説明

ケラチン繊維処理剤及び染色処理方法

【課題】所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することのできるケラチン繊維処理剤及び染色処理方法を提供する。
【解決手段】ケラチン繊維処理剤は、(A)アルカリ剤、(B)有機溶剤及び(C)酸化染料を含有し、使用時に酸化剤組成物と混合されるとともに、直接染料により染色された毛髪11等のケラチン繊維に適用される。染色処理方法は、酸化染料処理と直接染料処理とを交互に実施することにより、ケラチン繊維の染色処理を繰り返す方法である。酸化染料処理に使用される第1のケラチン繊維処理剤は、(A)アルカリ剤、(B)有機溶剤及び(C)酸化染料を含有し、使用時に酸化剤組成物と混合される剤である。直接染料処理に使用される第2のケラチン繊維処理剤は、(a)直接染料及び(b)酸化染料還元剤を含有する剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を染色するためのケラチン繊維処理剤及びケラチン繊維の染色処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケラチン繊維の一種である毛髪を染色するための染毛料としては、酸性染毛料及び酸化染毛剤が知られている。酸性染毛料は直接染料を含有して構成され、半永久染毛料又はヘアマニキュアとも呼ばれている。こうした酸性染毛料は、毛髪の表面付近に直接染料が吸着することで毛髪を染色する。一方、酸化染毛剤は酸化染料を含有して構成され、永久染毛剤とも呼ばれている。こうした酸化染毛剤は、発色した酸化染料が毛髪内部に留まることによって毛髪を染色する。このように、直接染料と酸化染料とでは、染色のメカニズムが異なる。
【0003】
また、酸性染毛料にて染色された毛髪から直接染料を除去するための除去剤が知られており、こうした除去剤にはアルカリ剤等が含有されている(例えば特許文献1参照)。さらに、酸化染毛剤にて染色された毛髪を脱染する脱染剤が知られており、こうした脱染剤には、アスコルビン酸等が含有されている(特許文献2参照)。加えて、酸化染料等を含有する酸化染毛剤において、亜硫酸ナトリウム等を配合した構成が知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−335243号公報
【特許文献2】特表2000−504348号公報
【特許文献3】特開2004−149483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、直接染料により染色された毛髪が水と接触すると、毛髪から直接染料が流出することで、毛髪は徐々に退色することになる。このように退色した毛髪を酸化染料によって再度染色する場合、毛髪に残留している直接染料が、酸化染料の発色に基づく色調に影響を与えることがある。このため、そうした毛髪を酸化染料に基づく色調に染め上げるには、図2に示すように、まず毛髪11に残留している直接染料21を除去するために除去処理(ステップS210)を実施する。次いで、除去処理(ステップS210)の施された毛髪10に対して、酸化染毛剤を使用する酸化染料処理(ステップS220)を実施する。こうした処理により、毛髪12は発色した酸化染料22にて所望する色調に染色される。
【0005】
ところで、酸化染料による染毛では、毛髪の内部まで酸化染料が入り込むため、色持ちが良好であるものの、毛髪が酸化剤及びアルカリ剤の影響を受けるため、毛髪はダメージ(損傷)を受け易くなる。これに対して、直接染料による染毛では、毛髪のダメージは生じ難いものの、酸化染料による染毛よりも退色し易い。こうした実情に鑑みて、本発明者らは、毛髪を染色した状態に維持するに際して毛髪のダメージを抑制するという観点から、図2に示すように酸化染料処理(ステップS220)と直接染料処理(ステップS240)とを交互に実施する染色処理方法に着目した。ところが、こうした染色処理方法であっても、処理前の毛髪11,12において、直接染料21及び酸化染料22が残留していると、所望する色調に染め上げることは困難である。このため、酸化染料処理(ステップS220)に先だって直接染料21の除去処理(ステップS210)を実施するとともに、直接染料処理(ステップS240)に先だって酸化染料22の脱染処理(ステップS230)を実施することになる。
【0006】
以上のように、除去処理(ステップS210)、及び脱染処理(ステップS230)を実施することは、所望する色調に再度染色する処理操作が極めて煩雑になる。
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することのできるケラチン繊維処理剤及び染色処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明のケラチン繊維処理剤は、下記の各成分を含有し、使用時に酸化剤組成物と混合されるとともに、直接染料により染色されたケラチン繊維に適用されることを要旨とする。
【0008】
(A)アルカリ剤。
(B)有機溶剤。
(C)酸化染料。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケラチン繊維処理剤において、前記直接染料で染色されたケラチン繊維の色調を変更する色調変更に用いられることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のケラチン繊維処理剤において、さらに(D)直接染料除去剤として亜硫酸類を含有するとともに、前記(C)酸化染料に対する前記(D)直接染料除去剤の質量比(質量比=(D)直接染料除去剤の質量/(C)酸化染料の質量)が0.6〜10であることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の染色処理方法は、ケラチン繊維を染色する染色処理方法において、
下記の(A)〜(C)の各成分を含有するとともに使用時に酸化剤組成物と混合される第1のケラチン繊維処理剤を使用することにより、前記ケラチン繊維を酸化染料によって染色する酸化染料処理と、下記の(a)及び(b)の各成分を含有する第2のケラチン繊維処理剤を使用することにより、前記ケラチン繊維を直接染料によって染色する直接染料処理とを含み、前記酸化染料処理と前記直接染料処理とを交互に実施することにより、前記ケラチン繊維の染色処理を繰り返すことを要旨とする。
【0011】
<第1のケラチン繊維処理剤>
(A)アルカリ剤。
(B)有機溶剤。
【0012】
(C)酸化染料。
<第2のケラチン繊維処理剤>
(a)直接染料。
【0013】
(b)酸化染料還元剤として、チオグリコール酸類、システイン類、亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類、ヒドロキシメタンスルフィン酸類、及びアスコルビン酸類から選ばれる少なくとも一種。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の染色処理方法において、前記酸化染料処理にて染色する第1の色調と、前記直接染料処理にて染色する第2の色調とを異なる色調にすることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)には、直接染料21により染色された毛髪11と、発色した酸化染料22により染色された毛髪12とを模式的に示している。ケラチン繊維処理剤としての酸化染毛第1剤は、酸化剤組成物としての酸化染毛第2剤とともに酸化染毛剤を構成する。そして、この酸化染毛第1剤は、使用時に酸化染毛第2剤と混合されるとともに、直接染料21により染色された毛髪11に適用される。
【0017】
<染毛料>
毛髪11を直接染料21によって染色するための染毛料について説明する。染毛料に含有される直接染料は、反応性がなく、未反応の状態で発色している染料である。直接染料としては、例えば酸性染料、ニトロ染料、塩基性染料(カチオン染料)、及び分散染料が挙げられる。
【0018】
酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、黒色401号、アシッドブルー1、アシッドブルー3、アシッドブルー62、アシッドブラック52、アシッドブラウン13、アシッドグリーン50、アシッドオレンジ6、アシッドレッド14、アシッドレッド35、アシッドレッド73、アシッドレッド184、ブリリアントブラック1等が挙げられる。
【0019】
ニトロ染料としては、例えば4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.4、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.8、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.14、HC Brown No.1、HC Brown No.2、HC Green No.1、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Orange No.5、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.8、HC Red No.9、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.7、HC Yellow No.8、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0020】
塩基性染料としては、例えば赤色213号、赤色214号、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Brown 1、Basic Brown 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、BASIC Yellow 11、BASIC Yellow 28、BASIC Yellow 57等が挙げられる。
【0021】
分散染料としては、例えばDisperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0022】
さらに直接染料としては、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、及びそれらの塩、並びに「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた直接染料が挙げられる。直接染料は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0023】
この直接染料の中でも、本実施形態の酸化染毛剤によって脱染され易いという観点から、酸性染料が好ましく、赤色102号、赤色106号、赤色227号、黄色4号、黄色203号、黄色403号の(1)、橙色205号、紫色401号、青色1号、及び黒色401号から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0024】
染毛料中における直接染料の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%である。直接染料の含有量が0.001質量%未満の場合には、染毛効果が十分に得られ難くなるおそれがある。一方、直接染料の含有量が5質量%を超える場合には、染毛料中における溶解性が十分に得られないおそれがある。
【0025】
染毛料には、有機溶剤、水、pH調整剤、粘度調整剤等が適宜配合される。有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、エチルカルビトール等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−ドデシルピロリドン等のN−アルキルピロリドン類、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、p−アニシルアルコール等の芳香族アルコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の低級アルキレンカーボネート等が挙げられる。pH調整剤としては、乳酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、塩酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。染毛料の液性は、直接染料の種類等に応じて適宜設定される。直接染料として例えば酸性染料を配合した酸性染毛料として構成する場合には、酸性染毛料の液性は酸性領域であって、好ましくはpH1〜5、より好ましくはpH2〜4.5である。このpHが1未満の場合、毛髪や頭皮にダメージを与え易くなるおそれがある。一方、pHが5を超えると、染毛力が低下する傾向が強くなる。
【0026】
染毛料には、必要に応じて界面活性剤、油性成分、防腐剤、キレート剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等を含有させることができる。
染毛料の剤型は、特に限定されず、例えば水溶液状、分散液状、乳化物状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0027】
<酸化染毛第1剤>
酸化染毛第1剤は(A)アルカリ剤、(B)有機溶剤、及び(C)酸化染料を含有する。
【0028】
(A)アルカリ剤は、毛髪から直接染料を除去するとともに、酸化剤の作用を促進して(C)酸化染料による染色を補助するために含有される成分である。(A)成分の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、有機アミン類(グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0029】
(A)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。(A)成分としては、直接染料を除去する効果に優れるという観点から、アンモニア及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも一種が好適である。酸化染毛第1剤中における(A)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜8.0質量%、さらに好ましくは0.4〜5.0質量%である。(A)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、十分な均染性が得られないおそれがある。一方、10質量%を超えて配合すると、処理後の毛髪において良好な感触を得ることが困難となるおそれがある。
【0030】
(B)有機溶剤は、直接染料を溶解して毛髪から直接染料を除去するための成分である。(B)成分の具体例としては、<染毛料>の欄に記載した有機溶剤が挙げられる。(B)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。(B)成分の中でも、直接染料を除去する作用に優れるという観点から、ベンジルアルコール及びベンジルオキシエタノールの少なくとも一方を含有させることが好ましい。なお、(B)成分として芳香族アルコールを含有させる場合には、水に対する芳香族アルコールの相溶性を高めることにより直接染料を除去する作用を十分に発揮させるという観点から、一価アルコール、多価アルコール、及びN−アルキルピロリドン類から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤を含有させることが好ましい。
【0031】
酸化染毛第1剤中における(B)成分の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは2〜40質量%である。(B)成分の含有量が1質量%以上の場合、直接染料の溶解性が十分に得られ易い。一方、50質量%を超えて(B)成分を配合した場合、直接染料の溶解性の向上について飽和する傾向にある。
【0032】
(B)成分として芳香族アルコールを含有させる場合には、酸化染毛第1剤中における芳香族アルコールの含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜15質量%である。
