コイル状炭素繊維の製造装置
【課題】長時間稼働させた場合であっても固体炭素の除去作業を行う必要がなく、長時間連続してコイル状炭素繊維を製造することができ、しかも耐久性に優れたコイル状炭素繊維の製造装置を提供する。
【解決手段】コイル状炭素繊維の製造装置1は、反応容器2と、反応容器2に挿入されており反応容器2内に原料ガスを供給する導入管3と、金属粉末より成る触媒が塗布されている基板4とを備えている。導入管3には原料ガスを前記反応容器内に供給するための複数の導入口8が開口しており、導入口8から供給された原料ガスが加熱分解されて基板4上にコイル状炭素繊維を成長させる。
【解決手段】コイル状炭素繊維の製造装置1は、反応容器2と、反応容器2に挿入されており反応容器2内に原料ガスを供給する導入管3と、金属粉末より成る触媒が塗布されている基板4とを備えている。導入管3には原料ガスを前記反応容器内に供給するための複数の導入口8が開口しており、導入口8から供給された原料ガスが加熱分解されて基板4上にコイル状炭素繊維を成長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状炭素繊維の製造装置に関する。特に、高精度な接触センサ等に利用可能なコイル状炭素繊維を、効率よくしかも高収率で製造することのできる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル状炭素繊維(カーボンマイクロコイル)は、直径0.01〜100μm、ピッチ0.1〜10μmの螺旋構造を有する炭素繊維である。コイル状炭素繊維には伸縮性があり、その伸縮によって電気特性であるインダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、及びレジスタンス(R)が変化するという性質を備えている。具体的には、コイル状炭素繊維が伸びると前記L、C、及びRが増加し、コイル状炭素繊維が縮むと前記L、C、及びRは減少する。コイル状炭素繊維の伸縮と前記L、C、Rの値の変化とは非常に高い相関を有しており、且つ再現性がよいことから、このコイル状炭素繊維は触圧を高精度に測定するセンサに利用することが可能である。又、コイル状炭素繊維には、電磁波を吸収して熱に変換する性質が知られており、この性質を利用して電磁波吸収材に利用することが可能である。
【0003】
このような特性を有するコイル状炭素繊維を製造するための従来技術として、特許文献1に示す製造装置が開示されている。特許文献1の製造装置は、円筒状の反応容器を備えており、その内部に触媒を担持した基板が配置されている。反応容器には細い金属管を溶接した材料ガスの導入口が複数設けられており、この導入口から導入された材料ガスが基板上に塗布された触媒によって反応して、基板上にコイル状炭素繊維が析出する。特許文献1の製造装置によって、コイル状炭素繊維を高い収率で得ることができる。
【0004】
しかし、特許文献1の製造装置はその構成が複雑であることから、より簡易な構成の製造装置によってコイル状炭素繊維を製造する試みが種々なされてきた。例えば、大きな反応容器に原料ガス導入孔を1カ所設け、この導入孔から大量の原料ガスを導入する装置によって、コイル状炭素繊維の製造が試みられている。
【0005】
又、特許文献2には、カーボンナノ構造物の製造装置が開示されている。特許文献2の製造装置は、原料ガス供給管と触媒供給管が配設された反応炉を備えている。特許文献2の製造装置の原料ガス供給管には複数の排出孔が設けられていて、反応路の中の反応領域全体に原料ガスを供給することでカーボンナノチューブが効率よく製造される。特許文献2の製造装置によって製造される一般的なカーボンナノ構造物は、炭素原子から構成されるナノサイズの物質である。特許文献2の製造装置によって、直径0.01〜100μm、ピッチ0.1〜10μmの螺旋構造を有する炭素繊維を製造することは極めて困難である。
【特許文献1】特許第4064514号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2006/033367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコイル状炭素繊維の製造装置は、特許文献1に開示されているように、反応容器である大口径の反応管に原料ガスの導入口となる細い管を多数溶接して形成されるために形状が複雑となっており、この結果装置の作成が困難で装置自体が高価なものとなっていた。
【0007】
これに加えて、特許文献1の製造装置では、反応容器の導入口周辺に固体炭素が析出する恐れがあった。原料ガスの導入口の周辺に固体炭素が析出した場合には、反応時間の経過と共に導入口の径が小さくなり、ガス流量が次第に変化して一定条件でコイル状炭素繊維の合成が出来ない可能性があった。このように固体炭素が析出した場合には、固体炭素を確実に除去することを目的として一定時間ごとに製造を中止して高温(800℃以上)で空焼きによる除去作業を行う必要があり、製造装置の稼働率が落ちる恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するために成されたものであって、安価に構成されており、且つ固体炭素の析出の恐れがないために稼働率が高いコイル状炭素繊維の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、加熱器を備えている反応容器と、反応容器に挿入されており反応容器内に原料ガスを供給する導入管と、反応容器の内部に配設されており金属粉末より成る触媒が塗布されている基板とを備えている。原料ガスを供給する導入管には原料ガスを反応容器内に供給するための複数の導入口が開口しており、導入口から供給された原料ガスが加熱分解されて基板上にコイル状炭素繊維を成長させる。
【0010】
発明者らは、種々の検討の結果、原料ガスの導入管を反応容器に挿入しこの導入管に設けられている複数の導入口から原料ガスを反応容器中の基板上に供給することで、固体炭素を反応容器内に析出させることなくコイル状炭素繊維を製造できることを見出して本発明をなすに至った。本発明のコイル状炭素繊維の製造装置の反応容器と導入管の構成は、従来よりもより簡易な工程で製造することが可能であるために、装置をより安価に得ることができる。
【0011】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、基板の温度が600℃以上950℃以下に制御されていることが好ましい。基板の温度を上記温度に制御することにより、固体炭素を析出させることなく高い収率でコイル状炭素繊維を製造することが可能となるためである。
【0012】
又、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、導入管に開口している導入口の直径が0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。導入口の直径が上記範囲であることにより、基板に均一にコイル状炭素繊維を製造することが可能となるからである。
【0013】
更に、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、導入管に開口している導入口の軸が基板面に対して略垂直であることが好ましい。導入口の軸が基板面に対して略垂直であることによって、より一層高い収率でコイル状炭素繊維を製造することが可能となるからである。尚、ここでいう略垂直とは、導入口の軸が基板面に対して70度から110度の角度をなしていることをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、加熱器を備えている反応容器に原料ガスを供給するための複数の導入口が開口している導入管を挿入し、且つ反応容器内に触媒が塗布されている基板を配設した構成を備えている。このような製造装置の構成は、従来よりもより構成が簡易であるために製造が容易であり、従来よりも安価に提供される。
【0015】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置によって、コイル状炭素繊維を、基板上に従来よりもより均一に析出させることが可能となる。
【0016】
又、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、原料ガスの導入管を反応容器に挿入し、この導入管に設けられている複数の導入口から原料ガスを反応容器中に供給することで、固体炭素を反応容器内に析出させることなくコイル状炭素繊維を製造することができる。固体炭素の導入管周辺部への析出が予め防止されていることにより、基板に供給する原料ガスの量を常に一定に維持することができる。この結果、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造することが可能となる。
【0017】
更に、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、固体炭素の導入管周辺部への析出が予め防止されているために、固体炭素の除去作業を行う必要がなく、長時間連続してコイル状炭素繊維を製造することができる。すなわち、本発明によって、非常に稼働率が高いコイル状炭素繊維の製造装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るコイル状炭素繊維の製造装置の最良の形態を列記する。
【0019】
反応容器は、石英、アルミナ、ムライト等のセラミックス、金属管の内面をセラミックスライニングしたもの、又はインコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)等の耐熱金属材料のいずれかの材料を、円筒形、多角柱又は多面体に加工したものを使用することが好ましい。特に、触媒の活性に影響せず、コイル生成反応以外の副反応を抑制することが可能であることから、透明又は不透明な石英で反応容器を形成することが好ましい。
【0020】
基板は、セラミックス、グラファイト又はニッケルの焼結体で形成される。基板の表面には、金属粉末よりなる触媒が塗布されて担持されている。
【0021】
基板に塗布される金属触媒として、ニッケル、チタン、タングステン等から選択される1又は2以上の金属、若しくはこれらの金属の酸素との固溶体、酸化物、炭化物、硫化物、リン化物、炭酸化物又は炭硫化物を用いることができる。コイル状炭素繊維のコイル径、コイルピッチ及びコイル長さは、金属触媒の各結晶面での触媒活性の異方性や粒径に依存するため、触媒として最も好ましい金属の種類は、触媒活性の異方性特性に優れたニッケルである。基板上で金属触媒は、粉末状、金属板、粉末の焼結板のいずれの形態で担持されることができるが、平均粒径が10nm〜50μmの微粉末又は焼結板の形態で担持されることが最も好ましい。微粉末の金属触媒の場合は、基板上へ散布又は塗布して配置することができる。
