説明

ケイ酸スケール除去剤

【課題】 半導体のケミカル・メカニカル・ポリッシングに際して、装置やその周辺に付着する研磨液の固着物を、粉塵として再飛散させることなく、簡便に除去し、清浄化できるケイ酸スケール除去剤を提供すること。
【解決手段】 カテコール、ピロガロール、アミノカテコール、没食子酸、m−ガロイル没食子酸、タンニン、及び遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分を含んでなるフラボノイドよりなる群より選ばれるものであってよい、アルカリ性側で水に可溶なカテコール系化合物の少なくとも1種を溶解して含有するpH12以上の水性溶液であることを特徴とする、ケイ酸スケール除去剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)用洗浄剤に関するものであり、より詳細には半導体のウエハー研磨装置の研磨用スラリーの汚染物質の洗浄・除去に用いるケイ酸スケール除去剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは配線パターンの微細化に伴い、半導体ウエハーの平坦化が重要な技術的課題となっている。ウエハーの平坦化を行うには、一般にCMP装置と呼ばれる一種の精密研磨装置が使われている。CMP装置では、ウエハーを研磨する際、スラリー状の研磨液が使用されるが、この研磨液がCMP装置及びその周辺に飛散して、乾燥した後、固着するという問題がある。固着したスラリー固形分は装置外観を不良にするのみならず、微粉となって周辺雰囲気に飛散し、環境汚染の問題を引き起こすとともに精密機器内に侵入して機器の作動不良の原因となっている。
【0003】
現在、この問題に対してCMP装置及びその周辺に付着した研磨液固着物を人手によってへら等を使って掻きとっている。しかしながら、へらによる作業では固着物を完全に除去できないとともに、手数(労力、時間)がかかり、さらにかきとりの際、粉塵が再飛散して周辺の雰囲気を汚染し、また作業者の健康障害を引き起こすことも懸念される。
【0004】
研磨剤とノニオン系界面活性剤を用いてCMP装置の固着物を除去する方法、(特許文献1参照)があるが、人手をかけて研磨することに代わりはなく、またノニオン系界面活性剤そのものでは固着物の除去はできないため、効果は極めて小さかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−176825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景において、本発明の目的はCMPに際して、装置やその周辺に付着する研磨液の固着物を、粉塵として再飛散させることなく、簡便に除去し、清浄化できるケイ酸スケール除去剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、シリカ系スケールの化学洗浄について検討を重ねてきた結果、アルカリ性の水溶液中で、カテコールが、CMPにより精製した固着物であるケイ酸スケールに対して優れた除去作用を発揮することを見出した。そして更に検討の結果、カテコールやピロガロールのようにベンゼン環に相互に隣接した2個以上の水酸基を有する化合物(本発明において、それらを合わせて「カテコール系化合物」ともいう。)であってアルカリ性で水に可溶なものであれば、そのような構造部分を1個しか有しないカテコール、ピロガロール等から、それらの誘導体、例えば複数個のピロガロール単位を結合して含むガロタンニン(C1168871)を主成分とする五倍子タンニンに至るまで、分子のサイズに依存することなく、当該除去作用が同等に存することをも見出し、これに基づいて本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下を提供する。
(1)アルカリ性側で水に可溶なカテコール系化合物の少なくとも1種を溶解して含有するpH12以上の水性溶液であることを特徴とする、ケイ酸スケール除去剤。
(2)該カテコール系化合物が、カテコール、ピロガロール、アミノカテコール、没食子酸、m−ガロイル没食子酸、タンニン、及び遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分を含んでなるフラボノイドよりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、上記1のケイ酸スケール除去剤。
(3)該タンニンが、遊離の水酸基を有する複数のカテコール又はピロガロール部分を含んだものである、上記1ないし3の何れかのケイ酸スケール除去剤。
(4)該ケイ酸スケール除去剤中における該カテコール系化合物の濃度が、2〜30重量%である、上記1又は2のケイ酸スケール除去剤。
(5)アルカリ金属水酸化物を含有するものである上記1ないし4の何れかのケイ酸スケール除去剤。
