説明

ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具

【課題】ケーブルの円周方向に切り込みを入れる際、始点と終点を容易に一致させることができ、かつ当該円周方向の切れ目から軸方向に切れ目をいれて、外部半導電層を容易に剥ぎ取ることができ、より制度の高い作業が容易。
【解決手段】ケーシング1の両側にケーブルを挿通する丸窓2を設け、各丸窓2の上部周縁にケーブル受け3、5を設け、これらのケーブル受け3、5にほぼ対向して、前記ケーシング1内にケーブル締め付け台6を設け、当該ケーブル締め付け台6は、ケーシング1の下側の基板7を螺着貫通した締め付けネジ8の上端に取り付けられ、ケーブル受け3、5とケーブル締め付け台6との間でケーブルを挟持可能とし、ケーブルを挟持した状態で当該ケーブルの外部半導電層に、その円周方向に切れ目を入れる横刃16と、ケーブルの軸方向に切れ目を入れる、相互に間隔を空けて平行に位置する縦刃15とを、交互に突出自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給用に用いられるケーブの端末処理における外部半導電層の剥ぎ取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力供給用に用いられる6KV等のCVケーブルの端部を接続する場合、ケーブルの端末処理を処理しなければならない。この種のCVケーブルBは、図13に示すように、その中心の導体aの外周から順に外側に向けて、内部半導電層b、絶縁層c、外部半導電層d、遮蔽銅テープe、ケーブルシースfが被覆されており、端末処理では前記外部半導電層dの一部を残して剥ぎ取り、絶縁層cを露出させなければならない。この作業においては、外部半導電層dの切欠き端縁をケーブルの同心円上の平面にきれいに形成しなければならず、また、露出した絶縁層cの表面を傷つけたりしてはいけない。この様に極めて繊細な作業のため、作業に熟練を要する。
【0003】
このため、作業が容易かつ確実にできる工具が種々開発されている。これらの工具の例としては、特許文献1や特許文献2のものがある。特許文献1のものは、一端に円形刃部が内方に向けて突設されている分割円筒体をケーブル外部半導電層に被せ、当該分割円筒体の外周を固定治具で緊縛して、前記円形刃部で前記外部半導電層に、円周上に切れ目を入れ、その端を手で摘んで、前記円形刃部突設側端部に沿って外部半導電層を持ち上げるようにして剥ぎ取っていくものである。
【0004】
前記特許文献2のものは、電力ケーブルに嵌合可能のケーブル把持部と、このケーブル把持部に支持され、前記ケーブル把持部の中心軸に沿う方向に伸びるアームと、このアームに固定されケーブルの外部半導電層に食い込む切削刃と、前記アームに固定されたローラ支持部に支持され前記外部半導電層に転動して、前記アームと前記外部半導電層との間隔を一定に維持するローラとを有し、前記アームを前記外部半導電層に向けて付勢しつつ前記アームを前記外部半導電層の周方向に移動させつつ前記ケーブル把持部をケーブルの長手方向に移動させることにより、前記切削刃で外部半導電層をケーブルの長手方向に所定の長さだけ、剥ぎ取るものである。
【0005】
また、実際に使用している工具として、図15に示すものがある。この工具は、丸棒状の本体50の上端側部から略「く」の字状のバネ材から成る鍵型アーム51を突出させ、また、前記本体50の上端面に突出した刃52を設けたもので、当該刃52が、ケーブルの円周方向及び螺旋方向に自在に切り替えられるものである。この工具で、外部半導電層を剥ぎ取るには、前記鍵型アーム51の中に外部半導電層が露出したケーブルをはめ入れ、外部半導電層層の円周に沿って、前記本体50を手で回し、これにより、当該外部半導電層層の円周方向に切れ目を入れ、そこから刃52の向きを切り替えて前記本体50をケーブルの軸方向に螺旋状に外部半導電層の端部まで動かし、螺旋状の切れ目を入れ、当該端部から切れ目に沿って、外部半導電層を剥ぎ取っている。
【0006】
【特許文献1】実開平5−70118号公報
【特許文献2】特許第3182055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のものは、ケーブルの外部半導電層に、分割円筒体を圧接させ、その端部の円形刃部で外部半導電層に円周方向に切れ目を入れるだけで、外部半導電層の軸方向には切れ込みが入らず、ケーブルの長手方向に端部まで一定長伸びた前記外部半導電層は、手で剥ぎ取るものである。従って、その作業は依然として熟練を要するものである。
