説明

ゲルマニウム−ゼオライト触媒を用いた軽質ナフサのオクタン価の増加

本発明は、ゲルマニウム含有ゼオライト触媒を用いて、主にパラフィン量を有するナフサ炭化水素供給物のオクタン価を増加させるためのプロセスに関する。触媒は、その上に貴金属、例えば白金が堆積されている非酸性ゲルマニウムゼオライトである。ゼオライト構造は、MTW、MWW、MEL、TON、MRE、FER、MFI、BEA、MOR、LTLまたはMTTであってもよい。ゼオライトはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばセシウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、バリウム、カルシウム、マグネシウムおよびそれらの混合物と塩基交換され、酸性を減少させることにより非酸性とされる。触媒は耐硫黄性である。炭化水素供給物は1000ppmまでの硫黄を含んでもよい。本発明は、主にナフテン類およびパラフィン類である供給流に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶フレームワーク中にゲルマニウムを有し、およびゼオライト上に堆積された貴金属を有する塩基交換ゼオライト、例えばPt/CsGeZSM−5を用いた、主にパラフィン量を有するナフサ炭化水素供給物のオクタン価を増加させるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ナフサは、主に直鎖、分枝および環状脂肪族炭化水素、1分子あたり5から9個の炭素原子を有する軽質ナフサおよび1分子あたり7から9個の炭素を有する重質ナフサの混合物である。典型的には、軽質ナフサは、ナフテン類、例えばシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタン、ならびに線状および分枝パラフィン類、例えばヘキサンおよびペンタンを含む。軽質ナフサは、典型的には60重量%から99重量%のパラフィン類およびシクロパラフィン類を含む。軽質ナフサは、70−150g/molの分子量範囲、0.6−0.9g/cm3の比重範囲、50−320°Fの沸点範囲および室温で5から500mmHg(torr)の蒸気圧を有する石油蒸留物として特徴づけることができる。軽質ナフサは、原油、天然ガスコンデンセートまたは他の炭化水素流から様々なプロセス、例えば蒸留により得ることができる。
【0003】
液体炭化水素のオクタン価は、標準(火花点火内燃)エンジンで燃やした場合の発火性の評価基準である。この数が高いほど、炭化水素が「ノッキング」(燃焼室内でのその早すぎる燃焼により引き起こされる爆発)を受けにくくなる。オクタン価は、燃料と同じアンチノック特性を有する HYPERLINK "http://en.wiktionary.org/wiki/isooctane" \o "isooctane" イソオクタンおよびn−ヘプタンの混合物を表し、すなわち、92のオクタン価を有する炭化水素は、92%イソオクタンよび8%n−ヘプタンの混合物と同じノックを有する。オクタン価はしばしば、標準試験、例えばASTM2699またはASTM2700により決定される。一般に、オクタン価は、炭化水素の線状パラフィン量を減少させることにより増加される。
【0004】
炭化水素の線状パラフィン量を減少させる1つの手段は、パラフィン類を主に線状から主に分枝へ異性化させることによる。米国特許第7,414,007号は、より高オクタンの炭化水素を得るための、パラフィン原料の異性化のための触媒およびプロセスを開示する。触媒はIVB族金属(ジルコニウム、チタンまたはハフニウム)の酸化物または水酸化物担体であり、これはタングステン化合物を用いた処理によりタングステン化されて強酸を形成し、この上にリン化合物および白金化合物が堆積されている。触媒は、線状パラフィン類をイソパラフィン類に変換する異性化プロセスにおいて使用される。
【0005】
炭化水素の線状パラフィン量を減少させる別の手段は、選択吸着による。米国特許第7,037,422号は、C5およびC6パラフィン類の異性体の混合物の炭化水素供給物流をCFIゼオライト、例えばCIT−5と、吸着ゾーンで接触させ、よって、C5およびC6パラフィン類の分枝異性体を直鎖異性体に比べて選択的に吸着させ、ナフサ生成物を吸着ゾーンから回収することにより、高RON(リサーチ法オクタン価、ASTM C2699)ナフサを生成するためのプロセスを開示する。ある炭素数では、最も短く、最も分枝した異性体が最も高いオクタン価を有する傾向があるので、炭化水素中のこれらの高オクタン異性体の比率が増加すると、炭化水素全体のオクタン価が増加する。CFIゼオライトはまた、n−C5およびn−C6を分枝異性体に選択的に異性化するヒドロ異性化触媒となり得る。CFIゼオライトは、ヒドロ異性化のために活性な金属、例えば白金、パラジウム、イリジウムまたは白金とパラジウムの混合物を含んでもよい。米国特許第7,029,572号は、ATCゼオライト、例えばSSZ−55を使用する同様のプロセスを開示する。