【0033】
(C)酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物である。この(C)成分は、主要中間体及びカプラーに分類され、酸化染毛第1剤には少なくとも主要中間体が含有される。
【0034】
主要中間体の具体例としては、フェニレンジアミン類(但し、メタフェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール及びパラメチルアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類(但し、トルエン−3,4−ジアミン及びトルエン−2,4−ジアミンを除く。)、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類(但し、2,6−ジアミノピリジンを除く)、それらの塩類等が挙げられる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0035】
カプラーの具体例としては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩等が挙げられる。
【0036】
(C)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。ここで、本実施形態の酸化染毛剤で染色された毛髪を、染色前の色に戻したり、別の色に染め直したりすることが必要になった際に、染色された毛髪を脱染することが容易であるという観点から、主要中間体は、パラフェニレンジアミン及びその塩から選ばれる少なくとも一種が好ましく、カプラーは、レゾルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2,6−ジアミノピリジン、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、α−ナフトール、5−アミノオルトクレゾール、及び5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノールの各化合物並びにその各化合物の塩から選ばれる少なくとも一種が好適である。
【0037】
酸化染毛第1剤中における(C)成分の含有量は、好ましくは0.01〜15.0質量%である。(C)成分の含有量が0.01質量%未満の場合、十分な染毛力が得られ難い。一方、15.0質量%を超えて配合した場合、染毛力の向上について飽和する傾向にある。
【0038】
酸化染毛第1剤には、(D)直接染料除去剤としての亜硫酸類を含有させることが好ましい。こうした亜硫酸類が(A)アルカリ剤及び(B)有機溶剤とともに、毛髪に作用することで、直接染料は毛髪から効率的に除去される。(D)成分としての亜硫酸類としては、亜硫酸、亜硫酸塩、重亜硫酸塩等が挙げられ、亜硫酸塩又は重亜硫酸塩としては、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(D)成分は、単独で配合してもよいし、複数種を組み合わせて配合してもよい。(D)成分の中でも、直接染料を除去する効果に優れるという観点から、亜硫酸ナトリウムが好適である。
【0039】
酸化染毛第1剤中における(D)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10.0質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.1〜3.5質量%である。(D)成分の含有量が0.1質量%以上の場合、直接染料を除去する効果が十分に得られ易い。一方、10.0質量%を超えて配合すると、(C)酸化染料の発色を阻害するおそれがある。
【0040】
また、酸化染毛第1剤中における(D)成分の含有量は、(C)酸化染料に対する(D)成分の質量比(質量比=(D)直接染料除去剤の質量/(C)酸化染料の質量)において、好ましくは0.6〜10、より好ましくは0.8〜8、さらに好ましくは0.9〜6である。(C)酸化染料に対する(D)成分の質量比が0.6未満の場合、(C)酸化染料を無駄なく反応させるとともに(D)成分の効果を十分に発揮させることが困難となるおそれがある。一方、この質量比が10を超える場合、(C)酸化染料の発色が阻害されるおそれがある。
【0041】
また、(D)成分の効果を十分に発揮させるとともに(C)酸化染料を十分に発色させるという観点から、酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤とを混合して得られる混合物中において、酸化剤に対する(D)成分の質量比が所定の範囲に設定されることが好適である。酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤との混合物中において、酸化剤に対する(D)成分の質量比(質量比=(D)直接染料除去剤の質量/酸化剤の質量)は、好ましくは0.06〜1、より好ましくは0.1〜0.8、さらに好ましくは0.1〜0.65である。酸化剤に対する(D)成分の質量比が0.06未満の場合、(D)成分の効果を十分に発揮させることが困難となるおそれがある。また、この場合には本実施形態の酸化染毛剤で染色された毛髪を、染色前の色に戻したり、別の色に染め直したりすることが必要になった際に、染色された毛髪を脱染することが困難となるおそれがある。一方、この質量比が1を超える場合、酸化剤による(C)酸化染料の発色が阻害されるおそれがある。
【0042】
酸化染毛第1剤には、上記の成分以外の成分をその他の成分として配合することができる。その他の成分としては、例えば油性成分、炭化水素、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0043】
油性成分としては、高級アルコール、油脂類、ロウ類、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン類等が挙げられる。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0044】
油脂としては、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0045】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0046】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、オレイン酸オレイル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジオクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0047】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0048】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0049】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0050】
エステル型非イオン性界面活性剤としては、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0053】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0054】
pH調整剤としては、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
さらに、その他の成分としてソルビトール、マルトース等の糖類、バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム等の水溶性高分子化合物、パラベン等の防腐剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定剤、EDTA・2Na等のキレート剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。また「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0055】
酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤とを混合して得られる混合物のpHは、8〜12であることが好ましい。混合物のpHが8未満の場合、酸化剤の作用を十分に促進することができないおそれがあるとともに、直接染料を除去する効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、pHが12を超えると、毛髪のダメージ等の不具合が発生し易くなるおそれがある。なお、混合物のpHは、酸化染毛第1剤中における(A)アルカリ剤の含有量等によって容易に設定することができる。
【0056】
酸化染毛第1剤中に所定量の水を配合することで、酸化染毛第1剤を、乳化物、溶液、分散液等の形態にすることができる。水の含有量は、酸化染毛第1剤中において好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%である。この配合量が50質量%未満又は99質量%を超える場合、安定した剤が得られ難くなる。また、酸化染毛第1剤の剤型は、特に限定されず、例えば液状、フォーム状、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。
【0057】
<酸化染毛第2剤>
酸化染毛第2剤には、(C)酸化染料を酸化重合させて発色させるために酸化剤が含有される。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。酸化剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。酸化剤の中でも、毛髪の明度を高めるという観点から、過酸化水素が好適である。
【0058】
酸化染毛第2剤中における酸化剤の含有量は、上記酸化染毛第1剤との混合物中において、好ましくは0.1〜4.5質量%、より好ましくは0.8〜2.0質量%である。この酸化剤の含有量が0.8〜2.0質量%の場合、本実施形態の酸化染毛剤で染色された毛髪を、染色前の色に戻したり、別の色に染め直したりすることが必要になった際に、染色された毛髪を脱染することが容易であるとともに良好な染毛力が発揮され易い。なお、酸化剤の含有量が0.1質量%未満であると、(C)酸化染料を十分に酸化重合させることが困難となるおそれがある。一方、4.5質量%を超えて配合すると、毛髪のダメージを低減することができないおそれがある。
【0059】
酸化染毛第2剤にはその他の成分として<酸化染毛第1剤>の欄に記載の水、油性成分、界面活性剤等を含有させることができる。
酸化染毛第2剤の剤型は、特に限定されず、例えば水溶液状、分散液状、乳化物状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0060】
<混合物>
混合物は、上記の酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤とを使用時に混合することにより調製される。混合物の剤型は、特に限定されず、例えば水溶液状、分散液状、乳化物状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0061】
そして混合物は、図1(a)に示される毛髪11に塗布される。混合物は、例えば刷毛、コーム(櫛)等の塗布具に付着させて、毛髪に塗布することができる。混合物が塗布された毛髪は、その状態で所定時間放置される。このとき、(A)アルカリ剤によって毛髪11が膨潤するとともに、直接染料21が(B)有機溶剤に溶解する。またこのとき、毛髪内部に浸透した酸化染料が酸化剤によって酸化重合することで、発色した酸化染料22が生成される。その後、毛髪から混合物が洗い流されることにより、直接染料21等が除去される。このようにして毛髪12は、酸化重合した酸化染料22によって所望する色調に染色される。
【0062】
例えば、直接染料21によって染色された毛髪11が、経時的に退色した際において、その毛髪11では直接染料21が部分的に残留していることが多い。そうした毛髪11を再度染色するに際して、本実施形態の酸化染毛第1剤を適用することにより、図2に示される除去処理(ステップS210)を省略することができる。また例えば、直接染料21によって染色された毛髪11の色調を、(C)酸化染料の発色に基づく色調へ変更するに際して、本実施形態の酸化染毛第1剤を適用することにより、除去処理(ステップS210)を省略することができる。
【0063】
<染色処理方法>
図1(b)に示すように、本実施形態の染色処理方法は、酸化染料によって毛髪を染色する酸化染料処理(ステップS110)と、直接染料によって毛髪を染色する直接染料処理(ステップS120)とを含む。酸化染料処理(ステップS110)には、第1のケラチン繊維処理剤としての酸化染毛第1剤が使用される。直接染料処理(ステップS120)には、第2のケラチン繊維処理剤としての染毛料が使用される。そして、この染色処理方法では、酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とが交互に実施されることにより、毛髪11,12の染色処理が繰り返される。ここで、交互に実施とは、酸化染料処理(ステップS110)と、直接染料処理(ステップS110)とを合計で少なくとも3回以上実施することをいう。
【0064】
酸化染料処理(ステップS110)に使用される酸化染毛第1剤は、使用時に酸化剤組成物としての酸化染毛第2剤と混合される。酸化染毛第1剤は、(A)アルカリ剤、(B)有機溶剤、及び(C)酸化染料を含有する。酸化染毛第2剤は、酸化剤を含有する。酸化染毛第1剤、酸化染毛第2剤、及び各剤の混合物については、<酸化染毛第1剤>、<酸化染毛第2剤>、及び<混合物>の各欄に記載したので、説明を省略する。
【0065】
次に、直接染料処理(ステップS120)に使用される染毛料について、上記<染毛料>の欄にて説明した内容と異なる部分を中心に説明する。染毛料には、(a)直接染料及び(b)酸化染料還元剤が含有されている。(b)酸化染料還元剤は、発色している酸化染料を解重合又は非共鳴化することにより、酸化染料によって染色されている毛髪を脱染するための成分である。(b)酸化染料還元剤は、チオグリコール酸類、システイン類、亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類、ヒドロキシメタンスルフィン酸類、及びアスコルビン酸類から選ばれる少なくとも一種である。
【0066】
チオグリコール酸類としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、及びチオグリコール酸エステルが挙げられる。チオグリコール酸塩としては、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム等が挙げられる。チオグリコール酸エステルとしては、グリセリンチオグリコレート等が挙げられる。
【0067】
システイン類としては、例えばシステイン、システイン塩酸塩、N−アセチル−L−システイン等が挙げられる。
亜硫酸類としては、亜硫酸、亜硫酸塩、重亜硫酸塩等が挙げられ、亜硫酸塩又は重亜硫酸塩としては、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0068】
チオ硫酸類としては、チオ硫酸及びチオ硫酸塩が挙げられ、チオ硫酸塩としては例えばチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等が挙げられる。
亜ジチオン酸類としては、亜ジチオン酸及び亜ジチオン酸塩が挙げられ、亜ジチオン酸塩としては、例えば亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム等が挙げられる。
【0069】