【0008】
また、前記特許文献2のものは、ケーブル把持部はケーブル外周に嵌合されるが、周方向に回転自在であり、また軸方向にも摺動自在である。このようなケーブル把持部に支持されたアームを前記外部半導電層に向けて押圧を加えて付勢しつつ前記アームを前記外部半導電層の周方向に移動させかつ前記ケーブル把持部をケーブルの長手方向に移動させなければならない。従って、操作は難しく切削刃は極めて不安定な動きと成るおそれがあり、外部半導電層の切欠き端縁を同心円上の平面にきれいに形成するには、やはり熟練を要する。
【0009】
また、図15に示す工具は、前記螺旋状の切れ目は切れ目を入れる際も、また、外部半導電層を剥ぐ際も、手を動かす距離が長く、不便であった。また、円周方向と螺旋状の切れ目の境目で、外部半導電層は意図した切れ方をしない(途中で切れてしまう)ことがあった。また、ケーブルを前記アームのバネ力で押さえているため、前記本体をケーブルの円周方向に回わして、円周方向の切れ目を入れる際に、始点と終点とが一致しない恐れがある。一致させるには、切れ目の始点を確認し、そこに工具の刃を移動させる必要があった。そのため、注意と熟練が必要であった。また、ケーブルの容量の大きい22KVケーブル、例えば遮水層付ケーブル等ではより一層精度の高い剥ぎ取り作業が要求される。
【0010】
この発明はこのような従来技術を考慮して為されたもので、ケーブルの円周方向に切り込みを入れる際、始点と終点を容易に一致させることができ、かつ当該円周方向の切れ目から軸方向に切れ目をいれて、前記円周方向の切れ目から外部半導電層の端部までを容易に剥ぎ取ることができる、より制度の高い作業が容易な、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具を提供し、上記課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、請求項1の発明は、中空状のケーシングの両側にケーブルを挿通する窓を設け、当該各窓の上部周縁に略沿って凹湾曲面を有するケーブル受けを設け、これらのケーブル受けにほぼ対向して、前記ケーシング内にケーブル締め付け台を設け、当該ケーブル締め付け台は、ケーシングの下側の基板のネジ孔に螺着貫通した締め付けネジの上端に、当該締め付けネジが回転自在となるように取り付けられ、当該締め付けネジを回転させることにより、前記ケーブル受けとケーブル締め付け台との間に挿入したケーブルを挟持可能としている。また、前記ケーブル受けとケーブル締め付け台との間にケーブルを挟持した状態で、当該ケーブルの外部半導電層に、その円周方向に切れ目を入れる横刃と、ケーブルの軸方向に切れ目を入れる、相互に間隔を空けて平行に位置する縦刃とを、交互に突出自在に設け、前記一方の刃を突出した状態で、ケーブル外周を前記ケーシングごと回転、移動可能にした、ケーブル外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ケーシングの一方の窓を有する外側面が平面に形成され、ケーブルの剥ぎ取る外部半導電層端縁の近傍に固定するガイドストッパの外側面と当接可能で、かつ当該ガイドストッパに当接しながら前記ケーシングが回転可能である、ケーブル外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記外部半導電層層の円周方向に切れ目を入れる横刃は、板状の横刃取り付け台の中央部に固定され、前記外部半導電層層の軸方向に切れ目を入れる2つの縦刃は断面コの字型の縦刃取り付け台の両側内面に対向して取り付けられ、当該縦刃取り付け台の開口部に前記横刃取り付け台が位置し、これらの縦刃取り付け台と横刃取り付け台とは、前記ケーシングに軸支された切替レバーによって、上下自在に吊り下げられている、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3のいずれかに記載の発明において、前記横刃及び縦刃はオフセットされた位置に設けられている、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。