【0006】
炭化水素のパラフィン量を減少させる別の手段は、パラフィン類を芳香族類に芳香族化することによる。米国特許第6,083,379号は、炭化水素を芳香族化することにより、脱硫し、オクタン価を増加させるプロセスを開示する。触媒は活性促進剤、例えばIA、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、IIB、IIIB、IVB、VB、VIBまたはVIII族の金属または金属酸化物を有するゼオライト、例えばZSM−5である。
【0007】
米国特許第6,245,219号は、少なくとも約25wt%のC5からC9の脂肪族および脂環式炭化水素を含むナフサ含有炭化水素供給流を、ZSM−5の触媒および脱水素金属、例えばガリウム、亜鉛、インジウム、鉄、スズまたはホウ素を用いて改質するためのプロセスを開示し、前記触媒は、表面酸性部位の50%−90%を中和するのに十分なIIA族アルカリ土類金属、例えばバリウム、または有機ケイ素化合物により修飾される。n−パラフィン類の芳香族類への芳香族化により、得られた生成物のオクタン価がより高くなる。
【0008】
米国特許第6,177,374号は、天然ガスコンデンセート(NGC)および軽質ナフサから、高オクタン芳香族類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン類を生成するために使用されるケイ素、亜鉛およびアルミニウムの酸化物の触媒を開示する。触媒は、M2/nO、xAl23、ySiO2、zZnOとして表され、ここで、Mはプロトンおよび/または金属カチオンであり、nはカチオンの価数であり、ならびにx、yおよびzはAl23、SiO2およびZnOのモル数であり、y/x(SiO2/ZnOモル比)は、5から1000の範囲の数である。
【0009】
米国特許第5,510,016号は、オクタン価を減少させる水素処理工程、続いて失われたオクタンを回復するための、自己結合またはバインダなしのゼオライトによる処理によりガソリン中の分解留分を接触脱硫するためのプロセスを開示する。軽質ナフサは一般に、改質なしに、より高いオクタン価を提供しない。触媒改質は、パラフィン類およびシクロパラフィン類の一部を芳香族類に変換することによりオクタン価を増加させることができるが、白金型改質触媒は一般に、耐硫黄性ではない。水素処理による脱硫は、供給物のオクタン価を低下させ、これは、低オクタン価パラフィン類をより高オクタン価の生成物に変換することにより、例えば、重質パラフィン類のより軽質のパラフィン類への選択分解、低オクタンパラフィン類の分解、オレフィン類の生成、高オクタン成分を得るための開環ならびにパラフィン類のアルキルベンゼン類への脱水素環化および芳香族化により回復される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,414,007号明細書
【特許文献2】米国特許第7,037,422号明細書
【特許文献3】米国特許第7,029,572号明細書
【特許文献4】米国特許第6,083,379号明細書
【特許文献5】米国特許第6,245,219号明細書
【特許文献6】米国特許第6,177,374号明細書
【特許文献7】米国特許第5,510,016号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
主にパラフィン量を有するナフサ炭化水素供給物のオクタン価を増加させるための耐硫黄性触媒を有することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
主にパラフィン量を有するナフサ炭化水素供給物のオクタン価は、炭化水素供給物を、非酸性ゲルマニウムゼオライトを含み、その上に貴金属、例えば白金が堆積されている触媒と接触させることにより増加される。ゼオライトは非酸性である。ゼオライト構造の例は、MTW、FER、MEL、TON、MRE、MWW、MFI、BEA、MOR、LTLまたはMTTである。本発明の1つの実施形態では、ゼオライトはMFI構造を有する。「ZSM−5」という用語は、この明細書では、MFI構造を有するゼオライトを意味するように使用される。ゼオライトは、ゼオライト構造の結晶フレームワーク中にケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを有する。触媒の一例は、塩基交換され、非酸性となり、その上には白金が堆積されている、フレームワーク中にゲルマニウムを有するアルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、Pt/CsGeZSM−5である。この触媒は、炭化水素供給物中1000ppmのレベルまで、耐硫黄性である。
