コイル対向面に流れ偏向構造を有する、発電電動機械コイルスペースブロック
【課題】キャビティの中央領域の熱伝達を向上させた発電電動機械を提供する。
【解決手段】発電電動機械は、複数の隣接するコイルを有するロータ30と、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロック340とを有する。スペースブロック340は、このスペースブロック340の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティ342を画成する。スペースブロック340は、このスペースブロック340の少なくとも1つのキャビティ342対向面上に、キャビティ342内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティ342の中央領域に向けて変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、及び実質的に切頂矢形の断面のいずれかを有する本体から成る。
【解決手段】発電電動機械は、複数の隣接するコイルを有するロータ30と、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロック340とを有する。スペースブロック340は、このスペースブロック340の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティ342を画成する。スペースブロック340は、このスペースブロック340の少なくとも1つのキャビティ342対向面上に、キャビティ342内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティ342の中央領域に向けて変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、及び実質的に切頂矢形の断面のいずれかを有する本体から成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内で循環するクーラント流を堰き止めてその方向を変更することにより、発電電動機械ロータの冷却を促進する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ発電機等の大型発電電動機械において、ロータは、ロータ長さに沿って切削されたスロットを含み、これらのスロット内には、銅コイルが配置される。ロータ本体の外側に延在するコイル部分は、コイル端とよばれる。ロータのコイル端領域において、スペースブロックによりコイルが堅固に保持されており、スペースブロックは、その位置に応じて更に、スペースブロック、スペーサブロック、ウェッジブロックに分類される。
【0003】
発電電動機械の定格電気出力は、導電体の絶縁に課せられる温度制限により、ロータ界磁巻線を介して付加的な電流を供給する能力によって制限されることが多い。したがって、ロータ巻線の効果的な冷却は、機械の出力性能に直接影響する。このことは、こうした機械の一般的な構造が原因で、直接的な強制冷却が困難で費用がかさむ、ロータコイル端に特に当てはまる。一般的な市場動向として、より低コストでより出力密度が高い発電機に、より高い効率とより高い信頼性とが求められることから、ロータコイル端の冷却が制約要素となっている。コイル端及びコイルを冷却するには、スペースブロックとコイルとの間のキャビティを用いて循環クーラント流を流し、これらのキャビティから排気筒内に開口するコイル内の溝に流入させる。
【0004】
米国特許第6,465,917号には、循環するクーラント流を堰き止めてその方向をそれぞれのキャビティの中央領域へと変更する、キャビティ対向面上に設けられた少なくとも1つの流れ偏向構造を有するスペースブロックであって、この偏向構造が、自然発生のフローセルと同じ方向に該自然発生のフローセル内に付加的なクーラント流を直接導入することにより、大きな単一のフロー循環セルの流速を増加させる、スペースブロックを設けることで、熱伝達を増大させる方法が記載されている。この方法を本願の図4及び5に示す。この方法では、循環セルの強度を高めることによりキャビティ内の熱伝達が増大するものの、キャビティの中央領域は依然として低速のまま、即ち熱伝達が少ないままの可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6870299号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様において、複数の隣接するコイルを有するロータと、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロックであって、このスペースブロックの隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロックと、を備えた発電電動機械を提供する。スペースブロックは、このスペースブロックのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその流れの方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域に向けて変更する、流れ偏向構造を提供する。
【0007】
本開示の第2の態様において、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、実質的に切頂矢形の断面のうち1つを有する本体から成る、ガス冷却式発電電動機械用スペースブロックを提供する。この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。
【0008】
第3の態様は、複数の隣接するコイルを有するロータと、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロックであって、このスペースブロックの隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロックと、を含む発電電動機械に関する。このスペースブロックは、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、実質的に切頂矢形の断面のうち1つを有する本体から成る。この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ステータに対向する発電電動機械ロータのコイル端の部分断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った発電電動機械ロータの断面の上面図である。
