説明

コギングトルク低減型キャンドモータ

【課題】ステータのスロットオープン部におけるコギングトルクの発生を低減するコギングトルク低減型キャンドモータを提供する。
【解決手段】ハウジングに挿設され、ハウジングに内蔵されたコイルを密封するキャン10と、キャン10の外周面に配設され、ハウジングの内周面に挿設されたステータと、を含み、キャン10は、外周面に突出形成された複数の固定ガイド11と、固定ガイド11に固着され一体化されたメタルピン12とを備え、キャン10が、ステータに挿入される時、メタルピン12がステータのスロットオープン部に挿入され密着され、キャン10は、メタルピン12と共にインサート射出成形され、メタルピン12が固定ガイド11内に固着され、固定ガイド11は、ステータのスロットオープン部に接触する左右両側が開口され、スロットオープン部に挿入されたメタルピン12がステータに直接接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コギングトルク低減型キャンドモータに係り、より詳しくは、ステータのスロットオープン部に磁性体のメタルピンを挿入してコギングトルクの発生を抑制することにより、起動時の騒音及び振動を低減するコギングトルク低減型キャンドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドポンプ(Canned Pump)は、水圧を上昇させるためのものであって、ポンプの動力源であるモータの構成要素の中、電気が流れるコイルはキャン(can)で密封し、キャンの内部に収納される回転軸と回転子にはポンプにより加圧された水の一部を流入可能にして回転体から発生する摩擦熱を適切に冷却し、加圧される水が回転摩擦部の間で潤滑作用もするようにした構造であり、通常、ポンプのインペラとモータを一体化して製作する。
すなわち、キャンドポンプの動力源のキャンドモータは、一般的にキャンドポンプとの間で漏水のない一体型構造として結合されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は従来のキャンドモータの断面構造を示す構成図である。図1に示したとおり、従来のキャンドモータは、一定の体積を有するハウジング1と、ハウジング1の内周面に設置されるステータ2と、ステータ2の周辺に配設されステータ2と回転子3との間に電磁気的作用を起こすためのコイル(図示せず)と、ハウジング1に挿設されコイルとステータ2を密閉するキャン4と、キャン4の内部に収納され電磁気的作用により回転可能に設置される回転子3と、この回転子3に圧入され回転子3に連動回転する回転軸5と、を含む。
回転軸5の一端にはポンプのインペラ6が結合されており、インペラ6は、回転子3の回転により、回転軸5に連動して回転し、水を吸入または吐出する。
この時、キャン4は、コイルが配設されているキャン4の外部に内部の水が流出しないように漏水を防止する役割をし、通常、PPS(polyphenylene sulfide)材料で製作される。
【0004】
図2は従来のキャンドモータのキャンとステータの組立構造を示す断面図である。図2に示したとおり、キャン4の外周面にはステータ2が配設されており、ステータ2は、コイルに電源が印加されると、回転子3との電磁気的作用により回転子を回転駆動させる。
ステータ2には、円周に沿って複数のスロット7が長さ方向に形成されており、スロット7とキャン4との間には0.8mm程度のスロットオープン部8が形成される。
上記のような従来のキャンドモータは、比較的構造が簡単で、防水性能に優れた利点がある反面、ステータのスロットオープン部にコギングトルクが発生し、これによる騒音及び振動が大きいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−344589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ステータのスロットオープン部におけるコギングトルクの発生を低減するコギングトルク低減型キャンドモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明のコギングトルク低減型キャンドモータは、ハウジングに挿設され、ハウジングに内蔵されたコイルを密封するキャンと、キャンの外周面に配設され、ハウジングの内周面に挿設されたステータと、を含み、キャンは、外周面に突出形成された複数の固定ガイドと、固定ガイドに固着され一体化されたメタルピンとを備え、キャンが、ステータに挿入される時、メタルピンがステータのスロットオープン部に挿入され密着されたことを特徴とする。
【0008】
キャンは、メタルピンと共にインサート射出成形され、メタルピンが固定ガイド内に固着されたことが好ましい。
固定ガイドは、ステータのスロットオープン部に接触する左右両側が開口され、スロットオープン部に挿入されたメタルピンがステータに直接接触したことが好ましい。
メタルピンは磁性体からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明のキャンドモータは、ステータのスロットオープン部に磁性体のメタルピンを挿入した構造であり、スロットオープン部のコギングトルク発生を低減させることができるため、起動時のトルクリップルが減少して騒音及び振動の発生を減少させることができる。これによって、モータの効率を向上させることができる。
また、本発明のキャンドモータは、キャンの外周面に固定ガイドが形成されることにより、剛性が補強されるため、信頼性を向上させることができる。
ステータのスロットオープン部にキャンの固定ガイドがマッチングされることにより、ステータのスリップ防止効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のキャンドモータの断面構造を示す構成図である。
【図2】従来のキャンドモータのキャンとステータの組立構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例によるキャンドモータのキャンを示す外部斜視図である。
【図4】本発明の実施例によるキャンドモータのキャンとステータの組立構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を基づき本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。図3は本発明の実施例によるキャンドモータのキャンを示す外部斜視図であり、図4は本発明の実施例によるキャンドモータのキャンとステータの組立構造を示す断面図である。