【0013】
炭化水素供給物のオクタン価を増加させるためのプロセスは、a)同時に、n−パラフィン類をイソパラフィン類に異性化し、イソパラフィン類をより高度に分枝したイソパラフィン類にさらに異性化し、n−パラフィン類をより小さなn−イソパラフィン類に分解し、n−およびイソパラフィン類の両方を脱水素化し、n−パラフィン類を芳香族類に脱水素環化するための条件で、C6−C8アルカン類を有するナフサを含む炭化水素供給物を、ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを含む、その上に貴金属が堆積されている非酸性中細孔または大細孔ゼオライトを含む触媒と接触させる工程と、b)炭化水素生成物を回収する工程と、を含む。ナフサ供給物は、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%のC6−C8量を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ゼオライトは結晶フレームワーク中にアルミニウムおよびケイ素以外の元素を含み得る結晶水和アルミノケイ酸塩(crystalline hydrated aluminosilicate)である。「ゼオライト」という用語は、アルミノケイ酸塩だけでなく、アルミニウムが他の三価元素により置換された物質、およびケイ素が他の四価元素により置換された物質を含む。一般に、ゼオライトはTO4四面体の構造を有し、これは酸素原子を共有することにより三次元ネットワークを形成し、Tが四価元素、例えばケイ素、および三価元素、例えばアルミニウムを表す。ゼオライトは、異性化、トルエン不均化、トランスアルキル化、水素化ならびにアルカンオリゴマ化および芳香族化のための公知の触媒である。いくつかのゼオライト触媒、とりわけVIII族堆積金属を含むものは硫黄被毒を受けやすい。
【0015】
その上に貴金属が堆積されているゲルマニウムゼオライト(Ge−ゼオライト)の触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と塩基交換さされ、酸性が減少される。塩基置換は、貴金属が堆積される前または後で起きてもよい。触媒は芳香族抽出および他の精製または化学プロセス由来の天然ガスコンデンセート(condensate)、軽質ナフサまたはラフィネートのオクタン価を増加するために使用され、ただし、コンデンセート、ナフサまたはラフィネートが顕著なパラフィン量を有することを条件とする。
【0016】
ゼオライトのケイ素対アルミニウム原子比(Si:Al2)は40−∞である。一例は、本発明を制限しないが、40から500の範囲のSi:Al2原子比である。別の例は、本発明を制限しないが、50から150の範囲のSi:Al2原子比である。
【0017】
本発明のゼオライトは、中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトである。本明細書では、「中細孔(medium pore)」という用語は、平均細孔サイズが約5から約7オングストロームの範囲内にあることを意味すると解釈されるべきである。本明細書では、「大細孔(large pore)」という用語は、平均細孔サイズが約7から約10オングストロームの範囲内にあることを意味すると解釈されるべきである。これらの範囲は重なる可能性があり、特定のゼオライトは、中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトのいずれかと見なされることがあり得る。約5オングストローム未満の平均細孔サイズを有するゼオライト、すなわち、「小細孔」ゼオライトは、中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトのいずれかと見なされることはないであろう。小細孔ゼオライトは、その細孔およびチャネル内での所望の芳香族生成物、例えば、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエンおよびキシレン類の分子の分子拡散を可能にしない。いくつかのゼオライトは異なるサイズの2つの別々のチャネルを有し、例えば、MORは7.0x6.5オングストロームの12環チャネルならびに<5オングストロームである8環チャネルを有する。中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトに対する上記範囲内にある少なくとも1つのチャネルを有する多チャネルゼオライトは、本発明に有用なゼオライトの範囲内にあると考えられる。中細孔ゼオライトおよび大細孔ゼオライトの例は、本発明を制限しないが、MFI、BEA、LTL、MORおよびMTTである。
