ケーブル用固定金具
【課題】ケーブルの配索において、省スペース化を実現することができ、また、ケーブルをしっかりと固定することが可能なケーブル用固定金具を提供する。
【解決手段】断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔５と、２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔６と、を有する固定金具本体２と、固定金具本体２と一体に形成された取付フランジ部３と、２本のケーブルが固定される２つの挿入孔１１を有し、該２つの挿入孔１１に２本のケーブルを固定し、かつ、第２ケーブル挿入孔６に収容されて固定されるケーブル支持部材４とを備え、固定金具本体２は、両ケーブル挿入孔５，６を分割するように２分割構成とされ、ケーブル支持部材４は、挿入孔１１を分割し、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされる。
【解決手段】断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔５と、２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔６と、を有する固定金具本体２と、固定金具本体２と一体に形成された取付フランジ部３と、２本のケーブルが固定される２つの挿入孔１１を有し、該２つの挿入孔１１に２本のケーブルを固定し、かつ、第２ケーブル挿入孔６に収容されて固定されるケーブル支持部材４とを備え、固定金具本体２は、両ケーブル挿入孔５，６を分割するように２分割構成とされ、ケーブル支持部材４は、挿入孔１１を分割し、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、３本のケーブルを車体等の構造物に固定するために用いられるケーブル用固定金具に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
３本のケーブルを配索する際、所定箇所でケーブルを固定する必要がある。この際に用いられるケーブル用固定金具としては、従来から様々なタイプが開発されている。
【０００３】
例えば、特許文献１〜３に示すようなタイプ、即ち、３本のケーブルを断面視で一直線状に配列する直線状タイプや、特許文献４に示すようなタイプ、即ち、３本のケーブルを断面視で三角状に配列する三角状タイプのケーブル用固定金具がある。
【０００４】
前者の直線状タイプのケーブル用固定金具では、ケーブルの配列方向に配索スペースが大きくなってしまうだけでなく、例えば、車体等に取り付ける際、ケーブルの配列方向における両端の２ヶ所に取付部を形成する必要があり、取付スペースが広くなってしまうという問題があった。
【０００５】
そこで、本出願人は、後者の三角状タイプのケーブル用固定金具に着眼し、検討を行った結果、当該三角状タイプのケーブル用固定金具は、車体等に取り付ける際、取付部を１ヶ所にすることができる点において、取付スペースの省スペース化を実現できるだけでなく、断面視で三角状というケーブルの配置が配索スペースの省スペース化の実現にも寄与している点において、有効だと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００７−２７６７３８号公報
【特許文献２】特開２００７−３１０５７号公報
【特許文献３】特開２００７−５３８８６号公報
【特許文献４】特開２００８−１４８４４６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、従来の三角状タイプのケーブル用固定金具として、特許文献４があるが、特許文献４のケーブル用固定金具には、以下の問題点があった。特に、車両用として用いる場合には、その問題は顕著であった。
【０００８】
特許文献４のケーブル用固定金具では、３本のケーブルの配置自体は三角状だが、支持金具やケーブル支持部材が円形状であるため、ケーブルを固定する部分であるケーブル用固定金具の部分における配索スペースが広く、省スペース化の観点で、改善の余地があった。
【０００９】
また、車両用のケーブル用固定金具では、振動が問題となるが、特許文献４のケーブル用固定金具では、支持金具に挟持されるケーブル支持部材が円形状であるため、振動により、支持金具に対してケーブル支持部材が回転する場合もあり、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【００１０】
さらに、特許文献４のケーブル用固定金具では、ケーブル支持部材のケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる構成であるため、ケーブル支持部材とケーブルとの間に隙間ができ、振動により、支持金具に対してケーブルがずれ易くなってしまい、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【００１１】
なお、ケーブルの位置決めがしっかりと為されていない場合、すなわち、ケーブル用固定金具に対してケーブルがしっかりと固定されていない場合、ケーブルに捻れが生じてしまい、ケーブルに不要な力が加わってケーブルが断線し易くなり、また、ケーブルの捻れにより配線レイアウトが意図したレイアウトから変わってしまい、ケーブルが周辺の部材に干渉するなどして不具合が生じるおそれがある。
【００１２】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ケーブルの配索において、省スペース化を実現することができ、また、ケーブルをしっかりと固定することが可能なケーブル用固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、前記３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔と、前記３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔と、を有する固定金具本体と、前記固定金具本体と一体に形成された取付フランジ部と、前記２本のケーブルが固定される２つの挿入孔を有し、該２つの挿入孔に前記２本のケーブルを固定し、かつ、前記第２ケーブル挿入孔に収容されて固定されるケーブル支持部材と、を備え、前記固定金具本体は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を分割するように２分割構成とされ、前記ケーブル支持部材は、前記２つの挿入孔を分割するように、かつ、その分割方向が前記固定金具本体の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされるケーブル用固定金具である。
【００１４】
前記固定金具本体を２分割した一方の分割固定金具は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を隔てる隔壁が、他方の分割固定金具よりも長くなるようにされ、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔が、他方の分割固定金具よりも深くなるようにされてもよい。