通常、キャンドモータは、一定の体積を有するハウジングと、ハウジングの内周面に設置されるステータと、ステータの周辺に配設されステータと回転子との間に電磁気的作用を起こすコイルと、ハウジングに挿設されコイルを密閉するキャンと、キャンの内部に収納され電磁気的作用により回転可能に設置される回転子と、この回転子に圧入され回転子に連動回転する回転軸と、を含む。
【0012】
回転軸の一端には、ポンプのインペラが結合されており、インペラは、回転子の回転により回転軸に連動して回転しながら水を吸入または吐出する。
この時、キャンは、コイルが配設されているキャンの外部に内部の流水が流出しないように漏水を防止する役割をする。
キャンの外周面にはステータが配設されており、ステータは、ハウジングの内壁面に固定される。コイルに電源が印加されると、回転子との電磁気的作用により回転子を回転駆動させる。
ステータには、円周方向に並んだ複数のスロットが長さ方向に形成されており、スロットと内壁面(キャンが接するステータの内周面)との間に一定の大きさのスロットオープン部が形成される。
【0013】
本発明では、上記のとおり、キャン10とステータ20を含むキャンドモータにおいて、ステータ20のスロットオープン部22により発生するコギングトルクを抑制するために、スロットオープン部22に磁性体のメタルピン12を挿入してステータ20にオープンされた区間を填補し、閉鎖されたスロット21を形成する。
このために、本発明によるコギングトルク低減型キャンドモータは、図3に示したとおり、キャン10の外周面の長さ方向に複数の固定ガイド11を形成し、この固定ガイド11にメタルピン12を固着した状態のキャン10を含んで構成される。
固定ガイド11は、キャン10の射出成形時、キャン10の外周面に一体に突出形成され、メタルピン12は、インサート射出成形により固定ガイド11に固着されてキャン10に設けられる。
【0014】
インサート射出成形は、射出樹脂を金型に注入して射出部品を成形する時、金型の所定部位に他の部分品をセットした状態で成形するため、インサート(insert)された部分品は射出部品の一部分として一体成形される。
したがって、キャン10とメタルピン12をインサート射出成形することにより、メタルピン12は固定ガイド11に固着された状態でキャン10の外周面に一体化されて設けられる。
【0015】
固定ガイド11は、キャン10の円形断面に対して垂直に長く延びて形成され、メタルピン12は固定ガイド11の一端または一側面に固着される。
このようにインサート射出成形によりキャン10とメタルピン12を一体に形成することにより、キャン10の固定ガイド11内にメタルピン12が固着され、これによってキャン10の固定ガイド11からメタルピン12の離脱が防止される。
また、図3及び図4に示したとおり、ステータ20のスロットオープン部22に接触する固定ガイド11の左右両側を開口することにより、固着されているメタルピン12の左右両端を露出させる。
メタルピン12は、固定ガイド11の内壁面に固着されているため、固定ガイド11の一定の部位を開口成形しても固定ガイド11から離脱しない。
【0016】
したがって、図3に示したとおり固定ガイド11を、その左右の両側が長く開口した形態に成形し、固着されたメタルピン12の左右の両端を露出することにより、メタルピン12をステータ20に直接接触させることができる。
具体的には、ステータ20にキャン10が挿入される時、固定ガイド11がステータ20のスロットオープン部22に嵌め込まれ、図4に示したとおり両端部が露出したメタルピン12がスロットオープン部22に挿入されてマッチングされ、これによって、メタルピン12がスロットオープン部22に密着し、ステータ20に直接接触することになる。
これにより、ステータ20は、キャン10の外周面に配設されるとき、スロットオープン部22が閉鎖されたスロット21を有することになる。
スロットオープン部22に挿入されてマッチングされるメタルピン12は磁性体の素材からなる。
【0017】
一方、固定ガイド11は、キャン10の外周面に突出形成されてキャン10を補強し、また、ステータ20とキャン10を組み立てる時、組立位置を案内する役割をする。
さらに、本発明のキャンドモータは、ステータ20のスロットオープン部22にキャン10のメタルピン12を挿入してマッチングすることにより、ステータ20のスリップ防止効果が得られる。
【0018】
このように本発明によるキャンドモータは、ハウジングに内蔵されたコイルを密封するハウジングに挿設されるキャン10と、キャン10の外周面に配設され、ハウジングの内周面に挿設されるステータ20と、を含んで構成され、キャン10の外周面には固定ガイド11に固着され一体化されたメタルピン12が設けられる。
【符号の説明】
【0019】
1 ハウジング
2,20 ステータ
3 回転子
4,10 キャン
5 回転軸
6 インペラ
7,21 スロット
8,22 スロットオープン部
11 固定ガイド
12 メタルピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに挿設され、前記ハウジングに内蔵されたコイルを密封するキャンと、前記キャンの外周面に配設され、前記ハウジングの内周面に挿設されたステータと、を含み、
前記キャンは、外周面に突出形成された複数の固定ガイドと、前記固定ガイドに固着され一体化されたメタルピンとを備え、前記キャンが前記ステータに挿入される時、前記メタルピンが前記ステータのスロットオープン部に挿入され密着されたことを特徴とするコギングトルク低減型キャンドモータ。
【請求項2】
前記キャンは、前記メタルピンと共にインサート射出成形され、前記メタルピンが固定ガイド内に固着されたことを特徴とする請求項1に記載のコギングトルク低減型キャンドモータ。
【請求項3】
前記固定ガイドは、前記ステータの前記スロットオープン部に接触する左右両側が開口され、前記スロットオープン部に挿入された前記メタルピンが前記ステータに直接接触したことを特徴とする請求項1に記載のコギングトルク低減型キャンドモータ。
【請求項4】
前記メタルピンは磁性体からなることを特徴とする請求項1に記載のコギングトルク低減型キャンドモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−106512(P2013−106512A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145184(P2012−145184)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(510145439)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】