【0018】
ゼオライトのゲルマニウム量は、1.0重量%から10.0重量%の範囲である。ゼオライトのゲルマニウム量の1つの例は3.5重量%から6.0重量%である。
【0019】
貴金属は、金属をゼオライト上で堆積させる任意の公知の方法によりゼオライト上に堆積させる。金属をゼオライト上に堆積させる典型的な方法は、イオン交換および含浸である。貴金属の堆積により、貴金属は、ゼオライトの表面だけでなく、ゼオライトの細孔およびチャネル中に存在することになる。本発明の1つの例では、貴金属は触媒中に、0.05重量%から3重量%の範囲で存在する。本発明の別の例では、貴金属は、0.2重量%から2重量%である。別の例では、貴金属は0.2から1.5重量%である。貴金属の例は、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウムおよびそれらの組み合わせである。
【0020】
本発明のゼオライトは非酸性(non−acidic)である。本明細書では、「非酸性」という用語の1つの意味は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばセシウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムおよびそれらの混合物と塩基交換され、酸性が減少されたゼオライトを意味すると解釈されるべきである。塩基置換は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が反応混合物の一成分として添加された、ゼオライトの合成中に起こる可能性があり、または貴金属の堆積前、後またはこれと同時に結晶ゼオライトを用いて起こる可能性がある。ゼオライトはアルミニウムと関連するカチオンのほとんどまたは全てがアルカリ金属またはアルカリ土類金属でとなる程度まで塩基交換される。塩基置換後のゼオライトにおける一価塩基:アルミニウムモル比の一例は、少なくとも約0.9である。本発明の1つの実施形態では、セシウムがアルカリ金属であり、アルミニウムに対して約1から約2の範囲のモル比で存在する。
【0021】
本発明内での「非酸性」の別の意味は、アルミニウムを含まないゼオライトである。アルミニウムを含まないゼオライトは、非酸性とするのに塩基交換しなくてもよい。アルミニウムを含まないゼオライトは別の四価または三価元素、例えばチタン、鉄、ガリウム、ホウ素、ゲルマニウムまたはスズを含んでもよい。「アルミニウムを含まない」は、0.4wt%以下のアルミニウム量を有するという意味を有する。その意味の範囲内で、本発明のために、ゼオライトは塩基との置換により、または低アルミニウム量を有することにより、「非酸性」とされ得る。
【0022】
ゼオライトは、当技術分野で知られている促進剤または修飾剤を含んでもよい。これらの促進剤または修飾剤は触媒的有効量、例えば、約0.1重量%から約1.0重量%で存在する。促進剤または修飾剤の例は、レニウム、イリジウム、パラジウムおよびスズである。
【0023】
触媒は、触媒の物理特性を変化させるために、材料、例えば金属酸化物;混合金属酸化物、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、トリウム、ケイ素またはそれらの混合物の酸化物;粘土、例えば、カオリンまたはモンモリロナイト;炭素、例えば、炭素ブラック、グラファイト、活性炭、ポリマ類または木炭;金属炭化物または窒化物、例えば、炭化モリブデン、炭化ケイ素または窒化タングステン;ゼオライト類;金属酸化物水酸化物、例えば、ベーマイト上に担持させてもよく、またはそれらと結合させてもよい。
【0024】
炭化水素供給物(hydrocarbon feed)は1000ppmまでの硫黄を含んでもよい。本発明の1つの実施形態では、炭化水素供給物は約1ppmから約500ppmの硫黄を含む。本発明の別の実施形態では、炭化水素供給物は約10ppmから約100ppmの硫黄を含む。
【0025】
ゼオライト触媒を使用する炭化水素変換プロセスの1つの特定の例は、2008年10月16日に公開された米国特許出願公開第2008/0255398号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、アルカン類の芳香族類への、例えば、C6+アルカン類の芳香族類、主にベンゼン、トルエンおよびキシレン類への脱水素環化である。脱水素環化プロセスは環化を促進し、環をそれらの個々の芳香族類まで脱水素化する。