【００１５】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、該第２ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定されてもよい。
【００１６】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、前記両分割固定金具を一体とした際に、分割方向に沿って重なり合うように板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定されてもよい。
【００１７】
前記ケーブル支持部材の両端部には、前記ケーブル支持部材の両端部を拡径したフランジ部が形成され、前記固定金具本体には、前記ケーブル支持部材のフランジ部を収容する収容凹部が形成されてもよい。
【００１８】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、前記固定金具本体に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成されてもよい。
【発明の効果】
【００１９】
本発明によれば、ケーブルの配索において、省スペース化を実現することができ、また、ケーブルをしっかりと固定することが可能なケーブル用固定金具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【図２】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【図３】（ａ）は図２のケーブル用固定金具にボルトを取り付けた際の平面図であり、（ｂ）はその正面図、（ｃ）はその側面図、（ｄ）はその斜視図である。
【図４】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【００２２】
図１は、本実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【００２３】
図１（ａ），（ｂ）に示すように、ケーブル用固定金具１は、固定金具本体２と、固定金具本体２と一体に形成された取付フランジ部３と、ケーブル支持部材４と、を備えている。
【００２４】
固定金具本体２、より詳しくは、固定金具本体２の外周形状は、断面視で三角状に配置された３本のケーブル（図示せず）の外周に沿うように、断面視で略三角状に形成される。
【００２５】
なお、３本のケーブルは、例えば、車輪のホイール内に内蔵されたインホイールモータに電力を供給するものであり、ケーブル用固定金具１は、例えば、インホイールモータから延びる３本のケーブルを車体に固定するために用いられる。
【００２６】
３本のケーブルとしては、中心導体と中心導体の周囲を覆う絶縁体とからなるものを用いてもよいし、さらにシールド用の外部導体を備えたもの（つまり同軸ケーブル）を用いてもよい。
【００２７】
固定金具本体２は、３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔５と、３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔６と、を有している。第１ケーブル挿入孔５は、断面視で略円形状のケーブルの外周に沿うように、断面視で略円形状に形成される。第２ケーブル挿入孔６は、断面視で略長円形状（２つの平行な直線と両直線の端部同士を接続する２つの円弧状の曲線とからなる形状）に形成される。両ケーブル挿入孔５，６は、その中心部が固定金具本体２の幅方向（図１（ａ）では右手前から左奥の方向）における中央部に整列するように形成される。
【００２８】
固定金具本体２は、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を分割するように２分割構成とされる。固定金具本体２を２分割したものを分割固定金具２ａ，２ｂと呼称する。本実施の形態では、固定金具本体２を幅方向における中央部にて２分割するようにした。固定金具本体２の分割方向は、図１（ａ）における右手前から左奥の方向となる。
【００２９】
取付フランジ部３は、固定金具本体２を２分割した分割固定金具２ａ，２ｂの第１ケーブル挿入孔５側の端部（図１（ａ）では右奥側の端部）から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせて形成される。取付フランジ部３には、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを貫通するように、固定用のボルト（図示せず）を通すための貫通孔７が複数個、形成される。この貫通孔７にボルトを通し、当該ボルトを取り付け対象の構造物（車体等）にナット等を用いて固定することにより、ケーブル用固定金具１が取り付け対象の構造物に固定される。
【００３０】
取付フランジ部３の取付面と反対側の面、換言すれば、ボルトを取り付けた際にボルトの頭部が位置する側の面（図１（ａ）では右手前の面）から、固定金具本体２に延びるように、変形防止用リブ８が形成されている。変形防止用リブ８は、取付フランジ部３の変形を防止するためのものであり、取付フランジ部３に対して垂直に延びるように形成される。
【００３１】
また、両分割固定金具２ａ，２ｂの第２ケーブル挿入孔６側の端部（図１（ａ）では左手前側の端部）には、該第２ケーブル挿入孔６側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部９ａ，９ｂがそれぞれ設けられる。ここでは、固定用フランジ部９ａ，９ｂは、取付フランジ部３と逆方向（図１（ａ）では右奥から左手前の方向）に延びるように形成される。固定用フランジ部９ａ，９ｂには、固定用フランジ部９ａ，９ｂを貫通するように、固定用のボルト（図示せず）を通すための貫通孔１０が複数個、形成される。
【００３２】
固定金具本体２は、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせてボルトで固定すると共に、両固定用フランジ部９ａ，９ｂを重ね合わせてボルトで固定することにより、両分割固定金具２ａ，２ｂを両端で固定し、一体とするように構成されている。取付フランジ部３（分割取付フランジ部３ａ，３ｂ）は、ケーブル用固定金具１を取り付け対象の構造物に固定する役割と、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体として固定する役割を兼ねている。
【００３３】
両分割固定金具２ａ，２ｂは、塊状の金属材料に削り加工を施すことにより形成される。なお、両分割固定金具２ａ，２ｂを、１枚の金属板をプレス加工により変形させて形成することも考えられるが、両分割固定金具２ａ，２ｂをプレス加工により精度よく形成することは困難であり、車両用に用いた際に振動によるケーブルの位置ずれの原因となるので、好ましくない。
【００３４】
ケーブル支持部材４は、２本のケーブルが固定される２つの挿入孔１１を有し、第２ケーブル挿入孔６と略同じ断面形状（略長円形状）に形成される。ケーブル支持部材４は、２つの挿入孔１１に２本のケーブルを固定した状態で、第２ケーブル挿入孔６に収容されて固定される。つまり、２本のケーブルは、ケーブル支持部材４を介して、固定金具本体２の第２ケーブル挿入孔６に固定される。