ヒドロキシメタンスルフィン酸類としては、ヒドロキシメタンスルフィン酸及びヒドロキシメタンスルフィン酸塩が挙げられ、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩としては、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩、及びエリソルビン酸誘導体が挙げられる。アスコルビン酸塩及びエリソルビン酸塩としては、例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸アンモニウム、アスコルビン酸モノエタノールアミン、アスコルビン酸ジエタノールアミン、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。アスコルビン酸誘導体及びエリソルビン酸誘導体としては、例えばアスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、エリソルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、酢酸アスコルビル、プロピオン酸アスコルビル、酒石酸アスコルビル、クエン酸アスコルビル、コハク酸アスコルビル、安息香酸アスコルビル、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム、アスコルビルエチル、アスコルビン酸アラントイン、アスコルビン酸キトサン、アスコルビン酸メチルシラノール、テトラデシルヘキシルアスコルビル、アミノプロピルアスコルビルフォスフェート、アスコルビン酸ポリペプタイド、アスコルビルグルコシド、アスコルビルメチルシラノールペクチネート等が挙げられる。
【0071】
染毛料中における(b)成分の含有量は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは2〜30質量%である。この(b)成分の含有量が1質量%未満の場合、十分な脱染効果が得られないおそれがある。一方、(b)成分の含有量が40質量%を超えると、(b)成分の溶解性が十分に得られないおそれがある。
【0072】
染毛料には、毛髪に対する(a)直接染料の浸透性を高めるという観点から、有機溶剤を含有させることが好適である。有機溶剤としては、<酸化染毛第1剤>の欄に記載の(B)有機溶剤として例示したものが挙げられる。有機溶剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。有機溶剤の中でも、より高い浸透性を発揮させることによって、染毛力を高めるという観点から、少なくとも芳香族アルコールを含有させることが好ましく、ベンジルアルコール及びベンジルオキシエタノールの少なくとも一方を含有させることがより好ましい。水は、溶媒又は分散媒として含有させることが好適である。
【0073】
染毛料には、所望する色調に更に近づけるという観点から、還元糖を含有させることが好ましい。染毛料が適用された毛髪においては、(b)酸化染料還元剤によって脱染された酸化染料が毛髪に残留した場合、その酸化染料が空気酸化することで、徐々に変色することがある。還元糖は、酸化染料の再酸化を防止することで、そうした変色する現象を防止する作用効果を奏する。還元糖は、遊離した、又はヘミアセタール結合したアルデヒド基又はケトン基を有しており、例えばアミノ酸又はタンパク質のアミノ基とのメイラード反応性を有している。還元糖としては、遊離の単糖類、還元性二糖類、及び還元性オリゴ糖が挙げられる。
【0074】
遊離の単糖類としては、例えばトリオース類、テトロース類、ペントース類、ヘキソース類、及びヘプトース類が挙げられる。トリオース類としては、例えばグリセルアルデヒド、及びジヒドロキシアセトンが挙げられる。テトロース類としては、例えばエリスロースが挙げられる。ペントース類としては、例えばリボース、キシロース、及びアラビノースが挙げられる。ヘキソース類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、及びフルクトースが挙げられる。ヘプトース類としては、例えばセドヘプツロースが挙げられる。
【0075】
還元性二糖類としては、ホモビオース、及びヘテロビオースが挙げられる。ホモビオースとしては、例えばマルトース、セロビオース、イソマルトース、及びゲンチオビオースが挙げられる。ヘテロビオースとしては、例えばメリビオース、ラクトース、マルツロース、及びラクツロースが挙げられる。
【0076】
還元性オリゴ糖としては、例えばデンプン又はグリコーゲンのα−アミラーゼ分解物であるマルトトリオースが挙げられる。これらの還元糖は、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。これらの還元糖の中でも、変色防止効果が高いとともに単位質量当たりの還元力が高いことから遊離の単糖類が好ましく、変色防止効果が更に高いとともに入手が容易であることからキシロース又はジヒドロキシアセトンがより好ましい。
【0077】
染毛料中における還元糖の含有量は、構成糖残基、即ち還元糖の分子中の還元性末端基(カルボニル基又は容易にカルボニル基に変化する官能基)の還元力を測定することによって決定される。また、染毛料中における還元糖の含有量は、還元糖の単位質量当たりの還元力を測定することによっても決定される。還元糖がペントース類、例えばキシロースである場合、還元糖の含有量は、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。還元糖の含有量が0.5質量%未満の場合、空気酸化による毛髪の変色を十分に抑制することができないおそれがある。一方、還元糖の含有量が30質量%を超えると、毛髪が例えばべたつくことにより毛髪の感触が低下するおそれがある。また、還元糖がトリオース類、例えばジヒドロキシアセトンである場合、還元糖の含有量は好ましくは0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。
【0078】
染毛料には、毛髪に対する染毛料の付着性を高めるという観点から、粘度調整剤を含有させることが好適である。粘度調整剤としては、キサンタンガム、ヒドロキシアルキルキサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等からなる半合成高分子、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト等の無機物系高分子が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0079】
なお、染毛料は、(b)酸化染料還元剤の保存安定性を高めるという観点から、(b)酸化染料還元剤を含有する固体状の染毛副剤と、(a)直接染料を含有する染毛主剤とに分割して構成するとともに、使用時において染毛副剤と染毛主剤とを混合するように構成することが好適である。染毛副剤には、(b)成分以外の成分として、分散剤等を必要に応じて含有させることができる。分散剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、タルク、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン等が挙げられる。染毛主剤には、有機溶剤、水、pH調整剤、粘度調整剤等を適宜配合される。染毛主剤の剤型は、特に限定されず、水溶液状、分散液状、乳化物状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0080】
図1(b)に示すように本実施形態の染色処理方法では、例えば、酸化染料処理(ステップS110)、直接染料処理(ステップS120)、及び酸化染料処理(ステップS110)の順に実施する。また例えば、直接染料処理(ステップS120)、酸化染料処理(ステップS110)、及び直接染料処理(ステップS120)の順に実施する。
【0081】
酸化染料処理(ステップS110)を実施する際には、上述した酸化染毛第1剤を使用する。すなわち、酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤とを使用時に混合することにより混合物を調製した後、直接染料21の残留している毛髪11に対して、その混合物を塗布する。こうして酸化染料処理(ステップS110)が施された毛髪12では、直接染料21が除去されているため、発色した酸化染料22によって所望する色調に染色されるようになる。