【図3】コイル端キャビティ内に流入し、コイル端キャビティを通る、従来の受動的ガス流を示す概略図である。
【図4】スペースブロックの下流側に設けられて、通常はクーラントが不足状態のキャビティ中央に向かってクーラントを偏向させる、先行技術の偏向部を示す断面図である。
【図5】各々がキャビティの深さ方向の一部分のみにわたって設けられた、先行技術による少なくとも1つの偏向部であって、クーラントの一部分をキャビティの外径範囲まで容易に行き渡らせつつ、クーラントの一部分をキャビティ中央に向かって偏向させる偏向部の、別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従ったスペースブロックを含むガス冷却式発電電動機械の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図8】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図9】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図10】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図11】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図12】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図13】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図14】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図15】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な図面を通して同じ参照符号で同じ要素を示す図面を参照すると、図1及び2は、ガス冷却式発電電動機械用ロータ10の図である。この発電電動機械は、ロータを取り巻くステータ12も含む。ロータは、ロータ軸16を中心に配置された、軸方向に対向する端面を有する略円筒状の本体部分14から成り、図1には一方の端面の一部分18を示す。本体部分は、ロータ巻線を構成する同心配置のコイル22を受けるための、周方向に離間した複数の軸方向延在スロット20を備える。明瞭にするために、5つのロータコイルのみを示すが、実際には、更に数個のロータコイルが一般に用いられる。
【0011】
具体的に、ロータ巻線の一部分を構成する複数の導電体バー24が各々のスロット内に積層される。隣接し合う導電体バー24は、電気絶縁体25の層により分離される。積層された導電体バーは、一般的にウェッジ26(図1)によりスロット内に維持され、銅等の導電材料で作製される。導電体バー24は、端部ストラップ領域とも称される部分において、コイルの座巻部27により本体部分の各対向端部において相互に接続される。コイル22は、軸方向延在コイル23を含むコイル側区画を含み、軸方向に端面を超えて端部ストラップ領域まで延在する。軸方向延在コイル23と座巻部27とを纏めて、コイル端28という。座巻部27も電気絶縁体の層により分離される。
【0012】
図1を詳細に参照すると、保持環30が本体部分の各端部において座巻部の周りに配置されて、コイル端28を遠心力に抗して正位置に保持する。保持環30は一方の端部において本体部分に固定され、ロータ軸16の上で外方に延在する。心出し環32が保持環30の遠端部に取り付けられる。なお、保持環30と心出し環32とを当該技術分野において周知のその他の方法で取り付けてもよい。心出し環32の内側周辺縁部は、ロータ軸16から半径方向に離間してガス入口通路34を形成しており、コイル端28は、ロータ軸16から離間して環状領域36を形成している。スロット20(図2)に沿って形成される複数の軸方向冷却チャネルが、環状領域36を介してガス入口通路34と流体連通の状態で設けられ、冷却ガスをコイル22(図2)に送給する。
【0013】
次に図2を参照すると、ロータ10の各端部の座巻部27(図1)が、複数のスペーサ又はスペースブロック40により周方向及び軸方向に分離されている(図を明瞭にするために、図1にはスペースブロックを示していない)。スペースブロック40を座巻部27どうしの間に配置する場合は、これらを端部ストラップブロック48とも称する。更に、軸方向延在コイル23は、複数のスペースブロック40により周方向に分離されている。この位置において、スペースブロック40を、コイル側ブロック50又は本体ウェッジブロック52とも称する。これらのスペースブロックに「ウェッジ」という用語を用いることができるのは、これらのスペースブロックが、この位置でコイル23と係合するために必要な弓形状に適合するウェッジ形状を備えるからである。スペースブロック40は、軸方向延在コイル側の区画であるか端部ストラップ領域であるかにかかわらず、いかなる場合も、隣接するコイルどうしの間の隙間に配置される絶縁材料の細長ブロック部材である。スペースブロック40は、端部ストラップ区画又はコイル側区画の半径方向の全深さを超えて環状間隙36内まで延在する。
【0014】
図3に最もよく示すように、殆どの場合は、隣接するコイル(軸方向延在コイル23であるか端部ストラップ27であるかにかかわらず)間に配置されるスペースブロック40は、第1及び第2のキャビティ42を、スペースブロック40の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に形成する。コイル端28の同心積層体間の隙間(図3)は、複数のキャビティ42に分かれている。これらのキャビティは、図2に示すように、上部が保持環30により画定され、4つの側部が、隣接する端部ストラップ27及び隣接するスペースブロック48により画定される。同様に、図2に最もよく示すように、軸方向延在コイル23の半径方向積層体間の隙間が、キャビティ54、56に分かれている。一般に、図2に最外側コイルに関して示すように、隣接するコイル23間に配置されるスペースブロック40(本体ウェッジブロック52)については、ロータ歯29の端部に直接当接して配置されるので、1つのキャビティ54のみが隣に画成される。キャビティ54は、その上部が保持環30により画定され、その4つの側部が、隣接するコイル23及び隣接するスペースブロック40(コイル側ブロック50及び本体ウェッジブロック52)により画定される。但し、本発明の実施形態によると、図2に最内側コイルに関して示すように、スペースブロック40(本体ウェッジブロック52)がロータ歯29の端部に当接しない場合には、キャビティ56も存在する。キャビティ56は、その上部が保持環30(又はウェッジ26(図1))により画定され、その4つの側部が、隣接するコイル23、隣接し合うスペースブロック40(コイルスペースブロック50)、ロータ歯29の端部により画定される。図1は、この後者の状態を示す。