【００３５】
ケーブル支持部材４の断面視での大きさは、第２ケーブル挿入孔６の断面視での大きさよりも若干大きく形成されることが望ましい。これにより、ケーブル支持部材４を第２ケーブル挿入孔６に収容したときに、ケーブル支持部材４が固定金具本体２により圧迫されて、固定金具本体２に対してケーブル支持部材４をしっかりと固定することが可能になる。ケーブル支持部材４は、アルミニウムなどの金属、樹脂、あるいはゴムなどからなる。
【００３６】
本実施の形態に係るケーブル用固定金具１では、ケーブル支持部材４は、２つ挿入孔１１を分割するように、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向（図１（ａ）では左手前から右奥の方向）となるように２分割構成とされる。つまり、固定金具本体２の縦分割に対して、ケーブル支持部材４は横分割とされる。ここでは、ケーブル支持部材４を、長円形状の厚さが薄い方向（図１（ａ）では左手前から右奥の方向）における中央部にて２分割するようにした。ケーブル支持部材４を２分割したものを分割ケーブル支持部材４ａ，４ｂと呼称する。
【００３７】
ケーブル支持部材４は、その長さ（ケーブル長手方向に沿った長さ）が、固定金具本体２の長さ（ケーブル長手方向に沿った長さ）と略同じとなるように形成される。ケーブル支持部材４のケーブル長手方向における両端部には、ケーブル支持部材４の両端部を拡径したフランジ部１２が形成され、固定金具本体２の第２ケーブル挿入孔６の周縁には、ケーブル支持部材４のフランジ部１２を収容する収容凹部１３が形成される。これらフランジ部１２、収容凹部１３は、ケーブル支持部材４が固定金具本体２に対して、ケーブル長手方向に位置ずれしてしまうことを防ぐためのものである。
【００３８】
ケーブル用固定金具１に３本のケーブルを固定する際には、まず、３本のケーブルのうち２本のケーブルを分割ケーブル支持部材４ａ，４ｂで挟持し、ケーブル支持部材４の挿入孔１１に２本のケーブルを収容する。その後、一方の分割固定金具２ａ（または２ｂ）の第２ケーブル挿入孔６にケーブル支持部材４を収容すると共に、第１ケーブル挿入孔５に３本のケーブルのうち１本のケーブルを収容し、両分割固定金具２ａ，２ｂを重ね合わせて、ケーブル支持部材４を第２ケーブル挿入孔６に、１本のケーブルを第１ケーブル挿入孔５に挟持させる。その後、両固定用フランジ部９ａ，９ｂを重ね合わせてボルトで固定すると共に、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせた取付フランジ部３を、取り付け対象の構造物にボルトで固定する。
【００３９】
本実施の形態の作用を説明する。
【００４０】
本実施の形態に係るケーブル用固定金具１では、固定金具本体２を、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を分割するように２分割構成とし、ケーブル支持部材４を、２つの挿入孔１１を分割するように、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向となるように２分割構成としている。
【００４１】
ケーブル支持部材４の分割方向を、固定金具本体２の分割方向と垂直方向にすることで、ケーブル支持部材４の分割方向を固定金具本体２の分割方向と同じ方向とした場合と比較して、ケーブル支持部材４に支持される２本のケーブルに対して不必要なストレス（負荷）を与えないようにすることができる。
【００４２】
また、ケーブル用固定金具１では、２本のケーブルを、ケーブル支持部材４を介して固定金具本体２に固定しているので、２本のケーブルを固定金具本体２に対してしっかりと固定することができ、ケーブル用固定金具１を車両用に用いた場合であっても、振動によりケーブルの位置ずれが発生してしまうことを抑制できる。
【００４３】
さらに、ケーブル用固定金具１では、ケーブル支持部材４と固定金具本体２を２分割構成としているため、３本のケーブルをケーブル用固定金具１に固定する作業が容易となる。よって、ケーブルを配索する際の作業性を向上できる。
【００４４】
なお、ケーブル支持部材４を用いず、２本のケーブルを第２ケーブル挿入孔６に直接挟持させることも考えられるが、この場合、２本のケーブルに不必要なストレス（負荷）がかかって、２本のケーブルが過度に変形してしまうおそれがあり、当該変形によりケーブルが断線したり、ケーブルの電気的特性が悪化したりするおそれがある。
【００４５】
さらに、ケーブル支持部材４を用いず、固定金具本体２のみでケーブルを固定する場合、外力による固定金具本体２の変形、あるいは固定金具本体２の加工不良によりケーブルがしっかりと固定されないおそれが生じるが、本発明のケーブル用固定金具１によれば、ケーブル支持部材４により２本のケーブルをより強固に固定することができるため、外力による固定金具本体２の変形や、固定金具本体２の加工不良があった場合でも、形状を保持し、ケーブルをしっかりと固定できる。よって、信頼性を向上できる。さらに、本発明のケーブル用固定金具１では、削り加工により固定金具本体２を形成しているので、金属板を用いる場合と比較して、固定金具本体２が外力により変形しにくい。
【００４６】
また、ケーブル用固定金具１では、２本のケーブルを、ケーブル支持部材４を介して固定金具本体２に固定しているので、ケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる従来のケーブル用固定金具のように、ケーブルの周囲に隙間が形成されない。よって、ケーブルをしっかりと固定し、位置決めすることができる。また、従来のようにケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる作業が不要となるので、ケーブルの配索における作業性を向上できる。
【００４７】
さらに、ケーブル用固定金具１では、固定金具本体２を、断面視で三角状に配置した３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成するため、ケーブル用固定金具１全体を小型化し、ケーブル用固定金具１の部分における配索スペースを小さくすることができ、省スペース化に寄与する。また、ケーブル支持部材４が振動により回転してしまうこともないので、ケーブルをしっかりと固定し、位置決めすることができる。
【００４８】
さらにまた、ケーブル用固定金具１では、取付フランジ部３に変形防止用リブ８を形成しているため、取付フランジ部３の変形を防止することができる。
【００４９】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【００５０】
図２，３に示すケーブル用固定金具２１は、基本的に図１のケーブル用固定金具１と同じ構成であり、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂの形状が異なる。
【００５１】