【0026】
米国特許第6,784,333号(参照により本明細書に組み込まれる)は、その上に白金が堆積されているアルミニウム−ケイ素ゲルマニウムゼオライトの触媒を開示する。触媒は、アルカン類の芳香族化、特定的には、低級アルカン類、例えばプロパンの芳香族化において使用することができる。触媒は、ゲルマニウムが結晶フレームワーク中に組み入れられているMFIゼオライト、すなわち、Pt/Ge−ZSM−5であってもよい。触媒は芳香族化プロセス前または中に硫化されてもよい。
【0027】
IUPAC勧告に従い、本発明のための触媒の一例は下記として表される:
(Cs+2Pt0.37([Si105Ge4Al2222]−MFI
【0028】
本発明は、比較的低いオクタン価を有する炭化水素を比較的高いオクタン価を有する炭化水素に変換するいくつかの反応機構によりオクタン価を増加させる。これらの反応機構の非化学量論的例を以下に示す。1つの例はn−パラフィン類 のイソパラフィン類への異性化であり、例えば下記である。
【化1】

【0029】
別の例は、イソパラフィン類をより高度に分枝したイソパラフィン類にさらに異性化し、例えば下記である。
【化2】

【0030】
別の例は、n−パラフィン類をより小さなn−およびイソパラフィン類に分解し、例えば下記である。
【化3】

【化4】

【0031】
別の例は、n−およびイソパラフィン類の両方を脱水素化し、例えば下記である。
【化5】

【化6】

【0032】
別の例は、n−パラフィン類を芳香族類に脱水素環化し、例えば下記である。
【化7】

【0033】
上記化学反応は、化学的に平衡されていないが、比較的低いオクタン価を有する炭化水素を、比較的高いオクタン価を有する炭化水素に変換する本発明のプロセスにおける反応物および生成物を示すために提示されていることに注意すべきである。
【0034】
本発明の触媒は、異性化、分解、脱水素および脱水素環化触媒として同時に機能することができる。上記炭化水素に対するオクタン価は、ASTM専門的技術的刊行物(Special Technical Publication)#225、「純粋炭化水素のノッキング特性(Knocking Characteristics of Pure Hydrocarbons)」からのリサーチオクタン価(RON)およびモーターオクタン価(MON:motor octane number)の数値平均、すなわち(RON+MON)/2である。
【0035】
プロセス供給物は、C6−C8アルカン類以外の炭化水素および非炭化水素、すなわち、炭化水素ではない化合物を含んでもよい。これはより低級のアルカン類、例えばペンタン、およびより高級なアルカン類、例えばノナンおよびデカンを含んでもよい。プロセス供給物は、イソパラフィン類、オレフィン類、ナフテン類および芳香族類すら含んでもよい。C6−C8アルカン類ではない供給物のそれらの成分は、触媒的に反応する炭化水素または触媒的に非反応性または不活性である炭化水素もしくは非炭化水素、例えば希釈剤としてもよい。1つの実施形態では、プロセス供給物は、少なくとも30%のC6−C8アルカン類を有するナフサである。別の実施形態では、プロセス供給物は、少なくとも40%のC6−C8アルカン類を有するナフサである。別の実施形態ではプロセス供給物は、少なくとも50%のC6−C8アルカン類を有するナフサである。
【0036】
芳香族化プロセスは、0.1h-1と100h-1の間の範囲の液空間速度、200℃と600℃の間の範囲の温度、1psiaと315psiaの間の範囲の圧力で実施してもよい。
【0037】
本発明について一般的に記載してきたが、下記実施例を本発明の特定の実施形態として、その実施および利点を証明するために提供する。実施例は説明のために提供したものであり、明細書またはその後に続く特許請求の範囲をいかなる意味でも制限することを意図しないことは理解される。
【実施例】
【0038】
<触媒調製>
実施例で使用される触媒は、下記手順に従い調製した。
【0039】
溶液#1は、15.84gの50wt% NaOH溶液を、131.25gの脱イオン(DI)水で希釈し、その後、7.11gの二酸化ゲルマニウムを溶解することにより作製した。溶液#2は、3.84gのアルミン酸ナトリウム溶液(23.6wt%アルミナおよび19.4wt%酸化ナトリウム)を、153.9gのDI水で希釈することにより作製した。溶液#1を150gのルドックス(Ludox)AS−40(コロイド状態の40wt%シリカ)に添加し、10分間激しく撹拌し、均一混合物を得た。溶液#2を撹拌しながらこの混合物中に入れた。15分激しく撹拌した後、105.42gのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)を添加し、混合物を60分間撹拌した。最後に、23.32gの氷酢酸をゲルに添加し、混合物のpHを約9に調節した。この混合物1Lステンレス鋼オートクレーブに入れ、160℃で36時間、撹拌しながら加熱した。その後、得られた固体を母液から濾過し、DI水で洗浄した。得られた固体を、550℃で6時間、気流を有するオーブン内で、か焼(calcine)させた。粉末X線回折パターンを測定することにより、固体のMFI構造を確認した。