(6)アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムよりなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記5のケイ酸スケール除去剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケイ酸スケール除去剤は、CMPスラリー由来の乾燥固着したケイ酸スケールを迅速に溶解、剥離する。このため、本発明のケイ酸スケール除去剤によれば、へら等物理的方法を用いることなく簡単にケイ酸スケールを洗浄、除去できる。従って、余分な人的労力を必要とせず作業環境を改善し且つ洗浄精度を向上させるだけでなく、更には、粉塵を再飛散させることがないから二次汚染の防止にも効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のケイ酸スケール除去剤は、使用時に水で適宜に希釈してよいから、これに含有されるカテコール系化合物の濃度について特に上限はない。使用に際しての本発明のケイ酸スケール除去剤中のカテコール系化合物の濃度は、好ましくは2〜30重量、より好ましくは3〜25重量である。2重量%未満の濃度ではケイ酸スケールを除去する速度が低下する傾向があり、30重量%を超える濃度としても効果がそれ以上増大しないからである。
【0011】
本発明のケイ酸スケール除去剤中は、カテコール系化合物として、カテコールやピロガロールのような、ベンゼン環上に相互に隣接した2個以上の水酸基が、アルカリ性条件下に、ケイ酸スケールを金属表面等から水に溶解して除去できることに基づいている。従って、そのような水酸基を有し且つアルカリ側で水に可溶性の化合物であれば、本発明において好適に使用することができる。カテコール系化合物の例としては、カテコール(式1)、ピロガロール(式2)、アミノカテコール(式3)、没食子酸(式4)、m−ガロイル没食子酸(式8)、五倍子タンニン(ガロタンニン)(式10)に代表されるタンニン(タンニン酸とも呼ばれる)や、カテキン(式5)、ルチン(式6)、ガロカテキン(式7)等のような、遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分を含んでなるフラボノイドが挙げられる。
【0012】
上記において、「タンニン」は、カテコール又はピロガロール単位の水酸基を遊離の形で含んでおり、本発明の目的に好適に使用することができる。また殆どのものは遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分の複数個を構造中に含んでおり、それらは本発明の目的にとって特に好適に使用することができる。そのような遊離の水酸基を有する複数個のカテコール又はピロガロール単位を含むタンニンの例としては、次のものが挙げられる。すなわち:エラグ酸(式9)、五倍子タンニン(ガロタンニン)(式10)、アグリモニイン(agrimoniin)、アルヌシイン(alnusiin)、カズアリクチン(casuarictin)、カズアリニン(casuarinin)、チェブラギン酸(chebulagic acid)、チェブリニン酸(chebulinic acid)、コリアリインA(coriariin A)、コリラギン(corilagin)、3,5−ジ−O−ガロイル−4−O−ジガロイルキニン酸(3,5-di-O-galloyl-4-O-digalloylquinic acid)、エピカテキン−(4β→8)−エント−エピカテキン(epicatechin-(4β→8)-ent-epicatechin)、〔エピカテキン−(4β→8)〕5−エピカテキン([epicatechin-(4β→8)]5-epicatechin)、エピガロカテキン−(4β→8)−エピカテキン−3−O−ガレートエステル(epigallocatechin-(4β→8)-epicatechin-3-O-gallate ester)、オイゲニイン(eugeniin)、エント−フィセチニドール−(4β→8)−カテキン−(6→4β)−エント−フィセチニドール(ent-fisetinidol-(4β→8)-catechin-(6→4β)-ent-fisetinidol)、ガロカテキン−(4α→8)−エピガロカテキン(gallocatechin-(4α→8)-epigallocatechin)、ゲミンA(gemin A)、ゲラニイン(geraniin)、イソテルチェビン(isoterchebin)、カンデリンA−1(kandelin A-1)、ルテオリフラバン−(4β→8)−エリオジクチオール 5−グルコシド(luteoliflavan-(4β→8)-eriodictyol 5-glucoside)、マフアンニンD(Mahuannin D)、マロツシニン酸(mallotusinic acid)、ペダンクラギン(pedunculagin)、ペンタガロイル−β−D−グルコース(pentagalloyl-β-D-glucose)、プロアントシアニジンA2(proanthocyanidin A2)、プロシアニジンB4(procyanidin B4)、ロビネチニドール−(4α→8)−カテキン−(6→4α)−ロビネチニドール(robinetinidol-(4α→8)-catechin-(6→4α)-robinetinidol)、ルゴシンD(rugosin D)、テリマグランジンI(tellimagrandin I)、1,2,3,4−テトラガロイル−α−D−グルコース(1,2,3,4-tetragalloyl-α-D-glucose)。
【0013】
【化1】