ケーブル用固定金具２１では、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂは、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体とした際に、分割方向（図３（ａ）では左右方向）に沿って重なり合うように形成される。
【００５２】
より具体的には、図３（ａ）における左側の分割固定金具２ａに形成される固定用フランジ部２２ａは、分割固定金具２ａの第２ケーブル挿入孔６側の端部から分割固定金具２ｂに向かって固定金具本体２の分割方向（図３（ａ）では右方向）に沿って延びるように形成され、図３（ａ）における右側の分割固定金具２ｂに形成される固定用フランジ部２２ｂは、分割固定金具２ｂの第２ケーブル挿入孔６側の端部から分割固定金具２ａに向かって固定金具本体２の分割方向（図３（ａ）では左方向）に沿って延び、かつ、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体とした際に、固定用フランジ部２２ａの第２ケーブル挿入孔６と反対側の面に重なり合うように形成される。
【００５３】
また、固定用フランジ部２２ａの先端部には、板厚が薄い薄厚部２３が形成され、固定用フランジ部２２ｂの基端部には、平面視でコ字状に形成され、固定用フランジ部２２ａの薄厚部２３が収容される収容部２４が形成される。両固定用フランジ部２２ａ，２２ｂには、両固定用フランジ部２２ａ，２２ｂを貫通するように、固定用のボルト２５が螺合するネジ孔２６が形成される。
【００５４】
ケーブル用固定金具２１によれば、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂが固定金具本体２から突出しないので、ケーブル用固定金具２１全体をより小型化し、ケーブル用固定金具２１の部分における配索スペースをより小さくすることができる。
【００５５】
図４に示すケーブル用固定金具４１は、基本的に図２，３のケーブル用固定金具２１と同じ構成であり、固定金具本体２を２分割した一方（図示左側）の分割固定金具２ａにおいて、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を隔てる隔壁４２を、他方（図示右側）の分割固定金具２ｂよりも長くなるようにし、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を、他方の分割固定金具２ｂよりも深くなるようにしたものである。つまり、ケーブル用固定金具４１は、図２，３のケーブル用固定金具２１において、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６の間における分割位置を、幅方向中央部から図示右側にずらしたものである。
【００５６】
また、別の言い方をすれば、図１〜３に示すケーブル用固定金具１，２１は、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を隔てる隔壁であって、固定金具本体２を分割した際に露出する内側面Ｘ（分割固定金具２ａ，２ｂの内側面）が取付フランジ部３を分割した際に露出する内側面Ｙ（分割取付フランジ部３ａ，３ｂの内側面）と同一平面上に配置される場合を示したものであったが、図４に示すケーブル用固定金具４１は、反対に、同一平面上に配置されない場合を示したものである。
【００５７】
ケーブル用固定金具４１によれば、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６が深い方の分割固定金具２ａにケーブル支持部材４と１本のケーブルを嵌め合わせた状態で、両分割固定金具２ａ，２ｂを重ね合わせることができるので、ケーブル支持部材４と１本のケーブルを固定金具本体２に対して固定する際の作業を安定して行うことが可能となり、３本のケーブルをケーブル用固定金具４１に固定する作業がより容易となる。よって、ケーブルを配索する際の作業性をより向上できる。
【００５８】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００５９】
１ ケーブル用固定金具
２ 固定金具本体
２ａ，２ｂ 分割固定金具
３ 取付フランジ部
３ａ，３ｂ 分割取付フランジ部
４ ケーブル支持部材
４ａ，４ｂ 分割ケーブル支持部材
５ 第１ケーブル挿入孔
６ 第２ケーブル挿入孔
１１ 挿入孔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、３本のケーブルを車体等の構造物に固定するために用いられるケーブル用固定金具に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
３本のケーブルを配索する際、所定箇所でケーブルを固定する必要がある。この際に用いられるケーブル用固定金具としては、従来から様々なタイプが開発されている。
【０００３】
例えば、特許文献１〜３に示すようなタイプ、即ち、３本のケーブルを断面視で一直線状に配列する直線状タイプや、特許文献４に示すようなタイプ、即ち、３本のケーブルを断面視で三角状に配列する三角状タイプのケーブル用固定金具がある。
【０００４】
前者の直線状タイプのケーブル用固定金具では、ケーブルの配列方向に配索スペースが大きくなってしまうだけでなく、例えば、車体等に取り付ける際、ケーブルの配列方向における両端の２ヶ所に取付部を形成する必要があり、取付スペースが広くなってしまうという問題があった。
【０００５】
そこで、本出願人は、後者の三角状タイプのケーブル用固定金具に着眼し、検討を行った結果、当該三角状タイプのケーブル用固定金具は、車体等に取り付ける際、取付部を１ヶ所にすることができる点において、取付スペースの省スペース化を実現できるだけでなく、断面視で三角状というケーブルの配置が配索スペースの省スペース化の実現にも寄与している点において、有効だと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００７−２７６７３８号公報
【特許文献２】特開２００７−３１０５７号公報
【特許文献３】特開２００７−５３８８６号公報
【特許文献４】特開２００８−１４８４４６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、従来の三角状タイプのケーブル用固定金具として、特許文献４があるが、特許文献４のケーブル用固定金具には、以下の問題点があった。特に、車両用として用いる場合には、その問題は顕著であった。
【０００８】
特許文献４のケーブル用固定金具では、３本のケーブルの配置自体は三角状だが、支持金具やケーブル支持部材が円形状であるため、ケーブルを固定する部分であるケーブル用固定金具の部分における配索スペースが広く、省スペース化の観点で、改善の余地があった。
【０００９】
また、車両用のケーブル用固定金具では、振動が問題となるが、特許文献４のケーブル用固定金具では、支持金具に挟持されるケーブル支持部材が円形状であるため、振動により、支持金具に対してケーブル支持部材が回転する場合もあり、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【００１０】
