説明

グローブ成形装置

【課題】張り出し部の転写不良を防止できる真空成形によるグローブ成形装置を提供する。
【解決手段】筒状の真空ボックス1と、この真空ボックス1内で密閉を保ちつつ軸方向に可動とした上型2と、前記真空ボックスの下面開口縁付近において前記上型の下面周縁部と対向配置された割型3、3とを備えるとともに、前記上型の周縁部付近において前記割型の上面と対向するように下面に開口した真空引き用の吸引孔4を設けたグローブ成型装置において吸引孔4の上部(4a)に対して下部(4b)を相対的に広幅の大空間容積とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱軟化させた合成樹脂板を真空成形を用いてグローブとして成形する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具用のグローブ、殊に外周に張り出し部のあるグローブは圧空成形法を用いて成形されていたが、特許文献1による真空成形法を用いると、外周に張り出し部のあるグローブでも真空成形法で成形可能であることが開示されている。そうすると、金型に加わる圧力が最大でも大気圧に相当する1気圧となって金型の軽量化がもたらされて、金型の取り扱いが容易になるのはもちろん、成形装置全体の低コスト化にも寄与すると考えられる。
【0003】
この特許文献1のグローブ成形装置の開示内容を簡略化して図示すると図6及び図7のようになり、筒状の真空ボックス1と、この真空ボックス1内で密閉を保ちつつ軸方向に可動とした上型2と、前記真空ボックス1の下面開口縁付近において前記上型2の下面周縁部と対向配置された割型3とを備えるとともに、前記上型2の周縁部付近において前記割型3の上面と対向するように下面に開口した真空引き用の吸引孔4を設けている。そして、図6のように前記上型2と割型3を離間した状態で、前記割型3の下面側に例えばダイ5でクランプした熱軟化された合成樹脂板6を前記吸引孔4を介した真空引き(矢印方向)により前記上型2側に予張させ、次に、図7のように前記上型2を前記割型3に接近させることにより、前記吸引孔4の下面開口が前記上型2と割型3の間に生じる微小な隙間7を介して前記上型2と割型3の内部に連通され、さらに真空引きすることにより前記上型2と割型3の間に渡って外周に張り出し部8のあるグローブ9として成形されるようになる。
【特許文献1】特開2004−136445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図7に示すように張り出し部8の最外周付近が内方に向かって窪んでしまう、いわゆる転写不良が発生しやすいという解決すべき課題があることに着目されるべきである。これを防止するために、図6から図7に至る際の上型2の下降速度を低速化して張り出し部8の外径をできるだけ大きくするようにしても転写不足が発生しやすく、極度に張り出し部8の外径を大きくすると今度は、張り出し部8の最外周付近が上型2と割型3の間に噛み込まれる、いわゆる噛み不良が発生してしまうものであった。このように何しろ真空ボックス1で囲まれた内部の現象のため、好適なポイントを探り出すのに非常に時間を要していた。この原因は当初不明であったが、上型2が図6の位置から図7の位置に下降する際に、図6で示される上型2の下面と割型3の上面の空間10に残存している空気の相当部分が、図7において上型2と割型3の隙間7から内方に向かって押し出されるため、転写不良になっていると推察されるようになってきた。従って、本発明はこのような解決すべき課題を鑑み、張り出し部の転写不良を防止できる真空成形によるグローブ成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を要約すると、筒状の真空ボックスと、この真空ボックス内で密閉を保ちつつ軸方向に可動とした上型と、前記真空ボックスの下面開口縁付近において前記上型の下面周縁部と対向配置された割型とを備えるとともに、前記上型の周縁部付近において前記割型の上面と対向するように下面に開口した真空引き用の吸引孔を設け、前記上型と割型を離間した状態で、前記割型の下面側にクランプした熱軟化された合成樹脂板を前記吸引孔を介した真空引きにより前記上型側に予張させ、前記上型を前記割型に接近させることにより、前記吸引孔の下面開口が前記上型と割型の間に生じる微小な隙間を介して前記上型と割型の内部に連通され、さらに真空引きすることにより前記上型と割型の間に渡って外周に張り出し部のあるグローブとして成形するグローブ成形装置であって、前記吸引孔の上部に対して下部を相対的に広幅の大空間容積としたグローブ成形装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸引孔の上部に対して下部を相対的に広幅の大空間容積としたことにより、上型が下降する際に、上型の下面と割型の上面の空間に残存している空気の大部分を吸引孔下部の広幅大空間容積部側に吸い出すことが可能となり、転写不良を実質的に解消できるようになり、好適なグローブ成形のポイントを探り出すのが容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を説明するが、それはあくまで本発明に基づいて採択された例示的な実施形態であり、本発明をその実施形態に特有な事項に基づいて限定解釈してはならず、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の請求項に示した事項さらにはその事項と実質的に等価である事項に基づいて定めなければならない。
