説明

コギングトルクの検査方法及びコギングトルクの検査装置

【課題】検査に要する時間を短縮してモータの生産性の向上を図ることができるコギングトルクの検査方法を提供する。
【解決手段】環状に配置した複数の分割コア11の内周側に芯金を、外周側に筒状の加圧治具31をそれぞれ配置した後、加圧治具31にて各分割コア11に径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う分割コア11同士を圧着させるとともに、各分割コア11と加圧治具31とを径方向に圧着させる。次に、環状の各分割コア11を加圧治具31内に保持させた状態のまま該分割コア11から芯金を取り除き、その後、加圧治具31内に保持された環状の各分割コア11と、該分割コア11の内周側に回転可能に設けられた基準ロータ41とからなる検査用擬似モータ50を用いてコギングトルクを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのコギングトルクの検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータのステータは、環状部及び該環状部から径方向内側に突出する複数のティース部を有するステータコアと、各ティース部にそれぞれ巻線が巻装されてなるコイルとを備え、このステータがモータケース内に圧入固定又は焼き嵌め固定されるようになっている。このようなステータのステータコアとしては、例えば、特許文献1に示すように、環状部を周方向に分割した形状の分割環状部とその分割環状部から突出する上記ティース部とをそれぞれ有する複数の分割コアからなり、分割環状部が環状とされる前にティース部に巻線を巻装することでその巻装作業を容易にしたものがある。
【0003】
しかしながら、上記のような分割コアによりステータコアを構成するものでは、各分割コアを環状に配置して固定しなければならないため、複数のティース部を一体的に成形したステータコアに比べ、ステータコアの真円度の低下等を招きやすいといった問題が生じる。ステータコアの真円度が低下すると、ステータコアとロータマグネットとの間のエアギャップが不均一となり易く、コギングトルクが増大してしまうという問題がある。そこで、例えば特許文献1の製造方法では、各分割コアのティース部先端を芯金に倣わせて各分割コアを環状に配置し、その環状化された分割コアの外周から径方向内側に圧力をかけつつ各分割コアの分割環状部間を溶接することで、ステータコアの内径精度が確保されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−268179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分割コアの寸法精度が悪い場合には、上記特許文献1の製造方法によっても所定のコギングトルクの低減効果が得られない場合がある。そこで、分割コアの製造後において、或るロットの分割コアの寸法精度が思わしくなく、その分割コアを使ったモータにコギングトルク不良が生じる虞がある場合、そのロットの中の数台を先行して組み付けラインで完成させ、その完成したモータのコギングトルクを検査する。コギングトルクの検査は、モータの回転軸を強制的に回転させた際に検出されるトルク特性(トルク波形)を解析することにより行なわれる。そして、コギングトルクの検査後、その検査結果に基づいてそのロットでの組み付けラインの流動可否を決定するという方法が考えられる。しかしながら、この方法では、コギングトルク不良によるモータ完成状態の不良品の個数は抑えることができるが、ロットの中の数台のモータを製造する必要があるため、そのコギングトルクの検査に要する時間が増大し、その結果、モータの生産性が低下して製造時間が増大となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、検査に要する時間を短縮してモータの生産性の向上を図ることができるコギングトルクの検査方法及びコギングトルクの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、環状に配置した複数の分割コアの内周側に芯金を、外周側に筒状の加圧治具をそれぞれ配置する配置工程と、前記配置工程後、前記加圧治具にて前記各分割コアに径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う前記分割コア同士を圧着させるとともに、前記各分割コアと前記加圧治具とを径方向に圧着させるコア圧着工程と、前記コア圧着工程後、環状の前記各分割コアを前記加圧治具内に保持させた状態のまま該分割コアから前記芯金を取り除き、その後、前記加圧治具内に保持された環状の前記各分割コアと、該分割コアの内周側に回転可能に設けられた基準ロータとからなる検査用擬似モータを用いてコギングトルクを測定する測定工程とを有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、コギングトルクの検査がモータの完成品ではなく検査用擬似モータを用いて実施される。