【0015】
図1に最もよく示すように、上述の各々のキャビティは、環状領域36を介してガス入口通路34と流体連通状態にある。そのため、ガス入口通路34を介してコイル端28とロータ軸16との間の環状領域36に流入する冷却ガスの一部分は、キャビティ42、54、56に流入し、これらのキャビティ内で循環した後、コイル端とロータ軸との間の環状領域36に戻る。図1及び3にガス流を矢印で示す。
【0016】
回転する発電機キャビティ内で作用する固有のポンプ作用と回転力とは、図3の概略図に示すように、一般に、大きな単一のフロー循環セルを生成する。このフロー循環セルは、キャビティの周辺縁部付近において最高速度を呈し、キャビティの中央領域では速度が本質的に低いことから、中央領域が十分に冷却されないままになる。図3からわかるように、フローセルの円形運動では冷却流がコーナー部まで行き渡らないので、コーナー領域の大部分もまた、十分に冷却されない。
【0017】
次に図4〜5を参照すると、幾つかのキャビティ142と矢印Xで表す回転方向とが示された、米国特許第6,465,917号に従ったロータコイル端アセンブリの部分断面図が示されている。少なくとも1つのスペースブロック140、好ましくは各スペースブロック140が、それぞれのキャビティの下流側に配置される、スペースブロックの表面146(以下、「下流側面」)上に、クーラント流の方向をそれぞれのキャビティ142の中央に向けて変更してキャビティ142の中央の熱伝達率を高める流れ偏向構造144を備える。各偏向構造144は、矢印Aで示すように流れを堰き止めてその方向を変更する、全体的に湾曲した下面148を有する。上面150は略平面状であり、偏向部は全体として薄い流れ対向縁部152を形成しており、これによって、不要な圧力損失を生じることなく効果的に流れを堰き止められる。
【0018】
動作時、方向Xへロータが回転することにより、冷却ガスがガス入口34(図1)を介してコイル端28とロータ軸16との間の環状領域36内に引き込まれる。略円形の流れでキャビティ142の下流側146に向かって冷却ガスを付勢する動圧ヘッドが存在する。クーラント流の少なくとも一部分は、偏向部144により堰き止められて、矢印Aで示すように、一般的にクーラント流が不足する冷却用キャビティ142の中央領域へと方向変更される。偏向部により堰き止められないクーラント流は、矢印Bで示すような、全体的に循環的な流れで流動し続ける。堰き止めされた流れと堰き止められない流れとは、キャビティの上流側で再び合流し、図示の構成では時計回りの方向に流動し続けて、スペースブロック140の下方から、次に続くキャビティ内へと流入する。キャビティの深さ又は軸方向寸法の大部分、例えば少なくとも75%、好ましくはキャビティの深さの100%程度の、単一の流れ偏向部が設けられる。
【0019】
次に図5では、スペースブロック240間に形成されるキャビティ242と矢印Xで示す回転方向とを示した、米国特許第6,465,917号に従ったロータコイル端の部分断面図を示す。図示のように、クーラント流を隣接するキャビティの中央領域へと偏向させる、少なくとも1つの偏向構造244が設けられている。図4の実施形態の場合のように、図示のアセンブリでは、偏向構造244が、少なくとも1つのスペースブロック240の下流側面246に設けられる。但し、この場合、各偏向部244は、少なくとも1つの垂直方向の流れ領域を残してスペースブロックの深さ方向の一部分のみ又はスペースブロックの軸方向の一部分のみに延在しており、これによって、高い運動量で循環するクーラント流の一部分をキャビティの半径方向外側コーナーに到達させつつ、クーラントの残りの部分をキャビティ中央に向かって偏向させるようになっている。
【0020】
部分深さ偏向部が、キャビティの隣接する一方のコイル端壁部から、キャビティの隣接する他方のコイル端壁部から、又は自身に関連するスペースブロックのほぼ中央から、キャビティの深さ方向の一部分にわたって設けられる。一例では、単一の偏向部244が、関連するスペースブロックの深さ方向の約半分にわたって設けられる。
【0021】
これにより、図示のように、それぞれのキャビティ242内に流入するクーラント流が、スペースブロックの表面246に到達し、この表面246に沿って半径方向外方に流れ始める。この流れの一部分は、偏向構造244により堰き止められ、矢印Aで示すように、それぞれのキャビティの中央領域の方へと偏向される。クーラント流の残りの部分は、偏向構造の軸方向長さによって画定される間隙により、偏向構造をバイパスして、矢印Cで示すように、引き続きスペースブロックに沿って上方且つ半径方向外方に流れ、矢印Bで示すような循環流として流れ続ける。偏向された流れと偏向されない流れとは、キャビティの上流側で再び合流して、引き続き時計回りの方向にスペースブロック240の下方から、次に続くキャビティ242へと流れる。
【0022】
表面に単に乱流を引き起こすのではなく、流れを効果的に堰き止めてその方向をキャビティの中央領域の方へと変更できるように、偏向部144、244を、冷却用キャビティの周方向寸法の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%において延在させてよい。偏向部の下面148、248の湾曲構造は、偏向部の機能を高める。
【0023】
次に図6〜15を参照すると、本発明の実施形態により、少なくとも1つのスペースブロック340、好ましくは各スペースブロック340が、キャビティ342内の循環クーラント流の堰き止めと方向変更を促進するように構成された形状を有する。図6〜15の各々では、上述した図4及び5の実施形態と実質的に同様に作用する。
【0024】