【0022】
基板の両端に接続線を接続して、基板を接続線によって反応容器内に支持することが可能である。接続線を設ける場合には、一方の接続線を反応容器内の基板に静電場を形成するための静電場発生装置に接続し、他方の接続線の端部を解放された状態にすることができる。このような構成の静電場発生装置によって基板に供給される静電場は、マイナスの無変動静電場である。基板がマイナスに帯電していることで、熱分解によりイオン化されてプラスの電荷を帯びた反応種が、基板上の金属触媒に効率良く誘導されるとともに、反応種の分子運動が活性化されて炭素繊維の成長が促進される。帯電した基板は、コイル状炭素繊維の反応速度を向上させることができるとともに、収率を向上させることができる。また、金属触媒の結晶面での異方性を大きくすることにより、コイル径の小さいコイル状炭素繊維が得られ、異方性を小さくすることにより、コイル径の大きいコイル状炭素繊維が得られる。このような特性を利用することで、コイル状炭素繊維のコイル径の大きさを制御することができる。
【0023】
更に、基板上の金属触媒の粒径を制御することで、コイル状炭素繊維のコイル径、コイルピッチ及びコイル長さに、固有の特性を付与ことができる。金属触媒の粒径が小さいとコイル径は小さくなり、金属触媒の粒径が大きいとコイル径は大きくなる。
【0024】
反応容器は、その外周部に加熱と保温を行うための加熱器を備えている。加熱器によって反応容器は、基板の温度が600〜950℃の範囲に維持されるように内部の雰囲気温度が設定される。好ましくは、厳密な温度管理が可能な加熱器によって、基板の温度は700〜850℃の範囲内に設定される。基板の温度が700〜850℃であるときにコイル状炭素繊維の収率は最も高くなる。反応温度が600℃未満又は950℃を越えるとコイル状炭素繊維はほとんど得られない。
【0025】
反応容器に挿入される導入管は、透明な石英管で形成されることが好ましい。反応容器内に原料ガスを供給する導入管には、等間隔で複数の原料ガスの導入口が設けられている。導入口は、導入管の反応容器との接続位置即ち導入管の入り口から若干離れた位置に設けられる。このような導入口の配置により、導入管の内部に流れ込んだ原料ガスは、その線速度に拘わらず反応容器の中に放出される前に導入管内の高温雰囲気によって充分に昇温し熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれる組成に変化した状態で基板状の触媒に到達する。この結果、原料ガスから高い収率でコイル状炭素繊維が生成される。
【実施例】
【0026】
以下に、図面を参照しつつ本発明のコイル状炭素繊維の製造装置及び本製造装置を用いたコイル状炭素繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
(実施例1) 図1に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置1の主な構成を示す縦断面図を示す。本実施例の製造装置1は、透明石英管で形成されている内径55mm、長さ1000mmの円筒状の反応容器2を備えている。反応容器2は長手方向の軸がほぼ水平となるように静置されて、両端部がシール部材9によって閉塞されている。内径8mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管3が、反応容器2の一端部(図1において左側で示される端部)のシール部材9を貫通して挿入され、固定されている。
【0028】
反応容器2内の中心部には、コイル状炭素繊維が成長する場所としての基材を構成する基板4が配置されている。基板4は、触媒である平均粒径5μmのニッケル粉末が塗布されたグラファイト製の幅38mm、長さ300mm、厚さ3.6mmの平板である。
【0029】
反応容器2の両端部のシール部材9にはキャリアガスである窒素ガスの供給管5が貫通している。又、反応容器2の一端部であって導入管3が貫通している側と同じ側のシール部材9には、排気管6が貫通している。排気管6は、基板4の下方に伸びており、2個の直径5mmの開口部から排気ガスを吸引して図示されない排気装置に回収する。
【0030】
更に反応容器2の内部には、基板4近傍の温度を測定するための熱電対7が配置されており、反応容器2の外周部には、反応容器2を所定温度に加熱するための図示されない加熱器が配置されている。本実施例における加熱器は、反応容器2内の温度を、コイル状炭素繊維の生成に最も好ましい温度である740℃〜770℃に維持する。
【0031】
導入管3は、図示されない原料ガス容器に接続されている。導入管3と原料ガス容器の間にはバルブが設けられていて、ガスの流量が調節可能となっている。本実施例における原料ガスは、水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガス、窒素ガス(キャリアガスとして機能する)の4種のガスの混合物であり、その導入量が制御手段によって制御される。
【0032】
図2に導入管3の部分拡大図を示す。図2に示すように、本実施例における導入管3の終端は閉鎖されており、導入管3の下側には、断面が円形の13個の原料ガスの導入口8が25mm間隔で設けられている。以下に於いては、便宜上、導入口8を、シール部材9に近い側(図2において左側となる側)から順に、A,B,C,D,F,G,H,I,J,K,L,Mの符号を付して識別する。図3に、原料ガスの導入口A〜Mのそれぞれの直径を示す。本実施例における13個の導入口8の直径は、2.20mmから3.1mmの範囲で形成されている。最も直径の小さい導入口は導入口J,K,Lであり、これらの直径は2.20mmである。又、最も直径の大きな導入口は、直径3.1mmの導入口Aである。
【0033】
導入管3に設けられている導入口8のうち導入口Aは、導入管3の入り口からの距離が100mmの位置に配置されている。又、導入管3は反応容器2の軸とほぼ平行に挿入されているので、他の導入口B〜Mは、導入管3の入り口から離れるに従って反応容器2の中心部により近い位置に配置されている。この結果、反応容器2の中を通過する原料ガスは、最も導入管3の通過距離の短い導入口Aから放出される場合であっても、高温の温度雰囲気に充分に曝されることで昇温して熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれた状態で基板上に供給される。
【0034】
導入管3の導入口A〜Mは、基板4の上の触媒の配置された領域(触媒配置領域)と対向するように開口している。導入口A〜Mの軸の角度は、基板4の触媒が配置された面に対して略直角となるように開口している。そして、基板4上の触媒配置領域と原料ガスの導入口との距離は、10mm以上15mm以下に設定されている。
【0035】
以下に、本実施例の製造装置1を用いて実施されるコイル状炭素繊維の製造工程について詳細に説明する。
【0036】
図4に、製造装置1によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件の一覧を示す。以下に於いては、特に図4の最初に挙げた番号1に係る製造方法を適用した場合について、コイル状炭素繊維の製造方法を詳細に説明する。
【0037】
まず最初に、反応容器2の供給管5から、反応容器2内に窒素ガスを導入する。そして、この窒素ガス雰囲気下で、加熱器によって反応容器2全体を加熱し、熱電対7を用いて温度を監視する。反応容器2の内部を750℃まで昇温した後、水素ガス1319ml/min、硫化水素1.2ml/min、アセチレン(C2H2)500ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能する)400ml/minを導入してコイル状炭素繊維の製造を開始する。
【0038】
コイル状炭素繊維製造時の導入口A〜Mの詳細な温度分布を図5に示す。開口部A〜Mの温度は、開口部Aの755℃が最も低く、反応容器2の中心部に近い開口部Iの766℃が最も高いが、いずれの開口部もコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。導入管3の内部に流れ込んだ原料ガスは、導入管3内の高温雰囲気によって約750℃に昇温して熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれる組成に変化した状態で導入口A〜Mから反応容器2内に放出され、高温の基板4上の触媒に到達する。コイル状炭素繊維の製造中には、排気管6によって、反応容器2内の排気ガスの回収を行う。
【0039】
高温の原料ガスは、基板4上の反応の場においてニッケルによりアセチレンが接触的な触媒作用により熱分解され、炭化ニッケルの単結晶{炭化ニッケル(Ni3 C)に少量の硫黄原子(S)と微量の酸素原子(O)が含まれるもの}が形成される。さらに、炭化ニッケル単結晶がニッケルと炭素に分解され、各結晶面において粒内及び粒界拡散が生じ、基板4上に炭素繊維が形成される。ニッケル各結晶面での触媒活性には異方性があり、触媒活性の大きい結晶面から成長した炭素繊維は成長が大きく、触媒活性の小さい結晶面から成長した炭素繊維の外側になるようにカールしながら成長してコイル状となる。
【0040】
コイル状炭素繊維の製造時間は連続して1時間とし、1時間経過後に加熱器を停止して加熱を止める。原料ガスの供給を停止して再度供給管5から窒素ガスを導入し、窒素雰囲気下で室温まで冷却を行う。シール部材9を取り外して、コイル状炭素繊維が成長した基板4を反応管から取り出す。
【0041】
番号1の製造方法によってコイル状炭素繊維10が析出している基板4表面の写真を図6に示す。図6中で、特にコイル状炭素繊維10が成長し析出している部分は導入口8の軸と基板4の交点付近である。全ての導入口A〜Mの直下の位置に、コイル状炭素繊維が析出することが確認され、導入口の位置と直径がコイル状炭素繊維の製造に適していることが確認された。一方で、導入口8の軸と基板4の交点の周辺部でもコイル状炭素繊維が充分に製造されることが、同時に確認された。図4の番号1に示す製造方法によってコイル状炭素繊維を製造することで、基板4の触媒上にコイル状炭素繊維は5〜8mmの厚さに析出し、平均して21mg/cm2の収量が得られる。
【0042】
本実施例の製造装置1から基板4を取り出した後、導入管3を反応容器2から取り出して、反応容器2の内部を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。更に、導入口A〜Mの周辺を詳細に確認したところ、いずれの導入口に於いても固体炭素の析出は観察されず、導入口の口径に実質的な変化は認められなかった。この結果、1時間のコイル状炭素繊維の製造工程の期間を通じて、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。
【0043】
