説明

コネクタおよびコネクタの成形方法

【課題】電線の径寸法にかかわらずコネクタ成形における品質を向上させる。
【解決手段】本発明のコネクタ10は、芯線W1が被覆W2によって覆われてなる電線Wと、電線Wの端末に露出した芯線W1を圧着する圧着部32を有する端子30と、被覆W2の外周面を覆うようにして装着された樹脂キャップ40と、圧着部32から樹脂キャップ40に亘る範囲を覆うようにして樹脂キャップ40と一体に成形されたハウジング11とを備え、樹脂キャップ40の露出端部41は、ハウジング11の内部から外部に露出している構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の端末で被覆を除去することにより芯線を露出させ、この露出した芯線を端子の圧着部によって圧着した後に、この圧着部から電線の被覆に亘る範囲を樹脂成形部によって成形してなるコネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。樹脂成形部を成形する一対の金型は、型閉じすることによって形成される成形用空間を有し、この成形用空間に樹脂を射出することによって樹脂成形部が成形されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−269858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の金型では、電線の被覆を一対の金型によって直接挟持することによって樹脂の食い切りを行うため、以下のような問題があった。まず、電線の径寸法が規定よりも大きい場合には、金型が被覆に食い込むため、被覆に傷が付き不良品となる。次に、電線の径寸法が規定よりも小さい場合には、金型と被覆の間に隙間が形成されるため、この隙間に樹脂が流入して樹脂バリが発生して不良品となる。このように電線の径寸法のバラツキによって不良品が発生し、使用する電線の品質によってコネクタの品質が決定されてしまうことになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタ成形における品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、芯線が被覆によって覆われてなる電線と、電線の端末に露出した芯線を圧着する圧着部を有する端子と、被覆の外周面を覆うようにして装着された保護部材と、圧着部から保護部材に亘る範囲を覆うようにして保護部材と一体に成形された樹脂成形部とを備え、保護部材の軸方向における一方の端部は、樹脂成形部の内部から外部に露出している構成としたところに特徴を有する。
【0007】
また、本発明は、芯線が被覆によって覆われてなる電線の端末にて、芯線を圧着部によって圧着することにより端子の接続を行う接続工程と、被覆の外周面を覆うようにして保護部材を装着する装着工程と、保護部材の軸方向における一方の端部を一対の金型で挟持して型閉じすることにより、圧着部から保護部材に亘る範囲に成形用空間が形成される型閉じ工程と、成形用空間に樹脂を射出することによって樹脂成形部を成形する成形工程とを備えたコネクタの成形方法としてもよい。
【0008】
このようにすると、被覆が保護部材によって保護されるため、保護部材の軸方向における一方の端部を両金型で挟持して型閉じすることができ、被覆を両金型で挟持しなくてもよい。また、保護部材は、例えば樹脂成形などによって形成することができ、電線に比べてより安定して製造することができるため、径寸法のバラツキも少ない。このため、型閉じによって圧着部から保護部材に亘る範囲に成形用空間を形成し、この成形用空間に樹脂を射出することによって樹脂成形部を成形し、コネクタを形成することができる。したがって、コネクタ成形における品質を向上させることができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
保護部材の外周面には、樹脂成形部が埋め込まれる凹部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、凹部に樹脂成形部が埋め込まれた状態でコネクタが成形されるため、保護部材が樹脂成形部から外れることを規制できる。
【0010】
圧着部の端部は、圧着によって相対的に突出する形態とされており、保護部材の軸方向における他方の端部は、圧着部の端部に接触している構成としてもよい。
このような構成によると、保護部材の軸方向における他方の端部を圧着部の端部に突き当てることにより、保護部材の位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線の径寸法にかかわらずコネクタ成形における品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コネクタの平面図