検査用擬似モータは、加圧治具と芯金によって該加圧治具内に圧着された環状の分割コアと、その内周側に設けられた基準ロータとからなる。このため、検査用擬似モータの製造では、隣り合う分割コア同士を例えば溶接等にて固定する工程や、各分割コアにボビンやコイルを装着する工程、また、コイルを装着することに付随して必要となるコイル線の電気的接続の工程等を省くことができる。これにより、本発明では、モータの完成品を用いて検査する場合に比べて、コギングトルクの検査に要する時間を短縮してモータの生産性の向上を図ることができる。また、加圧治具による加圧力を、モータの完成品においてモータケースに圧入固定又は焼嵌め固定等された分割コアが該モータケースから受ける圧力と同等すれば、検査用擬似モータにおける検査精度を、完成品のモータを使ったコギングトルクの検査精度と略同等とすることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコギングトルクの検査方法において、前記加圧治具は、拡縮可能に構成されたことを特徴とする。
この発明では、環状に配置された分割コアに対して径方向内側への押圧力を好適に付与することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のコギングトルクの検査方法において、前記芯金は、拡縮可能に構成されたことを特徴とする。
この発明では、環状に配置された分割コアから芯金を取り除く際にその芯金を縮径することで、芯金を容易に引き抜くことが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコギングトルクの検査方法において、前記基準ロータは、完成品のモータに使用可能であることを特徴とする。
この発明では、検査用擬似モータの基準ロータを使ってモータを製品化できるため、コストの増加を抑えることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、環状に配置した複数の分割コアの内周側に配置される芯金と、該分割コアの外周側に配置される筒状の加圧治具とを備え、前記加圧治具にて前記各分割コアに径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う前記分割コア同士を圧着させるとともに、前記各分割コアと前記加圧治具とを径方向に圧着させ、環状の前記各分割コアを前記加圧治具内に保持させた状態のまま該分割コアから前記芯金を取り除いた後、前記加圧治具内に保持された環状の前記各分割コアと、該分割コアの内周側に回転可能に設けた基準ロータとで検査用擬似モータを構成し、該検査用擬似モータを用いてコギングトルクを測定することを特徴とする。
【0013】
この発明では、コギングトルクの検査をモータの完成品ではなく検査用擬似モータを用いて実施することができる。検査用擬似モータは、加圧治具と芯金によって該加圧治具内に圧着された環状の分割コアと、その内周側に設けられた基準ロータとからなる。このため、検査用擬似モータの製造では、例えば溶接等にて隣り合う分割コア同士を固定する工程や、各分割コアにボビンやコイルを装着する工程、また、コイルを装着することに付随して必要となるコイル線の電気的接続の工程等を省くことができる。これにより、本発明では、モータの完成品を用いて検査する場合に比べて、コギングトルクの検査に要する時間を短縮してモータの生産性の向上を図ることができる。また、加圧治具による加圧力を、モータの完成品においてモータケースに圧入固定又は焼嵌め固定等された分割コアが該モータケースから受ける圧力と同等すれば、検査用擬似モータにおける検査精度を、完成品のモータを使ったコギングトルクの検査精度と略同等とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
従って、上記記載の発明によれば、検査に要する時間を短縮してモータの生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本実施形態におけるブラシレスモータの平面図、(b)は図1(a)におけるA−A線断面図。