【0014】
【化2】


【0015】
【化3】


【0016】
【化4】


【0017】
また上記において、遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分含んでなるフラボノイドの例としては、次のものが挙げられる。すなわち:
アウレウシジン(aureusidin)、ブラクテアチン(bracteatin)、ブテイン(butein)、シアニジン(cyanidin)、シアニジン 3−O−ガラクトシド(cyanidin 3-O-galactoside)、シアニジン 3−O−グルコシド(cyanidin 3-O-glucoside)、シアニジン 3−O−ルチノシド(cyanidin-3-O-rutinoside)、シアニン(cyanin)、デルフィニジン(delphinidin)、ガロカテキン(gallocatechin)、ゲンチオデルフィン(gentiodelphin)、6−ヒドロキシシアニジン(6-hydroxycyanidin)、ルテオリニジン(luteolinidin)、マロニラオバニン(malonylawobanin)、マリチメチン(maritimetin)、オカニン(okanin)、ペツニジン(petunidin)、スルフレチン(sulphuretin)、アンペロプシン(ampelopsin)、ブチン(butin)、カテキン(catechin)、カテキン 7−O−β−D−キシロシド(catechin 7-O-β-D-xyloside)、エピカテキン(epicatechin)、エピガロカテキン 3−ガレート(epigallocatechin 3-gallate)、エリオシトリン(eriocitrin)、エリオジクチオール(eriodictyol)、フィゼチニドール(fisetinidol)、フィゼチニドール−4β−オール(fisetinidol-4β-ol)、フスチン(fustin)、マンニフラバノン(manniflavanone)、6−メトキシタキシフォリン(6-methoxytaxifolin)、ネオエリオシトリン(neoeriocitrin)、タキシフォリン(taxifolin)、タキシフォリン 3−O−アセテート(taxifolin 3-O-acetate)、テアシネンシンA(theasinensin A)、ケルセタゲチン 3,6−ジメチルエーテル(quercetagetin 3,6-dimethyl ether)、アザレアチン(azaleatin)、バイカレイン(baicalein)、バイカリン(baicalin)、カルリノシド(carlinoside)、シルシリオール(cirsiliol)、フィゼチン(fisetin)、フィゼチン 8−C−グルコシド(fisetin 8-C-glucoside)、ゴシッペチン(gossypetin)、ゴシッピン(gossypin)、ヘルバセチン(herbacetin)、ヒドロキシケンペロール(hydroxykaempferol)、ヒドロキシルテオリン(hydroxyluteolin)、ハイペリン(hyperin)、ハイポレチン(hypolaetin)、イソオリエンチン(isoorientin)、イソケルシトリン(isoquercitrin)、イソスクテラレイン(isoscutellarein)、ルセニン−2(lucenin-2)、ルテオリン(luteolin)、ルテオリン(luteolin 7-O-glucoside)、ミリセチン(myricetin)、ミリシトリン(myricitrin)、ネオカルリノシド(neocarlinoside)、ノルオゴニン(norwogonin)、オリエンチン(orientin)、パツレチン(patuletin)、ペダリチン(pedalitin)、ケルセタゲチン(quercetagetin)、ケルセチン(quercetin)、ケルセチン 3−メチルエーテル(quercetin 3-methyl ether)、ケルシメリトリン(quercimeritrin)、ケルシトリン(quercitrin)、ラムネチン(rhamnetin)、ロビネチン(robinetin)、ルチン(rutin)、スクテラレイン(scutellarein)、チモニン(thymonin)、トリセチン(tricetin)、オロボール(orobol)、テキサシン(texasin)、ウェデロラクトン(wedelolactone)。
【0018】
本発明において、カテコール系化合物がpH12以上のアルカリ性で優れた除去効果を与えることが確認されており、本発明のケイ酸スケール除去剤は、これ以上のpHであればよい。
【0019】
本発明のケイ酸スケール除去剤をpH12以上のアルカリ性とするためには、水に溶けてpHを12以上とすることのできる適宜のアルカリ性化合物を含有させればよい。そのようなアルカリ性化合物として好ましいのは、アルカリ金属水酸化物であり、そのうち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが更に好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0020】
本発明のケイ酸スケール除去温度は、CMPスラリー固着物の状態に応じて適宜設定されるものであり特に限定されないが、通常0℃〜100℃で使用される。温度が0℃未満では液が固化し流動性が無くなりケイ酸スケールの溶解速度が遅くなる場合があり、100℃を超えると危険であるためオートクレーブ等の装置を必要とする場合がある。
【0021】
本発明のケイ酸スケール除去時間は、CMPスラリー固着物の状態に応じて適宜設定されるものであり特に限定されないが、通常は1分から72時間の範囲である。固着物の洗浄が行われた後も、本発明の洗浄液に接触浸漬しておいても金属表面に影響を及ぼさないため、長期間洗浄してもよい。
【0022】
本発明のケイ酸スケール除去液は、研磨剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、洗浄の効率が良くなる場合がある。研磨剤としては、酸化セリウム、ダイヤモンド、チタニア、ジルコニア等の無機研磨剤、ポリエチレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂研磨剤がある。
【0023】