【0082】
直接染料処理(ステップS120)を実施するには、上述した染毛料を使用する。すなわち、発色した酸化染料22の残留している毛髪12に対して、染毛料を塗布する。こうして直接染料処理(ステップS120)が施された毛髪11では、酸化染料22が脱染されているため、直接染料21によって所望する色調に染色される。
【0083】
こうした染色処理方法は、例えば、毛髪11,12の退色が進行した際において、毛髪11,12を染色する方法として利用することができる。また例えば、毛髪11,12の色調を変更する際において、酸化染料処理(ステップS110)にて染色する第1の色調と、直接染料処理(ステップS120)にて染色する第2の色調とを異なる色調に繰り返し変更する方法として利用することができる。
【0084】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1) 本実施形態の酸化染毛第1剤には、(A)〜(C)の各成分が含有されている。そして、酸化染毛第1剤は、酸化剤を含有する酸化染毛第2剤と混合した混合物として、直接染料により染色された毛髪に適用される。こうした混合物は、毛髪から直接染料を除去することができるとともに、毛髪を酸化染料によって染色することができる。すなわち、直接染料により染色された毛髪を、酸化染料に基づく色調に再度染色する場合、毛髪から直接染料を除去する除去処理を省略することができる。従って、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することができる。
【0085】
例えば、直接染料により染色した毛髪の退色が進行した場合において、再度染色する処理を簡便に実施することができる。また例えば、直接染料により染色した毛髪の色調を、その色調とは異なる色調へ簡便に変更することができる。
【0086】
さらに、本実施形態の酸化染毛第1剤を用いた毛髪の処理は、通常の酸化染毛第1剤を用いた場合と同等の時間で実施することができる。すなわち、除去処理の省略に伴って、毛髪が薬液と接触する時間を短縮することができる。従って、除去処理を要因とする毛髪のダメージを回避することができる。
【0087】
(2) 酸化染毛第1剤には、さらに(D)直接染料除去剤として亜硫酸類を含有させるとともに、(C)酸化染料に対する(D)直接染料除去剤の質量比を0.6〜10の範囲にすることが好ましい。こうした亜硫酸類は、毛髪のタンパク、直接染料等に対して作用し、(B)直接染料が脱離し易い状態に毛髪を変化させると推測される。このため、毛髪から直接染料がより効率的に除去されることにより、(C)酸化染料の配合に基づく色調により近い色調に染色することができる。
【0088】
(3) 染色処理方法は、図1(b)に示すように酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とを交互に実施することにより、毛髪の染色処理を繰り返す。そして、酸化染料処理(ステップS110)では、上述した酸化染毛第1剤を使用するとともに、直接染料処理(ステップS120)では、(a)直接染料及び(b)酸化染料還元剤を含有する染毛料を使用する。この染色処理方法によれば、毛髪を所望する色調に染色するに際して、図2に示される除去処理(ステップS210)及び脱染処理(ステップS230)を省略することができる。このため、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することができる。例えば、直接染料又は酸化染料により染色した毛髪の退色が進行しているが、そうした染料が完全に脱離しない段階において、所望する色調に染色する処理を簡便に実施することができる。そして、酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とを交互に実施することにより、酸化染料処理(ステップS110)を繰り返した場合よりも、毛髪を染色した状態に維持するに際して、毛髪のダメージを抑制することができる。
【0089】
さらに、酸化染料処理(ステップS110)及び直接染料処理(ステップS120)に要する時間は、通常の酸化染料処理(ステップS220)及び通常の直接染料処理(ステップS240)と同等である。このため、除去処理(ステップS210)及び脱染処理(ステップS230)の省略に伴って、毛髪が薬液と接触する時間を短縮することができる。従って、除去処理(ステップS210)及び脱染処理(ステップS230)を要因とする毛髪のダメージを回避することができる。
【0090】
(4) 酸化染料処理(ステップS110)にて染色する第1の色調と、直接染料処理(ステップS120)にて染色する第2の色調とを異なる色調に染色する染色処理方法によれば、毛髪11,12の色調の変更を簡便に繰り返すことができる。
【0091】
また一般に、酸化染料によって染色された毛髪は約1ヶ月で退色し、直接染料によって染色された毛髪は約3週間で退色する。従来では、染色された毛髪を所望する色調に変更する所謂カラーチェンジを行う際には、上述したように毛髪から染料を強制的に除去するか、又は、上述した退色の期間を目処として、ほぼ完全に退色するまで待った後に再度染色するしか方法がなかった。本実施形態の染色処理方法によれば、簡便かつ即座に所望のカラーチェンジを行うことができる。
【0092】
また従来では、所望のカラーチェンジを短期間で実施する場合、その期間において例えば図2に示される脱染処理(ステップS230)、及び直接染料処理(ステップS240)を実施するため、毛髪がダメージを受け易くなる。本実施形態の染色処理方法によれば、脱染処理(ステップS230)等を省略して所望のカラーチェンジを行うことができるため、そうしたカラーチェンジを短期間で行った場合であっても、毛髪のダメージを抑制することができる。
【0093】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記酸化染毛第2剤を、複数の剤に分割して構成するとともに、使用時に混合するように構成してもよい。
【0094】
・ 前記酸化染料処理(ステップS110)にて染色する第1の色調と、直接染料処理(ステップS120)にて染色する第2の色調とは、同じ色調であってもよい。
・ 前記酸化染毛第1剤、及び染色処理方法を、毛髪以外のケラチン繊維に適用してもよい。毛髪以外のケラチン繊維としては、例えば羊毛、羽毛等が挙げられる。
【0095】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ (A)アルカリ剤、(B)有機溶剤及び(C)酸化染料の各成分を含有し、使用時に酸化剤組成物と混合されるとともに、直接染料により染色されたケラチン繊維に適用されるケラチン繊維処理剤を、直接染料により染色されたケラチン繊維に適用することで、該ケラチン繊維の色調を、前記(C)酸化染料の発色に基づく色調へ変更する染色処理方法。
【0096】
・ 前記(B)有機溶剤としてベンジルアルコール及びベンジルオキシエタノールの少なくとも一方を含むケラチン繊維処理剤。
・ 前記酸化剤組成物と混合して得られる混合物のpHが8〜12の範囲であるケラチン繊維処理剤。
【実施例】
【0097】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<酸化染毛剤>
(実施例1−1〜1−16、比較例1−1〜1−3)
表1及び表2に示す各成分を混合することにより、ケラチン繊維処理剤(第1のケラチン繊維処理剤)としての酸化染毛第1剤、及び酸化剤組成物としての酸化染毛第2剤を調製した。なお、表1及び表2において、配合量を示す数値の単位は質量%であり、以下の表においても同様に配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0098】
その一方で、直接染料によって青色に染色された毛束を別途準備した。この毛束は、人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して、表3に示される従来の酸性染毛料を塗布して、30分間放置後、水洗したものである。