【図2】(a)はステータをホルダ側から見た平面図、(b)は図2(a)におけるB−B線断面図。
【図3】ステータコアの平面図。
【図4】(a)は加圧治具を模式的に示す断面図、(b)は加圧治具を模式的に示す平面図。
【図5】コア圧着工程を説明するための説明図。
【図6】検査用擬似モータを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
まず、本実施形態のコギングトルクの検査方法及び検査装置を説明する前に、その検査の対象となるステータ(ステータコア)を備えるブラシレスモータについて説明する。
【0017】
図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すように、ブラシレスモータ1のモータケース2は、有底円筒状に形成されるとともに、その内周面には略円筒状のステータ3が圧入固定(又は焼嵌め固定)されている。ステータ3の内側には、モータケース2の底部中央に設けられた軸受4を介してロータ5が回転可能に配置されている。また、ロータ5を構成する回転軸6には、円筒状のロータコア7が固定されるとともに、該ロータコア7の外周面には所定角度ごとに異なる極性(N極、S極)に着磁されたマグネット8が固着されている。そして、ステータ3におけるモータケース2の開口部側の端部には、絶縁性を有する合成樹脂材料よりなるホルダ9が固定されるとともに、該ホルダ9は、ステータ3の軸線方向一端側を覆っている。
【0018】
図2(a)(b)及び図3に示すように、ステータ3を構成するステータコア10は、軸方向から見た形状がT字状をなす12個の分割コア11を周方向に連結して円環状に構成されている。各分割コア11は、軸方向から見た形状が円弧状をなす分割環状部12と、該分割環状部12の周方向の中央部から径方向内側に延びるティース部13とから構成されている。各分割コア11は、分割コア11の軸方向となる方向に電磁鋼板を複数枚(例えば数十枚)積層してなるとともに、電磁鋼板同士は軸方向にそれぞれかしめられて一体化されている。本実施形態では、各分割コア11同士は分割環状部12の周方向両端がレーザ溶接されることで固定されている。図2に示すように、各分割コア11には、各分割コア11の軸方向の両端面及び周方向の両側面を被覆するボビン14が軸方向の両側から装着されている。そして、ティース部13には、ボビン14の上から巻線15が集中巻きにて複数回巻回されることによりコイル16がそれぞれ巻装されている。
【0019】
そして、図1(a)に示すように、各コイル16の接続端部16aは、ホルダ9のステータ3と反対側の面まで引き出されて、ホルダ9におけるステータ3と反対側の面に配置された複数(本実施形態では4個)のターミナル17にそれぞれ結線される。このように構成されたブラシレスモータ1では、駆動電源(図示略)から三相の励磁電流が各ターミナル17(本実施形態では、図1(a)における上側に配置された3つ)を介して各コイル16に対して供給されると、各コイル16がそれぞれ励磁されてステータ3に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ5が回転するようになっている。
【0020】
[コギングトルクの検査方法]
次に、本実施形態のブラシレスモータ1の製造過程において実施するコギングトルクの検査方法について図4〜図6に従って説明する。
【0021】
本実施形態のコギングトルクの検査装置は、図5に示す芯金21と、図4(a)(b)及び図5に示す加圧治具31と、図6に示す基準ロータ41とを有する。
まず、分割コア11を環状化してステータコア10を成形するための芯金21について説明する。図5に示すように、芯金21はシャフト22を備える。シャフト22は、軸方向上側部分が同一径をなす円柱部22aで構成されるとともに、軸方向下側部分には、軸方向下側端部に向かうにつれて縮径する略円錐形状をなすテーパ部22bが形成されている。
【0022】
シャフト22の円柱部22aは、軸方向に並ぶベース部23aとホルダ部23bを貫通するとともに、該円柱部22aには、ホルダ部23bを貫通するバネ23cが外挿されている。バネ23cの下端はホルダ部23bの上面と接しているとともに、バネ23cの上端はシャフト22の上端部に固着されたバネストッパ24aと接している。バネストッパ24aは、固定ナット24bによって共締めされることによってシャフト22の上端に固着されている。これにより、バネ23cはシャフト22を上側に付勢するようになっている。