【図2】コネクタの正面図
【図3】コネクタの背面図
【図4】コネクタの側面図
【図5】コネクタの断面図
【図6】接続工程にて電線の端末に端子を接続した状態を示した図
【図7】装着工程にて被覆の外周面に樹脂キャップを装着した状態を示した図
【図8】型閉じ工程にて金型を型閉じした後に、成形工程にて成形用空間に樹脂を射出してハウジングを成形した状態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ10は、自動車用のインバータなどの機器に接続されるようになっている。このような機器は、機器本体(図示せず)を収容してなる機器側ケース(図示せず)を備え、この機器側ケースには、コネクタ10を取り付けるための取付孔(図示せず)が貫通形成されている。機器側ケースの内部には端子台(図示せず)が配設されており、コネクタ10が取付孔に取り付けられると、後述する端子30が端子台に接続されるようになっている。
【0014】
コネクタ10は、図5に示すように、合成樹脂製のハウジング(本発明の「樹脂成形部」の一例)11を有し、このハウジング11の内部には、3つの端子30、3つの樹脂キャップ40、3本の電線Wなどがインサート成形されている。電線Wはハウジング11の後方に引き出されている。
【0015】
ハウジング11の後面13には、電線Wを個別に覆うようにして後方に突出する電線覆い部18が形成されている。電線覆い部18は電線Wと同軸で配置され、円筒状に形成されている。電線覆い部18の略後半部を構成する円筒部は略前半部を構成する円筒部よりも小径とされており、両円筒部は、テーパ状の傾斜面によって互いに連結されている。
【0016】
電線Wは、芯線W1が被覆W2で覆われてなる周知の構成である。本実施形態の電線Wは3本からなり、図1に示すように、3本の電線Wは横並びに配置されている。電線Wの端末は、図6に示すように、被覆W2を除去することで芯線W1が露出されており、この露出した芯線W1を次述する圧着部32によって圧着することにより端子30と電線Wとが導通可能に接続されている。
【0017】
端子30は、金属薄板を打ち抜き加工および折り曲げ加工することによって形成されている。端子30は全体として前後方向に長い形態とされており、円孔31Aが貫通して形成された接続片31、接続片31の基端側(後方)に設けられた圧着部32などを備えて構成されている。接続片31のうち円孔31Aが形成されている部分は、電線Wの軸方向に対してやや上方に向かう傾斜面とされている。円孔31Aは、端子台に形成された固定孔(図示せず)と同軸で配置され、円孔31Aを固定孔にボルト止めすることにより端子30と端子台とが導通可能に接続されるようになっている。
【0018】
ハウジング11は、図1ないし図3に示すように、横長のブロック状とされており、3つの接続片31はハウジング11の前面12から前方に突出している。ハウジング11の外周面14には、シールリング(図示せず)を装着可能な装着溝15が周設されている。シールリングは、装着溝15の底面と取付孔の内周壁との双方に密着することにより、機器側ケースの内部を防水可能としてある。
【0019】
ハウジング11は、樹脂成形によって形成されている。ハウジング11を成形するための金型は、上側の金型20Uと下側の金型20Lとを備えて構成されており、両金型20U,20Lを型閉じすることによって成形用空間Sが形成されるようになっている。したがって、電線Wの端末に接続された端子30を両金型20U,20L間にセットし、両金型20U,20Lを型閉じすると、成形用空間Sに圧着部32から樹脂キャップ40に亘る部分が配置される。このため、成形用空間Sに樹脂Rを射出すると、図5に示すように、圧着部32から樹脂キャップ40に亘る範囲にハウジング11が成形される。
【0020】
各端子30の間には、仕切板16が設けられている。仕切板16は、ハウジング11の前面12から前方に突出する形態とされている。仕切板16は、隣り合う端子30同士を絶縁するための部材である。仕切板16により、端子30間の沿面距離を稼ぎつつ、端子30同士を近づけて配置することができる。また、3つの端子30のうち左右両端に位置する端子30の外側には、保護壁17が設けられている。保護壁17は、両端の端子30を保護する機能を有するとともに、コネクタ10を機器側ケースの取付孔に挿入する際のガイドとしても機能する。
【0021】