さらに、特許文献４のケーブル用固定金具では、ケーブル支持部材のケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる構成であるため、ケーブル支持部材とケーブルとの間に隙間ができ、振動により、支持金具に対してケーブルがずれ易くなってしまい、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【００１１】
なお、ケーブルの位置決めがしっかりと為されていない場合、すなわち、ケーブル用固定金具に対してケーブルがしっかりと固定されていない場合、ケーブルに捻れが生じてしまい、ケーブルに不要な力が加わってケーブルが断線し易くなり、また、ケーブルの捻れにより配線レイアウトが意図したレイアウトから変わってしまい、ケーブルが周辺の部材に干渉するなどして不具合が生じるおそれがある。
【００１２】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ケーブルの配索において、省スペース化を実現することができ、また、ケーブルをしっかりと固定することが可能なケーブル用固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、前記３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔と、前記３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔と、を有する固定金具本体と、前記固定金具本体と一体に形成された取付フランジ部と、前記２本のケーブルが固定される２つの挿入孔を有し、該２つの挿入孔に前記２本のケーブルを固定し、かつ、前記第２ケーブル挿入孔に収容されて固定されるケーブル支持部材と、を備え、前記固定金具本体は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を分割するように２分割構成とされ、前記ケーブル支持部材は、前記２つの挿入孔を分割するように、かつ、その分割方向が前記固定金具本体の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされるケーブル用固定金具である。
【００１４】
前記固定金具本体を２分割した一方の分割固定金具は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を隔てる隔壁が、他方の分割固定金具よりも長くなるようにされ、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔が、他方の分割固定金具よりも深くなるようにされてもよい。
【００１５】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、該第２ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定されてもよい。
【００１６】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、前記両分割固定金具を一体とした際に、分割方向に沿って重なり合うように板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定されてもよい。
【００１７】
前記ケーブル支持部材の両端部には、前記ケーブル支持部材の両端部を拡径したフランジ部が形成され、前記固定金具本体には、前記ケーブル支持部材のフランジ部を収容する収容凹部が形成されてもよい。
【００１８】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、前記固定金具本体に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成されてもよい。
【発明の効果】
【００１９】
本発明によれば、ケーブルの配索において、省スペース化を実現することができ、また、ケーブルをしっかりと固定することが可能なケーブル用固定金具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【図２】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【図３】（ａ）は図２のケーブル用固定金具にボルトを取り付けた際の平面図であり、（ｂ）はその正面図、（ｃ）はその側面図、（ｄ）はその斜視図である。
【図４】本発明の一実施の形態に係るケーブル用固定金具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【００２２】
図１は、本実施の形態に係るケーブル用固定金具を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は分解斜視図である。
【００２３】
図１（ａ），（ｂ）に示すように、ケーブル用固定金具１は、固定金具本体２と、固定金具本体２と一体に形成された取付フランジ部３と、ケーブル支持部材４と、を備えている。
【００２４】
固定金具本体２、より詳しくは、固定金具本体２の外周形状は、断面視で三角状に配置された３本のケーブル（図示せず）の外周に沿うように、断面視で略三角状に形成される。
【００２５】
なお、３本のケーブルは、例えば、車輪のホイール内に内蔵されたインホイールモータに電力を供給するものであり、ケーブル用固定金具１は、例えば、インホイールモータから延びる３本のケーブルを車体に固定するために用いられる。
【００２６】
３本のケーブルとしては、中心導体と中心導体の周囲を覆う絶縁体とからなるものを用いてもよいし、さらにシールド用の外部導体を備えたもの（つまり同軸ケーブル）を用いてもよい。
【００２７】
固定金具本体２は、３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔５と、３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔６と、を有している。第１ケーブル挿入孔５は、断面視で略円形状のケーブルの外周に沿うように、断面視で略円形状に形成される。第２ケーブル挿入孔６は、断面視で略長円形状（２つの平行な直線と両直線の端部同士を接続する２つの円弧状の曲線とからなる形状）に形成される。両ケーブル挿入孔５，６は、その中心部が固定金具本体２の幅方向（図１（ａ）では右手前から左奥の方向）における中央部に整列するように形成される。
【００２８】
固定金具本体２は、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を分割するように２分割構成とされる。固定金具本体２を２分割したものを分割固定金具２ａ，２ｂと呼称する。本実施の形態では、固定金具本体２を幅方向における中央部にて２分割するようにした。固定金具本体２の分割方向は、図１（ａ）における右手前から左奥の方向となる。
【００２９】
取付フランジ部３は、固定金具本体２を２分割した分割固定金具２ａ，２ｂの第１ケーブル挿入孔５側の端部（図１（ａ）では右奥側の端部）から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせて形成される。取付フランジ部３には、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを貫通するように、固定用のボルト（図示せず）を通すための貫通孔７が複数個、形成される。この貫通孔７にボルトを通し、当該ボルトを取り付け対象の構造物（車体等）にナット等を用いて固定することにより、ケーブル用固定金具１が取り付け対象の構造物に固定される。