本実施例の製造装置1を用い、図4の番号1に示す製造方法によってコイル状炭素繊維10を製造したあと、番号2〜9に示すコイル状炭素繊維の製造方法を引き続き検証した。番号2及び番号3に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して、原料ガスの組成を変更したものである。、番号4〜6に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して原料ガスの組成を変更し、更に反応温度を750℃に変更したものである。番号7〜9に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して原料ガスの組成を変更し、更に反応温度を740℃に変更したものである。各々の製造方法によって、コイル状炭素繊維を製造した後、その収量と固体炭素の析出の有無を毎回確認した。製造装置1を用いて、くりかえし9回に亘って延べ9時間のコイル状炭素繊維の製造を行ったにも拘わらず、固体炭素の導入管周辺部への析出は全く観察されず、固体炭素の除去作業は、全く必要とされなかった。又、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。又、番号2〜9に示す製造方法によって、番号1に示す製造方法と同等のコイル状炭素繊維の収率が確認された。
【0044】
(実施例2)図7に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置11の主な構成を示す水平断面図を示す。本実施例の製造装置11の反応容器2の内部には、内径8mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管13の左右両側に1枚ずつ合計2枚の触媒を塗布した基板4が平行に配置されている。導入管13には、導入管13の入り口に向かって左側(図7では導入管13の下面で示される側)と右側(図7では導入管13の上面で示される側)の互いに180°反対側となる位置に左右2列の導入口8が設けられている。2列の導入口8の軸は、左右一対の基板4と略垂直となるように設けられている。反応容器2の両端部のシール部材9には、窒素ガスの供給管5と排気管6がそれぞれ貫通している。一方のシール部材9に配置された供給管5は、反応容器2を挟んで他方のシール部材9に配置された排気管6と対向するように配置されている。
【0045】
図8に、図7のVIII−VIII断面図を示し、図9に本実施例における導入管13の部分拡大上面図を示す。図8に示すように、本実施例における反応容器2の内部には、導入管13を上下に挟み込むように、左右の基板4の間にサセプター12が配置されていて基板4を支持している。又、図9に示すように、本実施例における導入管13の右側と左側には、それぞれ断面が円形で左右で対をなす13対の原料ガスの導入口18が25mm間隔で等間隔に設けられている。基板4上の触媒配置領域と原料ガスの導入口18との間の距離は、10mm以上15mm以下に設定されている。以下に於いては、便宜上、導入口18をシール部材9に近い側(図9において左側となる側)から順に、A,B,C,D,F,G,H,I,J,K,L,Mの符号を付し、更に左右の列を識別するためにシール部材9に向かって左側の列(図9で下側に位置する列)に1の添え字を付し、シール部材9に向かって右側の列(図9で上側に位置する列)に2の添え字を付して識別する。
【0046】
図10に、原料ガスの導入口A〜Mのそれぞれの直径を示す。本実施例における26個の導入口8の直径は、2.35mmから3.60mmの範囲で形成されている。最も直径の小さい導入口は導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2であり、これらの直径は2.35mmである。又、最も直径の大きな導入口は、直径3.60mmの導入口M1,M2である。
【0047】
図11に、製造装置11によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表にして示す。ここで、図11に示した番号11から番号19までの製造方法は、原料ガスである水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガスの流量がそれぞれ実施例2の2倍となっており、基板温度及び反応時間についてはそれぞれ実施例1と同一の条件となっている。番号11に係る製造方法の条件を挙げると、水素ガス2638ml/min、硫化水素2.4ml/min、アセチレン(C2H2)1000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)800ml/minの原料ガスを使用して、基板温度を760°に維持し、反応時間は60分である。番号12〜19の製造方法では、水素ガスを1838〜3038ml/min、硫化水素1.6〜2.8ml/min、アセチレン(C2H2)800〜1000ml/min、窒素ガス800ml/minの原料ガスを使用しており、又いずれも基板の温度がコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。
【0048】
本実施例の製造装置11を用いて図11の番号11から19の製造方法によってコイル状炭素繊維を製造した結果、反応容器2の左右の基板4の表面に5mmから7mmのコイル状炭素繊維を析出させて製造することができた。コイル状炭素繊維は、それぞれ導入口A〜Mに対向する位置に最も多く約7mmの析出量を得ることができるが、その周辺部であっても約5mmの析出量を得ることができた。2枚の基板4全体の収量は、いずれの製造方法によっても、アセチレン基準で70〜80モル%であり、非常に高いことが確認されている。
【0049】
本実施例の製造装置11を用いて、図11の番号11に示す製造方法でコイル状炭素繊維を製造した後、反応容器2の内部と導入管13を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。導入管13の全ての導入口A〜Mの周辺を詳細に確認したところ、固体炭素の析出は観察されず、導入口の口径に実質的な変化は認められなかった。この結果、1時間のコイル状炭素繊維の製造工程の期間を通じて、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。更に、同一の製造方法によって、コイル状炭素繊維の製造を10回繰り返したが、固体炭素の導入管周辺部への析出は全く観察されず、固体炭素の除去作業は、全く必要とされなかった。又、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。
【0050】
本実施例の製造装置11は、2枚の基板4を配置してコイル状炭素繊維の製造を行うことができ、非常に効率よく高い収率でコイル状炭素繊維を得ることができた。又、導入管13に設けられた直径が2.35mmの導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2に固体炭素の析出がなく、むしろこれらの小さな導入口に対向する基板4では、導入口の周辺にも均一にコイル状炭素繊維が析出するという好ましい効果があることが明らかとなった。
【0051】
(実施例3)図12に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置21の主な構成を示す水平断面図を示す。本実施例の製造装置21の反応容器2の両端部のシール部材9には、導入管13が挿入されている側の端部に窒素ガスの供給管5貫通している。又、他方のシール部材9に2本の排気管6が配置されている。他の構成については、導入管13の構成を含めて実施例2の製造装置11と同一であり、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0052】
図13に、製造装置21によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表で示す。ここで示した番号21から番号26までの製造方法は、反応温度が760°であり、反応時間は60分に統一されている。又、原料ガス、水素ガスを1648〜2297ml/min、硫化水素1.5〜3.0ml/min、アセチレン400〜1200ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)800〜1000ml/minの原料ガスを使用している。上記製造方法によって、実施例2と同様に、アセチレン基準で70〜80モル%のコイル状炭素繊維が得られる。
【0053】
製造装置21を用いて、図13の番号26の製造方法により製造したコイル状炭素繊維のSEM写真を以下に示す。導入管3の入り口からの距離が100mm〜150mmである導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2に対向する基板の触媒配置領域の表面には、図14に示すように直径が10μm以下の比較的規則的に巻いた長いコイル状炭素繊維を析出させることができる。導入口D1,D2に対向する基板には、図15に示すように直径が10μm以下の比較的規則的に巻いた長いコイル状炭素繊維を主に析出させることができるが、同時に一部短いコイル状炭素繊維を得ることができる。導入口E1,E2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維を示すSEM写真を図16に示し、導入口F1,F2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維を示すSEM写真を図17に示す。これらの導入口付近で得られるコイル状炭素繊維の状態は非常に類似しており、短くピッチが不規則なコイル状炭素繊維の割合が増加する。導入口H1,H2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維のSEM写真を図18に示す。図18に示すコイル状炭素繊維の形状は、図16,17に示すものと類似しているが、その直径がより大きい傾向が確認される。導入管3の入り口からの距離が225mm〜300mmの位置に開口する導入口J1,J2から導入管13の終端に近いM1,M2に対向する基板の表面には、図19に示すように直径が大きくコイルのピッチが不規則となったコイル状炭素繊維を多く析出させることができる。
【0054】
基板4上の金属触媒の種類と粒径が均一であるにも拘わらず、導入口18の位置と大きさによって直径と形状が異なるコイル状炭素繊維が得られるのは、導入管13の内部に流れ込んだ原料ガスの熱分解が導入管13を通過する間に進んでおり、各々の導入口から放出される原料ガスの成分種の種類と割合が異なっていることが一因である。又、コイル状炭素繊維の直径は、以下に述べるように導入口18の直径との間に相関関係があることも、今回の検証で明らかとなっている。