樹脂キャップ(本発明の「保護部材」の一例)40は、図5に示すように、円筒状をなす合成樹脂製とされており、例えば樹脂成形によって形成されている。樹脂キャップ40は、電線Wの径寸法とほぼ同じ内径を有している。このため、電線Wに樹脂キャップ40を挿入すると、樹脂キャップ40が電線Wの被覆W2の外周面に沿って嵌着される。
【0022】
樹脂キャップ40の軸方向における両端部には、図5に示すように、一対の凹部43が周設されている。両凹部43には、ハウジング11を構成する樹脂が埋め込まれており、樹脂キャップ40がハウジング11に対して軸方向へ移動することが規制されている。これにより、樹脂キャップ40がハウジング11から外れることを規制できる。
【0023】
図5に示す樹脂キャップ40の右端部は、本発明でいう「保護部材の軸方向における一方の端部」に対応しており、以下「露出端部41」という。露出端部41は、ハウジング11の内部から外部に露出している。よりわかりやすく説明すると、樹脂キャップ40は、ハウジング11の内部に位置する部分とハウジング11の外部に位置する部分とから構成されており、このうちハウジング11の外部に位置する部分が露出端部41である。
【0024】
露出端部41は、図8に示すように、成形時に、両金型20U,20Lによって上下方向から挟持される部分となっている。つまり、露出端部41が両金型20U,20Lによって挟持されることにより、成形用空間Sに射出された樹脂Rが外部に流出することを規制している。換言すると、露出端部41と両金型20U,20Lの接触部分は、成形時における樹脂Rの食い切り部分とされている。
【0025】
一方、樹脂キャップ40の左端部は、本発明でいう「保護部材の軸方向における他方の端部」に対応しており、以下「突き当て端部42」という。この突き当て端部42は、圧着部32の右端部に突き当てられた状態でハウジング11の内部に埋設されている。すなわち、圧着部32の右端部には、圧着部32が圧着されることによって相対的に径方向外側に突出した「ベルマウス33」が形成されており、このベルマウス33に突き当て端部42が接触している。これにより、樹脂キャップ40を装着する際における位置決めが容易になる。
【0026】
本実施形態のコネクタ10は以上のような構成であって、続いてその成形方法を説明する。まず、電線Wの端末に端子30を接続する作業に先立って、電線Wに樹脂キャップ40を先通ししておく。次に、電線Wの端末にて被覆W2を除去することにより、芯線W1を露出させる。この露出した芯線W1を圧着部32によって圧着することにより、図6に示すように、電線Wの端末に端子30が接続される(接続工程)。
【0027】
この後、図7に示すように、電線Wに先通しされた樹脂キャップ40を前方へ移動させ、樹脂キャップ40の突き当て端部42を圧着部32のベルマウス33に突き当てる。これにより、樹脂キャップ40は端子30に対して位置決めされ、かつ、電線Wの被覆W2の外周面を覆うようにして装着される(装着工程)。
【0028】
次に、端子30が接続された電線Wを両金型20U,20L間にセットし、両金型20U,20Lを型閉じする。すると、両金型20U,20L間に成形用空間Sが形成され、この成形用空間Sには、圧着部32から被覆W2に亘る範囲が位置するとともに、露出端部41が両金型20U,20Lによって挟持される。これにより、成形用空間Sが露出端部41において閉止される(型閉じ工程)。ここで、両金型20U,20Lは被覆W2に直接接触しないため、被覆W2に傷が付くことはなく、また、樹脂キャップ40の寸法精度が電線Wよりも高く、樹脂キャップ40の径寸法が規定どおりである場合には、両金型20U,20Lと露出端部41との間に隙間が形成されることもなく、バリの発生も抑制される。
【0029】
引き続き、成形用空間Sに樹脂Rを射出すると、成形用空間Sに樹脂Rが充填される。このとき、露出端部41が両金型20U,20Lによって挟持されているため、樹脂Rが露出端部41から成形用空間Sの外部に漏れ出すことが規制される。なお、電線Wが規定の寸法よりも小さい場合には、電線Wと樹脂キャップ40との間に樹脂Rが流出するものの、この樹脂Rが樹脂キャップ40の外部にまで流出することは考えにくい。仮に樹脂Rが樹脂キャップ40の外部にまで流出した場合でも、このような樹脂Rはすぐに冷却されて固まるため、バリが形成されるまでには至らない。こうして、圧着部32から樹脂キャップ40の外周面に亘る範囲にハウジング11が形成され、露出端部41がハウジング11の外部に露出した状態となる(射出工程)。この後、樹脂Rが冷え固まって、両金型20U,20Lを型開きし、脱型することにより、コネクタ10が得られる。
【0030】