図6において、各スペースブロック340は、実質的にT形の断面を有し、この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面360(明瞭にするために図7のみに示す)上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域の方へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。この場合、スペースブロック340をキャビティ342、即ち端部ストラップ27という設定で、ロータコイル端アセンブリの部分断面図に示す。同様に、図6〜15のいずれかの実施形態に従ったスペースブロック340も、図2に示すように軸方向延在コイル23内に配置可能である。このように、スペースブロック340は、図1〜2に最もよく示すように、軸方向延在コイル23及び/又は端部ストラップ27内に配置される。そのため、「コイル対向」とは、本明細書で用いる場合、纏めてコイル端28のコイル22と称される、軸方向延在コイル23又は端部ストラップ27に対向することを意味する。
【0025】
図7〜15に、スペースブロック340の様々な実施形態、具体的には、様々な形状の流れ偏向構造344を成す様々な断面形状のスペースブロック340の拡大斜視図を示す。本明細書に記載の各々の実施形態では、おそらくは図14を除いて、流れ偏向構造344はスペースブロック340の半径方向延在面360(明瞭にするために図7のみに示す)から延在している。
【0026】
図7及び8に、スペースブロック340の両側の対を成すキャビティ342(図6)の各々に対して流れ偏向構造344を提供する実質的にT形の断面を含むスペースブロック340(図6)の実施形態を示す。図7は、図5の実施形態と同様に、各流れ偏向構造344がそれぞれのキャビティの深さ方向の一部分のみに及ぶ、即ちスペースブロック340の残りの部分ほど厚くない実施形態を示す。図8は、実質的にT形の断面の屈曲部346の各々が湾曲面348を含む実施形態を示す。
【0027】
図9及び10に、実質的にL形の断面を有するスペースブロックの実施形態を示す。この場合は、単一の流れ偏向構造344のみが設けられる。図10において、実質的にL形の断面の屈曲部350は、湾曲面352を含む。
【0028】
図11において、流れ偏向構造344は、ロータ対向突出構造356を有する実質的に直角三角形の区画354を有する。加えて、その他の実施形態のように、流れ偏向構造344が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分のみにわたっていてもよい。図12及び13に、スペースブロック340が実質的に切頂矢形状の断面を有する実施形態を示す。即ち、スペースブロック340は、矢の先端部が除去されたことを除いて、矢尻形の断面を有する。この構造は、隣接する各キャビティに対する流れ偏向構造を提供する。図12において、その他の実施形態のように、流れ偏向構造が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分のみにわたっていてもよい。
【0029】
図14に、スペースブロック340が実質的に六角形の断面を有しており、この断面が、対を成す隣接するキャビティの各々に対する流れ偏向構造を提供する実施形態を示す。図15には、各流れ偏向構造344が、対を成す隣接する各キャビティ内へと延在する、実質的に尖った縁部構造358を含む実施形態を示す。
【0030】
流れ偏向構造344がキャビティの深さ方向の一部分のみに及ぶ、本明細書に記載のいずれの実施形態においても、流れ偏向構造をキャビティの深さ方向の約半分に延在させてもよい。その他の実施形態では、流れ偏向構造344が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の大部分に及ぶ。
【0031】
本明細書において「第1」「第2」等の用語は、いかなる順序、数量、又は重要性も示すことはなく、或る要素を他の要素と区別するために用いられている。本明細書において単数形は、数量を限定するものではなく、言及した項目が少なくとも1つは存在することを示す。数量に関連して使用する「約」といった修飾語は、提示した値と、文脈上明らかな意味(例えば、特定の数量の計測に関連する誤差の程度)を含む。本明細書において複数形は、これによって修飾される用語の単数形及び複数形の両方、即ちその用語が示すものを1つ以上含むことを意図している(例えば、「(複数の)金属」は、1種又は複数の金属を含む)。本明細書に開示されている範囲は、包括的で、個々に組み合わせが可能である(例えば、「約25重量%以下、特に約5重量%から約20重量%」の範囲は、両端点と「約5重量%から約25重量%」の範囲の全ての中間値を含む)。
【0032】
本明細書では様々な実施形態を説明したが、本明細書から明らかなように、当業者は各要素を様々に組み合わせたり、改変又は改良したりできるが、これらも本発明の範囲に含まれる。また、特定の状況又は材料に合わせて、本発明の教示に多くの修正を加えることができるが、これらも本発明の本質的な範囲から逸脱することはない。したがって、本発明は、本発明を実施するために熟考された最適な態様として開示された特定の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を包含する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内で循環するクーラント流を堰き止めてその方向を変更することにより、発電電動機械ロータの冷却を促進する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ発電機等の大型発電電動機械において、ロータは、ロータ長さに沿って切削されたスロットを含み、これらのスロット内には、銅コイルが配置される。ロータ本体の外側に延在するコイル部分は、コイル端とよばれる。ロータのコイル端領域において、スペースブロックによりコイルが堅固に保持されており、スペースブロックは、その位置に応じて更に、スペースブロック、スペーサブロック、ウェッジブロックに分類される。
【0003】
発電電動機械の定格電気出力は、導電体の絶縁に課せられる温度制限により、ロータ界磁巻線を介して付加的な電流を供給する能力によって制限されることが多い。したがって、ロータ巻線の効果的な冷却は、機械の出力性能に直接影響する。このことは、こうした機械の一般的な構造が原因で、直接的な強制冷却が困難で費用がかさむ、ロータコイル端に特に当てはまる。一般的な市場動向として、より低コストでより出力密度が高い発電機に、より高い効率とより高い信頼性とが求められることから、ロータコイル端の冷却が制約要素となっている。コイル端及びコイルを冷却するには、スペースブロックとコイルとの間のキャビティを用いて循環クーラント流を流し、これらのキャビティから排気筒内に開口するコイル内の溝に流入させる。
【0004】