また、請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の発明において、前記横刃及び縦刃は夫々、円弧形状の刃である、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の発明において、前記横刃及び縦刃は夫々、短円柱体の端側部にフランジ状に設けた円形刃であり、当該短円柱体の円形刃を有する端縁部は、アール形状又は傾斜面を形成したガイド部を有している、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ケーブルの外部半導電層外周にこの発明の工具を、当該半導電層の両側からケーブル受けと締め付け台を当接させて、ネジ力により挟持するため、安定してケーブル乃至は外部半導電層を把持でき、この状態でケーブル等の外周に沿って安定して回したり、軸方向に移動したりすことが出来る。その際、作業者は工具をケーブルの外部半導電層の外周に沿って回すだけでよく、他に力を入れたりする必要がない。それ故、ケーブルの外部半導電層に同心円の平面で始点と終点を一致させた円周方向の切り込みえを極めて容易に入れることが出来る。
【0017】
また、ケーブルの外部半導電層に円周方向の切れ目を入れたり、その軸方向に切れ目を入れたりするのに、横刃と縦刃が突出自在であるため、前記のように工具でケーブルの外部半導電層を把持したまま、横刃と縦刃を切り替えることが出来、横刃による円周方向の切れ目を入れる作業から、縦刃による軸方向の切れ目を入れる作業がスムースに切り替えられ、その際、外部半導電層の残置する端末縁を傷つけたりするおそれがない。
【0018】
また、この発明では、ケーブルの外部半導電層の軸方向への切り込みは、平行する二本の切り込みのため、先ず、前記外部半導電層の円周方向に工具を回して、円周方向の切れ目を入れ、その後縦刃に切り替えて工具を軸方向に動かし、当該外部半導電層の端部まで引っ張れば、二本の軸方向の切れ目が入り、当該外部半導電層の端部から、前記円周方向の切れ目まで二本の切れ目の間の外部半導電層を剥ぎ、その後外部半導電層の端部から円周方向の切れ目までの残りの外部半導電層を剥ぎ取るため、外部半導電層の剥ぎ取りを容易かつ確実にすることが出来る。これにより図15に示す従来例の円周方向の切り込みの後の螺旋状の切り込みによる剥ぎ取り作業よりも、工具の移動距離や剥ぎ取の長さが短縮され、利便性が向上する。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、剥ぎ取るケーブルの外部半導電層の端部付近にガイドストッパを取り付け、当該ガイドストッパの外側面にケーシングの平面を形成した外側面を押し当てて工具を回せば、ケーブルの外周の同心円状の平面で始点と終点を一致させた円周方向の切り込みを、熟練した技術を要することなく、誰でも容易に入れることが出来る。また、請求項3の発明によれば、横刃と縦刃の突出、引っ込みがレバーの操作で、容易かつ確実に行うことが出来る。
【0020】
また、請求項4の発明では、横刃及び縦刃はオフセットされた位置に設けられているので、円周方向の切れ目と軸方向の各切れ目との間にわずかな隙間が空くため、切れ目が交差することが無く、作業者が剥ぎ取る際、円周方向の切れ目の内側等、予定外の箇所の外部半導電層まで剥ぎ取ることを阻止でき、剥ぎ取った後の外部半導電層の端縁を傷つけたり、バリを残したりするおそれがない。
【0021】
また、請求項5の発明においては、横刃及び縦刃を円弧形状としているため、各刃を外部半導電層に食い込ませる際、切れ目近くの前後の外部半導電層を傷つけたり、引きつらせたりすることがなく、使用により刃が欠けたりすることが少ない。
【0022】
また、請求項6の発明では、横刃及び縦刃は夫々、短円柱体の端側部にフランジ状に設けた円形刃であるため、刃は一定の深さまでしか入らず、外部半導電層の内側の絶縁層まで傷つけたりすることがない。また、当該短円柱体の円形刃を有する端縁部は、アール形状又は傾斜面を形成したガイド部を有するため、刃が外部半導電層に斜めに当ってもほぼ一定の深さまで切り込みを入れられるようになっている。従って、刃が斜めに当っても、外部半導電層を傷つけたりせず、さらに径の異なるケーブルの外部半導電層の剥ぎ取りにも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、中空状のケーシングの両側にケーブルを挿通する窓を設け、当該各窓の上部周縁に略沿って凹湾曲面を有するケーブル受けを設け、これらのケーブル受けにほぼ対向して、前記ケーシング内にケーブル締め付け台を設け、当該ケーブル締め付け台は、ケーシングの下側の基板のネジ孔に螺着貫通した締め付けネジの一端に、当該締め付けネジが回転自在となるように取り付けられ、当該締め付けネジを回転させることにより、前記ケーブル受けとケーブル締め付け台との間に挿入したケーブルを挟持可能とし、また、この状態で、当該ケーブルの外部半導電層に、その円周方向に切れ目を入れる横刃と、ケーブルの軸方向に切れ目を入れる、相互に間隔を空けて平行に位置する縦刃とを、交互に突出自在に設け、前記一方の刃を突出した状態で、ケーブル外周を前記ケーシングごと回転、移動可能にした。これにより、ケーブルの外部半導電層に工具を取り付けて、工具を回すだけで、外部半導電層に同心円上の平面で始点と終点を一致させた円周方向の切り込みを極めて容易に入れることが出来る。