【００３０】
取付フランジ部３の取付面と反対側の面、換言すれば、ボルトを取り付けた際にボルトの頭部が位置する側の面（図１（ａ）では右手前の面）から、固定金具本体２に延びるように、変形防止用リブ８が形成されている。変形防止用リブ８は、取付フランジ部３の変形を防止するためのものであり、取付フランジ部３に対して垂直に延びるように形成される。
【００３１】
また、両分割固定金具２ａ，２ｂの第２ケーブル挿入孔６側の端部（図１（ａ）では左手前側の端部）には、該第２ケーブル挿入孔６側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部９ａ，９ｂがそれぞれ設けられる。ここでは、固定用フランジ部９ａ，９ｂは、取付フランジ部３と逆方向（図１（ａ）では右奥から左手前の方向）に延びるように形成される。固定用フランジ部９ａ，９ｂには、固定用フランジ部９ａ，９ｂを貫通するように、固定用のボルト（図示せず）を通すための貫通孔１０が複数個、形成される。
【００３２】
固定金具本体２は、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせてボルトで固定すると共に、両固定用フランジ部９ａ，９ｂを重ね合わせてボルトで固定することにより、両分割固定金具２ａ，２ｂを両端で固定し、一体とするように構成されている。取付フランジ部３（分割取付フランジ部３ａ，３ｂ）は、ケーブル用固定金具１を取り付け対象の構造物に固定する役割と、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体として固定する役割を兼ねている。
【００３３】
両分割固定金具２ａ，２ｂは、塊状の金属材料に削り加工を施すことにより形成される。なお、両分割固定金具２ａ，２ｂを、１枚の金属板をプレス加工により変形させて形成することも考えられるが、両分割固定金具２ａ，２ｂをプレス加工により精度よく形成することは困難であり、車両用に用いた際に振動によるケーブルの位置ずれの原因となるので、好ましくない。
【００３４】
ケーブル支持部材４は、２本のケーブルが固定される２つの挿入孔１１を有し、第２ケーブル挿入孔６と略同じ断面形状（略長円形状）に形成される。ケーブル支持部材４は、２つの挿入孔１１に２本のケーブルを固定した状態で、第２ケーブル挿入孔６に収容されて固定される。つまり、２本のケーブルは、ケーブル支持部材４を介して、固定金具本体２の第２ケーブル挿入孔６に固定される。
【００３５】
ケーブル支持部材４の断面視での大きさは、第２ケーブル挿入孔６の断面視での大きさよりも若干大きく形成されることが望ましい。これにより、ケーブル支持部材４を第２ケーブル挿入孔６に収容したときに、ケーブル支持部材４が固定金具本体２により圧迫されて、固定金具本体２に対してケーブル支持部材４をしっかりと固定することが可能になる。ケーブル支持部材４は、アルミニウムなどの金属、樹脂、あるいはゴムなどからなる。
【００３６】
本実施の形態に係るケーブル用固定金具１では、ケーブル支持部材４は、２つ挿入孔１１を分割するように、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向（図１（ａ）では左手前から右奥の方向）となるように２分割構成とされる。つまり、固定金具本体２の縦分割に対して、ケーブル支持部材４は横分割とされる。ここでは、ケーブル支持部材４を、長円形状の厚さが薄い方向（図１（ａ）では左手前から右奥の方向）における中央部にて２分割するようにした。ケーブル支持部材４を２分割したものを分割ケーブル支持部材４ａ，４ｂと呼称する。
【００３７】
ケーブル支持部材４は、その長さ（ケーブル長手方向に沿った長さ）が、固定金具本体２の長さ（ケーブル長手方向に沿った長さ）と略同じとなるように形成される。ケーブル支持部材４のケーブル長手方向における両端部には、ケーブル支持部材４の両端部を拡径したフランジ部１２が形成され、固定金具本体２の第２ケーブル挿入孔６の周縁には、ケーブル支持部材４のフランジ部１２を収容する収容凹部１３が形成される。これらフランジ部１２、収容凹部１３は、ケーブル支持部材４が固定金具本体２に対して、ケーブル長手方向に位置ずれしてしまうことを防ぐためのものである。
【００３８】
ケーブル用固定金具１に３本のケーブルを固定する際には、まず、３本のケーブルのうち２本のケーブルを分割ケーブル支持部材４ａ，４ｂで挟持し、ケーブル支持部材４の挿入孔１１に２本のケーブルを収容する。その後、一方の分割固定金具２ａ（または２ｂ）の第２ケーブル挿入孔６にケーブル支持部材４を収容すると共に、第１ケーブル挿入孔５に３本のケーブルのうち１本のケーブルを収容し、両分割固定金具２ａ，２ｂを重ね合わせて、ケーブル支持部材４を第２ケーブル挿入孔６に、１本のケーブルを第１ケーブル挿入孔５に挟持させる。その後、両固定用フランジ部９ａ，９ｂを重ね合わせてボルトで固定すると共に、両分割取付フランジ部３ａ，３ｂを重ね合わせた取付フランジ部３を、取り付け対象の構造物にボルトで固定する。
【００３９】
本実施の形態の作用を説明する。
【００４０】
本実施の形態に係るケーブル用固定金具１では、固定金具本体２を、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を分割するように２分割構成とし、ケーブル支持部材４を、２つの挿入孔１１を分割するように、かつ、その分割方向が固定金具本体２の分割方向と垂直方向となるように２分割構成としている。
【００４１】
ケーブル支持部材４の分割方向を、固定金具本体２の分割方向と垂直方向にすることで、ケーブル支持部材４の分割方向を固定金具本体２の分割方向と同じ方向とした場合と比較して、ケーブル支持部材４に支持される２本のケーブルに対して不必要なストレス（負荷）を与えないようにすることができる。
【００４２】
また、ケーブル用固定金具１では、２本のケーブルを、ケーブル支持部材４を介して固定金具本体２に固定しているので、２本のケーブルを固定金具本体２に対してしっかりと固定することができ、ケーブル用固定金具１を車両用に用いた場合であっても、振動によりケーブルの位置ずれが発生してしまうことを抑制できる。
【００４３】
さらに、ケーブル用固定金具１では、ケーブル支持部材４と固定金具本体２を２分割構成としているため、３本のケーブルをケーブル用固定金具１に固定する作業が容易となる。よって、ケーブルを配索する際の作業性を向上できる。
【００４４】
なお、ケーブル支持部材４を用いず、２本のケーブルを第２ケーブル挿入孔６に直接挟持させることも考えられるが、この場合、２本のケーブルに不必要なストレス（負荷）がかかって、２本のケーブルが過度に変形してしまうおそれがあり、当該変形によりケーブルが断線したり、ケーブルの電気的特性が悪化したりするおそれがある。
【００４５】