米国特許第6,465,917号には、循環するクーラント流を堰き止めてその方向をそれぞれのキャビティの中央領域へと変更する、キャビティ対向面上に設けられた少なくとも1つの流れ偏向構造を有するスペースブロックであって、この偏向構造が、自然発生のフローセルと同じ方向に該自然発生のフローセル内に付加的なクーラント流を直接導入することにより、大きな単一のフロー循環セルの流速を増加させる、スペースブロックを設けることで、熱伝達を増大させる方法が記載されている。この方法を本願の図4及び5に示す。この方法では、循環セルの強度を高めることによりキャビティ内の熱伝達が増大するものの、キャビティの中央領域は依然として低速のまま、即ち熱伝達が少ないままの可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6870299号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様において、複数の隣接するコイルを有するロータと、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロックであって、このスペースブロックの隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロックと、を備えた発電電動機械を提供する。スペースブロックは、このスペースブロックのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその流れの方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域に向けて変更する、流れ偏向構造を提供する。
【0007】
本開示の第2の態様において、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、実質的に切頂矢形の断面のうち1つを有する本体から成る、ガス冷却式発電電動機械用スペースブロックを提供する。この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。
【0008】
第3の態様は、複数の隣接するコイルを有するロータと、隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロックであって、このスペースブロックの隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に、少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロックと、を含む発電電動機械に関する。このスペースブロックは、実質的にT形の断面、実質的に六角形の断面、実質的に切頂矢形の断面のうち1つを有する本体から成る。この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ステータに対向する発電電動機械ロータのコイル端の部分断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った発電電動機械ロータの断面の上面図である。
【図3】コイル端キャビティ内に流入し、コイル端キャビティを通る、従来の受動的ガス流を示す概略図である。
【図4】スペースブロックの下流側に設けられて、通常はクーラントが不足状態のキャビティ中央に向かってクーラントを偏向させる、先行技術の偏向部を示す断面図である。
【図5】各々がキャビティの深さ方向の一部分のみにわたって設けられた、先行技術による少なくとも1つの偏向部であって、クーラントの一部分をキャビティの外径範囲まで容易に行き渡らせつつ、クーラントの一部分をキャビティ中央に向かって偏向させる偏向部の、別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従ったスペースブロックを含むガス冷却式発電電動機械の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図8】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図9】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図10】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図11】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図12】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図13】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図14】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【図15】本発明に従ったスペースブロックの実施形態の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な図面を通して同じ参照符号で同じ要素を示す図面を参照すると、図1及び2は、ガス冷却式発電電動機械用ロータ10の図である。この発電電動機械は、ロータを取り巻くステータ12も含む。ロータは、ロータ軸16を中心に配置された、軸方向に対向する端面を有する略円筒状の本体部分14から成り、図1には一方の端面の一部分18を示す。本体部分は、ロータ巻線を構成する同心配置のコイル22を受けるための、周方向に離間した複数の軸方向延在スロット20を備える。明瞭にするために、5つのロータコイルのみを示すが、実際には、更に数個のロータコイルが一般に用いられる。
【0011】
具体的に、ロータ巻線の一部分を構成する複数の導電体バー24が各々のスロット内に積層される。隣接し合う導電体バー24は、電気絶縁体25の層により分離される。積層された導電体バーは、一般的にウェッジ26(図1)によりスロット内に維持され、銅等の導電材料で作製される。導電体バー24は、端部ストラップ領域とも称される部分において、コイルの座巻部27により本体部分の各対向端部において相互に接続される。コイル22は、軸方向延在コイル23を含むコイル側区画を含み、軸方向に端面を超えて端部ストラップ領域まで延在する。軸方向延在コイル23と座巻部27とを纏めて、コイル端28という。座巻部27も電気絶縁体の層により分離される。
【0012】