【実施例1】
【0024】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1及び図2は、この発明の工具の正面側斜視図及び背面側斜視図であり、図3は同正面図、図4は同側面図、図5は同背面図、図6は、拡大断面側面図である。
【0025】
まず、この発明の工具Aでケーブルの外部半導電層を挟持する構造について説明する。工具Aは中空状の略箱型のケーシング1を設け、このケーシング1の前後両側板にケーブルを挿通する丸窓2を夫々設け、当該一方の丸窓2の上部周縁に略沿って凹湾曲面を有するケーブル受け3を有する縦板4を前記ケーシング1の前部側板の内側に設け、他方の窓2の上部周縁に略沿って凹湾曲面を有するケーブル受け5を前記ケーシング1の後部側板外側に設けている。
【0026】
また、これらのケーブル受け3、5にほぼ対向して前記ケーシング1内に、上面にケーブルを受ける凹部を有するケーブル締め付け台6を設け、当該ケーブル締め付け台6は、前記ケーシング1の下側の基板7のネジ孔に螺着貫通した締め付けネジ8の上端に、当該締め付けネジ8が回転自在となるように取り付けられ、当該締め付けネジ8を回転させることにより、ケーブル締め付け台6はケーシング1の内壁によって回転せずに競り上がり、前記ケーブル受け3,5とケーブル締め付け台6との間に挿入したケーブルを挟持可能としている。また、前記ケーシング1の左右両側板には縦長窓9、9が設けられている。
【0027】
次にこの発明の工具Aの当該ケーブルの外部半導電層に、その円周方向に切れ目を入れる横刃と、ケーブルの軸方向に切れ目を入れる、相互に間隔を空けて平行に位置する縦刃とを、交互に突出自在に設けている構造について説明する。
【0028】
前記ケーシング1の上部は、左右の両側板上端を水平内側に折り曲げて左右の天板を形成し、その中央部で夫々上方に折り曲げられ、間隔を開けて相対向する突出側板1a、1aを設けている。そして、これらの突出側板1aの正面端部間に前記縦板4の上部が伸びて固定されている。また、これらの突出側板1aの背面端部間には、前記ケーシング1の後部の側板の上端を延長させた舌片1bを介在させ、これらにより、上下に開口した断面四角形の空間10がケーシング1の上部に形成されている。また、前記各突出側板1aの中央上縁及び後部縁に夫々、上縁軸受け板11、後縁軸受け板12が設けられている。
【0029】
前記空間10の内部には、その後部一側に平面コの字型の縦刃取り付け台13が、前部一側に、前記縦刃取り付け台13の両側板の先端に当接し、コ字型の開口部を塞ぐ板状の横刃取り付け台14(図7及び図8参照)が、上下方向に摺動自在に夫々設けられている。これらの縦刃取り付け台13と横刃取り付け台14はこの空間10の四面の内壁によって、他の動きは規制されている。
【0030】
前記縦刃取り付け台13はコ字型の両側板の下部の対向する位置に、短円柱体を水平に突設し、これらの各短円柱体の先端側にフランジ状の円形刃を設けた縦刃15を設けている。また、前記横刃取り付け台14はその下部に短円柱体を水平に突設し、これらの各短円柱体の先端側にフランジ状の円形刃を設けた横刃16を設けている。これらの二つの縦刃15と横刃16とは、二つの縦刃15の間に、90度の位置で横刃16が介入している。
【0031】
また、前記縦刃取り付け台13と横刃取り付け台14とは切替レバー17によって回転自在に支持されている。当該切替レバー17は2枚の板体からなり、夫々中央部で前記各突出側板1aの各上縁軸受け板11間に渡したシャフト18によって回転自在に軸支され、当該各切替レバー17の前端部で横刃取り付け台14の上部に通したシャフト19の両端部を回転自在に軸支している。また、縦刃取り付け台13の両側板の上端に軸受け突片13aを夫々有し、当該各軸受け突片13aの孔に通したシャフト20を前記各切替レバー17の後部に回転自在に軸支している。このように前記縦刃取り付け台13と横刃取り付け台14とは切替レバー17を前記シャフト18を中心に回転させることにより、前記空間10内で交互に上下する。
【0032】