【0055】
図20に、導入口18の位置とコイル状炭素繊維の直径との関係を示す。図10に示したように、導入口A1,A2からI1,I2の直径は、2.35mmから2.50mmでほぼ一定である。これに対して、導入管13の入り口からの距離が25mmの位置に開口する導入口G1,G2までは、ほぼ一定の8μm以下の直径を有するコイル状炭素繊維が析出するが、それよりも入り口からの距離が遠い導入口では、導入管13の入り口からの距離に比例してコイル状炭素繊維の直径が大きくなる。
【0056】
図21に、導入口18の直径とコイル状炭素繊維の直径との関係を示す。導入口18の直径が2.5mm以下の場合には、析出するコイル状炭素繊維の直径は10μm以下となるが、導入口18の直径が2.5mmを超える場合にはコイル状炭素繊維の直径が急激に大きくなる。
【0057】
本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置21は、一端部に窒素ガスの供給管5と原料ガスの導入管13が設けられており、他端部に排気管6が設けられている。このような構成により、実施例2とは異なり、反応容器2中には、図12で右向きの矢印Wで示されるような原料ガスの流れを生じさせることができ、排気がよりスムーズに行われる。原料ガスの流れが反応容器2の中に生じていた場合であっても、種々の製造方法によって析出するコイル状炭素繊維のアセチレンガスに対する収率は実施例2と同等であり、又実施例2と同様に固体炭素の析出は全く認められない。
【0058】
又、製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維の直径は、導入管13の入り口から導入口18までの距離と、導入口18の直径との間に高い相関があることが明らかとなった。この結果、製造装置21の導入管13上の導入口18の位置と大きさとを制御することで、得られるコイル状炭素繊維の直径を制御することが可能であり、且つ一度の製造工程で直径の異なるコイル状炭素繊維を同時に製造できることが検証された。
【0059】
(実施例4)本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置31について、反応容器32の長手方向の軸に対して垂直な面の断面図を図22に示す。本実施例の製造装置31は、透明石英管で形成されている内径100mm、長さ1000mmの円筒状の反応容器32を備えている。反応容器32の内部には、内径30mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管33が配置されている。導入管33の上下と左右には、それぞれ1枚ずつ合計4枚の触媒を塗布した基板4が、隣り合う基板4に対して互いに垂直になるように配置されている。導入管33には上下左右に1列ずつ断面が円形の導入口38が設けられている。導入口38は、それぞれ1列当たり13個設けられている。4列に配置されている導入口8の軸は、それぞれが対向する基板4の内面(導入管33に対向する面)と略垂直となるように設けられており、各々が矢印39で示される方向に原料ガスを放出する。尚、ここでいう略垂直とは、基板に対する軸の角度が70°以上110°以下であることをいう。その他の構成については実施例2と同一であり、重複説明を省略する。
【0060】
図23に、製造装置31によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表で示す。ここで、図23に示した番号31から番号39までの製造方法は、原料ガスである水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガスの流量がそれぞれ実施例1の4倍となっており、基板温度及び反応時間についてはそれぞれ実施例1と同一の条件となっている。番号31に係る製造方法の条件を挙げると、水素ガス5276ml/min、硫化水素4.8ml/min、アセチレン(C2H2)2000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)1600ml/minの原料ガスを使用して、基板温度を760°に維持し、反応時間は60分である。番号32〜39の製造方法では、水素ガスを3676〜6076ml/min、硫化水素3.2〜5.6ml/min、アセチレン(C2H2)1600〜2000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)1600ml/minの原料ガスを使用しており、又いずれも基板の温度がコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。
【0061】
本実施例の製造装置31を用いて図23の番号31から39の製造方法によってコイル状炭素繊維を製造した結果、反応容器32の上下左右の基板4の表面に、5mmから7mmのコイル状炭素繊維を析出させて製造することができた。コイル状炭素繊維は、それぞれ導入口38に対向する位置で最も多く得ることができるが、その周辺部でも比較的均一に得ることができた。4枚の基板4全体の収量は、いずれの製造方法によっても、アセチレン基準で80〜85モル%であり、非常に収率が高いことが確認されている。又、コイル状炭素繊維の直径や形状についても、図24にそのSEM写真を示すように、実施例3で詳細に解析を行ったものと同等の特性を有するものが得られている。
【0062】
本実施例の製造装置31を用いて、コイル状炭素繊維を連続して製造した後、反応容器32の内部と導入管33を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。
【0063】
本実施例の製造装置31は、太い導入管33の周囲に4枚の基板4を配置して、流量を多くして原料ガスを供給することにより、非常に収率高くコイル状炭素繊維の製造を行うことができる。
【0064】
(実施例5)本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置は、実施例4とほぼ同じ構成を備えている。本実施例の製造装置の導入管に設けられている導入口の大きさは、直径0.1mmの円形である。本実施例の製造装置によって、コイル状炭素繊維を基板に均一に析出させて高収率で製造することができる。
【0065】
(実施例6)本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置は、実施例4とほぼ同じ構成を備えている。本実施例の製造装置の導入管に設けられている導入口の大きさは、直径10mmの円形である。本実施例の製造装置によって、コイル状炭素繊維を基板に均一に析出させて高収率で製造することができる。
【0066】
以上、発明を実施するための最良の形態と実施例に基づいて、本発明に係るコイル状炭素繊維の製造装置の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、導入管の導入孔の形状は円形に限定されず、多角形で構成することができる。導入管の周囲の基板の配置についても、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1のコイル状炭素繊維の製造装置1を示す概略縦断面図である。
【図2】導入管3の部分拡大図である。
【図3】実施例1の導入口8の直径を示す図である。
【図4】実施例1の製造装置1に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図5】実施例1の基板4の温度分布を示す図である。
【図6】実施例1の基板4上にコイル状炭素繊維10が析出している状態を示す写真である。
【図7】実施例2のコイル状炭素繊維の製造装置11を示す水平断面図である。
【図8】実施例2の製造装置11のVIII-VIII線概略断面図である。
【図9】導入管13の部分拡大図である。
【図10】実施例2の導入口18の直径を示す図である。
【図11】実施例2の製造装置11に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図12】実施例3のコイル状炭素繊維の製造装置21を示す水平断面図である。
【図13】実施例3の製造装置21に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図14】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図15】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図16】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図17】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図18】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図19】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図20】実施例3の製造装置21の導入口の位置と製造されるコイル状炭素繊維の直径との関係を示す図である。
【図21】実施例3の製造装置21の導入口の大きさと製造されるコイル状炭素繊維の直径との関係を示す図である。
【図22】実施例4のコイル状炭素繊維の製造装置31の、長手方向の軸に対して垂直な面による断面図である。
【図23】実施例4の製造装置31に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図24】実施例4の製造装置31によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【符号の説明】
【0068】
1,11,21,31 コイル状炭素繊維の製造装置
2,32 反応容器
3,13 導入管
4 基板
5 窒素ガスの供給管
6 排気管
7 熱電対
8 導入口
9 シール部材
10 コイル状炭素繊維
12 サセプター
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状炭素繊維の製造装置に関する。特に、高精度な接触センサ等に利用可能なコイル状炭素繊維を、効率よくしかも高収率で製造することのできる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル状炭素繊維(カーボンマイクロコイル)は、直径0.01〜100μm、ピッチ0.1〜10μmの螺旋構造を有する炭素繊維である。コイル状炭素繊維には伸縮性があり、その伸縮によって電気特性であるインダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、及びレジスタンス(R)が変化するという性質を備えている。具体的には、コイル状炭素繊維が伸びると前記L、C、及びRが増加し、コイル状炭素繊維が縮むと前記L、C、及びRは減少する。コイル状炭素繊維の伸縮と前記L、C、Rの値の変化とは非常に高い相関を有しており、且つ再現性がよいことから、このコイル状炭素繊維は触圧を高精度に測定するセンサに利用することが可能である。又、コイル状炭素繊維には、電磁波を吸収して熱に変換する性質が知られており、この性質を利用して電磁波吸収材に利用することが可能である。
