生するイオン光学系と、前記集束イオンビームを前記マスクに照射して生じる2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出器と、前記イオン光学系と前記2次荷電粒子検出器の情報を得て前記マスクのパターン情報を処理する画像処理装置と、前記画像処理装置の情報から得られた前記マスクの欠陥位置にFIB-CVD膜を形成して修正するために有機化合物蒸気を前記欠陥に吹きつける化合物蒸気吹きつけ装置を有するパターン膜修正装置を用いたグレートーンのパターン膜の欠陥修正方法において、
前記FIB-CVD膜を形成する前に、前記欠陥の一部でパターン膜が正常な厚さでないながら残っている部分に前記集束イオンビームを照射して除去して、前記欠陥領域をパターン膜が形成されていない状態にする前工程を設け、
前記前工程後の前記欠陥領域の境界から前記集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域をFIB-CVD膜形成のための集束イオンビーム照射領域とし、有機化合物蒸気吹付けと共に前記集束イオンビームを所定回数照射して、前記パターン膜と重ならない領域に所定の光透過率を持つFIB-CVD膜を形成したことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたグレートーンのパターン膜欠陥修正方法において、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の加工位置を正確に合わせるために、
前記欠陥の近傍の前記パターン膜の一部に集束イオンビームを照射して前記パターンにイオンエッチを行なって点状の参照パターンを形成し、前記画像処理装置に前記参照パターンと前記欠陥の位置を記憶し、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の途中に同一の前記参照パターンの位置確認を行なって前記欠陥に照射する前記集束イオンビームの照射位置のドリフト補正を行ったことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたグレートーンのパターン膜欠陥修正方法において、前記前工程と前記FIB-CVD膜を形成する工程の加工位置を正確に合わせるために、
FIB-CVD膜を形成する工程で使用する前記前工程後の前記欠陥領域の境界の全部または一部を、前記前工程でパターン膜が正常な厚さでないながら残っている部分に前記集束イオンビームを照射する領域の境界の全部または一部で代用して、囲まれた領域から前記集束イオンビームの半径に依存した寸法だけ内側の領域をFIB-CVD膜を形成するための前記集束イオンビーム照射領域にしたことを特徴とするグレートーンのパターン膜欠陥修正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−350219(P2006−350219A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179386(P2005−179386)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】