また、前記二枚の切替レバー17の後端部間には断面円形の切替ネジ軸受け21を回転自在に渡しており、また、前記各突出側板1aの各後縁軸受け板12間には断面円形の切替ネジナット22を回転自在に渡している。そして、上部に摘み23aを有する切替ネジ23を前記切替ネジ軸受け21に回転自在に通して当該切替ネジ軸受け21の箇所で軸方向の動きを規制し、その下部を前記切替ネジナット22に螺着している。
【0033】
この切替ネジ23を回して、前記切替ネジナット22に対して切替ネジ23を緩めると、前記切替ネジ軸受け21は上がり、これにより切替レバー17は、図9に示すように前方に下がるように傾斜し、前記横刃取り付け台14を下げ、前記縦刃取り付け台13を上げる。その結果、前記横刃16が下方に突出し、ケーブルの外部半導電層に切り込むことが可能となる。
【0034】
また、前記切替ネジ23を回して、前記切替ネジナット22に対して切替ネジ23を締め付けると、前記切替ネジ軸受け21は下がり、これにより切替レバー17は、図10に示すように反対に傾斜し、前記縦刃取り付け台13を下げ、前記横刃取り付け台14を上げる。その結果、前記縦刃15が下方に突出し、ケーブルの外部半導電層に切り込むことが可能となる。
【0035】
また、前記切替ネジ23を回して、レバー17を水平にすることにより、前記縦刃取り付け台13及び横刃取り付け台14も水平となり、縦刃15及び横刃16はケーブルの外部導電層に達せず、切り込むことが出来ない。これらの状態は、図8に示すように前記縦刃取り付け台13と横刃取り付け台14とのつき合わせ外面に目盛り24及び当該目盛り24を指す針25を夫々設け、これを前記一方の突出側板1aに設けた小窓26(図4参照)から目視することが出来る構成になっている。前記目盛り24が「1」の場合は、横刃16が下がっており、「2」の場合は縦刃15が下がっており、「0」の場合は、横刃16及び縦刃15は共に上がっていることが分かる。
【0036】
次にこの工具Aを用いて、CVケーブルBの外部半導電層dを剥ぎ取る作業を説明する。
先ず、外部半導電層dを露出させたCVケーブルBを設け、この外部半導電層dの上の遮蔽銅テープe層の端部外周に、別に設けた既存のガイドストッパ27を固定する。このガイドストッパ27は、上下の部材をケーブルの上下から挟んでネジにより締め付け固定される。そして、工具Aのケーシング1の前部側板を前記ガイドストッパ27の外側面に当接させるようにしてCVケーブルBに工具Aのケーシング1の前後両側板の丸窓2を入れて装着する。
【0037】
そして、前記外部半導電層dの上部をケーブル受け3及び5に当て、締め付けネジ8を回して、締め付け台6を前記外部半導電層dに押し当てる。これにより、工具AはCVケーブルBを挟持する。この状態を図11に示す。また、この状態で、工具AをCVケーブルBの外周に沿って回転させることも出来るし、軸方向に移動させることも出来る。
【0038】
そして、工具Aの切替ネジ23を緩める方向に回して、前記目盛り24の「1」に針25を合わせると、前述のように、横刃16が降りてきて前記外部半導電層dに食い込む。そして、当該工具A自体をCVケーブルBの円周方向に回転させると、ガイドストッパ27から等距離の位置を維持しつつ横刃16が前記外部導電層dの円周方向に切れ目X(図13参照)を入れる。このようにケーシング1の前部側板は平面を形成し、当該工具Aはこの前部側板より外側に突出している部材はない。従って、前記前部側板を前記ガイドストッパ27の外側面に当てて当該工具Aを回転させることが出来る。
【0039】
そして、再び切替ネジ23を前記とは逆に締め付ける方向に回し、前記目盛り24の「2」に針25を合わせると、前述のように二つの縦刃15が降りてきて、前記外部半導電層dに食い込む。そして、当該工具A自体をCVケーブルBの軸方向に前記外部半導電層dの端部まで移動させると、二本の縦刃15が前記外部半導電層dに軸方向の平行な二本の切れ目Y(図13参照)が入る。
【0040】
その後、切替ネジ23を緩めて、前記目盛り24の「0」に針25を合わせる。これにより、縦刃15は上がり、横刃16と水平な位置になり、前記外部半導電層dの外周から離れる。そして、締め付けネジ8を緩めて工具Aを前記CVケーブルBから外す。そこで、まず、図13の二本の切れ目Yの間の外部半導電層dを端部から、前記切れ目Xまで、図14に示すように剥がす。さらに、絶縁層cが露出した端部から残りの外部半導電層dを端から順に剥がして行く。これにより、前記切れ目Xから外方の外部半導電層dがきれいに剥がれ、切り欠き端末部はケーブルの同心円の平面状で切れ、きれいな仕上がりとなる。その際、前記横刃16及び縦刃15は、短円柱体の外周からフランジのように円形刃が出ているため、前記短円柱がストッパの役目を為し、刃の突出幅を外部半導電層dの厚さと予め合わせれば、その下の絶縁層cまで食い込まず、絶縁層cを傷つけるおそれがない。