図1を詳細に参照すると、保持環30が本体部分の各端部において座巻部の周りに配置されて、コイル端28を遠心力に抗して正位置に保持する。保持環30は一方の端部において本体部分に固定され、ロータ軸16の上で外方に延在する。心出し環32が保持環30の遠端部に取り付けられる。なお、保持環30と心出し環32とを当該技術分野において周知のその他の方法で取り付けてもよい。心出し環32の内側周辺縁部は、ロータ軸16から半径方向に離間してガス入口通路34を形成しており、コイル端28は、ロータ軸16から離間して環状領域36を形成している。スロット20(図2)に沿って形成される複数の軸方向冷却チャネルが、環状領域36を介してガス入口通路34と流体連通の状態で設けられ、冷却ガスをコイル22(図2)に送給する。
【0013】
次に図2を参照すると、ロータ10の各端部の座巻部27(図1)が、複数のスペーサ又はスペースブロック40により周方向及び軸方向に分離されている(図を明瞭にするために、図1にはスペースブロックを示していない)。スペースブロック40を座巻部27どうしの間に配置する場合は、これらを端部ストラップブロック48とも称する。更に、軸方向延在コイル23は、複数のスペースブロック40により周方向に分離されている。この位置において、スペースブロック40を、コイル側ブロック50又は本体ウェッジブロック52とも称する。これらのスペースブロックに「ウェッジ」という用語を用いることができるのは、これらのスペースブロックが、この位置でコイル23と係合するために必要な弓形状に適合するウェッジ形状を備えるからである。スペースブロック40は、軸方向延在コイル側の区画であるか端部ストラップ領域であるかにかかわらず、いかなる場合も、隣接するコイルどうしの間の隙間に配置される絶縁材料の細長ブロック部材である。スペースブロック40は、端部ストラップ区画又はコイル側区画の半径方向の全深さを超えて環状間隙36内まで延在する。
【0014】
図3に最もよく示すように、殆どの場合は、隣接するコイル(軸方向延在コイル23であるか端部ストラップ27であるかにかかわらず)間に配置されるスペースブロック40は、第1及び第2のキャビティ42を、スペースブロック40の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に形成する。コイル端28の同心積層体間の隙間(図3)は、複数のキャビティ42に分かれている。これらのキャビティは、図2に示すように、上部が保持環30により画定され、4つの側部が、隣接する端部ストラップ27及び隣接するスペースブロック48により画定される。同様に、図2に最もよく示すように、軸方向延在コイル23の半径方向積層体間の隙間が、キャビティ54、56に分かれている。一般に、図2に最外側コイルに関して示すように、隣接するコイル23間に配置されるスペースブロック40(本体ウェッジブロック52)については、ロータ歯29の端部に直接当接して配置されるので、1つのキャビティ54のみが隣に画成される。キャビティ54は、その上部が保持環30により画定され、その4つの側部が、隣接するコイル23及び隣接するスペースブロック40(コイル側ブロック50及び本体ウェッジブロック52)により画定される。但し、本発明の実施形態によると、図2に最内側コイルに関して示すように、スペースブロック40(本体ウェッジブロック52)がロータ歯29の端部に当接しない場合には、キャビティ56も存在する。キャビティ56は、その上部が保持環30(又はウェッジ26(図1))により画定され、その4つの側部が、隣接するコイル23、隣接し合うスペースブロック40(コイルスペースブロック50)、ロータ歯29の端部により画定される。図1は、この後者の状態を示す。
【0015】
図1に最もよく示すように、上述の各々のキャビティは、環状領域36を介してガス入口通路34と流体連通状態にある。そのため、ガス入口通路34を介してコイル端28とロータ軸16との間の環状領域36に流入する冷却ガスの一部分は、キャビティ42、54、56に流入し、これらのキャビティ内で循環した後、コイル端とロータ軸との間の環状領域36に戻る。図1及び3にガス流を矢印で示す。
【0016】
回転する発電機キャビティ内で作用する固有のポンプ作用と回転力とは、図3の概略図に示すように、一般に、大きな単一のフロー循環セルを生成する。このフロー循環セルは、キャビティの周辺縁部付近において最高速度を呈し、キャビティの中央領域では速度が本質的に低いことから、中央領域が十分に冷却されないままになる。図3からわかるように、フローセルの円形運動では冷却流がコーナー部まで行き渡らないので、コーナー領域の大部分もまた、十分に冷却されない。
【0017】
次に図4〜5を参照すると、幾つかのキャビティ142と矢印Xで表す回転方向とが示された、米国特許第6,465,917号に従ったロータコイル端アセンブリの部分断面図が示されている。少なくとも1つのスペースブロック140、好ましくは各スペースブロック140が、それぞれのキャビティの下流側に配置される、スペースブロックの表面146(以下、「下流側面」)上に、クーラント流の方向をそれぞれのキャビティ142の中央に向けて変更してキャビティ142の中央の熱伝達率を高める流れ偏向構造144を備える。各偏向構造144は、矢印Aで示すように流れを堰き止めてその方向を変更する、全体的に湾曲した下面148を有する。上面150は略平面状であり、偏向部は全体として薄い流れ対向縁部152を形成しており、これによって、不要な圧力損失を生じることなく効果的に流れを堰き止められる。
【0018】
動作時、方向Xへロータが回転することにより、冷却ガスがガス入口34(図1)を介してコイル端28とロータ軸16との間の環状領域36内に引き込まれる。略円形の流れでキャビティ142の下流側146に向かって冷却ガスを付勢する動圧ヘッドが存在する。クーラント流の少なくとも一部分は、偏向部144により堰き止められて、矢印Aで示すように、一般的にクーラント流が不足する冷却用キャビティ142の中央領域へと方向変更される。偏向部により堰き止められないクーラント流は、矢印Bで示すような、全体的に循環的な流れで流動し続ける。堰き止めされた流れと堰き止められない流れとは、キャビティの上流側で再び合流し、図示の構成では時計回りの方向に流動し続けて、スペースブロック140の下方から、次に続くキャビティ内へと流入する。キャビティの深さ又は軸方向寸法の大部分、例えば少なくとも75%、好ましくはキャビティの深さの100%程度の、単一の流れ偏向部が設けられる。
【0019】