さらに、ケーブル支持部材４を用いず、固定金具本体２のみでケーブルを固定する場合、外力による固定金具本体２の変形、あるいは固定金具本体２の加工不良によりケーブルがしっかりと固定されないおそれが生じるが、本発明のケーブル用固定金具１によれば、ケーブル支持部材４により２本のケーブルをより強固に固定することができるため、外力による固定金具本体２の変形や、固定金具本体２の加工不良があった場合でも、形状を保持し、ケーブルをしっかりと固定できる。よって、信頼性を向上できる。さらに、本発明のケーブル用固定金具１では、削り加工により固定金具本体２を形成しているので、金属板を用いる場合と比較して、固定金具本体２が外力により変形しにくい。
【００４６】
また、ケーブル用固定金具１では、２本のケーブルを、ケーブル支持部材４を介して固定金具本体２に固定しているので、ケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる従来のケーブル用固定金具のように、ケーブルの周囲に隙間が形成されない。よって、ケーブルをしっかりと固定し、位置決めすることができる。また、従来のようにケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる作業が不要となるので、ケーブルの配索における作業性を向上できる。
【００４７】
さらに、ケーブル用固定金具１では、固定金具本体２を、断面視で三角状に配置した３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成するため、ケーブル用固定金具１全体を小型化し、ケーブル用固定金具１の部分における配索スペースを小さくすることができ、省スペース化に寄与する。また、ケーブル支持部材４が振動により回転してしまうこともないので、ケーブルをしっかりと固定し、位置決めすることができる。
【００４８】
さらにまた、ケーブル用固定金具１では、取付フランジ部３に変形防止用リブ８を形成しているため、取付フランジ部３の変形を防止することができる。
【００４９】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【００５０】
図２，３に示すケーブル用固定金具２１は、基本的に図１のケーブル用固定金具１と同じ構成であり、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂの形状が異なる。
【００５１】
ケーブル用固定金具２１では、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂは、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体とした際に、分割方向（図３（ａ）では左右方向）に沿って重なり合うように形成される。
【００５２】
より具体的には、図３（ａ）における左側の分割固定金具２ａに形成される固定用フランジ部２２ａは、分割固定金具２ａの第２ケーブル挿入孔６側の端部から分割固定金具２ｂに向かって固定金具本体２の分割方向（図３（ａ）では右方向）に沿って延びるように形成され、図３（ａ）における右側の分割固定金具２ｂに形成される固定用フランジ部２２ｂは、分割固定金具２ｂの第２ケーブル挿入孔６側の端部から分割固定金具２ａに向かって固定金具本体２の分割方向（図３（ａ）では左方向）に沿って延び、かつ、両分割固定金具２ａ，２ｂを一体とした際に、固定用フランジ部２２ａの第２ケーブル挿入孔６と反対側の面に重なり合うように形成される。
【００５３】
また、固定用フランジ部２２ａの先端部には、板厚が薄い薄厚部２３が形成され、固定用フランジ部２２ｂの基端部には、平面視でコ字状に形成され、固定用フランジ部２２ａの薄厚部２３が収容される収容部２４が形成される。両固定用フランジ部２２ａ，２２ｂには、両固定用フランジ部２２ａ，２２ｂを貫通するように、固定用のボルト２５が螺合するネジ孔２６が形成される。
【００５４】
ケーブル用固定金具２１によれば、固定用フランジ部２２ａ，２２ｂが固定金具本体２から突出しないので、ケーブル用固定金具２１全体をより小型化し、ケーブル用固定金具２１の部分における配索スペースをより小さくすることができる。
【００５５】
図４に示すケーブル用固定金具４１は、基本的に図２，３のケーブル用固定金具２１と同じ構成であり、固定金具本体２を２分割した一方（図示左側）の分割固定金具２ａにおいて、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を隔てる隔壁４２を、他方（図示右側）の分割固定金具２ｂよりも長くなるようにし、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を、他方の分割固定金具２ｂよりも深くなるようにしたものである。つまり、ケーブル用固定金具４１は、図２，３のケーブル用固定金具２１において、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６の間における分割位置を、幅方向中央部から図示右側にずらしたものである。
【００５６】
また、別の言い方をすれば、図１〜３に示すケーブル用固定金具１，２１は、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６を隔てる隔壁であって、固定金具本体２を分割した際に露出する内側面Ｘ（分割固定金具２ａ，２ｂの内側面）が取付フランジ部３を分割した際に露出する内側面Ｙ（分割取付フランジ部３ａ，３ｂの内側面）と同一平面上に配置される場合を示したものであったが、図４に示すケーブル用固定金具４１は、反対に、同一平面上に配置されない場合を示したものである。
【００５７】
ケーブル用固定金具４１によれば、第１ケーブル挿入孔５と第２ケーブル挿入孔６が深い方の分割固定金具２ａにケーブル支持部材４と１本のケーブルを嵌め合わせた状態で、両分割固定金具２ａ，２ｂを重ね合わせることができるので、ケーブル支持部材４と１本のケーブルを固定金具本体２に対して固定する際の作業を安定して行うことが可能となり、３本のケーブルをケーブル用固定金具４１に固定する作業がより容易となる。よって、ケーブルを配索する際の作業性をより向上できる。
【００５８】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００５９】
１ ケーブル用固定金具
２ 固定金具本体
２ａ，２ｂ 分割固定金具
３ 取付フランジ部
３ａ，３ｂ 分割取付フランジ部
４ ケーブル支持部材
４ａ，４ｂ 分割ケーブル支持部材
５ 第１ケーブル挿入孔
６ 第２ケーブル挿入孔
１１ 挿入孔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、前記３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔と、前記３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔と、を有する固定金具本体と、
前記固定金具本体と一体に形成された取付フランジ部と、
前記２本のケーブルが固定される２つの挿入孔を有し、該２つの挿入孔に前記２本のケーブルを固定し、かつ、前記第２ケーブル挿入孔に収容されて固定されるケーブル支持部材と、