【0023】
芯金21のテーパ部22bの外周には、周方向に並ぶ3個の拡縮部25aから構成される分割コア配置部25が設けられている。各拡縮部25aの内周面は、軸方向上側に向かうにつれて拡径するテーパ面25bとなっており、該テーパ面25bはシャフト22のテーパ部22bと接触している。これにより、シャフト22が軸方向下方にスライドされると、各拡縮部25aはテーパ部22bと摺接しつつ拡径し、反対にシャフト22が軸方向上方にスライドされると、各拡縮部25aはテーパ部22bと摺接しつつ縮径するようになっている。このように、各拡縮部25aからなる分割コア配置部25の外径が拡縮可能となっている。
【0024】
シャフト22の下端には、各拡縮部25aと係合可能なキャップ26が設けられている。また、ホルダ部23bの下面には、各拡縮部25aと係合可能な位置決め部27が設けられている。キャップ26と位置決め部27は、分割コア配置部25の外径を決定するためのものである。尚、位置決め部27の外周面には、ステータコア10を軸方向に位置決めするための軸方向位置決め部28が設けられている。
【0025】
図4及び図5に示すように、加圧治具31は、筒状の外殻部材32と、外殻部材32の軸方向一端(図4及び図5において下端)を塞ぐ閉塞部材33と、外殻部材32に内嵌された加圧部材34とからなり、全体として略有底円筒状をなしている。
【0026】
外殻部材32は、閉塞部材33とは反対側の軸方向端部が開口端部32aとなっている。外殻部材32の内周面32bは、開口端部32aから閉塞部材33側の端部にかけて縮径するテーパ状に形成されている。閉塞部材33は略円盤状をなし、その中心部には軸受収容部33aが外側に突出するように形成されている。尚、閉塞部材33は、複数のネジ33bにて外殻部材32に固定されている。
【0027】
加圧部材34は周方向等間隔に3つ設けられている。各加圧部材34は、図4(b)に示すように、軸方向から見て外殻部材32の内周面32bに沿った円弧状をなしている。各加圧部材34の外周面34aは、図4(a)に示すように、軸方向の閉塞部材33側(下側)に向かうにつれて縮径するテーパ状に形成されている。これにより、各加圧部材34は、軸方向下側に移動するにつれて外殻部材32の内周面32bと摺接しつつ縮径するようになっている。
【0028】
基準ロータ41は、完成品であるブラシレスモータ1に用いるロータ5と同部品(即ち、製品として使用するロータ)であり、図6の基準ロータ41はロータ5を模式的に示すものである。尚、基準ロータ41として同様な特性値のものを数台用意しておくのが望ましい。
【0029】
次に、コギングトルクの検査方法について詳述する。
図3に示すように、電磁鋼板から分割コア11を成形した後、分割コア11をボビン14及びコイル16を未装着のまま略環状にする(配置工程)。一方で、加圧治具31の外殻部材32及び加圧部材34の内側に芯金21の分割コア配置部25を開口端部32a側から挿入した後、環状配置された各分割コア11を開口端部32aとは反対側から分割コア配置部25に外嵌する。これにより、分割コア配置部25と加圧部材34との径方向の間に各分割コア11が環状に配置される。
【0030】
このとき、分割コア11は、芯金21の軸方向位置決め部28と軸方向に当接して位置決めされるようになっている。また、このとき、分割コア配置部25の外径は、各分割コア11の内周側への挿入を容易にすべく縮径されている。その後、分割コア配置部25を所定の寸法まで拡径させて、その外周面を各分割コア11のティース部13の先端部13a(径方向内側端部)に当接させる。
【0031】
次に、外殻部材32に閉塞部材33を取り付ける。その後、各加圧部材34の軸方向上側端部(開口端部32a側の端部)にリング部材35を軸方向に当接させるとともに、該リング部材35にて各加圧部材34を軸方向下側(閉塞部材33側)に押圧する(コア圧着工程)。このとき、加圧部材34に対し周方向に亘って均一な力で押圧力が付与される。すると、各加圧部材34は、外殻部材32と摺接しつつ縮径し、その内周面で各分割コア11を径方向内側に押圧する。この径方向内側への押圧力は、周方向に亘って均一となっており、ブラシレスモータ1の完成品においてモータケース2からステータコア10にかかる圧力と同等の圧力が付与されるようになっている。この工程により、周方向に隣り合う分割コア11の分割環状部12同士が圧着されるとともに、各分割コア11の分割環状部12の外周面と加圧部材34の内周面とが径方向に圧着される。
【0032】