次に図5では、スペースブロック240間に形成されるキャビティ242と矢印Xで示す回転方向とを示した、米国特許第6,465,917号に従ったロータコイル端の部分断面図を示す。図示のように、クーラント流を隣接するキャビティの中央領域へと偏向させる、少なくとも1つの偏向構造244が設けられている。図4の実施形態の場合のように、図示のアセンブリでは、偏向構造244が、少なくとも1つのスペースブロック240の下流側面246に設けられる。但し、この場合、各偏向部244は、少なくとも1つの垂直方向の流れ領域を残してスペースブロックの深さ方向の一部分のみ又はスペースブロックの軸方向の一部分のみに延在しており、これによって、高い運動量で循環するクーラント流の一部分をキャビティの半径方向外側コーナーに到達させつつ、クーラントの残りの部分をキャビティ中央に向かって偏向させるようになっている。
【0020】
部分深さ偏向部が、キャビティの隣接する一方のコイル端壁部から、キャビティの隣接する他方のコイル端壁部から、又は自身に関連するスペースブロックのほぼ中央から、キャビティの深さ方向の一部分にわたって設けられる。一例では、単一の偏向部244が、関連するスペースブロックの深さ方向の約半分にわたって設けられる。
【0021】
これにより、図示のように、それぞれのキャビティ242内に流入するクーラント流が、スペースブロックの表面246に到達し、この表面246に沿って半径方向外方に流れ始める。この流れの一部分は、偏向構造244により堰き止められ、矢印Aで示すように、それぞれのキャビティの中央領域の方へと偏向される。クーラント流の残りの部分は、偏向構造の軸方向長さによって画定される間隙により、偏向構造をバイパスして、矢印Cで示すように、引き続きスペースブロックに沿って上方且つ半径方向外方に流れ、矢印Bで示すような循環流として流れ続ける。偏向された流れと偏向されない流れとは、キャビティの上流側で再び合流して、引き続き時計回りの方向にスペースブロック240の下方から、次に続くキャビティ242へと流れる。
【0022】
表面に単に乱流を引き起こすのではなく、流れを効果的に堰き止めてその方向をキャビティの中央領域の方へと変更できるように、偏向部144、244を、冷却用キャビティの周方向寸法の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%において延在させてよい。偏向部の下面148、248の湾曲構造は、偏向部の機能を高める。
【0023】
次に図6〜15を参照すると、本発明の実施形態により、少なくとも1つのスペースブロック340、好ましくは各スペースブロック340が、キャビティ342内の循環クーラント流の堰き止めと方向変更を促進するように構成された形状を有する。図6〜15の各々では、上述した図4及び5の実施形態と実質的に同様に作用する。
【0024】
図6において、各スペースブロック340は、実質的にT形の断面を有し、この断面は、スペースブロックの少なくとも1つのキャビティ対向面360(明瞭にするために図7のみに示す)上に、キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めてその方向を少なくとも1つのキャビティの中央領域の方へと変更する、少なくとも1つの流れ偏向構造を提供する。この場合、スペースブロック340をキャビティ342、即ち端部ストラップ27という設定で、ロータコイル端アセンブリの部分断面図に示す。同様に、図6〜15のいずれかの実施形態に従ったスペースブロック340も、図2に示すように軸方向延在コイル23内に配置可能である。このように、スペースブロック340は、図1〜2に最もよく示すように、軸方向延在コイル23及び/又は端部ストラップ27内に配置される。そのため、「コイル対向」とは、本明細書で用いる場合、纏めてコイル端28のコイル22と称される、軸方向延在コイル23又は端部ストラップ27に対向することを意味する。
【0025】
図7〜15に、スペースブロック340の様々な実施形態、具体的には、様々な形状の流れ偏向構造344を成す様々な断面形状のスペースブロック340の拡大斜視図を示す。本明細書に記載の各々の実施形態では、おそらくは図14を除いて、流れ偏向構造344はスペースブロック340の半径方向延在面360(明瞭にするために図7のみに示す)から延在している。
【0026】
図7及び8に、スペースブロック340の両側の対を成すキャビティ342(図6)の各々に対して流れ偏向構造344を提供する実質的にT形の断面を含むスペースブロック340(図6)の実施形態を示す。図7は、図5の実施形態と同様に、各流れ偏向構造344がそれぞれのキャビティの深さ方向の一部分のみに及ぶ、即ちスペースブロック340の残りの部分ほど厚くない実施形態を示す。図8は、実質的にT形の断面の屈曲部346の各々が湾曲面348を含む実施形態を示す。
【0027】
図9及び10に、実質的にL形の断面を有するスペースブロックの実施形態を示す。この場合は、単一の流れ偏向構造344のみが設けられる。図10において、実質的にL形の断面の屈曲部350は、湾曲面352を含む。
【0028】
図11において、流れ偏向構造344は、ロータ対向突出構造356を有する実質的に直角三角形の区画354を有する。加えて、その他の実施形態のように、流れ偏向構造344が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分のみにわたっていてもよい。図12及び13に、スペースブロック340が実質的に切頂矢形状の断面を有する実施形態を示す。即ち、スペースブロック340は、矢の先端部が除去されたことを除いて、矢尻形の断面を有する。この構造は、隣接する各キャビティに対する流れ偏向構造を提供する。図12において、その他の実施形態のように、流れ偏向構造が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分のみにわたっていてもよい。
【0029】
図14に、スペースブロック340が実質的に六角形の断面を有しており、この断面が、対を成す隣接するキャビティの各々に対する流れ偏向構造を提供する実施形態を示す。図15には、各流れ偏向構造344が、対を成す隣接する各キャビティ内へと延在する、実質的に尖った縁部構造358を含む実施形態を示す。
【0030】
流れ偏向構造344がキャビティの深さ方向の一部分のみに及ぶ、本明細書に記載のいずれの実施形態においても、流れ偏向構造をキャビティの深さ方向の約半分に延在させてもよい。その他の実施形態では、流れ偏向構造344が、少なくとも1つのキャビティの深さ方向の大部分に及ぶ。
【0031】