【0040】
上記のように調製したGeZSM−5をCsNO3水溶液(0.5M)で洗浄し、その後濾過した。その後、濾液を3回以上、0.5M CsNO3で再洗浄し、最終濾過時に蒸留水ですすいだ。ゼオライト粉末を、その後、3時間、280℃、空気中でか焼させた。1% Ptを初期湿式含浸法により添加し、これは脱イオン水に溶解したPt(NH24(NO32の溶液をCs交換GeZSM−5に一滴ずつ添加することにより実施した。材料を110℃乾燥オーブン内で1時間乾燥させ、その後、280℃で3時間か焼させた。
【0041】
試験前に、触媒粉末をプレスし、20−40メッシュのサイズとした。2.16cm3のサイズ処理された触媒を5.84cm3の不活性炭化ケイ素チップと混合し、460℃で1時間、水素流中で前処理した。
【0042】
<触媒試験>
上記手順により調製した触媒を下記のように試験した。
【0043】
不活性炭化ケイ素チップと混合した触媒粒子を1/2”ODプラグ反応器に入れた。合成的にブレンドした軽質ナフサを、米国特許第6,884,531号において軽質ナフサのために開示されたPIONA分析に基づき組成を計算し、各々の成分を個々に計量し所望のモル分率を得、その成分を混合して供給物混合物を作製することにより、生成させ、これを蒸発させて約150℃の温度で流れる水素流中に入れた。このガス混合物を、下記表内の特定の条件で維持される反応器を通過させた。反応生成物をガスクロマトグラフィにより分析した。結果を下記表1で示す。オクタン価は、ナフサ供給物で51から、リフォメート(reformate)で95まで増加した。
【0044】
オクタン価は、ASTM専門的技術的刊行物#225、「純粋炭化水素のノッキング特性」からのリサーチオクタン価(RON)およびモーターオクタン価(MON)に対する純粋成分値を用いることにより、推定した。各成分の数値平均[(RON+MON)/2]は、供給物およびリフォメートのオクタン価を推定するために、体積加重した。
【0045】
【表1】

【0046】
低オクタン成分、例えばn−ヘキサン、2−メチルペンタンおよび3−メチルペンタンの濃度は、87.4%から26.2%まで減少した。高オクタン成分の濃度は増加した(2,2および2,3−ジメチルブタン:5.3%から6.0%、ベンゼン:1.4%から38.5%、n−ブタン、イソブテンおよびイソペンタン:0.0%から2.5%、環状および分枝オレフィン類、例えば2−メチルペンタン関連オレフィン類、3−メチルペンタン関連オレフィン類、メチルシクロペンテン類およびイソブテン:0.0%から16.0%)。
【0047】
燃料基準は、ガソリン中に存在するオレフィン類の量を制限する場合があり、オレフィン類のいくらかまたは全てを水素化して対応するパラフィン類にすることを要求する場合がある。表2は、オレフィン類の全てが水素化された場合の生成物流の計算した組成およびオクタン価を示す。オクタン価は、ナフサ供給物では51から、リフォメートでは89まで増加されるであろう。
【0048】
【表2】

【0049】
化学中間体としてのその重要な価値のために、ベンゼンはリフォメートから抽出してもよい。表3は、全てのベンゼンが除去された場合のリフォメートの計算した組成およびオクタン価を示す。オクタン価は、ナフサでは51から、リフォメートでは78まで増加されるであろう。
【0050】
【表3】

【0051】
生成物中にベンゼンが存在しなくても、オクタン価が増加していることに注意すべきである。そのため、オクタン価の増加は、n−パラフィン類を芳香族化することによる芳香族量の増加だけでなく、n−パラフィン類をイソパラフィン類に異性化し、さらに、イソパラフィン類をより高度に分枝したイソパラフィン類に異性化し、n−パラフィン類をより小さなn−イソパラフィン類に分解し、n−およびイソパラフィン類の両方を脱水素化することによる。低オクタン成分、例えばn−ヘキサン、2−メチルペンタンおよび3−メチルペンタンの濃度は減少し、高オクタン成分、例えば2,2および2,3−ジメチルブタン、n−ブタン、イソブテン、イソペンタン、2−メチルペンタン関連オレフィン類および3−メチルペンタン関連オレフィン類、ならびにメチルシクロペンテン類の濃度は増加した。このデータは、本発明のプロセスおよび触媒がパラフィン類の芳香族化以外の機構を具体化することを証明する。