本発明のケイ酸スケール除去液は、界面活性剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、剥離された固着物、スラリー中に存在する有機物の除去に有効な場合がある。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤がある。アニオン界面活性剤としては具体的に、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のカルボン酸系の界面活性剤またはその塩、ドデカンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルフェノールポリエチレンオキサイドエチルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルスルホ酢酸エステル等のスルホン酸系界面活性剤またはその塩、アルキル硫酸エステル、アルキルポリオキシエチレン硫酸エステル、アルキルフェノールポリオキシエチレン硫酸エステル、硫酸化ひまし油等の硫酸エステル系界面活性剤、アルキル燐酸エステル、アルキルポリオキシエチレン燐酸エステル等の燐酸エステル系界面活性剤がある。ノニオン系界面活性剤としては、具体的には、アルキルポリエチレンオキサイドエーテル、ノニルフェノールポリエチレンオキサイドエーテル、アルキルポリプロピレンオキサイドポリエチレンオキサイドエーテル、プルロニック、テトロニック等のポリエチレンオキサイドエーテル系界面活性剤ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸シュガーエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、ソルビタンポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、ソルビトールポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、ひまし油ポリエチレンオキサイド等のポリエチレンオキサイドエステル系界面活性剤、アルカノールアミン脂肪酸アミド、アルカノールアミンポリエチレンオキサイド脂肪酸アミド等のアミド系界面活性剤がある。
【0024】
本発明のケイ酸スケール除去液は、キレート剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、被洗浄物上の金属不純物の洗浄の効率が良くなる場合がある。キレート剤としては具体的に、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン等のアミノ酸、シュウ酸、クエン酸等の短鎖脂肪酸の金属塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩等がある。
【0025】
本発明のケイ酸スケール除去液は、腐食防止剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、CMP装置に使用されている様々な金属が腐食、溶解することを防ぐことができる。銅用の腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、3−アミノトリアゾール等がある。鉄用の腐食防止剤としては、ドデカン二酸、p−tert−ブチル安息香酸、オレイン酸等のカルボン酸塩類、石油スルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸塩類等がある。
【0026】
本発明のケイ酸スケール除去液は、増粘剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、被洗浄物上の形状により除去剤が垂れ落ちない状態を維持でき、洗浄の効率が良くなる場合がある。増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。
【0027】
本発明のケイ酸スケール除去液は、湿潤促進剤を更に含んでなるものであってもよい。それにより、被洗浄物上の表面形状に沿ってケイ酸スケール除去剤が隈なく行き渡るのが促進され、洗浄の効率が良くなる場合がある。湿潤促進剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類がある。
【0028】
本発明のケイ酸スケール除去剤による洗浄の具体的実施方法は特に限定されず、本発明のケイ酸スケール除去剤を流しつつ行う洗浄、浸漬洗浄、揺動洗浄、スピナーのような回転を利用した洗浄パドル洗浄、気中または液中スプレー洗浄及び超音波洗浄、ブラシ洗浄等の公知の手段を、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を製剤実施例および比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明がそれらの製剤実施例に限定されることは意図しない。
【0030】
[CMP用スラリー]
CMP用スラリー(シリカスラリー)として次のものを用いた。
シリカ平均粒径:約0.2μm
シリカ含量:約30重量%
媒質:水
pH:11.1(25℃)
【0031】
[固着物除去効果の評価]
以下の試験において、製剤実施例及び比較例の製剤についてのテストピースからの固着物の除去効果は、次の基準により評価した。
○:固着物は完全に取れており、軽く水洗するだけで完全に除去できる。
△:固着物はほとんど取れているが、水洗では流されないわずかな白い固着物が確認できる。
×:固着物は殆んど取れておらず、水洗してもはっきりと白い固着物が残る。
〔実施例1〕
【0032】
[試験用固着物の調整]
20×50mmのステンレス製テストピースを、#60の研磨布で研磨した。研磨後のテストピースに、これをCMP用スラリーにディッピングすることによりシリカを付着させ、室温で2時間乾燥させた。更に、同様にしてシリカを付着させ室温で2時間乾燥させる工程を繰り返した。こうして5回にわたってシリカの付着操作を行い、最後に室温で50時間乾燥させて試験用固着物とした。表1(製剤実施例1〜19、比較例1〜4)に示したとおりに本発明の各製剤実施例のケイ酸スケール除去剤及び各比較例の製剤を調製し、試験用固着物を入れ室温で液を1時間撹拌した後の固着物の状態を比較した。表中、製剤実施例8におけるピロガロールと水酸化カリウムとのモル比は、ピロガロール1に対し水酸化カリウム2であるため、ピロガロールの3個の水酸基中2個の水素をカリウムで置換した塩を水に溶解させたものに等しい。また製剤実施例9におけるピロガロールと水酸化カリウムとのモル比は、ピロガロール1に対し水酸化カリウム3であるため、ピロガロールの3個の水酸基全ての水素をカリウムで置換した塩を水に溶解させたものに等しい。その他の製剤実施例は、何れも各カテコール系化合物の全ての酸性基(例えば、フェノール性水酸基及びカルボキシル基)のモル数以上の大過剰量のアルカリ金属水酸化物を用いていることから、それらの製剤実施例のpHは、少なくとも13.2より大である。
【0033】
【表1】