以上のように本実施形態では、樹脂キャップ40を電線Wの外周面に被せて、樹脂キャップ40の露出端部41を両金型20U,20Lで挟持するようにしたから、両金型20U,20Lによって被覆W2に傷が付くことはない。すなわち、電線Wが規定の寸法よりも大きい場合でも、両金型20U,20Lに直接接触する部分は樹脂キャップ40であるため、電線Wの被覆W2が破れたり、めくれたりすることはない。また、電線Wが規定の寸法よりも小さい場合には、電線Wの被覆W2の外周面と樹脂キャップ40の内周面との間に樹脂Rが流出する可能性があるものの、この流出した樹脂Rによってバリが形成されることはない。
【0031】
また、樹脂キャップ40の軸方向における両端部に一対の凹部43を設けたから、これらの凹部43にハウジング11を構成する樹脂が埋め込まれ、樹脂キャップ40の軸方向における移動を規制できる。また、樹脂キャップ40の突き当て凹部43を圧着部32のベルマウス33に突き当てるようにしたから、樹脂キャップ40を電線Wに装着する際の位置決めを容易に行うことができる。したがって、成形時に両金型20U,20Lによって露出端部41を確実に挟持することができる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では保護部材として円筒状をなす樹脂キャップ40を例示しているものの、本発明によると、一対の半割体からなる保護部材としてもよい。このようにすると、ハウジング11を成形した後に保護部材を電線Wに装着することができる。また、保護部材として金属スリーブやカラーなどを用いてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では樹脂キャップ40の軸方向における両端部に一対の凹部43を設けているものの、本発明によると、樹脂キャップ40の軸方向における中央部に単一の凹部を設けてもよく、また、軸方向に沿って間欠的に3つ以上の凹部を設けてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では突き当て端部42をベルマウス33に突き当てているものの、本発明によると、ベルマウス33が形成されていない圧着部32の端部に突き当て端部42を突き当ててもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…コネクタ
11…ハウジング(樹脂成形部)
20U…上側の金型
20L…下側の金型
30…端子
32…圧着部
40…樹脂キャップ(保護部材)
41…露出端部(保護部材の軸方向における一方の端部)
42…突き当て端部(保護部材の軸方向における他方の端部)
43…凹部
R…樹脂
S…成形用空間
W…電線
W1…芯線
W2…被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線が被覆によって覆われてなる電線と、
前記電線の端末に露出した前記芯線を圧着する圧着部を有する端子と、
前記被覆の外周面を覆うようにして装着された保護部材と、
前記圧着部から前記保護部材に亘る範囲を覆うようにして前記保護部材と一体に成形された樹脂成形部とを備え、
前記保護部材の軸方向における一方の端部は、前記樹脂成形部の内部から外部に露出していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記保護部材の外周面には、前記樹脂成形部が埋め込まれる凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記圧着部の端部は、圧着によって相対的に突出する形態とされており、前記保護部材の軸方向における他方の端部は、前記圧着部の端部に接触していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
芯線が被覆によって覆われてなる電線の端末にて、前記芯線を圧着部によって圧着することにより端子の接続を行う接続工程と、
前記被覆の外周面を覆うようにして保護部材を装着する装着工程と、
前記保護部材の軸方向における一方の端部を一対の金型で挟持して型閉じすることにより、前記圧着部から前記保護部材に亘る範囲に成形用空間が形成される型閉じ工程と、
前記成形用空間に樹脂を射出することによって樹脂成形部を成形する成形工程とを備えたコネクタの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−18582(P2011−18582A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162878(P2009−162878)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】