【0052】
本発明の触媒は、少なくとも25%の線状C6−C8アルカン量を有する炭化水素供給物を改質するために、従来の酸性改質触媒、例えば酸化物担体上のVIII族金属、例えば、アルミナまたはシリカ上に堆積された白金と共に一連のプロセス中に存在してもよい。従来の酸性改質触媒は促進剤、例えばレニウム、スズ、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウム、ルテニウムおよびそれらの組み合わせを含んでもよい。1つの実施形態では、酸性改質触媒はアルミナ上に堆積された白金およびレニウムまたはイリジウムのいずれかである。どちらかの触媒が一連のプロセスにおいて第1の触媒となり得る。1つの例では、アルミナまたはシリカ上に堆積された白金を含む酸性改質触媒は第1の触媒であり、Pt/CsGeZSM−5を含む、ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じてアルミニウムを含み、その上に貴金属が堆積されている非酸性中細孔または大細孔ゼオライトが第2の触媒である。
【0053】
上記教示を考慮すると、本発明の多くの改変および変更が可能である。添付の特許請求の範囲内であれば、本発明は特定的に記載された場合以外で実施可能であることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給物のオクタン価を増加させるためのプロセスであって、
a)同時に、n−パラフィン類をイソパラフィン類に異性化し、イソパラフィン類をより高度に分枝したイソパラフィン類にさらに異性化し、n−パラフィン類をより小さなn−イソパラフィン類に分解し、n−パラフィン類およびイソパラフィン類の両方を脱水素化し、n−パラフィン類を芳香族類に脱水素環化するための条件で、C6−C8アルカン類を有するナフサを含む供給物を、ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを含む、その上に貴金属が堆積されている非酸性中細孔または大細孔ゼオライトを含む触媒と接触させる工程と、
b)炭化水素生成物を回収する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ゼオライトは、中細孔ゼオライトである、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
平均細孔サイズは、約5から約7オングストロームの範囲である、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
前記ゼオライトは、40−500のSi/Al2原子比を有する、請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
前記ゼオライトは、50−150のSi/Al2原子比を有する、請求項1記載のプロセス。
【請求項6】
前記ゼオライトのゲルマニウム量は、1.0重量%から10重量%の範囲である、請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
前記ゼオライトのゲルマニウム量は、3.5重量%から6重量%の範囲である、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記貴金属は、0.05%から3%の範囲で存在する、請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
前記貴金属は、0.2%から2%の範囲で存在する、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
前記貴金属は、0.2%から1.5%の範囲で存在する、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記貴金属は、白金である、請求項1記載のプロセス。
【請求項12】
前記ゼオライトは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩基置換により非酸性とされる、請求項1記載のプロセス。
【請求項13】
前記アルカリ金属は、約1から約2の範囲の、アルミニウムに対するモル比で存在するセシウムである、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記アルカンと前記触媒との間の接触は、0.1h-1と100h-1の間の範囲の液空間速度で起こる、請求項1記載のプロセス。
【請求項15】
前記アルカンと前記触媒との間の接触は、200℃と600℃の間の範囲の温度で起こる、請求項1記載のプロセス。