このコア圧着工程後、分割コア配置部25を縮径させ、ステータコア10から芯金21を軸方向に引き抜く。これにより、ステータコア10(環状の各分割コア11)が加圧治具31内に保持された状態が維持され、この加圧治具31とステータコア10とからなる検査用擬似ステータが完成する。
【0033】
その後、図6に示すように、その擬似ステータのステータコア10の内周側に基準ロータ41を配置する。基準ロータ41の回転軸6の基端部は、閉塞部材33の軸受収容部33aに設けられた軸受36aに回転可能に支持される。また、回転軸6の先端部は、外殻部材32の開口端部32aにネジ37にて固定されたエンドフレーム38の中央部を貫通するとともに、該エンドフレーム38に保持された軸受36bにて回転可能に支持される。尚、エンドフレーム38には、加圧治具31の内部側に突出する円筒状の位置決め部38aが形成されており、該位置決め部38aが外殻部材32の内周面32bと軸方向に当接することでエンドフレーム38の軸方向の位置決めがなされる。このように、加圧治具31及びステータコア10(擬似ステータ)、基準ロータ41及びエンドフレーム38が検査用擬似モータ50を構成している。
【0034】
次に、検査用擬似モータ50を用いてコギングトルクの測定を行う(測定工程)。コギングトルクの測定は、回転軸6の先端部に設けられたジョイント部51を介して図示しない駆動手段により基準ロータ41を強制的に回転させた際に検出されるトルク特性(トルク波形)を解析することにより行なわれる。
【0035】
その後、測定結果に基づいてコギングトルク不良と判定された場合には、分割コア11の寸法精度が低下した原因を突き止めて、分割コア11の製造過程における問題点の改善(分割コア11の材料、材料の配置や固定、製造の際のプレス圧、そのプレス型位置、又はプレス型の修正、パンチ・ダイの位置調整、型研磨(エッジ部歯付け)等)を検討する。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、コギングトルクの検査がブラシレスモータ1の完成品ではなく検査用擬似モータ50を用いて実施され、該検査用擬似モータ50は、加圧治具31と芯金21によって加圧治具31内に圧着されたステータコア10と、その内周側に設けられた基準ロータ41とからなる。検査用擬似モータ50の製造時におけるステータコア10のコア圧着工程では、ブラシレスモータ1の完成品においてモータケース2からステータコア10にかかる圧力と同等の圧力が付与されるようになっている。このため、ブラシレスモータ1の完成品を用いて検査する場合と同等の精度でコギングトルクを測定することが可能となっている。
【0037】
この検査用擬似モータ50の製造では、隣り合う分割コア11同士を例えば溶接等にて固定する工程や、各分割コア11にボビン14やコイル16を装着する工程、また、コイル16を装着することに付随して必要となるコイル線(接続端部16a)の電気的接続の工程等が省略されている。これにより、本実施形態の検査方法では、ブラシレスモータ1の完成品を用いて検査する場合に比べ、コギングトルクの検査に要する時間を短縮されている。このため、測定結果に基づいてコギングトルク不良と判定された場合、分割コア11の製造過程における問題点の改善に迅速に対応することが可能となっている。また、部品管理ロスや確認工数も少なく抑えられるようになっている。
【0038】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態では、環状に配置した複数の分割コア11の内周側に芯金21を、外周側に筒状の加圧治具31をそれぞれ配置した後、加圧治具31にて各分割コア11に径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う分割コア11同士を圧着させるとともに、各分割コア11と加圧治具31とを径方向に圧着させる。次に、環状の各分割コア11を加圧治具31内に保持させた状態のまま該分割コア11から芯金21を取り除き、その後、加圧治具31内に保持された環状の各分割コア11と、該分割コア11の内周側に回転可能に設けられた基準ロータ41とからなる検査用擬似モータ50を用いてコギングトルクを測定する。このため、検査用擬似モータ50の製造では、隣り合う分割コア11同士を例えば溶接等にて固定する工程や、各分割コア11にボビン14やコイル16を装着する工程、また、コイル16を装着することに付随して必要となるコイル線(接続端部16a)の電気的接続の工程等を省くことができる。これにより、本実施形態では、ブラシレスモータ1の完成品を用いて検査する場合に比べ、コギングトルクの検査に要する時間を短縮してブラシレスモータ1の生産性の向上を図ることができる。また、加圧治具31による加圧力を、ブラシレスモータ1の完成品において分割コア11がモータケース2から受ける圧力と同等すれば、検査用擬似モータ50における検査精度を、完成品のブラシレスモータ1を使ったコギングトルクの検査精度と略同等とすることができる。