【0099】
各例の酸化染毛第1剤と、酸化染毛第2剤とを質量比1:1で混合した混合物を調製した。各例の混合物を毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより、毛束に酸化染料処理を施した。酸化染料処理を施した毛束の色調及び毛束の感触について、下記の評価を行った。
<色調の評価>
10名のパネラーが、上述した酸化染料処理を施した毛束の色調を、ブランクの毛束の色調と目視にて比較した結果について、下記の採点基準で評価した。なお、ブランクの毛束は、上述した人毛の毛束に酸性染毛料による処理を施していない以外は、各実施例と同様にして酸化染料処理を施したものである。また、表1及び表2の<色調>の欄には、酸化染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0100】
採点基準:ブランクの色調にほぼ同一の色調である(優:5点)、ブランクの色調に非常に近い色調である(良:4点)、ブランクの色調との違いは僅かである(可:3点)、ブランクの色調との違いが認められる(やや不良:2点)、及び色調の違いが顕著である(1点)の5段階。
【0101】
10名のパネラーの採点結果について、平均点を算出し、4.5点以上を「優:5点」、点3.5点以上4.5点未満を「良:4点」、2.5点以上3.5未満を「可:3点」、1.5点以上2.5点未満を「やや不良:2点」、及び1.5点未満を「不良:1点」として判定した。判定結果を表1及び表2に併記する。
<毛束の感触>
10名のパネラーが、実施例1−1〜1−16の酸化染毛剤にて酸化染料処理を施した毛束の触感について、以下の採点基準で評価した。
【0102】
採点基準:上記各例の毛束を比較して最も指通り性に優れる(優:5点)、指通り性が僅かに劣る(良:4点)、指通り性がやや劣る(可:3点)、指通り性が劣る(やや不良:2点)、及び指通り性が顕著に劣る(不良:1点)の5段階。
【0103】
10名のパネラーの採点結果について、平均点を算出し、4.5点以上を「優:5点」、3.5点以上4.5点未満を「良:4点」、2.5点以上3.5未満を「可:3点」、1.5点以上2.5点未満を「やや不良:2点」、及び1.5点未満を「不良:1点」として判定した。判定結果を表1及び表2に併記する。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

表1及び表2の結果から明らかなように、各実施例において色調の判定結果は3点以上であり、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することができることがわかる。これに対して、比較例1−1及び比較例1−2ではアルカリ剤又は有機溶剤が含有されていないため、色調の判定結果は2点であり、所望する色調に再度染色する処理が困難であることがわかる。なお、比較例1−3では、酸化染料が含有されていないため、直接染料が脱色されるのみであって、染色処理が施されていない毛束の色調を呈した。
【0107】
実施例1−1〜1−5及び実施例1−7〜1−15では、(C)酸化染料に対する(D)直接染料除去剤の質量比が0.6〜10の範囲であり、色調の判定結果は4点以上であった。この結果から、(C)酸化染料に対する(D)直接染料除去剤の質量比を0.6〜10の範囲とすれば、所望する色調に再度染色する処理をさらに簡便に実施することができることがわかる。
【0108】
以上の結果から、各実施例では、酸化染毛処理を施すに際して、直接染料を予め除去する除去処理を省略することができることがわかる。
また、実施例1−1〜1−14では、毛束の感触の判定結果は4点以上であり、毛髪のダメージが抑制されることがわかる。
<染毛料>
(実施例2−1〜2−5)
第2のケラチン繊維処理剤として、表4に示される酸性染毛第1剤及び酸性染毛第2剤を調製した。各例の酸性染毛第1剤と酸性染毛第2剤とを質量比1:10で混合した混合物を酸性染毛料とした。
【0109】
その一方で、従来の酸化染毛剤によって黒色に染色された毛束を別途準備した。この毛束は、人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して、表5に示される従来の酸化染毛剤を塗布して、30分間放置後、水洗したものである。
【0110】
各実施例の酸性染毛料を毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより、毛束に直接染料処理を施した。実施例2−1〜2−5の毛束を実施例1−1〜1−16と同様にしてブランクの毛束と比較することにより、色調の評価を行った。色調の評価結果について判定した判定結果を表4に併記する。なお、表4の<色調>の欄には、直接染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0111】
【表4】

【0112】
【表5】

表4の結果から明らかなように、各実施例では、酸化染料に基づく黒色が脱染されることにより、直接染料に基づく色調に染色されていることがわかる。
【0113】
このように各実施例では、所望の色調に染色されるため、酸化染料を脱染する脱染処理を省略することができる。
以上の結果から、本実施例の酸化染毛剤及び酸性染毛料を使用するとともに、酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とを交互に実施することにより、毛髪の染色処理を繰り返す染色処理方法によれば、所望する色調に再度染色する処理を簡便に実施することができる。
<染色処理方法>
(実施例3、比較例2〜4)
実施例3においては、表6に示すように、実施例1−7及び実施例1−8の酸化染毛第1剤を第1のケラチン処理剤として使用するとともに、実施例2−4及び実施例2−5の酸性染毛料を第2のケラチン処理剤として使用し、未処理の人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して、酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とを交互に実施した。酸化染料処理(ステップS110)は、各例の酸化染毛第1剤と酸化染毛第2剤とを質量比1:1で混合した混合物を、毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより実施した。直接染料処理(ステップS120)は、各例の酸性染毛第1剤と酸性染毛第2剤とを質量比1:10で混合した混合物を、毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより実施した。また各処理の間隔は約24時間とした。実施例3の毛束を実施例1−1〜1−16と同様にしてブランクの毛束と比較することにより、色調の評価を行った。色調の評価結果について判定した判定結果を表6に併記する。なお、表6の<色調>の欄には、酸化染料の種類、又は直接染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0114】
【表6】

表6の結果から明らかなように、実施例3では、酸化染料処理(ステップS110)と直接染料処理(ステップS120)とを交互に実施することにより、各ステップにおいて、毛束の色調を所望の色調に染色することができることがわかる。この結果から本実施形態の染色処理方法によれば、脱染剤等を用いずに所望の色調に染色することができることがわかる。
【0115】
比較例2においては、表7に示すように、実施例1−7及び実施例1−8の酸化染毛剤を用いて、人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して酸化染料処理のみを繰り返した以外は、実施例3と同様にして毛束に染色処理を実施した。比較例2の毛束を実施例1−1〜1−16と同様にしてブランクの毛束と比較することにより、色調の評価を行った。色調の評価結果について判定した判定結果を表7に併記する。なお、表7の<色調>の欄には、酸化染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0116】