【請求項16】
前記アルカンと前記触媒との間の接触は、0.1h-1と100h-1の間の範囲の液空間速度、200℃と600℃の間の範囲の温度、1psiaと315psiaの間の範囲の圧力で起こる、請求項1記載のプロセス。
【請求項17】
前記ゼオライトは、MFI構造を有する、請求項1記載のプロセス。
【請求項18】
前記供給物は、さらに1000ppmまでの硫黄を含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒は、担持され、または結合される請求項1記載のプロセス。
【請求項20】
前記触媒は、下記式を有する請求項1記載のプロセス。
(Cs+2Pt0.37([Si105Ge4Al2222]−MFI
【請求項21】
前記ゼオライトは、チタン、鉄、ガリウム、ホウ素またはスズの追加の元素を含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項22】
前記触媒は、Pt/CsGeZSM−5である、請求項1記載のプロセス。
【請求項23】
前記炭化水素供給物は、少なくとも30%のC6−C8アルカン類を有するナフサを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項24】
前記炭化水素供給物は、少なくとも40%のC6−C8アルカン類を有するナフサを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項25】
前記炭化水素供給物は、少なくとも50%のC6−C8アルカン類を有するナフサを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項26】
前記供給物は、より高級の、およびより低級のアルカン類、イソパラフィン類、オレフィン類、ナフテン類および芳香族類をさらに含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項27】
前記供給物は、ペンタン、ノナン、デカンおよび触媒的に非反応性または不活性である非炭化水素をさらに含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項28】
炭化水素供給物のオクタン価を増加させるためのプロセスであって、
a)少なくとも50%のC6−C8アルカン量を有する炭化水素供給物を第1の触媒と、改質生成物を形成させる条件で、接触させる工程と、
b)前記改質生成物を第2の触媒と接触させる工程と、
c)炭化水素生成物を回収する工程と、
を含み、
1つの触媒は、酸化物担体上のVIII族金属を含む酸性改質触媒を含み、
他の触媒は、ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを含み、その上に貴金属が堆積されている非酸性中細孔または大細孔ゼオライトである、プロセス。
【請求項29】
前記酸性改質触媒は、アルミナまたはシリカ上に堆積された白金を含む、請求項26記載のプロセス。
【請求項30】
前記酸性改質触媒は、レニウム、スズ、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウム、ルテニウムおよびそれらの組み合わせをさらに含む、請求項29記載のプロセス。
【請求項31】
前記酸性改質触媒は、アルミナ上に堆積された白金およびレニウムまたはイリジウムのいずれかを含む、請求項30記載のプロセス。
【請求項32】
ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを含み、その上に貴金属が堆積されている前記非酸性中細孔または大細孔ゼオライトは、Pt/CsGeZSM−5を含む、請求項26記載のプロセス。
【請求項33】
アルミナまたはシリカ上に堆積された白金を含む酸性改質触媒は第1の触媒であり、Pt/CsGeZSM−5を含む、ケイ素、ゲルマニウムおよび、任意で必要に応じて、アルミニウムを含み、その上に貴金属が堆積されている非酸性中細孔または大細孔ゼオライトは第2の触媒である、請求項26記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−512317(P2013−512317A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541234(P2012−541234)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058723
【国際公開番号】WO2011/068964
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】