本明細書において「第1」「第2」等の用語は、いかなる順序、数量、又は重要性も示すことはなく、或る要素を他の要素と区別するために用いられている。本明細書において単数形は、数量を限定するものではなく、言及した項目が少なくとも1つは存在することを示す。数量に関連して使用する「約」といった修飾語は、提示した値と、文脈上明らかな意味(例えば、特定の数量の計測に関連する誤差の程度)を含む。本明細書において複数形は、これによって修飾される用語の単数形及び複数形の両方、即ちその用語が示すものを1つ以上含むことを意図している(例えば、「(複数の)金属」は、1種又は複数の金属を含む)。本明細書に開示されている範囲は、包括的で、個々に組み合わせが可能である(例えば、「約25重量%以下、特に約5重量%から約20重量%」の範囲は、両端点と「約5重量%から約25重量%」の範囲の全ての中間値を含む)。
【0032】
本明細書では様々な実施形態を説明したが、本明細書から明らかなように、当業者は各要素を様々に組み合わせたり、改変又は改良したりできるが、これらも本発明の範囲に含まれる。また、特定の状況又は材料に合わせて、本発明の教示に多くの修正を加えることができるが、これらも本発明の本質的な範囲から逸脱することはない。したがって、本発明は、本発明を実施するために熟考された最適な態様として開示された特定の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隣接するコイルを有するロータ(10)と、
隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロック(40)であって、該スペースブロック(40)の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロック(40)と、を備えた発電電動機械であって、
前記スペースブロック(40)は、前記スペースブロック(40)のキャビティ対向面(360)上に、前記キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めて該クーラントの流れの方向を前記少なくとも1つのキャビティの中央領域に向けて変更する流れ偏向構造(144)を有する、発電電動機械。
【請求項2】
前記流れ偏向構造(144)が単一の流れ偏向構造(144)から成る、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項3】
前記少なくとも1つのキャビティが、前記スペースブロック(40)の両側に1つずつの、1対のキャビティ(54、56)から成り、
前記スペースブロック(40)が、前記1対のキャビティ(54、56)の各々に対して流れ偏向構造(144)を形成する実質的にT形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項4】
各流れ偏向構造(144)が、それぞれのキャビティの深さ方向の一部分(18)のみに及ぶ、請求項3に記載の発電電動機械。
【請求項5】
前記実質的にT形の断面の各屈曲部(18)が湾曲面(148)を有する、請求項3に記載の発電電動機械。
【請求項6】
前記スペースブロック(40)が実質的にL形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項7】
前記実質的にL形の断面の屈曲部(18)が湾曲面(148)を有する、請求項6に記載の発電電動機械。
【請求項8】
前記流れ偏向構造(144)が、ロータ(10)に対向する突出構造を有する実質的に直角三角形の区画を含む、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項9】
前記流れ偏向構造(144)が、前記少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分(18)のみに及ぶ、請求項8に記載の発電電動機械。
【請求項10】
前記スペースブロック(40)が実質的に切頂矢形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項1】
複数の隣接するコイルを有するロータ(10)と、
隣接するコイルどうしの間に配置されたスペースブロック(40)であって、該スペースブロック(40)の隣且つ互いに隣接するコイルどうしの間に少なくとも1つのキャビティを画成するスペースブロック(40)と、を備えた発電電動機械であって、
前記スペースブロック(40)は、前記スペースブロック(40)のキャビティ対向面(360)上に、前記キャビティ内で循環するクーラントの流れを堰き止めて該クーラントの流れの方向を前記少なくとも1つのキャビティの中央領域に向けて変更する流れ偏向構造(144)を有する、発電電動機械。
【請求項2】
前記流れ偏向構造(144)が単一の流れ偏向構造(144)から成る、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項3】
前記少なくとも1つのキャビティが、前記スペースブロック(40)の両側に1つずつの、1対のキャビティ(54、56)から成り、
前記スペースブロック(40)が、前記1対のキャビティ(54、56)の各々に対して流れ偏向構造(144)を形成する実質的にT形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項4】
各流れ偏向構造(144)が、それぞれのキャビティの深さ方向の一部分(18)のみに及ぶ、請求項3に記載の発電電動機械。
【請求項5】
前記実質的にT形の断面の各屈曲部(18)が湾曲面(148)を有する、請求項3に記載の発電電動機械。
【請求項6】
前記スペースブロック(40)が実質的にL形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項7】
前記実質的にL形の断面の屈曲部(18)が湾曲面(148)を有する、請求項6に記載の発電電動機械。
【請求項8】
前記流れ偏向構造(144)が、ロータ(10)に対向する突出構造を有する実質的に直角三角形の区画を含む、請求項1に記載の発電電動機械。
【請求項9】
前記流れ偏向構造(144)が、前記少なくとも1つのキャビティの深さ方向の一部分(18)のみに及ぶ、請求項8に記載の発電電動機械。
【請求項10】
前記スペースブロック(40)が実質的に切頂矢形の断面を有する、請求項1に記載の発電電動機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−80764(P2012−80764A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216912(P2011−216912)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
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