【表7】

表7の結果から明らかなように、比較例2の酸化染料処理では、所望の色調に染色することができないことがわかる。すなわち比較例2の方法では、脱染剤等を用いたり、退色するまで放置したりしない限り、所望の色調に染色することができない。
【0117】
比較例3においては、表8に示すように、実施例2−4及び実施例2−5の酸性染毛料を用いて、人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して直接染料処理のみを繰り返した以外は、実施例3と同様にして毛束に染色処理を実施した。比較例3の毛束を実施例1−1〜1−16と同様にしてブランクの毛束と比較することにより、色調の評価を行った。色調の評価結果について判定した判定結果を表8に併記する。なお、表8の<色調>の欄には、直接染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0118】
【表8】

表8の結果から明らかなように、比較例3では、所望の色調に染色することができないことがわかる。すなわち比較例3の方法では、除去剤等を用いたり、退色するまで放置したりしない限り、所望の色調に染色することができない。
【0119】
比較例4においては、表9に示される従来の酸化染毛剤と従来の脱染剤、及び表10に示される従来の酸性染毛料と従来の除去剤を用いた。そして表11に示すように、各剤を人毛の毛束(スタッフス社製、ミディアムブラウン毛)に対して、酸化染料処理(ステップS220)、脱染処理(ステップS230)、直接染料処理(ステップS240)及び除去処理(ステップS210)を順に実施した以外は、実施例3と同様にして毛束に染色処理を施した。なお、表9に示される従来の脱染剤を用いた脱染処理(ステップS230)は、第1剤と第2剤とを質量比1:10で混合した混合物を、毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより実施した。また、表10に示される従来の除去剤を用いた除去処理(ステップS210)は、毛束に塗布して、30分間放置後、水洗することにより実施した。比較例4の毛束を実施例1−1〜1−16と同様にしてブランクの毛束と比較することにより、色調の評価を行った。色調の評価結果について判定した判定結果を表11に併記する。なお、表11の<色調>の欄には、酸化染料及び直接染料の種類に基づく色調を記載しており、ブランクの毛束においては、<色調>の欄に記載した色調と毛束自体の色調とが重なった色調として視認される。
【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【0122】
【表11】

表11の結果から明らかなように、比較例4では、各酸化染料処理(ステップS220)及び各直接染料処理(ステップS240)において、所望の色調に染色されているものの、脱染処理(ステップS230)及び除去処理(ステップS210)の実施を必要としている。従って、所望の色調に再度染色する処理操作が極めて煩雑である。
【0123】
表12には、実施例3及び比較例2〜4におけるカラーチェンジの結果、及びダメージ評価の結果を示している。
【0124】
【表12】

表12には、実施例3及び比較例2〜4から得られた結果と毛髪のダメージについての評価結果を示している。表12において、「カラーチェンジ回数」の欄には、色調を変化した回数を示し、「処理回数」の欄には、前記カラーチェンジの回数に必要な処理の回数を示している。また、「所望の色調への染色」の欄には、前記カラーチェンジにおいて、所望の色調への染色が可能か否かを示している。
【0125】
毛束のダメージについては、10名のパネラーが最終ステップを完了したときの毛束の触感について次の採点基準で評価した。
採点基準:処理前の毛束よりも毛束の指通り性が僅かに悪化している(3点)、処理前の毛束よりも毛束の指通り性が悪化している(2点)、及び処理前の毛束よりも毛束の指通り性がかなり悪化している(1点)の3段階。
【0126】
各パネラーの採点結果について平均点を算出し、その平均点が2.5点以上をダメージが非常に少ない(○)、2.0点以上2.5点未満をダメージが少ない(△)、及び2.0点未満をダメージが多い(×)として、ダメージ評価の結果を表12に示した。
【0127】
表12の結果から明らかなように、実施例3では毛束のダメージが非常に少ない結果が得られている。この結果から本実施形態の染色処理方法によれば、毛髪を所望する色調を維持するに際して、毛髪のダメージを抑制することができる。また、毛髪のカラーチェンジを短期間で行う場合であっても、毛髪のダメージを最小限に抑えることができる。これに対して、比較例2では、酸化染毛剤を用いた処理を繰り返しているため、所望のカラーチェンジを行うことができないことに加えて、毛髪のダメージが多い。比較例3では、酸性染毛料を用いた処理のため、毛髪のダメージは抑制されているものの、所望のカラーチェンジを行うことができない。比較例4では、脱染処理(ステップS230)等による処理回数の増加に伴って毛束の薬剤処理時間が増加した結果、毛髪のダメージが多いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】(a)は直接染料により染色された毛髪、及び発色した酸化染料により染色された毛髪を示す模式図、(b)は染色処理方法を示す模式図。
【図2】従来の染色処理方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0129】
11,12…ケラチン繊維としての毛髪、21…直接染料、22…酸化染料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の各成分を含有し、使用時に酸化剤組成物と混合されるとともに、直接染料により染色されたケラチン繊維に適用されることを特徴とするケラチン繊維処理剤。
(A)アルカリ剤。
(B)有機溶剤。
(C)酸化染料。
【請求項2】
前記直接染料で染色されたケラチン繊維の色調を変更する色調変更に用いられることを特徴とする請求項1に記載のケラチン繊維処理剤。
【請求項3】
さらに(D)直接染料除去剤として亜硫酸類を含有するとともに、前記(C)酸化染料に対する前記(D)直接染料除去剤の質量比(質量比=(D)直接染料除去剤の質量/(C)酸化染料の質量)が0.6〜10であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケラチン繊維処理剤。
【請求項4】
ケラチン繊維を染色する染色処理方法において、
下記の(A)〜(C)の各成分を含有するとともに使用時に酸化剤組成物と混合される第1のケラチン繊維処理剤を使用することにより、前記ケラチン繊維を酸化染料によって染色する酸化染料処理と、
下記の(a)及び(b)の各成分を含有する第2のケラチン繊維処理剤を使用することにより、前記ケラチン繊維を直接染料によって染色する直接染料処理とを含み、
前記酸化染料処理と前記直接染料処理とを交互に実施することにより、前記ケラチン繊維の染色処理を繰り返すことを特徴とする染色処理方法。
<第1のケラチン繊維処理剤>
(A)アルカリ剤。
(B)有機溶剤。
(C)酸化染料。
<第2のケラチン繊維処理剤>
(a)直接染料。
(b)酸化染料還元剤として、チオグリコール酸類、システイン類、亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類、ヒドロキシメタンスルフィン酸類、及びアスコルビン酸類から選ばれる少なくとも一種。
【請求項5】
前記酸化染料処理にて染色する第1の色調と、前記直接染料処理にて染色する第2の色調とを異なる色調にすることを特徴とする請求項4に記載の染色処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208067(P2008−208067A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46041(P2007−46041)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】