【0003】
このような特性を有するコイル状炭素繊維を製造するための従来技術として、特許文献1に示す製造装置が開示されている。特許文献1の製造装置は、円筒状の反応容器を備えており、その内部に触媒を担持した基板が配置されている。反応容器には細い金属管を溶接した材料ガスの導入口が複数設けられており、この導入口から導入された材料ガスが基板上に塗布された触媒によって反応して、基板上にコイル状炭素繊維が析出する。特許文献1の製造装置によって、コイル状炭素繊維を高い収率で得ることができる。
【0004】
しかし、特許文献1の製造装置はその構成が複雑であることから、より簡易な構成の製造装置によってコイル状炭素繊維を製造する試みが種々なされてきた。例えば、大きな反応容器に原料ガス導入孔を1カ所設け、この導入孔から大量の原料ガスを導入する装置によって、コイル状炭素繊維の製造が試みられている。
【0005】
又、特許文献2には、カーボンナノ構造物の製造装置が開示されている。特許文献2の製造装置は、原料ガス供給管と触媒供給管が配設された反応炉を備えている。特許文献2の製造装置の原料ガス供給管には複数の排出孔が設けられていて、反応路の中の反応領域全体に原料ガスを供給することでカーボンナノチューブが効率よく製造される。特許文献2の製造装置によって製造される一般的なカーボンナノ構造物は、炭素原子から構成されるナノサイズの物質である。特許文献2の製造装置によって、直径0.01〜100μm、ピッチ0.1〜10μmの螺旋構造を有する炭素繊維を製造することは極めて困難である。
【特許文献1】特許第4064514号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2006/033367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコイル状炭素繊維の製造装置は、特許文献1に開示されているように、反応容器である大口径の反応管に原料ガスの導入口となる細い管を多数溶接して形成されるために形状が複雑となっており、この結果装置の作成が困難で装置自体が高価なものとなっていた。
【0007】
これに加えて、特許文献1の製造装置では、反応容器の導入口周辺に固体炭素が析出する恐れがあった。原料ガスの導入口の周辺に固体炭素が析出した場合には、反応時間の経過と共に導入口の径が小さくなり、ガス流量が次第に変化して一定条件でコイル状炭素繊維の合成が出来ない可能性があった。このように固体炭素が析出した場合には、固体炭素を確実に除去することを目的として一定時間ごとに製造を中止して高温(800℃以上)で空焼きによる除去作業を行う必要があり、製造装置の稼働率が落ちる恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するために成されたものであって、安価に構成されており、且つ固体炭素の析出の恐れがないために稼働率が高いコイル状炭素繊維の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、加熱器を備えている反応容器と、反応容器に挿入されており反応容器内に原料ガスを供給する導入管と、反応容器の内部に配設されており金属粉末より成る触媒が塗布されている基板とを備えている。原料ガスを供給する導入管には原料ガスを反応容器内に供給するための複数の導入口が開口しており、導入口から供給された原料ガスが加熱分解されて基板上にコイル状炭素繊維を成長させる。
【0010】
発明者らは、種々の検討の結果、原料ガスの導入管を反応容器に挿入しこの導入管に設けられている複数の導入口から原料ガスを反応容器中の基板上に供給することで、固体炭素を反応容器内に析出させることなくコイル状炭素繊維を製造できることを見出して本発明をなすに至った。本発明のコイル状炭素繊維の製造装置の反応容器と導入管の構成は、従来よりもより簡易な工程で製造することが可能であるために、装置をより安価に得ることができる。
【0011】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、基板の温度が600℃以上950℃以下に制御されていることが好ましい。基板の温度を上記温度に制御することにより、固体炭素を析出させることなく高い収率でコイル状炭素繊維を製造することが可能となるためである。
【0012】
又、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、導入管に開口している導入口の直径が0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。導入口の直径が上記範囲であることにより、基板に均一にコイル状炭素繊維を製造することが可能となるからである。
【0013】
更に、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、導入管に開口している導入口の軸が基板面に対して略垂直であることが好ましい。導入口の軸が基板面に対して略垂直であることによって、より一層高い収率でコイル状炭素繊維を製造することが可能となるからである。尚、ここでいう略垂直とは、導入口の軸が基板面に対して70度から110度の角度をなしていることをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、加熱器を備えている反応容器に原料ガスを供給するための複数の導入口が開口している導入管を挿入し、且つ反応容器内に触媒が塗布されている基板を配設した構成を備えている。このような製造装置の構成は、従来よりもより構成が簡易であるために製造が容易であり、従来よりも安価に提供される。
【0015】
本発明のコイル状炭素繊維の製造装置によって、コイル状炭素繊維を、基板上に従来よりもより均一に析出させることが可能となる。
【0016】
又、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、原料ガスの導入管を反応容器に挿入し、この導入管に設けられている複数の導入口から原料ガスを反応容器中に供給することで、固体炭素を反応容器内に析出させることなくコイル状炭素繊維を製造することができる。固体炭素の導入管周辺部への析出が予め防止されていることにより、基板に供給する原料ガスの量を常に一定に維持することができる。この結果、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造することが可能となる。
【0017】
更に、本発明のコイル状炭素繊維の製造装置は、固体炭素の導入管周辺部への析出が予め防止されているために、固体炭素の除去作業を行う必要がなく、長時間連続してコイル状炭素繊維を製造することができる。すなわち、本発明によって、非常に稼働率が高いコイル状炭素繊維の製造装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るコイル状炭素繊維の製造装置の最良の形態を列記する。
【0019】
反応容器は、石英、アルミナ、ムライト等のセラミックス、金属管の内面をセラミックスライニングしたもの、又はインコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)等の耐熱金属材料のいずれかの材料を、円筒形、多角柱又は多面体に加工したものを使用することが好ましい。特に、触媒の活性に影響せず、コイル生成反応以外の副反応を抑制することが可能であることから、透明又は不透明な石英で反応容器を形成することが好ましい。
【0020】
基板は、セラミックス、グラファイト又はニッケルの焼結体で形成される。基板の表面には、金属粉末よりなる触媒が塗布されて担持されている。
【0021】
基板に塗布される金属触媒として、ニッケル、チタン、タングステン等から選択される1又は2以上の金属、若しくはこれらの金属の酸素との固溶体、酸化物、炭化物、硫化物、リン化物、炭酸化物又は炭硫化物を用いることができる。コイル状炭素繊維のコイル径、コイルピッチ及びコイル長さは、金属触媒の各結晶面での触媒活性の異方性や粒径に依存するため、触媒として最も好ましい金属の種類は、触媒活性の異方性特性に優れたニッケルである。基板上で金属触媒は、粉末状、金属板、粉末の焼結板のいずれの形態で担持されることができるが、平均粒径が10nm〜50μmの微粉末又は焼結板の形態で担持されることが最も好ましい。微粉末の金属触媒の場合は、基板上へ散布又は塗布して配置することができる。
【0022】
基板の両端に接続線を接続して、基板を接続線によって反応容器内に支持することが可能である。接続線を設ける場合には、一方の接続線を反応容器内の基板に静電場を形成するための静電場発生装置に接続し、他方の接続線の端部を解放された状態にすることができる。このような構成の静電場発生装置によって基板に供給される静電場は、マイナスの無変動静電場である。基板がマイナスに帯電していることで、熱分解によりイオン化されてプラスの電荷を帯びた反応種が、基板上の金属触媒に効率良く誘導されるとともに、反応種の分子運動が活性化されて炭素繊維の成長が促進される。帯電した基板は、コイル状炭素繊維の反応速度を向上させることができるとともに、収率を向上させることができる。また、金属触媒の結晶面での異方性を大きくすることにより、コイル径の小さいコイル状炭素繊維が得られ、異方性を小さくすることにより、コイル径の大きいコイル状炭素繊維が得られる。このような特性を利用することで、コイル状炭素繊維のコイル径の大きさを制御することができる。
【0023】
更に、基板上の金属触媒の粒径を制御することで、コイル状炭素繊維のコイル径、コイルピッチ及びコイル長さに、固有の特性を付与ことができる。金属触媒の粒径が小さいとコイル径は小さくなり、金属触媒の粒径が大きいとコイル径は大きくなる。
【0024】
反応容器は、その外周部に加熱と保温を行うための加熱器を備えている。加熱器によって反応容器は、基板の温度が600〜950℃の範囲に維持されるように内部の雰囲気温度が設定される。好ましくは、厳密な温度管理が可能な加熱器によって、基板の温度は700〜850℃の範囲内に設定される。基板の温度が700〜850℃であるときにコイル状炭素繊維の収率は最も高くなる。反応温度が600℃未満又は950℃を越えるとコイル状炭素繊維はほとんど得られない。
【0025】