【0041】
また、前記縦刃15の円形刃と横刃16の円形刃は図7に示すように、縦刃15の中心軸が横刃16の円形刃より離れた位置にオフセット(図7のQで示す) された位置に設けられているため、図13に示すように、円周方向の切れ目Xと軸方向の各切れ目Yとの間にわずかな隙間が空くため、切れ目が交差することが無く、作業者が剥ぎ取る際、円周方向の切れ目Xの内側等、予定外の箇所の外部半導電層dまで剥ぎ取ることを阻止でき、剥ぎ取った後の外部半導電層dの端縁を傷つけたり、バリを残したりするおそれがない。
【0042】
また、前記横刃16及び縦刃15を円形刃としているため、各刃を外部半導電層dに食い込ませる際、切れ目近くの前後の外部半導電層dを傷つけたり、引きつらせたりすることがなく、使用により刃が欠けたりすることが少ない。これは、円形刃としなくても、円弧形状の刃としても同様である。
【0043】
また、前記二つの縦刃15は、前述のように、短円柱体を水平に突設し、これらの各短円柱体の先端側にフランジ状の円形刃を設けた構成とし、さらに、図7及び図12に示すように、当該短円柱体の円形刃を有する端縁部は、アール形状又は傾斜面を形成したガイド部を有するため、刃が外部半導電層dに斜めに当ってもほぼ一定の深さまで切り込みを入れられるようになっている。従って、刃が斜めに当っても、外部半導電層dを傷つけたりしない。それ故、当該二つの縦刃15の間隔を調整すれば、図12(A)図に示すように、CVケーブルBが大径の場合には、刃が垂直に入るが、図12(B)に示すように、CVケーブルBが小径の場合には、刃が前記外部半導電層dに斜めに入り、いずれも剥がしやすい深さに切り込みを入れることが出来る。すなわち、径の異なるCVケーブルBの外部半導電層dの剥ぎ取りにも使用できる
【0044】
また、前記実施例1の説明では、ガイドストッパ27の外側面と当接させる工具Aのケーシング1の前部側板をケーシング1と一体なものと扱っているが、このガイドストッパ27と当接するケーシング1の前部側板は、図1、図3、図4及び図6に示すように、ケーシング1の前部にビスで取り付け自在な前部側板28としてもよい。この場合、当該前部側板28の両側縁に折曲縁28a(図6参照)を設け、これらの折曲縁28aをケーシング1の左右の側板の内側に当接させてビスで固定し、左右の側板よりやや外側に前部側板28を突出させることにより、前記横刃16と前記ガイドストッパ27との間に一定の間隔を設け、次の工程のペンシリング作業でガイドストッパ27をそのままの位置で使用できるようにている。また、この前部側板28を別のものに取り替えることにより、ケーシング1からの突出長さを替えれば、ガイドストッパ27との間隔を変更することができる。
【0045】
なお、前記実施例1では、ガイドストッパ27を用いてケーブルの外部半導電層に円周方向の切れ目を入れているが、ガイドストッパ27は必ずしも使用しなくても、この発明の工具を用いれば始点と終点を一致させた円周方向の切れ目を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施例1の工具の正面側斜視図である。
【図2】この発明の実施例1の工具の背面側斜視図である。
【図3】この発明の実施例1の工具の正面図である。
【図4】この発明の実施例1の工具の側面図である。
【図5】この発明の実施例1の工具の背面図である。
【図6】この発明の実施例1の工具の拡大断面側面図である。
【図7】この発明の実施例1の工具の縦刃取り付け台と横刃取り付け台の平面図である。
【図8】この発明の実施例1の工具の縦刃取り付け台と横刃取り付け台の側面図である。
【図9】この発明の実施例1の工具の横刃を下ろし、縦刃を上げた状態を示す要部断面図である。
【図10】この発明の実施例1の工具の横刃を上げ、縦刃を下ろした状態を示す要部断面図である。
【図11】この発明の実施例1の工具をCVケーブルの外部半導電層に取り付けた状態を示す断面図である。
【図12】この発明の実施例1の工具の二つの縦刃と径の異なるCVケーブルの場合の作用状態を示す説明図であり、(A)図は大径のケーブルの場合、(B)図は小径のケーブルの場合を示す。
【図13】この発明の実施例1の工具によりCVケーブルの外部半導電層に円周方向の切れ目と軸方向の二つの切れ目を入れた状態を示す側面図である。