【0008】
図1〜5に示す実施形態によるグローブ成形装置は、筒状の真空ボックス1と、この真空ボックス1内で密閉を保ちつつ軸方向に可動とした上型2と、前記真空ボックス1の下面開口縁付近において前記上型2の下面周縁部と対向配置された割型3、3とを備えるとともに、前記上型2の周縁部付近において前記割型3の上面と対向するように下面に開口した真空引き用の吸引孔4を設けている。
【0009】
そして、図4のように前記上型2と割型3を離間した状態で、前記割型3の下面側に例えばダイ5でクランプした熱軟化された合成樹脂板6を前記吸引孔4を介した真空引き(矢印方向)により前記上型2側に予張させ、図5のように前記上型2を前記割型3に接近させることにより、前記吸引孔4の下面開口が前記上型2と割型3の間に生じる微小な隙間7を介して前記上型2と割型3の内部に連通され、さらに真空引き(矢印方向)することにより前記上型2と割型3の間に渡って外周に張り出し部8のあるグローブ9として成形される。ここで特徴点として、前記吸引孔4の上部(4a)に対して下部(4b)を相対的に広幅の大空間容積としている。好ましくは、前記吸引孔4の下部(4b)は環状を成しているのが大空間容積を確保しやすい上、上型(金属製)2の切削加工にも好都合である。
【0010】
上記実施形態によれば、吸引孔4の上部(4a)に対して下部(4b)を相対的に広幅の大空間容積としたことにより、上型2が下降する際に、上型2の下面と割型3の上面の空間10に残存している空気の大部分を吸引孔4下部(4b)の広幅大空間容積部側に吸い出すことが可能となり、転写不良を実質的に解消できるようになり、好適なグローブ成形のポイントを探り出すのが容易になった。
【0011】
また、吸引孔4の下部(4b)の空間容積を、図4のように上型2と割型3を離間した合成樹脂板6の予張状態でその間に生じる空間(環状)10の容積より大きくすると、上型2が下降する際に、上型2の下面と割型3の上面の空間10に残存している空気の実質的全部を吸引孔4下部(4b)の広幅大空間容積部側に吸い出すことが可能となり、転写不良をより確実に解消できるようになり、好適なグローブ成形のポイントを探り出すのがさらに容易になる。
【0012】
さらに詳述すれば、上型2の上面には上型2と適宜手段で着脱可能に締結された真空引きユニット11を設けるのが好適であり、その中央には図外の真空装置に配管結合される筒体12が固定される。そして、筒体12からは複数の配管13…が放射状に分岐され、真空引きユニット11を上型2に締結すると配管13…の各端部が吸引孔4の各上部(4a)と連通位置決めされるようになっている。
【0013】
なお、上型2の外周には真空ボックス1の内周面と密閉性を高める弾性ゴムなどのOリングを嵌める凹溝を設けるのがもちろんよいが、図の複雑化を避けるため図示していない。また、真空ボックス1において、割型3との近接面にも密閉性を高める弾性ゴムなどのOリングを嵌める凹溝を設けるとよい。また、割型3は半環状のものを2個用いて全体として環状にするとよいが、3個以上用いて環状にしても差し支えない。さらにまた、グローブ9として成形後はダイ5を下降して、割型3、3を外向きに開いてからグローブ9を取り出すとよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図
【図2】同上型の下面図
【図3】図1の上面図
【図4】同予張工程を示す部分断面図
【図5】図4の後工程を示す部分断面図
【図6】従来例による予張工程を示す部分断面図
【図7】図6の後工程を示す部分断面図
【符号の説明】
【0015】
1 真空ボックス
2 上型
3 割型
4 吸引孔
4a 吸引孔4の上部
4b 吸引孔4の下部
6 合成樹脂板
7 隙間
8 張り出し部
9 グローブ
10 空間(環状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の真空ボックスと、この真空ボックス内で密閉を保ちつつ軸方向に可動とした上型と、前記真空ボックスの下面開口縁付近において前記上型の下面周縁部と対向配置された割型とを備えるとともに、前記上型の周縁部付近において前記割型の上面と対向するように下面に開口した真空引き用の吸引孔を設け、前記上型と割型を離間した状態で、前記割型の下面側にクランプした熱軟化された合成樹脂板を前記吸引孔を介した真空引きにより前記上型側に予張させ、前記上型を前記割型に接近させることにより、前記吸引孔の下面開口が前記上型と割型の間に生じる微小な隙間を介して前記上型と割型の内部に連通され、さらに真空引きすることにより前記上型と割型の間に渡って外周に張り出し部のあるグローブとして成形するグローブ成形装置であって、前記吸引孔の上部に対して下部を相対的に広幅の大空間容積としたグローブ成形装置。
【請求項2】
請求項1において、吸引孔の下部を環状としたグローブ成形装置。
【請求項3】
請求項1または2において、吸引孔の下部の空間容積を、上型と割型を離間した合成樹脂板の予張状態でその間に生じる空間容積より大きくしたグローブ成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−205388(P2006−205388A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17071(P2005−17071)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(392000567)朝日松下電工株式会社 (100)
【Fターム(参考)】