反応容器に挿入される導入管は、透明な石英管で形成されることが好ましい。反応容器内に原料ガスを供給する導入管には、等間隔で複数の原料ガスの導入口が設けられている。導入口は、導入管の反応容器との接続位置即ち導入管の入り口から若干離れた位置に設けられる。このような導入口の配置により、導入管の内部に流れ込んだ原料ガスは、その線速度に拘わらず反応容器の中に放出される前に導入管内の高温雰囲気によって充分に昇温し熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれる組成に変化した状態で基板状の触媒に到達する。この結果、原料ガスから高い収率でコイル状炭素繊維が生成される。
【実施例】
【0026】
以下に、図面を参照しつつ本発明のコイル状炭素繊維の製造装置及び本製造装置を用いたコイル状炭素繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
(実施例1) 図1に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置1の主な構成を示す縦断面図を示す。本実施例の製造装置1は、透明石英管で形成されている内径55mm、長さ1000mmの円筒状の反応容器2を備えている。反応容器2は長手方向の軸がほぼ水平となるように静置されて、両端部がシール部材9によって閉塞されている。内径8mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管3が、反応容器2の一端部(図1において左側で示される端部)のシール部材9を貫通して挿入され、固定されている。
【0028】
反応容器2内の中心部には、コイル状炭素繊維が成長する場所としての基材を構成する基板4が配置されている。基板4は、触媒である平均粒径5μmのニッケル粉末が塗布されたグラファイト製の幅38mm、長さ300mm、厚さ3.6mmの平板である。
【0029】
反応容器2の両端部のシール部材9にはキャリアガスである窒素ガスの供給管5が貫通している。又、反応容器2の一端部であって導入管3が貫通している側と同じ側のシール部材9には、排気管6が貫通している。排気管6は、基板4の下方に伸びており、2個の直径5mmの開口部から排気ガスを吸引して図示されない排気装置に回収する。
【0030】
更に反応容器2の内部には、基板4近傍の温度を測定するための熱電対7が配置されており、反応容器2の外周部には、反応容器2を所定温度に加熱するための図示されない加熱器が配置されている。本実施例における加熱器は、反応容器2内の温度を、コイル状炭素繊維の生成に最も好ましい温度である740℃〜770℃に維持する。
【0031】
導入管3は、図示されない原料ガス容器に接続されている。導入管3と原料ガス容器の間にはバルブが設けられていて、ガスの流量が調節可能となっている。本実施例における原料ガスは、水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガス、窒素ガス(キャリアガスとして機能する)の4種のガスの混合物であり、その導入量が制御手段によって制御される。
【0032】
図2に導入管3の部分拡大図を示す。図2に示すように、本実施例における導入管3の終端は閉鎖されており、導入管3の下側には、断面が円形の13個の原料ガスの導入口8が25mm間隔で設けられている。以下に於いては、便宜上、導入口8を、シール部材9に近い側(図2において左側となる側)から順に、A,B,C,D,F,G,H,I,J,K,L,Mの符号を付して識別する。図3に、原料ガスの導入口A〜Mのそれぞれの直径を示す。本実施例における13個の導入口8の直径は、2.20mmから3.1mmの範囲で形成されている。最も直径の小さい導入口は導入口J,K,Lであり、これらの直径は2.20mmである。又、最も直径の大きな導入口は、直径3.1mmの導入口Aである。
【0033】
導入管3に設けられている導入口8のうち導入口Aは、導入管3の入り口からの距離が100mmの位置に配置されている。又、導入管3は反応容器2の軸とほぼ平行に挿入されているので、他の導入口B〜Mは、導入管3の入り口から離れるに従って反応容器2の中心部により近い位置に配置されている。この結果、反応容器2の中を通過する原料ガスは、最も導入管3の通過距離の短い導入口Aから放出される場合であっても、高温の温度雰囲気に充分に曝されることで昇温して熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれた状態で基板上に供給される。
【0034】
導入管3の導入口A〜Mは、基板4の上の触媒の配置された領域(触媒配置領域)と対向するように開口している。導入口A〜Mの軸の角度は、基板4の触媒が配置された面に対して略直角となるように開口している。そして、基板4上の触媒配置領域と原料ガスの導入口との距離は、10mm以上15mm以下に設定されている。
【0035】
以下に、本実施例の製造装置1を用いて実施されるコイル状炭素繊維の製造工程について詳細に説明する。
【0036】
図4に、製造装置1によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件の一覧を示す。以下に於いては、特に図4の最初に挙げた番号1に係る製造方法を適用した場合について、コイル状炭素繊維の製造方法を詳細に説明する。
【0037】
まず最初に、反応容器2の供給管5から、反応容器2内に窒素ガスを導入する。そして、この窒素ガス雰囲気下で、加熱器によって反応容器2全体を加熱し、熱電対7を用いて温度を監視する。反応容器2の内部を750℃まで昇温した後、水素ガス1319ml/min、硫化水素1.2ml/min、アセチレン(C2H2)500ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能する)400ml/minを導入してコイル状炭素繊維の製造を開始する。
【0038】
コイル状炭素繊維製造時の導入口A〜Mの詳細な温度分布を図5に示す。開口部A〜Mの温度は、開口部Aの755℃が最も低く、反応容器2の中心部に近い開口部Iの766℃が最も高いが、いずれの開口部もコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。導入管3の内部に流れ込んだ原料ガスは、導入管3内の高温雰囲気によって約750℃に昇温して熱分解され、コイル状炭素繊維の成長に最も必要とされる最適化学種(特にCH3+)が多量に含まれる組成に変化した状態で導入口A〜Mから反応容器2内に放出され、高温の基板4上の触媒に到達する。コイル状炭素繊維の製造中には、排気管6によって、反応容器2内の排気ガスの回収を行う。
【0039】
高温の原料ガスは、基板4上の反応の場においてニッケルによりアセチレンが接触的な触媒作用により熱分解され、炭化ニッケルの単結晶{炭化ニッケル(Ni3 C)に少量の硫黄原子(S)と微量の酸素原子(O)が含まれるもの}が形成される。さらに、炭化ニッケル単結晶がニッケルと炭素に分解され、各結晶面において粒内及び粒界拡散が生じ、基板4上に炭素繊維が形成される。ニッケル各結晶面での触媒活性には異方性があり、触媒活性の大きい結晶面から成長した炭素繊維は成長が大きく、触媒活性の小さい結晶面から成長した炭素繊維の外側になるようにカールしながら成長してコイル状となる。
【0040】
コイル状炭素繊維の製造時間は連続して1時間とし、1時間経過後に加熱器を停止して加熱を止める。原料ガスの供給を停止して再度供給管5から窒素ガスを導入し、窒素雰囲気下で室温まで冷却を行う。シール部材9を取り外して、コイル状炭素繊維が成長した基板4を反応管から取り出す。
【0041】
番号1の製造方法によってコイル状炭素繊維10が析出している基板4表面の写真を図6に示す。図6中で、特にコイル状炭素繊維10が成長し析出している部分は導入口8の軸と基板4の交点付近である。全ての導入口A〜Mの直下の位置に、コイル状炭素繊維が析出することが確認され、導入口の位置と直径がコイル状炭素繊維の製造に適していることが確認された。一方で、導入口8の軸と基板4の交点の周辺部でもコイル状炭素繊維が充分に製造されることが、同時に確認された。図4の番号1に示す製造方法によってコイル状炭素繊維を製造することで、基板4の触媒上にコイル状炭素繊維は5〜8mmの厚さに析出し、平均して21mg/cm2の収量が得られる。
【0042】
本実施例の製造装置1から基板4を取り出した後、導入管3を反応容器2から取り出して、反応容器2の内部を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。更に、導入口A〜Mの周辺を詳細に確認したところ、いずれの導入口に於いても固体炭素の析出は観察されず、導入口の口径に実質的な変化は認められなかった。この結果、1時間のコイル状炭素繊維の製造工程の期間を通じて、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。
【0043】
本実施例の製造装置1を用い、図4の番号1に示す製造方法によってコイル状炭素繊維10を製造したあと、番号2〜9に示すコイル状炭素繊維の製造方法を引き続き検証した。番号2及び番号3に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して、原料ガスの組成を変更したものである。、番号4〜6に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して原料ガスの組成を変更し、更に反応温度を750℃に変更したものである。番号7〜9に示す製造方法は、番号1に示す製造方法に対して原料ガスの組成を変更し、更に反応温度を740℃に変更したものである。各々の製造方法によって、コイル状炭素繊維を製造した後、その収量と固体炭素の析出の有無を毎回確認した。製造装置1を用いて、くりかえし9回に亘って延べ9時間のコイル状炭素繊維の製造を行ったにも拘わらず、固体炭素の導入管周辺部への析出は全く観察されず、固体炭素の除去作業は、全く必要とされなかった。又、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。又、番号2〜9に示す製造方法によって、番号1に示す製造方法と同等のコイル状炭素繊維の収率が確認された。
【0044】
(実施例2)図7に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置11の主な構成を示す水平断面図を示す。本実施例の製造装置11の反応容器2の内部には、内径8mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管13の左右両側に1枚ずつ合計2枚の触媒を塗布した基板4が平行に配置されている。導入管13には、導入管13の入り口に向かって左側(図7では導入管13の下面で示される側)と右側(図7では導入管13の上面で示される側)の互いに180°反対側となる位置に左右2列の導入口8が設けられている。2列の導入口8の軸は、左右一対の基板4と略垂直となるように設けられている。反応容器2の両端部のシール部材9には、窒素ガスの供給管5と排気管6がそれぞれ貫通している。一方のシール部材9に配置された供給管5は、反応容器2を挟んで他方のシール部材9に配置された排気管6と対向するように配置されている。