【0034】
表1に見られるとおり、各製剤実施例のケイ酸スケール除去剤には、いずれも高い洗浄効果が認められ、粉塵を生ずることなくケイ酸スケールを除去することに成功した。これに対し、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのみを含有する比較例の製剤には効果が見られなかったことから、各製剤実施例におけるケイ酸スケール除去効果は、含有されるカテコール系化合物によるものであることを示している。また、試験した製剤実施例中最も低いpH12.2を有することの明らかな製剤実施例8が、他の製剤実施例と全く同等のケイ酸スケール除去効果を示し、少なくともpH12以上であれば、除去効果が発揮できることを示している。
〔実施例2〕
【0035】
[試験用固着物の調整]
20×50mmのステンレス製テストピースを、#60の研磨布で研磨した。研磨後のテストピースに、これをCMP用スラリーにディッピングすることによりシリカを付着させ、室温で2時間乾燥させた。更に、同様にしてシリカを付着させ室温で2時間乾燥させる工程を繰り返した。こうして5回にわたってシリカの付着操作を行い、最後に室温で50時間乾燥させ、更に150℃で8時間乾燥させて試験用固着物とした。表2(製剤実施例20〜28、比較例5及び6)に示したとおりに本発明の各製剤実施例のケイ酸スケール除去剤及び各比較例の製剤を調製し、試験用固着物を入れ室温液を1時間撹拌した後の固着物の状態を比較した。
【0036】
【表2】


【0037】
表2に見られるとおり、各製剤実施例のケイ酸スケール除去剤には、実施例1より過酷な条件で固着させたケイ酸スケールに対しても、いずれも高い洗浄効果が認められ、粉塵を生ずることなくケイ酸スケールを除去することに成功した。これに対し、比較例の製剤には効果が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のケイ酸スケール除去剤は、余分な人的労力を必要とせずにCMP装置やその周辺の洗浄精度を向上させるだけでなく、作業環境を改善し、更に、粉塵等による二次汚染の防止のために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性側で水に可溶なカテコール系化合物の少なくとも1種を溶解して含有するpH12以上の水性溶液であることを特徴とする、ケイ酸スケール除去剤。
【請求項2】
該カテコール系化合物が、カテコール、ピロガロール、アミノカテコール、没食子酸、m−ガロイル没食子酸、タンニン、及び遊離の水酸基を有するカテコール又はピロガロール部分を含んでなるフラボノイドよりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1のケイ酸スケール除去剤。
【請求項3】
該タンニンが、遊離の水酸基を有する複数のカテコール又はピロガロール部分を含んだものである、請求項1又は2のケイ酸スケール除去剤。
【請求項4】
該ケイ酸スケール除去剤中における該カテコール系化合物の濃度が、2〜30重量%である、請求項1ないし3の何れかのケイ酸スケール除去剤。
【請求項5】
アルカリ金属水酸化物を含有するものである請求項1ないし4の何れかのケイ酸スケール除去剤。
【請求項6】
アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムよりなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5のケイ酸スケール除去剤。

【公開番号】特開2006−100482(P2006−100482A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283308(P2004−283308)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】