を備え、
前記固定金具本体は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を分割するように２分割構成とされ、
前記ケーブル支持部材は、前記２つの挿入孔を分割するように、かつ、その分割方向が前記固定金具本体の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされる
ことを特徴とするケーブル用固定金具。
【請求項２】
前記固定金具本体を２分割した一方の分割固定金具は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を隔てる隔壁が、他方の分割固定金具よりも長くなるようにされ、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔が、他方の分割固定金具よりも深くなるようにされる
請求項１記載のケーブル用固定金具。
【請求項３】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、
前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、該第２ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、
前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定される
請求項１または２記載のケーブル用固定金具。
【請求項４】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、
前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、前記両分割固定金具を一体とした際に、分割方向に沿って重なり合うように板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、
前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定される
請求項１または２記載のケーブル用固定金具。
【請求項５】
前記ケーブル支持部材の両端部には、前記ケーブル支持部材の両端部を拡径したフランジ部が形成され、
前記固定金具本体には、前記ケーブル支持部材のフランジ部を収容する収容凹部が形成される
請求項１〜４いずれかに記載のケーブル用固定金具。
【請求項６】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、前記固定金具本体に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成される
請求項１〜５いずれかに記載のケーブル用固定金具。
【請求項１】
断面視で三角状に配置された３本のケーブルの外周に沿うように三角状に形成され、前記３本のケーブルのうち１本のケーブルが固定される第１ケーブル挿入孔と、前記３本のケーブルのうち２本のケーブルが固定される第２ケーブル挿入孔と、を有する固定金具本体と、
前記固定金具本体と一体に形成された取付フランジ部と、
前記２本のケーブルが固定される２つの挿入孔を有し、該２つの挿入孔に前記２本のケーブルを固定し、かつ、前記第２ケーブル挿入孔に収容されて固定されるケーブル支持部材と、
を備え、
前記固定金具本体は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を分割するように２分割構成とされ、
前記ケーブル支持部材は、前記２つの挿入孔を分割するように、かつ、その分割方向が前記固定金具本体の分割方向と垂直方向となるように２分割構成とされる
ことを特徴とするケーブル用固定金具。
【請求項２】
前記固定金具本体を２分割した一方の分割固定金具は、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔を隔てる隔壁が、他方の分割固定金具よりも長くなるようにされ、前記第１ケーブル挿入孔と前記第２ケーブル挿入孔が、他方の分割固定金具よりも深くなるようにされる
請求項１記載のケーブル用固定金具。
【請求項３】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、
前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、該第２ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びる板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、
前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定される
請求項１または２記載のケーブル用固定金具。
【請求項４】
前記取付フランジ部は、前記固定金具本体を２分割した分割固定金具の前記第１ケーブル挿入孔側の端部から外方に延びるようにそれぞれ設けられた板状の分割取付フランジ部を重ね合わせて形成され、
前記両分割固定金具の前記第２ケーブル挿入孔側の端部には、前記両分割固定金具を一体とした際に、分割方向に沿って重なり合うように板状の固定用フランジ部がそれぞれ設けられ、
前記両分割取付フランジ部を重ね合わせて固定すると共に、前記両固定用フランジ部を重ね合わせて固定することにより、前記両分割固定金具が一体に固定される
請求項１または２記載のケーブル用固定金具。
【請求項５】
前記ケーブル支持部材の両端部には、前記ケーブル支持部材の両端部を拡径したフランジ部が形成され、
前記固定金具本体には、前記ケーブル支持部材のフランジ部を収容する収容凹部が形成される
請求項１〜４いずれかに記載のケーブル用固定金具。
【請求項６】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、前記固定金具本体に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成される
請求項１〜５いずれかに記載のケーブル用固定金具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１２−１００４７０（Ｐ２０１２−１００４７０Ａ）
【公開日】平成２４年５月２４日（２０１２．５．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２４７４１６（Ｐ２０１０−２４７４１６）
【出願日】平成２２年１１月４日（２０１０．１１．４）
【出願人】（０００００５１２０）日立電線株式会社 (3,358)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年５月２４日（２０１２．５．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１１月４日（２０１０．１１．４）
【出願人】（０００００５１２０）日立電線株式会社 (3,358)
【Ｆターム（参考）】
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