【0045】
図8に、図7のVIII−VIII断面図を示し、図9に本実施例における導入管13の部分拡大上面図を示す。図8に示すように、本実施例における反応容器2の内部には、導入管13を上下に挟み込むように、左右の基板4の間にサセプター12が配置されていて基板4を支持している。又、図9に示すように、本実施例における導入管13の右側と左側には、それぞれ断面が円形で左右で対をなす13対の原料ガスの導入口18が25mm間隔で等間隔に設けられている。基板4上の触媒配置領域と原料ガスの導入口18との間の距離は、10mm以上15mm以下に設定されている。以下に於いては、便宜上、導入口18をシール部材9に近い側(図9において左側となる側)から順に、A,B,C,D,F,G,H,I,J,K,L,Mの符号を付し、更に左右の列を識別するためにシール部材9に向かって左側の列(図9で下側に位置する列)に1の添え字を付し、シール部材9に向かって右側の列(図9で上側に位置する列)に2の添え字を付して識別する。
【0046】
図10に、原料ガスの導入口A〜Mのそれぞれの直径を示す。本実施例における26個の導入口8の直径は、2.35mmから3.60mmの範囲で形成されている。最も直径の小さい導入口は導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2であり、これらの直径は2.35mmである。又、最も直径の大きな導入口は、直径3.60mmの導入口M1,M2である。
【0047】
図11に、製造装置11によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表にして示す。ここで、図11に示した番号11から番号19までの製造方法は、原料ガスである水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガスの流量がそれぞれ実施例2の2倍となっており、基板温度及び反応時間についてはそれぞれ実施例1と同一の条件となっている。番号11に係る製造方法の条件を挙げると、水素ガス2638ml/min、硫化水素2.4ml/min、アセチレン(C2H2)1000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)800ml/minの原料ガスを使用して、基板温度を760°に維持し、反応時間は60分である。番号12〜19の製造方法では、水素ガスを1838〜3038ml/min、硫化水素1.6〜2.8ml/min、アセチレン(C2H2)800〜1000ml/min、窒素ガス800ml/minの原料ガスを使用しており、又いずれも基板の温度がコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。
【0048】
本実施例の製造装置11を用いて図11の番号11から19の製造方法によってコイル状炭素繊維を製造した結果、反応容器2の左右の基板4の表面に5mmから7mmのコイル状炭素繊維を析出させて製造することができた。コイル状炭素繊維は、それぞれ導入口A〜Mに対向する位置に最も多く約7mmの析出量を得ることができるが、その周辺部であっても約5mmの析出量を得ることができた。2枚の基板4全体の収量は、いずれの製造方法によっても、アセチレン基準で70〜80モル%であり、非常に高いことが確認されている。
【0049】
本実施例の製造装置11を用いて、図11の番号11に示す製造方法でコイル状炭素繊維を製造した後、反応容器2の内部と導入管13を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。導入管13の全ての導入口A〜Mの周辺を詳細に確認したところ、固体炭素の析出は観察されず、導入口の口径に実質的な変化は認められなかった。この結果、1時間のコイル状炭素繊維の製造工程の期間を通じて、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。更に、同一の製造方法によって、コイル状炭素繊維の製造を10回繰り返したが、固体炭素の導入管周辺部への析出は全く観察されず、固体炭素の除去作業は、全く必要とされなかった。又、導入口A〜Mから供給される原料ガスの量は常に一定に維持されており、高い収率で安定してコイル状炭素繊維を製造可能であったことが確認された。
【0050】
本実施例の製造装置11は、2枚の基板4を配置してコイル状炭素繊維の製造を行うことができ、非常に効率よく高い収率でコイル状炭素繊維を得ることができた。又、導入管13に設けられた直径が2.35mmの導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2に固体炭素の析出がなく、むしろこれらの小さな導入口に対向する基板4では、導入口の周辺にも均一にコイル状炭素繊維が析出するという好ましい効果があることが明らかとなった。
【0051】
(実施例3)図12に、本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置21の主な構成を示す水平断面図を示す。本実施例の製造装置21の反応容器2の両端部のシール部材9には、導入管13が挿入されている側の端部に窒素ガスの供給管5貫通している。又、他方のシール部材9に2本の排気管6が配置されている。他の構成については、導入管13の構成を含めて実施例2の製造装置11と同一であり、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0052】
図13に、製造装置21によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表で示す。ここで示した番号21から番号26までの製造方法は、反応温度が760°であり、反応時間は60分に統一されている。又、原料ガス、水素ガスを1648〜2297ml/min、硫化水素1.5〜3.0ml/min、アセチレン400〜1200ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)800〜1000ml/minの原料ガスを使用している。上記製造方法によって、実施例2と同様に、アセチレン基準で70〜80モル%のコイル状炭素繊維が得られる。
【0053】
製造装置21を用いて、図13の番号26の製造方法により製造したコイル状炭素繊維のSEM写真を以下に示す。導入管3の入り口からの距離が100mm〜150mmである導入口A1,A2,B1,B2,C1,C2に対向する基板の触媒配置領域の表面には、図14に示すように直径が10μm以下の比較的規則的に巻いた長いコイル状炭素繊維を析出させることができる。導入口D1,D2に対向する基板には、図15に示すように直径が10μm以下の比較的規則的に巻いた長いコイル状炭素繊維を主に析出させることができるが、同時に一部短いコイル状炭素繊維を得ることができる。導入口E1,E2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維を示すSEM写真を図16に示し、導入口F1,F2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維を示すSEM写真を図17に示す。これらの導入口付近で得られるコイル状炭素繊維の状態は非常に類似しており、短くピッチが不規則なコイル状炭素繊維の割合が増加する。導入口H1,H2に対向する基板の表面で析出するコイル状炭素繊維のSEM写真を図18に示す。図18に示すコイル状炭素繊維の形状は、図16,17に示すものと類似しているが、その直径がより大きい傾向が確認される。導入管3の入り口からの距離が225mm〜300mmの位置に開口する導入口J1,J2から導入管13の終端に近いM1,M2に対向する基板の表面には、図19に示すように直径が大きくコイルのピッチが不規則となったコイル状炭素繊維を多く析出させることができる。
【0054】
基板4上の金属触媒の種類と粒径が均一であるにも拘わらず、導入口18の位置と大きさによって直径と形状が異なるコイル状炭素繊維が得られるのは、導入管13の内部に流れ込んだ原料ガスの熱分解が導入管13を通過する間に進んでおり、各々の導入口から放出される原料ガスの成分種の種類と割合が異なっていることが一因である。又、コイル状炭素繊維の直径は、以下に述べるように導入口18の直径との間に相関関係があることも、今回の検証で明らかとなっている。
【0055】
図20に、導入口18の位置とコイル状炭素繊維の直径との関係を示す。図10に示したように、導入口A1,A2からI1,I2の直径は、2.35mmから2.50mmでほぼ一定である。これに対して、導入管13の入り口からの距離が25mmの位置に開口する導入口G1,G2までは、ほぼ一定の8μm以下の直径を有するコイル状炭素繊維が析出するが、それよりも入り口からの距離が遠い導入口では、導入管13の入り口からの距離に比例してコイル状炭素繊維の直径が大きくなる。
【0056】
図21に、導入口18の直径とコイル状炭素繊維の直径との関係を示す。導入口18の直径が2.5mm以下の場合には、析出するコイル状炭素繊維の直径は10μm以下となるが、導入口18の直径が2.5mmを超える場合にはコイル状炭素繊維の直径が急激に大きくなる。
【0057】
本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置21は、一端部に窒素ガスの供給管5と原料ガスの導入管13が設けられており、他端部に排気管6が設けられている。このような構成により、実施例2とは異なり、反応容器2中には、図12で右向きの矢印Wで示されるような原料ガスの流れを生じさせることができ、排気がよりスムーズに行われる。原料ガスの流れが反応容器2の中に生じていた場合であっても、種々の製造方法によって析出するコイル状炭素繊維のアセチレンガスに対する収率は実施例2と同等であり、又実施例2と同様に固体炭素の析出は全く認められない。
【0058】
又、製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維の直径は、導入管13の入り口から導入口18までの距離と、導入口18の直径との間に高い相関があることが明らかとなった。この結果、製造装置21の導入管13上の導入口18の位置と大きさとを制御することで、得られるコイル状炭素繊維の直径を制御することが可能であり、且つ一度の製造工程で直径の異なるコイル状炭素繊維を同時に製造できることが検証された。
【0059】