【0039】
(2)本実施形態では、加圧治具31が拡縮可能に構成されるため、環状に配置された分割コア11に対して径方向内側への押圧力を好適に付与することが可能となる。
(3)本実施形態では、芯金21が拡縮可能に構成されるため、環状に配置された分割コア11から芯金21を取り除く際にその芯金21を縮径することで、芯金21を容易に引き抜くことが可能となる。
【0040】
(4)本実施形態では、基準ロータ41が完成品のブラシレスモータ1に使用可能である。これにより、検査用擬似モータ50の基準ロータ41を使ってブラシレスモータ1を製品化できるため、コストの増加を抑えることができる。
【0041】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、芯金21の分割コア配置部25を拡縮可能に構成したが、これに特に限定されるものではなく、拡縮不能としてもよい。
【0042】
・上記実施形態におけるコギングトルクの検査装置(芯金21及び加圧治具31)の形状等は、構成に応じて適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ブラシレスモータ、2…モータケース、3…ステータ、10…ステータコア、11…分割コア、21…芯金、31…加圧治具、41…基準ロータ、50…検査用擬似モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置した複数の分割コアの内周側に芯金を、外周側に筒状の加圧治具をそれぞれ配置する配置工程と、
前記配置工程後、前記加圧治具にて前記各分割コアに径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う前記分割コア同士を圧着させるとともに、前記各分割コアと前記加圧治具とを径方向に圧着させるコア圧着工程と、
前記コア圧着工程後、環状の前記各分割コアを前記加圧治具内に保持させた状態のまま該分割コアから前記芯金を取り除き、その後、前記加圧治具内に保持された環状の前記各分割コアと、該分割コアの内周側に回転可能に設けられた基準ロータとからなる検査用擬似モータを用いてコギングトルクを測定する測定工程と
を有することを特徴とするコギングトルクの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコギングトルクの検査方法において、
前記加圧治具は、拡縮可能に構成されたことを特徴とするコギングトルクの検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコギングトルクの検査方法において、
前記芯金は、拡縮可能に構成されたことを特徴とするコギングトルクの検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のコギングトルクの検査方法において、
前記基準ロータは、完成品のモータに使用可能であることを特徴とするコギングトルクの検査方法。
【請求項5】
環状に配置した複数の分割コアの内周側に配置される芯金と、該分割コアの外周側に配置される筒状の加圧治具とを備え、
前記加圧治具にて前記各分割コアに径方向内側への押圧力を付与することで、周方向に隣り合う前記分割コア同士を圧着させるとともに、前記各分割コアと前記加圧治具とを径方向に圧着させ、
環状の前記各分割コアを前記加圧治具内に保持させた状態のまま該分割コアから前記芯金を取り除いた後、前記加圧治具内に保持された環状の前記各分割コアと、該分割コアの内周側に回転可能に設けた基準ロータとで検査用擬似モータを構成し、該検査用擬似モータを用いてコギングトルクを測定することを特徴とするコギングトルクの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170185(P2012−170185A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27358(P2011−27358)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】