【図14】この発明の実施例1の工具によりCVケーブルの外部半導電層に円周方向の切れ目と軸方向の二つの切れ目を入れ、軸方向の二つの切れ目の間の外部半導電層を剥がした状態を示す側面図である。
【図15】従来の工具の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ケーシング 1a 突出側板
1b 舌片 2 丸窓
3 ケーブル受け 4 縦板
5 ケーブル受け 6 締め付け台
7 基板 8 締め付けネジ
9 縦長窓 10 空間
11 上縁軸受け板 12 後縁軸受け板
13 縦刃取り付け台 14 横刃取り付け台
15 縦刃 16 横刃
17 切替レバー 18 シャフト
19 シャフト 20 シャフト
21 切替ネジ軸受け 22 切替ナット
23 切替ネジ 24 目盛り
25 針 26 小窓
27 ガイドストッパ 28 前部側板
28a 折曲縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの外部半導電層を剥ぎ取る工具において、
中空状のケーシングの両側にケーブルを挿通する窓を夫々設け、
当該各窓の上部周縁に略沿って、下面に凹湾曲面を有するケーブル受けを設け、これらのケーブル受けにほぼ対向して、前記ケーシング内にケーブル締め付け台を設け、当該ケーブル締め付け台は、ケーシングの下側の基板のネジ孔に螺着貫通した締め付けネジの上端に、当該締め付けネジが回転自在となるように取り付けられ、
当該締め付けネジを回転させることにより、前記ケーブル受けとケーブル締め付け台との間に挿入したケーブルを挟持可能とし、
また、前記ケーブル受けとケーブル締め付け台との間にケーブルを固定した状態で、当該ケーブルの外部半導電層に、その円周方向に切れ目を入れる横刃と、その軸方向に切れ目を入れる、相互に間隔を空けて平行に位置する2つの縦刃とを、前記外部半導電層に交互に突出自在に設け、
前記一方の刃を突出した状態で、ケーブル外周を前記ケーシングごと回転、移動可能にしたことを特徴とする、ケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。
【請求項2】
前記ケーシングの一方の窓を有する外側面が平面に形成され、ケーブルの剥ぎ取る外部半導電層端縁の近傍に固定するガイドストッパの外側面と当接可能で、かつ当該ガイドストッパに当接しながら前記ケーシングが回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。
【請求項3】
前記外部半導電層層の円周方向に切れ目を入れる横刃は、板状の横刃取り付け台の中央部に固定され、前記外部半導電層層の軸方向に切れ目を入れる2つの縦刃は断面コの字型の縦刃取り付け台の両側内面に対向して取り付けられ、当該縦刃取り付け台の開口部に前記横刃取り付け台が位置し、これらの縦刃取り付け台と横刃取り付け台とは、前記ケーシングに軸支された切替レバーによって、上下自在に吊り下げられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。
【請求項4】
前記横刃及び縦刃はオフセットされた位置に設けられていることを特徴とする、請求項1、2又は3のいずれかに記載のケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。
【請求項5】
前記横刃及び縦刃は夫々、円弧形状の刃であることを特徴とする、請求項1、2、3又は4のいずれかに記載のケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。
【請求項6】
前記横刃及び縦刃は夫々、短円柱体の端側部にフランジ状に設けた円形刃であり、当該短円柱体の円形刃を有する端縁部は、アール形状又は傾斜面を形成していることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載のケーブルの外部半導電層の剥ぎ取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−263717(P2008−263717A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104548(P2007−104548)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【出願人】(591050361)三英電業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】