(実施例4)本実施例のコイル状炭素繊維の製造装置31について、反応容器32の長手方向の軸に対して垂直な面の断面図を図22に示す。本実施例の製造装置31は、透明石英管で形成されている内径100mm、長さ1000mmの円筒状の反応容器32を備えている。反応容器32の内部には、内径30mm、長さ700mmの透明石英管製の原料ガスの導入管33が配置されている。導入管33の上下と左右には、それぞれ1枚ずつ合計4枚の触媒を塗布した基板4が、隣り合う基板4に対して互いに垂直になるように配置されている。導入管33には上下左右に1列ずつ断面が円形の導入口38が設けられている。導入口38は、それぞれ1列当たり13個設けられている。4列に配置されている導入口8の軸は、それぞれが対向する基板4の内面(導入管33に対向する面)と略垂直となるように設けられており、各々が矢印39で示される方向に原料ガスを放出する。尚、ここでいう略垂直とは、基板に対する軸の角度が70°以上110°以下であることをいう。その他の構成については実施例2と同一であり、重複説明を省略する。
【0060】
図23に、製造装置31によって長時間連続的にコイル状炭素繊維を高収率で製造することができ、しかも固体炭素の析出しない製造方法の詳細な条件を一覧表で示す。ここで、図23に示した番号31から番号39までの製造方法は、原料ガスである水素ガス、硫化水素ガス、アセチレンガスの流量がそれぞれ実施例1の4倍となっており、基板温度及び反応時間についてはそれぞれ実施例1と同一の条件となっている。番号31に係る製造方法の条件を挙げると、水素ガス5276ml/min、硫化水素4.8ml/min、アセチレン(C2H2)2000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)1600ml/minの原料ガスを使用して、基板温度を760°に維持し、反応時間は60分である。番号32〜39の製造方法では、水素ガスを3676〜6076ml/min、硫化水素3.2〜5.6ml/min、アセチレン(C2H2)1600〜2000ml/min、窒素ガス(キャリアガスとして機能)1600ml/minの原料ガスを使用しており、又いずれも基板の温度がコイル状炭素繊維の収率が高いとされる700〜850℃の温度範囲内で制御されている。
【0061】
本実施例の製造装置31を用いて図23の番号31から39の製造方法によってコイル状炭素繊維を製造した結果、反応容器32の上下左右の基板4の表面に、5mmから7mmのコイル状炭素繊維を析出させて製造することができた。コイル状炭素繊維は、それぞれ導入口38に対向する位置で最も多く得ることができるが、その周辺部でも比較的均一に得ることができた。4枚の基板4全体の収量は、いずれの製造方法によっても、アセチレン基準で80〜85モル%であり、非常に収率が高いことが確認されている。又、コイル状炭素繊維の直径や形状についても、図24にそのSEM写真を示すように、実施例3で詳細に解析を行ったものと同等の特性を有するものが得られている。
【0062】
本実施例の製造装置31を用いて、コイル状炭素繊維を連続して製造した後、反応容器32の内部と導入管33を詳細に確認した。その結果、固体炭素は全く析出しておらず、固体炭素の除去作業は全く必要とされなかった。
【0063】
本実施例の製造装置31は、太い導入管33の周囲に4枚の基板4を配置して、流量を多くして原料ガスを供給することにより、非常に収率高くコイル状炭素繊維の製造を行うことができる。
【0064】
(実施例5)本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置は、実施例4とほぼ同じ構成を備えている。本実施例の製造装置の導入管に設けられている導入口の大きさは、直径0.1mmの円形である。本実施例の製造装置によって、コイル状炭素繊維を基板に均一に析出させて高収率で製造することができる。
【0065】
(実施例6)本実施例におけるコイル状炭素繊維の製造装置は、実施例4とほぼ同じ構成を備えている。本実施例の製造装置の導入管に設けられている導入口の大きさは、直径10mmの円形である。本実施例の製造装置によって、コイル状炭素繊維を基板に均一に析出させて高収率で製造することができる。
【0066】
以上、発明を実施するための最良の形態と実施例に基づいて、本発明に係るコイル状炭素繊維の製造装置の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、導入管の導入孔の形状は円形に限定されず、多角形で構成することができる。導入管の周囲の基板の配置についても、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1のコイル状炭素繊維の製造装置1を示す概略縦断面図である。
【図2】導入管3の部分拡大図である。
【図3】実施例1の導入口8の直径を示す図である。
【図4】実施例1の製造装置1に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図5】実施例1の基板4の温度分布を示す図である。
【図6】実施例1の基板4上にコイル状炭素繊維10が析出している状態を示す写真である。
【図7】実施例2のコイル状炭素繊維の製造装置11を示す水平断面図である。
【図8】実施例2の製造装置11のVIII-VIII線概略断面図である。
【図9】導入管13の部分拡大図である。
【図10】実施例2の導入口18の直径を示す図である。
【図11】実施例2の製造装置11に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図12】実施例3のコイル状炭素繊維の製造装置21を示す水平断面図である。
【図13】実施例3の製造装置21に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図14】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図15】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図16】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図17】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図18】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図19】実施例3の製造装置21によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【図20】実施例3の製造装置21の導入口の位置と製造されるコイル状炭素繊維の直径との関係を示す図である。
【図21】実施例3の製造装置21の導入口の大きさと製造されるコイル状炭素繊維の直径との関係を示す図である。
【図22】実施例4のコイル状炭素繊維の製造装置31の、長手方向の軸に対して垂直な面による断面図である。
【図23】実施例4の製造装置31に適用される製造方法の条件を示す図である。
【図24】実施例4の製造装置31によって製造されるコイル状炭素繊維のSEM写真である。
【符号の説明】
【0068】
1,11,21,31 コイル状炭素繊維の製造装置
2,32 反応容器
3,13 導入管
4 基板
5 窒素ガスの供給管
6 排気管
7 熱電対
8 導入口
9 シール部材
10 コイル状炭素繊維
12 サセプター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器を備えている反応容器と、
前記反応容器に挿入されており、前記反応容器内に原料ガスを供給する導入管と、
前記反応容器の内部に配設されており、金属粉末より成る触媒が塗布されている基板とを備えており、
前記導入管には原料ガスを前記反応容器内に供給するための複数の導入口が開口しており、前記導入口から供給された前記原料ガスが加熱分解されて前記基板上にコイル状炭素繊維を成長させることを特徴とするコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項2】
基板の温度が、600℃以上950℃以下に制御されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項3】
導入管に開口している導入口の直径が0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項4】
導入管に開口している導入口の軸が基板面に対して略垂直であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項1】
加熱器を備えている反応容器と、
前記反応容器に挿入されており、前記反応容器内に原料ガスを供給する導入管と、
前記反応容器の内部に配設されており、金属粉末より成る触媒が塗布されている基板とを備えており、
前記導入管には原料ガスを前記反応容器内に供給するための複数の導入口が開口しており、前記導入口から供給された前記原料ガスが加熱分解されて前記基板上にコイル状炭素繊維を成長させることを特徴とするコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項2】
基板の温度が、600℃以上950℃以下に制御されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項3】
導入管に開口している導入口の直径が0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【請求項4】
導入管に開口している導入口の軸が基板面に対して略垂直であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のコイル状炭素繊維の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図6】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図6】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図24】
【公開番号】特開2010−95405(P2010−95405A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267167(P2008−267167)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(399054000)シーエムシー技術開発 株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(399054000)シーエムシー技術開発 株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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